説明

防水性靴とその製造方法

靴底上部において少なくとも1の足カバー下側部(2)を備えた靴であり、足カバー下側部(2)は1以上の第1の縫い目(3)によって少なくとも1の防水膜(5)で内側を覆った足カバー上側部(4)に結合しており、防水膜(5)の下端部(5a)は少なくとも第1の縫い目(3)の下に配置される接着手段(7)の層により下部分(2)の内側面に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防水性靴、特に半透過性で通気性の良い、つまり水に対しては半透過性で湿気に対しては通気性の良い上部を備えた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(米国特許6065227号)には、内側が防水膜で覆われた略筒形状の皮製足カバーとその足カバーに2つの縫い目で縫い合わせられた成型防水性接着剤材でできた足カバー下側部により靴底上部を形成した靴が開示されている。縫い目は防水膜を貫通しているので、防水性接着剤テープを縫い目部分に貼り付けて靴の内部に水が浸入することを防いでいる。しかし、仕上がった靴の内部に防水性接着剤テープを貼り付けることは、特に靴がブーツである場合にはかなり難しく、靴底上部における足カバー下側部は好ましくは幅の広い下部開口を備えて容易に防水箇所に届くようにする。よって靴底上部における足カバー下側部を1ピースで足カバー下側部に取り付けることは困難であり、少なくとも得策ではない。
【0003】
この欠点を解消するために特許文献2(米国特許6115940号)では靴底部と一体の1ピースの成形材で作った足カバー下側部を開示している。実際、靴底上部における足カバー下側部の上端には内側リップ部が備えられておりこの端部に簡単に張り付いて縫い目をシールする。しかし、この解決策では靴底足カバー上側部下側部の1部としてリップ部を作るために細やかな成型をする必要があるので結果として製造コストが高くなる。更に、リップ部のおかげで足カバー下側部を足カバーに縫い付けることが出来なくなる。
【特許文献1】米国特許番号6065227号
【特許文献2】米国特許番号6115940号
【発明の開示】
【0004】
よって、本発明の目的は、これらの欠点をなくした、つまり簡単且つ経済的に製造可能な防水性靴を提供することである。この目的は請求項1及び13に主な特徴を開示した靴とその製造方法により達成される。他の特徴については他の請求項に開示した。
【0005】
防水膜を特定の方法で取り付けることにより足カバー上側部と足カバー下側部間の縫い目が内側から容易かつ効果的にシールされる。特に足カバー上側部が足カバー下側部と一体成型された1ピースの材料で製造した場合及び/又は拡張可能な特殊な靴型を使用した場合には、この配置によって製造方法もまた簡単になる。
【0006】
防水膜は好ましくは通気性がよく50%(原寸の1.5倍)を超える伸長率とし、足カバーへの貼り付けに使用される接着剤も好ましくは防水性接着剤又は熱活性接着剤を使用することにより、靴の防水性接着剤性を高め、履き心地を良くする。
【0007】
本発明における靴及びその製造方法の更なる利点及び特徴は、添付の図を参照していくつかの実施例について下記の詳細な説明から当業者であれば明白に理解されるであろうが、その説明は限定する趣旨のものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1を参照して、本発明による靴は公知の通り、靴底上部と結合する少なくとも1の足カバー下側部を備えた足を包み込むのに適した下部ケーシングを有する。本実施例においては靴底1と足カバー下側部2は好ましくは1ピースの防水性接着剤成形物(特にゴムやポリウレタン)で形成されることが好ましいが他の実施例では2ピース以上を別々に成型したもので形成して相互に結合してもよい。足カバー下側部2は1以上の縫い目3によって、水に対して半透過性素材(特には皮や布)で出来た筒状の足カバー上側部4に結合されている。
【0009】
図2を参照して、足カバー上側部4は少なくとも1の防水膜5で内側が覆われており、防水膜は半透過性または通気性がよい、つまり水には半透過性で水蒸気(湿気)には通気性がよいものであることが好ましく、特に400g/m/24hより高い透湿性であることが好ましい。防水膜5は好ましくは伸長性が50%を超える弾力があり例えばPTFE、ポリウレタン、ポリエステルのようなポリマー素材で製造することが好ましい。また防水膜5は内側の保護布と結合していてもよい。本実施例では接着剤6の連続又は非連続の層により防水膜5が足カバー上側部4に固定されて、防水膜5が水半透過性であっても足カバー上側部4の通気性を保てる。防水膜5の下端部5aは好ましくは足カバー上側部4の下端部4aより下に突出していることが好ましい。
【0010】
本発明によると、防水膜5の下端部5aは足カバー上側部4に結合せずに、少なくとも縫い目3の下に配置される接着剤7の連続層により足カバー下側部2の内面に固定されている。接着剤7は好ましくは防水性接着剤性で熱活性接着剤とする。足カバー下側部2の上端部2aは防水膜5と足カバー上側部4における下端部4aの間にあることが好ましい。内壁として機能する靴内皮8を靴に固定していてもよい。
【0011】
