説明

防錆剤

【課題】 水溶性に優れ、水溶液の形態で使用することができ、銅などの金属材に防錆効果を付与する際の作業性が良好であると共に、防錆効果が向上した防錆剤を提供する。
【解決手段】 (A)酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物と、(B)カチオンポリマーとを含むことを特徴とする防錆剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防錆剤に関し、さらに詳しくは、水溶性に優れ、水溶液の形態で使用することができ、銅などの金属材に防錆効果を付与する際の作業性が良好であると共に、防錆効果が向上した防錆剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベンゾトリアゾール化合物やトリルトリアゾール(メチルベンゾトリアゾール)化合物は、銅・銅合金の表面防錆・変色防止に有効であり、電線、真鍮製品、電子部品、プリント基板などに実用されている。また、これらの化合物は、鉄鋼、銅、アルミニウムやそれらの合金に対して優れた防錆効果があり、冷凍システム、空調システムの冷却塔、熱交換器等の水循環系などにおけるインヒビターとしても使用されている。
【0003】
しかしながら、ベンゾトリアゾール化合物やトリルトリアゾール化合物は、一般的には、水に溶けにくいため、粉末で金属に吹き付けて使用することが多く、そのため、付着率が悪く、また、作業環境が悪くなるという問題もあった。その水不溶性を改善するため、ベンゾトリアゾール化合物としてカルボキシベンゾトリアゾールが使用されることもあるが(例えば、非特許文献1参照)、溶解性的には不十分である。それを改善するため、カルボキシベンゾトリアゾールナトリウム塩が使用されることもあるが、この場合、水循環系におけるインヒビターとしては有効であるが、電子部品等の使用には、不要な金属(ナトリウム)を使用することになり、この用途には使用できにくいという問題があった。
【0004】
一方、特許文献1には、防錆剤として、飽和脂肪酸、飽和ジカルボン酸およびその塩、キレート剤、トリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、および脂肪酸の金属塩を含む水溶液が開示されているが、この場合、トリルトリアゾールやベンゾトリアゾールは難水溶性であるために、その含有量濃度を低くせざるを得ず、防錆効果は必ずしも十分ではない。
【0005】
【特許文献1】WO01/36714号パンフレット
【非特許文献1】「ファインケミカル」、第35巻、第4号(2006年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで、水溶性に優れ、水溶液の形態で使用することができ、銅などの金属材に防錆効果を付与する際の作業性が良好であると共に、防錆効果が向上した防錆剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物とカチオンポリマーとを含む防錆剤が、その目的に適合し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) (A)酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物と、(B)カチオンポリマーとを含むことを特徴とする防錆剤、
(2) (A)成分化合物における酸性官能基が、カルボン酸基またはスルホン酸基である上記(1)項に記載の防錆剤、
(3) (B)成分のカチオンポリマーが、アリルアミン類重合体である上記(1)または(2)項に記載の防錆剤、
(4) (A)成分と(B)成分との固形分質量比が、1:0.001〜1:35,000である上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の防錆剤、
(5) 水溶液の形態で用いられる上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の防錆剤、
(6) 水溶液中の(A)成分と(B)成分との合計固形分濃度が、0.0001〜90質量%である上記(5)項に記載の防錆剤、および
(7) 銅材の防錆に用いられる上記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載の防錆剤、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水溶性に優れる酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物とカチオンポリマーを含み、水溶液の形態で使用することができ、銅などの金属材に防錆効果を付与する際の作業性が良好であると共に、防錆効果が向上した防錆剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の防錆剤は、(A)酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物と、(B)カチオンポリマーとを含むことを特徴とする。
[(A)酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物]
本発明において、酸性官能基としては、カルボン酸(RCOH)、カルボヒドラゾン酸[RC(=NNH)OH]、カルボキシミド酸[RC(=NH)OH]、スルホン酸[RS(O)OH]、スルフィン酸[RS(O)OH]等を例示することができるが、カルボン酸(RCOH)、スルホン酸[RS(O)OH]がベンゾトリアゾール系化合物の入手のしやすさから好ましい。
【0011】
本発明において、酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物としては、酸性官能基を有し、かつベンゾトリアゾール骨格を有する化合物であればよく、特に制限されず、従来公知の酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0012】
本発明における(A)成分の酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物としては、溶媒、特にカチオンポリマー存在下での水に対する溶解性の点から、酸性官能基を有する炭素数6−12のベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。具体的には、ベンゾトリアゾールスルホン酸、メチルベンゾトリアゾールスルホン酸、ベンゾトリアゾールカルボン酸、メチルベンゾトリアゾールカルボン酸、ベンゾトリアゾールやメチルベンゾトリアゾールと無水イタコン酸との付加物の加水分解生成物(特開平5−255280号公報参照)などを用いることができる。
【0013】
本発明においては、(A)成分の酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
[(B)カチオンポリマー]
