説明

開閉装置

【課題】 省電力化を図りながら、閉状態において開閉体を閉じる方向に吸引固定することができ、かつ開閉体を小さな駆動力で開くことができる。
【解決手段】 ドア開口2を開いている開位置と、ドア開口2を閉じている閉位置との間で移動するドアパネル4a、4bの移動に伴って、スチールプレート24が移動する。ドアパネル4a、4bが閉位置に到達したとき、スチールプレート24に接近して位置するように、マグネットランプ26が配置されている。マグネットクランプ26は、非持続的に第1の極性の電流が供給されたとき、スチールプレート24を吸引保持するように持続的に着磁され、この着磁状態において非持続的に第2の極性の電流が供給されたとき、スチールプレート24を非吸引するように持続的に脱磁される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置によって開閉体が開閉される自動ドア装置や手動で開閉体が開閉される手動ドア装置を含むドア装置や、駅のプラットホームに設けられ列車や車両がプラットホームに到達して列車や車両のドアが開くまで開閉体を閉じておくプラットホームの安全柵やプラットホームドア装置のような開閉装置に関する。特に、本発明は、開閉装置の開閉体が閉じている状態で、開閉体を固定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア装置、例えば自動ドア装置は、ドアパネルのような開閉体が、ドア開口のような開口を閉じている閉状態を採る。この閉状態でドアパネルを固定する技術として、特許文献1に開示されているものがある。この技術では、ドアパネルと共に移動するように強磁性体製の可動吸引部がドアパネルに設けられ、ドアパネルが閉位置に到達したときに前記可動吸引部が到達する位置の近傍に、永久磁石を備えた定置吸引部が配置されている。ドアパネルが閉位置に到達したとき、定置吸引部の永久磁石がドアパネルを閉じる方向に可動吸引部を吸引保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4147104号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、自動ドア装置では、前述した閉状態では、ドアパネルを移動させるための電動モータのような駆動装置が、ドアパネルを閉じる方向に常時押圧し続けて、ドアパネルの気密性を高めていた。また、ドアパネルが侵入者等によって開かれることを防止するドア装置には、錠等の強固な保持装置を併用していた。しかし、閉状態において気密性を高めるためには、駆動装置によってドアパネルを駆動し続けねばならず、電力を消費し続ける問題があった。特許文献1の技術によれば、閉状態においてドアパネルを閉じる方向に押圧するために永久磁石と強磁性体とを使用しているので、閉状態において駆動装置を作動させ続ける必要が無く、電力を消費することがなく、省電力化を図ることができる。しかし、閉状態では永久磁石の磁力によってドアパネルを押圧し続けているので、閉状態においてドアパネルを開くには、永久磁石による磁力よりも大きな駆動力をドアパネルに与える必要がある。気密性を高めるために永久磁石の磁力を大きく設定した場合、ドアパネルを開き始めるためだけに駆動装置に大きな駆動力を発生可能なものを使用しなければならない。大きな駆動力を発生可能な駆動装置を使用できない場合、永久磁石の磁力を小さく設定しなければならず、気密性を高めることができない。錠等の保持装置の代わりとして永久磁石と強磁性体とを使用する場合には、気密性を高める場合よりも更に大きな磁力でドアパネルを押圧し続けねばならず、閉状態からドアパネルを開き始めるためには相当に大きな駆動力を発生可能な駆動装置を使用しなければならない。相当に大きな駆動力を発生させることが可能な駆動装置を設置できない場合には、磁力を小さくしなければならず、侵入者等がドアパネルを開くことができ、錠等の強固な保持装置の代用にはならない。また、手動によってドアパネルを駆動するドア装置でも、同様で、ドアパネルを侵入者等が開くことができないような磁力を永久磁石に発生させた場合、本来ドアパネルを開きたい者がドアパネルを開くことができず、また、このような者がドアパネルを開くことができるように永久磁石の磁力を設定すると、侵入者等が容易にドアパネルを開くことができる。同様な問題が、駅のプラットホームに設置される安全柵やプラットホームドア装置に特許文献1の技術を実施した場合にも生じる。即ち、悪戯などで安全柵やプラットホームドア装置の開閉体が開かれないように永久磁石に大きな磁力を発生させている場合には、駆動装置には大きな駆動力を発生させることが可能なものを使用しなければならず、大きな駆動力を発生可能な駆動装置を使用できない場合、永久磁石の磁力を小さく設定しなければならず、悪戯によって安全柵やプラットホームドア装置の開閉体を開くことができる。