図3を参照すると、本発明の第2実施例では防水膜5は足カバー上側部4に接着されておらず、足カバー上側部4の上端で少なくとも1の第2の縫い目9により結合されている。靴内皮8もまた第2の縫い目9で上部に結合してもよい。
【0012】
前記靴を製造するために防水膜5は両端を接着して、接着剤及び/又は縫合により足カバー上側部4に結合される筒状の防水性接着剤シースを形成する。防水膜5の下端5aを折り畳んで、例えば接着テープで一時的に防水膜に固定し縫合の工程を妨害しないようにする。接着剤7は足カバー下側部2の内側に付けて、その後に足カバー下側部2は縫い目3によって足カバー上側部4に結合する。
【0013】
図4を参照して、防水膜5の下端5aは下に延びて、好ましくは靴にはめ込む靴型10の助けにより接着剤7の層に接触するように配置する。接着剤7を作用させるために靴型10は例えば炉などで温めておいてもよい。又は/更に、靴型10は靴にはめ込む前に少なくとも50°Cに加熱してもよい。接着剤7が活性されると、靴は一定の連続した方法で横方向に押圧されて足カバー下側部2が防水膜5に接触するようにプレスされる。このプレスを行う前に靴型10を靴の中で拡張するようにしてもよい。そのためには剛体若しくは半剛体で、例えば空気圧式ピストンのような伸縮装置11で相互に離間する少なくとも2つの成形部材10a、10bを備える。第1の成形部材10aは足のかかとを含む部分に対応し、第2の成形部材10bはつま先を含む部分に対応する。靴から突出するロッド10cは第1の成形部材10aおよび第2の成形部材10bに結合している。靴型10の外面は縫い目3に対応して凹んでいることが好ましい。プレス後、靴が冷めたら靴型10を縮めて靴から引き抜く。
【0014】
請求の範囲内で上述の実施例に当業者により自明な範囲で更なる改良及び/又は加工を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】靴の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例による図1に示した靴の一部拡大斜視図である。
【図3】本発明の第2実施例による図1に示した靴の一部拡大斜視図である。
【図4】製造工程中の図1に示した靴の長手方向の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に少なくとも1の足カバー下側部(2)を備え、少なくとも1の防水膜(5)で内側が覆われた足カバー上側部(4)が前記足カバー下側部に1以上の第1の縫い目(3)により結合される靴において、前記防水膜(5)の下端部(5a)は少なくとも前記第1の縫い目(3)の下部に付けられる接着手段(7)の層によって足カバー下側部(2)の内側面に固定されることを特徴とする靴。
【請求項2】
前記接着手段(7)は防水性接着剤であることを特徴とする請求項1記載の靴。
【請求項3】
前記接着手段(7)は熱活性接着剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の靴。
【請求項4】
前記足カバー下側部(2)の上端部(2a)は防水膜(5)と前記足カバー上側部(4)の下端部(4a)の間にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項5】
前記防水膜(5)の下端部(5a)は足カバー上側部の下端部(4a)よりも下に突出していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の靴。
【請求項6】
前記防水膜(5)は水蒸気を通す通気性を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の靴。
【請求項7】
前記防水膜(5)は伸長率が50%(原寸の1.5倍)よりも大きい弾性力を持つことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の靴。
【請求項8】
前記防水膜(5)は前記足カバー上側部(4)と接着されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の靴。
【請求項9】
前記防水膜(5)は足カバー下側部(2)と足カバー上側部(4)を結合する第1の縫い目(3)の上部に縫成された第2の縫い目(9)によって足カバー上側部(4)に接合されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の靴。
【請求項10】
前記足カバー下側部(2)は防水性素材、特にゴム又はポリウレタン製であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の靴。
【請求項11】
前記足カバー下側部(2)は靴底(1)と1ピースで形成された素材からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の靴。
【請求項12】
前記足カバー上側部(4)は略筒状であり水を通す素材、特に皮又は布製であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の靴。
【請求項13】
少なくとも1の防水膜(5)を足カバー上側部(4)内側に固定する工程と、
1以上の第1の縫い目(3)によって足カバー下側部(2)を足カバー上側部(4)に結合する工程と、
