説明

防曇鏡付き混合水栓装置

【課題】ランニングコストを安価にできしかも簡易な操作で、鏡本体の防曇効果が得られると共に、装置全体のコンパクト化を達成でき、さらに外観性及び施工性の向上を図る。
【解決手段】浴室内に配置される鏡本体8と該鏡本体8の鏡面8aと反対側の裏面8bに密着して配置される給湯配管9とで構成される防曇鏡1を、湯と水の混合水を吐出する混合水栓2に一体に設けた防曇鏡付き混合水栓装置である。給湯配管9の一端に給湯源に接続される接続入口部10を設けると共に他端に接続出口部11を設ける。該接続出口部11を混合水栓2の湯入口部4に接続することで、給湯源からの湯を給湯配管9内部を経由して混合水栓2の湯入口部4に供給するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇鏡を混合水栓に取り付けた防曇鏡付き混合水栓装置に関し、詳しくは給湯源から混合水栓に供給される湯の熱を利用して防曇鏡の曇り止め機能を発揮させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴室の壁面に設置される化粧用の鏡は、入浴中に充満した水蒸気によって鏡面が曇ってしまうため、さまざまな曇り止め対策が施されている。
【0003】
従来から、図7に示される浴室7の鏡31の裏面側にニクロム線等の電熱線(図示せず)を配置することによって、電熱加熱によって鏡31を高温に保つようにした電気ヒータ式鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
他の従来例として、図8に示すように、鏡31の表面全面に親水性剤32をコーティングし、使用時には水をかけて水膜33を形成することで浴室7内の水蒸気による曇りをなくすようにした鏡構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−57208号公報
【特許文献2】特開2000−262368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献1における電気ヒータ式鏡では、熱エネルギーとして一番高価な電気を使用することとなるため、1日2時間使用すると100〜200円/月程度となり、ランニングコストが高くなり、しかも鏡を使用しないときは、こまめに電源を切らなければ電気代が無駄になり、切り忘れによる過熱断線のおそれもあり、そのうえ鏡の施工工事とは別に電気工事が必要となるという課題もある。
【0007】
また前記特許文献2における親水性剤をコーティングした鏡では、使用するたびに表面に水をかけて曇りを消す行為が面倒であり、しかも親水性剤のコーティングは経年劣化し(7〜10年程度)、さらにコーティングの表面に汚れが着いた場合は、防曇効果が失われるという課題もある。
【0008】
本発明は前記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、ランニングコストを安価にできしかも簡易な操作で、鏡本体の防曇効果が得られると共に、装置全体のコンパクト化を達成でき、さらに外観性及び施工性の向上を図ることができる防曇鏡付き混合水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明は、浴室内に配置される鏡本体8と該鏡本体8の鏡面8aと反対側の裏面8bに密着して配置される給湯配管9とで構成される防曇鏡1を、湯と水の混合水を吐出する混合水栓2に一体に設けた防曇鏡付き混合水栓装置である。前記給湯配管9の一端に給湯源に接続される接続入口部10を設けると共に他端に接続出口部11を設ける。該接続出口部11を前記混合水栓2の湯入口部4に接続することで、給湯源からの湯を前記給湯配管9内部を経由して前記混合水栓2の湯入口部4に供給するようにしたことを特徴としている。
【0010】
このような構成とすることで、入浴時に混合水栓2を開栓すると、給湯源からの湯が給湯配管9内を通って混合水栓2に供給され、混合水栓2内で水と混合されて湯水混合水として使用できる。このとき給湯配管9は鏡本体8の裏面8bに密着して配置されているので、給湯配管9の熱によって鏡面8a側が昇温して防曇効果が得られる。また混合水栓2の止栓によって給湯配管9への給湯が停止された後も、給湯配管9内部に残った湯によって防曇効果が長く持続される。