【0005】
本発明は、省電力化を図りながら、閉状態において開閉体を強固に継続して吸引固定することができる上に、開閉体を開く必要のあるときには小さな駆動力で開閉体を開くことができる開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の開閉装置は、開口を通じて通行者が通行可能な開位置と、前記開口を通じて通行者が通行不能な閉位置との間で移動する開閉体を有している。開閉体としては、開閉装置がドア装置の場合には、ドアパネル、例えばスライドドアパネル、スイングドアパネル等種々のものに使用することができる。開閉体は、駆動手段によって移動させられるものとすることもできるし、手動によって移動させられるものとすることもできる。この開閉体の移動に伴って第1磁力保持手段が移動する。前記開閉体が前記閉位置に到達したとき、第2磁力保持手段が前記第1磁力保持手段に接近して位置する。例えば開閉体がスライドドアパネルであって、その駆動手段が、間隔をおいて配置された2つのプーリ間に張架された紐帯に前記スライドドアパネルが懸下され、前記プーリの一方を電動モータで正転または逆転させることによってスライドドアパネルが開位置と閉位置との間を移動するものの場合、前記紐帯に第1磁力保持手段を設け、閉位置に前記ドアパネルが到達したときに、前記第1磁力保持手段が到達している位置の近傍に第2磁力保持手段を固定する。プラットホームの安全柵やプラットホームのドア装置の場合も、同様である。開閉体がドア装置のスイングドアパネルの場合、スイングドアパネルに第1磁力保持手段が設けられ、閉位置にスイングドアパネルが位置するときの第1磁力保持手段の近傍に第2磁力保持手段を設ける。前記第1及び第2磁力保持手段の一方が磁力発生手段で構成され、前記第1及び第2磁力保持手段の他方が磁力によって吸引保持される磁力被吸引手段によって構成される。前記磁力発生手段は、前記第1及び第2磁力保持手段が接近して位置する状態において、非持続的に第1の極性の電流が供給されたとき、前記磁力被吸引手段を吸引するように持続的に着磁され、この着磁状態において非持続的に第2の極性の電流が供給されたとき、前記磁力被吸引手段を非吸引するように持続的に脱磁されるように構成されている。なお、磁力被吸引手段としては、磁力によって磁化される強磁性体製のものを使用することもできるし、前記磁力発生手段とは別に設けた磁力発生手段を使用することもできる。
【0007】
このように構成した開閉装置では、開閉体が閉位置に到達したときに、磁力発生手段に第1の極性の電流を非持続的に供給することによって、磁力発生手段が磁力を持続的に発生し、これによって磁力被吸引手段が吸引保持され、開閉体が継続的に押圧固定される。しかも、磁力発生手段が発生している磁力を大きく設定することによって、侵入者等が開閉体を開くことが不可能な状態とすることができる。そして、第2の極性の電流を非持続的に供給することによって、この大きな磁力を消失させることができ、開閉体を開く必要のあるとき、開閉体を小さな駆動力で開くことができる。従って、自動ドア装置やプラットホームの安全柵やプラットホームのドア装置の場合、開閉体の駆動装置に、閉位置にある開閉体を開くためだけに大きな駆動力を発生する駆動装置を設置する必要がない。手動のドア装置では、閉位置にある開閉体を侵入者等が開くことができないようにすることができるが、開閉体を開く必要のある者は、小さな力で開閉体を開くことができる。しかも、開閉体を吸引保持している状態とするためには、非持続的に第1の極性の電流を磁力発生手段に供給すればよく、開閉体を小さな駆動力で移動可能な状態とするためには非持続的に第2の極性の電流を磁力発生手段に供給すればよい。即ち、電動モータ等の駆動装置で開閉体を閉じる方向に押圧する自動ドア装置では、開閉体が閉位置にある間、継続して電動モータを駆動しなければならなかったのに対し、この開閉装置では電流の供給時間はごくわずかであるので、省電力化を図ることができる。
【0008】
磁力発生手段としては、例えば、次のような構成のものを使用することができる。強磁性体の本体部が磁力被吸引手段を吸引する吸引面を有している。この吸引面より本体部の内側に凹所が形成され、この凹所内に極性切換可能な磁石が配置されている。この極性切換可能な磁石の周囲に極性切換用のコイルが配置されている。この極性切換用のコイルに、上述した第1の極性の電流や第2の極性の電流が非持続的に供給される。凹所内において前記吸引面と前記極性切換可能な磁石との間に強磁性体製のブロックが配置されている。このブロックの周囲に永久磁石が配置されている。全ての永久磁石は、強磁性体のブロック側に同一の磁極が位置するように配置されている。
