説明

防犯装置

【課題】破壊行為などの犯行に対する抑止効果が高く、また高い防犯効果を発揮する防犯装置を提供する。
【解決手段】センサが異常が生じたことを検出すると、図示しない防犯制御部がセンサの検出結果や時刻などに基づいて、犯行の証拠となる制御データを生成し、これをマーキング制御部221に出力する。これに対してマーキング制御部221は、上記制御データと当該現金自動取引装置に固有に割り当てられた識別データとに基づいて、マーカ2221〜222mの動作制御と、マーカ駆動部223を制御してマーカ部222の移動制御を行い、上記データを示す位置と塗料の組み合わせによりペイントラインPLを紙幣PMの側面に生成するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば現金自動預金支払機(ATM)や現金自動支払機(CD)などの現金自動取引装置に好適する防犯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近時、例えば現金自動預金支払機(ATM)や現金自動支払機(CD)などの現金自動取引装置は、特に深夜などに人通りが少ないところに設置される場合、重機などにより破壊され、内部の現金が盗まれたり、あるいは取引装置ごと盗まれるといった事件が多発している。
【0003】
これに対して従来は、現金自動取引装置に生じた異常を警察や警備会社に報知するシステムにより防犯対策を講じている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、上述したような犯行は短時間で行われるため、その防犯対策の効果は十分なものではなく、さらには犯行の抑止効果も低いという問題があった。
【特許文献1】特開平5−120516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防犯装置では、破壊行為などが行われた場合、その旨を警備会社などに報知するようにしているが、犯行が短時間で行われるため、その防犯対策の効果は十分なものではなく、さらには犯行の抑止効果も低いという問題があった。
【0005】
この発明は上記の問題を解決すべくなされたもので、破壊行為などの犯行に対する抑止効果が高く、また高い防犯効果を発揮する防犯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、紙幣を収納する現金収納機に用いられる防犯装置であって、異常を検出する検出手段と、この検出手段が異常を検出した場合に、紙幣に塗料を塗布する塗布手段とを具備して構成するようにした。
【0007】
またこの発明は、紙幣を収納する現金収納機に用いられる防犯装置であって、異常を検出する検出手段と、この検出手段が異常を検出した場合に、場所の情報、時刻の情報および現金収納機に固有に割り当てられた識別情報のうち、少なくとも一方の情報に応じて紙幣に塗料を塗布することで、紙幣に盗難情報を記録する塗布手段とを具備して構成するようにした。
さらにこの発明では、現金収納機において整えて積み重ねられた紙幣の側面に対して、塗料を塗布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、この発明では、検出手段が異常を検出した場合に、現金収納機が収納する紙幣に塗料を塗布するようにしている。
したがって、この発明によれば、塗料が塗布された紙幣を使おうとした場合に塗料の存在により犯罪に関わる紙幣であることが判明することになるので、奪われた紙幣を使用することが困難であり、また使用により犯人追跡の足がかりとすることができる。またこのような塗料の塗布による防犯対策を予め一般に広く知らしめておくことにより、現金収納機の持ち去りや破壊行為などの犯行に対する抑止効果が得られ、また高い防犯効果を発揮することが可能な防犯装置を提供できる。
【0009】
またこの発明では、検出手段が異常を検出した場合に、場所の情報、時刻の情報および現金収納機に固有に割り当てられた識別情報のうち、少なくとも一方の情報を、紙幣に塗料を塗布することで記録するようにしている。
【0010】
したがって、この発明によれば、奪われた紙幣に盗難情報が記録されるので、奪われた紙幣を使用したり、換金することが困難であるばかりか、この情報が記録された紙幣を犯罪立証の証拠として利用することが可能な防犯装置を提供できる。
【0011】
さらにこの発明では、現金収納機において整えて積み重ねられた紙幣の側面に対して、塗料を塗布するようにしているので、多数の紙幣に対しても迅速に情報を記録することができる。
【0012】
