説明

防音エンクロージャのパネル接合構造、防音エンクロージャのパネル組み立て方法、防音エンクロージャのパネル解体方法および接合構造

【課題】作業性を改善できる防音エンクロージャのパネル接合構造を提供する。
【解決手段】ワイヤ端部51をフック47に係止し、ワイヤ端部52をウインチレバー48のフックに係止する。ワイヤ50がワイヤガイド孔43aに型鋼材31側から型鋼材21側に挿通するように、ワイヤ50をワイヤ挿入溝44aに挿入し、さらに、コマ部材26aに係止する。つぎは、逆にワイヤ50がワイヤガイド孔43bに型鋼材21側から型鋼材31側に挿通するように、ワイヤ50をワイヤ挿入溝44bに挿入し、さらに、コマ部材36aに係止する。このように挿通・係止を繰り返して接合面22,32を縫うように、ワイヤ50を配置する。ウインチレバー48を操作することにより、ワイヤ50を緊張する。これにより、型鋼材21と型鋼材31とが互いに引き付けあうような力が作用し、型鋼材21と型鋼材31とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパネルから形成される防音エンクロージャのパネル接合構造、防音エンクロージャのパネル組み立て方法、この方法により組み立てられた防音エンクロージャのパネル解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン発電設備は、ガスタービン及びそれに付属する機器類の騒音低減等を目的に、これらを囲う防音エンクロージャを設けている。防音エンクロージャは、適当な大きさのパネルを組み立てることにより形成される。ところで、ガスタービン等の機器は、簡易検査や定期検査が1年に1度以上の頻度で行なわれる。簡易検査や定期検査の期間は1ヶ月程度であり、この間、ガスタービン発電設備は稼動できない。従って、簡易検査や定期検査等にかかる日数を少しでも低減することにより、発電設備を早く稼動させたいとの要望がある。
【0003】
簡易検査時や定期検査時には、パネルを分解して防音エンクロージャを解体する必要がある。また、簡易検査や定期検査終了後には、パネルを接合して防音エンクロージャを組み立てる。検査期間のうち、この解体・組み立てに数日を要している。
【0004】
従来の防音エンクロージャのパネル接合構造において、ボルト・ナットによる接合が一般的である(例えば特許文献1)。各パネルの接合部には、複数のボルト孔が設けられている。一のパネル(第1パネル)と他のパネル(第2パネル)を接合面が一致するように配置し、第1パネル側からボルト軸を第1パネルのボルト孔および第2パネルのボルト孔に挿通し、第1パネルの接合部にボルト係止部を係止するとともに、第2パネル側からナットをボルト軸に螺合する。複数のボルト締めにより、第1パネルと第2パネルとを接合する。このパネル接合を繰り返すことにより、防音エンクロージャを組み立てる。一方、ボルトを取り外し、第1パネルと第2パネルとの接合を分解し、この分解を繰り返すことにより、防音エンクロージャを解体する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−144554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の防音エンクロージャのパネル接合構造においては、ボルト・ナットの員数が多く、ボルト締め・ボルト取り外しにかかる作業手間が、組立・解体の作業時間を長くする一因となっている。作業時間が長くなると、検査期間も長くなる。
【0007】
検査期間が長くなると、人件費等が増え、検査コストが高くなるのに加えて、ガスタービン発電設備の稼働率が低下することにより、ガスタービン発電設備の運用コストも高くなる。
【0008】
また、高所作業になる場合、ボルトやナットが落下するおそれもあり、安全性の課題もある。
【0009】
本発明の目的は、作業性を改善できる防音エンクロージャのパネル接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、第1接合部材を有する第1パネルおよび第2接合部材を有する第2パネルを含む複数のパネルを組み立てることにより形成される防音エンクロージャのパネル接合構造において、前記第1接合部材の接合面に、第1接合部材の長手方向に複数設けられる第1ワイヤガイド孔と、前記第2接合部材の接合面に、第2接合部材の長手方向に複数設けられる第2ワイヤガイド孔と、前記第1ワイヤガイド孔と次の第1ワイヤガイド孔の間に、一つおきに設けられた第1コマ部材と、前記第2ワイヤガイド孔と次の第2ワイヤガイド孔の間に、接合状態において前記第1コマ部材に対し千鳥配置となるように設けられた第2コマ部材と、接合状態において、前記複数の第1ワイヤガイド孔と前記複数の第2ワイヤガイド孔とにより列状に形成されるワイヤガイド孔に、第2接合部材側から第1接合部材側に挿通し、前記第1コマ部材に係止し、次のワイヤガイド孔に、第1接合部材側から第2接合部材側に挿通し、前記第2コマ部材に係止し、更に次のワイヤガイド孔に、第2接合部材側から第1接合部材側に挿通し、この挿通・係止を繰り返して接合面を縫うように、かつ、緊張状態で配置されるワイヤと、前記ワイヤの一端部を係止する第1ワイヤ係止手段と、前記ワイヤの他端部を係止する第2ワイヤ係止手段とを備える。
【0011】
ワイヤに作用する張力は、第1コマ部材において第1接合部材を第2接合部材側に押し付けるように作用し、第2コマ部材において第2接合部材を第1接合部材側に押し付けるように作用する。その結果、接合面において、第1接合部材と第2接合部材とが接合し、第1パネルと第2パネルとが接合する。
【0012】
この接合構造は、ワイヤを配置し緊張するのみの工程から得られ、従来技術に比べて作業性を改善できる。
【0013】
