説明

防塵樹脂サッシ及びその成形方法

【課題】 表面抵抗値1012Ω以下の防塵樹脂サッシの表面に木目模様を表出する。
【解決手段】 基層1への表層2の共押出成形を、ベース樹脂にそれぞれ無色系帯電防止剤3を3〜20重量部混合分散するとともにその一に基調色の顔料4を、他に木目模様色の顔料5を混合分散した基調色用及び模様色用の異色複数種のペレット6、7を用いて行う。帯電防止剤3がベース樹脂中にあるから、押出成形時にベース樹脂より溶融温度が低い無色系帯電防止剤3が先行して溶融することなく、該先行溶融によって生じるペレット6、7のスクリュー85内流動性阻害を解消して、該流動性阻害による異色複数種のペレットとその顔料4、5混合を防止することによって、表層2に美麗な木目模様を表出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防塵樹脂サッシに関し、特に、表層を模様仕上げとした防塵樹脂サッシに関し、また、該防塵樹脂サッシの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種防塵サッシ及びその成形方法として、本発明者らは、共押出成形によって基層と表層の2層構造とした押出樹脂材を用い、上記基層を硬質ポリ塩化ビニル系樹脂とし、表層のベース樹脂として硬質ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して3〜20重量部の帯電防止剤を分散配置し、該表層に帯電防止剤の粒子による導電回路を形成することによって、該表層の表面抵抗値を1012Ω以下とした防塵樹脂サッシを提案済みであり、また、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂の基層に対して、ベース樹脂の硬質ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して3〜20重量部の帯電防止剤を混合した表層を共押出成形するとともに該表層の成形温度を120〜180℃とする防塵樹脂サッシの成形方法を提案済みであり、このとき、上記表層の肉厚を0.05〜0.5mmとし、上記帯電防止剤は、これを、ポリエチレングリコールを含有するポリエーテル系の高分子剤を用いるものとしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−169077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、樹脂サッシとしての良好な断熱性、防音性、耐衝撃性を確保した上、表層に分散配置した帯電防止剤によって該表層に導電回路を形成することによって、この種樹脂サッシにおける1014Ω以上である表面抵抗値を1012Ω以下、好ましくは1011Ω以下とすることによって良好な防塵性を確保した防塵樹脂サッシを提供することができ、該防塵樹脂サッシを、樹脂、特に上記硬質ポリ塩化ビニル樹脂の帯電性に起因する樹脂サッシ表面の集塵と塵埃の付着を有効且つ適切に解消することが可能になり、好ましい樹脂サッシとすることができる。
【0005】
しかし乍ら、上記成形方法を用いて、該防塵樹脂サッシを、例えば木目調とする如くに模様仕上げしたものとするために、例えば、基調色と模様色の顔料をベース樹脂にそれぞれ混合分散した表層形成用の異色複数種のペレットを用いて、帯電防止剤とともに上記異色複数種のペレットをホッパーに投入して、基層に対する表層の共押出成形を試みると、これによって得られる表層は、例えば、基調色に近似した単色の色調のものとなって、模様色による模様を表層に表出することができない結果であった。そこで、帯電防止剤、異色複数種のペレットの量的条件や共押出成形条件を様々に変更して、更に模様の表出を試みるも、結果は同じく模様色による模様を表層に表出することができず、防塵性と模様仕上げの両立をなし得ない結果に終始した。
【0006】
表層に帯電防止剤による導電回路を形成して良好な防塵性を具備しつつ、更に模様仕上げを施すことによって、防塵性と模様仕上げの双方を同時に具備した防塵樹脂サッシを提供することは、樹脂サッシの高機能化、高付加価値化を行う上で有効であるも、上記結果からその実現には解消すべき障害がある事実が判明した。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、該防塵性と模様仕上げの双方を同時に具備した防塵樹脂サッシを提供するにあり、また、該防塵樹脂サッシの成形方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に沿って鋭意研究したところ、上記基調色に近似した単色の色調のものとなるのは、基調色のペレットが、模様色のペレットより量的に多いことから見ると、結局基調色のペレット中の顔料と模様色のペレット中の顔料が表層中に均一に混在して分布するように配置することによって、量的に少ない模様色の顔料の色調が捨象されるためであり、従って、表層を、防塵性を備えた状態で模様仕上げのものとするには、防塵性確保の上で、表層中の帯電防止剤を可及的に均一に、また、基調色の顔料を可及的に幅方向全体的に分布する一方、模様色の顔料を幅方向部分的にランダムの筋状に分布するように、帯電防止剤、ペレットの顔料の配置を規制することが、防塵性と模様仕上げの双方を同時に具備した防塵樹脂サッシとするに有効であること、このとき帯電防止剤を無色系としてその量を規制すること、基調色と模様色用の顔料比率を規制して、これら帯電防止剤と、基調色及び模様色の顔料の上記分布を行うようにすることが有効であることを見出して本発明をなすに至ったもので、即ち、請求項1に記載の発明を、共押出成形によって基層と表層の2層構造とし、表層を、ベース樹脂と、該ベース樹脂中に分散配置したベース