一般に、紙幣には特殊な用紙が使用され、しかも、表面には汚損されぬよう特殊な処理が施されている。このため紙幣の印刷面は保護されており、印刷面に塗料を塗布することは困難を伴うことがある。これに対して、紙幣の切断面(側面)には、そのような特殊加工が施されていない。
【0013】
もともと紙幣には、細管現象と言って一度付着した塗料を内部に浸透させる性質があるため、特殊加工のない切断面からの塗料の付着は、塗料の付着が容易なだけでなく、一度付着した塗料の除去、隠滅、毀損が困難である。
【0014】
この点を鑑み、この発明では、塗布手段は、現金収納機において整えて積み重ねられた紙幣に対し、マーキングが容易で剥がれ難い切断面に対して塗布をすることを特徴とする。
【0015】
さらに、単一の染料による盗難紙幣へのマーキングでは、紙幣に付着できる情報はきわめてわずかであり、多種多様な現金収納機や盗難情報に対応できない。この点を鑑み、この発明では、複数の異なる塗料を備え、いろいろな配列パターンをつけることにより、付着できる情報の量を無限数とできることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明の一実施形態について説明する。以下の説明では、この発明に係わる防犯装置を現金自動取引装置に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる現金自動取引装置の構成を示すものである。この現金自動取引装置は、制御部100と、表示部110と、入力部120と、カメラ130と、通信部140と、紙幣出入れ部150と、紙幣ホルダ160と、防犯制御部200と、センサ211〜21nと、マーキング装置220と、時計部230と、バッテリ240と、電源部300とを備える。
【0017】
制御部100は、当該現金自動取引装置の各部を統括して金融サービス業務に関する制御を行うものであって、入力部120を通じたユーザからの要求に応じて、通信部140を通じてネットワークNWに接続されるホストコンピュータHCと通信し、ユーザの認証、残高の照会、振り込み手続きの受け付け、入金指示の受け付け、出金指示の受け付けなど、種々の入出金処理を実行するものである。
【0018】
表示部110は、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)を用いた表示部であって、ユーザに対して種々の情報や、操作ガイダンス、情報入力の要求、ユーザの口座に関する情報などを映示するものであって、これらの映示内容は制御部100によって制御される。
【0019】
入力部120は、上記表示部110上に設けられたタッチパネル式に入力装置や、複数のキーからなる入力装置であって、ユーザからの要求を受け付けて、この受け付けた情報を制御部100に出力する。
【0020】
カメラ130は、ユーザを撮像する電子カメラであって、撮影によって得た映像データを制御部100に出力する。なお、この映像データは、制御部100の制御により、記憶部170に記録されるとともに、通信部140およびネットワークNWを通じて、ホストコンピュータHCに伝送される。
通信部140は、ネットワークNWを通じて、金融機関や警備会社などに設置されるホストコンピュータHCと通信するものである。
【0021】
紙幣出入れ部150は、紙幣ホルダ160に収納される紙幣PMを制御部100の指示に応じて取り出してユーザに渡したり、あるいはユーザから投入された紙幣PMを紙幣ホルダ160に収納するものである。なお、紙幣ホルダ160は、紙幣PMの額面ごとに紙幣PMを積み重ねた状態で収納している。
【0022】
防犯制御部200は、当該現金自動取引装置の防犯に関わる制御を統括して行うものであって、時計部230が計時する時刻、後述するセンサ211〜21nの検出結果、および防犯制御部200が内蔵するメモリに予め記憶された、当該現金自動取引装置に固有に割り当てられた識別データID(金融機関コード、エリアコード、装置識別コードなど)に応じた制御データを生成する。
【0023】
センサ211〜21nは、振動や衝撃、音、温度などを検出するものであって、当該現金自動取引装置内に分散配置され、当該現金自動取引装置に対する破壊行為を検出するものであり、検出結果を防犯制御部200に通知する。
【0024】
マーキング装置220は、防犯制御部200によって制御され、紙幣ホルダ160に収納される紙幣PMに対してマーキングを施すものである。図2にマーキング装置220の構成を示す。この図に示すように、マーキング装置220は、マーキング制御部221と、マーカ部222と、マーカ駆動部223とを備える。
【0025】
