説明

防臭抗菌用粉末材料

【課題】 マスク・靴の中敷き・寝具・肌着等に好適に利用でき、様々な環境下でも防臭抗菌効果が十分に発揮できる低コストの防臭抗菌用粉末材料を提供する。
【解決手段】 粒径が3〜15μmの竹炭粉末100重量%に対して、Co又はPが0.001%以上含有された粒径5〜40μmのNi基合金粉末を9〜15重量%混合する。Ni基合金粉末には、Cu等の抗菌性を示す他の元素をNi含有量に対して0.01〜20%含有して抗菌性をさらに高めてもよい。この防臭抗菌用粉末材料をマスク・靴の中敷き・寝具・肌着等に用いる生地に付着するか、又はウレタン・シリコーン・ラバー等の樹脂組成物(バインダー)に混練して塗工するか、あるいは生地を構成する樹脂組成物に直接混練する等、防臭抗菌用粉末材料が表面に露出するようにして利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク・靴の中敷き・寝具・肌着等に好適に利用できる防臭抗菌用粉末材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスク・靴の中敷き・寝具・肌着等に施される防臭抗菌技術が特許文献1〜3に開示されている。特許文献1はマスクに関する技術で、光触媒性酸化チタン粒子に金属銀微粒子を担持させた複合粒子をマスク本体部に定着させたことを特徴としている。特許文献2は履き物に関する技術で、靴の中敷きの上面に光触媒層を形成したことを特徴としている。特許文献3は肌着等に好適な繊維構造物に関する技術で、銀担持アクリロニトリル系繊維を繊維構造物の構成繊維として含有させたことを特徴としている。
【0003】
ところで、特許文献1,2の技術は光触媒技術を応用したものであるから、光が当たらない又は当たり難い箇所では防臭抗菌効果が十分に発揮され難いという問題があった。また、特許文献3の技術はアクリロニトリル系繊維が高価な銀系化合物を含有するものであるから、製品価格が高くなるという問題があった。
【特許文献1】特開2005−73949号公報
【特許文献2】特開2004−49888号公報
【特許文献3】特開2006−249609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、マスク・靴の中敷き・寝具・肌着等に好適に利用でき、様々な環境下でも防臭抗菌効果が十分に発揮できる低コストの防臭抗菌用粉末材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 粒径が3〜15μmの竹炭粉末と、Co又はPが0.001%以上含有された粒径5〜40μmのNi基合金粉末とを所定の割合で混合した、防臭抗菌用粉末材料
2) 竹炭粉末100重量%に対してNi基合金粉末を9〜30重量%混合した、前記1)記載の防臭抗菌用粉末材料
3) Ni基合金粉末が、CuをNi含有量に対して0.01〜20%含有したものである、前記1)又は2)記載の防臭抗菌用粉末材料
4) Ni基合金粉末が、他の金属粉末の粒表面にNi基合金皮膜をメッキ処理で形成したものである、前記1)〜3)いずれか記載の防臭抗菌用粉末材料
5) 被塗着物に塗着させるための樹脂組成物に前記1)〜4)いずれか記載の防臭抗菌用粉末材料を混練した、防臭抗菌剤
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、消臭効果に優れる安価な竹炭粉末にCo又はPが含有された抗菌効果に優れるNi基合金粉末を少量混合したから、防臭と抗菌双方に優れる低コストの防臭抗菌用粉末を得ることができる。しかも、従来の光触媒を用いた技術とは異なり、光が当たり難い箇所に使用しても防臭抗菌効果を十分に発揮でき、使用環境に制限がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の竹炭粉末は、粒径が3〜15μmのものを用いるのが望ましい。3μm以下だと粒径が小さすぎて取れ易くなり、繊維等への付着が困難で飛散し易い。15μm以上だと粒径が大きすぎてゴツゴツした感じとなり、肌触り感が悪化する。Ni基合金粉末は竹炭粉末100重量%に対して9〜30重量%の割合で混合するのが望ましい。9%重量以下だと抗菌効果が相対的に不十分で、30重量%以上だとコスト高になるとともに消臭効果が相対的に低下する。
【0008】