樹脂に対して3〜20重量部の無色系帯電防止剤と、同じくベース樹脂中に分散配置して基調色と模様色用の異色複数の顔料とを備え、上記無色系帯電防止剤の分散配置をベース樹脂中に可及的均一に分布して表層を表面抵抗値1012Ω以下とするとともに上記異色複数のうち基調色用顔料の分散配置をベース樹脂中の幅方向全体的に亘るように分布して基調色とし、模様色用顔料の分散配置を幅方向部分的にランダムの筋状に分布して模様色として、表層を基調色に模様色を表出した模様仕上げとしてなることを特徴とする防塵樹脂サッシとしたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、表層の肉厚を、該表層に防塵性と模様の表出を有効且つ確実に行うに適した好ましい形態のものとするように、これを、上記表層の肉厚を0.05〜0.5mmとし且つ該表層の表面抵抗値を1011Ω以下としてなることを特徴とする請求項1に記載の防塵樹脂サッシとしたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記基調色と模様色の模様の表出を有効且つ美麗のものとするに適した好ましい形態のものとするように、これを、上記基調色と模様色用の異色複数の顔料における重量比を5:5〜9.5:0.5としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の防塵樹脂サッシとしたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、表層の模様を木目調とすることによって、模様仕上げを好ましい形態のものとするように、これを、上記基調色及び模様色を黄系、茶系乃至黒系を呈する顔料とすることにより、上記基調色と模様色による表層の模様仕上げを木目調としてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の防塵樹脂サッシとしたものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、基層と表層のベース樹脂を、上記帯電防止剤と、基調色及び模様色の顔料の上記分布を行うに適し且つ樹脂サッシとして好ましい形態のものとするように、これを、上記基層及び表層のベース樹脂を硬質ポリ塩化ビニル系樹脂とし、上記無色系帯電防止剤を、ポリエチレングリコールを含有するポリエーテル系の高分子剤としてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の防塵樹脂サッシとしたものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、上記帯電防止剤の均一分布、基調色の幅方向全体的な分布、模様色の幅方向部分的なランダム筋状分布による模様仕上げを行う防塵樹脂サッシの成形方法として、表層の共押出成形に異色複数種のペレットを用いるようにし、そのペレットにそれぞれ無色系帯電防止剤を混合分散するとともに異色複数種の一に基調色の顔料を、他に模様色の顔料を混合分散するようにするのが、防塵性と模様仕上げの双方を同時に具備した防塵樹脂サッシとする上で有効であることから、これを、共押出成形によって基層と表層の2層構造とし、表層を表面抵抗値1012Ω以下とし且つ基調色と模様色による模様を表出して模様仕上げとした防塵樹脂サッシの成形方法であって、上記表層を、ベース樹脂にそれぞれ無色系帯電防止剤を混合分散するとともにその一に基調色の顔料を、他に模様色の顔料を混合分散した基調色用及び模様色用の異色複数種のペレットを用いて共押出成形を行うことを特徴とする防塵樹脂サッシの成形方法としたものである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、上記帯電防止剤の混合分散を、異種複数種のペレットのいずれかに対して行うことによっても、同様に、防塵性と模様仕上げの双方を同時に具備した防塵樹脂サッシとする上で有効であることから、これを、共押出成形によって基層と表層の2層構造とし、表層を表面抵抗値1012Ω以下とし且つ基調色と模様色による模様を表出して模様仕上げとした防塵樹脂サッシの成形方法であって、上記表層を、ベース樹脂のいずれかに無色系帯電防止剤を混合分散するとともにその一に基調色の顔料を、他に模様色の顔料を混合分散した基調色用及び模様色用の異色複数種のペレットを用いて共押出成形を行うことを特徴とする防塵樹脂サッシの成形方法としたものである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、上記に加えて、上記帯電防止剤とともに上記異色複数種のペレットを用いた場合に、例えば、表層が基調色に近似した単色の色調のものとなって、防塵性と模様仕上げの両立をなし得ないのは、該帯電防止剤の融点温度がペレットのベース樹脂より低く、共押出成形の成形温度(押出機スクリューの温度をいう。以下同じ。)への加熱によって先行溶融して該スクリュー内で高い初期トルクを呈することから、異色複数種のペレットの流動性を阻害し、該ペレットの混練が促進され、該混練によって異種複数種のペレットの顔料が均一に混合するためと認められるところ、帯電防止剤を上記異色複数種のペレットに顔料とともに混合分散したものとすることによって、上記模様色の模様表出が可能となるのは、ペレットのベース樹脂が帯電防止剤の先行溶融と、該先行溶融によるスクリュー内での高い初期トルクの発生を抑制する結果、スクリュー内における異色複数種のペレットの流動性阻害を回避し、スクリュー通過を促進し、可及的に帯電防止剤を用いない場合と同様の状態でダイス吐出に至るためと認められるから、該知見に基づいて、これを、上記無色系帯電防止剤を混合分散した異色複数種のペレットを用いることによって、該無色系帯電防止剤の溶融による異色複数種のペレットのスクリュー内流動性阻害を防止し、共押出成形における該異色複数種のペレットのスクリュー通過を可及的に促進することを特徴とする請求項6又は7に記載の防塵樹脂サッシの成形方法としたものである。