本発明の防錆剤における(B)成分のカチオンポリマーとしては、酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物と混合した際に水に溶解するものが好ましく、単独で水に溶解するカチオンポリマーがさらに好ましい。
【0015】
本発明に用いるカチオンポリマーとしては、重量平均分子量が500〜100000の範囲にあるものが好ましく、700〜80000の範囲にあるものがさらに好ましく、1000〜50000の範囲にあるものが特に好ましい。重量平均分子量が小さすぎると防錆効果は弱くなりやすく、重量平均分子量が大きすぎると水に不溶となることもあり好ましくない。
【0016】
上記カチオンポリマーとしては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有するカチオンモノマーから得られる単独重合体や、該カチオンモノマーと他のモノマー(以下、「非カチオンモノマー」という。)との共重合体又は縮重合体が好ましく、第1級〜第3級アミノ基を有するカチオンモノマーから得られる単独重合体や、該カチオンモノマーと非カチオンモノマーとの共重合体又は縮重合体がさらに好ましい。なお、本明細書において、非カチオンモノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、本発明に用いるベンゾトリアジン化合物を構成する酸性官能基とイオン結合の相互作用を示さないモノマーをいう。
【0017】
このようなカチオンポリマーとしては、アリルアミン類重合体(例えば、モノアリルアミン類単独重合体、ジアリルアミン類重合体、ジアリルアミン類と非カチオンモノマーとの共重合体等)、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類重合体(例えば、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類単独重合体、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類と非カチオンモノマーとの共重合体等)、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類重合体(例えば、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類単独重合体、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類と非カチオンモノマーとの共重合体等)、ビニルアミン重合体(例えば、ビニルアミン単独重合体、ビニルアミンと非カチオンモノマーとの共重合体)、ポリアルキレンポリイミンなどを例示できる。
【0018】
上記カチオンポリマーを構成するカチオンモノマーは、1種であってよく、2種以上であっても良い。そのカチオンモノマーは、酸性官能基を有するベンゾトリアゾール化合物と混合したときに水に溶けやすい点から、遊離の、すなわち、付加塩を含まないカチオンモノマーが好ましい。
【0019】
本発明において、カチオンポリマーを構成するカチオンモノマーとしては、例えば、アリルアミン類、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類、ビニルアミンなどを例示できる。
カチオンモノマーがアリルアミン類の場合、モノアリルアミン類、ジアリルアミン類が例示できる。
【0020】
モノアリルアミン類としては、アリルアミン(モノアリルアミン)、アリルアミン付加塩を例示できる。アリルアミン付加塩としては、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硝酸塩などを例示できる。
【0021】
カチオンモノマーがジアリルアミン類の場合、ジアリルアミン、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン酢酸塩、ジアリルアミン硫酸塩、ジアリルメチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルエチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルプロピルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)、ジアリルブチルアミンおよびこの塩(該塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩など)などを例示できる。
【0022】
カチオンモノマーがジアリルアミン類の場合、それと共重合可能な非カチオンモノマーとしては、二酸化イオウ、アクリルアミドなどが好ましい。
【0023】
カチオンモノマーがN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類の場合、N,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどを例示できる。
【0025】
カチオンモノマーがN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類の場合、N,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
【0026】
具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを例示できる。
これらのカチオンモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
カチオンモノマーがN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類やN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類の場合、上記非カチオンモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0029】
これらの非カチオンモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
カチオンモノマーがビニルアミン類の場合、カチオンポリマーとしては、ポリビニルアミンや、ビニルアミンと非カチオンモノマーとの共重合体などが例示できるが、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどの単位を有し、重合後に加水分解によってビニルアミン単位や、これを塩にしたものも利用することができる。
【0031】
また、カチオンポリマーがビニルアミン共重合体の場合、ビニルアミンとアクリルアミド若しくはメタクリルアミドとの共重合体、ビニルアミンとアクリロニトリル若しくはメタクリロニトリルとの共重合体、ビニルアミンとスチレンとの共重合体、ビニルアミンとアクリル酸若しくはメタクリル酸との共重合体などが例示できる。
【0032】
カチオンポリマーがポリアルキレンイミンの場合、直鎖ポリエチレンイミン、分岐ポリエチレンイミンなどを挙げることができる。
【0033】
