説明

防護衣

【課題】防護マスクと防護衣とを併せて着用したときに防護マスクにおける透視レンズの周囲から防護衣が外れることを防止する。
【解決手段】防護衣1において着用者の頭部と顔面とを含む首から上の身体部分を被覆する第1被覆部3に防護マスク2の透視レンズ22を露出させるための開口部36が形成される。開口部36の周縁部分は、弾性的に伸長する第1環状部分41と第1環状部分41の外側にあって透視レンズ22の枠部材23を被覆可能な第2環状部分42とを有する。第1環状部分41は、防護マスク2において枠部材23と面体21との間に形成される溝33へ弾性的に伸長した状態で挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有毒ガス等を含む環境において防護マスクと共に着用するのに好適な防護衣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有毒ガスを含む環境で作業する場合に着用する防護マスクおよびその防護マスクと併せて着用する防護衣は公知ないし周知である。例えば、実開昭54−11597号公報(特許文献1)に開示の防毒フードは、この種の防護衣の一つであって、防護マスクに設けられた透視ガラス部と、頭部を被覆する防毒フードに設けられた透視部との間を密封することができる。防毒フードはゴム等の柔軟な材料で形成された透視部嵌め枠を有し、その嵌め枠が防護マスクにおける透視ガラス部の締め輪に対して緊密に嵌合する。
【特許文献1】実開昭54−11597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知の防毒フードの着用手順は、次のとおりである。まず作業者が防護マスクを着用する。作業者は、次に防毒フードをかぶり、続いて防護マスクにおける透視ガラス部の締め輪に対してその外側から透視部嵌め枠を嵌めて、締め輪と嵌め枠との間を密封する。最後に、防毒フードの襟を閉じる。
【0004】
ところで、かような防毒フードは、柔軟材料で形成された嵌め枠の弾性的な収縮力を利用して嵌め枠を締め輪の外側に嵌めるだけであるから、着用している防毒フードが周囲の物に触れて引っ張られたときには、嵌めてあった嵌め枠が伸びて締め輪から外れるということがある。また、防毒フードに迷彩色を施す場合に、防毒フードの中でも織布で作られている部分は迷彩色を施すことが容易であるが、ゴムで作られている嵌め枠に対して織布と同じように迷彩色を施すことは技術的に経済的に必ずしも容易ではない。さらにはまた、作業者にとって、自分一人で防護マスクと防毒フードとを着用して、防毒フードの嵌め枠を防護マスクの締め輪に嵌めることが難しいという問題もある。
【0005】
そこで、この発明が課題とするところの一つは、防護マスクと防護衣とを併せて着用した場合に、防護マスクにおける透視レンズの周囲から防護衣が外れなくなるように防護衣に改良を施すことにある。この発明が課題とするところの他の一つは、透視レンズの枠部材の外面を防護衣の外面と同じ図柄にすることが容易となるように防護衣に改良を施すことにある。この発明が課題とするところのさらに他の一つは、防護マスクの着用者が自分一人で防護衣も着用することができるように防護衣に改良を施すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題解決のためのこの発明には、第1発明と第2発明とがある。これら両発明のうちの第1発明が対象とするのは、透視レンズと吸排気可能な面体とが前記透視レンズの周縁に沿って延びる枠部材を介して一体になっており、前記枠部材と前記面体との間には、前記透視レンズの径方向外側に向かって開口するとともに前記周縁に沿って延びる溝が形成されている防護マスクとともに着用することが可能な防護衣である。
【0007】
かかる防護衣において、第1発明が特徴とするところは、次のとおりである。
前記防護マスクと前記防護衣とは、前記防護衣の着用者と向かい合う内面と前記内面の反対面である外面とを有する。前記防護衣は、前記着用者の顔面と頭部とを含む首から上の身体部分を被覆する第1被覆部と、前記首から下の身体部分の少なくとも一部を被覆するとともに前記第1被覆部につながる第2被覆部とを有する。前記第1被覆部には、前記透視レンズを露出させることが可能な開口部が形成されている。前記開口部の周縁部分は、前記開口部の周方向へ弾性的に伸長させて前記溝へ挿入可能な第1環状部分と、前記第1環状部分の外側にあって前記枠部材を被覆可能であり前記枠部材を被覆したときには前記溝へ挿入した前記第1環状部分と協働して前記枠部材を挟んだ状態になる第2環状部分とによって形成されている。
