説明

間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の内部改質ユニット

【目的】 締め付け圧力を略均等に分散させて、電極との均一な接触を得ることができる間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の内部改質ユニットを提供することを目的とする。
【構成】 枠体10内に改質触媒8が充填され、この枠体10内の中央部に原料ガスの流れ方向を制御する原料ガス仕切板7を設けた内部改質ユニット本体と、この内部改質ユニット本体に取り付けられる上下の密閉板11a・11bとを有する間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の内部改質ユニット1において、上記原料ガス仕切板7は、上下方向に弾性変形可能な弾性部材で構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の内部改質ユニットに関し、特に内部改質ユニットの原料ガス仕切板の構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】溶融炭酸塩型燃料電池は作動温度が約650℃と高温であり、通常燃料として使用される天然ガス(主成分:メタン)の改質温度である800℃に近いため、電池スタック内で燃料の改質を行う内部改質方式が可能である。この内部改質方式は、燃料改質装置が不要であるためコンパクト化が可能であると共に、電池反応の際に生じる熱や水を、改質反応に必要な熱や水として利用することができる等の優れた特長があるため外部改質方式に比べて高い発電効率が期待できる。
【0003】この内部改質方式は、改質触媒の配置方法により直接内部改質方式と,間接内部改質方式とに分類される。前者は、燃料極背面の燃料ガス通路に改質触媒を設置した電池であり、水素が消費される場所に改質触媒が設けられているため改質効率が高くより高い発電効率が期待できるが、改質触媒が電解質中の溶融炭酸塩により汚染されやすく特性劣化が大きいという問題がある。一方、後者は、数セル(通常3〜6セル)毎に改質触媒を充填した改質容器を設置した電池であり、改質容器(即ち、改質触媒)と電解質(即ち、溶融炭酸塩)とが隔離して配置されているため、前者のような溶融炭酸塩による改質触媒の汚染の問題がなく長寿命が期待できるという特長がある。
【0004】ところで、従来の間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池に用いられる内部改質ユニットは、図5及び図6に示すように、原料ガスを改質ユニット内に導入する原料ガス導入管61と,改質ユニット内での改質反応が均一になるように前記原料ガス導入管61から導入された原料ガスの流れを制御する原料ガス仕切板71と,この原料ガス仕切板71の周囲に配される改質触媒部84(即ち、コルゲート板82とガス分離板83との積層部)と、この改質触媒部84の周面を取り囲む額縁状の枠体100とから成る内部改質ユニット本体と、この内部改質ユニット本体の上下両面に取り付けられる密閉板110a・110bとから構成されている。前記原料ガス仕切板71は、前記枠体100と高さ寸法が同じになるように構成され、制御壁71の上下両面はそれぞれ上下の密閉板110a・110bに溶接され、制御壁71の一端は前記枠体100の内面に溶接されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記図5及び図6に示した従来の内部改質ユニットは、内部改質ユニット本体の上下両面を、上下の密閉板110a・110bを取り付けてスタックを構成する際に、以下のような問題が生じる。即ち、前記枠体100と原料ガス仕切板71との間に設けられる改質触媒部84の高さ寸法が、前記枠体100,及び原料ガス仕切板71の高さ寸法よりも低い場合には、上下の密閉板110a・110bを取り付ける際に前記原料ガス仕切板71に締め付け圧力が集中してかかることになる。したがって、内部改質ユニットと各電極とが均一に接触せずに前記原料ガス仕切板71,及び枠体100に相当する領域に集中して電流が流れるので、安定した電池特性を得ることができないという課題を有する。尚、前記改質触媒部84の高さ寸法が、前記枠体100,及び原料ガス仕切板71の高さ寸法よりも高い場合には、上下の密閉板110a・110bを取り付けてスタックを構成する際に、弾力性を有する前記改質触媒部84が前記枠体100,及び原料ガス仕切板71の高さ寸法と略同じ高さになるまで収縮する。したがって、締め付け圧力が略均等に分散するため、前記のような問題は生じない。
