説明

防水シートの耐久年数予測方法および予測装置、防水シート情報の報知方法

【課題】防水シートの設置場所等の設置環境の違いによる防水シートの耐久年数を予測できる防水シートの耐久年数予測方法を提供する。
【解決手段】防水シートの劣化状態と経過年数との相関関係を示す劣化進行パターンを複数用意しておき、防水シートの設置環境の違いに応じて、複数の劣化進行パターンから適切な劣化進行パターン(a)を選択するとともに、現在の防水シートの劣化状態を診断し、診断した前記防水シートの劣化状態(例えば伸び率70%)と選択した前記劣化進行パターン(a)に基づいて、前記防水シートの残りの耐久年数(例えば5年)を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シートの耐久年数予測方法および予測装置、予測した耐久年数を含む防水シート情報の報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物のバルコニーの床面や陸屋根の床面に敷設する防水シートの劣化を評価する方法の一例として特許文献1に記載の技術が知られている。
この技術は、防水シート材の劣化を敷設状態で評価する防水シート材の劣化評価法において、防水シート材の表面亀裂幅の値および/または該防水シート材の表面硬度の値を測定し、あらかじめ作成した標準劣化曲線に基づいて、防水シート材の劣化程度を評価することによって、当該防水シート材の余寿命(耐久限界までの期間)を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−296236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、防水シートの余寿命すなわち残りの耐久年数を推定しているが、防水シートの設置場所等の設置環境の違いによる耐久年数については考慮されていない。
また、特許文献1に記載の技術では、推定した耐久年数を含む防水シート情報を顧客に報知することについては何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、防水シートの設置場所等の設置環境の違いによる防水シートの耐久年数を予測できる防水シートの耐久年数予測方法および測装置、残りの耐久年数を含む防水シート情報を、建物を所有する顧客に報知する防水シート情報の報知方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1に示すように、建物に設置された現在の防水シートの残りの耐久年数を予測する防水シートの耐久年数予測方法であって、
防水シートの劣化状態と経過年数との相関関係を示す劣化進行パターンを複数用意しておき、
前記防水シートの設置環境の違いに応じて、前記複数の劣化進行パターンから適切な劣化進行パターン(a)を選択するとともに、現在の前記防水シートの劣化状態を診断し、
診断した前記防水シートの劣化状態(例えば伸び率70%)と選択した前記劣化進行パターン(a)に基づいて、前記防水シートの残りの耐久年数(例えば5年)を予測することを特徴とする。
【0007】
診断した前記防水シートの劣化状態(例えば伸び率70%)と選択した前記劣化進行パターン(a)に基づいて、前記防水シートの残りの耐久年数(例えば5年)を予測する場合、例えば、防水シートの耐久限界の劣化状態(例えば伸び率50%)を定めておき、この劣化状態に対応する年数から、前記診断した防水シートの劣化状態に対応する年数を減じることによって、防水シートの残りの耐久年数を予測することができる。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、防水シートの設置環境の違いに応じて、複数の劣化進行パターンから適切な劣化進行パターン(a)を選択し、診断した現在の防水シートの劣化状態と選択した劣化進行パターン(a)に基づいて、防水シートの残りの耐久年数を予測するので、防水シートの設置場所等の設置環境の違いによる防水シートの耐久年数を容易に予測できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の防水シートの耐久年数予測方法において、
前記防水シートの設置場所の違いに応じて、少なくとも2つの劣化進行パターン(例えば「通常」の劣化進行パターンと「不利」の劣化進行パターン)を用意しておくこと特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、例えば日射が長時間当る場所と、そうでない場所とに防水シートが設置されている場合の2つの劣化進行パターンを用意しておくことによって、それぞれの防水シートの耐久年数を適切に予測できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の防水シートの耐久年数予測方法において、