【0009】
前記開閉体が前記閉位置にあり、前記磁力発生手段が前記着磁状態における停電時に、前記第2の極性の電流を非持続的に前記磁力発生手段に供給する停電処理手段を設けることもできる。この停電処理手段を設けていないと、閉位置に開閉体が位置する状態において停電が生じると、第2の極性の電流を磁力発生手段に供給することができず、開閉体を閉位置から手動で移動させるのが困難となるが、停電処理手段を設けることによって、磁力発生手段の磁力を消失させることができ、容易に開閉体を移動させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、省電力化を図りながら、閉位置にある開閉体を吸引保持することができる上に、開閉体を開く必要のあるとき、閉位置にある開閉体を開位置に小さな駆動力で移動させることができ、開閉体に対する錠等の強固な保持機能を合わせ持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の自動ドア装置のドアパネルがドア開口を閉じている状態とドア開口を開いている状態の正面図である。
【図2】図1の自動ドア装置に使用しているマグネットクランプの正面図と縦断側面図である。
【図3】図1の自動ドア装置におけるドアパネルの磁力固定状態と開放状態とを示す図である。
【図4】図1の自動ドア装置の一部の回路のブロック図である。
【図5】図1の自動ドア装置における極性切換用コイルへの電流供給状態を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の自動ドア装置に使用しているマグネットクランプとスチールプレートとの縦断側面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の自動ドア装置に使用しているマグネットクランプとスチールプレートとの縦断側面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態の自動ドア装置に使用しているマグネットクランプとスチールプレートとの縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1実施形態の開閉装置は、自動ドア装置に本発明を実施したものである。この自動ドア装置は、図1(a)、(b)に示すように、両開きのスライドドア方式のもので、同図(a)に示すように間隔をおいて配置した壁面1a、1bの間に同図(b)に示すように形成された開口、例えばドア開口2を、その両側に配置した開閉体、例えばドアパネル4a、4bがスライドして開閉する。即ち、ドアパネル4a、4bは、ドア開口2を介して通行者が通行可能な開位置と、ドア開口を介して通行者が通行不能な閉位置との間をスライドする。ドアパネル4a、4bがドア開口2を閉じた閉状態では、ドアパネル4a、4bの先端部分(戸先部分)が互いに接触している。ドアパネル4a、4bがドア開口2を開閉するために、ドアパネル4a、4bの上方にドアパネル4a、4bのスライド方向に沿って配置した無目6内に、駆動手段、例えば駆動部8が配置されている。
【0013】
駆動部8では、無目6の水平方向(長さ方向)に沿って間隔をおいて駆動プーリ10と、従動プーリ12とが配置されている。これら駆動プーリ10と従動プーリ12との間に、紐帯、例えばベルト14が張架されている。駆動プーリ10がエンジン、例えば電動モータ16によって正転または逆転させられる。正転によって、ベルト14の上側部分が駆動プーリ10側から従動プーリ12側に向かって走行し、かつベルト14の下側部分が従動プーリ12側から駆動プーリ10側へ走行する。逆転によって、ベルト14の上側部分が従動プーリ12側から駆動プーリ10側に向かって走行し、ベルト14の下側部分が駆動プーリ10側から従動プール12側へ走行する。ベルト14の上側部分にドアパネル4aがドアハンガー18aによって懸下され、ベルト14の下側部分にドアパネル4bがドアハンガー18bによって懸下されている。従って、電動モータ16の正転、逆転に従って、ドアパネル4a、4bが図1(a)に示す閉位置と同図(b)に示す開位置との間を移動し、ドア開口2を開閉する。なお、符号20で示すのは、ドアサッシ部を構成するドア枠、符号22で示すのは、ドアパネル4a、4bの上縁に設けた戸車である。
【0014】
