説明

防汚性繊維構造物及びその加工方法

【課題】親水性,撥油性を有する防汚加工剤を生地に付与して、優れた防汚性繊維構造物及びその加工方法並びにこの繊維構造物を用いた防汚加工衣料を提供する。
【解決手段】 フッ素系ビニルモノマーと、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマーと、非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーとの共重合体からなる親水撥油加工剤とノニオン性界面活性剤水溶液からなる柔軟剤とを含む処理液が繊維構造物に付与してなることを特徴とする防汚性繊維構造物。
【効果】 汗等の吸収が良いため着心地に優れ、皮脂系汚れが付着しにくく、また汚れが付着した場合も、水系汚れ、油脂系汚れ共に洗濯によって容易に除去可能であり、しかも洗剤を使用しなくても汚れが落ちやすく、洗濯耐久性にも優れた布帛を提供することができる。また、防しわ加工、スキンケア加工、抗菌加工、柔軟加工等の様々な加工との複合が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性繊維構造物、その加工方法及び防汚加工衣料に関し、更に詳述すると、高い防汚機能を有すると共に、吸水性で着心地に優れた繊維構造物及びその加工方法、上記繊維構造物を用いてなり、生活排水の主たる洗濯排水中の洗剤をゼロもしくは大幅に低減できる、洗剤のいらない防汚加工衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の繊維製品の防汚加工方法は、撥水撥油系の防汚加工と吸水吸油系の防汚加工との2種類に大別される。
撥水撥油系の防汚加工としては、フッ素含有基を有するウレタン化合物を含んだ撥水撥油剤を用いたり(特許文献1:特開平5−247451号公報参照)、親水性基を有するフッ素系撥水撥油剤と、フッ素含有率が高く非親水性のフッ素系撥水撥油剤とを併用することで(特許文献2:特開平10−317281号公報参照)、生地の難燃性や耐摩擦性等の特性を損なうことなく、撥水撥油性を付与する方法が提案されているが、撥水撥油系の防汚加工によって得られる生地は、汚れ成分が生地に付着し難く、優れた防汚性を持つ反面、一度付着すると洗濯により汚れ成分が落ち難くなり、汗を吸収せず、風合も硬くなるため着心地が悪いといった欠点を有している。
【0003】
一方、吸水吸油系の防汚加工は、一般的に生地を親水性にすることにより汚れ成分を落としやすく再汚染防止効果がある。しかし、吸水吸油系の防汚加工は 疎水性であるポリエステルに対する良好な再汚染防止効果は得られるが、もとより親水性である綿は再汚染しにくく、この加工では防汚効果が殆どない。また、吸水吸油系の防汚加工は、着心地の面は良好だが、生地に付着した皮脂汚れは洗濯しても十分に落としきれない場合が多いという問題があった。
【0004】
また、染色品の防汚加工については、反応染料で染色した反応染色繊維構造物は、堅牢度を向上させるためにフィックス処理を行なうが、この加工剤は防汚性を著しく低下させてしまい、フィックス処理を行なう反応染色繊維構造物には良好な防汚加工ができなかった。
【0005】
ところで、昨今では環境保護の関心が高まり、環境に配慮した商品が多く上市されている。生活排水の環境への影響も調査が進んでいる。生活排水において最も大きく環境に影響を与えるものが、洗濯排水中の洗剤と言われている。そのためか、電解水や超音波を使用した洗剤ゼロ、もしくは洗剤を削減できる洗濯機も製造されるようになってきた。しかし、従来の技術では、洗剤ゼロもしくは洗剤を削減しても汚れ落ちの良い衣料は得られていなかった。
【0006】
また、これらの洗濯機が発明された経緯には、ライフスタイルの変化もあげられる。即ち、衛生環境も進歩したことにより、日常着用する肌着などの衣服は、従来程強く汚れなくなり、従来の“汚れたら洗う”から“着たら洗う”にライフスタイルが変化してきたため、洗剤ゼロでも洗濯できると考えられたからである。
【0007】
しかし、肌着等は一見汚れていないように見えても、目に見えない皮脂成分が残留しており、洗剤なしで洗った場合は、繰り返しの着用−洗濯により残留した皮脂成分が蓄積して、黄ばみ、黄変、臭気発生の問題が起きる。従って、洗剤ゼロもしくは洗剤を削減して洗濯しても、皮脂汚れの残留が少なく、黄変や臭気の発生しにくい肌着などの衣料品が求められていた。
【0008】
なお、この発明に関連する先行技術文献としては、下記のものがある。
【特許文献1】特開平5−247451号公報
【特許文献2】特開平10−317281号公報
【特許文献3】特開平9−2416622号公報
【特許文献4】特開2003−96673号公報