マーキング制御部221は、防犯制御部200から与えられる制御データに応じて、マーカ部222およびマーカ駆動部223を制御するものである。マーカ部222は、マーカ2221〜222mを備える。マーカ2221〜222mは、紙幣ホルダ160に柱状に整えて収納される紙幣PMに対して、垂直方向に並べられている。
【0026】
そしてマーカ2221〜222mは、それぞれ異なる顔料や染料などの塗料を内部に蓄えており、マーキング制御部221によって動作制御され、これを例えばインクジェット方式により噴出して、紙幣ホルダ160に収納される紙幣PMの側面に上記塗料を付着させ、図3に示すように、紙幣PMの側面にペイントラインPLを生成するものである。
【0027】
マーカ駆動部223は、例えばモータを用いた駆動機構であって、マーキング制御部221の指示に応じて、マーカ2221〜222mの水平方向の位置、および上下方向の位置を制御して、マーカ2221〜222mを水平・垂直自在に移動させるものである。
【0028】
時計部230は、時刻を計時するものであって、時刻を防犯制御部200に通知し、これを防犯制御部200が検出する。バッテリ240は、停電時などにおいて、防犯制御部200、センサ211〜21n、マーキング装置220および時計部230に動作電力を供給するものであり、平時においては、電源部300からの電力供給により充電が行われる。電源部300は、当該現金自動取引装置の各部に動作電力を供給するものである。
【0029】
次に、上記構成の現金自動取引装置の動作について説明する。なお、ここでは、通常の現金の出し入れサービスに関する動作の説明は省略し、悪意を持つ者が当該現金自動取引装置に対して破壊行為を行った場合の動作について説明する。
【0030】
特殊な工具や重機などを用いて当該現金自動取引装置に対して破壊行為を行うと、これによって生じる振動や音、衝撃などをセンサ211〜21nが検出し、この検出結果を防犯制御部200に通知する。これに対して防犯制御部200は、センサ211〜21nから通知される検出結果を総合して判断し、破壊行為が行われているか否かを判定する。
【0031】
ここで破壊行為が行われていると防犯制御部200が判断した場合には、この旨を制御部100に報知する。これに対して制御部100は、通信部140を制御してネットワークNWを通じて破壊行為が行われていることを警備会社などに通知するとともに、図示しない警報器より非常音を発令するとともに、非常灯を発光し、周囲に破壊行為が行われていることを報知し、破壊者を威嚇する。
【0032】
また防犯制御部200は、センサ211〜21nの検出結果に基づいて、センサ211〜21nの検出結果を示すクリミナルデータCDを生成する。このクリミナルデータCDは、例えばセンサ211〜21nが異常を検出した順序、検出した異常の種類(振動や音、衝撃の区別)など破壊行為を示す情報である。
【0033】
そしてまた防犯制御部200は、時計部230から時刻情報を取得し、これをタイムデータTDとして、上記クリミナルデータCDと、上記識別データIDとともに、マーキング装置220に出力し、マーキング装置220に対して紙幣PMに対するマーキングを指示する。
【0034】
これに対してマーキング装置220では、マーキング制御部221が防犯制御部200からタイムデータTD、クリミナルデータCDおよび識別データIDを取得し、これらの盗難データに応じてマーカ部222およびマーカ駆動部223を制御して、紙幣PMに対してマーキングを行い、紙幣PMの側面にペイントラインPLを塗布する。すなわち、上記盗難データに応じたパターンが塗料によって紙幣PMの側面に形成される。
【0035】
このペイントラインPLは、図4に示すように構成される。すなわち、タイムデータTDを示すペイントラインPL、クリミナルデータCDを示すペイントラインPLおよび識別データIDを示すペイントラインPLを少なくとも備える。
【0036】
このようなペイントラインPLを生成するためにマーキング制御部221は、タイムデータTDを分析し、マーカ2221〜222mのうち使用すべきマーカおよびペイントラインPLを作成する位置を判断する。同様に、マーキング制御部221は、クリミナルデータCDを分析し、マーカ2221〜222mのうち使用すべきマーカおよびペイントラインPLを作成する位置を判断する。そしてさらに、マーキング制御部221は識別データIDを分析し、マーカ2221〜222mのうち使用すべきマーカおよびペイントラインPLを作成する位置を判断する。
【0037】