例えばベルト14の上側部分には、第1磁力保持手段、例えば磁力被吸引手段、具体的には強磁性体板、より具体的にはスチールプレート24が取り付けられている。また、無目6内には、第2磁力保持手段、例えば磁力発生手段、具体的にはマグネットクランプ26が取り付けられている。同図(b)に示すようにドアパネル4a、4bが開位置にある状態では、スチールプレート24とマグネットクランプ26とは離れて位置し、同図(a)に示すようにドアパネル4a、4bが閉位置にある状態では、スチールプレート24とマグネットクランプ26とは接近して位置している。但し、非接触である。このように、スチールプレート24とマグネットクランプ26とは、ドアパネル4a、4bの移動方向に沿って配置されている。
【0015】
スチールプレート24は、無目6の水平方向及び無目6の奥行き(ドアパネル4a、4bに対して直角な方向)にそれぞれ所定の寸法を有するプレート状のもので、その長さ方向が無目6の垂直方向に沿うように配置され、ベルト14の上側部分に結合されている。
【0016】
図2(a)、(b)に示すように、マグネットクランプ26は、概略直方体状の本体部28を有している。本体部28は、強磁性体、例えばスチール製である。この本体部28の吸引面29、即ちスチールプレート24と対向する面は、スチールプレート24の無目6の奥行き寸法にほぼ等しい奥行き寸法を有している。本体部28には凹所30が形成されている。凹所30は、吸引面29で開口し、吸引面29から本体部28の内部に向けて伸びて、その横断面形状が例えば矩形のものである。本体部28は、無目6の奥行き方向に形成された取付孔31に挿通されたボルト(図示せず)を介して無目6に固定されている。
【0017】
この凹所30の内奥に、極性切換可能な磁石、例えばアルニコ磁石32が配置されている。このアルニコ磁石32は、例えば直方体状に形成され、その吸引面29側にある面は、吸引面29よりも奥に位置している。アルニコ磁石32の外周囲には、極性切換用コイル34が設けられている。極性切換用コイル34は、アルニコ磁石32の外周面に取り付けたボビン36に巻回されている。極性切換用コイル34に第1の極性の電流、例えば正の電流を非持続的に、例えば50m秒だけ流すと、アルニコ磁石32の極性が変換されて、その変換された状態を維持する。また、極性が変換された状態で、極性切換用コイル34に第2の極性の電流、例えば負の電流を非持続的に、例えば50m秒だけ流すと、アルニコ磁石32の極性が元の極性に戻り、その戻った極性の状態を維持する。
【0018】
図3(b)に示すように、正の電流が供給される前には、S極が吸引面29側を向き、N極が凹所30の内奥を向くようにアルニコ磁石32は配置されている。正の電流が非持続的に供給された後には、同図(a)に示すように、アルニコ磁石32では、N極が吸引面29側を向き、S極が凹所30の内奥を向く。
【0019】
アルニコ磁石32の吸引面29側の面と吸引面29との間の空間の中央を埋めるように強磁性体製、例えばスチール製のマグネットブロック38がアルニコ磁石32と接触して配置されている。マグネットブロック38も直方体状で、アルニコ磁石32と共にボルト40によって本体部28に固定されている。
【0020】
マグネットブロック38と凹所30の内壁面との間の隙間には、複数、この実施形態では6個の永久磁石、例えばネオジウム磁石42が、マグネットブロック38の外周囲を囲うように配置されている。これらネオジウム磁石42も直方体状のもので、図3(b)に示すように、アルニコ磁石32に正の電流が供給される前の状態において、アルニコ磁石32の吸引面29側の磁極Sと逆の極性Nがマグネットブロック38側に面するように、全て配置されている。
【0021】
このように構成しているので、同図(b)に一点鎖線で示すように正の電流の供給前には、アルニコ磁石32、マグネットブロック38、ネオジウム磁石42、本体部28によって磁気閉ループが構成されて、マグネットブロック38の吸着面29側の表面が脱磁状態になる。従って、この状態において、ドアパネル4a、4bが閉位置にあり、スチールプレート24がマグネットクランプ26に接近しても、スチールプレート24はマグネットクランプ26に吸引されない。
【0022】