Ni基合金粉末としては、ケニファイン粉末(商品名:株式会社神戸製鋼所)が用いられる。ケニファイン粉末はCo又はPを0.001%以上含有させたものであり、Ni自体の抗菌性は極めて低いが、Co又はPを共存させることで抗菌活性を飛躍的に高め、元々優れた抗菌性を有しているが高価なCuやAgと同等以上の強い抗菌性を示すようにしたものである。このNi基合金粉末には優れた抗菌性を有するCuを少量含有させて抗菌性をさらに高めることもできる。粒径は5〜40μmが望ましく、5μmだと粒径が小さすぎて取れ易くなり、繊維等への付着が困難で飛散し易い。40μm以上だと粒径が大きすぎてゴツゴツした感じとなり、肌触り感が悪化する。
【0009】
この防臭抗菌用粉末材料をマスク・靴の中敷き・寝具・肌着等に用いる生地に付着するか、又はウレタン・シリコーン・ラバー等の樹脂組成物(バインダー)に混練して塗工するか、あるいは生地を構成する樹脂組成物に直接混練する等、防臭抗菌用粉末材料が表面に露出するようにして利用される。以下、本発明の各実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1〜4に示す実施例1は、防臭抗菌マスクに本発明の防臭抗菌用粉末材料を用いた例である。図1は実施例1の防臭抗菌シートの分解斜視図、図2は実施例1の防臭抗菌シートの一部切欠斜視図、図3は実施例1の防臭抗菌シートの拡大縦断面図、図4は実施例1の防臭抗菌マスクの一部切欠斜視図である。
【0011】
図中、1は防臭抗菌シート、2は表シート、3は通気穴、4は中間シート、5は防臭抗菌用粉末材料、10は防臭抗菌マスク、11はマスク本体、12は折り返し部、13はマスクゴム紐である。
【0012】
実施例1の防臭抗菌シート1は、図1〜3に示すように絹の短繊維をニードルパンチ又は水流絡合法で絡合し、これを加圧するとともに1mm径の通気穴3を加工して長尺の不織布からなる表シート2を構成し、レーヨン・アセテート又はそれらの混合繊維シートの全体に防臭抗菌用粉末材料5を均一に付着して中間シート4を構成し、この中間シート4を2枚の表シート2の間に積層して外側から加熱加圧して一体的に溶着している。
【0013】
この防臭抗菌シート1をマスク面となる寸法(18cm×11cm程)の長方形状に切断してマスク本体11とし、図4に示すようにマスク本体11の周縁を折り返して折り返し部12を形成するとともに、耳掛けとなる左右のマスクゴム紐13を上下端で縫着して防臭抗菌マスク10を製作する。なお、防臭抗菌用粉末材料5は、粒径8.6μmの竹炭粉末100gに対して粒径20μmのNi基合金粉末を12gの割合で混合している。
【0014】
実施例1では、中間シート4の防臭抗菌用粉末材料5に含まれる竹炭粉末の消臭作用で口臭を消臭する。また、大気又は身体の息に含まれる菌・カビは中間シート4の防臭抗菌用粉末材料5に含まれるNi基合金粉末と接触し、その表面に存在している吸着水中にNi及びCo又はPがイオン化して溶出し、そのイオンが吸着水を介して増殖すると考えられる菌と接触して死滅させる。マスク本体11の通気性は表シート2の通気穴3によって確保されている。
【実施例2】
【0015】
図5に示す実施例2は、実施例1の防臭抗菌シートを靴の中敷きに使用した例である。図5は実施例2の靴の中敷きの平面図である。図中、20は中敷き、21は縁布である。
【0016】
実施例2の中敷き20は、図5に示すように防臭抗菌シート1を靴の形状に切り出し、その周縁に縁布21を縫着して補強している。実施例2では、竹炭粉末の消臭作用により足裏の悪臭を消臭するとともに吸汗し、Ni基合金粉末の抗菌作用により足裏や指間の雑菌の増殖を抑制して水虫等の皮膚病を防止する。その他、符号、構成、作用効果は実施例1と同じである。
【実施例3】
【0017】
図6に示す実施例3は、実施例1の防臭抗菌シートを下着の生地の一部に使用した例である。図6は実施例3の下着の正面図である。図中、30は下着である。
【0018】
実施例3の下着30は、図6に示すように防臭抗菌シート1を股部に縫着している。実施例3では、竹炭粉末の消臭作用により股間や下腹部の臭いを消臭するとともに吸汗・吸尿し、Ni基合金粉末の抗菌作用により雑菌の増殖を抑制する。その他、符号、構成、作用効果は実施例1と同じである。
【実施例4】
【0019】
図7に示す実施例4は、靴の中敷きに本発明の防臭抗菌剤を使用した例である。図7は実施例4の中敷きの説明図である。図中、40は中敷き、41はクッション材、42は不織布、43は防臭抗菌剤、44は粘着剤、45は剥離シートである。
【0020】