すなわち、図4に示すように、タイムデータTDを示すペイントラインPL、クリミナルデータCDを示すペイントラインPLおよび識別データIDを示すペイントラインPLがそれぞれ生成される範囲は決まっているが、それぞれのデータの範囲のうち、どの位置にペイントラインPLを生成するか、およびどのマーカを用いてペイントラインPLを生成するかの順列組み合わせにより、多数の情報を表現することができる。
【0038】
そして、これらの判断結果に基づいてマーキング制御部221は、マーカ2221〜222mの動作制御、およびマーカ駆動部223を制御してマーカ部222の移動制御を行い、ペイントラインの生成位置および用いるマーカの種類の順列組み合わせにより、タイムデータTDを示すペイントラインPL、クリミナルデータCDを示すペイントラインPLおよび識別データIDを示すペイントラインPLを生成する。
【0039】
以後、警備員や警察の到着の前に、当該現金自動取引装置が破壊され紙幣ホルダ160に収納された紙幣PMが強奪され、もしくは当該現金自動取引装置ごと強奪されたとしても、紙幣ホルダ160に収納された紙幣PMにはペイントラインPLが塗布された状態となる。
【0040】
以上のように、上記構成の現金自動取引装置では、異常が生じた場合に、紙幣PMにペイントラインPLが施すようにしている。
したがって、上記構成の現金自動取引装置によれば、ペイントラインPLが施された紙幣PMを使おうとした場合にペイントラインPLの存在により犯罪に関わる紙幣であることが判明することになるので、犯人は奪った紙幣PMを使用することが困難であり、また使用により犯人追跡の足がかりとすることができる。
【0041】
またこのようなペイントラインPLによる防犯対策を予め一般に広く知らしめておくことにより、破壊行為などの犯行に対する抑止効果が得られ、また高い防犯効果を発揮することができる。
【0042】
また、ペイントラインPLは、紙幣PMが関わる犯行のデータを示すものであって、タイムデータTDを示すペイントラインPLにより、いつの犯行で奪われた紙幣であるかを識別することができ、またクリミナルデータCDを示すペイントラインPLにより、どのような破壊行為が行われたかを示す情報が得られ、識別データIDを示すペイントラインPLにより、どの現金自動取引装置より奪われた紙幣PMであるかを判断することができる。これらの情報により、犯罪を立証する証拠として用いることができる。
【0043】
一般に、警察署に届け出る盗難届け、及び、拾得物届け等で盗難を証明する場合、最小限必要とするものは、時刻と場所の情報である。この点を鑑み、この発明では、マーキング装置220は、複数の異なる塗料を備え、当該現金自動取引装置に固有に割り当てられた識別情報を収納された紙幣に塗布することで、盗難情報として時刻と場所の特定を可能とすることを特徴とする。
【0044】
このようにして、一度ペイントラインPLが付加された紙幣PMは、ペイントラインPMを除去することは困難であり、またペイントラインPLが示す識別情報とその特徴から、事故などにより塗料が付着したものと反証することは不可能であるため、盗難や強盗により取得された紙幣PMであるという確固たる証拠となる。
【0045】
紙幣には特殊な用紙が使用され、しかも、表面には汚損されぬよう特殊な処理が施されている。このため紙幣の印刷面は保護されており、印刷面に塗料を塗布することは、困難を伴い、且つ、法律に反するものである。
【0046】
また、塗布された塗料の除去、隠滅、毀損が容易に行なわれれば、防犯装置として大きな欠陥となる。たとえば、紙幣の表面ヘマーキングを行なった場合、紙幣の印刷面の特殊加工により、マーキングの除査、隠滅、段損が容易である。
【0047】
一方、紙幣の切断面には、そのような特殊加工が施されていない。また紙幣の用紙には、細管現象があり、一度付着した塗料を内部へ浸透させる性質がある。この点を鑑み、上記構成の現金自動取引装置では、塗料の吸収の良い切断面からマーキングを行なうことで、効率的にマーキングを行なう。
【0048】
すなわち、紙幣ホルダ160に整えて積み重ねられた紙幣PMの側面にペイントラインPLを生成するようにしているので、多数の紙幣PMであっても塗料を迅速かつ確実に塗布して浸透させることができ、マーキングの除去、隠滅、毀損の可能性を払拭している。
【0049】
そしてまた、単一の染料による盗難紙幣へのマーキングでは、紙幣に付着できる情報はきわめてわずかである。現在社会ではきわめて多くの現金自動預払機、自動現金収納機、現金輸送機器が使用されている。そのため、盗難の証拠として最小限必要な、盗難場所および時間を証明できる盗難情報を盗難紙幣にマーキングするためには、紙幣に付着できる情報量を増大させる必要がある。
【0050】
この点を鑑み、上記構成の現金自動取引装置では、複数の塗料を組み合わせ、配列をつけることにより、付着できる情報の量を無限数とすることができるようにしていることを特徴としている。