ドアパネル4a、4bが閉位置に到達したとき、極性切換用コイル34に非持続的に正の電流を供給すると、図3(a)に示すようにアルニコ磁石32の極性は、吸引面29側がN、内奥側がSとなり、同図(a)に実線で示すようにスチールプレート24内を磁力が通過して磁気閉ループが構成され、スチールプレート24が磁力で継続して吸引保持される。即ち、着磁される。その結果、ドアパネル4a、4bが吸引保持され、気密性が保たれる。ごくわずかな時間だけ正の電流を極性切換用コイル34に流すことによってドアパネル4a、4bが吸引保持状態となるので、省電力化を図ることができる。また、スチールプレート24とマグネットクランプ26とは接近しているが、非接触であるので、ドアパネル4a、4bを吸引保持する際に、騒音が発生することはない。また、この吸引保持状態において、侵入者等がドアパネル4a、4bを移動させようとしても、移動が不可能な吸引保持状態となるように、スチールプレート24及びマグネットクランプ26との吸引面積等が設定されている。従って、スチールプレート24及びマグネットクランプ26は、錠の代わりとして使用可能である。特に、一般的な通電施錠タイプの電気錠を使用する場合には、施錠した状態を維持するためには、電気錠のソレノイドに電流を供給し続けねばならないが、マグネットクランプ26とスチールプレート24との使用では、ごく短期間だけ電流を供給するだけでよく、電気錠の代替物として使用した場合でも、省電力化を図ることができる。
【0023】
この吸引保持状態において、負の電流を非持続的に極性切換用コイル34に供給すると、その後、同図(b)に示すようにアルニコ磁石32の吸引面29側の磁極がS極に、内奥側の磁極がN極となり、上述したようにスチールプレート24内を磁力が通過することなく、マグネットクランプ26内で磁気閉ループが構成され、スチールプレート24の吸引保持が解かれる。従って、ドアパネル4a、4bを閉位置から開位置に移動させる前に、負の電流を非持続的に極性切換用コイル34に供給すると、脱磁され、ドアパネル4a、4bは移動可能となる。その結果、電動モータ16は、マグネットクランプ26が発生していた磁力よりも大きな駆動力を出力せずに、わずかな駆動力でドアパネル4a、4bを駆動することができる。
【0024】
図4は、この自動ドア装置の一部のブロック図で、極性切換用コイル34に非持続的に正または負の電流を供給するために、切換スイッチ44、46が設けられている。これら切換スイッチ44、46は、商用交流電源50によって駆動される直流電源48と極性切換用コイル34との間に介在している。これら切換スイッチ44、46を切換制御するために、例えばCPUによって構成された制御部52が設けられている。制御部52は、ドアパネル4a、4bが閉位置に到達したことにより、図示していないドアコントローラから固定指示を受けると、切換スイッチ44、46を切換制御して、極性切換用コイル34に図5の前半に示すように非持続的に正の電流を流す。また、制御部52は、ドアパネル4a、4bが吸引保持されている状態で、ドアパネル4a、4bを開く直前にドアコントローラから開放指示を受けると、切換スイッチ44、46を切換制御して、極性切換用コイル34に図5の中途に示すように非持続的に負の電流を流す。
【0025】
なお、このマグネットクランプ26を用いたドアパネル4a、4bの吸引保持では、停電が生じて、直流電源48が動作しない場合、ドアパネル4a、4bが吸引保持されたままとなり、自動ドア装置の外部に人が出ることができなくなる。そこで、直流電源48内には、バッテリーのような停電用電源部(図示せず)が内蔵されており、停電時でも制御部52を動作可能としている。また、停電検出手段、例えば停電検出器54が商用交流電源50に設けられ、停電検出器54が停電を検出したとき、制御部52は、図5の後半に示すように、直流電源48内のバッテリーから負の電流が極性切換用コイル34に非持続的に供給されるように、切換スイッチ44、46を切り換える。これによって、ドアパネル4a、4bの吸引保持は解除される。その結果、例えば人が手で操作することによってドアパネル4a、4bを開位置に移動させることができ、停電時に人が自動ドア装置から外部に出ることができる。吸引保持を解除するために直流電源48内のバッテリーから極性切換用コイル34に電流は非持続的に供給されるだけであるので、直流電源48内のバッテリーとして容量の小さいものを使用できるし、バッテリーの交換を長期間に亘って行う必要がない。直流電源48内のバッテリー、制御部52、停電検出器54が、停電処理手段を構成している。なお、停電用電源部として、バッテリーに代えて、コンデンサを設け、通電時には、このコンデンサを充電し、停電時には、このコンデンサを放電させることによって極性切換用コイル34に電流を非持続的に供給することができる。
【0026】
第2の実施形態の自動ドア装置は、図6に示すように、スチールプレート24におけるマグネットクランプ26と対向する面にある被吸引面24aがテーパ面に形成され、この被吸引面24aを吸引しやすいように、本体部28の吸引面29、マグネットブロック38の吸引面29側の面も、テーパ面に形成されている以外、第1の実施形態の自動ドア装置と同様に構成されている。同等部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0027】
