説明

防振アクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット、カメラ

【課題】光軸方向の投影面積及び光軸方向の厚さを小さくすることができる防振アクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明は防振アクチュエータであって、固定部(12)と、像振れ防止用レンズ(16)が取り付けられた可動部(14)と、第1の方向及び第2の方向の駆動力を発生させる駆動手段と、を有し、駆動手段は、駆動用磁石(22)と、この駆動用磁石と対向するように、ほぼ同一平面上に配置された第1駆動用コイル(20a)及び第2駆動用コイル(20b)と、を備え、駆動用磁石には第1着磁境界線(C1)と、この第1着磁境界線に連なるように配置された第2着磁境界線(C2)が設けられ、第1駆動用コイルは第1着磁境界線と対向して配置され、電流が流れると第1の方向の駆動力を発生し、第2駆動用コイルは第2着磁境界線と対向して配置され、電流が流れると第2の方向の駆動力を発生することを特徴とする防振アクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振アクチュエータに関し、特に、像振れ防止用レンズを、その光軸に直交する平面内で移動させる防振アクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット、カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008−122531号公報(特許文献1)には、アクチュエータが記載されている。このアクチュエータの概略構成を図12に示す。図12に示すように、アクチュエータ110は、固定部112と像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部114を備え、可動部114は、3つのスチールボール118により、固定部112に対して並進移動及び回転移動可能に支持されている。また、可動部114は、2組の駆動用コイル120及び駆動用磁石122からなる2つのリニアモータにより駆動される。これら2つのリニアモータは、光軸に直交する同一平面上の、像振れ防止用レンズの鉛直上方、及び水平方向側方に像振れ防止用レンズを取り囲むように配置されている。
【0003】
また、特開2007−206102号公報(特許文献2)には、像ぶれ補正装置が記載されている。この像ぶれ補正装置においては、像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部の移動がガイド部材によって案内されると共に、可動部は、像振れ防止用レンズの下方に設けられた2つのリニアモータによって、水平方向、鉛直方向に夫々駆動される。また、この像ぶれ補正装置においては、2つのリニアモータは、光軸の方向に重なるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−122531号公報
【特許文献2】特開2007−206102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2008−122531号公報に記載されたアクチュエータにおいては、像振れ防止用レンズの周囲にリニアモータが配置されているため、像振れ防止用レンズの周囲に大きなスペースを要し、アクチュエータが大型化するという問題がある。
【0006】
一方、特開2007−206102号公報に記載された像ぶれ補正装置においては、2つのリニアモータが像振れ防止用レンズの下方に配置されているので、アクチュエータの光軸方向の投影面積を小さくすることができる。しかしながら、この像ぶれ補正装置においては、2つのリニアモータが光軸の方向に重なるように配置されているので、像ぶれ補正装置の光軸方向の厚さが大きくなるという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、光軸方向の投影面積及び光軸方向の厚さを小さくすることができる防振アクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット、カメラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、像振れ防止用レンズを、その光軸に直交する平面内で移動させる防振アクチュエータであって、固定部と、像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部と、この可動部が像振れ防止用レンズの光軸に直交する平面内で移動されるように、第1の方向及び第2の方向の駆動力を発生させる駆動手段と、を有し、駆動手段は、固定部と可動部のうちの一方に配置された駆動用磁石と、この駆動用磁石と対向するように、固定部と可動部のうちの他方に取り付けられ、ほぼ同一平面上に配置された第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルと、を備え、駆動用磁石には第1着磁境界線と、この第1着磁境界線に連なるように配置された第2着磁境界線が設けられ、第1駆動用コイルは第1着磁境界線と対向して配置され、電流が流れると第1の方向の駆動力を発生し、第2駆動用コイルは第2着磁境界線と対向して配置され、電流が流れると第2の方向の駆動力を発生することを特徴とする防振アクチュエータ。
【0009】
このように構成された本発明においては、像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部が、駆動手段により、光軸に直交する平面内で固定部に対して移動される。駆動手段は、第1着磁境界線及びこれに連なるように配置された第2着磁境界線が形成された駆動用磁石と、ほぼ同一平面上に配置された第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルと、を備えている。第1着磁境界線と対向して配置された第1駆動用コイルに電流が流れると第1の方向の駆動力を発生する。第2着磁境界線と対向して配置された第2駆動用コイルに電流が流れると第2の方向の駆動力を発生する。これらの駆動力により、可動部が移動される。
