説明

関節炎の全身処置のための組成物および方法

【課題】自己炎症、例えば全身発症若年性特発性関節炎(SOJIA)を患う患者に見られる関節炎関節を処置する製剤の提供。
【解決手段】IL−1βとIL−1β受容体との間の相互作用を遮断するIL−1受容体アンタゴニストの組換え形態物のようなインターロイキン−1受容体アンタゴニストタンパク質からなる、インターロイキン−1βの生物学的利用能を低下させる1種もしくはそれ以上の活性作用物質を有効成分として含んでなる製薬学的製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的作用性および全身処置組成物の治療的使用、そしてさらに具体的には関節の炎症の全身処置のための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
若年性リウマチ様関節炎(“JRA”)または若年性慢性関節炎(“JCA”)とも呼ばれる若年性特発性関節炎(“JIA”)は、小児期で最も一般的なリウマチ疾患および短期および長期双方の障害の重要な原因である。「JIA」の用語は、それぞれが種々の原因を有しそして種々の宿主反応を起こす疾患の異種群を含む。しかし、すべてが、外部抗原との接触により誘発されるらしい免疫−炎症病理に依存すると考えられる特発性周辺関節炎の伸展を特性とする。JIAは、三種の主要な疾患症候型に分類される:(1)少数関節炎(oligoarthritis);(2)多発性関節炎;(3)全身発症若年性多発性関節炎(以後「SOJIA」と称する)。それら三群それぞれは、疾患の最初の六ヵ月間の臨床症候および症状の型により定義される。
【0003】
既知のJIAの中で、発症の一次様式に基づくすべての三種の主要群は以下のように考えられる:(1)「自己免疫病因」を有し、そして(2)複雑、非メンデル性の遺伝子形質に従う。基となる自己免疫の証拠は、患者の血清中の自己抗体および/または免疫複合体の存在から主として導かれる。抗核抗体は、高い割合で少数関節炎、そして低い程度で多発性関節炎発症を患う小児中に存在し、そしてそれらの抗体はブドウ膜炎の進展の高い危険をもたらす。細胞質および細胞外成分、例えばコラーゲンに対するその他の自己抗体も記載されている。リウマチ様因子(RF)は、JIAを患う小児の約3%で検出され、そしてそれらの自己抗体の存在は、疾患が成人発症リウマチ様関節炎から区別できない多発性関節炎発症患者の下位群を規定する(非特許文献1)。
【0004】
各種のT細胞改変が少数関節炎を罹患する主として小児の血液および滑液内に記載されているが、サイトカイン産生の一貫したパターンは発見されていない。少数関節炎および多発性関節炎患者の双方において、可溶性IL−2RおよびIL−1βの増加が血液中で見られた。JIAのすべて三形態の中で、TNF−αおよび可溶性TNFαR(p55/75)は、血清および/または滑液(SF)内で上昇することが見出された。SOJIA患者では、特に体温の急上昇の前の血中にIL−6の異常な発現が記載され、そしてIL−6レベルは疾患の全身的活性と、関節炎の展開と、そして急性相反応因子の増加と関連する(非特許文献2)。IL−6分解はSOJIA患者内で見られる線型増殖遅延、血小板増加症および貧血症を媒介すると提案されている(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、および非特許文献10)。
【0005】
HLA分離に関するデータは、少数関節炎および多発性関節炎発症JIAの場合に疾患の複合した病原病因論への遺伝的基礎を示唆する。しかし、SOJIAの研究は、一貫しない結果となった。最後に、ウイルスおよび細菌の両者が、小児における慢性関節炎と関連すると記載されている。風疹およびパルボウイルスB19は、生物体の持続に従属して、または免疫反応の引き金を引いて慢性関節炎を起こすことができ、それはワクチン接種後関節炎に場合にも同様に記載されている。
【0006】
SOJIAは、すべてのJIAの場合の約10%を占める。SOJIAの経過および予後は種々であり。患者の50%は病状の緩解を伴って単一相経過を取り、他方で残りの50%は、長期の再発および鎮静過程ならびに多発性慢性関節炎の非常に重い形態に展開する。SOJIAの患者は、致命的合併症となり得る食血細胞症候群に展開する高い危険も示す(非特許文献1)。
【0007】
SOJIAを患う小児は、通常数週間から数年間で関節炎への展開が続く重い全身症候(発熱および発疹)を示す。本疾患の目立つ特質である高い急上昇発熱には、通常1〜2回上昇/日の毎日のパターンが続く。発熱がないと患者はいかにも軽快したように見えるが、発熱急上昇と共に非常に不調となる。多くの患者で、発熱はサーモン・ピンクの発疹を伴い、それは発熱と同時に目立つようになる。それに加えて、SOJIAを患う小児は、肝脾腫大、リンパ節障害、心膜炎およびその他の漿膜炎を発現を有することがある。それらの全身発現は、数週間から数カ月間継続しそして結局は慢性関節炎の発現に落ち込む。患者の約50%は少数関節炎の関与を示しそして最後には回復する。別の半分は、多発性パターンに進展し、その予後はその疾患経過の六ヵ月で罹患した関節の数と相関する。SOJIAを罹患した小児の48%までが診断以後10年間で活性関節炎となる(非特許文献1、および非特許文献11)。
【0008】
SOJIAの診断を確定するために利用できる特定の試験も、その臨床経過を確認するための既知の診断的指標もない。発熱、貧血、白血球増加症および上昇した赤血球沈降速度(ESR)が、この疾患の主要な初期特徴であり、時には診断が確定できるまで数カ月も継続する。それらの症状は非特異性でありそして感染症、悪性腫瘍およびその他の疾患と類似することがあるので、患者は、一連の非常に経費がかかる診断試験および長期の入院を受けることになる。
【0009】
