説明

防犯用中空パネル

【課題】合成樹脂製の中空パネルが破壊されるようなことがあっても、人の侵入を阻止できる防犯用中空パネルを提供する。
【解決手段】パネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部2が形成された合成樹脂製の中空パネル1であって、侵入防止用条材3が人の侵入を阻止するに足る相互間隔をあけて中空部2の幾つか又は全てに挿通され、各条材3の両端が中空パネルの長さ方向両端の端板4に固定された構成の防犯用中空パネル1とする。合成樹脂製の中空パネル1が破壊されても、中空部2に挿通された侵入防止用条材3によって人の侵入を阻止し、窃盗その他の犯罪を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防犯用中空パネルに関し、更に詳しくは、合成樹脂製の中空パネルが破壊されるようなことがあっても、人の侵入を阻止することができる防犯用中空パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、採光用壁材として、合成樹脂を押出成形して製造した透光性の中空パネルが使用されるようになってきた。この中空パネルは、パネル表面層とパネル裏面層との間に、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部を形成したものであって、採光性に優れているにもかかわらず隠蔽性(透視困難性)があり、実用的な荷重たわみ強度を備え、軽量で取扱いが容易である等の利点を有するため、今後ますます需要が増大するものと予測される。
【0003】
一方、採光用窓材、屋根材、壁材等として、中空部を有する樹脂製シートの該中空部に電熱線を挿入配線することにより、融雪、防曇、保温等の機能を発揮できるようにしたものが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】実用新案登録第3029638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、採光用壁材として使用される前記の中空パネルは、パネル表面層やパネル裏面層が薄く、刃物で比較的簡単に切り裂かれたり、バーナーやトーチで加熱すると軟化溶融して穴があくなど、破壊されやすいため、故意に中空パネルを破壊して人が侵入する恐れがあり、防犯性に劣るという問題があった。このような問題は、特許文献1のように樹脂製シートの中空部に電熱線を挿入配線したものでは、解決することが困難である。
【0005】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、合成樹脂製の中空パネルが破壊されるようなことがあっても、人の侵入を阻止できる防犯用中空パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る防犯用中空パネルは、パネル表面層とパネル裏面層との間に、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部が形成された合成樹脂製の中空パネルであって、侵入防止用条材が、人の侵入を阻止するに足る相互間隔をあけて、上記中空部の幾つか又は全てに挿通され、各条材の両端が、中空パネルの長さ方向両端に添設された端板に固定されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の防犯用中空パネルにおいては、侵入防止用条材が、金属、カーボン繊維、強化繊維のいずれかより成る棒、管、線、ロープ、紐、テープ又は鎖であることが望ましく、特に、中空部の幾つか又は全てに挿通された侵入防止用条材のうち、少なくとも両側端に位置する条材は金属、カーボン繊維のいずれかより成る剛性を備えた棒又は管であることが望ましい。
【0008】
そして、中空パネルの長さ方向両端に、金属テープが端板を覆うように貼着されていることが望ましく、また、中空パネルの一側端に接続用凸条が形成され、他側端に接続用凹条が形成されていることも望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防犯用中空パネルのように、侵入防止用条材が、人の侵入を阻止するに足る相互間隔をあけて、中空パネルの中空部の幾つか又は全てに挿通され、各条材の両端が、中空パネルの長さ方向両端に添設された端板に固定されていると、各条材と両端板によって頑丈な格子体が形成されることになるため、たとえ中空パネルが刃物やバーナー等で破壊されたとしても、格子体を構成する侵入防止用条材によって人の侵入を阻止することが可能となり、窃盗その他の犯罪を防止できるようになる。
【0010】
侵入防止用条材としては前記のごとき強度のある各種の条材を使用できるが、少なくとも両側端に位置する条材として金属、カーボン繊維のいずれかより成る剛性を備えた棒又は管を使用した場合は、この両側端の条材と中空パネル両端の端板によって頑丈な枠体が形成されることになるので、中間に位置する条材として前記の金属、カーボン繊維、強化繊維のいずれかより成る線、ロープ、紐、テープ、鎖などの引張力に優れた細くて軽い条材を用いて、人の侵入を阻止する格子体を形成し、中空パネルの重量の増加や採光性の低下を抑えることが可能となる。
【0011】
また、中空パネルの長さ方向両端に金属テープが端板を覆うように貼着されていると、この金属テープによって中空パネルの中空部の両端開口が気密的に閉塞されて断熱作用が発揮されるため、室内の保温効果や結露防止効果が奏されるようになる。
【0012】