【特許文献5】特開2003−105675号公報
【特許文献6】特開平6−10274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、良好な親水性と撥油性とを有する防汚加工剤を生地に付与することにより、汗等の親水性汚れは生地が吸収しやすく、洗濯により容易に落とすことができると共に、皮脂等の油成分は生地に浸透するのを防ぐことができ、また、仮に油成分が付着した場合でも、洗剤を使用せずに洗濯することにより容易に落とすことができ、残留する油汚れが少なく、生地の汚れを効果的に防止することができ、しかも良好な吸水性であり、風合いも柔かく、着心地にも優れた防汚性繊維構造物及びその加工方法並びにこの繊維構造物を用いた防汚加工衣料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、撥水撥油作用をもつフッ素系モノマーと、親水性モノマーとを特定の割合で重合させた共重合体を最適範囲の割合で使用し、更に特定濃度の薬剤を併用した防汚加工剤を用いて生地を処理することで、水は吸い、油は弾く特徴を有する生地を得ることができ、その結果、汗をかいても生地が水分を吸収するため着心地が良く、汗等の親水性汚れは洗濯により容易に落とすことができ、皮脂等の油系汚れは布帛に浸透するのを防ぐことができ、また、たとえ油系汚れが生地に付着したとしても、洗剤を使用せずに洗濯によって容易に落とすことができるため、残留する皮脂汚れが少ない生地が得られることを見出した。また、特にフィックス処理した反応染色繊維構造物に対して使用した場合、優れた防汚効果を発揮することを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、
(1) フッ素系ビニルモノマーと、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマーと、非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーとの共重合体からなる親水撥油加工剤と、ノニオン性界面活性剤水溶液からなる柔軟剤を含む処理液を繊維構造物に付与した後、熱処理することを特徴とする繊維構造物、
(2) 前記処理液に、親水性ポリエステルからなる防汚剤を加えたことを特徴とする(1)に記載の繊維構造物、
(3) 反応染色繊維構造物には、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合を含むフィックス剤を使用することを特徴とする(1)もしくは(2)に記載の繊維構造物、
(4) 洗剤を使用しない洗濯でも、皮脂汚れ成分の残留が少なく、衣服の黄変を防止する(1)、(2)、(3)に記載の繊維構造物、
(5) 吸水性(滴下法)JIS L 1096について、60秒以内であることを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)に記載の繊維構造物、
(6)フッ素系ビニルモノマーと、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマーと、非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーとの共重合体からなる親水撥油加工剤とノニオン性界面活性剤水溶液からなる柔軟剤とを含む処理液を繊維構造物に付与した後、熱処理することを特徴とする繊維構造物の防汚加工方法
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、汗等の吸収が良いため着心地に優れ、皮脂系汚れが付着しにくく、また汚れが付着した場合も、水系汚れ、油脂系汚れ共に洗濯によって容易に除去可能であり、しかも洗剤を使用しなくても汚れが落ちやすく、洗濯耐久性にも優れた布帛を提供することができる。また、本発明方法は、防しわ加工、スキンケア加工、抗菌加工、柔軟加工等の様々な加工との複合が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る防汚性繊維構造物は、フッ素系ビニルモノマーと、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマーと、非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーとの共重合体からなる親水撥油加工剤とノニオン性界面活性剤水溶液からなる柔軟剤とを含む処理液で処理してなるものである。
【0014】