【0016】
請求項9に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記基調色と模様色の模様の表出を有効且つ美麗のものとするに適した好ましい形態のものとするように、これを、上記基調色と模様色用の異色複数種のペレットにおける顔料の重量比を5:5〜9.5:0.5とすることを特徴とする請求項6、7又は8に記載の防塵樹脂サッシとしたものである。
【0017】
請求項10に記載の発明は、同じく上記に加えて、基層と表層のベース樹脂を、上記帯電防止剤と、基調色及び模様色の顔料の上記分布を行うに適するとともに表層の模様を木目調とすることによって、模様仕上げを好ましい形態のものとするように、これを、上記基層及び表層のベース樹脂を硬質ポリ塩化ビニル系樹脂とし、上記無色系帯電防止剤を、ポリエチレングリコールを含有するポリエーテル系の高分子剤とし、上記基調色及び模様色を黄系、茶系乃至黒系を呈する顔料とすることにより、上記基調色と模様色による表層の模様仕上げを木目調とすることを特徴とする請求項6、7、8又は9に記載の防塵樹脂サッシの成形方法としたものである。
【0018】
請求項11に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記共押出成形温度(押出成形温度を意味し、具体的には押出機スクリュー部位における温度をいう。以下同じ。)によって起因する表面の荒れや帯電防止剤の高温分解による表面抵抗値の上昇による防塵性の低下を防止し、外観良好にして防塵性に有効な表面抵抗値を確実に確保し得るものとするように、これを、上記無色系帯電防止剤を、ベース樹脂に対して3〜20重量部とし且つ上記表層の共押出成形の成形温度を120〜180℃とすることを特徴とする請求項6、7、8、9又は10に記載の防塵樹脂サッシの成形方法としたものである。
【0019】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として、上記課題解決の手段としたものである。
【0020】
なお、本発明において防塵樹脂サッシは、共押出成形した樹脂サッシの窓枠及び障子の構成材及びこれを用いて構成して建物開口部に設置使用するようにした窓サッシの双方を含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、防塵性確保の上で、表層中の帯電防止剤を可及的に均一に、また、基調色の顔料を可及的に幅方向全体的に分布する一方、模様色の顔料を幅方向部分的にランダムの筋状に分布するように、帯電防止剤、ペレットの顔料の配置を規制することによって、防塵性と模様仕上げの双方を同時に具備した防塵樹脂サッシを提供することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、表層の肉厚を、該表層に防塵性と模様の表出を有効且つ確実に行うに適した好ましい形態のものとすることができる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記基調色と模様色の模様の表出を有効且つ美麗のものとするに適した好ましい形態のものとすることができる。
【0024】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、表層の模様を木目調とすることによって、模様仕上げを好ましい形態のものとすることができる。
【0025】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、基層と表層のベース樹脂を、上記帯電防止剤と、基調色及び模様色の顔料の上記分布を行うに適し且つ樹脂サッシとして好ましい形態のものとすることができる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、表層の共押出成形に異色複数種のペレットを用いるようにし、その各ペレットに無色系帯電防止剤を混合分散するとともに異色複数種の一に基調色の顔料を、他に模様色の顔料を混合分散するようにすることによって、防塵性と模様仕上げの双方を同時に具備した防塵樹脂サッシの成形方法を提供することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、上記帯電防止剤の混合分散を、異種複数種のペレットのいずれかに対して行うことによって、同様に、防塵性と模様仕上げの双方を同時に具備した防塵樹脂サッシの成形方法を提供することができる。
【0028】
請求項8に記載の発明は、上記に加えて、ペレットのベース樹脂が帯電防止剤の先行溶融と、該先行溶融によるスクリュー内での高い初期トルクの発生を抑制し、スクリュー内における異色複数種のペレットの流動性阻害を回避し、スクリュー通過を促進し、可及的に帯電防止剤を用いない場合と同様の状態でダイス吐出に至るものとすることができる。
【0029】
請求項9に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記基調色と模様色の模様の表出を有効且つ美麗のものとするに適した好ましい形態のものとすることができる。
【0030】
請求項10に記載の発明は、同じく上記に加えて、基層と表層のベース樹脂を、上記帯電防止剤と、基調色及び模様色の顔料の上記分布を行うに適するとともに表層の模様を木目調とすることによって、模様仕上げを好ましい形態のものとすることができる。
【0031】
