説明

防水服および作業服に装着可能な断熱性の発熱する安全装置

本発明は、あらゆる種類の防水服および作業服に容易に装着でき、誤って海に転落した人を保護するように設計された安全装置で構成される。当該装置は、低水温からの断熱、および、低温の水中での生存時間を延ばす熱源を提供する。本発明は、リング状の主要部を構成する袋(1)、複数の細長い補助用の袋(5)、および逆止め弁(4)を備える。補助用の袋(5)は、主要部を構成する袋(1)の最も外側の部分に設けられ、逆止め弁(4)は、主要部を構成する袋の表面に形成される。主要部を構成する袋は、ナトリウムを含んでおり、ナトリウムは、水に接触すると化学反応を起こして、水が浸入する箇所を封止し、さらに、体を温める熱源を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔本発明の対象〕
本発明は、本明細書の発明の名称に示すように、あらゆる種類の防水服、作業服、および一般的なあらゆる種類の衣服に容易に装着できる安全装置に関し、特に、誤って海に転落した人を保護するために設計された装置に関する。当該装置は、低水温からの断熱、および、救助を待つ間に低温の水中での生存時間を延ばす熱源を提供する。
【0002】
より詳細には、本発明の対象は、異なる細長い袋を備えたリング状の袋で構成される。当該細長い袋は、上記リング状の袋の表面の複数箇所に結合されている。上記リング状の袋は、衣服の先端に装着されることを想定されている。これに対し、長い袋は、できるだけ均一な態様で、衣服の裏地全体を覆うように、衣服の内側に取り付けるべきである。
【0003】
上記装置の作動中、装置が水中に入った場合、リング状の袋が膨張して封止物を形成する。これにより、使用者の衣服の内側へ水が浸入することを防ぎ、確実な防水を提供する。同時に、長い袋の内部で、発熱を伴う化学反応を生じさせて、熱を有するチューブ網が形成される。これにより、当該チューブ網が一時的に使用者に熱を供給する。リング状の袋および長い袋の両方の複合的な効果によって、衣服の内側に入り込んだ水が温められる。これにより、使用者は、低温下に長時間晒されることによる低体温症の危険から完全に保護される。
【技術分野】
【0004】
本発明の技術分野は、安全装置の製造工業に属し、特に、海上安全の分野に属する。
【背景技術】
【0005】
従来の不浸透性のライフジャケットの使用に関する問題、すなわち、作業中にライフジャケットを着用すると不快感が生じるという問題は、海上でのある程度の経験を有する者に広く認識されている。着用義務があるにもかかわらず、ライフジャケットを着用せずに作業する者が存在することは、ごく一般的に知られている。その上、ライフジャケットは、着用者に浮力を与えるだけで、低温から保護する機能はない。このため、海難事故の犠牲者は、水中に転落して捜索を待つ間、短時間で(わずか数分で)低体温症によって死亡することが多い。
【0006】
海に転落した人の救助は、悪い気象条件によって遅れることが多い。また、転落したことを残りの乗船者が目撃していない場合、転落者が船上にいないことが発覚するまで救助が開始されないため、転落者が生存した状態で発見されるか死亡した状態で発見されるかを決定付ける非常に貴重な時間が失われる。
【0007】
以上の理由により、海に転落した者を低温から保護して生存時間を延ばすことができるとともに、一般的な作業服に装着することができる装置の開発が望まれている。これにより、当該装置は、誤って海に転落した人を保護することができる。たとえ使用者が無意識であったり、時間の不足により保護手段を導入できない状況であっても、保護を提供することができる。
【0008】
照会番号P9900023の特許(カタルーニャ工科大学)の明細書には、不浸透性で温かい断熱性のライフジャケットが開示されている。この文献に記載されている当該ジャケットは、浮揚性および着用者の断熱性を有するものの、当該ジャケットを着用するためにある程度の時間が必要であることは、当業者であれば容易に認識することができる。そのため、当該ジャケットは、上述の段落に記載したような状況に適しておらず、本明細書に記載する装置とは、主要な機能が相違する。
【0009】
特許文献1(フィリップ・ヴェルジェ)に記載されているリング状の袋の装置も公知である。当該装置は、その外側に取り付けられたバルブによって膨張し、使用者の体を押圧することにより、水が衣服に浸入する箇所を封止する。上記の袋は、本明細書に記載のものと同様に、使用者の衣服に装着されるが、膨張の仕組みは全く異なっている。ここで説明する本発明に対する差異は、以下説明するように、上記装置は、熱源および熱を行き渡らせる手段を備えていないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許発明第2258137号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
人が誤って水中に転落するという前述の状況において生じるさらなる問題は、現在公知のあらゆる装置およびあらゆる種類の衣服によっても解決できない。この問題は、水中に転落した後の最初の行動が、浮揚しやすいようにブーツを脱ぐ傾向にあることに起因している。このため、肌が保護されず、体温の重要な伝達経路が失われるので、結局、生存時間が著しく短くなってしまう。開示された変形例の装置(これも手に装着可能)は、下記のように適切な変更を施すことにより、このような状況を解決することができる。