SOJIAを患う患者での最も重い合併症の一つは、マクロファージ活性化症候群(MAS)としても知られる食血細胞症候群の展開である(非特許文献1)。感染および腫瘍性疾患の範囲内でも同様に起こり得る食血細胞症候群は、重大な病的状態および/または死亡と関連する。特にSOJIAの範囲内でのその病因は未知である。MASの家族性の場合は、パーフォリン(標的細胞への細胞毒性T細胞/天然キラー細胞によるグランザイムの放出に関与する)またはRab27(グランザイム小胞顆粒消失の制御に関与する)のような遺伝子内の変異によるウイルスキリングの欠失の結果として起きる。
【非特許文献1】Cassidy,JT and Ross,E.2001,Text Book of Pediatric Rheumatology,第4版,Books on Demand Publishers,Visby,Sweden;218−321ページ
【非特許文献2】Yokata,S.2003,“Interleukin 6 as a therapeutic target in sytemic−onset juvenile idiopathic arthritis”,Curr Opin.Rheumatol 15:581−586
【非特許文献3】de Benedetti F.et al.,1991,Arthritis Rheum 34:1158−1163
【非特許文献4】Mangge,H,et al.,1999.J.Interferon Cytokine Res 19:1005−1010
【非特許文献5】Ozen S,et al.,1997.Clin Rheumatol 16:173−178
【非特許文献6】de Benedetti F.et al.,1999.J Rheumatol 26:425−431
【非特許文献7】Muller K,et al.1998.Br J Rheumatol 37:562−569
【非特許文献8】Shahin A et al.,2002.Rheumatol Int 22:84−88
【非特許文献9】de Benedetti F,et al.,1992.Clin Exp Rheumatol 10:493−498
【非特許文献10】Muzaffer M.et al.,2002.J.Rheumatol 29:1071−1078
【非特許文献11】Lomater C,et al.,2000,J.Rheunmatol 27:491−496
【発明の開示】
【0010】
発明の要旨
従って、SOJIAは特定の処置が決定されていない未知病因の慢性炎症性疾患のままである。広範な研究にもかかわらず、SOJIAを患う患者の複数薬による処置は、少数関節炎及び多発性関節炎のものと同様であり、それは疾患の相(全身相に対する関節炎相)および関与の範囲に依存する。少数の患者は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)で軽快するが、大部分の小児は症状を制御するために経口および/または非経口ステロイドならびにメトトレキセート(methotrexate)の使用を必要とする。静脈内免疫グロブリン(IVIG)は、治療に不応性の場合に使用されている。最近では、抗TNF治療(例えばエタネルセプト(etanercept)およびインフリキシマブ(infliximab)がそれらの治療法に加えられた。それにもかかわらず、それらの医薬に関連するいくつかの限界および危険がある。例えば、免疫抑制性医薬、例えばメトトレキセートおよびステロイドを用いるそれら患者の長期処置は、ウイルス感染を排除する患者の能力の障害と関連があると報告されている。静脈内免疫グロブリン処置は、血液誘導製品の輸液と関連する危険を伴う。本発明は、SOJIA患者が同様に反応せずそして症状を制御するためにJIAの他の型よりも高い抗TNF作用物質の投与を必要とすることを発見した。従って、SOJIA疾患に対する効果的な薬剤効果の検証に対する継続的な要求がある。
【0011】
IL−1遮断は、自己免疫疾患を伴う炎症性関節炎を患う患者を処置するための効果的な作用物質として報告されている。臨床試験は、リウマチ様関節炎を患う成人および若年性関節炎の種々の型を患う小児に関して行われた。組換えヒトIL−1受容体アンタゴニストであるアナキンラ(Anakinra)(Kineret(R)、Amagen製造)は、IL−1とその受容体との相互作用を遮断する能力を有し、従ってIL−1の細胞反応を遮断する。アナキンラを用いる臨床試験は、重いリウマチ様関節炎を患う患者で行われた。一日あたり150mgで、American College of Rheumatology指数に基づいて43%の反応率が得られ、これに比較して偽薬群では27%であった。しかし、IL−1アンタゴニストを用いる臨床試験は、関節炎を患うかまたは患っていない場合に発熱および/もしくは発疹の存在により定義される、疾患の全身相の間に全身発症関節炎を患う小児または成人では行われなかった。さらに、IL−1は、SOJIA疾患では意味のある役割を持たないと報告されている(de Benedetti F et al.,1995,“Circulating levels of interleukin 1 beta and of interleukin 1 receptor antagonist in systemic juvenile chronic arthritis,”Clin Exp Rheumatol 13:779−784)。
【0012】
自己炎症性疾患は、先天的免疫系の改変と関連する疾患である。先天的免疫系の細胞、例えば好中球、単球、マクロファージおよびNK細胞は、体内生成受容体の欠失、抗原特異性細胞のクローン増殖および「免疫学的記憶」を与える能力がそれらにないことを特性とする。
【0013】