【0010】
このように構成された本発明によれば、第1駆動用コイルと第2駆動用コイルがほぼ同一平面上に配置されているので防振アクチュエータの光軸方向の厚さを小さくすることができると共に、駆動用磁石の第1着磁境界線と第2着磁境界線が連なるように配置されているので、防振アクチュエータの光軸方向の投影面積を小さくすることができる。これにより、防振アクチュエータを小型化することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、第1着磁境界線及び第2着磁境界線は、それらの延長線によって画定される領域の内側に像振れ防止用レンズが位置するように夫々位置決めされている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、第1着磁境界線及び第2着磁境界線により画定される領域の内側に像振れ防止用レンズが配置されるので、各着磁境界線と像振れ防止用レンズをより近接して配置することが可能になり、防振アクチュエータの光軸方向の投影面積をより小さくすることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、第1着磁境界線及び第2着磁境界線はほぼ直角を為すように位置決めされ、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルは夫々、直角の二等分線に対して線対称の位置に配置されている。
【0014】
このように構成された本発明によれば、第1着磁境界線及び第2着磁境界線がほぼ直角を為すように位置決めされているので、駆動力が発生する第1の方向と第2の方向がほぼ直角を為し、可動部を効率良く駆動することができる。また、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルが二等分線に対して線対称の位置に配置されているので、第1の方向及び第2の方向の駆動力をバランス良く発生させることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルは、像振れ防止用レンズの光軸から第1着磁境界線に平行に延びる第1の直線と、像振れ防止用レンズの光軸から第2着磁境界線に平行に延びる第2の直線によって形成される領域の内側に配置されている。
【0016】
このように構成された本発明によれば、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルが第1、第2の直線によって形成される領域の内側にまとめて配置されるので防振アクチュエータの光軸方向の投影面積をより小さくすることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、第1着磁境界線及び第2着磁境界線は、二等分線と、像振れ防止用レンズの光軸が交わるように位置決めされている。
このように構成された本発明によれば、着磁境界線の二等分線と、像振れ防止用レンズの光軸が交わるように位置決めされているので、像振れ防止用レンズに対してバランス良く駆動力を発生させることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、駆動用磁石は、二等分線に対して線対称の形状に形成されている。
このように構成された本発明によれば、駆動用磁石が二等分線に対して線対称の形状に形成されているので、駆動用磁石の質量分布が二等分線に対して対称になると共に、発生させる磁界を二等分線に対して対称にすることができるので、駆動力をバランス良く発生させることができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、第1駆動用コイルは、第1着磁境界線とほぼ平行な辺及び二等分線に沿って配置された辺を有するように構成され、第2駆動用コイルは、第2着磁境界線とほぼ平行な辺及び二等分線に沿って配置された辺を有するように構成されている。
【0020】
このように構成された本発明によれば、着磁境界線とほぼ平行な辺により着磁境界線に対して直角な方向の駆動力を発生させながら、二等分線に沿う辺を設けることにより、駆動用コイルを二等分線に近接した位置に小さいスペースに配置することができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、第1駆動用コイルは、第1着磁境界線と直角に交わる直線に対してほぼ線対称の形状に形成され、第2駆動用コイルは、第2着磁境界線と直角に交わる直線に対してほぼ線対称の形状に形成されている。
【0022】
このように構成された本発明によれば、駆動用コイルが着磁境界線と直角に交わる直線に対してほぼ線対称に形成されているので、発生する駆動力のうち着磁境界線に平行な方向の成分を打ち消すことができ、不要な駆動力の発生を抑制することができる。
【0023】
本発明において、好ましくは、第1駆動用コイルは、第1着磁境界線とほぼ平行な辺及び二等分線に沿って配置された辺を有する六角形状に構成され、第2駆動用コイルは、第2着磁境界線とほぼ平行な辺及び二等分線に沿って配置された辺を有する六角形状に構成されている。
【0024】
このように構成された本発明によれば、駆動用コイルを二等分線に近接した位置に小さいスペースに配置することを可能にしながら、不要な駆動力の発生を抑制することができる。
【0025】
本発明において、好ましくは、さらに、駆動用磁石の磁気を検出することにより、可動部の第1の方向及び第2の方向の変位を夫々検出する第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、第1磁気センサは第1駆動用コイルの巻線の内側に配置され、第2磁気センサは第2駆動用コイルの巻線の内側に配置されている。