【0012】
本発明の断熱性の安全装置は、熱源を備え、防水服および作業服に装着可能であり、明らかに新規に設計されている。さらに、上記安全装置は、前述の問題を解決し、既存技術のシステムよりもさらに安全な機能を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記装置は、PVCなどのプラスチック材料で形成された、リング状の主要部を構成する袋によって構成される。当該袋は、その最も外側の部分に複数の細長い補助用の袋を有している(当該部分と反対側の部分は、袋が膨張したときに使用者の体に接触するようになっている)。上記リング状の袋は、衣服に装着されるように設計されており、当該袋は膨張したときに使用者の体を押圧して、衣服に水が浸入するのを防ぐ。
【0014】
主要部を構成する袋は、所定量の固体のナトリウムを含んでもよい。当該ナトリウムは、シート状、粒子状、または他の適当な形態で設けられる。同様に、長い袋の各々は、内部に所定量の蒸留水を有している。主要部を構成する袋と長い袋との間には、両者を分離するカバーが設けられているため、蒸留水は主要部を構成する袋には流れ込まない。このカバーは、袋の内部圧力が上昇すると破裂するようになっており、このような機能を実現するために、あらゆる適当な材料を使用することができる。
【0015】
主要部を構成する袋は、その外面に小さな逆止め弁(4)を有してもよい。当該逆止め弁(4)は、少量の水は通過させるが、流出方向の流れを止めることにより、同じ箇所における水の流出を防止する。また、この弁は、袋の内部圧力が外部圧力を超えた場合に閉じる。
【0016】
上記装置の操作手順は、装置に水が浸入した場合に開始される。数センチメートルの深さに到達したときに、主要部を構成する袋に形成された逆止め弁が開いて、水が浸入する。浸入した水は、袋の内部に存在する固体のナトリウムと接触して、
Na+HO→NaOH+H
という、周知の化学反応が起こる。
【0017】
上記化学反応で生成された水素が、袋の内部に放出されることにより、袋が膨張し始める。同時に生成された水酸化ナトリウム(苛性ソーダとして一般的に知られている)が、存在する水と混ざることにより、多量の熱が生じるプロセスが開始される。
【0018】
上記化学反応を引き起こす目的は、水との混合により、液状または固体状のいずれかの安定物質を生成することである。これにより、比較的安定的に発熱するガスが得られる。このような反応を引き起こす元素は、アルカリ金属類に属する元素であり、ナトリウムが最も望ましい元素であると考えられる。ただし、水と混合することにより発熱するガスが得られるものであれば、他の元素または化合物も本発明の実施形態に適用することができる。
【0019】
上記主要部を構成する袋の内部で圧力が上昇すると、逆止め弁が閉じることにより、さらなる水の浸入が防止される。また、長い袋と結合するカバーが破裂して、再度圧力が上昇するため、水と苛性ソーダとの混合により生じる熱が袋の大部分に行き渡り、上記装置の使用者を温める。長い袋に含まれる水によって、生成された全ての苛性ソーダが完全になくなるまで、上記反応が持続する。
【0020】
本発明の装置は、異なるサイズに形成することができるので、使用者の衣服内部の異なる箇所(袖口、ベルト、ズボンの脚の縁・・・)に装着することができる。各々のサイズに応じて、主要部を構成する袋の内部に導入されるナトリウムおよび水の必要量は、あらかじめ算出できる。これにより、適切な浮揚圧力を得ることができ、苛性ソーダによって生じた熱が水素と反応して爆発する危険も回避することができる。全ての場合において、上記装置を形成するために必要な上記量を少なくすることにより、起こりうる不慮の爆発に耐えられる袋を製造することができ、使用者または装置の機能に特に問題はない。
【発明の効果】
【0021】
記載された上記装置の変形例は、足首または手首に適合しており、当該装置に取り付けられる小さく正規に折りたたまれた袋と一体化してもよい。これにより、占有体積を最小化することができ、適宜、靴下または手袋として使用することができ、使用者は、それらを広げることにより、すぐに装着することができる。1つ以上の長い袋をこれらの袋に取り付けてもよく、これにより、上記長い袋が覆っている体の部分に熱流が到達する。これらの新規の袋は、不浸透性で断熱性の材料によって製造してもよく、これにより、手足における熱の損失を最小限とすることができる。
【0022】
本明細書を補足し、本発明の特徴の理解を容易にするため、下記の図面が本明細書に添付されている。本明細書では、下記の図面を例示的かつ非制限的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】装置の略図である。
【図2】膨張した上記装置の斜視図である。
【図3】使用状態における上記装置を示す図である。
【図4】手足用に改善された上記装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
これらの図面を参照して、本発明の実施形態を以下説明するが、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0025】