本発明の防錆剤における(B)成分のカチオンポリマーとしては、アリルアミン類重合体が好ましい。その理由は、アリルアミン重合体それ自体に、防錆効果があり、また、酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物と共に用いたとき一層相乗的に防錆効果が増強されるからである。
【0034】
本発明の防錆剤は、酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物とカチオンポリマーとを含むことに特徴がある。この構成により、当該防錆剤は防錆効果が大きい。また、当該防錆剤は、水系、有機溶媒系の両方で使用可能であるが、酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物とカチオンポリマーと共存すると、それらが比較的高濃度でも水に溶けやすいので、作業性の面から好適な水系で使用することができる。
【0035】
本発明の防錆剤においては、(A)成分の酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物と(B)成分のカチオンポリマーとの固形分質量比は、防錆効果および水溶性などの観点から、1:0.001〜1:35,000であることが好ましく、1:0.01〜1:3,500であることがより好ましく、1:0.1〜1:350であることがさらに好ましい。また、水溶液の形態で用いる場合、防錆効果および水溶性などの観点から、水溶液中の前記(A)成分と(B)成分との合計固形分濃度は、0.0001〜90質量%が好ましく、0.01〜70質量%がより好ましく、0.1〜50質量%がさらに好ましい。
【0036】
本発明の防錆剤は、特に銅材の防錆に有効である。また、本発明の防錆剤として、遊離の酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物と遊離のカチオンポリマーを用いた場合、金属フリーの状態でそれらが水に溶けやすくなるので、金属を含むことが嫌われる分野、例えば、電子材料分野に好適に使用できる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
ポリアリルアミン[日東紡製、商品名「PAA−10C」、重量平均分子量15000]10質量%濃度の水溶液8gに、カルボキシベンゾトリアゾール(CBT)0.04gを加えたところ、室温で水溶液となり、この水溶液を防錆剤として用いた。
ポリアリルアミンとCBTとの質量比は1:0.05であり、ポリアリルアミンとCBTとの合計濃度は10.4質量%であった。
【0038】
実施例2
実施例1において、ポリアリルアミンの代わりに、ポリジアリルアミン[日東紡製、商品名「PDAA」、重量平均分子量4000]を用いた以外は、実施例1と同様にして防錆剤を調製した。
【0039】
実施例3
実施例1において、ポリアリルアミンの代わりに、ポリジアリルメチルアミン[日東紡製、商品名「PAS−M−1F」、重量平均分子量2000]を用いた以外は、実施例1と同様にして防錆剤を調製した。
【0040】
比較例1、2及び3
実施例1、2及び3において、それぞれCBTを加えなかったこと以外は、同様にして防錆剤を調製した。
【0041】
比較例4
エチルアミン10質量%濃度の水溶液を調製し、防錆剤とした。
比較例5
アンモニア10質量%濃度の水溶液を調製し、防錆剤とした。
比較例6
カルボキシベンゾトリアゾール10質量%エタノール溶液を調製し、防錆剤とした。
比較例7
カルボキシベンゾトリアゾール粉末(吹き付け)をそのまま防錆剤とした。
【0042】
上記実施例1〜3および比較例1〜7で得られた防錆剤について、下記の防錆試験を行った。その結果を表1に示す。
<防錆試験>
約3cmのタフピッチ銅線(D=1.00mm)を1質量%硫酸に浸漬し、銅表面の酸化皮膜を取り除いた。得られる銅線を蒸留水で2回、洗浄した後、ドライヤーで熱風乾燥し、銅線サンプルを得た。サンプルの銅線を、40℃に加熱した防錆液に浸漬させた後、銅線を取り出して130℃で乾燥させた。得られる銅線を100ppm硫化ナトリウム水溶液に浸漬し、錆ができる時間として、銅が完全に変色するまで時間(単位はhr)を計測した。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から、次のことが明らかとなった。
(1)カチオンポリマーとしてポリアリルアミンを用い、CBT(カルボキシベンゾトリアゾール)を用いなかった比較例1では銅変色時間が9時間であったが、ポリアリルアミンとCBTとを用いた実施例1では、銅変色時間が16時間と長くなり、防錆性が改善された。
(2)カチオンポリマーとしてポリジアリルアミンを用い、CBTを用いなかった比較例2では銅変色時間が122.5時間であったが、ポリジアリルアミンとCBTとを用いた実施例2では、銅変色時間が180時間超と長くなり、防錆性が改善された。
(3)カチオンポリマーとしてポリジアリルメチルアミンを用い、CBTを用いなかった比較例3では銅変色時間が15時間であったが、ポリジアリルメチルアミンとCBTとを用いた実施例3では、銅変色時間が180時間超と著しく長くなり、防錆性が大きく改善された。
(4)カチオンポリマーの代わりにエチルアミンおよびアンモニアをそれぞれ用い、CBTを用いなかった比較例4および5では、銅変色時間がそれぞれ9.0時間および3.5時間で防錆性に劣り、カチオンポリマーを用いずに、CBTエタノール溶液およびCBT粉末をそれぞれ用いた比較例6および7では、銅変色時間がそれぞれ2.5時間および1.0時間であり、防錆性に極めて劣っていた。
【0045】
上述の結果(1)〜(4)より、本発明の防錆剤において、CBTとカチオンポリマーとを併用したことによる相乗効果は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の防錆剤は、水溶液の形態で使用することができ、銅などの金属材に防錆効果を付与する際の作業性が良好であると共に、防錆効果に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸性官能基を有するベンゾトリアゾール系化合物と、(B)カチオンポリマーとを含むことを特徴とする防錆剤。
【請求項2】
(A)成分化合物における酸性官能基が、カルボン酸基またはスルホン酸基である請求項1に記載の防錆剤。
【請求項3】
(B)成分のカチオンポリマーが、アリルアミン類重合体である請求項1または2に記載の防錆剤。
【請求項4】
(A)成分と(B)成分との固形分質量比が、1:0.001〜1:35,000である請求項1〜3のいずれか1項に記載の防錆剤。
【請求項5】
水溶液の形態で用いられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の防錆剤。
【請求項6】
水溶液中の(A)成分と(B)成分との合計固形分濃度が、0.0001〜90質量%である請求項5に記載の防錆剤。
【請求項7】
銅材の防錆に用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の防錆剤。