【0006】本発明は上記課題に鑑み、締め付け圧力を略均等に分散させて、電極との均一な接触を得ることができる間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の内部改質ユニットを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するため、枠体内に改質触媒が充填され、この枠体内の中央部に原料ガスの流れ方向を制御する原料ガス仕切板を設けた内部改質ユニット本体と、この内部改質ユニット本体に取り付けられる上下の密閉板とを有する間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の内部改質ユニットにおいて、上記原料ガス仕切板は、上下方向に弾性変形可能な弾性部材で構成されていることを特徴とする。
【0008】
【作用】上記構成によれば、原料ガス仕切板が弾性部材で構成されているので、改質触媒部(即ち、コルゲート板と分離板との積層部)の高さ寸法が前記原料ガス仕切板の高さ寸法よりも低い場合でも、改質触媒部(即ち、コルゲート板と分離板との積層部)と同じ高さ寸法になるように弾性変形する。したがって、上下の密閉板を取り付けてスタックを構成する場合に、締め付け圧力が従来のように、原料ガス仕切板に集中することがなく略均等に分散することになる。その結果、内部改質ユニットが各電極と略均一に接触することになるので、長期にわたって安定した電池特性を得ることができる。
【0009】
【実施例】
(第一実施例)図1は本発明の第一実施例に係る内部改質ユニットを用いた間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の概略図、図2は内部改質ユニットの分解斜視図、図3は図2の内部改質ユニットのA−A線断面図である。この間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池は、図1に示すように、電解質を挟んでアノードとカソードとを配置した単セル(いずれも図示せず)を、セパレータ(図示せず)を介して複数積層させ、且つ、改質触媒を充填した内部改質ユニット1を数セル(例えば、5セル)毎に介挿させて成るスタック2を、上下の締付板3a・3bを介してスプリング4a・4b,及びナット5a・5bで締め付けた構造である。尚、前記スタック2の各側面には、セラミックス製の絶縁フレーム(図示せず)を介してステンレス製のマニホールド(図示せず)がそれぞれ取り付けられている。
【0010】上記単セルは、炭酸リチウムと炭酸カリウムとの共晶塩をリチウムアルミネートを主成分とした多孔質セラミックス材中に保持した電解質板を挟んで、ニッケルとアルミニウムとの合金から成るアノードと,酸化ニッケル焼結体を主体とするカソードとを配置した構造である。各単セルのアノードは、前記セパレータによって、隣接する単セルのカソードと電気的に接続していて、これによって積層した全ての単セルが電気的に直列に接続することになる。
【0011】上記内部改質ユニット1は、図2に示すように、原料ガスを改質ユニット内に導入する原料ガス導入管6と,改質ユニット内での改質反応が均一になるように前記原料ガス導入管6から導入された原料ガスの流れを制御するステンレス製の原料ガス仕切板7と,この原料ガス仕切板7の周囲に配される改質触媒部8と、この改質触媒部8の周面を取り囲む額縁状の枠体10とから成る内部改質ユニット本体と、この内部改質ユニット本体の上下両面に締め付けられる密閉板11a・11bとから構成されている。尚、前記枠体10の側面には、改質後の水素を主成分とするガスをアノードガスリターンマニホールド(図示せず)に排出する複数(図示例では4個)の改質ガス排出口10aが設けられている。
【0012】上記原料ガス仕切板7は、図3に示すように、制御壁7の上下両面は上下の密閉板11a・11bとそれぞれ溶接され、一端は前記枠体10の内面と溶接されている。また、この原料ガス仕切板7は、ステンレスを側面視Σ状に折り曲げられて構成されているので、上下の密閉板11a・11bで締め付けてスタックを構成する場合には、前記改質触媒部8と同じ高さ寸法になるように変形する。したがって、改質触媒部の高さ寸法が、前記枠体10,及び原料ガス仕切板7の高さ寸法よりも低い場合でも、従来のように締め付け圧力が原料ガス仕切板7に集中することがなく略均等に分散することになる。その結果、内部改質ユニットが各電極と略均一に接触することになるので、長期にわたって安定した電池特性を得ることができる。
【0013】上記改質触媒部8は、図3に示すように、改質触媒(例えば、ニッケル系触媒)を保持したコルゲート板80と,ガス分離板81とが積層された構造であり、前記改質触媒部8の高さ寸法が、前記枠体10,及び原料ガス仕切板7の高さ寸法よりも高い場合でも、上下の密閉板11a・11bを取り付ける際に、弾力性を有する前記改質触媒部8が前記枠体10,及び原料ガス仕切板7の高さ寸法と略同じ高さになるまで収縮する。したがって、締め付け圧力が略均等に分散するため、前記のような問題は生じない。
