説明

防汚コーティング剤

【課題】低撥水性を呈し、水引き性に優れ、水滴が残留しにくく、防汚性に優れ、場合によりさらに洗浄性に優れる防汚コーティング剤を提供する。
【解決手段】上記防汚コーティング剤を、アミノ変性シリコーン化合物の第四級アンモニウム塩化物および脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物を含有するものとする。脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物としては、ポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬表面、例えば硬質基材表面等、中でも自動車等の車両、特にそのボディ等の車体、中でもその塗装面への防汚性に優れ、場合によりさらに洗浄性に優れる防汚コーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでの洗車剤としては、ワックスやシリコーン、特に各種変性シリコーンを使用し、車両表面を撥水性の状態にする撥水剤が多用されている(例えば、引用文献1参照)。
【0003】
上記撥水剤で車両を処理すると、雨などの水が水滴化されて弾かれることで、車両表面への汚れの付着しにくい状態になるが、水滴は完全には車両表面から除去することはできず、このような残留水滴によるウォータースポットなどの発生が問題視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−294892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、このような事情の下、低撥水性を呈し、水引き性に優れ、水滴が残留しにくく、防汚性に優れ、場合によりさらに洗浄性に優れる防汚コーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記した良好な特性を有する防汚コーティング剤を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の四級化シリコーンと特定の界面活性剤を含むものが、課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(1)アミノ変性シリコーン化合物の第四級アンモニウム塩化物および脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物を含有することを特徴とする防汚コーティング剤。
(2)脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物は、アミノ変性シリコーン化合物の第四級アンモニウム塩化物に対し1〜2000重量%の範囲で用いられることを特徴とする上記(1)記載の防汚コーティング剤。
(3)バランス量の水を含有することを特徴とする上記(1)または(2)記載の防汚コーティング剤。
(4)脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物が、ポリオキシエチレンアルキルアミンであることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の防汚コーティング剤。
(5)さらに非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤または両性イオン界面活性剤を含有することを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の防汚コーティング剤。
(6)車両、航空機または船舶用である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の防汚コーティング剤。
(7)スプレーガンによる塗布または手洗い洗車において用いられる上記(6)記載の防汚コーティング剤。
(8)洗車機による洗車において用いられる上記(7)記載の防汚コーティング剤。
(9)洗車機が門型洗車機またはスプレー洗車機である上記(8)記載の防汚コーティング剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防汚コーティング剤は、硬表面、例えば硬質基材表面等、中でも自動車等の車両の車体や窓ガラス等の表面処理に好適に用いられ、これを用いての硬表面、中でも自動車等の車両の車体や窓ガラス等の表面の洗浄、乾燥の仕上処理が好適に行え、特に洗車、中でも洗車機による洗車の最終水洗処理に利用して本発明コーティング剤を被処理車体に塗布してから水洗することにより、簡単に洗浄するのが可能になり、表面の状態を低撥水性にしえ、水が全体的に膜のように引き、水引き性に優れ、水滴が残留しにくく、特に濃色車で問題となるウォータースポットを防ぐことができ、防汚性に優れ、場合によりさらに洗浄性に優れるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の防汚コーティング剤は、アミノ変性シリコーン化合物の第四級アンモニウム塩化物と脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物を含有する。
【0010】
アミノ変性シリコーン化合物の第四級アンモニウム塩化物におけるアミノ変性シリコーン化合物としては、例えばジメチルポリシロキサン等のポリシロキサンのアミノアルキル化変性物またはアミノアルキル置換アミノアルキル化変性物などが挙げられ、その第四級アンモニウム塩化物としては、例えばこれら変性物をアルキルクロライドで第四級アンモニウム塩化したものなどが挙げられる。
【0011】
脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物として、好ましくは、炭素数8〜30の脂肪族アミンの炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
炭素数8〜30の脂肪族アミンは、飽和または不飽和で直鎖または分岐鎖状のものであり、例えば、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミン、ヘンイコシルアミン、ドコシルアミン、トリコシルアミン、テトラコシルアミン、オクタデセニルアミン、オクタデカジエニルアミンや、これらの混合物である牛脂アミン、硬化牛脂アミン、ヤシ油アミン、パーム油アミン、大豆油アミン等動植物油由来のものを挙げることができる。これらは、1種用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、より好ましくはエチレンオキシドが用いられる。これらは、1種用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上のアルキレンオキシドを用いる場合、ブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。アルキレンオキシドの付加モル数は好ましくは3〜70モル、より好ましくは3〜40モルである。
脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物として、とりわけポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましく、例えばポリオキシエチレンココイルアミン等が挙げられる。
【0012】
本発明の防汚コーティング剤において、脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物は、アミノ変性シリコーン化合物の第四級アンモニウム塩化物に対し、好ましくは1〜2000重量%、より好ましくは1〜100重量%の範囲で用いられる。
【0013】
また、本発明の防汚コーティング剤においては、さらに、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤または両性イオン界面活性剤を含有させてもよく、それにより、洗浄性を向上させることができ、場合により発泡性を向上させることができる。このような界面活性剤の含有割合は、アミノ変性シリコーン化合物の第四級アンモニウム塩化物に対し、好ましくは10〜2000重量%、より好ましくは10〜500重量%の範囲とするのがよい。
【0014】
非イオン界面活性剤として、例えば、アルキルエーテルエチレンオキシド付加物、アルキルフェニルエーテルエチレンオキシド付加物、高級脂肪酸エチレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステルエチレンオキシド付加物、アルキルアルカノールアミド、アルキルアミンオキシド、アルキルアミドプロピルアミンオキシド等が挙げられ、好ましくはミリスチルジメチルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシドや、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド等のアルキルアミドプロピルアミンオキシドなどが挙げられ、とりわけアルキルアミドプロピルアミンオキシドがよい。
【0015】
陽イオン界面活性剤としては、例えば、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウムクロライド、アルキルアンモニウムクロライドのエチレンオキシド付加物、アルキルアミン酢酸塩等が挙げられ、とりわけ、ジアルキルアンモニウムクロライドがよい。
【0016】
両性イオン界面活性剤として、好ましくはヤシ油アルキルベタイン等のアルキルベタインや、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドプロピルベタインなどが挙げられ、とりわけ、アルキルアミドプロピルベタインがよい。
【0017】
本発明の防汚コーティング剤は、これら有効成分に加え、バランス量の水を含有させるのが好ましく、さらには有効成分濃度が1〜10重量%程度に水を含有させるのがより好ましく、使用時にこのような好適濃度の20〜100倍になるまで水で希釈することによって調整するのがよい。
【0018】
また、本発明の防汚コーティング剤には、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で、有機溶剤、紫外線吸収剤、染料、防錆剤、防腐剤などの任意の添加成分を配合することができる。
【0019】
本発明の防汚コーティング剤は、硬表面、例えば硬質基材表面等に適用するのが好ましい。硬表面としては、例えばガラス、ステンレスや鋼材等の金属、プラスチック、金属やプラスチックや木材の塗装物またはメッキ物の表面等が挙げられ、具体的には、住居内・外の壁、床、天井、屋根、台所のレンジ周り、換気扇、家具、各種工業製品、その他汚れた硬表面全般、中でも自動車、鉄道車両等の車両、航空機、船舶、特に自動車の車体が挙げられる。
【0020】
とりわけ、本発明の防汚コーティング剤は、洗車、中でも門型洗車機やスプレー式洗車機による洗車に好ましく用いられ、スプレーガンによる塗布または手洗い洗車にも用いられる。
【実施例】
【0021】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0022】
実施例1
TEGOPREN6922(ゴールドシュミット社(独)製、アミノ変性シリコーンの第四級アンモニウム塩化物)5重量%、ポリオキシエチレンココイルアミン3重量%および残余の水からなる防汚コーティング剤を調製した。
【0023】
比較例1〜2
比較例1としては、パラフィンワックス7重量%、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド5重量%、エチレングリコール10重量%および残余の水からなる水性ワックスを、比較例2としては、TSF4703(モメンティブ社製、アミノ変性シリコーン)5重量%、XL−80(第一工業製薬社製、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)10重量%および微量の酢酸を含む残余の水からなるコーティング剤をそれぞれ調製した。
【0024】
上記各例のコーティング剤について、表面性能を以下のようにして評価した。その結果を以下の表1に示す。
【0025】
(接触角)
評価方法は、自動車の車体用めっき鋼板材片に、アクリル−メラミン系樹脂からなる自動車用塗料をベースコートとトップコートの積層形態で焼付け塗装して塗装板を作成した後、これをけいそう土で研磨し、水洗風乾して試験片を作成し、この試験片に、各コーティング剤を20倍に希釈して塗布処理し、得られた塗膜表面の水に対する接触角を、測定機に協和界面DropMasterを用いて求めた。なお、コーティング剤未処理の試験片表面の水に対する接触角は82°であった。
【0026】
(滑落角)
上記測定器を用いて、0.05mlの水滴に対する滑落角も測定した。
【0027】
(水引き性)
各コーティング剤を20倍に希釈し、車のボンネットに噴霧処理した後、水道水でリンスしたときのボンネット上の水の引き具合を目視にて確認した。なお、評価は以下の基準に基づき行った。
○:水が全体的に膜状となって引いていく
×:水が膜状にならず水滴化されてはじかれる
【0028】
(防汚性)
上記と同様の塗装板に、各コーティング剤を20倍に希釈して塗布処理し、屋外で1ヶ月間暴露し、暴露前後の色彩指色差計の値から、汚れ具合を確認した。なお、評価は、暴