【0051】
マーキングで用いる塗料としては、日常環境において認識できる塗料を用いることも可能であるが、紫外線などの特殊光の元でのみ識別可能な特殊塗料を用いるようにしてもよい。あるいは通常の塗料と特殊塗料を組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0052】
また、塗料に低レベルの放射性同位元素の粉末を混入させるようにしてもよい。複数種を用いた順列組み合わせにより、タイムデータTD、クリミナルデータCDおよび識別データIDを多彩に表現することができ、放射線測定器で上記データを検出することができる。放射性同位元素としては、アンチモン241、ストロンチウム90、コバルト60、セシウム137などが考えられる。人体に害を及ぼさない程度で混入させることはいうまでもない。
【0053】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0054】
その一例として例えば、上記実施の形態では、インクジェット方式によりペイントラインPLを生成するようにしたが、その他の方式により生成してもよい。また紙幣PMに塗料を塗布することに特化すれば、スタンプを用いて塗布する方式や、紙幣ホルダ160の下に塗料のタンクを設け、異常が生じた場合に紙幣PMをタンク内の塗料液中に沈没させる方式、スプレーにて噴霧する方式、紙幣ホルダ160上の塗料液の袋を破裂させて塗布する方法、ペン先にフエルトを用いたペンなど利用する方法などが考えられる。
【0055】
また図5に示すように、積み重ねた紙幣PMを紙幣ホルダ160に収納し、これをマーキング装置220と一体化したユニット610,620をカセット式のケース600に収納するようにしてもよい。このケース600は、当該現金自動取引装置に装填することで、係員が容易に紙幣PMを、当該現金自動取引装置に追加、あるいは取り出すことを可能とするものである。この場合、ケース600内にもセンサ800を設け、さらにはケース600の着脱を検出するセンサ900を備えるようにしてもよい。センサ800および900の検出結果は、防犯制御部200に通知する。
【0056】
さらに、図5に示す例では、マーカ部222を、自然光下で視認可能な塗料を塗布するマーカ2241と、特定の波長の特殊光下でのみ視認可能な特殊塗料を塗布するマーカ2242〜2245とにより構成している。このように2種類の塗料を組み合わせることにより、強奪された紙幣PMであることを認識することが容易にできる。また自然光下では視認できない特殊塗料を用いることで、犯人に塗料が塗布されたことを認識させないで済む。このような2種類の塗料を組み合わせることは、図2に示したマーキング装置220に適用することも可能である。
【0057】
また上記実施の形態では、ペイントラインPLで表現される盗難情報として、タイムデータTD、クリミナルデータCDおよび識別データIDを例に挙げて説明したが、これら以外の情報(例えば盗難場所など)を示すようにしてもよい。例えば、異常が生じた時点で、紙幣ホルダ160内の紙幣PMの数を検出し、この数を示すデータを記録するようにしてもよい。これによれば、現金自動取引装置が完全に破壊されたり、持ち去られた場合でも、後に上記データが記録された紙幣PMが発見された時点で、上記データより強奪された金額を正確に把握することができる。
【0058】
さらに上記実施の形態では、この発明に係わる防犯装置を、現金自動預金支払機(ATM)や現金自動支払機(CD)などの現金自動取引装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、両替機や金庫、自動販売機、現金輸送車、現金を輸送するためのアタッシュケースなど、現金を収納するものであれば適用可能である。
【0059】
またセンサ211〜21nによる異常の検出手法としては、種々の検出方法が考えられる。例えば所定の無線信号を送信する無線送信機を防犯の対象となる現金自動取引装置などに備えたり、現金輸送を行う警備員が所持し、防犯装置のセンサ211〜21nとして上記無線信号を受信する無線受信機を備える。そして上記防犯装置が現金とともに強奪され上記無線受信機が上記無線信号を受信できなくなると、この状態を検出した防犯制御部200がマーキング装置220を制御して紙幣PMに塗料を塗布する。
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明に係わる現金自動取引装置の一実施形態の構成を示す回路ブロック図。
【図2】図1に示した現金自動取引装置のマーキング装置の構成を示す回路ブロック図。