ここで、本発明に用いられる繊維構造物としては、糸、綿、織編物、不織布等を挙げることができ、これらの繊維構造物を構成する繊維素材としては、綿、麻、羊毛等の天然繊維、ビスコース、レーヨン等の半合繊繊維、ポリエステル,ナイロン等の合繊繊維等を挙げることができる。これらの繊維は1種単独で又は2種以上を組み合わせた混紡、交織繊維等として使用することができる。
【0015】
また、本発明に用いられる繊維構造物は、染色又はプリント等がされていてもよく、例えば、反応染料を用いて染色した反応染色繊維構造物等を用いることができる。通常、反応染色繊維構造物には、染色堅牢度向上のためにフィックス剤を使用するが、このフィックス剤は防汚性を低下させる傾向がある。フィックス剤には、例えば、ジシアン系、ポリエチレンポリアミン系、ポリカチオン系がある。特に反応染色のフィックス剤では、ポリカチオン系が多く、(1)エピクロルヒドリンジメチルアミン付加重合物、(2)ポリジメチルアミノエチルメタクリレート系、(3)ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合物、(4)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・二酸化イオウ共重合物、(5)ジアリルアミン塩酸塩重合物、(6)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、(7)モノアリルアミン塩酸塩重合物、(8)モノアリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩共重合物、(9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・ジアリルアミン塩酸塩共重合物、(10)ジアルキルアミノエチルアクリレート四級塩重合物がある。
【0016】
本発明においては、フィックス処理した反応染色繊維構造物に防汚性を付与する場合、使用するフィックス剤としては、これらの中でも防汚性を低下させないようなカチオン性が低く、かつ堅牢度が低下しない程度に分子量が小さいものを選択することも重要である。具体的にはジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合物が良い。
【0017】
本発明の防汚性繊維構造物は、上述した繊維構造物を、フッ素系ビニルモノマーと、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマーと、非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーとの共重合体からなる親水撥油加工剤とノニオン性界面活性剤水溶液からなる柔軟剤とを含む処理液で処理することにより得ることができる。
【0018】
本発明においては、上記共重合体に加えて親水化化合物を併用することにより、親水・撥油性能を更に向上させることができる。この親水化化合物としては、ノニオン性界面活性剤や親水性ポリエステルが挙げられる。
【0019】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、(1)グリセリン脂肪酸エステル、(2)ペンタエリスリット脂肪酸エステル、(3)ソルビタン脂肪酸エステル、(4)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、(5)ポリエチレングリコールアルキルエーテルの界面活性剤が挙げられる。
【0020】
親水性ポリエステルとしては、(1)ポリエステルにポリエチレングリコールの側鎖が結合した化合物、(2)ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート及びポリエチレングリコールからなる共重合ポリエステル樹脂、(3)ジメチルテレフタレート及びポリエチレングリコールからなる共重合ポリエステル樹脂、(4)テレフタル酸、アジピン酸、5スルホイソフタル酸、ポリエチレングリコールからなる共重合ポリエステル樹脂を例示することができる。
【0021】
これらの親水化化合物の使用量は、上記共重合体に対して、20〜80質量%が好ましい。使用量が多すぎると防汚効果が低下する場合があり、少なすぎると吸水性が低下する場合がある。
【0022】
本発明においては、親水・撥油効果の洗濯耐久性、柔軟性、耐引裂性の向上などの実用性を高めるために、更に各種薬剤を併用することができる。このような薬剤としては、例えば、樹脂・架橋剤類、ポリアルキレングリコール変性樹脂類、非イオン乳化油剤、特殊反応型ポリエチレン誘導体等を使用することができる。
【0023】
