説明

防火窓

【課題】透視窓の窓枠に、安価な非耐熱ガラス板を用い、通常は透視窓を通して外部から内部の状況を見ることができ、火災発生時に金属製の遮蔽板が落下して透視窓を遮蔽するようにして、製造価格を大幅に低減すると共に、設置スペースがない場所でも設置することができる防火窓を提供するものである。
【解決手段】扉1に設けた透視窓4の窓枠5に、間隔をおいて2枚の非耐熱ガラス板7、7を取付け、この間の透視窓4の隙間8の上方に、この隙間8と連通する遮蔽板収納部10を設け、これと透視窓4の隙間8の左右両側にガイドレール11を縦方向に設け、遮蔽板収納部10内のガイドレール11にガイドされる金属製の遮蔽板13を温度ヒューズ15で支持した構成をなし、火災が発生して温度が上昇すると前記温度ヒューズ14が融解して遮蔽板収納部10内の遮蔽板13がガイドレール11にガイドされて落下し、透視窓4を遮蔽するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火窓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の出入口や、非常階段の出入口、廊下の途中などに防火扉が設けられている。この防火扉は金属板で形成され、火災による炎や熱風を遮断して延焼を防止している。しかしながら、内部の状況か確認できないため、扉の中間に透視窓を設け、ここに耐熱ガラス板を嵌め込んだ防火扉(特許文献1)がある。しかしながら、この耐熱ガラス板は、窓などに通常使用されているガラス板に比べて極めて高く、透視窓のないものに比べて3倍程度の価格になっている。
【0003】
このため通常のガラス板を取付けた扉や窓の内側に、遮蔽板(シャッター)収納部を設け、火災発生時に温度ヒューズが融解してストッパーが外れて遮蔽板が進出して、扉や窓全体を遮蔽する構造の防火シャッター(特許文献2)も提案されている。しかしながらこの防火シャッターは、扉や窓の内側に別個に取付けなければならず、設置スペースが必要で、施工費用も高くなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−40285号公報
【特許文献2】実開平5−24897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題を改善し、扉または壁に設けた透視窓の窓枠に、通用使用されている安価な非耐熱ガラス板を用い、普段は透視窓を通して外部から内部の状況を見ることができ、火災発生時に金属製の遮蔽板が落下して透視窓を遮蔽するようにして、製造価格を大幅に低減すると共に、防火シャッターのスペースがない場所でも設置することができる防火窓を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の防火窓は、扉または壁に設けた透視窓の窓枠に、間隔をおいて2枚の非耐熱ガラス板を取付け、この間の透視窓の隙間の上方に、この隙間と連通する遮蔽板収納部を設け、この遮蔽板収納部と、前記透視窓の隙間の左右両側にガイドレールを縦方向に設け、前記遮蔽板収納部内のガイドレールにガイドされる金属製の遮蔽板を温度ヒューズで支持した構成をなし、火災が発生して温度が上昇すると前記温度ヒューズが融解して遮蔽板収納部内の遮蔽板がガイドレールにガイドされて落下し、透視窓を遮蔽するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2記載の防火窓は、請求項1において、透視窓の隙間と遮蔽板収納部との左右両側に、下部の高さが異なる複数本のガイドレールを併設し、このガイドレールにガイドされる複数枚の金属製の遮蔽板を前記遮蔽板収納部に配置し、各遮蔽板には係止突起を設け、隣接する遮蔽板は前記係止突起で互いに支持して重ねた状態に保持すると共に、一端側の遮蔽板を温度ヒューズで支持した構成をなし、所定の温度で前記温度ヒューズが融解して一端側の遮蔽板がガイドレールにガイドされて落下すると同時に、係止突起で互いに支持した他の遮蔽板が順次ガイドレールにガイドされて落下し、ブラインド状に異なる位置で停止して透視窓全体を遮蔽するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3記載の防火窓は、請求項2において、一端側の遮蔽板の上部中央側に突起部を設け、この突起部を載置するアームが、その一端側で支持軸に回動自在に支持されていると共に、アームの他端側が温度ヒューズで支持された構成をなし、所定の温度で前記温度ヒューズが融解してアームが支持軸を中心に回動すると、この上に載置されていた、一端側の遮蔽板に取付けた突起部が外れて各遮蔽板が落下するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る請求項1記載の防火窓によれば、通常は遮蔽板収納部に遮蔽板が収納されているので、透視窓を通して外部から内部の状況を見ることができる。火災が発生すると、炎や熱風により温度ヒューズが加熱され、その融解温度に達して融解すると、これに支持されていた遮蔽板がガイドレールに沿って落下し透視窓を遮蔽板で遮蔽して火災による延焼を防止することができる。また透視窓に嵌め込まれた非耐熱ガラス板は、耐熱ガラス板に比べて安価であり、製造価格を大幅に低減することができる。また透視窓と遮蔽板が一体に組込まれているので防火シャッターのスペースがない場所でも設置することができる防火窓を提供するものである。
【0010】
また請求項2記載の防火窓によれば、火災が発生して炎や熱風により温度ヒューズが加熱され、温度ヒューズの融解温度に達すると融解して、これに支持されていた一端側の遮蔽板が落下すると同時に、これに隣接する各遮蔽板が落下して透視窓の異なる位置で停止して透視窓全体を遮蔽することができる。各遮蔽板は遮蔽板収納部に重なった状態で収納されているので、コンパクトな構造にすることができる。
【0011】
また請求項3記載の防火窓によれば、アームは、その一端側が支持軸で回動自在に支持され、他端側が温度ヒューズで支持され、この間のアームに遮蔽板に接続した突起部が載置されて支持されているので、テコの原理により、温度ヒューズに加わる荷重が、複数枚の遮蔽板の全体重量に比べて軽くなり、外径の細い安価な温度ヒューズを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の一形態を図1ないし図4を参照して詳細に説明する。図において1は扉で、その枠体2の前後に金属製の表面板3、3が取付けられ、この表面板3、3の上部側に防火窓となる透視窓4の窓枠5が形成されている。この窓枠5には間隔をおいて2個のガラス板取付部6、6が形成され、ここに非耐熱ガラス板7、7が嵌め込まれて、この間に隙間8が形成されている。この非耐熱ガラス板7は、家庭の窓などに通常使用されている安価なガラス板が用いられている。
【0013】
この透視窓4の隙間8の上方には、この隙間8と連通する遮蔽板収納部10が形成されている。この遮蔽板収納部10と隙間8の左右両側に図2に示すようにガイドレール11が縦方向に設けられ、遮蔽板収納部10内のガイドレール11に金属製の遮蔽板13が取付けられている。この遮蔽板13は図1に示すように上部がコ字形に折曲し、このコ字形部14に、表面板3に取付けたリベット型の温度ヒューズ15が貫通して遮蔽板13が支持されている。
【0014】
上記構成の扉1は、通常は閉じた状態で、透視窓4を通して外部から内部の状況を見ることができる。火災が発生して炎や熱風により温度ヒューズ15が加熱され、その融解温度に達すると融解して、これに支持されていた遮蔽板13がガイドレール11に沿って落下し図3および図4に示すように遮蔽板13の隙間8の間に位置する。この結果、非耐熱ガラス板7、7の間が金属製の遮蔽板13で遮蔽された状態となり、火災による延焼を防止することができる。また透視窓4に嵌め込まれた非耐熱ガラス板7は、耐熱ガラス板に比べて安価であり、扉1の価格は耐熱ガラス板を使用した場合に比べて3分の1程度に低減することができる。
【0015】
図5ないし図8は本発明の他の実施の形態を示すもので、壁16に防火窓となる透視窓4の窓枠5が嵌め込まれた構造のものである。この窓枠5には間隔をおいて2個のガラス板取付部6、6が形成され、ここに非耐熱ガラス板7、7が嵌め込まれて、この間に隙間8が形成されている。