請求項11に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記共押出成形温度によって起因する表面の荒れや帯電防止剤の高温分解による表面抵抗値の上昇による防塵性の低下を防止し、外観良好にして防塵性に有効な表面抵抗値を確実に確保し得るものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】樹脂サッシの表層模様の平面図とその各部位の拡大断面図である。
【図2】共押出成形の成形状態を示す側面図である。
【図3】共押出成形のホッパー投入と表層模様形成と関係を示す説明図、表層模様平面図及びその各部位の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下本発明を更に具体的に説明すれば、Aは防塵樹脂サッシ(より正確にはその押出成形材)であり、該樹脂サッシAは、共押出成形によって基層1と表層2の2層構造とし、表層2を、ベース樹脂と、該ベース樹脂中に分散配置したベース樹脂に対して3〜20重量部の無色系帯電防止剤3と、同じくベース樹脂中に分散配置して基調色と模様色用の異色複数の顔料4、5とを備え、上記無色系帯電防止剤3の分散配置をベース樹脂中に可及的均一に分布して表層2を表面抵抗値1012Ω以下とするとともに上記異色複数のうち基調色用顔料4の分散配置をベース樹脂中の幅方向全体的に亘るように分布して基調色とし、模様色用顔料5の分散配置を幅方向部分的にランダムの筋状に分布して模様色として、表層を基調色に模様色を表出した模様仕上げとしてあり、本例にあって、上記基層1及び表層2のベース樹脂を硬質ポリ塩化ビニル系樹脂とし、上記無色系帯電防止剤3を、ポリエチレングリコールを含有するポリエーテル系の高分子剤としてあり、このとき、上記表層2の肉厚を0.05〜0.5mmとし且つ該表層の表面抵抗値を1011Ω以下としたものとしてあり、また、上記基調色及び模様色を黄系、茶系乃至黒系を呈する顔料4、5、本例にあっては基調色を、例えば、黄系の顔料4、模様色を茶系の顔料5とすることにより、上記基調色と模様色による表層の模様仕上げを木目調としたものとしてある。
【0034】
本例の防塵樹脂サッシAは、上記表層2の表面抵抗値を1012Ω以下として、防塵性を有しない通常の樹脂サッシの表面抵抗値を2桁以上減少し、防塵樹脂サッシとして有効且つ確実な防塵性を呈するものとしてある。このとき、該表面抵抗値を1011Ω以下とするようにすれば、該塵埃の付着を可及的高度に防止するとともに仮に付着しても乾拭き等で容易に拭取り可能として、高い防塵性を確保したものとなり、従って、表層12の表面抵抗値は、これを1011Ω以下とすることが好ましい。
【0035】
該防塵樹脂サッシAは、その肉厚、即ち基層1と表層2の合計厚さは、これを、例えば1.5〜2mm程度としてあり、このうち上記表層12の肉厚は、これを、0.05〜0.5mmとし、該表層12に無色系帯電防止剤3を混合配置したものとしてある。図示したものは、例えばその肉厚は、これを1.5mmとし、このうち表層2を0.2mm、基層1を1.3mmとして、樹脂サッシとして、例えばJIS A5558の「無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材」に準拠したものとしてある。表層2の肉厚は、これが0.05mmを下回ると、表層2の表面抵抗値が1012Ωを上回る傾向を招くため、表層2の肉厚の下限は、これを0.05mmとするのがよく、このとき該下限を0.1mmとすることによって確実に表面抵抗値を1012Ωとし、また1011Ω以下とすることができるから、該下限は、これを0.1mmとするのが好ましい。一方、表層2の肉厚を厚くすることによる表面抵抗値の変化は見られないので、一般に上記樹脂押出材1の肉厚を考慮すると、肉厚の上限は、これを0.5mmとすることで防塵性を充分に得られるとともに該0.5mmを上回ると帯電防止剤3使用量が増加し、コストアップの要因となるため、該肉厚の上限は0.5mmとするのが好ましい。従って、表層2の表面抵抗値とこれによる防塵性の確保の面から、樹脂サッシにあって、該表層2の肉厚は、これを0.05〜0.5mmとするのがよい。
【0036】
本例の帯電防止剤3は、これを、ポリエチレングリコール(以下PEGという)としてあり、該PEGを押出樹脂材1の表層12のみに含むようにして、該表層2にPEGのネットワークによる導電回路を形成して、その表面抵抗値を減少し、帯電性を防止して、樹脂サッシとしての防塵性を確保したものとしてある。
【0037】
即ち、帯電防止剤3、本例にあってはPEGは、表層2において上記ネットワークの導電回路を形成するところ、該導電回路は、高分子固体電解質を形成しているPEGが該表層2の硬質ポリ塩化ビニル樹脂中で分散することによって該表層2内に形成され、これによって、防塵性樹脂サッシAは、開閉やカーテンとの接触等によってこれに生じる静電気を放電する結果、該防塵性樹脂サッシAの帯電性を防止し、その表面抵抗値を減少することができる。
【0038】
帯電防止剤3は、上記硬質ポリ塩化ビニル系樹脂の表層2に、硬質ポリ塩化ビニル樹脂に対して3〜20重量部含有するように、これを分散配置してある。該帯電防止剤3の混合配置は、これを、その粒子が硬質ポリ塩化ビニル樹脂に練り込まれるように且つ上記ネットワークを形成するようにすることによってなされるところ、これが3重量部を下回ると、該ネットワークの形成に該帯電防止剤が量的に不足する傾向を招き、表層12の表面抵抗値が1012Ωを上回る傾向を呈する一方、これを5重量部以上とすると、表層2の表面抵抗値を1011Ω乃至それ以下として、該表面抵抗値が1012Ωの場合に、時に見られることある塵埃付着を改善して、防塵性を高度に確保することができる。従って、該帯電防止剤3の下限は、これを3重量部とするのが好ましく、防塵性を高度に確保するためには、該下限を5重量部とするのが特に好ましい。一方、20重量部を上回ると、好ましい表面抵抗値を得られるが、帯電防止剤3が量的に過剰となる結果、防塵樹脂サッシAの表層2に変色や荒れの外観不良を生じたり、模様の表出が乱れたりする傾向を招くから、該帯電防止剤3の上限は、これを20重量部乃至これを幾分下回るものとするのがよい。以上から、帯電防止剤13は、3〜20重量部とすることが好ましく、5〜20重量部乃至20重量部を幾分下回るものとすることが特に好ましい。