樹脂・架橋剤として具体的には、グリオキザール系樹脂、メラミン系樹脂、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これにより、布帛上で上記共重合体の架橋が進み、親水・撥油性の洗濯耐久性能を著しく向上させることができる。
【0024】
この場合、樹脂・架橋剤の使用量は、上記共重合体に対して50〜400質量%の割合で使用することが好ましく、より好ましくは300〜400質量%である。使用量が多すぎると、防汚効果に問題はないが、生地強力が低下する場合があり、少なすぎると防汚効果が低下する場合がある。
【0025】
本発明においては、特にグリオキザール系樹脂を併用することが好ましく、具体的には、ジメチロールジメトオキシエチレン尿素、ジメチロールヒドロキシエチレン尿素、1,3−ジメチルグリオキザールモノウレイン等を挙げることができる。
【0026】
また、メラミン系樹脂としては、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等が挙げられる。
【0027】
イソシアネート系架橋剤としては、トリイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物等を用いることができ、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられ、特にヘキサメチレンジイソシアネートのトリスビュレット変性体等のヘキサメチレンジイソシアネートの変性物であるトリイソシアネート化合物が好ましい。
【0028】
エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルを例示することができる。
【0029】
樹脂・架橋剤を使用する場合、架橋触媒として金属塩や有機酸を使用することが好ましく、金属塩には、例えば、ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化ナトリウム、ホウ弗化カリウム、ホウ弗化亜鉛等のホウ弗化化合物、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等の無機酸等が挙げられる。有機酸としては、クエン酸、酒石酸、りんご酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0030】
ポリアルキレングリコール変性樹脂類は、繊維構造物の親水性を高め、汗等の水分吸収を向上させる働きがある。具体的には、ポリエチレングリコール変性ポリエステル系樹脂、ポリエチレングリコール変性シリコーン樹脂、ポリエチレングリコール変性ウレタン樹脂、ポリエチレングリコール変性エポキシ樹脂等が例示され、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
ポリアルキレングリコール変性樹脂類の使用量が多すぎると、防汚効果が低下する場合があり、少なすぎると吸水性が低下する場合がある。
【0032】
上記共重合体、親水化化合物及び必要により添加する薬剤は、等の溶剤に溶かした溶液として、或いはエマルション又はディスパージョンとした処理液として用いることができ、この場合、共重合体の濃度は1〜20質量%、特に3〜10質量%とすることが好ましい。濃度が低すぎると防汚効果が低下する場合があり、高すぎても防汚効果は向上することがない場合がある。
【0033】
本発明の加工方法は、上記共重合体を含む処理液を用い、これを繊維構造物に付着させて親水撥油加工処理するものであるが、処理液を繊維構造物に付着させる方法としては、例えばテンターを用いたパッド/ドライ法、液流染色機、ドラム染色機を用いた浸漬法等が挙げられ、これらのなかでも作業性やコストの面でパッド/ドライ法を好ましく採用することができる。
【0034】
この場合、上記共重合体の繊維構造物に対する付着量は0.02〜0.07質量%が好ましく、より好ましくは0.03〜0.06質量%である。付着量が少なすぎると、防汚性が低下する場合があり、多すぎても防汚効果が向上しない場合がある。
【0035】
また、薬剤(具体的にはソフテックスN−491(北広ケミカル社製):ノニオン性界面活性剤)の繊維構造物に対する付着量は、0.0014〜0.021質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜0.01質量%であり、薬剤(具体的にはパーマリンMR100(三洋化成 社製):更に、親水性ポリエステルを使用する場合、親水性ポリエステル)の繊維構造物に対する付着量は、0.0035〜0.05質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.035質量%である。これらの薬剤(親水化化合物)の付着量が少なすぎると、吸水性が低下する場合があり、多すぎると防汚性が低下する場合がある。