【0011】
また、前記鏡本体8を混合水栓2の上方に離間して配置し、給湯配管9の両端部から混合水栓2の湯入口部4の近傍位置に向かってそれぞれ長く延びる2本の配管延長部12a,12bを並列状に配置すると共に、一方の配管延長部12aの下端部に接続入口部10、他方の配管延長部12bの下端部に接続出口部11をそれぞれ設けるのが好ましく、この場合、2本の配管延長部12a,12bによって混合水栓2の湯入口部4近傍位置に給湯配管9の接続入口部10と接続出口部11とをそれぞれ配置でき、接続入口部10と給湯源との配管接続、接続出口部11と混合水栓2との配管接続を1箇所でまとめて効率よくできるようになり、しかも2本の配管延長部12a,12bを並列配置することで、これら配管延長部12a,12bがほぼ1本状の外観となり、鏡本体8と混合水栓2との間の隙間から2本の配管延長部12a,12bがまとまりの良い状態で露出するようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、混合水栓の開栓時に混合水栓に供給される給湯源からの湯を利用して鏡本体の鏡面の防曇効果が得られると共に、給湯による防曇機能の開始は混合水栓の開閉操作に委ねられるので、ランニングコストを安価にできると共に使い易くなる。しかも、防曇鏡と混合水栓とを一体型としたことにより、現場では混合水栓の水入口部に水道管を接続し、給湯配管の接続入口部に給湯源を接続するだけでよく、施工作業がはかどると共に、装置全体のコンパクト化及び外観の向上を達成できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の防曇鏡付き混合水栓装置を示し、(a)は斜視図、(b)は概略配管図である。
【図2】同上の防曇鏡の一部を破断した斜視図である。
【図3】(a)は同上の給湯配管が扁平配管である場合の説明図、(b)は丸形配管である場合の説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の説明図である。
【図5】図4の変形例の説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の説明図である。
【図7】従来の浴室内に設置される鏡と混合水栓の説明図である。
【図8】従来の親水性剤をコーティングした防曇鏡の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0015】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態であり、防曇鏡1を混合水栓2から一体に突設させた混合水栓装置3の一例を示している。図中の30は防曇鏡1を壁面に係止する係止金具である。
【0016】
混合水栓2は、内部に混合弁室(図示せず)が形成される混合管2aを備えると共に、図1(b)に示すように、混合管2aの外部には、混合弁室にそれぞれ連通する湯入口部4、水入口部5、混合水出口部6が設けられ、さらに混合管2aの両端側に、湯と水の混合割合を調整する給湯栓14、給水栓15が設けられている。
【0017】
防曇鏡1は、浴室7の壁パネル7aに設置される化粧用の鏡本体8と、鏡本体8の裏面8bに密着して配置される給湯配管9とで主体が構成されている。
【0018】
給湯配管9は、放熱性のよいアルミ製などの金属からなり、図1(a)に示す例では、横方向に間隔をあけて蛇行状に折れ曲げられている。なお後述する図4〜図6のように上下方向に間隔をあけて蛇行状に折り曲げたものでもよい。
【0019】
給湯配管9の一端には、給湯源である給湯器からの1次側給湯管16に接続される接続入口部10が設けられ、給湯配管9の他端には、混合水栓2の湯入口部4に接続される接続出口部11が設けられている。本例では給湯配管9の接続入口部10と接続出口部11とが、鏡本体8の下端8d側において互いに近接して配置されている。
【0020】
また本例の給湯配管9は、図2、図3(a)に示すように、断面が扁平な扁平配管9aで構成され、ストレート部9cと折り曲げ部9dとに分かれており、折り曲げ部9dを一対のL字形扁平配管9eで構成している。なお、給湯配管9は扁平配管9aに限らず、図3(b)に示す円形断面の丸形配管9bであってもよい。