【0026】
このように構成された本発明によれば、位置検出を行うための磁石と駆動用磁石を兼用にすることができると共に、磁気センサが駆動用コイルの巻線の内側に配置されているので、磁気センサを配置するためのスペースを省略することができる。
【0027】
また、本発明のレンズユニットは、レンズ鏡筒と、このレンズ鏡筒の中に配置された撮像用レンズと、レンズ鏡筒に取り付けられた本発明の防振アクチュエータと、を有することを特徴としている。
さらに、本発明のカメラは、本発明のレンズユニットと、このレンズユニットが取り付けられたカメラボディと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明の防振アクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット、カメラによれば、光軸方向の投影面積及び光軸方向の厚さの両方を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態によるカメラの断面図である。
【図2】本発明の実施形態のカメラに使用されている防振アクチュエータの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態のカメラに使用されている防振アクチュエータの分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態のカメラに使用されている防振アクチュエータの(a)正面図、及び(b)b−b断面図である。
【図5】本発明の実施形態のカメラに使用されている防振アクチュエータの可動部の背面図である。
【図6】本発明の実施形態のカメラに使用されている防振アクチュエータの駆動用磁石の正面図である。
【図7】本発明の実施形態のカメラに使用されている防振アクチュエータの駆動用コイルの正面図である。
【図8】コントローラにおける信号処理を示すブロック図である。
【図9】駆動用コイルの形状及び配置の変形例を示す図である。
【図10】駆動用コイルの形状及び配置の変形例を示す図である。
【図11】駆動用コイルの形状及び配置の変形例を示す図である。
【図12】従来のアクチュエータの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1乃至図8を参照して、本発明の実施形態によるカメラを説明する。図1は本発明の実施形態によるカメラの断面図である。
図1に示すように、本発明の実施形態のカメラ1は、レンズユニット2と、カメラ本体4と、を有する。レンズユニット2は、レンズ鏡筒6と、このレンズ鏡筒の中に配置された複数の撮像用レンズ8と、像振れ防止用レンズ16を所定の平面内で移動させる防振アクチュエータ10と、レンズ鏡筒6の振動を検出する振動検出手段であるジャイロ34a、34b(図1には34aのみ図示)と、を有する。
【0031】
本発明の実施形態のカメラ1は、ジャイロ34a、34bによって振動を検出し、検出された振動に基づいて防振アクチュエータ10を作動させて像振れ防止用レンズ16を移動させ、カメラ本体4内の撮像素子Eに合焦される画像を安定化させている。本実施形態においては、ジャイロ34a、34bとして、圧電振動ジャイロを使用している。なお、本実施形態においては、像振れ防止用レンズ16は、1枚のレンズによって構成されているが、画像を安定させるためのレンズは、複数枚のレンズ群であっても良い。本明細書において、像振れ防止用レンズとは、画像を安定させるための1枚のレンズ及びレンズ群を含むものとする。
【0032】
レンズユニット2は、カメラ本体4に取り付けられ、入射した光を撮像素子Eに結像させるように構成されている。
概ね円筒形のレンズ鏡筒6は、内部に複数の撮像用レンズ8を保持しており、一部の撮像用レンズ8を移動させることによりピント調整を可能としている。
【0033】
次に、図2乃至図8を参照して、防振アクチュエータ10を説明する。図2は防振アクチュエータ10の斜視図であり、図3は分解斜視図である。図4は、防振アクチュエータ10の(a)正面図、及び(b)b−b断面図である。図5は、防振アクチュエータ10の可動部の背面図である。図6は防振アクチュエータ10の駆動用磁石の正面図である。図7は防振アクチュエータ10の駆動用コイルの正面図である。
【0034】
図2乃至図4に示すように、防振アクチュエータ10は、レンズ鏡筒6内に固定された固定部である固定板12と、この固定板12に対して並進移動可能に支持された可動部である移動枠14と、この移動枠14を支持する可動部支持手段である3つのスチールボール18と、を有する。また、移動枠14には、ガイド手段19が設けられており、ガイド手段19は、移動枠14が像振れ防止用レンズ16の光軸Aに直交する平面内で並進移動されるように、移動枠14を案内している。
【0035】
さらに、防振アクチュエータ10は、移動枠14に取り付けられた第1駆動用コイル20a、及び第2駆動用コイル20bと、駆動用コイル20a及び20bに対向するように、固定板12に取り付けられた駆動用磁石22と、各駆動用コイル20a、20bの内側に夫々配置された第1、第2位置検出素子である第1磁気センサ24a、第2磁気センサ24bと、を有する。
【0036】
また、防振アクチュエータ10は、駆動用磁石の磁力によって移動枠14を固定板12に吸着させるために、移動枠14の裏側に取り付けられた吸着用ヨーク26と、駆動用磁石22の裏面に取り付けられたバックヨーク28と、を有する。なお、第1駆動用コイル20a、第2駆動用コイル20b及びこれらに対応する位置に取り付けられた駆動用磁石22は、移動枠14を固定板12に対して駆動する駆動手段を構成する。
【0037】
さらに、図1に示すように、防振アクチュエータ10は、ジャイロ34a、34bによって検出された振動と、第1、第2磁気センサ24a、24bによって検出された移動枠14の位置情報に基づいて、第1、第2駆動用コイル20a、20bに流す電流を制御する制御部であるコントローラ36を有する。
