説明

防音エレメントに用いられるばね支持された懸架機構

本発明は、1つのばね(6)と、2つのばね受け(5,7)とを備えた、防音エレメントに用いられるばね支持された点状の懸架機構に関する。第1のばね受け(7)は懸架装置(8)に固定されている。ばね(6)は第1のばね受け(7)にねじ被せられている。第2のばね受けはクランプディスク(2,4)によって防音エレメント(3)の孔内に固定されていて、ピッチ約3つ分のばね(6)が残されるまで、このばね内にねじ込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
本発明は、防音エレメントに用いられる懸架装置に関する。防音エレメントは懸架装置によって支持構造体に取り付けられ、この支持構造体および場合により基台と一緒に防音壁を形成する。
【0002】
防音エレメントは、たとえば強化安全ガラス(ESG)、合わせ安全ガラス(VSG)、プラスチック、たとえばポリ塩化ビニル(PVC)または再利用されるPVC、複合材料、たとえばアルミニウムとPVCとから成るラミネートから成っていてよい。
【0003】
防音エレメントは吸音性にまたは音反射性に設計されていてよい。この目的のためには、防音エレメントが吸音性の材料で充填されていてもよい。防音エレメントは透明に形成されていてもよいし、半透明に形成されていてもよいし、不透明に形成されていてもよい。
【0004】
透明な防音エレメントは、たとえば鋳造されたアクリルガラスまたは押出し成形されたアクリルガラスから成っていてよい。このアクリルガラスは、着色されていてもよいし、鳥の飛翔に対するマーキングを備えていてもよいし、補強エレメントを備えていてもよい。
【0005】
さらに、防音エレメントのための材料として、透明、不透光または不透明な適切なあらゆるプラスチック、たとえばポリメチル(メタ)アクリレートのほかにポリカーボネート(PC)またはポリエチレンテレフタレート(PET)も使用されてよい。
【0006】
アクリルガラスから成る防音エレメントは、「Roehm GmbH&Co.KG」からプレキシグラス(登録商標)サウンドストップの名称で市販される。
【0007】
アクリルガラスプレートから成る透明な防音エレメントに用いられるフレームレスの懸架機構の要求がますます頻繁に生ぜしめられる。結果的に点状懸架機構と呼ばれるこの懸架機構は新規の構成可能性を提供すると同時に、静的、動的かつ機能的な多数の役割を果たす。これらの役割の多くは、たとえばガラス取付け時に使用されるような従来の点状懸架機構によって果たされない。
【0008】
背景技術
現在、プレートエレメントに用いられる点状の取付け手段は市場で入手可能である。この取付け手段はそれぞれ2つのジョイントから形成されている。これは、回動ジョイントまたはボールジョイントであってよい。一方のジョイントの自由度は、それぞれ隣接ジョイントの負荷方向にある。これによって、常にジョイントの一部しか、規定された方向で負荷を吸収することができない状況が生ぜしめられる。したがって、プレートエレメントと下部構造体との非対称的な負荷が得られる。点状懸架機構は、この静的なかつ動的な負荷に耐えるように寸法設定されなければならない。これは、構成部材が過度に大きいことを意味している。このことは実際には許容することができないので、従来、主重力は線状の支持体を介して導出された。
【0009】
剛性的な取付け手段は、プレートエレメントのエレガントで廉価な取付け手段を成している。しかし、この取付け手段は、極めて小さな使用事例および僅かな温度変動、すなわち、空気調整された室内でしか使用することができない。最大の問題は、フックの法則(フックの法則σ=E・ε)に基づき、しばしば許容できない応力をプレートエレメントまたは下部構造体に生ぜしめる熱膨張である。
【0010】
透明な防音壁の開発時には、フレームレスの懸架機構への傾向を認めることができる。この建築上の設計は、ほぼ専ら防音エレメントの点状の取付けを要求する。
【0011】
防音エレメントに用いられる点状の取付け手段は、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第0908563号明細書に記載されている。プラスチックから成る少なくとも1つの防音プレート(LSプレート)を備えた防音壁セグメント(LSセグメント)は、プレートを支持体に取り付けるための少なくとも1つの手段を備えている。プレートがジョイント式に点状に支承されており、これによって、プレートの、負荷下で生ぜしめられる弾性曲線が取付け手段によって随伴可能となることが特徴付けられている。
【0012】
有利には、取付け手段は、一方の端部で支持体にアンカ固定可能なピンを有している。このピンはその他方の端部で、プレートに設けられた切欠きと、プレート外面の両側に密着した状態でこのプレート外面に配置された少なくともそれぞれ1つのディスクエレメントとを貫通している。この場合、切欠き内には、弾性的なばねエレメントが配置されている。このばねエレメントの高さは、取り付けたいプレートの厚さよりも大きい。この場合、ピンはディスクエレメントにボールで支承されている。