【0021】
さらに給湯配管9の背後は保温材17(図2)にて覆われる。保温材17は、給湯配管9全体を覆うことができる大きさを有するシート状物で形成されており、給湯配管9の熱が背後へ逃げるのを防ぐ働きをする。
【0022】
しかして、入浴時に混合水栓2の給湯栓14を開栓すると、1次側給湯管16からの湯が給湯配管9の接続入口部10から流入し、給湯配管9内部を循環して接続出口部11から混合水栓2の湯入口部4に流入する。給水栓15を開いて水道管からの水と混合させることで、適温の湯水混合水となって混合水吐出口16から吐出する。このとき鏡本体8の裏面8bに密着配置した給湯配管9内を通過する湯の熱によって、鏡本体8の鏡面8a側が昇温して水滴蒸発原理により曇り止めされるようになる。その後、給湯栓14を止栓すると給湯配管9内への給湯は停止されるが、給湯配管9内部に残った湯によって防曇効果が長く持続される。従って、従来の電気ヒーター式と比較してランニングコストを安価にできると共に、給湯による防曇機能が混合水栓2の開栓操作に委ねられるので、防曇のための特別の操作を別途行う必要がなく、湯の止め忘れもなく、使用性が良好となる。
【0023】
しかも、本例では給湯配管9の背後から覆うようにシート状の保温材17を配設しているので、給湯配管9の熱が背後へ逃げることがなく、従って、給湯停止後も保温材17によって給湯配管9内の湯温低下を抑えることができるので、冬場であっても長時間に亘って防曇効果を持続できるようになる。そのうえ給湯配管9を扁平配管9aで構成することで、防曇鏡1全体の奥行き寸法を少なくできると共に、鏡本体8の裏面8bに広い面積で密着させることができ、鏡面8a全体をまんべんなく昇温させることができ、防曇効果をより高めることができる。
【0024】
一方、施工にあたっては、予め工場で、鏡本体8の給湯配管9と混合水栓2の湯入口部4とを接続して、防曇鏡1と混合水栓2との一体部品として出荷する。これにより現場では混合水栓2の水入口部5に水道管18を接続し、給湯配管9の接続入口部10に1次側給湯管16を接続するだけで済む。しかも給湯配管9の接続入口部10と混合水栓2の水入口部5とが互いに近接配置されているため、1次側給湯管16と給湯配管9、水道管18と混合水栓2のそれぞれの配管接続を1箇所で効率良く行うことができ、配管作業がはかどるうえに、防曇鏡1と混合水栓2との一体化により装置全体のコンパクト化及び省スペース化を達成でき、そのうえ給湯配管9は外部に露出しないため、スッキリとした一体感のある外観で施工できるようになる。
【0025】
図4及び図5は本発明の第2の実施形態である。図4の例では防曇鏡1を混合水栓2の上方に離間して配置し、鏡本体8の上端8c側に給湯配管9の接続入口部10を配置し、鏡本体8の下端8d側に給湯配管9の接続出口部11を配置し、この接続出口部11を配管接続部13を介して混合水栓2の湯入口部4に接続している。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0026】
図5の例は、基本的に図4と共通している。図5の例では鏡本体8の裏面8bに、給湯配管9を収納保持する枠体20を配置している。枠体20は、上枠20aと下枠20bと左右の側枠20c,20cと背板20dとからなり、前方(鏡本体8の裏面8b側)に向けて開放されている。枠体20内部には給湯配管9が上下方向に間隔をあけて蛇行状に配管されており、枠体20の下枠20bの下端面給湯配管9の接続出口部11が突設され、枠体20の上枠20aの上端面から給湯配管9の接続入口部10が突設されている。この枠体20を壁パネル7aに設けた開口部21に嵌め込んだ状態で、給湯配管9の接続入口部10に1次側給湯管16を接続し、給湯配管9の接続出口部11を配管接続部13を用いて混合水栓2の湯入口部4に接続する。またこの状態で鏡本体8を開口部21周囲の壁パネル7aに係止することで、枠体20内の給湯配管9が鏡本体8の裏面8bに密着するようになっている。
【0027】