自己炎症性疾患は、臨床的には自己免疫疾患と類似するが、自己炎症を患う患者は、多数の自己免疫疾患の明確な特徴である自己抗体を決して生成しない。反対に、大部分の自己炎症性疾患は、通常断続的または周期的な様式で発熱を起こし、そして皮膚および関節がしばしば炎症の標的となる。過去5年間に、少なくとも9種の家族性自己炎症性疾患に関連する遺伝子が報告されている。それらは、家族性地中海熱(FMF)、腫瘍壊死因子関連周期性発熱症候群(TRAPS)、高IgG、周期性好中球減少、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、マックル−ウエルズ(Muckle−Wells)症候群、慢性炎症性神経性および関節性症候群(CINCA)、家族性肉芽腫疾患(ブラウ(Blau)症候群)、およびクローン病を含む(Hull,KM.et al.,2003,Curr4.Opin.Rheumatol 15:61−69に総説)。大部分の自己炎症性疾患は単一の遺伝子変異の結果であるが、複合遺伝子形質、例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病のある種の型、およびさらに原因が遺伝子的ではないであろうベーチェット病に続くものがいくつかある。
【0014】
反対の報告にもかかわらず、本発明者は、SOJIAが自己炎症性疾患でありそしてインターロイキン−1β(IL−1β)の生物学的利用能を低下または遮断することがSOJIA患者に対する効果的な治療的処置であることを発見した。一つの局面では、本発明は、インターロイキン−1βの生物学的利用能を低下または遮断できる少なくとも1種の作用物質の有効量を含む組成物を患者に投与することによる、全身発症した若年性特発性関節炎を患う患者を処置する方法である。
【0015】
さらに特定すると、本発明は、インターロイキン−1βの生物学的利用能を低下する1種もしくはそれ以上の活性作用物質の治療的有効量を含む組成物を関節に投与することによる、自己炎症、例えば全身発症した若年性特発性関節炎を有する関節を処置する組成物および方法を含む。該活性作用物質は、インターロイキン−1β遺伝子の転写またはインターロイキン−1β遺伝子の翻訳を改変できる。あるいは、活性作用物質は、インターロイキン−1βの発現を低下するように設計された一本鎖RNA分子、二本鎖RNA分子、アンチセンスRNA分子、低分子量阻害RNA(siRNA)分子、または阻害RNA分子(RNAi)であってもよい。別の活性作用物質は、IL−1β受容体を遮断、例えばIL−1βとIL−1受容体との間の相互作用を遮断するインターロイキン−1β受容体アンタゴニストタンパク質またはペプチドであってもよい。
【0016】
さらに別の活性作用物質は、IL−1βまたはIL−1βの抗体を放出を改変してIL−1βまたはIL−1β受容体をも低下または中和する。一つの特定の例では、活性作用物質は、一日あたりに約1、10、15、20、25、50、100、125、150、175、200およびさらには250mgの間を提供される天然に存在するIL−1β受容体アンタゴニストであってもよい。小児科患者には投与量をしばしば半分としてもよい。活性作用物質は、インターロイキン−1β受容体の発現を標的としそして低下するように設計された一本鎖RNA分子、二本鎖RNA分子、アンチセンスRNA分子、低分子量阻害RNA(siRNA)分子、または阻害RNA分子(RNAi)であってもよい。IL−1βの放出に影響またはそれを抑制する活性作用物質の例は、陰イオン輸送阻害因子、例えばリポキシンおよびアルファ−トコフェロールを含む。別の例は、不活性IL−1β前駆体をその成熟した活性形態に変換するタンパク質分解酵素を阻害するオピオイドを含む。さらに別の例は、IL−1βの生物学的機能を中和する抗体を含む。
【0017】
本発明のさらに別の例は、インターロイキン−1βの生物学的利用能を低下または遮断できる少なくとも1種の作用物質の有効量を含む組成物を患者に投与することによる全身発症した若年性特発性関節炎を患う患者の治療のための方法である。該組成物は、インターロイキン−1β受容体の生物学的利用能を低下または遮断できる少なくとも1種の作用物質の有効量を含んでもよい。例えば、SOJIAで処置するための組成物は、SOJIAの影響を受けた関節の炎症を低下させる、関節への送達のために適合された1種もしくはそれ以上の活性作用物質の治療的有効量を含む。該組成物はSOJIA患者の下記の症状:発熱、発疹、関節炎および白血球数の1種もしくはそれ以上を低下することを援助する。該組成物は、インターロイキン−1β(IL−1β)遺伝子転写のモディファイアー;IL−1β遺伝子翻訳のモディファイアー;IL−1βの発現を標的とするsiRNA;IL−1β受容体遮断因子;インターロイキン−1受容体アンタゴニストタンパク質;インターロイキン−1受容体アンタゴニストペプチド;IL−1βの放出を改変する活性作用物質;IL−1βを中和する抗体;IL−1β受容体を遮断する抗体;組換え、天然存在IL−1β受容体アンタゴニスト;IL−1βの放出を阻害する陰イオン輸送阻害因子、リポキシンおよびアルファ−トコフェロール;不活性IL−1β前駆体をその成熟した活性形態に転換するタンパク質分解酵素を阻害するオピオイド;IL−1βの生物学的機能を中和する抗体、およびそれらの混合物または組み合わせである1種もしくはそれ以上の活性作用物質を含んでもよい。製薬学的組成物製剤は、関節自己炎症を処置するように適合されてもよくそして、静脈内、筋肉内、経口、経鼻、直腸、腹腔、皮下、皮内(例えば貼付剤)、などを含む各種の投与剤型で利用されてもよい。
【0018】