前記現在の防水シートの表面亀裂面積または防水シート表面での光反射量を測定し、この測定値に基づいて前記防水シートの劣化状態を診断することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、防水シートの表面亀裂面積または防水シート表面での光反射量を測定し、この測定値に基づいて防水シートの劣化状態を診断するので、防水シートの劣化状態を容易かつ正確に診断できる。この結果、診断した防水シートの劣化状態と耐久限界の防水シートの劣化状態に基づいて、選択した劣化進行パターンによって、当該防水シートの残りの耐久年数を正確に予測できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図4に示すように、建物に設置された現在の防水シートの残りの耐久年数を予測する防水シートの耐久年数予測装置10であって、
防水シートの劣化状態と経過年数との相関関係を示す劣化進行パターンが複数格納されている記憶手段14と、
前記防水シートの設置環境の違いに応じて、前記複数の劣化進行パターンから適切な劣化進行パターンを選択するように促すとともに、現在の前記防水シートの劣化状態を診断し、診断した前記防水シートの劣化状態と選択された前記劣化進行パターンに基づいて、前記防水シートの残りの耐久年数を予測する耐久年数予測手段(CPU11等)とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、耐久年数予測手段が、現在の前記防水シートの劣化状態を診断し、診断した前記防水シートの劣化状態と選択された前記劣化進行パターンに基づいて、前記防水シートの残りの耐久年数を予測するので、防水シートの設置場所等の設置環境の違いによる防水シートの耐久年数を容易に予測できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防水シートの耐久年数予測方法または請求項4に記載の防水シートの耐久年数予測装置によって予測された前記防水シートの残りの耐久年数を含む防水シート情報を、前記建物を所有する顧客に報知する防水シート情報の報知方法であって、
前記防水シートの残りの耐久年数と、診断した前記防水シートの劣化状態と、前記選択した劣化進行パターンとのそれぞれの情報を含む防水シート情報が、情報配信サーバ(耐久年数予測装置10)に前記顧客の情報に対応付けて格納され、
前記顧客が有する顧客端末20に、前記情報配信サーバから前記防水シート情報が送信されることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、顧客端末20に、情報配信サーバから防水シート情報が送信されるので、顧客は、防水シートの残り耐久年数と、診断した防水シートの劣化状態と、選択した劣化進行パターンとを正確に確認することができる。したがって、顧客は防水シートのメンテナンス時期を容易に決定できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の防水シート情報の報知方法において、
前記防水シートの劣化状態を「改修最適」、「改修必要」、「危険」の3段階に分け、
前記防水シートの劣化状態が「改修最適」の場合、前記顧客に改修が必要になる旨の情報を前記防水シート情報に含ませ、前記防水シートの劣化状態が「改修必要」の場合、前記顧客に改修を勧める旨の情報を前記防水シート情報に含ませ、前記防水シートの劣化状態が「危険」の場合、前記顧客に改修を更に積極的に勧める旨の情報を前記防水シート情報に含ませ、
前記予測した防水シートの残りの耐久年数が、次回の定期点検より前に満了する場合に、前記防水シート情報が前記情報配信サーバ(耐久年数予測装置10)から前記顧客端末20に送信されることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、予測した防水シートの残りの耐久年数が、次回の定期点検より前に満了する場合に、防水シート情報が前記情報配信サーバから顧客端末20に送信されるが、その際に、「改修最適」、「改修必要」、「危険」の3段階の防水シートの劣化状態に応じて、顧客に「改修が必要になる旨」、「改修を勧める旨」、「改修を更に積極的に勧める旨」が報知されるので、顧客は適切な防水シートのメンテナンス時期を容易に決定できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、防水シートの設置環境の違いに応じて、複数の劣化進行パターンから適切な劣化進行パターンを選択し、診断した現在の防水シートの劣化状態と選択した劣化進行パターンに基づいて、防水シートの残りの耐久年数を予測するので、防水シートの設置場所等の設置環境の違いによる防水シートの耐久年数を容易に予測できる。