【0036】
パッド/ドライ法を採用する場合、絞り率は最終的に繊維構造物に付着させる共重合体及び薬剤の量によって適宜選択され、繊維構造物に対する付着量が上述した範囲になるように調整される。また、乾燥は80〜180℃で1〜5分程度であることが好ましい。
【0037】
本発明では、上記のようにして、汗等の水分を吸収するため着心地がよく、油系汚れの浸透を防ぐことができ、付着した汚れも、汗等の親水性の汚れは勿論、従来は落ちにくいとされた油系の汚れについても洗剤を使用しなくても優れた脱落性を有する繊維構造物を得ることができる。本発明の防汚性繊維構造物は、シャツ地、下着、ユニフォーム等の衣料製品や寝装品等として幅広い分野において好適に利用することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0039】
〔実施例1〕
綿・ポリエステル混紡ブロード(タテ50番手×ヨコ50番手/打込タテ142×ヨコ76)の生機を常法により糊抜・精練・漂白・シルケット加工した生地を下記処方の処理液に浸漬し、ピックアップ率70%でパッド処理し、120℃で1分間乾燥した後、更に160℃で2分間キュアして、処理液を生地に付着させた。
【0040】
〈防しわ+親水撥油防汚加工剤処理液処方〉
成分 配合割合
パラレヂンNC−3 (大原パラヂウム化学(株)製) 5質量%
ベッカミンLF−55Pコンク (大日本インキ化学(株)製) 15質量%
カタリストGT−3 (大日本インキ化学(株)製) 3質量%
ソフテックスN−491 (北広ケミカル社製) 1質量%
パーマリンMR100 (三洋化成社製) 3質量%
【0041】
得られた加工済みの生地について、下記方法により、吸水性及び撥油性を評価し、ダイヤペースト及びオレイン酸防汚試験を行った。結果を表1,2に示す。また、オレイン酸残留率を図1に示した。
吸水性
JIS L 1096滴下法により測定した。60秒以内を合格とした。
撥油性
AATCC 118−1979法により測定した。
【0042】
ダイヤペースト防汚試験
日本化学繊維検査協会規格「汚れの落ちやすさ度(ダイヤペースト法)JCFA TM104」に準じて測定した。なお、3級以上を合格とした。
〈汚れ液〉
下記の割合で配合した液1gを、100m1のモーターオイルに分散させた液を使用した。
カーボンブラック 16.7質量%
牛脂硬化油 20.8質量%
流動パラフィン 62.5質量%
〈試験方法〉
1.試験片に汚れ液を0.1ml滴下し、約7gf/cm2の荷重をかけ、60秒間放置する。
2.荷重を取り除き、ティッシュペーパーで余剰な汚れ液を拭き取る。
3.1時間室温で放置する。
4.103法(JIS L 1042)洗濯を1回行なう。
5.乾燥後、試験片に残存している汚れの状態を汚染用グレースケールにて判定する。
【0043】
赤オレイン酸防汚試験
ドレスシャツや肌着に付着する人体皮脂成分であるオレイン酸を用いた。
〈汚れ液〉
オレイン酸に赤色の油溶解色素を溶かした液を使用した。
〈試験方法〉
試験方法はダイヤペースト法と同様に行った。なお、3級以上を合格とした。
【0044】
オレイン酸残留率
〈試験方法〉
上記の赤オレイン酸防汚試験と同様に汚れ液を付着させて余剰な汚れ液を除去し、一定時間放置した後、通常通りの103法(JIS L 1042)洗濯を行なう生地と洗剤を使用しない洗濯を行なう生地を用意した。
赤オレイン酸を付着させて洗濯した上記生地について残留したオレイン酸をクロロホルムにより抽出した。
オレイン酸残留率(%)
=残留したオレイン酸/滴下したオレイン酸(0.1ml)×100
【0045】
〔比較例1〕
下記に示す処方の処理液を用いた以外は実施例1と同様の生地を用いて同様の処理を行った。
〈防しわ加工剤処理液処方〉
成分 配合割合
ベッカミンLF−55Pコンク (大日本インキ化学(株)製) 15質量%
カタリストGT−3 (大日本インキ化学(株)製) 3質量%
ニッカシリコンAMC800E (日華化学社製) 3質量%
シリコーランSi810−50M (一方社製) 3質量%
【0046】
〔比較例2〕
下記に示す処方の処理液を用いた以外は実施例1と同様の生地を用いて同様の処理を行った。
〈防しわ+撥水撥油防汚加工剤処理液処方〉
成分 配合割合
ベッカミンLF−55Pコンク (大日本インキ化学(株)製) 15質量%
カタリストGT−3 (大日本インキ化学(株)製) 3質量%
アサヒガードAG950 (明成化学工業社製) 9質量%
【0047】
〔比較例3〕
下記に示す処方の処理液を用いた以外は実施例1と同様の生地を用いて同様の処理を行った。
〈防しわ+吸水吸油防汚加工剤処理液処方〉
成分 配合割合