【0038】
防振アクチュエータ10は、移動枠14を、レンズ鏡筒6に固定された固定板12に対して撮像素子Eに平行な平面内で並進移動させ、これにより移動枠14に取り付けられた像振れ防止用レンズ16を移動させてレンズ鏡筒6が振動しても撮像素子Eに結像される像が乱れることがないように駆動される。
【0039】
固定板12は、入射光を通過させる開口部12aと、その上方の、駆動用磁石22を取り付けるための平板部12bと、を有する板状の部材である。平板部12bには、バックヨーク28及び駆動用磁石22が重ねて取り付けられている。
【0040】
図3及び6に示すように、駆動用磁石22は、概ね長方形板状の磁石であり、その下辺は固定板12の開口部12aに沿うように円弧状に形成され、また上辺も固定板12の上辺の形状に合わせて円弧状に形成されている。さらに、駆動用磁石22には、第1着磁境界線C1、第2着磁境界線C2の二本の着磁境界線が形成されている。これらの着磁境界線C1、C2は、概ね直線状であり、互いに直角を為すように連なって形成されている。着磁境界線C1、C2が形成する直角の頂点は上方に向けられており、直角の内側に像振れ防止用レンズ16が位置するように配置されている。また、着磁境界線C1、C2が形成する直角の頂点は、像振れ防止用レンズ16の光軸Aの鉛直上方に位置すると共に、着磁境界線C1、C2が形成する直角の二等分線C3は鉛直方向に向けられ、光軸Aと交わるように位置決めされている。さらに、本実施形態においては、駆動用磁石22は、着磁境界線C1、C2の上側がS極、下側がN極となるように着磁されていると共に、二等分線C3に対して線対称の形状に構成されている。なお、本明細書において、着磁境界線とは、駆動用磁石の端部を夫々S極、N極としたとき、極性がS極からN極に変化する点を連ねた線を言うものとする。
【0041】
バックヨーク28は、駆動用磁石22と同様の形状の板状の磁性材で構成されている。バックヨーク28は、駆動用磁石22、吸着用ヨーク26と共に磁気回路を形成し、第1駆動用コイル20a及び第2駆動用コイル20bを透過する磁界を効果的に形成している。即ち、固定板12にはバックヨーク28が取り付けられ、その上に駆動用磁石22が重ねて取り付けられている。また、移動枠14には、駆動用磁石22と対向する側の面に第1駆動用コイル20a、第2駆動用コイル20bが取り付けられていると共に、反対側の面の各駆動用コイルと重なる位置には吸着用ヨーク26が取り付けられている。
【0042】
移動枠14は、その下部の開口部に像振れ防止用レンズ16が取り付けられ、上部に第1駆動用コイル20a及び第2駆動用コイル20bが取り付けられる板状の部材であり、固定板12と平行に重なるように配置されている。移動枠14は、各駆動用コイルに電流を流すことにより、光軸Aに直交する平面内で並進運動されるように駆動される。
【0043】
図7に示すように、第1、第2駆動用コイル20a、20bは夫々同一形状に形成され、その巻線が角の丸い六角形状に巻かれている。また、第1駆動用コイル20aは、第1着磁境界線C1に対して線対称の形状に形成されると共に、第1着磁境界線C1と直角に交わる直線に対して線対称の形状に形成されている。同様に、第2駆動用コイル20bは、第2着磁境界線C2に対して線対称の形状に形成されると共に、第2着磁境界線C2と直角に交わる直線に対して線対称の形状に形成されている。
【0044】
また、第1、第2駆動用コイル20a、20bは同一平面上に配置され、その最も長い対角線が、駆動用磁石22の第1着磁境界線C1、第2着磁境界線C2の光軸A方向の投影線C11、C22と夫々重なるように配置されている。さらに、第1、第2駆動用コイル20a、20bは、第1着磁境界線C1と第2着磁境界線C2が形成する直角の二等分線C3を光軸A方向に投影した二等分線C33に対して線対称の位置に配置されている。さらに、第1、第2駆動用コイル20a、20bは、それらの1つの辺が、二等分線C33に沿って平行になるように配置されている。
【0045】
第1駆動用コイル20aには、六角形の各辺に沿って第1巻線部20a1、第2巻線部20a2、第3巻線部20a3、第4巻線部20a4、第5巻線部20a5、及び第6巻線部20a6が夫々形成されている。これらの巻線部のうち、第1巻線部20a1及び第4巻線部20a4は、第1着磁境界線C1と平行に向けられている。また、第3巻線部20a3は、二等分線C33に接するように、二等分線C33に平行に配置されている。
【0046】
第1巻線部20a1及び第4巻線部20a4は、第1駆動用コイル20aに電流が流れると第1着磁境界線C1に対して直角な同一方向の推力F1、F4を夫々発生する。また、第2巻線部20a2及び第6巻線部20a6は、巻線の向けられている方向に直角な方向の推力F2、F6を夫々発生する。図7に示すように、これら推力F2、F6のうち、第1着磁境界線C1に対して直角な方向の成分は同一の方向で大きさが等しく、第1着磁境界線C1に対して平行な方向の成分は反対方向で大きさが等しくなる。このため、推力F2、F6の第1着磁境界線C1に対して平行な方向の成分は打ち消され、第2巻線部20a2及び第6巻線部20a6が発生する推力は、第1着磁境界線C1に対して直角な方向の成分のみが移動枠14を駆動するための推力として作用する。同様に、第3巻線部20a3及び第5巻線部20a5が発生する推力も、第1着磁境界線C1に対して平行な方向の成分は打ち消され、直角な方向の成分のみが移動枠14を駆動するための推力として作用する。従って、電流が流れることにより、第1駆動用コイル20aは全体として、第1の方向である第1着磁境界線C1に対して直角な方向の推力を発生させる。
【0047】