【0039】
ベース樹脂中に分散配置して基調色と模様色用とした顔料4、5は、その重量比を5:5〜9.5:0.5としてあり、これによって基調色と模様色の顔料4、5を同等とするか、基調色の顔料4を多く、模様色の顔料5を少なく配置することによって、基調色の顔料4によって基調色を表出するとともに模様色の顔料5によって該基調色に模様を表出するようにしてある。即ち、顔料の重量比が5:5を下回る、即ち、4:6の如くにすると、濃色にして基調色と模様色の明度を大きく異にする場合は別としても、模様色の顔料が多くなる結果、好ましい模様の表出をなし難くなり、また、9.5:0.5を上回る、即ち、9.7:0.3の如くにすると、基調色に対して模様色が量的に不足する結果、同様に模様の表出をなし難くなるので、例えば、上記木目調の如くに基調色の地に木目の模様を表出するには、7:3〜8:2の範囲とするのが好ましい。
【0040】
このように共押出成形によって基層と表層の2層構造とし、表層を表面抵抗値1012Ω以下、本例にあっては1011Ω以下とし且つ基調色と模様色による模様を表出して模様仕上げとした該防塵樹脂サッシAは、図1乃至図4に示す如くに、基調色用顔料4が、その分散配置をベース樹脂中の幅方向全体的に亘るように分布することによって防塵樹脂サッシAの基調色をなし、また、模様色用顔料5が、その分散配置を幅方向部分的にランダムの筋状に分布することによって模様色をなし、これらによって美麗な木目模様を表出したものとなる。
【0041】
該防塵樹脂サッシAを、その成形方法によって説明すれば、該成形方法は、上記表層2を、ベース樹脂にそれぞれ無色系帯電防止剤3を混合分散するとともにその一に基調色の顔料4を、他に模様色の顔料5を混合分散した基調色用及び模様色用の異色複数種、本例にあっては異色2種のペレット6、7を用い、該異色複数種のペレット6、7を用いて共押出成形を行うものとし、また、上記表層2を、ベース樹脂のいずれかに無色系帯電防止剤3を混合分散するとともにその一に基調色の顔料4を、他に模様色の顔料5を混合分散した基調色用及び模様色用の異色複数種のペレット6、7を用いて共押出成形を行うものとしてあり、このとき、該成形方法において、上記無色系帯電防止剤3を混合分散した異色複数種のペレット6、7を用いることによって、該無色系帯電防止剤3の溶融による異色複数種のペレット6、7のスクリュー85内流動性阻害を防止し、共押出成形における該異色複数種のペレット6、7のスクリュー85通過を可及的に促進するものとしてある。
【0042】
このように成形方法として、上記異色複数種の各ペレットにそれぞれ無色系帯電防止剤3を混合分散して全ペレット添加状態で共押出成形を行う場合と、異色複数種の、例えば2種のうちの一方、3種の場合の2種の如くに、いずれかのペレットに無色系帯電防止剤3を混合分散して一部ペレット添加状態で共押出成形を行う場合があるが、上記それぞれ無色系帯電防止剤3を混合分散した全ペレット添加状態での共押出成形を行うのが、帯電防止剤3の可及的に均一な分布を行って、良好な防塵性を確保する上で好ましい。
【0043】
成形方法については、上記課題記載の、基調色と模様色の顔料をベース樹脂にそれぞれ混合分散した表層形成用の異色複数種のペレットを用い、帯電防止剤とともに上記異色複数種のペレットをホッパーに投入して、基層に対する表層の共押出成形を試みても、例えば、表層が基調色に近似した単色の色調のものとなり、模様色による模様を表層に表出することができないとの事実について、その理由を探索した。
【0044】
このため、プラストメータ(HAAKE Rheomix)を使用してトルクの測定を行ったところ、異色複数種、特に異色2種のペレットを単独で用いて帯電防止剤を用いないものは、投入直後の数十秒の間の初期トルクが、例えば5〜10Nmと比較的低く、その後に時間の経過とともに15Nm程度となるに至るのに対して、該異色2種のペレットを帯電防止剤とともに用いたものは、投入直後の数十秒の間の初期トルクが、例えば20〜25Nm程度と高く、その後に時間の経過とともにトルクが減少して概ね15Nm程度となった。
【0045】
従って、初期トルクの相違乃至形態が異なる点に、帯電防止剤と模様表出とが両立しない要因があるところ、帯電防止剤の融点は、顔料を混合分散したベース樹脂より低いことを考慮すると、上記異種2種のペレットと帯電防止剤を用いたものは、帯電防止剤が投入直後に先行して溶融することによって、その初期トルクが、異色複数種のペレットのスクリュー内の流動性を阻害するとともにスクリュー内で該スクリューの剪断力を受けることになると推認される。
【0046】
そうすると、投入された異色2種のペレットも成形温度、即ち、スクリュー温度によって加熱されて帯電防止剤の溶融に遅れてゲル化するところ、その流動性が阻害され且つスクリュー剪断力を受けるために、該ペレット同士、帯電防止剤間でそれぞれ混練が生じることから、該異色2種のペレットの基調色及び模様色の顔料も、該混練によって均一化した状態となって、スクリュー先端のダイスから吐出し、基層を被覆する結果、該均一化した基調色と模様色の顔料で、量的に多い基調色に近似した単色になるに至るものと推認される。
【0047】