〔その他の事項〕上記実施例においては、原料ガス仕切板7は、Σ状に折り曲げて構成したが、本発明は何らこれに限定されるものではなく、例えば、Z状や階段状等の形状にすることも勿論可能である。
【0014】(第二実施例)図4は本発明の第二実施例に係る内部改質ユニットを用いた間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の概略平面図である。尚、上記第一実施例と同様の機能を有する構成部分については同一番号を付して説明を省略する。この間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の各側面には、セラミックス製の絶縁フレーム(図示せず)を介してステンレス製のアノードガスリターンマニホールド14,アノードガス排出マニホールド15,カソードガス供給マニホールド16,カソードガス排出マニホールド17がそれぞれ取り付けられている。また、前記アノードガス排出マニホールド15にはアノードガス排出管18が、カソードガス供給マニホールド16にはカソードガス供給管19が、カソードガス排出マニホールド17にはカソードガス排出管20がそれぞれ接続されている。
【0015】上記内部改質ユニット1は、原料ガス仕切板7が、L型の原料ガス仕切板7aと,直線状の原料ガス仕切板7bとに分割され、且つ、改質ガス排出口12が枠体10に1個のみ設けられ、上記第一実施例の改質ガス排出口10aよりも十分小さくなっており、前記改質ガス排出口12近傍のアノードガスリターンマニホールド14内には、バッフル板13が取り付けられている他は、上記第一実施例の内部改質ユニット1と略同様の構成である。
【0016】上記第二実施例によれば、改質ガス排出口12が十分小さく構成されているので、改質ユニット1内の圧力損失が十分大きくなる。したがって、改質ユニット1の製造精度による圧力損失を十分無視することが可能になり、スタック2内に設置された各改質ユニット1へ原料ガスを略均一に分配することができる。また、カソードガス排出側近傍の高温部を原料ガスが流れるため、原料ガス改質率を向上させることができる。
【0017】更に、改質ガス排出口12の近傍にはバッフル板13が設けられているので、改質ガスをアノードガスリターンマニホールド14で均等に分散させ、スタック2内の各セルへの改質ガスを略均等に分配することができる。
【0018】
【発明の効果】以上の本発明によれば、原料ガス仕切板が弾性部材で構成されているので、改質触媒部(即ち、コルゲート板と分離板との積層部)の高さ寸法が前記原料ガス仕切板の高さ寸法よりも低い場合でも、改質触媒部(即ち、コルゲート板と分離板との積層部)と同じ高さ寸法になるように弾性変形する。したがって、上下の密閉板で締め付けてスタックを構成する場合に、締め付け圧力が従来のように、原料ガス仕切板に集中することがなく略均等に分散することになる。その結果、内部改質ユニットが各電極と略均一に接触することになるので、長期にわたって安定した電池特性を得ることができるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例に係る内部改質ユニットを用いた間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の概略図である。
【図2】本発明の第一実施例に係る内部改質ユニットの分解斜視図である。
【図3】図2の内部改質ユニットのA−A線断面図である。
【図4】本発明の第二実施例に係る内部改質ユニットを用いた間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の概略平面図である。
【図5】従来の内部改質ユニットの分解斜視図である。
【図6】図5の内部改質ユニットのX−X線断面図である。
【符号の説明】
1 内部改質ユニット
7 原料ガス仕切板
8 改質触媒部
10 枠体
11a・11b 密閉板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 枠体内に改質触媒が充填され、この枠体内の中央部に原料ガスの流れ方向を制御する原料ガス仕切板を設けた内部改質ユニット本体と、この内部改質ユニット本体に取り付けられる上下の密閉板とを有する間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の内部改質ユニットにおいて、上記原料ガス仕切板は、上下方向に弾性変形可能な弾性部材で構成されていることを特徴とする間接内部改質溶融炭酸塩型燃料電池の内部改質ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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