好ましい実施形態において、装置は、PVCで形成されたリング状の主要部を構成する袋(1)によって形成されており、その最も外側の部分に細長い補助用の袋(5)を有している。
【0026】
主要部を構成する袋(1)は、その表面に逆止め弁(4)を有している。逆止め弁(4)は、折り蓋を有する簡易なフランジによって形成されている。当該折り蓋は、外部から水圧がかかると壊れるが、袋からの液体の流出を防止する。フランジは、水が流れるために小さな圧力が必要となる(言い換えると、数センチメートルの深さに到達するまで、水が浸入しない)ように形成されてもよい。
【0027】
また、主要部を構成する袋(1)と補助用の袋(5)との結合部は、薄いPVC層(6)によって形成されたカバーによって塞がれており、PVC層(6)は、圧力が上昇すると装置の内側に向かって破裂する。補助用の袋(5)は、内部に水を含んでおり、これにより熱を発する化学反応が持続しやすくなる。
【0028】
少量の固体のナトリウム粒子を、主要部を構成する袋(1)の内部に含ませて、水が浸入したときにナトリウム粒子が水と接触するようにしてもよい。
【0029】
上記の装置は、衣服に装着される場合、裏地の内側に挿入されるので、視認されない。また、補助用の袋(5)は、接着用テープなどの適当な方法によって、衣服に張り巡らされるように適切に装着することができる。
【0030】
図4は、他の実施形態に係る手足用の装置を示している。この図では、熱を供給するための2つの補助用の袋(5)を有する予備の袋(7)が示されている。これらの袋は、接着剤によって装着されているが、他の有効なシステムは可能であり、また、十分な個数の補助用の袋(5)が衣服に確実に装着できるのであれば、この装着方法は必ずしも必要ではない。
【0031】
本発明を実用化する方法によって、本発明の本質を充分に説明した。そのため、当業者が発明の範囲および発明の利点を理解するために、さらに説明する必要はないと考える。本発明の本質から逸脱しないのであれば、細部が異なる他の実施形態において発明を実用化することができる。そのような実施形態は、他の種類の衣服または作業服における使用のように、例示的に示される。そして、要求される安全性は、その本質的な原理が変更、改変または修正されないのであれば、同様に達成されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水服および作業服に装着可能な断熱性の発熱する安全装置であって、リング状の主要部を構成する袋(1)で構成され、上記主要部を構成する袋(1)は、その最も外側の部分に、複数の細長い補助用の袋(5)を有し、上記主要部を構成する袋の表面に、逆止め弁(4)が形成されていることを特徴とする、防水服および作業服に装着可能な断熱性の発熱する安全装置。
【請求項2】
上記主要部を構成する袋(1)は、所定量の固体のナトリウム(2)を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の防水服および作業服に装着可能な断熱性の発熱する安全装置。
【請求項3】
上記主要部を構成する袋(1)と上記補助用の袋(5)との結合部に、カバー(6)が設けられており、当該カバー(6)は、上記装置の他の部材よりも破裂耐性がかなり低いことを特徴とする、請求項1または2に記載の防水服および作業服に装着可能な断熱性の発熱する安全装置。
【請求項4】
上記補助用の袋(5)は、装着される上記服の裏地に均一に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の防水服および作業服に装着可能な断熱性の発熱する安全装置。
【請求項5】
上記補助用の袋(5)は、所定量の蒸留水を内部に有していることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の防水服および作業服に装着可能な断熱性の発熱する安全装置。
【請求項6】
上記主要部を構成する袋に予備の袋(7)が取り付けられていることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の防水服および作業服に装着可能な断熱性の発熱する安全装置。
【請求項7】
上記予備の袋(7)は、当該予備の袋(7)に取り付けられている1つ以上の補助用の袋(5)を有することを特徴とする、請求項6に記載の防水服および作業服に装着可能な断熱性の発熱する安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−527543(P2012−527543A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511307(P2012−511307)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/ES2010/000202
【国際公開番号】WO2010/133725
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511198966)セーブ−ダミー,ソシエダッド リミターダ (3)
【氏名又は名称原語表記】SAVE−DUMMY,S.L.
【住所又は居所原語表記】Avda.General Franco,N 120,1 D,E−15960 Riveira(A Coruna),Spain
【Fターム(参考)】