図7に示すように、第2駆動用コイル20bは、その最も長い対角線が、第1駆動用コイル20aに対して90゜回転された方向に取り付けられている。このため、第2着磁境界線C2に対して平行に配置された第2駆動用コイル20bの2つの巻線部は、第2着磁境界線C2に対して直角な同一方向の推力を夫々発生する。第2駆動用コイル20bの1つの巻線部は、二等分線C33に接するように、二等分線C33に平行に配置されている。この配置により、第2駆動用コイル20bに電流が流れると、全体として、第2の方向である第2着磁境界線C2に対して直角な方向の推力を発生される。
【0048】
また、図5に示すように、第1駆動用コイル20a及び第2駆動用コイル20bは、像振れ防止用レンズ16の光軸Aから第1着磁境界線C1に平行に延びる第1の直線L1と、像振れ防止用レンズ16の光軸Aから第2着磁境界線C2に平行に延びる第2の直線L2によって形成される領域の内側に配置されている。このように、第1駆動用コイル20a及び第2駆動用コイル20bを直線L1、L2で画定される領域内に集約的に配置することにより防振アクチュエータの光軸方向の投影面積を小さくしている。
【0049】
図3及び図4に示すように、3つのスチールボール18は、固定枠12と移動枠14の間に挟持され、光軸Aを中心とする円の円周上に夫々、中心角120゜の間隔を隔てて配置されている。各スチールボール18は、固定枠12及び移動枠14に夫々形成されたスチールボール受け30、32の中に配置されている。スチールボール受け30、32には、凹部が形成されており、その中でスチールボール18が円滑に転動できるようになっていると共に、スチールボール18の脱落が防止される。また、移動枠14は駆動用磁石22により固定板12に吸着されるので、各スチールボール18は固定板12と移動枠14の間に挟持される。これにより、移動枠14は固定板12に平行な平面上に支持され、各スチールボール18が挟持されながら転がることによって、移動枠14の固定板12に対する移動が許容される。
【0050】
図2乃至4に示すように、ガイド手段19は、L字型シャフト19aと、レンズ鏡筒6内に固定された固定側摺動軸受け19bと、移動枠14に設けられた移動側摺動軸受け19cと、を有する。レンズ鏡筒6内に固定された固定側摺動軸受け19bは、L字型シャフト19aの鉛直部分を、鉛直方向に摺動可能に受け入れている。一方、移動枠14に設けられた移動側摺動軸受け19cは、L字型シャフト19aの水平部分を、水平方向に摺動可能に受け入れている。このように構成されたガイド手段19により、光軸Aに直交する平面内における移動枠14の回転移動は拘束され、移動枠14の並進移動のみが許容される。
【0051】
図5及び図7に示すように、第1駆動用コイル20a、第2駆動用コイル20bの内側には、第1磁気センサ24a、第2磁気センサ24bが夫々配置されている。第1磁気センサ24aは、第1駆動用コイル20aと第1着磁境界線C1付近の駆動用磁石22により発生する駆動力に対応した、第1着磁境界線C1に直角な方向の移動枠14の変位を測定するように構成されている。また、第2磁気センサ24bは、第2駆動用コイル20bと第2着磁境界線C2付近の駆動用磁石22により発生する駆動力に対応した、第2着磁境界線C2に直角な方向の移動枠14の変位を測定するように構成されている。磁気センサ24a、24bは、移動枠14が中立位置にあるとき、その感度中心点Sが、駆動用磁石22の第1着磁境界線C1、第2着磁境界線C2上に夫々位置するように配置されている。なお、本実施形態においては、磁気センサとしてホール素子を使用している。
【0052】
磁気センサからの出力信号は、磁気センサの感度中心点Sが駆動用磁石の着磁境界線上に位置する場合には0であり、駆動用磁石が移動し、磁気センサ感度中心点Sが駆動用磁石の着磁境界線上から外れると、磁気センサの出力信号が変化する。防振アクチュエータ10が通常作動する、駆動用磁石の移動量が微小な領域においては、駆動用磁石の着磁境界線に直交する方向の移動距離にほぼ比例した信号が磁気センサから出力される。
【0053】
このため、第1磁気センサ24aは、図5における移動枠14のY軸方向、即ち、第1の方向の並進移動量にほぼ比例した信号を出力し、第2磁気センサ24bは移動枠14のX軸方向、即ち、第2の方向の並進移動量にほぼ比例した信号を出力する。これら第1、第2磁気センサ24a、24bによって検出された信号に基づいて、移動枠14が固定枠12に対して並進移動した位置を特定することができる。
【0054】
次に、図8を参照して、防振アクチュエータ10の制御を説明する。図8は、コントローラ36における信号処理を示すブロック図である。図8に示すように、レンズユニット2の振動は、2つのジャイロ34a、34bによって時々刻々検出され、コントローラ36に内蔵された演算回路38a、38bに入力される。本実施形態においては、ジャイロ34aはレンズユニット2のX軸を中心とする回転の角速度を、ジャイロ34bはY軸を中心とする回転の角速度を夫々検出するように構成され、配置されている。
【0055】
演算回路38a、38bは、ジャイロ34a、34bから時々刻々入力される角速度に基づいて、像振れ防止用レンズ16を移動させるべき位置を時系列で指令するレンズ位置指令信号を生成する。すなわち、演算回路38aは、ジャイロ34aによって検出される角速度を時間積分し、所定の修正信号を加算することによってレンズ位置指令信号Y軸方向成分を生成し、同様に、演算回路38bは、ジャイロ34bによって検出される角速度に基づいてレンズ位置指令信号のX軸方向成分を生成するように構成されている。このようにして得られたレンズ位置指令信号に従って、像振れ防止用レンズ16を時々刻々移動させることにより、写真撮影の露光中にレンズユニット2が振動した場合にも、カメラ本体4内の撮像素子Eに合焦される像は乱れることなく安定化される。
【0056】
コントローラ36は、演算回路38a、38bによって生成されたレンズ位置指令信号によって指示された位置に、像振れ防止用レンズ16が移動されるように、第1、第2駆動用コイル20a、20bに流す電流を制御する。
【0057】