また、顧客端末に、情報配信サーバから防水シート情報が送信されるので、顧客は、防水シートの残り耐久年数と、診断した防水シートの劣化状態と、選択した劣化進行パターンとを正確に確認することができ、よって防水シートのメンテナンス時期を容易に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る防水シートの耐久年数予測方法の一例を説明するためのもので、伸び率による劣化進行パターンのグラフである。
【図2】同、照度測定による劣化進行パターンのグラフである
【図3】同、光反射量によって防水シートの劣化状態を診断する方法を説明するための図である。
【図4】本発明に係る防水シートの耐久年数予測装置の一例を示すもので、概略構造を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る防水シートの耐久年数予測方法および防水シート情報の報知方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態の防水シートの耐久年数予測方法は、建物に設置された現在の防水シートの残りの耐久年数を予測するものである。
防水シートの劣化状態は、防水シートを設置した建物が存在する地域(寒冷地、酷暑地、一般地、工業地域、沿岸地域)、当該建物に設置された防水シートの設置場所や方角等によって異なるため、予め、防水シートの劣化状態と経過年数との相関関係を示す劣化進行パターンのグラフを前記地域、設置場所、方角等に応じて複数用意しておく。
【0022】
本実施の形態では、建物は陸屋根とバルコニーを備えたものであり、防水シートは陸屋根とバルコニーにそれぞれ設置(敷設)されている。陸屋根に設置された防水シートは、バルコニーに設置された防水シートに比して、日射や風雨に晒される時間や量が多いので、劣化進行が早い。
したがって、例えば劣化進行パターンのグラフを、例えば図1に示すように、少なくとも2種類用意しておく。
図1(a)、(b)にそれぞれ示す劣化進行パターンは、「通常」、「不利」を示すものであり、「通常」の劣化進行パターンは、バルコニーに設置された防水シートに適用されるものであり、「不利」の劣化進行パターンは、陸屋根に設置された防水シートに適用されるものである。
また、建物の屋内等に設置された防水シートがある場合、この防水シートは日射や風雨に晒されることがほとんどないので、図1(c)に示すような、「有利」の劣化進行パターンが屋内等に設置された防水シートに適用される。
各劣化進行パターンのグラフは、横軸を経過年数、縦軸を防水シートの伸び率として、防水シートの劣化状態と経過年数との相関関係を示している。年数が経過していくに従って、防水シートが劣化していき、その伸び率が低くなっていく。したがって、各劣化進行パターンのグラフにおいて、傾きが大きいほど劣化進行が速くなっている。
【0023】
前記防水シートの残りの耐久年数を予測する場合、まず、現在の防水シートの劣化状態を診断する。この診断は例えば、防水シートの表面亀裂面積を測定し、この測定値に基づいて行う。
すなわち、バルコニーや陸屋根に設置されている現在の防水シート表面の一部の拡大写真を撮影して、その表面の一部の表面亀裂面積を求め、表面の一部の面積に対する表面亀裂面積の比を算出し、算出された表面亀裂面積比によって現在の防水シートの劣化状態を診断する。この診断は作業者の目視によって診断してもよいし、後述する耐久年数予測装置10によって行ってもよい。
【0024】
現在の防水シートの劣化状態を診断する場合、例えば予め防水シートの劣化状態を表面亀裂面積比によって、「安全」、「改修最適」、「改修必要」、「危険」の4段階に分けておく。
例えば、表面亀裂面積比がa1%以上の場合「危険」、a2%以上a1%未満の場合「改修必要」、a3%以上a2%未満の場合「改修最適」、a3%未満の場合「安全」として、4段階に分けておく。但し、a3<a2<a1である。
そして、この表面亀裂面積比によって4段階に分けられた防水シートの劣化状態と、前記防水シートの伸び率とを以下のように対応付ける。