そして、中空パネルの一側端に接続用凸条が形成され、他側端に接続用凹条が形成されていると、一側端の接続用凸条を、隣接する中空パネルの他側端の接続用凹条に嵌合するだけで、簡単に中空パネル同士を接続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る防犯用中空パネルを、その長さ方向両端の金属テープを分解して示す斜視図、図2は図1のA−A線横断面図、図3は図1のB−B線部分縦断面図、図4は同防犯用中空パネルの接続状態を示す部分横断面図である。
【0015】
この防犯用中空パネル1は、淡く着色した透光性樹脂を押出成形したものであって、図2に示すように、パネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に多数の縦、横、斜めの隔壁部1c,1d,1eを設けたハニカム構造の中空パネルとされており、これらの隔壁部1c,1d,1eによって、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部2がパネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に形成されている。中空パネル1のサイズは特に限定されないが、この実施形態では、採光用の窓材、壁材、扉材などの用途に適合するように、パネルの厚さ(パネル表面層1aからパネル裏面層1bまでの寸法)が40mm程度、パネルの幅が500mm程度、縦の隔壁部1cの相互間隔が40mm程度の中空パネル1を使用している。なお、この中空パネル1は、施工現場に対応した種々の長さに切断される。このように縦,横,斜めの隔壁部1c,1d,1eをパネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に多数設けたハニカム構造の中空パネル1は、軽量であるにもかかわらず実用的な荷重たわみ強度を備え、採光性が良好であるにもかかわらず、淡く着色されていることと相俟って充分な隠蔽性を発揮する。
【0016】
中空パネル1の材料樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル、ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性の各種の樹脂を使用できるが、その中でもポリエステルの一種であるポリカーボネートが特に好ましく使用される。ポリカーボネートは強度、成形性、価格などのバランスが良く、高品質の中空パネルを比較的安価に製造できるからである。このようなポリカーボネート製の中空パネルには、紫外線吸収剤や光安定剤を含有させて耐候性を高めることが好ましい。
【0017】
この中空パネル1の一側端には、略楕円環状の横断面を有する中空の接続用凸条1fがパネル全長に亘って形成されており、これに対応して、中空パネル1の他側端には、接続用凸条1fを嵌合させる略楕円開環状の接続用凹条1gがパネル全長に亘って形成されている。従って、図4に示すように中空パネル1の一側端の接続用凸条1fを、隣接する中空パネル1の他側端の接続用凹条1gに嵌合させるだけで、簡単に中空パネル1,1同士を幅方向に接続できるようになっている。
【0018】
尚、この中空パネル1の両側端には小溝1h,1hがパネル全長に亘って形成されているが、この小溝1h,1hは、例えば、図4に仮想線で示す取付金具101を用いて中空パネル1を胴縁102に取付けて壁体を構築するような場合に、取付金具101の先端を挿入、係止させるものである。
【0019】
この防犯用中空パネル1の大きい特徴は、複数本の侵入防止用条材3を、人の侵入を阻止するに足る相互間隔をあけて幾つかの中空部2(2a)に挿通し、各条材3の両端を、中空パネル1の長さ方向両端に添設された端板4に固定した点にある。
【0020】
即ち、この実施形態の防犯用中空パネル1では、図2に示すように、剛性が大きい高強度の金属製(例えば鉄製)の丸棒からなる複数本(5本)の侵入防止用条材3を、その相互間隔が人の侵入を阻止するに足る80mm程度となるように、中空パネル1の横の隔壁1dと斜めの隔壁1eとで囲まれるパネル厚さ方向中間部の横長六角形状(横寸法40mm程度)の中空部2(2a)に一つ飛びに挿通し、図1,図3に示すように、各条材3の両端を、中空パネル1の長さ方向両端に添設された金属製の矩形の端板4にビス5で固定している。このようにすると、金属製の丸棒からなる各条材3と両端の金属製の矩形端板4によって頑丈な金属製の格子体が形成されることになるため、たとえ透光性樹脂よりなる中空パネル1が刃物やバーナー等で破壊されたとしても、格子体を構成する相互間隔が80mm程度の侵入防止用条材3によって人の侵入を確実に阻止し、窃盗その他の犯罪を防止することができる。
【0021】
侵入防止用条材3の相互間隔は、人の侵入を阻止するに足る間隔とすることが必須であるから、最大でも170mm程度以下とする必要があり、中でも100mm程度以下の相互間隔とするのが好ましい。そのため、この実施形態の防犯用中空パネル1では、上記のように侵入防止用条材3を中空部2(2a)に一つ飛びに挿通して各条材の相互間隔を80mm程度にしているが、場合によっては、侵入防止用条材3を中空部2(2a)に三つ飛びに挿通して相互間隔を160mm程度にしたり、二つ飛びに挿通して相互間隔を120mm程度にしてもよい。また、侵入防止用条材3を中空部2(2a)の全てに挿通して相互間隔を40mm程度にしてもよいが、その場合には侵入防止用条材3の本数が多くなり,防犯用中空パネル1の全体の重量が増して持運びや取扱いがし辛くなると共に、採光性が低下するので好ましくない。
【0022】
侵入防止用条材3として、上記の金属製の丸棒を使用する場合は、直径が5〜20mm程度のものを使用することが好ましい。5mmより細い丸棒を使用すると、丸棒を曲げて相互間隔を拡げて侵入する可能性があり、20mmより太い丸棒を使用すると、防犯用中空パネル1の重量が増して持運びや取扱いがし辛くなる。金属製の丸棒の最も好ましい直径は10mm程度である。