本発明は、本明細書中で教示および開示された方法および組成物を用いる処置後の発熱、発疹、関節炎、白血球数および/または白血球沈降速度を監視して、自己炎症性疾患、例えばSOJIAに対する治療反応を監視する方法も含む。本発明は、広範な種々の範囲、例えば、自己炎症を患う動物に治療作用物質を投与することにより自己炎症を患う動物の処置で利用を見だすであろうし、ここで該作用物質は、アンタゴニストが自己炎症を抑制する、製薬学的に許容できる担体内のインターロイキン−1β機能のアンタゴニストを含む。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明の各種の態様の構成および使用は以下に詳細に考察されるが、本発明は、各種の特定範囲のなかで実現できる多数の適用可能な発明性概念を提供することが認められなければならない。本明細書中で考察する特定の態様は、本発明の構成および使用のための特定の方向を単に説明するものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0020】
本発明の理解を容易にするために、多数の用語を以下に定義する。本明細書中に定義した用語は、本発明に関連する分野における通常の技術者に一般的に理解される意味を有する。「a」、「an」および「the」のような用語は、単一の物のみを指すことを意図しないで、特定の例が説明のために使用される一般的な分類を含む。特許請求項内に使用される場合に、「含んでなる(comprising)」の用語と関連して、「a」または「an」の語は、一つまたは一つ以上を意味してもよい。本明細書中に使用される場合に「もう一つ(another)」は、ある項目の少なくとも少なくとも二つ目または一つを越えることを意味してもよい。本明細書中の用語は、本発明の特定の態様を記述するために使用されるが、しかしそれらの使用は特許請求項内で輪郭を述べたものを除いて、本発明を限定しない。
【0021】
本明細書中に使用される場合に、「治療的有効」の用語は、自己炎症性疾患、例えばSOJIAと関連するいくつかの症状を改善するために必要な化合物の量を定義するために使用される。例えば、自己炎症の治療において、本発明は、いずれかの程度まで健康または関節の動きを改善するかまたは関節疾患のいずれかの症候を阻止する1種もしくはそれ以上の活性作用物質が治療的に有効であることを含む。化合物の治療的有効量は、疾患を治療するために必要ではないが、しかし疾患の処置を提供する。
【0022】
本明細書中に使用される場合に、「インターロイキン−1βの生物学的利用能を低下する1種もしくはそれ以上の活性作用物質の治療的有効量」の語句は、自己炎症の範囲および程度を低下させるように、関節にもしくはその周囲に、または全身的もしくは局所的に動物に投与された場合に、IL−1β受容体から下流側において、IL−1β発現、翻訳、プロセシング、放出または活性の阻害因子;IL−1β受容体発現、翻訳、プロセシング、放出または活性の阻害因子;および/または二次メッセンジャー発現、翻訳、プロセシング、放出または活性の阻害因子の量である。
【0023】
本明細書中に使用される場合に、「インターロイキン−1β受容体」は、インターロイキン−1βの同族の受容体を記述するために使用される。受容体の活性化を起こすと否とにかかわらす、特異的に結合する作用物質の非限定的な例は下記を含む:インターロイキン−1β、抗インターロイキン−1β受容体抗体またはそのフラグメント、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、脂タンパク質、エピトープ、脂質、レクチン、炭水化物、多分子構造体、および1個もしくはそれ以上の分子の特異性立体配位体。「受容体」は、標的器官、組織または細胞タイプ、例えば関節の細胞表面上に一般的に存在する天然に存在する分子または分子の複合体である。
【0024】
本明細書中に使用される場合に、「改変」または「モディファイアー」の用語は、遺伝子または遺伝子産物の機能の上方または下方制御を含むと意図し、例えば遺伝子または遺伝子産物の転写、翻訳、プロセシング、放出または改変に影響する。活性作用物質は、インターロイキン−1β遺伝子の転写を改変してもよい。改変の例は、例えば転写または転写後サイレンシング、メッセージ安定性の変化などを含む。転写後改変の例は、遺伝子産物またはタンパク質の成熟、転写後改変(例えばグリコシル化、ジスルフィド結合、ミリスチル化、プロテアーゼ切断、他のタンパク質との結合、ユビキチン化等)を含む。タンパク質のプロセシング、輸送および放出は、例えば放出の前に蓄積性細胞内小器官内への配置により、放出に影響する他のタンパク質との結合により、などにより改変されてもよい。
【0025】
本発明者は、SOJIAが自己免疫疾患というよりは自己炎症性疾患であることを認めた。従って、本発明の一つの局面は、適応免疫系というよりは、先天的免疫系の細胞(および細胞産物)を標的とするSOJIAの処置である。
【0026】
本発明に従って、IL−1βは、「自己炎症性」疾患における炎症の基本的媒介体であることをここに発見した。さらに、IL−1β改変は、SOJIAを含みそれに限定はされない自己炎症性疾患の処置に有効であり得る。
【0027】
本発明の一つの態様において、製剤は、1種もしくはそれ以上のIL−1β阻害因子、例えばI型およびII型IL−1受容体(例えばII型IL−1受容体のIL−1結合フラグメント、例えば米国特許第5,350,683号明細書参照、関連する部分は引用することにより本明細書に編入される);I型IL−1受容体のIL−1結合およびIL−1阻害フラグメント;IL−1受容体アンタゴニスト、IL−1β変換酵素(ICE)阻害因子、IL−1αおよびIL−1βおよびその他のIL−1ファミリー物質を含むIL−1に対する抗体、およびIL−1捕そく剤および拮抗的I型IL−1受容体抗体として知られる治療物質の治療的有効量を含む。本発明に使用されるその他の特異性IL−1阻害因子は、IL−A RAおよびその変種またはフラグメントを含む(例えば米国特許第5,922,573号明細書参照、関連する部分は引用することにより本明細書に編入される)。さらに別の活性作用物質は、IL−1β変換酵素(ICE)阻害因子、例えばPCT特許出願WO93/16710号明細書中に記載のものを含むペプチジルおよび小分子ICE阻害因子;および欧州特許出願0 547 699号明細書(関連する部分は引用することにより本明細書に編入される)である。非ペプチジル化合物(例えば米国特許第6,121,266号明細書参照、関連する部分は引用することにより本明細書に編入される)およびICE(例えば米国特許第6,204,261号明細書参照、関連する部分は引用することにより本明細書に編入される)。その他のIL−1アンタゴニストは、抗体分子およびIL−1アンタゴニスト分子の双方の部分を含むキメラタンパク質、キメラおよびその多量体、およびIL−1アンタゴニスト、例えばIL−1シグナリング受容体、IL−I RIおよび/またはIL−I RIに競合的に結合できるIL−1から誘導されたペプチドを含む。