【0008】
第1発明の好ましい実施態様の一つにおいて、前記第2環状部位の外面が前記第1被覆部のうちで前記頭部を被覆している部位の外面の図柄と同じ図柄を有している。
【0009】
第1発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記第2環状部分の外面が前記第1被覆部のうちで前記頭部を被覆している部位の外面を形成しているシート材料と同一の材料で形成されている。
【0010】
第1発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記第2環状部分の内面が前記第1環状部分を形成している材料によって裏打ちされている。
【0011】
第1発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記第2環状部分の内側周縁には前記第2環状部分を一周する弾性部材が伸長状態で取り付けられていて前記内側周縁が前記弾性部材とともに伸長、収縮可能である。
【0012】
第1発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記第1被覆部には、前記開口部を含んでいて前記顔面を被覆する部位と前記頭部を被覆する部位とを部分的に切り離して前記顔面を被覆する部位が前記顔面の前方へ展開可能となるようにするための繰り返し開閉可能なファスナ手段が設けられている。
【0013】
第1発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記ファスナ手段が前記第2被覆部にまで延びている。
【0014】
この発明のうちの前記第2発明が対象とするのは、透視レンズと吸排気可能な面体とが前記透視レンズの周縁に沿って延びる枠部材を介して一体になっており、前記枠部材と前記面体との間には、前記透視レンズの径方向外側に向かって開口するとともに前記周縁に沿って延びる溝が形成されている防護マスクとともに着用することが可能な防護衣である。
【0015】
かかる第2発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記防護マスクと前記防護衣とは、前記防護衣の着用者と向かい合う内面と前記内面の反対面である外面とを有する。前記防護衣は、前記着用者の顔面と頭部とを含む首から上の身体部分を被覆する第1被覆部と、前記首から下の身体部分の少なくとも一部を被覆するとともに前記第1被覆部につながる第2被覆部とを有する。前記第1被覆部には、前記透視レンズを露出させることが可能な開口部が形成されており、前記開口部の周縁部分が、前記開口部の周方向へ弾性的に伸長させて前記溝へ挿入可能な環状部分を有する。前記第1被覆部にはさらに、前記開口部を含んでいて前記顔面を被覆する部位と前記頭部を被覆する部位とを部分的に切り離して前記顔面を被覆する部位が前記顔面の前方へ展開可能となるようにするための繰り返し開閉可能なファスナ手段が設けられている。
【0016】
第2発明の好ましい実施態様の一つにおいて、前記ファスナ手段が前記第2被覆部にまで延びている。
【発明の効果】
【0017】
この発明のうちの第1発明に係る防護衣は、それを着用するときに、第1被覆部における第1環状部分を弾性的に伸長させて防護マスクにおける枠部材と面体との間の溝に挿入すると、着用者の作業中に第1被覆部が物に触れて一方向へ引っ張られたときに、第1環状部分ではその一部が溝に深く食い込むように作用するので、防護衣が透視レンズの枠部材から外れるという問題の発生を防ぐことができる。第2環状部分は、枠部材を被覆することによって、防護衣において枠部材が露出することを防ぐことができる。
【0018】
防護衣の第2環状部分の外面が第1被覆部のうちで頭部を被覆している部位の外面と同じ図柄を有している態様の第1発明では、その第2環状部分が被覆している防護マスクの枠部材の外面に第1被覆部と同じ図柄、例えば迷彩色を施すことができる。