実施例4の中敷き40は、図7に示すようにポリエステル製のクッション材41の上面にテトロンの不織布42を積層し、バインダーのウレタンに防臭抗菌用粉末材料を混練した防臭抗菌剤43を不織布42に塗工し、クッション材41の下面にはアクリル系共重合性の粘着剤44を塗工し、粘着剤44の表面にPET(ポリエチレンテレフタレート)の剥離シート45を貼付し、剥離シート45を剥離して粘着剤44の面を靴底に向けて敷いて使用する。
【実施例5】
【0021】
図8に示す実施例5は、靴のつま先部分に敷いて用いる中敷きに本発明の防臭抗菌剤を使用した例である。図7は実施例5の中敷きの説明図である。図中、50は中敷き、51はシリコーン、52は防臭抗菌剤、53は粘着剤、54は剥離シートである。
【0022】
実施例5の中敷き50は、図8に示すようにバインダーのシリコーンに防臭抗菌用粉末材料を混練した防臭抗菌剤52を0.5mm厚のシリコーン51の上面に塗工し、さらにその上面に防臭抗菌剤52を滑り止め用として点状に塗工し、シリコーン51の下面には粘着剤53を塗工し、粘着剤53の表面にPET(ポリエチレンテレフタレート)の剥離シート54を貼付し、剥離シート54を剥離して粘着剤53の面を靴底に向けてつま先部分に敷いて使用する。
【0023】
実施例4,5の中敷きと市販の中敷きと無処理の中敷きの抗菌性能を比較試験した。表1に示す5cm×5cmの検体を白癬菌液(1.9×10PFU)に入れ、シェークフラスコ法で24時間処理し、処理後の白癬菌数を算定した。結果を図9,10に示す。図9は菌数を示し、図10は抗白癬菌活性を示している。なお、竹炭粉末とNi基合金粉末を別々のバインダーに混練して積層するように塗布したものも参考として試験している。
【0024】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の防臭抗菌用粉末材料は、マスク・靴の中敷き・寝具・肌着・カーテン・ハンカチ・帽子・包帯・紙おむつ・壁紙等に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1の防臭抗菌シートの分解斜視図である。
【図2】実施例1の防臭抗菌シートの一部切欠斜視図である。
【図3】実施例1の防臭抗菌シートの拡大縦断面図である。
【図4】実施例1の防臭抗菌マスクの一部切欠斜視図である。
【図5】実施例2の靴の中敷きの平面図である。
【図6】実施例3の下着の正面図である。
【図7】実施例4の中敷きの説明図である。
【図8】実施例5の中敷きの説明図である。
【図9】本発明の抗菌性能の試験結果である。
【図10】本発明の抗菌性能の試験結果である。
【符号の説明】
【0027】
1 防臭抗菌シート
2 表シート
3 通気穴
4 中間シート
5 防臭抗菌用粉末材料
10 防臭抗菌マスク
11 マスク本体
12 折り返し部
13 マスクゴム紐
20 中敷き
21 縁布
30 下着
40 中敷き
41 クッション材
42 不織布
43 防臭抗菌剤
44 粘着剤
45 剥離シート
50 中敷き
51 シリコーン
52 防臭抗菌剤
53 粘着剤
54 剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が3〜15μmの竹炭粉末と、Co又はPが0.001%以上含有された粒径5〜40μmのNi基合金粉末とを所定の割合で混合した、防臭抗菌用粉末材料。
【請求項2】
竹炭粉末100重量%に対してNi基合金粉末を9〜30重量%混合した、請求項1記載の防臭抗菌用粉末材料。
【請求項3】
Ni基合金粉末が、CuをNi含有量に対して0.01〜20%含有したものである、請求項1又は2記載の防臭抗菌用粉末材料。
【請求項4】
Ni基合金粉末が、他の金属粉末の粒表面にNi基合金皮膜をメッキ処理で形成したものである、請求項1〜3いずれか記載の防臭抗菌用粉末材料。
【請求項5】
被塗着物に塗着させるための樹脂組成物に請求項1〜4いずれか記載の防臭抗菌用粉末材料を混練した、防臭抗菌剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−46460(P2009−46460A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219433(P2007−219433)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(399089507)
【Fターム(参考)】