第3の実施形態の自動ドア装置は、図7に示すように、スチールプレート24におけるマグネットクランプ26と対向する面にある被吸引面24bが角錐台状の凹所24bに形成され、この凹所24bを吸引しやすいように、本体部28の吸引面29、マグネットブロック38の吸引面29側も、凹所24bに侵入する角錐台型の凸部に形成されている以外、第1の実施形態の自動ドア装置と同様に構成されている。同等部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
第4の実施形態の自動ドア装置では、図8に示すように、スチールプレート24が、その長さ方向を水平とするようにベルト14の上側部分に結合されている。それに伴い、マグネットクランプ26が第1の実施形態のマグネットクランプ26よりも90度反時計方向に回転して、スチールプレート24の上方に位置する状態で配置されている。即ち、マグネットクランプ26とスチールプレート24とは、ドアパネル4aの移動方向に対して直交するように配置されている。さらに、マグネットクランプ26のスチールプレート24に対する吸引面に摩擦材70を設けてある。これら以外、第1の実施形態の自動ドア装置と同様に構成されている。同等部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。摩擦材70は、マグネットクランプ26とスチールプレート24とが直接に接触したときに発生する摩擦力よりも、摩擦材70とスチールプレート24とが接触したときに発生する摩擦力が大きくなる摩擦係数を持つもので、磁力を通過させるものである。
【0029】
この構成では、マグネットクランプ26がスチールプレート24を吸引固定した場合、上方にスチールプレート24が引き上げられるので、ドアパネル4aをドアパネル4bに押しつける押しつけ力は発生していない。そこで、侵入者等がドアパネル4aを開こうとしたときに、摩擦材70とスチールプレート24との間で大きな摩擦力を発生させて、ドアパネル4aを開きにくくするために、摩擦材70をマグネットクランプ26の吸引面29に設けてある。マグネットクランプ26とスチールプレート24との適切な材質、表面処理、形状等の選択によって、マグネットクランプ26とスチールプレート24とを直接に接触させても大きな摩擦力が発生する場合には、摩擦材70は不要である。また、摩擦材70をスチールプレート24側に設けて、摩擦材70とマグネットクランプ26の吸引面29との間で摩擦力を発生させるように構成することもできる。また、摩擦材70に代えて、マグネットクランプ26の吸引面29とスチールプレート24における吸引面と対向する面との一方に他方に向けて突出した凸部を設け、この凸部が侵入可能な凹部を他方に設け、スチールプレート24がマグネットクランプ26に吸着されたとき、凹部に凸部が侵入するように構成して、ドアパネル4aが開かれることを防止するようにすることも可能である。
【0030】
なお、マグネットクランプ26を、スチールプレート24の下方に位置するように、第1の実施形態のマグネットクランプ26よりも90度時計方向に回転させた状態にマグネットクランプ26を取り付けることもできる。また、スチールプレート24をその長さ方向が水平方向に沿うように配置したままで、この実施形態のマグネットクランプ26を図8の紙面の表面から裏面方向に90度回転させた状態でも、図8に紙面の表面からさらに表面方向に90度回転させた状態でも、マグネットクランプ26を取り付けることができる。
【0031】
第1の実施形態においても、スチールプレート24は、その長さ方向が上下方向に沿うように取り付けたままで、マグネットクランプ26を図1の紙面の表面から裏面方向に90度回転させた状態にも、図1に紙面の表面からさらに表面方向に90度回転させた状態にも、取り付けることができる。
【0032】
上記の各実施形態では、アルニコ磁石32及びマグネットブロック38は直方体状のものを使用したが、これに限ったものではなく、例えば円柱状のものを使用することもできる。この場合、ネオジウム磁石42は、マグネットブロック38の周囲に環状に配置される。
【0033】
上記の各実施形態では、スチールプレート24をドアパネル4aと共に移動させたが、ドアパネル4bと共に移動させることもできる。この場合、スチールプレート24はベルト14の下側部分に取り付けられ、第1乃至3の実施形態では、マグネットクランプ26は、吸引面29がスチールプレート24を向くように、各図に示したのとは逆向きに取り付ける。上記の各実施形態では、スチールプレート24をドアパネル4aと共に移動させて、マグネットクランプ26を固定したが、逆にスチールプレート24を固定し、マグネットクランプ26をドアパネル4aまたは4bと共に移動するように構成することもできる。また、スチールプレート24に代えて、マグネットクランプ26と同一構成の別のマグネットクランプをドアパネル4aまたは4bに取り付けることもできる。