【0019】
その第2環状部分の外面が第1被覆部のうちで頭部を被覆している部位の外面を形成しているシート材料と同一の材料で形成されている態様の第1発明では、第2環状部分を形成することが容易になる。
【0020】
第2環状部分の内面が第1環状部分を形成している材料によって裏打ちしてある態様の第1発明では、第2環状部分の外面を柔軟な織布で形成した場合であっても、裏打ちしてある材料によって第2環状部分の剛性を高め、防護マスクの枠部材を被覆している第2環状部分が簡単にめくれてその枠部材が露出するという問題の発生を防ぐことができる。
【0021】
第2環状部分にはその内側周縁に沿って弾性部材が伸長状態で取り付けられていて内側周縁が弾性部材とともに伸長、収縮可能な態様の第1発明では、その弾性部材が収縮しようとする作用によって、防護マスクの枠部材を被覆している第2環状部分がめくれ難くなる。
【0022】
第1被覆部のうちで顔面を被覆している部位がファスナ手段を使用すると顔面の前方へ展開可能である態様の第1発明では、防護衣を着用した状態でその部位を展開すると、展開したその部位における第1環状部分に対して着用前の防護マスクを取り付けることができる。第1環状部分は、防護マスクの溝から簡単に外れるということがないから、防護衣の着用者は、その防護マスクを着用し、しかる後に防護衣のファスナ手段を閉じることによって、自分一人で防護マスクと防護衣とを着用することができ、しかもそれと同時に防護マスクの枠部材の外面を第2環状部分で被覆することもできる。
【0023】
ファスナ手段が第2被覆部にまで延びている態様の第1発明では、防護衣に使用するファスナの数量を少なくして、いくつものファスナを使い分けるときの煩雑さを解消することができる。
【0024】
第1被覆部のうちの顔面を被覆する部位がファスナ手段を使用すると顔面の前方へ展開可能である態様の第2発明では、防護衣を着用した状態でその部位を展開すると、展開したその部位における環状部分に対して着用前の防護マスクを取り付けることができる。環状部分は、防護マスクの溝から簡単に外れるということがないから、防護衣の着用者は、その防護マスクを着用し、しかる後に防護衣のファスナ手段を閉じることによって、自分一人で防護マスクと防護衣とを着用することができる。
【0025】
ファスナ手段が第2被覆部にまで延びている態様の第2発明では、防護衣に使用するファスナの数量を少なくして、いくつものファスナを使い分けるときの煩雑さを解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
添付の図面を参照してこの発明に係る防護衣の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0027】
図1は、この発明に係る防護衣1の正面図であって、防護衣1は着用された状態にある。防護衣1はまた、後記の図2に記載の防護マスク2と併せて着用されるのに適したものであって、着用者(図示せず)の顔面と頭部を含む首からの上の部分を被覆する上方被覆部3と、上方被覆部3につながっていて首から下の身体の少なくとも一部分を被覆する下方被覆部4とを有し、図ではその下方被覆部4が着用者の下半身のほぼ全体を被覆するものとして示されている。ただし、図において、着用者は防護衣1と防護マスク2との他に、防護手袋6と、防護靴7とを着用している。これら防護衣1と防護手袋6と防護靴7とには、適宜の色を施すことができる。例えば着用者の存在をその周囲から際立たせるための図柄を施したり、それとは反対に周囲から目立たせないための迷彩色の図柄を施したりすることができる。なお、この発明において図柄を施すというときには、複数色を使って柄を画く場合の他に、全体を単色で着色する場合も含まれる。防護衣1における上方被覆部3のうちで顔面を被覆する部位8aでは、防護マスク2における透視レンズ22と、吸収缶取り付け部26と、その取り付け部26に取り付けてあって仮想線で示されている吸収缶24とが露出した状態にあり、またその上方被覆部3のうちで頭部を被覆する部位8bには、その部位8bを開閉することのできる気密性のジップファスナ9が取り付けられている。下方被覆部4は、その内側に着用者の身体を入れることができるように、胸部と股下部との間に延びるファスナ手段(図示せず)を有する。