【0013】
ドイツ連邦共和国実用新案第8524319.1号明細書もしくはヨーロッパ特許出願公開第0213521号明細書に基づき、透明なプラスチックから成る大面状のディスクを、冒頭で述べた支持体にほぼ相当する鉛直な支柱の間に有する防音壁を建設するためのガラス化プロセスが公知になっている。二重T字形支持体の代わりに、このシステムでは、四角形管が使用されてもよい。この四角形管はその寸法に関して二重T字形支持体に相当している。個々のプレートは互いに間隔を置いて、四角形管の側面の1つに載着され、クランプレールと適宜な数のねじとによって、個々のプレートの間の空所を通して四角形管に対して緊締される。構造は十分に耐風性であるものの、このために、比較的広幅の四角形管を要求する。
【0014】
これに対して補助的に、たとえばヨーロッパ特許出願公開第0530512号明細書が提供される。当該明細書には、プレートシステムが開示される。このプレートシステムでは、プラスチックプレートが間隔を置いて突き合わされてまたはほぼ支持体載着面の外部でオーバラップして敷設されておらず、互いに部分的にオーバラップして、オーバラップ部と支持体に対する載着面とを通して支持体にアンカ固定されている。これによって、必要となる支持体幅を、安定性を損なうことなしに、ほぼ二等分することができる。このことは、支持体が細く、もはや従来のように不格好に作用しないので、特に壁システムに対してかつ特に透明な防音壁の場合には視覚的に好ましい印象を与えるにもかかわらず、ヨーロッパ特許出願公開第0530512号明細書に基づき公知の技術には、相変わらず、約2メートルの比較的僅かな支柱間隔と、最大3メートルの全高さを超えるプレートのガイドとが必要となる。
【0015】
課題
アクリルガラスプレートから成る防音エレメントに用いられる別のフレームレスの懸架機構と、別の防音エレメントとを開発するという課題がある。別の課題は、あらゆる方向からの力を取付け装置を介して支持構造体に導入することが可能となる、アクリルガラスから成る防音エレメントに用いられる取付け装置を開発することにある。また、取付け手段が、熱的な長さ変化を吸収することができることが望ましい。
【0016】
さらに、取付け装置が簡単にかつ安価に製作されると共に組み付けられることが望ましい。
【0017】
動的な負荷交番(風負荷)時に不安定振動現象が生ぜしめられることを回避するために、防音エレメントと、懸架装置または取付け装置と、支持構造体とから成るシステムの固有周波数が0.5Hzを上回ることが望ましい。
【0018】
主要求は、あらゆる方向での負荷の吸収である。この場合、全ての負荷吸収点への均一な配分が生ぜしめられることが望ましい。これに基づき、取付け点の高いフレキシビリティの必要性が求められる。
【0019】
さらに、表面に専ら取付け点を視覚的に認めることができることが望ましい。たとえば鋼ロープによる付加的な拘束位置固定手段は、たいてい、望ましくない視覚的な妨害を成している。
【0020】
解決手段
本発明による課題は、請求項1記載の装置によって解決される。
【0021】
装置は、たとえばねじ山を備えたばね受け(図1、符号5,7参照)にねじ被せられるコイルばね(6)から成る、アクリルガラス製の防音エレメントに用いられるばね支持された懸架機構を有している。
【0022】
これによって、コイルばね(図1、符号6参照)が移動不能に位置決めされていて、外的作用による防音エレメントの破断の事例において、小さな部材が高い運動エネルギを備えてコントロールされずに飛散しないことが達成される。さらに、この効果は、視覚的に煩わしい鋼ロープの形の別個の拘束位置固定手段が不要になるという結果をもたらす。
【0023】
防音エレメントに用いられるばね支持された懸架機構の別のエレメントは、支持構造体に固定される支持体(図1、符号8参照)である。この支持体は横桁とも呼ぶことができ、静的に必要となる数で、算出された間隔を置いて支持構造体に配置される。
【0024】
ねじ(9)によって、ばね受け(7)の第1の部分が懸架装置(8)に固定される。ばね受け(7)の第1の部分は慣用のあらゆる固定技術、たとえば溶接、リベット締め、螺合、緊締または接着によって懸架装置に固定することができる。
【0025】
ばね受け(7および5参照)は2つの部分から成っていて、ばね(6)の約3〜5つの巻条が残されるように寸法設定されている。コイルばねの自由な巻条は防音エレメントの弾性的な懸架のために働く。
【0026】
ばね受け(7,5)はその外面に溝を有している。この溝内には、ばねが形状接続的にかつ摩擦接続的に係合している。
【0027】
ばね受け(7,5)は、たとえば鋼、ガラス繊維強化されたプラスチックまたはプラスチックから製造されている。
【0028】