【図3】図2に示したマーキング装置によって紙幣側面に生成されるペイントラインを説明するための図。
【図4】図3に示したペイントラインが示す情報の一例を示す図。
【図5】図1に示した紙幣ホルダとマーキング装置をカセット式のケース内に納める場合の構成例を示す図。
【符号の説明】
【0061】
100…制御部、110…表示部、120…入力部、130…カメラ、140…通信部、150…紙幣出入れ部、160…紙幣ホルダ、170…記憶部、200…防犯制御部、211〜21n…センサ、220…マーキング装置、221…マーキング制御部、222…マーカ部、223…マーカ駆動部、230…時計部、240…バッテリ、300…電源部、400…ノズル部、401…ノズル前部、401a,401b,401c…導液路、402…ノズル後部、402a,402b,402c…導液路、500…噴出制御基板、501a,501b,501c…制御穴、502a,502b,502c…電熱線、503…配線パターン、600…ケース、610,620…ユニット、700…保護フィルム、800,900…センサ、2221〜222m,2241〜2245…マーカ、HC…ホストコンピュータ、NW…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を収納する現金収納機に用いられる防犯装置であって、
異常を検出する検出手段と、
この検出手段が異常を検出した場合に、前記紙幣に塗料を塗布する塗布手段とを具備することを特徴とする防犯装置。
【請求項2】
紙幣を収納する現金収納機に用いられる防犯装置であって、
異常を検出する検出手段と、
この検出手段が異常を検出した場合に、場所の情報、時刻の情報および前記現金収納機に固有に割り当てられた識別情報のうち、少なくとも一方の情報に応じて前記紙幣に塗料を塗布することで、前記紙幣に盗難情報を記録する塗布手段とを具備することを特徴とする防犯装置。
【請求項3】
前記塗布手段は、複数の異なる塗料を備え、前記検出手段が異常を検出した場合に、前記複数の塗料のうち、前記情報に応じた塗料を選択的に用いて、前記情報を盗難情報として前記紙幣に塗布することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防犯装置。
【請求項4】
前記塗布手段は、前記検出手段が異常を検出した場合に、前記情報に応じた配列パターンを盗難情報として前記紙幣に塗布することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防犯装置。
【請求項5】
前記塗布手段は、前記現金収納機において整えて積み重ねられた紙幣の側面に対して、塗料を塗布することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の防犯装置。
【請求項6】
前記塗布手段は、前記複数の異なる塗料として、自然光下で視認可能な塗料と、特定の波長を有する特殊光下でのみ視認可能な塗料とを用いることを特徴とする請求項3に記載の防犯装置。
【請求項7】
前記現金収納機は、紙幣の引き出し、もしくは紙幣の預け入れを受け付ける現金自動取引装置であって、この現金自動取引装置に適用することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の防犯装置。
【請求項8】
前記現金収納機は、紙幣を輸送するための輸送容器であって、この輸送容器に適用することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の防犯装置。
【請求項9】
前記現金収納機は、紙幣を保管するための金庫であって、この金庫に適用することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の防犯装置。
【請求項10】
前記検出手段は、所定の無線信号を受信する受信手段を備え、この受信手段の受信結果に応じて異常の有無を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の防犯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−39775(P2006−39775A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216419(P2004−216419)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(504283725)
【出願人】(504283644)
【Fターム(参考)】