【0028】
図2は、図1において防護衣1と併せて着用されている防護マスク2の部分斜視図である。防護マスク2は、ゴム等の柔軟弾性材料で形成された面体21と、透明な硬質プラスチック等で形成された透視レンズ22とを有する。面体21は、その正面部分の中央に環状のレンズ枠部材23を介して透視レンズ22が気密状態で取り付けられており、正面部分の下方には仮想線で示す吸収缶24を着脱することができる吸収缶取り付け部26を有する。吸収缶24は、外気中における有毒ガス等の有害成分を吸着して浄化した外気を着用者に供給するための慣用のもので、吸収缶取り付け部26に形成されている吸気孔27の内周面に対して螺合する。面体21はまた、その周縁の近傍に防護マスク2を着用するための複数条のヘッドバンド28を有し、このヘッドバンド28を使用することによって面体21の周縁全体を着用者の顔面に気密状態で密着させることができる。面体21はさらに吸排気可能に作られていて、吸収缶取り付け部26の内側に吸気用逆止弁(図示せず)を有し、吸収缶取り付け部26の下方に排気用逆止弁(図示せず)を有する。防護マスク2の着用者が呼吸をすると、吸気は吸収缶24に入ってろ過された後に吸気孔27を通り、その後に吸気用逆止弁を開いて面体21の内部に入ると着用者の鼻孔や口許に届く。呼気は、排気用逆止弁を開いて面体21の外へ出る。図示例の透視レンズ22は、フルフェイス型マスクにおいて典型的な一眼タイプのものである。
【0029】
図3は、図1のIII−III線切断面を示す図であるが、防護マスク2の内部構造の図示は省略してある。図ではまた、防護衣1の着用者の図示も省略してある。防護マスク2は着用者と向かい合う内面2aとその反対面である外面2bとを有し、面体21の縁部31と透視レンズ22の縁部32とがこれらを気密状態でクランプする枠部材23を介して一体になっている。面体21の外側では、面体21と枠部材23との間に、透視レンズ22の縁部32を一周するように延びていて透視レンズ22の径方向外側に向かって開口する環状の溝33が形成されている。防護衣1の上方被覆部3は、透視レンズ22を露出させるための正面開口部36を有しており、その正面開口部36の周縁部分が第1内側環状部分41とその外面側に位置する第1外側環状部分42とによって形成されている。
【0030】
上方被覆部3のうちでこれら両部分41,42と後記する第2内側環状部分51と第2外側環状部分52とを除いた部分である主要部40は、防護衣として慣用のシート材料、例えば織布や織布に樹脂やゴム等をコーティングしたもの等によって形成されている。第1内側環状部分41は、天然ゴムや合成ゴム等の弾性材料で形成されていて、正面開口部36の周方向へ弾性的に伸長可能な挿入用縁部41aと、主要部40の内面40aに縫合や溶着等の取り付け手段(図示せず)によって気密状態で固定されている固定用縁部41bとを有する。図3において、その挿入用縁部41aは、それを一度弾性的に伸長させて第1内側環状部分41の内径を大きくした状態で溝33に挿入されている。挿入用縁部41aは、溝33への挿入後に弾性的に収縮し、好ましくは図示の如く枠部材23に密着する。また、第1外側環状部分42は、主要部40を形成しているシート材料を第1内側環状部分41における固定用縁部41bから正面開口部36の内側へ延出させることによって作られていて、枠部材23の外面を被覆している。かような第1外側環状部分42は、溝33に挿入されている第1内側環状部分41と協働して枠部材23を透視レンズ22の内外面方向から挟んでいる。
【0031】
吸収缶取り付け部26は、防護マスク2の内面2aから外面2bへ向かう方向において径が次第に小さくなるように形成されていて、円筒状を呈するその基端部分26aの外周面に防護衣1の上方被覆部3が図示のように密着している。即ち、上方被覆部3には、吸収缶取り付け部26を上方被覆部3の外へ延出させるための下方開口部38が形成されており、その下方開口部38の周縁部分が、第2内側環状部分51と第2外側環状部分52とによって形成されている。第2内側環状部分51は、ゴム等の弾性材料によって形成されていて、吸収缶取り付け部26の基端部分26aの外周面に弾性的に伸長した状態で密着可能な自由縁部51aと、主要部40のシート材料の内面40aに縫合等の取り付け手段(図示せず)によって気密状態で固定されている固定用縁部51bとを有する。