【0028】
具体的には、インターロイキン−1β(IL−1β)の生物学的利用能を著しく低下または効果的に遮断する作用物質を投与することがSOJIA患者にとって治療的選択肢であることをここに発見した。本明細書中で使用される場合に、IL−1βの生物学的利用能の著しい低下は、SOJIA患者内の症状および/または疾患進行の低下をもたらすために十分な生物学的利用可能なIL−1βの低下として定義される。本発明において、IL−1βの生物学的利用能を著しく低下または効果的に遮断できる少なくとも1種の作用物質をSOJIAと診断された患者に投与して、症状および疾患進行の低下をもたらす。(IL−1β)の生物学的利用能を低下または遮断できる1種を越える作用物質が同時にまたは連続してSOJIA患者に投与できることを意図する。(IL−1β)の生物学的利用能を低下または遮断できる1種を越える作用物質が、他の薬剤処置と組み合わされて、同時にまたは連続してSOJIA患者に投与できることもさらに意図する。
【0029】
本発明を用いて有用な投与剤型を作製する技術および組成物は、下記に引用文献の1種もしくはそれ以上に記載されている:米国薬局方(USP#24NF19)(Hardcover Text w/3 Supplements)(米国薬局方2002)。Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第21版、以前はRemington’s Pharmaceutical Sciences)、Mack Publishing Co.2005);Advances in Pharmaceutical Sciences(David Ganderton,Trevor Jones,Eds.1992)など(関連する部分は引用することにより本明細書に編入される)。
【0030】
一般に、本発明の治療製剤は予防または治療介入の必要な人間に、水、適当な油、食塩水、デキストロース水溶液(例えばグルコース、ラクトースおよび関連糖類溶液)およびグリコール類(例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)または静脈内または非経口投与のために適当な他の担体中で供与される。非経口投与のための溶液は、一般に活性成分の水溶性塩、適当な安定化剤、および必要な場合には緩衝塩を含む。クエン酸およびその塩および/またはEDTAナトリウムも安定性を増すために含まれてもよい。抗酸化剤、例えば単独または組み合わされた亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよび/またはアスコルビン酸が適当な安定化剤である。さらに、溶液は製薬学的に許容できる保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、メチル−またはプロピル−パラベン、および/またはクロロブタノールを含んでもよい。適当な製薬学的担体は、Remington’s(上記)に記載されている。
【0031】
一つの態様では、SOJIAの処置はインターロイキン−1β(IL−1β)遺伝子の転写を著しく低下または効果的に遮断する少なくとも1種の作用物質の一定量を投与することを含む。インターロイキン−1β(IL−1β)遺伝子の転写を遮断するために適する本発明の例示的な作用物質は、アンチセンスRNA化合物(Mehta et al.2000.“Intercellular adhesion molecule−1 suppression in skin by topical delivery of anti−sense oligonucleotides,”J Invest Dermatol 115):805−812;Frankel AE et al.2001.“Novel therapeutics for chemotherapy−resistant acute myeloid leukaemia,”BioDrugs 15:55−57;Lorenz HM and Kalden JR,2001.“New therapy developments in rheumatoid arthretis,”Z Rheumatol 60:326−32.;Ideo G and Bellobuono A.2002.“New therapies for the treatment of chronic hepatitis C.”Curr Pharm Des 8:959−966;Sanborn WJ and Targan SR.2002.“Biologic therapy of inflammatory bowel disease,”Gastroenterology 122:1592−1608)を含むがそれらに限定はされない。
【0032】
別の態様では、SOJIAの処置は、インターロイキン−1受容体アンチセンスタンパク質またはペプチドを含む、IL−1β受容体を著しく低下または効果的に遮断する少なくとも1種の作用物質の一定量を投与することを含む。IL−1β受容体を遮断するために適する本発明の例示的な作用物質は、単離された天然に存在するIL−1受容体アンタゴニストを含むがそれらに限定はされない。かかる作用物質の一つは、天然に存在するIL−1受容体アンタゴニストの組換え形態であり市場で入手できるアナキンラ(Anakinra)(Kineret(R)、Amagen製造)である。