ベッカミンLF−55Pコンク (大日本インキ化学(株)製) 15質量%
カタリストGT−3 (大日本インキ化学(株)製) 3質量%
ポロンSRコンクII (信越化学工業(株)製) 0.5質量%
エバフェノールN−7 (日華化学社製) 2質量%
【0048】
比較例1〜3で得られた加工済みの生地について、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表1,2に示す。また、オレイン酸残留率を図1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
〔実施例2〕
綿100%ブロード(タテ50番手×ヨコ40番手/打込タテ148×ヨコ70)の生機を常法により糊抜・精練・漂白・シルケット加工した生地を反応染色、その後、下記処方(1)のフィックス剤を入れた処理液に浸漬し、ピックアップ率70%でパッド処理し、120℃で1分間乾燥した。
更に、下記処方(2)の親水撥油防汚加工剤処理液に浸漬し、ピックアップ率70%でパッド処理し、120℃で1分間乾燥した後、更に160℃で2分間キュアして、処理液を生地に付着させた。
【0052】
(1)〈フィッスク加工剤処理液処方〉
成分 配合割合
ダンフィックス5000 (日東紡製) 2質量%
(2)〈防しわ+親水撥油防汚加工剤処理液処方〉
成分 配合割合
パラレヂンNC−3 (大原パラヂウム化学(株)製) 5質量%
ベッカミンLF−55Pコンク (大日本インキ化学(株)製) 15質量%
カタリストGT−3 (大日本インキ化学(株)製) 3質量%
ソフテックスN−491 (北広ケミカル社製) 1質量%
【0053】
〔比較例4〕
綿100%ブロード(タテ50番手×ヨコ40番手/打込タテ148×ヨコ70)の生機を常法により糊抜・精練・漂白・シルケット加工した生地を反応染色、その後、下記処方(3)のフィックス剤を入れた処理液で浸漬し、ピックアップ率70%でパッド処理し、120℃で1分間乾燥した。
更に、実施例2と同様の処方(2)の親水撥油防汚加工剤処理液に浸漬し、ピックアップ率70%でパッド処理し、120℃で1分間乾燥した後、更に160℃で2分間キュアして、処理液を生地に付着させた。
(3)〈フィッスク加工剤処理液処方〉
成分 配合割合
ダンフィックスRE (日東紡製) 2質量%
【0054】
実施例2及び比較例4で得られた加工済みの生地について、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】洗濯後のオレイン酸残留率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系ビニルモノマーと、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマーと、非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーとの共重合体からなる親水撥油加工剤と、ノニオン性界面活性剤水溶液からなる柔軟剤を含む処理液を繊維構造物に付与した後、熱処理することを特徴とする繊維構造物。
【請求項2】
前記処理液に、親水性ポリエステルからなる防汚剤を加えたことを特徴とする請求項1に記載の繊維構造物。
【請求項3】
反応染色繊維構造物には、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合を含むフィックス剤を使用することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の繊維構造物。
【請求項4】
洗剤を使用しない洗濯でも、皮脂汚れ成分の残留が少なく、衣服の黄変を防止する請求項1、2、3に記載の繊維構造物。
【請求項5】
吸水性(滴下法)JIS L 1096について、60秒以内であることを特徴とする請求項1、2、3、4に記載の繊維構造物。
【請求項6】
フッ素系ビニルモノマーと、ポリアルキレングリコール含有親水性ビニルモノマーと、非ポリアルキレングリコール系ビニルモノマーとの共重合体からなる親水撥油加工剤とノニオン性界面活性剤水溶液からなる柔軟剤とを含む処理液を繊維構造物に付与した後、熱処理することを特徴とする繊維構造物の防汚加工方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−152508(P2006−152508A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348063(P2004−348063)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】