第2外側環状部分52は、第2内側環状部分51の外側にあって、固定用縁部51bから自由縁部51aに並行して延びている。その第2外側環状部分52は、主要部40を形成しているシート材料を固定用縁部51bから延出させることによって形成されている。第2内側環状部分51の自由縁部51aと第2外側環状部分52とは離間していて互いに動きを拘束することがない。その第2外側環状部分52は、第2内側環状部分51を被覆するのみならず、吸収缶取り付け部26の前方部分をも被覆することができるように、図示の第2内側環状部分51よりも前方(図の左方)へ長くすることができる。
【0032】
かように形成されている防護衣1の上方被覆部3では、防護マスク2における透視レンズ22の縁部を一周している枠部材23と面体21とによって形成されている溝33に対して、正面開口部36における第1内側環状部分41の挿入用縁部41aが弾性的に伸長された状態で挿入されて、挿入後には溝33の内面に密着する方向へ収縮して、第1内側環状部分41が溝33から外れ難くなる。そして、仮に着用者の作業中に上方被覆部3が周囲の物に触れて透視レンズ22の径方向の一方へ引っ張られて、挿入用縁部41aの一部分が溝33の外に向かって伸びた場合でも、その一部分の反対側では挿入用縁部41aが溝33に深く進入するように作用するので、上方被覆部3は、防護マスク2の枠部材23から簡単に外れることがない。上方被覆部3における第1外側環状部分42は、枠部材23の外面を被覆することができるものであるから、その第1外側環状部分42の外面を主要部40の部位8aや8bにおける外面40bの図柄と同じ図柄、例えば同じ迷彩色の図柄にすれば、枠部材23の外面が上方被覆部3における全体的な外観と異なっていてその外面だけが目立ち易いということがなくなる。部位8aや8bを含む主要部40は通常であれば織布等のシート材料で形成されるので、迷彩色等の所要の図柄を施し易い。しかし、透視レンズ22の枠部材23を上方被覆部3のそのような図柄に合わせて用意するということは、技術的な理由からも経済的な理由からも容易なことではないから、第1外側環状部分42を図示例の如くに形成することは有益である。しかも、図示例の第1外側環状部分42を得るには、主要部40を形成しているシート材料を固定用縁部41bから延出させるだけでよいから、極めて容易である。なお、防護衣1において、主要部40の内面40aと外面40bとは、防護衣1の内面と外面と呼ぶことができる部位でもある。
【0033】
なお、図示例において、防護マスク2の吸収缶取り付け部26に対しては、円筒状の基端部分26aに第2内側環状部分51が密着させてある。この吸収缶取り付け部26は、枠部材23に比べると一般的には面体21の前方へ突出する長さがはるかに長いから、第2内側環状部分51は吸収缶取り付け部26に対して図示の如き態様にあっても、着用者の作業中に防護マスク2から外れるということは稀である。ただし、この発明において、吸収缶取り付け部26の外周面に溝33と同様な溝を設け、その溝に対して第2内側環状部分51を弾性的に伸長させながら挿入することも可能である。
【0034】
図4は、図3の一部分を拡大してこの発明の実施態様の一例を示す図である。図示例の防護衣1における上方被覆部3では、第1外側環状部分42の内面42aが第1内側環状部分41に形成されている縁部41cによって裏打ちされている。この場合の第1外側環状部分42は、図3に例示の第1外側環状部分42に比べて剛性が高くなり、枠部材23を被覆しているときに一部分がめくれてその枠部材23が露出するということが少なくなる。
【0035】
図5もまたこの発明の実施態様の一例を示す図4と同様な図である。図示例の第1外側環状部分42は、主要部40を形成しているシート材料の共布を主要部40のうちの部位8aに縫合することにより形成されている。この第1外側環状部分42はまた、内側周縁にスリーブ42cが形成されており、そのスリーブ42cには弾性部材42dが伸長状態で挿入されている。その弾性部材42dの収縮は第1外側環状部分42の内径を小さくするように作用するので、スリーブ42cの内側周縁は、そこにギャザー(図示せず)が形成されていて、弾性部材42dとともに伸長、収縮する。そのような第1外側環状部分42は、枠部材23を被覆しているときにめくれ難く、枠部材23を簡単に露出させるということがない。