【0016】
この透視窓4の隙間8の上方には、この隙間8と連通する遮蔽板収納部10が形成されている。この遮蔽板収納部10と隙間8の左右両側には、4本のガイドレール11A〜11Dが縦方向に並設され、遮蔽板収納部10内のガイドレール11A〜11Dには4枚の遮蔽板13A〜13Dが取付けられている。これら各遮蔽板13A〜13Dは周縁が折曲したトレー状に形成されている。3枚の遮蔽板13A〜13C側の下部折曲部の中間には、隣接する遮蔽板13B〜13Dの下部を支えるように長く形成された係止突起17A〜17Cが突設されている。
【0017】
従って遮蔽板13Aの係止突起17Aは、隣接する遮蔽板13Bの係止突起17Bの下部を支え、この係止突起17Bは隣接する遮蔽板13Cの係止突起17Cの下部を支え、更にこの係止突起17Cは隣接する遮蔽板13Dの係止突起17Dの下部を支え、全体として遮蔽板13Aが、遮蔽板13B〜13Dを一体に支持した構造となっている。また一端側の遮蔽板13Aの上部中央にはピン状の突起部18が突設されている。
【0018】
また19はチャンネル状のアームで、その一端側上部に図7に示すようにブラケット20が形成されている。このブラケット20は、遮蔽板収納部10の表面に形成した凹部21に、支持軸22で回動自在に支持されている。またアーム19の他端側には、前記凹部21に取付けたリベット型の温度ヒューズ15が貫通してアーム19が支持されている。
【0019】
このチャンネル状のアーム19の中間の上面に、図6および図7に示すように一端側の遮蔽板13Aの上部中央に突設した突起部18が載置され、この突起部18により遮蔽板13A〜13Dが保持された状態となっている。また図5に示すようにガイドレール11Aの下部にはゴムで形成されたストッパー23Aが設けられ、またガイドレール11B〜11Dは下部の高さが順次高く形成され、その下部にストッパー23B〜23Dが設けられている。
【0020】
上記構成の防火窓は、通常は防火窓となっている透視窓4を通して外部から内部の状況を見ることができる。火災が発生して炎や熱風により温度ヒューズ15が加熱され、温度ヒューズ15の融解温度に達すると融解して、これに支持されていたアーム19が図7に仮想線で示すように、支持軸22を回動支点として下方に回転する。この結果、アーム19の上部中間に載置されていた突起部18が滑って落下する。この突起部18は、一端側の遮蔽板13Aの上部中央に一体に連結されているので遮蔽板13Aもガイドレール11Aにガイドされて落下する。
【0021】
これに伴って図8に示すように遮蔽板13Aの係止突起17Aで支持されていた隣接する遮蔽板13Bもガイドレール11Bにガイドされて落下してストッパー23Bで停止する。また同時に遮蔽板13Bの係止突起17Bに支持されていた隣接する遮蔽板13Cもガイドレール11Cにガイドされて落下してストッパー23Cで停止する。また同時に遮蔽板13Cの係止突起17Cに支持されていた隣接する遮蔽板13Dもガイドレール11Dにガイドされて落下してストッパー23Dで停止し、全体として4枚の遮蔽板13A〜13Dがブラインド状に透視窓4の隙間8の全体を遮蔽した状態となる。
【0022】
従って上記構成の防火窓は、通常は透視窓4を通して外部から内部の状況を見ることができる。火災が発生して温度ヒューズ15が融解すると、非耐熱ガラス板7、7の間が落下してきた金属製の遮蔽板13で遮蔽された状態となり、火災による延焼を防止することができる。また遮蔽板13A〜13Dは4枚で構成され、遮蔽板収納部10に収納されている時には重なった状態となっているので、コンパクトな構造となり、小さな透視窓4の場合に好適である。
【0023】
更に図7に示すようにアーム19は、その一端側に設けたブラケット20が支持軸22で回動自在に支持され、他端側が温度ヒューズ15で支持され、この間で突起部18が載置されて支持されているので、支持軸22を支点として、これと突起部18との距離L1が、支持軸22炉と温度ヒューズ15との間の距離L2より短く形成され、テコの原理により、温度ヒューズ15に加わる荷重は、遮蔽板13A〜13Dの全体重量のL1/L2となり、外径の細い安価な温度ヒューズ15を用いることができる。