先行して溶融した帯電防止剤がペレットの流動性を阻害し、混練を促進するのは、該溶融した帯電防止剤が、スクリュー乃至そのブレードに付着し、ペレットを巻き込むように作用することによってペレット流動の抵抗体をなすところ、帯電防止剤を用いないものは、先行して溶融して初期トルクを生じることがないので、ゲル化進行のペレットの混練が抑制された状態でダイス吐出に至ることから、基調色と模様色のペレットが相互に混練して均一化する以前、即ち、基調色と模様色の顔料が別異のペレット中に存在する状態でダイスから吐出されるために、基調色と模様色が幅方向に並ぶように基層を被覆することから、模様の表出がなされるに至ると認められる。
【0048】
かかる知見に基づき、上記それぞれ無色系帯電防止剤3を混合分散した異色2種のペレット6、7を用いて、先行して溶融する帯電防止剤3を該ペレット6、7によって被覆することによって、該帯電防止剤3の先行する溶融を抑制して、その溶融を遅延するようにしたものの、同じくトルクの測定を行ったところ、投入直後の数十秒間の初期トルクが、一時的に10Nm以下となるもその直後に好ましいトルク状態に復帰し、その後もこれが継続する結果であった。従って、該帯電防止剤3の先行する溶融を抑制し、その溶融を遅延することが、上記帯電防止剤を単独で使用するのと同様に、基調色と模様色のペレット6、7の混練以前の状態、即ち、基調色と模様色の顔料4、5がなお別異のペレット6、7中に存在する状態でダイス86から吐出することができ、従って、帯電防止剤3を用いながら、表層2に模様を表出する上で、上記ベース樹脂にそれぞれ無色系帯電防止剤3を混合分散するとともにその一に基調色の顔料4を、他に模様色の顔料5を混合分散した基調色用及び模様色用の異色複数種のペレット6、7を用いること、また、ベース樹脂のいずれかに無色系帯電防止剤3を混合分散するとともにその一に基調色の顔料4を、他に模様色の顔料5を混合分散した基調色用及び模様色用の異色複数種のペレット6、7を用いて共押出成形を行うことが、防塵性と模様仕上げの双方を両立した防塵樹脂サッシAを得る上で極めて有効であることが判明した。
【0049】
本例にあって防塵樹脂サッシの成形方法は、上記防塵樹脂サッシAに合せて、上記基層1及び表層2のベース樹脂を硬質ポリ塩化ビニル系樹脂とし、上記無色系帯電防止剤3を、ポリエチレングリコールを含有するポリエーテル系の高分子剤とし、上記基調色及び模様色を黄系、茶系乃至黒系を呈する顔料4、5とすることにより、上記基調色と模様色による表層2の模様仕上げを木目調とするものとしてある。
【0050】
共押出成形は、これら硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を基層2及び表層2のベース樹脂としてあり、基層1には、該ベース樹脂の粉末、ペレット又は、例えば障子案内レールのように共押出成形で表層2を被覆し難い突出部位がある場合に、該突出部位の色調を表層2に合せるように、表層2の基調色と同様な顔料を混合分散したものを用いることができる。一方、表層2には、該ベース樹脂に上記帯電防止剤3と基調色の顔料4又は模様色の顔料5を混合分散した異色複数種、本例にあっては、基調色用のペレット6と模様色用のペレット7の異色2種のペレットを形成し、該異色2種のペレット6、7によって表層2を基層1の表面に対して押出成形することによって該基層1を表層2によって被覆するものとしてある。
【0051】
このとき上記無色系帯電防止剤3、即ち、PEGは、ベース樹脂に対して3〜20重量部、好ましくは上記5〜20重量部乃至20重量部を幾分下回る重量比を混合分散したものとする一方、基調色用の顔料4又は模様色用の顔料5は、表出する基調色及び模様の濃度に応じて適宜に設定した量を、それぞれベース樹脂に対して混合分散し、上記異色2種のペレット6、7としたものとしてある。
【0052】
防塵樹脂サッシAの成形は、図5に示すように共押出成形機8で、ホッパー81に基層1のベース樹脂、例えば、上記表層2の基調色と同様な顔料を混合分散したペレットを投入して、基層押出機82によって基層1を押出成形し、該基層1に対して、ホッパー83に表層2形成用の上記異色2種のペレット6、7を投入し、表層押出機84のスクリュー85を介してダイス86から、該ダイス86位置を通過する基層1に対して吐出し、該基層1に、これを被覆するように表層2を押出成形し、図示省略の引取機の引取りによって冷却器87を通過するようにして、これを行うものとしてある。
【0053】
これら異色2種のペレット6、7は、上記重量比5:5〜9.5:0.5の所定比率、本例にあっては7:3〜8:2の好ましい比率で、同時に上記ホッパー83に投入するものとしてあり、このとき、該表層2の押出成形温度、即ち、表層押出機84のスクリュー部位の温度は、これを、これを120〜180℃として、該表層2の押出成形を行うものとしてある。
【0054】
即ち、表層2の成形温度は、これが120℃を下回ると、硬質ポリ塩化ビニル樹脂又はこれと帯電防止剤13の混練が不十分になって表層2の表面に荒れを生じて、平滑性を損なう傾向を招き、また、180℃を上回ると、帯電防止剤3が分解することから、表層2の表面抵抗値が影響を受けて、該表面抵抗値が1012Ωを上回る傾向を招くとともに変色が生じる傾向を招くから、該押出成形温度は上記120〜180℃とするのがよく、このとき該押出成形温度は、これを、140〜160℃とすることによって、表層2の表面抵抗値を1012Ω以下、特に1011Ω以下とするとともに上記荒れや変色のない良好な外観を呈することができるとともに該押出成形温度は、一般に顔料4、5による模様表出に影響することなく、概ね良好な模様仕上げを行うことができるから、表面抵抗値を1011Ω以下として高度な防塵性を確保するようにすることが好ましい。
【0055】