すなわち、防水シートの劣化状態が「危険」の場合を伸び率40%未満に対応付け、「改修必要」の場合を伸び率40%以上60%未満に対応付け、「改修最適」の場合を伸び率60%以上80%未満に対応付け、「安全」の場合を伸び率80%以上に対応付ける。
【0025】
そして、例えば図1(a)に示すように、バルコニーに設置されている現在の防水シートの劣化状態の診断結果が表面亀裂面積比a3%とa2%との中間値am%で、「改修最適」の場合、当該防水シートの残りの耐久年数を以下のようにして予測する。
例えば、安全を考慮して防水シートの伸び率が50%の場合が、防水シートの耐久限界であるとすると、この伸び率50%に対応する経過年数は18年、表面亀裂面積比am%に対応する伸び率70%に対応する経過年数は13年であるので、当該防水シートの残りの耐久年数は、18年−13年=5年と予測する。
したがって、バルコニーに設置されている防水シートのメンテナンス(補修、張替え、重ね貼り)の時期は、現在から5年以内に行う必要がある旨を、建物を所有している顧客に提案することができる。例えば、次回のメンテナンス時期を現在から7年後を予定している場合、それを5年以内に変更した方が望ましい旨を提案できる。
【0026】
また、例えば図1(b)に示すように、陸屋根に設置されている現在の防水シートの劣化状態の診断結果が表面亀裂面積比am%で、「改修最適」の場合、当該防水シートの残りの耐久年数を以下のようにして予測する。
例えば、安全を考慮して防水シートの伸び率が50%の場合が、防水シートの耐久限界であるとすると、この伸び率50%に対応する経過年数は13年、表面亀裂面積比am%に対応する伸び率70%に対応する経過年数は10年であるので、当該防水シートの残りの耐久年数は、13年−10年=3年と予測する。
したがって、陸屋根に設置されている防水シートのメンテナンス(補修、張替え、重ね貼り)の時期は、現在から3年以内に行う必要がある旨を、建物を所有している顧客に提案することができる。例えば、次回のメンテナンス時期を現在から7年後を予定している場合、それを3年以内に変更した方が望ましい旨を提案できる。
【0027】
なお、前記劣化進行パターンのグラフは、防水シートの定期点検時に、バルコニーや陸屋根に設置された防水シートの劣化状態を診断し、その結果に基づいて作成してもよい。例えば、最初の定期点検時に診断された防水シートの劣化状態と、劣化していない防水シートの状態から経過年数に応じた劣化進行パターンのグラフを作成できる。
【0028】
また、現在の防水シートの劣化状態を診断する場合、表面亀裂面積の測定に代えて、防水シート表面での光反射量を測定してもよい。
この場合、図3に示すように、防水シート1が劣化すると、防水シート1の表面に微細なクラック2が発生するので、このクラック2に塗料3を擦り込み、照度計4によって防水シート1の表面で反射した光の照度測定をする。この場合、クラック2のない防水シート1の表面で光Lが反射し、クラック2に擦り込まれた塗料3で光Lが反射しないため、クラック2の大きさや発生量が多いほど測定された照度が低くなるので、この照度により防水シート1の劣化度を判定できる。
【0029】
そして、図2に示すように、現在の防水シートの劣化状態を前記表面亀裂面積比の場合と同様に、照度によって「安全」、「改修最適」、「改修必要」、「危険」の4段階に分ける。
例えば、照度がb1ルクス未満の場合「危険」、b1ルクス以上b2ルクス未満の場合「改修必要」、b2ルクス以上b3ルクス未満の場合「改修最適」、b3ルクス以上の場合「安全」とする。
そして、防水シートの残りの耐久年数を予測する場合、前記表面亀裂面積比の場合と同様にして予測する。
例えば図2(a)に示すように、バルコニーに設置されている現在の防水シートの劣化状態の診断結果が照度b2ルクスとb3ルクスとの中間値b23ルクスで、「改修最適」の場合、当該防水シートの残りの耐久年数を以下のようにして予測する。
安全を考慮して防水シートの照度b12ルクスの場合が、防水シートの耐久限界であるとすると、この照度b12ルクスに対応する経過年数は18年、照度b23ルクスに対応する経過年数は13年であるので、当該防水シートの残りの耐久年数は、18年−13年=5年と予測する。
【0030】
また、例えば図2(b)に示すように、陸屋根に設置されている現在の防水シートの劣化状態の診断結果が照度b23ルクスで、「改修最適」の場合、当該防水シートの残りの耐久年数を以下のようにして予測する。
安全を考慮して防水シートの照度b12ルクスの場合が、防水シートの耐久限界であるとすると、この照度b12ルクスに対応する経過年数は13年、照度b23ルクスに対応する経過年数は10年であるので、当該防水シートの残りの耐久年数は、13年−10年=3年と予測する。