第1着磁境界線C1に対する第1駆動用コイル20aのY軸方向の移動量は第1磁気センサ24aによって測定され、測定された移動量は磁気センサアンプ42aによって所定の倍率に増幅される。差動回路44aは、演算回路38aから出力されたレンズ位置指令信号のY軸方向成分と、磁気センサアンプ42aから出力された第1着磁境界線C1に対する第1駆動用コイル20aのY軸方向の移動量との差に比例した電流を第1駆動用コイル20aに流す。従って、レンズ位置指令信号によって指令されたレンズ位置のY軸方向成分と磁気センサアンプ42aからの出力に差がなくなると、第1駆動用コイル20aには電流が流れなくなり、Y軸方向の駆動力は0になる。
【0058】
同様に、第2着磁境界線C2に対する第2駆動用コイル20bのX軸方向の移動量は第2磁気センサ24bによって測定され、測定された移動量は磁気センサアンプ42bによって所定の倍率に増幅される。差動回路44bは、演算回路38bから出力されたレンズ位置指令信号のX軸方向成分と、磁気センサアンプ42bから出力された第2着磁境界線C2に対する第2駆動用コイル20bのX軸方向の移動量との差に比例した電流を第2駆動用コイル20bに流す。従って、レンズ位置指令信号によって指令されたレンズ位置のX軸方向成分と磁気センサアンプ42bからの出力に差がなくなると、第2駆動用コイル20bには電流が流れなくなり、X軸方向の駆動力は0になる。
【0059】
なお、第1駆動用コイル20aと駆動用磁石22の間に発生する駆動力は、移動枠14のY軸方向の並進移動ばかりでなく、回転移動をも引き起こし得るものである。しかしながら、移動枠14の回転移動はガイド手段19により妨げられるため、第1駆動用コイル20aと駆動用磁石22の間に発生する駆動力により移動枠14のY軸方向の並進移動のみが発生する。同様に、第2駆動用コイル20bと駆動用磁石22の間に発生する駆動力により移動枠14のX軸方向の並進移動のみが発生する。
【0060】
次に、図1及び8を参照して、本発明の実施形態によるカメラ1の作用を説明する。まず、カメラ1の手ブレ防止機能の起動スイッチ(図示せず)をONにすることにより、レンズユニット2に備えられた防振アクチュエータ10が作動される。レンズユニット2に取り付けられたジャイロ34a、34bは、所定周波数帯域の振動を時々刻々検出し、コントローラ36に内蔵された演算回路38a、38bに出力する。ジャイロ34aはレンズユニット2のX軸を中心とする回転の角速度の信号を演算回路38aに出力し、ジャイロ34bはY軸を中心とする回転の角速度の信号を演算回路38bに出力する。演算回路38aは、入力された角速度信号を時間で積分して、回転角度を算出し、これに所定の修正信号を加えてY軸方向のレンズ位置指令信号を生成する。同様に、演算回路38bは、入力された角速度信号を時間で積分して、回転角度を算出し、これに所定の修正信号を加えてX軸方向のレンズ位置指令信号を生成する。演算回路38a、38bによって時系列で出力されるレンズ位置指令信号によって指令される位置に、像振れ防止用レンズ16を時々刻々移動させることによって、カメラ本体4の撮像素子Eに合焦される像が安定化される。
【0061】
一方、第1駆動用コイル20aの内側に配置された第1磁気センサ24aは磁気センサアンプ42aに、第2駆動用コイル20bの内側の第2磁気センサ24bは磁気センサアンプ42bに検出信号を出力する。磁気センサアンプ42a、42bで夫々増幅された各磁気センサの検出信号は、差動回路44a、44bに夫々入力される。
【0062】
差動回路44a、44bは、入力された各磁気センサの検出信号と、各演算回路38a、38bから入力された信号の差に応じた電圧を夫々発生し、この電圧に比例した電流を各駆動用コイルに流す。各駆動用コイルに電流が流れると電流に比例した磁界が発生する。この磁界により第1、第2着磁境界線C1、C2に対応して配置された第1、第2駆動用コイル20a、20bは夫々駆動力を受け、移動枠14が移動される。移動枠14が駆動力によって移動され、レンズ位置指令信号により指定された位置に到達すると、各差動回路の出力は0となり、駆動力も0になる。また、外乱、又は、レンズ位置指令信号の変化等により、移動枠14がレンズ位置指令信号により指定された位置から外れると、再び各駆動用コイルに電流が流され、移動枠14はレンズ位置指令信号により指定された位置に戻される。
【0063】
以上の作用が時々刻々繰り返されることにより、移動枠14に取り付けられた像振れ防止用レンズ16が、レンズ位置指令信号に追従するように移動される。これにより、カメラ本体4の撮像素子Eに合焦される像が安定化される。
【0064】
本発明の実施形態の防振アクチュエータによれば、第1駆動用コイルと第2駆動用コイルがほぼ同一平面上に配置されているので防振アクチュエータの光軸方向の厚さを小さくすることができると共に、駆動用磁石の第1着磁境界線と第2着磁境界線が連なるように配置されているので、防振アクチュエータの光軸方向の投影面積を小さくすることができる。これにより、防振アクチュエータを小型化することができる。
【0065】
また、本実施形態の防振アクチュエータによれば、第1着磁境界線と第2着磁境界線が為す直角の内側の領域に像振れ防止用レンズが配置されているので、各着磁境界線と像振れ防止用レンズをより近接して配置することが可能になり、防振アクチュエータの光軸方向の投影面積をより小さくすることができる。
【0066】
さらに、本実施形態の防振アクチュエータによれば、第1着磁境界線及び第2着磁境界線がほぼ直角を為すように位置決めされているので、駆動力が発生する第1の方向と第2の方向がほぼ直角を為し、第1、第2の方向の駆動力が打ち消し合うことがなく、移動枠を効率良く駆動することができる。また、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルが二等分線に対して線対称の位置に配置されているので、第1の方向及び第2の方向の駆動力をバランス良く発生させることができる。
【0067】