【0036】
図6は、図1における防護衣1の後頭部側の部分図である。防護衣1は、上方被覆部3を横方向において二等分する正中線(図示せず)上にファスナ9(図1参照)を有するものであり、図6ではそのファスナ9が上方被覆部3の後頭部8cを経て首の近くにまで延びている。ファスナ9のスライダ9a(図1,7参照)を前頭部から後頭部8cに向かって走らせることによって、上方被覆部3のうちの頭部を被覆する部位8bを左右に切り開くことができる。ファスナ9には、水密性のものを使用したり、気密性かつ水密性のものを使用したりすることもできる。ファスナ9にはまた、ジップファスナ以外のタイプのものを使用することもできる。
【0037】
図7は、図1の部分拡大図であって、ファスナ9を使って切り開いた部位8bとそれと一体の部位8aとが仮想線で示されている。切り開いた上方被覆部3は、正面開口部36と下方開口部38とを含んでいて顔面を被覆している部位8aを着用者の顔面の前方に展開することができる。それゆえ、防護衣1と防護マスク2とを着用しようとするときには、まず防護衣1を着てファスナ9を開き、防護衣1の部位8aと8cとを仮想線の状態にする。次に、部位8aに対して、その内側から防護マスク2の枠部材23を正面開口部36へ入れるようにして、枠部材23と部位8aにおける第1内側環状部分41と第1外側環状部分42とを図3の状態にセットする。また、防護マスク2の吸収缶取り付け部26を下方開口部38に入れるようにして吸収缶取り付け部26と第2内側環状部分51と第2外側環状部分52とを図3の状態にする。このようにして防護衣1に対する取り付けの終わった防護マスク2を着用し、しかる後にファスナ9を閉じれば、防護衣1と防護マスク2との着用を終えることができる。即ち、この発明に係る防護衣1は、防護衣1と防護マスク2との着用を着用者一人で進めることができる。
【0038】
図8は、実施態様の一例を示す図1と同様な図である。図8の防護衣1では、上方被覆部3のうちの部位8aと8bとを部分的に切り離すことができるファスナ手段9が正面開口部36を囲むようにほぼ円弧を画き、さらに下方被覆部4の胸部を開閉することができるように下方へ向かって直状に延びている。ファスナ手段9は、このように下方被覆部4において使用すべきファスナ手段を兼ねるものであってもよい。図8の防護衣1では、使用するファスナ手段の数量を極力少なくして、いくつものファスナ手段を使い分けなければならないときの煩雑さを解消することもできる。
【0039】
図示例の防護衣1は、単眼の防護マスク2を対象にするものであったが、この発明は、複眼の防護マスクを対象とするもので実施することも可能である。また、防護衣1は、図示例の如く全身を1ピースで被覆するものの他に、上半身と下半身とを別々のピースで被覆するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明によれば、着用した防護マスクの透視レンズ周辺から外れることのない防護衣の製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】防護衣の正面図。
【図2】防護マスクの部分斜視図。
【図3】図1のIII−III線切断面を示す図。
【図4】実施態様の一例を示す図3の部分図。
【図5】実施態様の他の一例を示す図4と同様な図。
【図6】防護衣の後頭部を示す図。
【図7】ファスナを開いて防護衣の一部分を展開した防護衣の部分図。
【図8】実施態様の一例を示す図1と同様な図。
【符号の説明】
【0042】
1 防護衣
2 防護マスク
2a 内面
2b 外面
3 第1被覆部(上方被覆部)
4 第2被覆部(下方被覆部)
8a 顔面を被覆する部位
8b 頭部を被覆する部位
9 ファスナ
22 透視レンズ
23 枠部材
33 溝
36 開口部(正面開口部)
40a 内面
40b 外面
41 第1環状部分(第1内側環状部分)
42 第2環状部分(第1外側環状部分)
42a 内面
42b 外面
42c 内側周縁