【0031】
上記のような防水シートの残りの耐久年数を予測は、作業者が手作業によって行ってもよいし、図4に示す耐久年数予測装置10によって行ってもよい。
この耐久年数予測装置10はパーソナルコンピュータを含んで構成されており、CPU11、ROM12、RAM13、記憶手段14、入力手段15、表示手段16、通信手段17等を備え、それらはバスや各種インターフェースを介して接続されている。
RAM13は、CPU11が記憶手段に格納されたプログラムを実行する際に各種データを展開するプログラム格納領域を形成するとともに、CPU11が実行する処理に関わるデータを一時的に記憶する記憶領域、入力指示と入力データとによって処理される作業領域等を形成する。
記憶手段14は、ハードディスクやRAMディスク等によって構成され、これらにはOS(オペレーティングシステム)等の制御プログラム、WWW用のブラウザ等のアプリケーションプログラムが記憶されている。
また、記憶手段14には、前記複数の劣化進行パターンのグラフの情報が記憶されるとともに、防水シートの残りの耐久年数を予測する際の予測プログラム、顧客情報に対応付けられた防水シート情報等が記憶されている。
入力手段15は、キーボード、マウス、タッチペン等のポインティングデバイス等を備え、表示手段16は液晶モニタで構成されている。
通信手段17は、モデムやルーター等によって構成され、インターネットを介して外部と信号の送受信を行うようになっている。
【0032】
耐久年数予測装置10は、防水シートの設置環境の違いに応じて、複数の劣化進行パターンから適切な劣化進行パターンを選択するように促すとともに、現在の防水シートの劣化状態を診断し、診断した防水シートの劣化状態と耐久限界の防水シートの劣化状態に基づいて、選択された前記劣化進行パターンによって、防水シートの残りの耐久年数を予測する耐久年数予測手段を備えている。この耐久年数予測手段は、CPU11、RAM12、記憶手段14に記憶されている複数の劣化進行パターンのグラフの情報、防水シートの残りの耐久年数を予測する際の予測プログラム等によって構成されている。
【0033】
次に、上記構成の耐久年数予測装置10によって、防水シートの残りの耐久年数を予測する方法について、図5を参照して説明する。
まず、作業者が現在の防水シートを点検する。つまり、防水シートの設置場所や方角等を確認点検するとともに、現在の防水シートの表面の一部の写真(拡大写真)を例えばデジタルカメラで撮影する。
【0034】
次に、耐久年数予測装置10の記憶手段14に記憶されている予測プログラムを起動すする。すると、表示手段16に、記憶手段14に記憶されている複数の劣化進行パターンのうち、どの劣化進行パターンつまり「通常」、「不利」、「有利」のうちのどの劣化進行パターンを選択するかを促す画面が表示されるので、この画面上にて、所望の劣化進行パターンを作業者が入力手段15によって選択する(ステップS1)。
ここでは、防水シートがバルコニーに設置されているので、「通常」の劣化進行パターンを選択したとする。
【0035】
この劣化進行パターンでは、図1(a)に示すように、表面亀裂面積比によって現在の防水シートの劣化状態が「安全」、「改修最適」、「改修必要」、「危険」の4段階に分けられており、さらに、4段階に分けられた防水シートの劣化状態と、防水シートの伸び率とが対応付けられている。例えば、防水シートの劣化状態が「危険」な場合が伸び率40%未満に対応付けられ、「改修必要」な場合が伸び率40%以上60%未満に対応付けられ、「改修最適」な場合が伸び率60%以上80%未満に対応付けられ、「安全」な場合が伸び率80%以上に対応付けられている。
【0036】
次に予測プログラム上にて、前記デジタルカメラによる写真のデータを読み込ませる。すると、CPU11が予測プログラムにしたがって、写真に映されている防水シート表面の一部の表面亀裂面積を2値化処理等をすることによって、測定するとともに、表面の一部の面積を測定し、さらに、表面の一部の面積に対する表面亀裂面積の比を算出する(ステップS2)。
【0037】
次に、図1(a)に示すように、バルコニーに設置されている現在の防水シートの劣化状態の診断結果が表面亀裂面積比a3%とa2%との中間値am%で、「改修最適」の場合、当該防水シートの残りの耐久年数を以下のようにしてCPU11が予測する。