表層2の表層押出機84におけるスクリュー回転速度は、常法による10〜30rpmとすれば足り、これによって表層2の表面抵抗値、模様表出、外観等に影響はないが、該回転速度を、例えば5rpmとすると、模様表出が幾分乱れる傾向を招き易いので、該回転速度が10rpmを下回るものとすることは避けることが好ましい。
【0056】
以上の成形方法によって成形した防塵樹脂サッシAは、上記優れた防塵性と美麗な模様表出、本例にあっては木目模様表出の双方を備えたものとすることができるとともにその成形は、それぞれ帯電防止剤を混合分散し、その一に基調色の顔料、他に模様色の顔料を混合分散した異色複数種、本例にあっては異色2種のペレット6、7を用いて共押出成形を行うことによって、該模様仕上げの防塵樹脂サッシAを得られるから、その生産も容易且つ確実に行うことができる。
【0057】
本発明の説明は以上のとおりとしたが、防塵樹脂サッシにおける模様色を複数色のものとすること、模様仕上げを石目調とすること、無色系帯電防止剤を、ポリエチレングリコール以外の高分子固体電解質を形成する4級アンモニウム塩系、スルホン酸系等の帯電防止剤を含有する高分子剤によるものとすること、防塵樹脂サッシの成形方法において、表出する模様色を2色とするように、上記帯電防止剤をそれぞれ混合分散したぺレットを、基調色用1種、模様色用2種とする如くに異色複数種とすること等を含めて、本発明の実施に当って、防塵樹脂サッシ、共押出成形、基層、表層、ベース樹脂、無色系帯電防止剤、表層の表面抵抗値、基調色用顔料、模様色用顔料、基調色、模様色、成形方法、異色複数種のペレット、必要に応じて用いる木目調の模様仕上げ、無色系帯電防止剤の重量比、成形温度等の各具体的形状、構造、材質、寸法、具体的成形方法、これらの関係、これらに対する付加等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【実験例1〜31】
【0058】
肉厚を1.5mmとした硬質ポリ塩化ビニル系樹脂の基層、即ち硬質ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とする組成物を押出成形した基層に、肉厚を0.2mmと一定とし、硬質ポリ塩化ビニル樹脂、即ち硬質ポリ塩化ビニル樹脂単体(ヴイテック社製)に帯電防止剤、基調色用又は模様色用の顔料を混合分散した木目調模様の異色2種類のペレットを用い、該異色2種類のペレット比率を7:3として、ベース樹脂に対する帯電防止剤の重量比を1、3、5、10、20重量部と変化し、表層成形温度を130、140、150、160、170、180℃と変化し、表層押出機(IKG株式会社製MVS25−25H)のスクリュー回転数を5、10、20、30rpmと変化し、表1のNo.1〜14に示すとおり14種の組み合わせで共押出成形して、防塵性、外観、JIS A5558「無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材」による性能について評価した。その結果を同じく表1に示す。木目調模様は、極めて美麗な木目調のものを◎とし、木目が見られないものを×として、◎、○、△、×の4段階評価を行い、防塵性は、表層(表面)の表面抵抗値を示すとともに該表面抵抗値が1013Ω以上を×、1011Ω以下を○として、○、△、×の3段階評価を行った。
【0059】
また、比較のために、帯電防止剤を含まない同様の異色2種類のペレットを用いて、成形温度を160℃、スクリュー回転数を同様とした同じく表1のNo.15〜18の4種の組み合わせで押出成形し、更に、同様に帯電防止剤を含まない同様の異色2種類のペレットを用い、該ペレットとは別に無色系帯電防止剤を、その粒径を0.15、0.3、0.5、1.4mmと変化(粒径4mmのものを用いたので、粒径1mm以下のものはこれを粉砕して使用)して同時に添加し、成形温度を140、160℃とし、スクリュー回転数を20rpmとした、同じく表1のNo.19〜31の組み合わせで押出成形した。上記と同じ基準によって評価した該No.15〜31の結果を併せて表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
(注)表1において、No.1〜14の添加部数は、ペレット中の無色系帯電防止剤の添加部数を示し、No.19〜31の添加部数は、異色2種類のペレットとは別に用いた無色形帯電防止剤の添加部数を示す。
【0062】
以上の実験例から、No.1〜14の結果である表層を、ベース樹脂にそれぞれ無色系帯電防止剤を混合分散するとともにその一に基調色の顔料を、他に模様色の顔料を混合分散した基調色用及び模様色用の異色複数種のペレットを用い、該異色複数種のペレットによって表層の共押出成形を行うことによって、ベース樹脂に対する無色系帯電防止剤の重量比を1重量部としたとき、表面抵抗値が1012Ωとなり、その防塵性評価が△となり、20重量部としたとき、表出の木目模様評価が△となり、また、スクリュー回転数を5rpmとしたとき、同じく木目評価が△となるも、その余の表面抵抗値は1011Ω乃至それ以下で、防塵性評価は○であり、木目模様評価も◎乃至○の結果であった。従って、ベース樹脂に対する無色系帯電防止剤の重量比は、これを3乃至20重量部とすることが好ましい。成形温度については、いずれも良好な結果を示すところ、特に130、140℃の木目模様評価が◎であることからすると、成形温度は130℃を幾分下回る温度でも良好な結果を示すものと認められ、従って成形温度は、これを120〜180℃とすることが好ましい。また、スクリュー回転数については、特に5rpmが△であることからすると、該スクリュー回転数は、これを、10〜20rpmとすることが好ましい。因みに木目模様評価◎、防塵性評価○は、重量比3重量部、成形温度160℃、スクリュー回転数20の場合、重量比10重量部、成形温度130℃と140℃、スクリュー回転数20の場合であるところ、後者の表面抵抗値は10Ω又は1010Ωと極めて優れているので、特に高度な防塵性と美麗な木目模様表出を行うには、後者の条件乃至ある程度の幅を有してこれに近い条件とすることによって可能となると認められる。