また、本実施形態の防振アクチュエータによれば、第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルが、像振れ防止用レンズの光軸から第1着磁境界線に平行に延びる第1の直線と、光軸から第2着磁境界線に平行に延びる第2の直線によって形成される領域の内側に配置されているので、防振アクチュエータの光軸方向の投影面積をより小さくすることができる。
【0068】
さらに、本実施形態の防振アクチュエータによれば、駆動用磁石の第1着磁境界線が設けられた部分と、第2着磁境界線が設けられた部分が一体に構成されているので、複数の駆動用磁石を使用する従来の防振アクチュエータよりも部品点数を少なくすることができる。
【0069】
また、本実施形態の防振アクチュエータによれば、着磁境界線が為す角の二等分線と、像振れ防止用レンズの光軸が交わるように位置決めされているので、像振れ防止用レンズに対してバランス良く駆動力を発生させることができる。
【0070】
さらに、本実施形態の防振アクチュエータによれば、駆動用磁石が二等分線に対して線対称の形状に形成されているので、駆動用磁石の質量分布が二等分線に対して対称になると共に、発生させる磁界を二等分線に対して対称にすることができるので、駆動力をバランス良く発生させることができる。
【0071】
また、本実施形態の防振アクチュエータによれば、各駆動用コイルが、各着磁境界線とほぼ平行な辺及び二等分線に沿って配置された辺を有するように構成されているので、着磁境界線とほぼ平行な辺により着磁境界線に対して直角な方向の駆動力を発生させながら、二等分線に沿う辺を設けることにより、駆動用コイルを二等分線に近接した位置に小さいスペースに配置することができる。
【0072】
さらに、本実施形態の防振アクチュエータによれば、駆動用コイルが着磁境界線と直角に交わる直線に対してほぼ線対称に形成されているので、発生する駆動力のうち着磁境界線に平行な方向の成分を打ち消すことができ、不要な駆動力の発生を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態の防振アクチュエータによれば、各駆動用コイルが各着磁境界線とほぼ平行な辺及び二等分線に沿って配置された辺を有する六角形状に構成されているので、駆動用コイルを二等分線に近接した位置に小さいスペースに配置することを可能にしながら、不要な駆動力の発生を抑制することができる。
【0074】
さらに、本実施形態の防振アクチュエータによれば、駆動用磁石の磁気を検出する各磁気センサが各駆動用コイルの巻線の内側に配置されているので、位置検出を行うための磁石と駆動用磁石を兼用にすることができると共に、磁気センサが駆動用コイルの巻線の内側に配置されているので、磁気センサを配置するためのスペースを省略することができる。
【0075】
上述した本発明の実施形態においては、第1着磁境界線及び第2着磁境界線が直角を為すように連ねて形成された単一の駆動用磁石が用いられていたが、変形例として、駆動用磁石22を別体に形成した第1駆動用磁石及び第2駆動用磁石から構成することもできる。即ち、第1着磁境界線が設けられた第1駆動用磁石と、第2着磁境界線が設けられた第2駆動用磁石を、第1着磁境界線と第2着磁境界線が概ね連なるように配置し、これを駆動用磁石として使用することができる。例えば、上述した実施形態における駆動用磁石22を、二等分線C3において分割することにより、駆動用磁石を2つの別体に形成することができる。
【0076】
また、上述した本発明の実施形態においては、第1着磁境界線及び第2着磁境界線は、直角を為すように配置されていたが、着磁境界線の為す角度は直角以外の角度でも良い。
【0077】
さらに、上述した本発明の実施形態においては、第1着磁境界線及び第2着磁境界線は、直角の頂点から一方向に延びるように設けられていたが、第1着磁境界線と第2着磁境界線を、それらが互いに交差するように設けることもできる。
【0078】
また、上述した本発明の実施形態においては、駆動用コイルは六角形に形成されていたが、変形例として、駆動用コイルは種々の形状に構成することができる。例えば、図9に示すように、各駆動用コイルを概ね長円形に形成し、長円形の長軸が、駆動用磁石の各着磁境界線と重なるように各駆動用コイルを配置することもできる。
【0079】
さらに、上述した本発明の実施形態においては、第1着磁境界線及び第2着磁境界線の延長線によって画定される領域の内側に像振れ防止用レンズが位置していた。即ち、第1着磁境界線及び第2着磁境界線が形成する頂点から各着磁境界線を延長した90゜の角の内側に像振れ防止用レンズが位置するように、第1着磁境界線及び第2着磁境界線が位置決めされている。変形例として、図10に示すように、第1着磁境界線と第2着磁境界線が為す角の外側に像振れ防止用レンズが位置するように、各着磁境界線を位置決めしても良い。
【0080】
また、上述した本発明の実施形態においては、駆動用磁石には、第1着磁境界線及び第2着磁境界線のみが形成されていたが、変形例として、3つ以上の着磁境界線を設けることもできる。図11に示す例においては、駆動用磁石には、第1着磁境界線C1、第2着磁境界線C2に加えて、第3着磁境界線C3が形成されており、これらに対応して3つの駆動用コイルが配置されている。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、本発明をデジタルスチルカメラに適用していたが、本発明をフィルムカメラ、ビデオカメラ等に適用することもできる。また、上述した実施形態においては、駆動用コイルが固定部に、駆動用磁石が可動部に取り付けられていたが、駆動用コイルを可動部に、駆動用磁石を固定部に取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0082】
A 光軸
C1 第1着磁境界線
C2 第2着磁境界線
C3 二等分線
1 本発明の実施形態のカメラ
2 レンズユニット
4 カメラ本体