例えば、安全を考慮して防水シートの伸び率が50%の場合が、防水シートの耐久限界(この耐久限界値は表示画面上において入力手段15で適宜設定できる。)であるとすると、この伸び率50%に対応する経過年数は18年、表面亀裂面積比am%に対応する伸び率70%に対応する経過年数は13年であるので、CPU11が、18年−13年=5年という演算を行って、当該防水シートの残りの耐久年数が5年と予測する(ステップS3)。
【0038】
そして、この予測された防水シートの残りの耐久年数を含む防水シート情報を、以下のようにして前記建物を所有する顧客に報知する。
すなわちまず、予測された防水シートの残り耐久年数、診断した防水シートの劣化状態、選択した劣化進行パターンのそれぞれの情報を含む防水シート情報が、耐久年数予測装置10の記憶手段14に顧客情報(顧客の氏名等)に対応付けられて格納される(ステップS4)。この耐久年数予測装置10は顧客端末に情報を配信する情報配信サーバ機能を備えている。
【0039】
次に、CPU11が前記予測された防水シートの残りの耐久年数が次回の定期点検前に満了するか否かを判断する。これは、前記記憶手段14に顧客ごとに定期点検時期の情報が格納されているので、この情報と防水シートの残りの耐久年数の情報とを比較することによって行われる(ステップS5)。
防水シートの残りの耐久年数が次回の定期点検前に満了する場合、CPU11が前記記憶手段14から前記防水シート情報を読み出して、通信手段17、通信回線網(例えばインターネット)を介して、顧客端末20に防水シート情報を送信する(ステップS6)。
一方、防水シートの残りの耐久年数が次回の定期点検前に満了しない場合、CPU11が次の定期点検の所定期間(例えば1ヶ月)前か否かを判断し(ステップS7)、所定期間前になったら、CPU11が前記記憶手段14から前記防水シート情報を読み出して、通信手段17、通信回線網(例えばインターネット)を介して、顧客端末20に防水シート情報を送信する(ステップS6)。
【0040】
本実施の形態では、前記防水シート情報における前記防水シートの劣化状態が「改修最適」であるので、この場合、「5年以内に改修が必要になる旨」の情報を防水シート情報に含ませ、この防水シート情報が顧客端末20に送信される。
また、防水シートの劣化状態が「改修必要」の場合、「顧客に改修を勧める旨」の情報を防水シート情報に含ませ、この防水シート情報が顧客端末20に送信され、防水シートの劣化状態が「危険」の場合、「改修を更に積極的に勧める旨」の情報を防水シート情報に含ませ、この防水シート情報が顧客端末20に送信される。
顧客は、顧客端末20に表示される前記防水シート情報を確認することによって、防水シートのメンテナンス時期を容易に決定できる。
【0041】
なお、本実施の形態では、メンテナンス会社等に設置されている耐久年数予測装置10から通信回線網(例えばインターネット)を介して、顧客端末20に防水シート情報を送信するようにしたが、これに代えて、例えば、顧客端末20に、前記複数の劣化進行パターンのグラフの情報や、防水シートの残りの耐久年数を予測する際の予測プログラムを格納しておき、耐久年数予測装置10と同様にして、防水シートの残りの耐久年数を予測し、この予測された防水シートの残りの耐久年数を含む防水シート情報を、顧客端末20に表示させることによって、顧客自身が直接前記防水シート情報を確認できるようにしてもよい。
【0042】
本実施の形態によれば、防水シートがバルコニーに設置されているか、陸屋根に設置されているかの設置環境に応じて、3つ劣化進行パターンから適切な2つの劣化進行パターンを選択し、診断した現在の防水シートの劣化状態と耐久限界の防水シートの劣化状態に基づいて、選択した劣化進行パターンによって、防水シートの残りの耐久年数を予測するので、防水シートの設置環境の違いによる防水シートの耐久年数を容易に予測できる。
また、防水シートの表面亀裂面積または防水シート表面での光反射量を測定し、この測定値に基づいて防水シートの劣化状態を診断するので、防水シートの劣化状態を容易かつ正確に診断できる。この結果、選択した劣化進行パターンと、この防水シートの劣化状態に基づいて、当該防水シートの残りの耐久年数を正確に予測できる。
【0043】
また、予測された防水シートの残り耐久年数と、診断した防水シートの劣化状態と、選択した劣化進行パターンとのそれぞれの情報を含む防水シート情報が、情報配信サーバ機能を有する耐久年数予測装置10に顧客情報に対応付けて格納され、顧客が有する顧客端末20に、耐久年数予測装置10から通信手段17を介して防水シート情報が送信されるので、顧客は、防水シート情報を容易かつ正確に確認することができる。したがって、顧客は防水シートのメンテナンス時期を容易に決定できる。例えば、防水シートの残り耐久年数が現在から5年であり、次回のメンテナンス時期を現在から7年後を予定している場合、それを5年以内に変更することを決定できる。