少なくとも前記第1の縫い目(3)の下部に足カバー下側部(2)の内側に接着手段(7)の層を付けて前記防水膜(5)の下端部(5a)を前記足カバー下側部(2)に固定する工程と、
を備えたことを特徴とする靴製造方法。
【請求項14】
前記足カバー下側部(2)と上側部(4)を相互に結合させる前に前記接着手段(7)の層を前記足カバー下側部(2)の内側に付けることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記防水膜(5)は水蒸気を通す通気性を有することを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記接着手段(7)は防水性接着剤であることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記接着手段(7)は熱活性接着剤であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記防水膜(5)は、足カバー上側部(4)の内側に固定する前に成形し両端部を相互に接着して、筒状の防水性接着剤シースを形成することを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記防水膜(5)は前記足カバー上側部(4)に接着されることを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記防水膜(5)は前記足カバー下側部(2)と上側部(4)を結合する第1の縫い目(3)の上に縫成される少なくとも1の第2の縫い目(9)によって前記足カバー上側部(4)に接合されることを特徴とする請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記防水膜(5)は足カバー下側部(2)に接着する前に防水膜(5)の下端部(5a)を折り畳んで一時的に防水膜(5)に固定することを特徴とする請求項13〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記足カバー下側部(2)は防水性素材、特にゴム又はポリウレタン製であることを特徴とする請求項13〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記足カバー下側部(2)は靴底(1)と1ピースで成形した素材からなることを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記足カバー上側部(4)は略筒状であり水を通す素材、特に皮若しくは布製であることを特徴とする請求項13〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
靴型(10)を前記上足カバー下側部(2、4)を相互に結合してから靴にはめ込むことを特徴とする請求項13〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記靴型(10)を嵌めてから靴を加熱することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記靴型(10)を嵌めてから靴を横方向にプレスすることを特徴とする請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記靴型(10)を靴に嵌める前に少なくとも50°Cに温めることを特徴とする請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記靴型(10)は靴の中で広げられることを特徴とする請求項25〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記靴型(10)は剛体又は半剛体の伸縮装置(11)によって相互に離間する少なくとも2つの成形部材(10a、10b)を備えることを特徴とする請求項25〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の成形部材(10a)は足のかかとを含む部分に対応し、第2の成形部材(10b)はつま先を含む部分に対応することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記靴から突出するロッド(10c)は前記第1の成形部材(10a)又は第2の成形部材(10b)と結合することを特徴とする請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
靴型(10)の外面は前記足カバー下側部(2)と上側部(4)を結合する第1の縫い目(3)に対応して凹んでいることを特徴とする請求項25〜32のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−501048(P2009−501048A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521040(P2008−521040)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【国際出願番号】PCT/IT2006/000531
【国際公開番号】WO2007/007369
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】