42d 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透視レンズと吸排気可能な面体とが前記透視レンズの周縁に沿って延びる枠部材を介して一体になっており、前記枠部材と前記面体との間には、前記透視レンズの径方向外側に向かって開口するとともに前記周縁に沿って延びる溝が形成されている防護マスクとともに着用することが可能な防護衣であって、
前記防護マスクと前記防護衣とが前記防護衣の着用者と向かい合う内面と前記内面の反対面である外面とを有し、
前記防護衣が前記着用者の顔面と頭部とを含む首から上の身体部分を被覆する第1被覆部と、前記首から下の身体部分の少なくとも一部を被覆するとともに前記第1被覆部につながる第2被覆部とを有し、
前記第1被覆部には前記透視レンズを露出させることが可能な開口部が形成されており、前記開口部の周縁部分が、前記開口部の周方向へ弾性的に伸長させて前記溝へ挿入可能な第1環状部分と、前記第1環状部分の外側にあって前記枠部材を被覆可能であり前記枠部材を被覆したときには前記溝へ挿入した前記第1環状部分と協働して前記枠部材を挟んだ状態になる第2環状部分とによって形成されていることを特徴とする前記防護衣。
【請求項2】
前記第2環状部分の外面が前記第1被覆部のうちで前記頭部を被覆している部位の外面の図柄と同じ図柄を有している請求項1記載の防護衣。
【請求項3】
前記第2環状部分の外面が前記第1被覆部のうちで前記頭部を被覆している部位の外面を形成しているシート材料と同一の材料で形成されている請求項1または2記載の防護衣。
【請求項4】
前記第2環状部分の内面が前記第1環状部分を形成している材料によって裏打ちされている請求項1〜3のいずれかに記載の防護衣。
【請求項5】
前記第2環状部分の内側周縁には前記第2環状部分を一周する弾性部材が伸長状態で取り付けられていて前記内側周縁が前記弾性部材とともに伸長、収縮可能である請求項1〜4のいずれかに記載の防護衣。
【請求項6】
前記第1被覆部には、前記開口部を含んでいて前記顔面を被覆する部位と前記頭部を被覆する部位とを部分的に切り離して前記顔面を被覆する部位が前記顔面の前方へ展開可能となるようにするための繰り返し開閉可能なファスナ手段が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の防護衣。
【請求項7】
前記ファスナ手段が前記第2被覆部にまで延びている請求項6記載の防護衣。
【請求項8】
透視レンズと吸排気可能な面体とが前記透視レンズの周縁に沿って延びる枠部材を介して一体になっており、前記枠部材と前記面体との間には、前記透視レンズの径方向外側に向かって開口するとともに前記周縁に沿って延びる溝が形成されている防護マスクとともに着用することが可能な防護衣であって、
前記防護マスクと前記防護衣とが前記防護衣の着用者と向かい合う内面と前記内面の反対面である外面とを有し、
前記防護衣が、前記着用者の顔面と頭部とを含む首から上の身体部分を被覆する第1被覆部と、前記首から下の身体部分の少なくとも一部を被覆するとともに前記第1被覆部につながる第2被覆部とを有し、
前記第1被覆部には前記透視レンズを露出させることが可能な開口部が形成されており、前記開口部の周縁部分が、前記開口部の周方向へ弾性的に伸長させて前記溝へ挿入可能な環状部分を有し、
前記第1被覆部にはさらに、前記開口部を含んでいて前記顔面を被覆する部位と前記頭部を被覆する部位とを部分的に切り離して前記顔面を被覆する部位が前記顔面の前方へ展開可能となるようにするための繰り返し開閉可能なファスナ手段が設けられていることを特徴とする前記防護衣。
【請求項9】
前記ファスナ手段が前記第2被覆部にまで延びている請求項8記載の防護衣。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−194093(P2008−194093A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29630(P2007−29630)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000162940)興研株式会社 (75)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】