【0024】
なお上記説明では4枚の遮蔽板13A〜13Dを組合せた構造の場合について示したが2枚、3枚または5枚以上組合せた構造でも良い。またこの防火窓は壁16に嵌め込んだ場合について示したが扉1に取付けた構造でも良い。また扉1は引き違い戸や内倒し戸、外倒し戸、観音開き戸など何れの構造にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の一形態による防火窓を設けた扉の縦断面図である。
【図2】図1のAーA線断面図である。
【図3】図1の遮蔽板が落下して透視窓を遮蔽した状態を示す扉の縦断面図である。
【図4】図3のBーB線断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態による壁に嵌め込んだ防火窓の縦断面図である。
【図6】図5のCーC線断面図である。
【図7】遮蔽板収納部内のアームに支持された遮蔽板を示す斜視図である。
【図8】図5の遮蔽板が落下して透視窓を遮蔽した状態を示す防火窓の縦断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 扉
2 枠体
3 表面板
4 透視窓
5 窓枠
6 ガラス板取付部
7 非耐熱ガラス板
8 隙間
10 遮蔽板収納部
11、11A〜11D ガイドレール
13、13A〜13D 遮蔽板
14 コ字形部
15 温度ヒューズ
16 壁
17A〜17D 係止突起
18 突起部
19 アーム
20 ブラケット
21 凹部
22 支持軸
23A〜23D ストッパー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉または壁に設けた透視窓の窓枠に、間隔をおいて2枚の非耐熱ガラス板を取付け、この間の透視窓の隙間の上方に、この隙間と連通する遮蔽板収納部を設け、この遮蔽板収納部と、前記透視窓の隙間の左右両側にガイドレールを縦方向に設け、前記遮蔽板収納部内のガイドレールにガイドされる金属製の遮蔽板を温度ヒューズで支持した構成をなし、火災が発生して温度が上昇すると前記温度ヒューズが融解して遮蔽板収納部内の遮蔽板がガイドレールにガイドされて落下し、透視窓を遮蔽するようにしたことを特徴とする防火窓。
【請求項2】
透視窓の隙間と遮蔽板収納部との左右両側に、下部の高さが異なる複数本のガイドレールを併設し、このガイドレールにガイドされる複数枚の金属製の遮蔽板を前記遮蔽板収納部に配置し、各遮蔽板には係止突起を設け、隣接する遮蔽板は前記係止突起で互いに支持して重ねた状態に保持すると共に、一端側の遮蔽板を温度ヒューズで支持した構成をなし、所定の温度で前記温度ヒューズが融解して一端側の遮蔽板がガイドレールにガイドされて落下すると同時に、係止突起で互いに支持した他の遮蔽板が順次ガイドレールにガイドされて落下し、ブラインド状に異なる位置で停止して透視窓全体を遮蔽するようにしたことを特徴とする請求項1記載の防火窓。
【請求項3】
一端側の遮蔽板の上部中央側に突起部を設け、この突起部を載置するアームが、その一端側で支持軸に回動自在に支持されていると共に、アームの他端側が温度ヒューズで支持された構成をなし、所定の温度で前記温度ヒューズが融解してアームが支持軸を中心に回動すると、この上に載置されていた、一端側の遮蔽板に取付けた突起部が外れて各遮蔽板が落下するようにしたことを特徴とする請求項2記載の防火窓。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−236645(P2011−236645A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109137(P2010−109137)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(310011262)
【出願人】(510129680)
【Fターム(参考)】