説明

防水工事用アスファルト組成物

【課題】防水工事用アスファルトの溶融温度下げる目的でワックスが使用されるが、耐熱性があるワックスは低温では脆いという欠点を持っている。
【解決手段】本発明はFTワックス(フィシャートロプシュワックス)とメタロセン系ポリオレフイン・プラストマーを併用することで実用可能な脆化温度を実現するとともに常温で表面の粘着のない組成物を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【001】
本発明は、建物等の防水処理施工に用いる防水工事用アスファルト組成物に関する。
【背景技術】
【002】
従来、建物等のアスファルト防水処理は、施工現場で250℃以上の温度で加熱溶融させアスファルトを施工部位に流して施工することが一般的であった。
【003】
近年、溶融時の粘度を下げて施工を容易にする目的で、オイルを添加したブローイングアスファルトも製造されるようになった。
【004】
しかしながら、依然として200℃以上の施工温度が必要である。
【005】
一方、アスファルトに合成ワックスを添加する技術が特許文献1、特許文献2に示されている。
【特許文献1】特表2002−538231
【特許文献2】特開2005−155316
【006】
しかしながら、いずれの技術も溶融粘度は低下するもののルーフィング用に必要な低温での脆化が発現するという新たな問題が発生している。
【007】
この脆化防止には非特許文献1に記載されているクロロプレン系ラテックス,SBS,SBRラテックス,APAO,EEA,EVA,SBR粉末,SEBS,EPR,塩素化ポリエチレン,SEPS,PB等が有効であるとされている。
【008】
しかしながら、これらの化合物は添加することで溶融粘度が上がるか、或いは常温で表面の粘着が発生することがわかっており、低温で脆化と常温で粘着の問題は未だに解決していない。
【非特許文献1】JPCC(財団法人 石油産業活性化センター)1997 C.6.2.1「高温地域用アスファルト研究開発」中の2.2低温特性改良のための改質剤探索
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【009】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、低温での脆化発現を抑止し、且つ常温での粘着抑止出来る組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【010】
本発明はFTワックスを使用しても脆化温度−10℃以下で、かつ常温で表面に粘着が発生のしない防水工事用アスファルト組成物を提供するものである。
【011】
瀝青、もしくはアスファルトを加熱溶解し、FTワックスとメタロセン系ポリオレフイン・プラストマーを同時に添加して均一に混合して得られる防水工事用アスファルト組成物に関する。
【発明の効果】
【012】
本発明の組成物では、FTワックスとメタロセン系ポリオレフイン・プラストマーを併用することで、建物等の防水用途に必要な低温での脆化抑止が可能となると同時に常温での表面の粘着が防止することが可能となる。
【013】
さらに本発明の組成物ではFTワックスとメタロセン系ポリオレフイン・プラストマーを併用することで、溶融粘度を下げることが出来、施工温度を140〜180℃の範囲に下げることが可能なる。
【発明を実施するための最良の形態】
【014】
本発明の防水工事用アスファルト組成物ではアスファルトとFTワックスとメタロセン系ポリオレフイン・プラストマーが配合されることにより低温での脆化発現抑止と常温での表面粘着抑止を実現している。
【015】
FTワックスは軟化点70℃〜120℃、さらに100℃〜120℃であることが仕上がり性の面で好ましい。
【016】
また、FTワックスは140℃での溶融粘度がB型粘度計20mpa・s以下のものが好ましい。
【017】
メタロセン系ポリオレフイン・プラストマーとしては、メルトフローレートが190℃,荷重21.2Nで15以上のもの、さらにベースのモノマーがC4系のプラストマーが好ましい。
【018】
本発明において、FTワックス(B)はアスファルト(A)100重量部に対して1〜10重量部、特に3〜7重量部の比率が溶融粘度を下げる点で好ましい。
【019】
また、本発明において、メタロセン系ポリオレフイン・プラストマー(C)は0.5〜10重量部、特に0.5〜5重量部が溶融粘度と脆化抑止の面から好ましい。
【020】
本発明の効果を妨げない限り、種々の添加剤を配合することが出来る。添加剤の具体例は石粉、タルク、炭酸カルシウム等のフィラー、酸化防止剤、光安定剤などが挙げられる。
【021】
本発明の防水工事用アスファルト組成物は、例えばアスファルト(A)を加熱溶融(好ましくは150〜200℃で)し、FTワックス(B)、メタロセン系ポリオレフイン・プラストマー(C)を通常用いられる攪拌機で各成分が均一混合するまで攪拌混合することで得られる。
【実施例】
【022】
<防水工事用アスファルト組成物の調製>
三つ口ガラスフラスコに加熱溶融したアスファルト(A)、FTワックス(B)、メタロセン系ポリオレフイン・プラストマー(C)を入れ後に180℃に加熱しながら、混合攪拌してアスファルトルーフィング用組成物を得た。
【023】
<性能評価>
(1) 脆化性
巾10mm×長さ100mm×厚み2mmの棒状の試験片を作製し、0℃,−5℃,−10℃,−15℃の低温恒温室で4時間放置した後に試験片を100°に折り曲げて割れ・亀裂の有無を確認。評価結果は○:亀裂なし,△:亀裂あり,×:割れて破断の3段階の評価とした。
【024】
(2) 表面の粘着性
得られた防水工事用アスファルト組成物を開放型の容器に張り込んで常温(25℃)まで放置し、その表面の指触性で確認。評価結果は粘着性 有り:×,無し:○で表した。
【表1】

【025】
表1のアスファルト:ストレートアスファルト60−80(東新エナジー株式制),FTワックス(1):FT 115(日本精蝋製),FTワックス(2):FT 105(Shell MDS(Malaysia)Sdn Bhd.製),メタロセン系ポリオレフィン・プラストマー(1):FX CX−5505(住友化学製),メタロセン系ポリオレフィン・プラストマー(2):FX CX−5510(住友化学製),APAO:REXTAC RT−2780(Huntsman Polymers Corporation製)。
【026】
表1の結果より、実施例▲1▼〜▲3▼は全ての評価項目で良好な結果となっている。これに対し、比較例▲4▼〜▲6▼はいずれも−10℃での脆化が発現している。▲4▼と▲7▼は常温(25℃)で表面粘着があり、防水工事用アスファルト組成物として適さないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水工事用アスファルト組成物のうち、改質材としてFTワックスとメタロセン系ポリオレフイン・プラストマーを同時に添加した防水工事用アスファルト組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物でFTワックス1〜10部、メタロセン系ポリオレフイン・プラストマー1〜10部を含有することで脆化温度−10℃以下で、且つ常温で表面に粘着が発生しないことを特徴とする組成物。