【0033】
さらに別の態様では、SOJIAの処置は、IL−1βの放出を著しく低下または効果的に遮断する少なくとも1種の作用物質の有効量を投与することを含む。例示的な作用物質は、陰イオン輸送阻害因子、リポキシン、およびアルファ−トコフェロールを含む。さらに別の態様では、SOJIAの処置は、活性IL−1β前駆体をその成熟した活性形態に転換するタンパク質分解酵素であるIL−1β変換酵素の活性を著しく低下または効果的に遮断する少なくとも1種の作用物質の有効量を投与することを含む。例示的な作用物質はモルホリンおよびその他のオピオイドを含む。
【0034】
本発明は、IL−1βに対する抗体の投与を含むことをさらに意図する。IL−1βに対する抗体は、当該技術分野では公知のいずれかの手段により製造できる。例えば、モノクローナル抗体は、高度に抗原性と見なされるエピトープを含む組換えIL−1βまたは1種もしくは数種の合成ペプチドを用いてマウスを免疫化して産生できる。あるいは、ポリクローナル抗体は、上記の抗原を用いてラビットを免疫化して産生できる。産生された抗体は、IL−1タンパク質と相互作用するその能力およびIL−1媒介細胞反応を遮断するその能力を決定するために試験される。一旦ハイブリドーマ技術を用いて産生されると、モノクローナル抗体は次いでマウスおよびヒトフレームワークおよび定常領域を交換してヒト化される。本発明に従って、IL−1βの生物学的効果を遮断する抗体は、繊維芽細胞からのIL−8のIL−1誘導放出を遮断し、それはKaplanski G et al.1994.“Interleukin−1 induces interleukin−8 secretion from endothelial cells by a juxtacrine mechanism,”Blood 84:4242−4248に記載されている。次いで、IL−1β抗体はIL−1βの生物学的機能を著しく低下または効果的に遮断するための有効量でSOJIA患者に静脈内または皮下に投与される。
【0035】
本発明に従って、SOJIA患者の治療反応は、患者の臨床的改善、すなわち発熱、発疹および関節炎の消失および/または改善、ならびに白血球数および沈降速度の正常化を評価して監視される。
【0036】
in vitroでの健康な血液単核細胞(PBMC)と一緒のSOJIA患者血清の培養がIL−1ベータ(IL−1β)転写の著しい低下をもたらすという知見に基づいて(実施例1)、さらに慣用の攻撃的な処置にもかかわらず1年間以上継続した活性疾患を患う二人の患者を、IL−1の生物学的活性を中和するとして知られており市場で入手できる抗IL−1薬剤(アナキンラ、Amgen Inc.,Thousand Oaks,CA)を用いて処置した。実施例2および3に示すように、双方の患者は治療開始の翌日には無症状となり、そして3カ月の間無症状のままであった。
【実施例1】
【0037】
SOJIA血清を用いる健康なPBMCのインキュベーションはインターロイキン−1βの転写的上方制御を誘導する。遺伝子発現プロフィールは、自己の血清または2種の未処理および2種の処理SOJIA患者からの血清を用いて、in vitroで6時間のインキュベーションの前後に健康なドナーPBMCについて分析した。血清を用いるインキュベーションの後に、RNAを抽出するためにPBMCを処理し、そしてRNAをAffymetrix U133AおよびBマイクロアレイチップにハイブリダイズした。この方法で、転写がSOJIA血清で上方制御または下方制御される遺伝子の広範なアレイをスクリーニングした。
【0038】
患者集団。SOJIA患者23人(女性15人、男性8人、平均年齢7.1歳)からのACR診断基準34を満足するPBMCおよび血清を数回採取した。患者が全身症状(発熱および/または発疹)および/または活性関節炎(腫れおよび/または痛みおよび制約された関節)の場合に、患者を活性と分類した。対照集団は、小児12人(平均14歳)および成人7人(平均35歳)から成っていた。健康な対照からの血清を、自己および異種PBMCと共に数回培養した。患者および小児対照はDallasのTexas Scottish Rite Hospital for Childrenから募集した。本研究は、UT Southwestern Medical Center,Texas Scottish Rite HospitalおよびBaylor Health Care SystemのInstitutional Review Boardsにより承認され(IRB#01990177,00701−513)そして両親または法的後見者からインフォームドコンセントを得た。
【0039】
PBMC培養およびRNA抽出。PBMCは血液20mlのFicoll−Histopaque勾配遠心分離により得られた。PBMCは、自己またはSOJIA患者の血清20%を補足したPRMI 1640中で6時間培養した(10/ml)。RNAはRNAeasyキット(Qiagen,Valencia,CA)を用いて抽出しそしてAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent,Palo Alto,CA)を用いて評価した。上清を−80℃で冷凍した。PBMCは、PMA(50ng/ml)−イオノマイシン(1μg/ml)を加えたPRMI 1640および10ウシ胎児血清を用いて24時間培養した。細胞を採取しそしてRNAを上記のようにして抽出した。上清を−80℃で冷凍した。
【0040】