【0023】
侵入防止用条材3としては、金属、カーボン繊維、強化繊維のいずれかより成る棒(丸棒、角棒など)、管(丸管、角管など)、線(単線、撚線など)、ロープ、紐、テープ又は鎖などが使用可能であり、棒や管の場合は、直径(外径)又は一辺の長さが5〜20mm程度、好ましくは10mm程度のものが使用される。特に、侵入防止用条材3のうち少なくとも両側端に位置する条材は、金属、カーボン繊維のいずれかより成る剛性を備えた棒又は管を使用することが好ましく、その場合には、両側端の剛性のある条材3と中空パネル両端の端板4によって頑丈な枠体が形成されることになるので、中間に位置する条材3として上記の金属、カーボン繊維、強化繊維のいずれかより成る線、ロープ、紐、テープ、鎖などの引張力に優れた細くて軽い条材を用いて、人の侵入を阻止する格子体を形成し、防犯用中空パネル1全体の重量の増加や採光性の低下を抑えることができる利点がある。
【0024】
この防犯用中空パネル1の長さ方向両端には、図1,図3に示すように、アルミニウムテープ等の金属テープ6が端板4を覆うように貼着されており、このようにすると、中空パネル1の中空部2の両端開口が金属テープ6によって気密的に閉塞されて断熱作用が発揮されるため、室内の保温効果や結露防止効果が奏される利点がある。
【0025】
この実施形態では、中空パネル1として、パネル表面層1aとパネル裏面層1bとの間に縦、横、斜めの隔壁部1c,1d,1eを設けたハニカム構造の中空パネルを使用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、パネル表面層とパネル裏面層との間に多数の縦リブを平行に設けて、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部を形成した中空パネルなどを使用しても勿論よい。
【0026】
また、中空部2に差し込む侵入防止用条材3が、中空部2を取り囲む縦、横、斜め隔壁部1c,1d,1e、パネル表面層1a、パネル裏面層1eなどと接触するように構成してもよく、そのように構成すると、中空パネル1が振動したときに侵入防止用条材3と接触して発生する耳障りな接触音を防止できる利点がある。
【0027】
以上のような本発明の防犯用中空パネル1は、その周囲に金属フレームが取付けられ、或いは、幅方向に複数枚接続されてその周囲に金属フレームが取付けられ、採光用の窓、壁、扉などの用途に用いられる。そして、透光性樹脂からなる中空パネル1が刃物やバーナー等で破壊されるようなことがあったとしても、中空部2(2a)に挿通された侵入防止用条材3によって人の侵入を阻止できるので、窃盗その他の犯罪を防止することができる。
【0028】
尚、防犯用中空パネル1の周囲に上記の金属フレームを取付ける場合は、中空パネル1の長さ方向両端の端板4や金属テープ6を省略して、侵入防止用条材3の両端を金属フレームに直接固定するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る防犯用中空パネルを、その長さ方向両端の金属テープを分解して示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線横断面図である。
【図3】図1のB−B線部分縦断面図である。
【図4】同防犯用中空パネルの接続状態を示す部分横断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 防犯用中空パネル
1a パネル表面層
1b パネル裏面層
1c 縦の隔壁部
1d 横の隔壁部
1e 斜めの隔壁部
1f 接続用凸条
1g 接続用凹条
2,2a 中空部
3 侵入防止用条材
4 端板
6 金属テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル表面層とパネル裏面層との間に、パネル長さ方向に貫通する多数の中空部が形成された合成樹脂製の中空パネルであって、侵入防止用条材が、人の侵入を阻止するに足る相互間隔をあけて、上記中空部の幾つか又は全てに挿通され、各条材の両端が、中空パネルの長さ方向両端に添設された端板に固定されていることを特徴とする防犯用中空パネル
【請求項2】
侵入防止用条材が、金属、カーボン繊維、強化繊維のいずれかより成る棒、管、線、ロープ、紐、テープ又は鎖であることを特徴とする請求項1に記載の防犯用中空パネル。
【請求項3】
中空部の幾つか又は全てに挿通された侵入防止用条材のうち、少なくとも両側端に位置する条材が金属、カーボン繊維のいずれかより成る剛性を備えた棒又は管であることを特徴とする請求項1に記載の防犯用中空パネル。
【請求項4】
中空パネルの長さ方向両端に、金属テープが端板を覆うように貼着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の防犯用中空パネル。
【請求項5】
中空パネルの一側端に接続用凸条が形成され、他側端に接続用凹条が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の防犯用中空パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−57735(P2009−57735A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225426(P2007−225426)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】