しかして、前記図4、図5の各実施形態においては、前記第1の実施形態と同様、給湯配管9による防曇効果が得られ、そのうえ、鏡本体8の上端8c側に給湯配管9の接続入口部10を配置し、下端8d側に給湯配管9の接続出口部11を配置したので、鏡本体8の上端8c側から下端8d側に亘って湯の流れ落ちる方向(重力方向)に沿って給湯配管9を配置することで、流路抵抗の小さい配管構造を実現できるものであり、さらに鏡本体8を混合水栓2から離すことにより、鏡本体8の高さ位置の変更に容易に対処できる構造となる。また図4においては鏡本体8を混合水栓2の上方に離間させた場合でも、鏡本体8と混合水栓2との間の隙間から1本の配管接続部13だけが外部に露出するだけとなり、外観を良好に保つことができる。一方、図5においては、壁パネル7aの裏側にて、給湯配管9と1次側給湯管16との接続、配管接続部13による給湯配管9と混合水栓2との接続をそれぞれ行うことが可能となり、これにより各配管接続部分や配管接続部13が浴室7内部に露出しなくなり、外観が一層良好となる。
【0028】
図6は第3の実施形態であり、鏡本体8を混合水栓2の上方に離間して配置し、給湯配管9の両端部から混合水栓2の湯入口部4の近傍位置に向かってそれぞれ長く延びる2本の配管延長部12a,12bを並列状に配置すると共に、一方の配管延長部12aの下端部に接続入口部10、他方の配管延長部12bの下端部に接続出口部11をそれぞれ設けたものである。他の構成は、第1の実施形態と同様である。しかして、前記実施形態と同様、給湯配管9による防曇効果、鏡本体8の高さ位置の変更に容易に対処できる効果等が得られる。そのうえ本例では、2本の配管延長部12a,12bによって混合水栓2の湯入口部4近傍位置に給湯配管9の接続入口部10と接続出口部11とを配置できるので、給湯源と接続入口部10との接続、接続出口部11と混合水栓2との接続を1箇所でまとめて効率よく行うことができる利点があり、さらに2本の配管延長部12a,12bを並列配置することで、これら配管延長部12a,12bがほぼ1本状の外観となり、鏡本体8と混合水栓2との間の隙間から配管延長部12a,12bをまとまりの良い状態で露出させることができる利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の防曇鏡付き混合水栓装置は、浴室の壁面以外に、洗面室に配置されるミラーキャビネットの洗面台等にも広く実施できるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 防曇鏡
2 混合水栓
3 混合水栓装置
4 接続入口部
5 水入口部
6 混合水出口部
7 浴室
8 鏡本体
8a 鏡面
8b 裏面
8c 上端
8d 下端
9 給湯配管
10 接続入口部
11 接続出口部
12a,12b 配管延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内に配置される鏡本体と該鏡本体の鏡面と反対側の裏面に密着して配置される給湯配管とで構成される防曇鏡を、湯と水の混合水を吐出する混合水栓に一体に設けた防曇鏡付き混合水栓装置であって、前記給湯配管の一端に給湯源に接続される接続入口部を設けると共に他端に接続出口部を設け、該接続出口部を前記混合水栓の湯入口部に接続することで、給湯源からの湯を前記給湯配管内部を経由して前記混合水栓の湯入口部に供給するようにしたことを特徴とする防曇鏡付き混合水栓装置。
【請求項2】
前記鏡本体を前記混合水栓の上方に離間して配置し、給湯配管の両端部から混合水栓の湯入口部の近傍位置に向かってそれぞれ長く延びる2本の配管延長部を並列状に配置すると共に、一方の配管延長部の下端部に接続入口部、他方の配管延長部の下端部に接続出口部をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1記載の防曇鏡付き混合水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−227272(P2010−227272A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77704(P2009−77704)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】