さらに、耐久年数予測装置10は、予測した防水シートの残りの耐久年数が、次回の定期点検より前に満了する場合に、防水シート情報を顧客端末に送信するが、その際に、「改修最適」、「改修必要」、「危険」の3段階の防水シートの劣化状態に応じて、顧客に「改修が必要になる旨」、「改修を勧める旨」、「改修を更に積極的に勧める旨」を顧客端末20に送信して報知するので、顧客は適切な防水シートのメンテナンス時期を容易に決定できる。
【符号の説明】
【0044】
1 防水シート
10 耐久年数予測装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 記憶手段
15 入力手段
16 表示手段
17 通信手段
20 顧客端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置された現在の防水シートの残りの耐久年数を予測する防水シートの耐久年数予測方法であって、
防水シートの劣化状態と経過年数との相関関係を示す劣化進行パターンを複数用意しておき、
前記防水シートの設置環境の違いに応じて、前記複数の劣化進行パターンから適切な劣化進行パターンを選択するとともに、現在の前記防水シートの劣化状態を診断し、
診断した前記防水シートの劣化状態と選択した前記劣化進行パターンに基づいて、前記防水シートの残りの耐久年数を予測することを特徴とする防水シートの耐久年数予測方法。
【請求項2】
前記防水シートの設置場所の違いに応じて、少なくとも2つの劣化進行パターンを用意しておくこと特徴とする請求項1に記載の防水シートの耐久年数予測方法。
【請求項3】
前記現在の防水シートの表面亀裂面積または防水シート表面での光反射量を測定し、この測定値に基づいて前記防水シートの劣化状態を診断することを特徴とする請求項1または2に記載の防水シートの耐久年数予測方法。
【請求項4】
建物に設置された現在の防水シートの残りの耐久年数を予測する防水シートの耐久年数予測装置であって、
防水シートの劣化状態と経過年数との相関関係を示す劣化進行パターンが複数格納されている記憶手段と、
前記防水シートの設置環境の違いに応じて、前記複数の劣化進行パターンから適切な劣化進行パターンを選択するように促すとともに、現在の前記防水シートの劣化状態を診断し、診断した前記防水シートの劣化状態と選択された前記劣化進行パターンとに基づいて、前記防水シートの残りの耐久年数を予測する耐久年数予測手段とを備えたことを特徴とする防水シートの耐久年数予測装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の防水シートの耐久年数予測方法または請求項4に記載の防水シートの耐久年数予測装置によって予測された前記防水シートの残りの耐久年数を含む防水シート情報を、前記建物を所有する顧客に報知する防水シート情報の報知方法であって、
前記防水シートの残りの耐久年数と、診断した前記防水シートの劣化状態と、前記選択した劣化進行パターンとのそれぞれの情報を含む防水シート情報が、情報配信サーバに前記顧客の情報に対応付けて格納され、
前記顧客が有する顧客端末に、前記情報配信サーバから前記防水シート情報が送信されることを特徴とする防水シート情報の報知方法。
【請求項6】
前記防水シートの劣化状態を「改修最適」、「改修必要」、「危険」の3段階に分け、
前記防水シートの劣化状態が「改修最適」の場合、前記顧客に改修が必要になる旨の情報を前記防水シート情報に含ませ、前記防水シートの劣化状態が「改修必要」の場合、前記顧客に改修を勧める旨の情報を前記防水シート情報に含ませ、前記防水シートの劣化状態が「危険」の場合、前記顧客に改修を更に積極的に勧める旨の情報を前記防水シート情報に含ませ、
前記予測した防水シートの残りの耐久年数が、次回の定期点検より前に満了する場合に、前記防水シート情報が前記情報配信サーバから前記顧客端末に送信されることを特徴とする請求項5に記載の防水シート情報の報知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−242321(P2011−242321A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116055(P2010−116055)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】