マイクロアレイおよび実時間PCR。マイクロアレイ分析のための試料は、記載18の通りに処置しそして22,283プローブ・セットを含むHGU133A Affymetrix GeneChipアレイ(Affymetrix Inc.,Santa Clara,CA)に45℃で16時間ハイブリダイズした。GeneChipアレイは、GeneChip Expression Analysis Technical Manual(Affymetrix)中に記載のプロトコールに従って洗浄、染色および走査した。走査したGeneChipを目視で異常または不規則に関して検査した。
【0041】
図1は、サイトカイン−サイトカイン発現の遺伝子アレイの図である。自己血清(AS)または4人のSOJIA患者からの血清を用いた健康なPBMCのインキュベーションをin vitroで6時間行った。SOJIA血清はIL−1ファミリーのメンバーの転写の上方制御を誘導したことが認められた。星印は、SOJIA患者PBMC中で遺伝子転写がin vivoで著しく上昇制御されたことを示す。
【0042】
データ分析。MAS5.0中のグローバルスケーリングを用いて強度値を500にスケーリングしそして遺伝子発現分析のためにデータをGeneSpringソフトウエア(Silicon Genetics,Redwood City,CA)中に入れるためにMS Excelで送った。グローバルスケーリングがMAS5.0で適用されたので、「チップ毎」の正規化は行わなかった。グローバルスケーリングはハイブリダイゼーション強度におけるチップとチップ間の変動に関して調整した。小児の健康対照に対しおよび/またはすべての試料の中央値に関してその後の試料を正規化した。統計的比較は、パラメーター法(Welch’s approximate t−test)および非パラメーター法(Mann−Whitney U−test)を用いてGeneSpring中で行った。非管理(unsupervised)階層クラスタリングは、50以上のコントロールサイン(背景強度の上)を有しそしてMAS5.0に従ってすべての試料の15%中で「存在」と同定された転写物を可視化するために行った。統計的比較は、パラメーター法(Welch’s approximate t−test)および非パラメーター法(Mann−Whitney U−test)の双方を用いてGeneSpring中で行った。非管理階層クラスタリングは、指定された場合に、標準相関、Pearson相関またはEuclidian距離を用いて転写体/試料の関係を可視化するために行った。
【0043】
二段RT−PCRは、要求されたプローブに関しおよび製造者の指示に基づくプライマーセットを用いてApplied Biosystems TaqManアッセイそしてABI Prism 7700配列検出システム(Applied Biosystems)を用いて行った。外因性GAPDH遺伝子および/または18S RNAは、製造者により記載されたように相対的定量のための比較閾値サイクル(C)法を用いて結果を相関するために使用した。
【0044】
Multiplex分析(Luminex)。製造者のプロトコールに従って、FluorikineMAPサイトカインアッセイキット(R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いて、培養上清を6サイトカインおよびケモカインについて分析した。
【0045】
図2AはSOJIA血清と一緒にインキュベーションした健康なPBMC中のインターロイキン−1β(IL−b)タンパク質分泌の誘導を比較した図である。12個のSOJIA血清と一緒の健康なPBMCおよび3個の健康な対照の6時間インキュベーションからの上清をIL−1β産生に関してLuminexによりアッセイした。
【0046】
図2Bは、全身症状を有するかまたは有していないSOJIA患者内でのIL−1bタンパク質分泌の誘導を比較した図である。IL−1bタンパク質分泌は、活性関節炎のみを有する患者(SOJIA2、n=7)よりも、全身症状を経験しているSOJIA患者(SOJIA1、n=5)からの血清により多く誘導される。すべての結果は非パラメーター法(Mann−Whitney)により解析された。
【0047】
図3A〜Fは、体温(図3A)、活性関節(疾病の影響を受けた関節)数(図3B)、WBC(図3C)、ヘモグロビン(図3D)、血小板数(図3E)、およびSOJIA患者9人内のESR(図3F)の値を示した図である。X値は、アナキンラ処置開始(0)の前の月数(−2)および以後の2〜12カ月追跡(平均6.6カ月)を表す。矢印は、処置開始の時点を示す。P値は時点0および追跡2カ月で値を算出した(paired,two−tailed t test)。
【実施例2】
【0048】
SOJIA患者のインターロイキン−1β処置。年齢15でSOJIAと診断された17歳のスペイン系女性を本発明の方法に従って処置した。彼女は、継続(2カ月以上)した毎日の発熱、一般的な掻痒症発疹および関節痛を示していた。実験の際に、彼女は、腫れ、撓骨手根骨および手根骨−手中骨関節の制約があった。彼女の実験室試験は、高い白血球数(EBC)、低いヘモグロビン(Hgb)、高い血小板(Plts)および高い赤血球沈降速度(ESR)を明らかにした。広範な感染症治療は不成功であった。患者は、経口およびIVで高投与量のメチルプレドニゾロンおよび最後にはメトトレキセートを投与された。彼女の症状は改善され、そして患者は数カ月間は無症状で、その間、ステロイド処置をゆっくりと減少された。数カ月後、症状が再発した。ステロイドを再度開始したが成功しなかった。抗TNF IV治療(インフレキシマブ)を5mg/kg投与で毎月、約6カ月間試したが目立った効果は得られなかった。患者は1年間症状が続いた後、IL−1アンタゴニストをアナキンラの形で100mg(1cc)を皮下に毎日注射した。最初の注射の翌日に、患者は無症状となり、発熱、発疹および関節の腫れが消失した。2回の追跡診察は、彼女は治療開始の2〜3カ月後も無症状のままであることを確認した。試験室での試験も、WBC、Hgb、Plt数およびESRが正常値内にあり、この反応を反映していた。