【0063】
一方、No.15〜18の結果である、無色系帯電防止剤を含まない異色2種類のペレットを用いた比較実験によると、木目模様評価は◎又は○であるも、帯電防止剤を含まないことによっていずれも表面抵抗値が1014Ωで防塵性評価は×であった。また、No.19〜31の結果である、帯電防止剤を含まない異色2種類のペレットを用い、該ペレットと別に無色系帯電防止剤を用いた比較実験によると、添加部数が3重量部以下の場合に木目模様評価で○乃至△があるも、その余は×であり、10重量部の場合に、粒径を1mm乃至それ以下に小さくしても結果は同じく×であり、従って粒径変化による影響も見られなかった。
【符号の説明】
【0064】
A防塵樹脂サッシ
1 基層
2 表層
3 帯電防止剤
4 基調色の顔料
5 模様色の顔料
6 基調色用ペレット
7 模様色用ペレット
8 共押出成形機
81 ホッパー
82 基層押出機
83 ホッパー
84 表層押出機
85 スクリュー
86 ダイス
87 冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共押出成形によって基層と表層の2層構造とし、表層を、ベース樹脂と、該ベース樹脂中に分散配置したベース樹脂に対して3〜20重量部の無色系帯電防止剤と、同じくベース樹脂中に分散配置して基調色と模様色用の異色複数の顔料とを備え、上記無色系帯電防止剤の分散配置をベース樹脂中に可及的均一に分布して表層を表面抵抗値1012Ω以下とするとともに上記異色複数のうち基調色用顔料の分散配置をベース樹脂中の幅方向全体的に亘るように分布して基調色とし、模様色用顔料の分散配置を幅方向部分的にランダムの筋状に分布して模様色として、表層を基調色に模様色を表出した模様仕上げとしてなることを特徴とする防塵樹脂サッシ。
【請求項2】
上記表層の肉厚を0.05〜0.5mmとし且つ該表層の表面抵抗値を1011Ω以下としてなることを特徴とする請求項1に記載の防塵樹脂サッシ。
【請求項3】
上記基調色と模様色用の異色複数の顔料における重量比を5:5〜9.5:0.5としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の防塵樹脂サッシ。
【請求項4】
上記基調色及び模様色を黄系、茶系乃至黒系を呈する顔料とすることにより、上記基調色と模様色による表層の模様仕上げを木目調としてなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の防塵樹脂サッシ。
【請求項5】
上記基層及び表層のベース樹脂を硬質ポリ塩化ビニル系樹脂とし、上記無色系帯電防止剤を、ポリエチレングリコールを含有するポリエーテル系の高分子剤としてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の防塵樹脂サッシ。
【請求項6】
共押出成形によって基層と表層の2層構造とし、表層を表面抵抗値1012Ω以下
とし且つ基調色と模様色による模様を表出して模様仕上げとした防塵樹脂サッシの成形方法であって、上記表層を、ベース樹脂にそれぞれ無色系帯電防止剤を混合分散するとともにその一に基調色の顔料を、他に模様色の顔料を混合分散した基調色用及び模様色用の異色複数種のペレットを用いて共押出成形を行うことを特徴とする防塵樹脂サッシの成形方法。
【請求項7】
共押出成形によって基層と表層の2層構造とし、表層を表面抵抗値1012Ω以下
とし且つ基調色と模様色による模様を表出して模様仕上げとした防塵樹脂サッシの成形方法であって、上記表層を、ベース樹脂のいずれかに無色系帯電防止剤を混合分散するとともにその一に基調色の顔料を、他に模様色の顔料を混合分散した基調色用及び模様色用の異色複数種のペレットを用いて共押出成形を行うことを特徴とする防塵樹脂サッシの成形方法。
【請求項8】
上記無色系帯電防止剤を混合分散した異色複数種のペレットを用いることによって、該無色系帯電防止剤の溶融による異色複数種のペレットのスクリュー内流動性阻害を防止し、共押出成形における該異色複数種のペレットのスクリュー通過を可及的に促進することを特徴とする請求項6又は7に記載の防塵樹脂サッシの成形方法。
【請求項9】
上記基調色と模様色用の異色複数種のペレットにおける顔料の重量比を5:5〜9.5:0.5とすることを特徴とする請求項6、7又は8に記載の防塵樹脂サッシ。
【請求項10】
上記基層及び表層のベース樹脂を硬質ポリ塩化ビニル系樹脂とし、上記無色系帯電防止剤を、ポリエチレングリコールを含有するポリエーテル系の高分子剤とし、上記基調色及び模様色を黄系、茶系乃至黒系を呈する顔料とすることにより、上記基調色と模様色による表層の模様仕上げを木目調とすることを特徴とする請求項6、7、8又は9に記載の防塵樹脂サッシの成形方法。
【請求項11】
上記無色系帯電防止剤を、ベース樹脂に対して3〜20重量部とし且つ上記表層の共押出成形の成形温度を120〜180℃とすることを特徴とする請求項6、7、8、9又は10に記載の防塵樹脂サッシの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122213(P2012−122213A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272263(P2010−272263)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】