【0034】
上記の各実施形態では、2つのドアパネル4a、4bを用いた両開きスライドドア方式の自動ドア装置に本発明を実施したが、1枚のドアパネルを用いる片引きスライドドア方式の自動ドア装置に本発明を実施することもできるし、例えばスイング方式の自動ドア装置に本発明を実施することができる。スライド方式の自動ドア装置やスイングドア方式の自動ドア装置において、これらを設置しているビルや店舗が深夜等に閉鎖される場合に、ドアパネルを施錠する場合にも、スチールプレート24とマグネットクランプ26とを使用できる。また、各実施形態では、自動ドア装置に本発明を実施したが、これに限ったものではなく、手動でドアパネルを開閉するドア装置に、この発明を実施することもできる。また、駅のプラットホームに配置される安全柵やプラットホームドア装置に、本発明を実施することもできる。
【0035】
第1乃至第3の実施形態では、マグネットクランプ26がスチールプレート24を固定している状態でも、両者を非接触としたが、固定している状態で両者を接触させることもできる。また、上記の各実施形態では、ネオジウム磁石42は、そのN極がマグネットブロック38側を向くように取り付けたが、そのS極がマグネットブロック38側を向くように取り付けることもできる。但し、その場合、アルニコ磁石32は、正の電流が供給される前の状態で、N極が吸引面29側を向き、S極が凹所30の内奥に位置するように配置する。上記の各実施形態では、正の電流を非持続的に供給したときに、スチールプレート24を吸引保持し、負の電流を非持続的に供給したとき、スチールプレート24を吸引保持から開放するように構成したが、極性切換用コイル34の巻線方向を変更することによって、負の電流を非持続的に供給したときに、スチールプレート24を吸引保持し、正の電流を非持続的に供給したとき、スチールプレート24を開放するように構成することもできる。上記の各実施形態では、ドアパネル4a、4bは、電動モータ16によって駆動されるものを示したが、これに限ったものではなく、例えばリニアモータによって駆動するものとすることもできる。上記の第1の実施形態では、停電が検出されると、自動的に吸引保持を解除する構成を採用したが、例えばプラットホームドア装置や安全策の場合には停電が検出されても自動的に吸引保持を解除する必要がない場合もある。このような場合には、停電検出器54を除去することができる。また、自動ドア装置の場合でも、停電が検出されると自動的に吸引保持を解除するか、停電が検出されても吸引保持を維持するかを、選択できるように、制御部52に切換スイッチ等を設けることもできる。
【符号の説明】
【0036】
2 ドア開口(開口)
4a 4b ドアパネル(開閉体)
24 スチールプレート(第1磁力保持手段、磁力被吸引手段)
26 マグネットクランプ(第2磁力保持手段、磁力発生手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を介して通行者が通行可能な開位置と、前記開口を通じて前記通行者が通行不能な閉位置との間で移動する開閉体と、
この開閉体の移動に伴って移動する第1磁力保持手段と、
前記開閉体が前記閉位置に到達したとき、前記第1磁力保持手段に接近して位置する第2磁力保持手段とを、
具備し、前記第1及び第2の磁力保持手段の一方が磁力発生手段で構成され、前記第1及び第2磁力保持手段の他方が磁力によって吸引保持される磁力被吸引手段によって構成され、前記磁力発生手段は、前記第1及び第2の磁力保持手段が接近して位置する状態において、非持続的に第1の極性の電流が供給されたとき、前記磁力被吸引手段を吸引するように持続的に着磁され、この着磁状態において非持続的に第2の極性の電流が供給されたとき、前記磁力被吸引手段を非吸引するように持続的に脱磁されるように構成されている
開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載の開閉装置において、前記開閉体が前記閉位置にあり、前記磁力発生手段が前記着磁状態における停電時に、前記第2の極性の電流を非持続的に前記磁力発生手段に供給する停電処理手段を備える開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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