6 レンズ鏡筒
8 撮像用レンズ
10 防振アクチュエータ
12 固定板(固定部)
12a 開口部
12b 平板部
14 移動枠(可動部)
16 像振れ防止用レンズ
18 スチールボール(可動部支持手段)
19 ガイド手段
19a L字型シャフト
19b 固定側摺動軸受け
19c 移動側摺動軸受け
20a 第1駆動用コイル
20b 第2駆動用コイル
22 駆動用磁石
24a 第1磁気センサ(第1位置検出素子)
24b 第2磁気センサ(第2位置検出素子)
26 吸着用ヨーク
28 バックヨーク
30 スチールボール受け
32 スチールボール受け
34a、34b ジャイロ
36 コントローラ(制御部)
38a、38b 演算回路
42a、42b 磁気センサアンプ
44a、44b 差動回路
110 アクチュエータ
112 固定部
114 可動部
118 スチールボール
120 駆動用コイル
122 駆動用磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像振れ防止用レンズを、その光軸に直交する平面内で移動させる防振アクチュエータであって、
固定部と、
上記像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部と、
この可動部が上記像振れ防止用レンズの光軸に直交する平面内で移動されるように、第1の方向及び第2の方向の駆動力を発生させる駆動手段と、を有し、
上記駆動手段は、上記固定部と上記可動部のうちの一方に配置された駆動用磁石と、この駆動用磁石と対向するように、上記固定部と上記可動部のうちの他方に取り付けられ、ほぼ同一平面上に配置された第1駆動用コイル及び第2駆動用コイルと、を備え、
上記駆動用磁石には第1着磁境界線と、この第1着磁境界線に連なるように配置された第2着磁境界線が設けられ、上記第1駆動用コイルは上記第1着磁境界線と対向して配置され、電流が流れると第1の方向の駆動力を発生し、上記第2駆動用コイルは上記第2着磁境界線と対向して配置され、電流が流れると第2の方向の駆動力を発生することを特徴とする防振アクチュエータ。
【請求項2】
上記第1着磁境界線及び上記第2着磁境界線は、それらの延長線によって画定される領域の内側に上記像振れ防止用レンズが位置するように夫々位置決めされている請求項1記載の防振アクチュエータ。
【請求項3】
上記第1着磁境界線及び上記第2着磁境界線はほぼ直角を為すように位置決めされ、上記第1駆動用コイル及び上記第2駆動用コイルは夫々、上記直角の二等分線に対して線対称の位置に配置されている請求項1又は2に記載の防振アクチュエータ。
【請求項4】
上記第1駆動用コイル及び上記第2駆動用コイルは、上記像振れ防止用レンズの光軸から上記第1着磁境界線に平行に延びる第1の直線と、上記像振れ防止用レンズの光軸から上記第2着磁境界線に平行に延びる第2の直線によって形成される領域の内側に配置されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。
【請求項5】
上記第1着磁境界線及び上記第2着磁境界線は、上記二等分線と、上記像振れ防止用レンズの光軸が交わるように位置決めされている請求項4記載の防振アクチュエータ。
【請求項6】
上記駆動用磁石は、上記二等分線に対して線対称の形状に形成されている請求項4又は5記載の防振アクチュエータ。
【請求項7】
上記第1駆動用コイルは、上記第1着磁境界線とほぼ平行な辺及び上記二等分線に沿って配置された辺を有するように構成され、上記第2駆動用コイルは、上記第2着磁境界線とほぼ平行な辺及び上記二等分線に沿って配置された辺を有するように構成されている請求項4乃至6の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。
【請求項8】
上記第1駆動用コイルは、上記第1着磁境界線と直角に交わる直線に対してほぼ線対称の形状に形成され、上記第2駆動用コイルは、上記第2着磁境界線と直角に交わる直線に対してほぼ線対称の形状に形成されている請求項1乃至7の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。
【請求項9】
上記第1駆動用コイルは、上記第1着磁境界線とほぼ平行な辺及び上記二等分線に沿って配置された辺を有する六角形状に構成され、上記第2駆動用コイルは、上記第2着磁境界線とほぼ平行な辺及び上記二等分線に沿って配置された辺を有する六角形状に構成されている請求項4乃至8の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。
【請求項10】
さらに、上記駆動用磁石の磁気を検出することにより、上記可動部の第1の方向及び第2の方向の変位を夫々検出する第1磁気センサ及び第2磁気センサを有し、上記第1磁気センサは上記第1駆動用コイルの巻線の内側に配置され、上記第2磁気センサは上記第2駆動用コイルの巻線の内側に配置されている請求項1乃至9の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。
【請求項11】
レンズ鏡筒と、
このレンズ鏡筒の中に配置された撮像用レンズと、
上記レンズ鏡筒に取り付けられた請求項1乃至10の何れか1項に記載の防振アクチュエータと、
を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項12】
請求項11記載のレンズユニットと、
このレンズユニットが取り付けられたカメラボディと、
を有することを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−145526(P2011−145526A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6932(P2010−6932)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】