ばね(6)は、たとえば鋼線材から成っている。さらに、ばねはプラスチック、たとえばポリプロピレンまたはポリエチレン、ゴム、木材、アルミニウム、特殊鋼または鉱物含有の材料、金属合金、たとえば黄銅、青銅または鋳鉄から製造されていてよい。
【0029】
ばねは、前述した適切な材料から成る棒ばねとして形成されていてもよい。
【0030】
長手方向でのばねの剛性は、たとえば約10000N/m〜25000N/mにある。横方向でのばねの剛性は、たとえば50000N/m〜10000N/mにある。さらに、ばねエレメントは、フックの法則による線形の特性線を有しておらず、累進的な特性線を有しているように形成されてもよい。このことは、コイルばねの場合、円錐形の巻条または可変のピッチによって達成される。
【0031】
本発明による懸架機構は、前述した材料から成るファサードエレメントとライニングとを取り付けるために使用されてもよい。
【0032】
室内における取付けエレメントの位置は機能に影響を与えない:天井取付けならびに床取付けまたは水平な取付けも可能である。真っ直ぐなエレメントだけでなく、曲げられたエレメントも取り付けることができる。
【0033】
例1
アクリルガラスから成る防音エレメントの、ばね支持された懸架機構の破壊応力。
【0034】
2000×2000×15mm(長さ×幅×厚さ)の寸法を備えたプレキシグラス(登録商標)サウンドストップのタイプのアクリルガラスプレートが、EN1794−2(2003年4月)による揺動破断試験にさらされた。
【0035】
全エレメント(防音エレメントおよび本発明による懸架機構)が検査された。ばねは19000N/mの剛性を有していた。
【0036】
防音エレメントに設けられた孔直径(固定孔)は65mmの直径を有していた。プレート外面には、固定孔が付加的にさらに、80mmの直径と3mmの深さとを備えた旋削加工部を備えていた。
【0037】
結果
懸架点のいずれもアクリルガラスプレートから解離されなかった。このアクリルガラスプレートにおける懸架点の孔から、破断線は出発しなかった。
【0038】
ばねは、破断または亀裂が生ぜしめられることなしに、塑性変形させられた。ばねの塑性変形は、供給された打撃エネルギの減少に著しく貢献した。
【0039】
2つの部分から成るばね受け(図1、符号5,7参照)は決してばねから解離されなかった。
【0040】
評価
本発明による懸架機構は、破断に通じたアクリルガラスプレートのための拘束位置固定手段として適している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】防音エレメントおよび本発明による懸架機構を分解して示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ねじ、 2 クランプディスク、 3 防音エレメント、 4 クランプディスク、 5 ばね受け、 6 ばね、 7 ばね受け、 8 懸架装置、 9 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防音エレメントに用いられるばね支持された懸架機構において、当該懸架機構が、
−1つのばね(6)と、
−2つのばね受け(5,7)と
を有しており、一方のばね受け(7)が、懸架装置(8)に固定されており、ばね(6)が、第1のばね受け(7)にねじ被せられており、第2のばね受け(5)が、クランプディス(2,4)によって防音エレメント(3)の孔内に固定されていて、ピッチ約3つ分のばね(6)が残されるまで、該ばね(6)内にねじ込まれるようになっていることを特徴とする、防音エレメントに用いられるばね支持された懸架機構。
【請求項2】
ばね(6)の剛性が、15000N/m〜25000N/mの間にある、請求項1記載の装置。
【請求項3】
自体公知の支持構造体の自体公知の基台と、懸架機構とから成る防音壁において、
防音エレメントが、請求項1記載のばね支持された懸架機構によって取り付けられていることを特徴とする、防音壁。

【図1】
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【公表番号】特表2007−522365(P2007−522365A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551757(P2006−551757)
【出願日】平成17年1月22日(2005.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000623
【国際公開番号】WO2005/075744
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング  (293)
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH 
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】