○:1.0未満
×:1.1以上
【0029】
【表1】

【0030】
これより、実施例のコーティング剤は、比較例のコーティング剤に比べ低撥水性を呈し、水引き性に優れ、さらに水滴に対する滑落角が低く水滴は転がりやすくなり、防汚性に優れていることが分かる。
【0031】
実施例2〜5
実施例1に示す防汚コーティング剤中に、界面活性剤(実施例2:ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、実施例3:ヤシ油脂肪族アミドプロピルベタイン、実施例4:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、実施例5:ジココイルアンモニウムクロライド)が20重量%になるように添加し洗浄防汚コーティング剤を調製した。
【0032】
比較例3
比較例1に示す水性ワックス中に、界面活性剤としてミリスチルジメチルアミンオキシドが10重量%になるように添加し洗浄ワックスを調製した。
【0033】
比較例4
比較例2に示すコーティング剤中に、界面活性剤としてヤシ油脂肪族アミドプロピルベタインが5重量%になるように添加し、比較のためのコーティング剤を調製した。
【0034】
各種コーティング剤の性能について、接触角、防汚性は前述のようにして求め或いは評価し、他は以下のようにして評価した。その結果を以下の表2に示す。
【0035】
<水引き性・発泡性>
試験方法は、各種洗浄防汚コーティング剤を500倍に希釈し、圧縮空気を利用した発泡機を通して発泡させ、車のボンネットに処理し、目視にて泡の量および水の引き具合を確認することによった。なお、評価は以下の基準に基づき行った。
【0036】
(水引き性)
○:水が全体的に膜状となって引いていく
×:水が膜状にならず水滴化されてはじかれる
【0037】
(発泡性)
○:大量の泡がボンネット全体を覆う
△:発泡はするが泡の量が少ない
×:泡がすぐに消えてしまい持続性がない
【0038】
<洗浄性>
試験方法は、各種洗浄防汚コーティング剤を10倍に希釈した液に、ロウ、パラフィンで調製し青色に染色した人工汚染油を処理したテストピースを浸漬し、10分間の攪拌前後のテストピース表面の様子を色差計により確認することによった。評価は、実施例2のコーティング剤の洗浄性を100とした場合の相対評価基準で行った。
◎:100以上
○:70〜99
△:40〜69
×:40未満
【0039】
【表2】

【0040】
これより、実施例の洗浄防汚コーティング剤は、比較例のコーティング剤に比べ、防汚性、水引き性のみならず洗浄性も向上しているし、また、発泡性も向上しているか或いは有している。よって、基材表面の洗浄・防汚が1液で行え、工程短縮につながる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の防汚コーティング剤は、基材表面に低撥水性および優れた水引き性を付与しえ、優れた防汚性を発揮せしめ、場合により優れた洗浄性を発揮せしめることができるので、産業上大いに利用しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ変性シリコーン化合物の第四級アンモニウム塩化物および脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物を含有することを特徴とする防汚コーティング剤。
【請求項2】
脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物は、アミノ変性シリコーン化合物の第四級アンモニウム塩化物に対し1〜2000重量%の範囲で用いられることを特徴とする請求項1記載の防汚コーティング剤。
【請求項3】
バランス量の水を含有することを特徴とする請求項1または2記載の防汚コーティング剤。
【請求項4】
脂肪族アミンアルキレンオキシド付加物が、ポリオキシエチレンアルキルアミンであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の防汚コーティング剤。
【請求項5】
さらに非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤または両性イオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の防汚コーティング剤。
【請求項6】
車両、航空機または船舶用であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の防汚コーティング剤。
【請求項7】
スプレーガンによる塗布または手洗い洗車において用いられることを特徴とする請求項6記載の防汚コーティング剤。
【請求項8】
洗車機による洗車において用いられることを特徴とする請求項7記載の防汚コーティング剤。
【請求項9】
洗車機が門型洗車機またはスプレー洗車機である請求項8記載の防汚コーティング剤。

【公開番号】特開2012−241187(P2012−241187A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127717(P2011−127717)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】