【実施例3】
【0049】
SOJIA患者のインターロイキン−1β処置。スペイン系9歳の男性が、長期間にわたる毎日の急上昇する発熱、発疹、心膜炎および関節と筋肉の痛みを示して7歳でSOJIAと診断された。試験室での試験は、高いWBC、低いHgb、高い血小板および上昇したESRを示した。骨髄分析および広範な感染症検出作業は、特定の診断を下せなかった。患者は、高投与量のIVメチルプレドニゾロンで処置され症状は改善された。その後2年間、患者は激発および鎮静を示した。最後の激発は高投与量のステロイドに反応せず、そして患者は両側の撓骨手根骨関節に腫れを起こした。IL−1アンタゴニスト・アナキンラを用いる治療は、皮下に毎日の注射として50mg(0.5cc)の投与量で開始された。最初の皮下注射の翌日に、患者は無症状となり、同時に発熱、発疹、関節痛および腫れが消失し、そして彼は3カ月以上も無症状のままであった。
【0050】
本明細書中に記載する特定の態様は説明のために示されそして本発明を制限するものではない。本発明の主要な原理は本発明の範囲から逸脱することなく種々の態様として使用できる。当該技術分野の熟練者は、慣用の実験の程度を越えることなく、本明細書中に記載の特定の手順に対して多数の等価なものを認めまたは確認できるであろう。かかる等価物は、本発明の範囲内でありそして特許請求範囲内に含まれると考えられる。
【0051】
本明細書中に記載したすべての出版物および特許出願は、本発明が関係する当該技術分野の熟練者の技術のレベルの指標である。すべての出版物および特許出願は、それぞれの個別の出版物または特許出願が特定して個別に引用することにより編入されると指定されたと同様に同じ範囲内で引用することにより本明細書に編入される。
【0052】
本明細書中に開示および特許請求されたすべての組成物および/または方法は、本開示を参照すれば不当な実験を行うことなく作製および実施できる。本発明の組成物および方法は、好ましい態様に関して記載されているが、当該技術分野の熟練者には、本発明の概念、精神および範囲から外れることなく、本明細書中に記載の組成物および/または方法および方法の工程または工程の連鎖中に変化が適用され得ることは明らかであろう。さらに特定すると、化学的および物理的に関連するある作用物質は、本明細書中に記載されている作用物質と置換されてもよく、同様または類似の結果が達成されるであろうことは明らかである。すべてのかかる類似物質よび変更は、当該技術分野の熟練者にとっては、添付の特許請求範囲により定義される本発明の精神、範囲および概念の範囲内と考えられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本発明の特徴および利点をさらに完全に理解するために、添付の図面を用いて本発明の詳細な説明に参考とする。
【図1】自己血清(AS)または3人のSOJIA患者からのいずれかの血清を用いて、4人の健康なボランティアからのPBMCをインキュベーションして、上方制御(赤)、下方制御(青)または不変(黄)となった遺伝子を描いた遺伝子アレイデータの図示である。
【図2A】SOJIA血清を用いてインキュベーションされた健康なPBMC内のインターロイキン−1β(IL−b)タンパク質分泌の誘導を比較した図である。
【図2B】全身症状を有するかまたは有していないSOJIA患者内のIL−1bタンパク質分泌の誘導を比較した図である。そして
【図3A−F】体温(図3A)、活性関節数(図3B)、WBC(図3C)、ヘモグロビン(図3D)、血小板数(図3E)、およびSOJIA患者9人内のESR(図3F)の値を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−1βとIL−1β受容体との間の相互作用を遮断するインターロイキン−1受容体アンタゴニストタンパク質からなる、インターロイキン−1βの生物学的利用能を低下させる1種もしくはそれ以上の活性作用物質を有効成分として含んでなる、全身発症若年性特発性関節炎(SOJIA)を伴う関節を処置するための製薬学的製剤。
【請求項2】
1〜250mg/日で供与される天然に存在するIL−1受容体アンタゴニストの組換え形態物からなる、インターロイキン−1βの生物学的利用能を低下させる1種もしくはそれ以上の活性作用物質を有効成分として含んでなる、全身発症若年性特発性関節炎(SOJIA)を伴う関節を処置するための製薬学的製剤。


【図1】
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【図2A−B】
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【図3A−B】
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【図3C−D】
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【図3E−F】
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【公開番号】特開2012−162552(P2012−162552A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88149(P2012−88149)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2007−501027(P2007−501027)の分割
【原出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(509004712)ベイラー リサーチ インスティテュート (38)
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】