(2)上記(1)において、好ましくは、第1ワイヤガイド孔から第1接合部材の短手方向に設けられた切り欠けである第1ワイヤ挿入溝と、第2ワイヤガイド孔から第2接合部材の短手方向に設けられた切り欠けである第2ワイヤ挿入溝とを備え、接合状態において、前記第1ワイヤ挿入溝と前記第2ワイヤ挿入溝とにより前記ワイヤガイド孔に対応してワイヤ挿入溝が形成される。
【0014】
これにより、ワイヤ挿入溝にワイヤを挿入することにより、ワイヤの配置が容易になり、更に作業性が向上する。
【0015】
(3)上記目的を達成するために、本発明は、第1接合部材を有する第1パネルおよび第2接合部材を有する第2パネルを含む複数のパネルから形成される防音エンクロージャのパネル組み立て方法において、前記第1接合部材と前記第2接合部材を対向する位置に配置する接合部材配置ステップと、前記第1接合部材の接合面に第1接合部材の長手方向に複数設けられる第1ワイヤガイド孔と、前記第2接合部材の接合面に第2接合部材の長手方向に複数設けられる第2ワイヤガイド孔とが、一致してワイヤガイド孔の列を形成するように、前記第1接合部材と前記第2接合部材とを位置決めする位置決めステップと、ワイヤの一端部を係止する第1係止ステップと、前記ワイヤを、前記ワイヤガイド孔に、第1接合部材側から第2接合部材側に挿通し、前記第2部材に設けられた第2コマ部材に係止し、次のワイヤガイド孔に、第2接合部材側から第1接合部材側に挿通し、前記第1部材に設けられた第1コマ部材に係止し、更に次のワイヤガイド孔に、第1接合部材側から第2接合部材側に挿通し、この挿通・係止を繰り返して接合面を縫うように、配置するワイヤ配置ステップと、前記ワイヤ配置状態で、ワイヤを緊張するワイヤ緊張ステップと、前記ワイヤの他端部を係止する第2係止ステップと、一連のステップによる第1接合部材と第2接合部材との接合を繰り返すことにより、パネルを組み立てるパネル組み立てステップとを備える。
【0016】
ワイヤを配置し緊張するのみの工程により、第1パネルと第2パネルとを接合でき、従来技術に比べてパネル組立作業の作業性を改善できる。
【0017】
(4)上記(3)において、組み立てされた防音エンクロージャのパネル解体方法であって、前記ワイヤの緊張状態を解除する緊張解除ステップと、前記第2係止ステップによる係止状態を解除する第2係止解除ステップと、前記ワイヤを前記ワイヤガイド孔の列から引き抜くワイヤ引き出しステップと、前記第1係止ステップによる係止状態を解除する第1係止解除ステップと、一連のステップによる第1接合部材と第2接合部材との分解を繰り返すことにより、パネルを分解するパネル分解ステップとを備える。
【0018】
ワイヤの緊張を解除し、ワイヤを引き出すのみの工程により、第1パネルと第2パネルとを分割でき、従来技術に比べてパネル解体作業の作業性を改善できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワイヤを配置し緊張することにより、パネルを接合でき、ワイヤの緊張を解除し、ワイヤを引き出すことにより、パネルを分割でき、組立・解体の作業性を改善できる。すなわち、作業時間を短くすることができる。
【0020】
その結果、検査期間が短くなり、検査コストを削減できる。また、早期にガスタービン発電設備を稼働でき、ガスタービン発電設備の運用コストを削減できる。
【0021】
ボルトやナットの落下のおそれも無く、安全性も改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】防音エンクロージャが設けられているガスタービン発電設備の配置構成図の一例である。
【図2】屋根部のパネルと側面部のパネルとの接合構造を示す断面図である。
【図3】型鋼材の接合構造を示す平面図である。
【図4】型鋼材の接合構造を示す側面図である。
【図5】型鋼材の接合構造を示す側面図である(従来技術)。
【図6】型鋼材の接合構造を示す側面図である(変形例)。
【図7】型鋼材の接合構造を示す側面図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。
【0024】
〜構成〜
図1は防音エンクロージャ10が設けられているガスタービン発電設備の配置構成図の一例である。
【0025】
ガスタービン発電設備は、空気圧縮機1、ガスタービン2、減速機3、発電機4、起動用電動機5、燃焼器6、排気ダクト7、吸気ダクト8および空気取入室9を構成要素として備えている。
【0026】
空気取入室9は空気を取り入れ、吸気ダクト8を介して、空気を空気圧縮機1に送る。空気圧縮機1は空気の体積を圧縮し、燃焼器6に送る。燃焼器6は圧縮された空気に燃料を投入し、燃焼させることで高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。燃焼ガスは急激に膨張を始め、ガスタービン2へ向かって高速で流出する。この時、タービン2は高速で移動する燃焼ガスを、タービン翼で受けることにより回転する。空気圧縮機1、ガスタービン2、減速機3、発電機4の各機器は一軸に連結されており、ガスタービン2の回転は、減速機3を介して発電機4を駆動する。一方、ガスタービン2を通過した燃焼ガスは、排気ダクト7から流出する。このように、ガスタービン発電設備が稼動するときには、回転駆動等を伴い、騒音が発生する。
【0027】
ガスタービン発電設備は、騒音低減等を目的に全体を防音エンクロージャ10により囲われている。
【0028】
防音エンクロージャ10は、屋根部と側面部から構成され、屋根部と側面部ともに、複数のパネルを接合することにより構成される。
【0029】
図2は、屋根部のパネル20と側面部のパネル30との接合構造を示す断面図である(図1のA−A断面)。パネル20は端部に接合用の型鋼材21を有し、パネル30は端部に接合用の型鋼材31を有している。たとえば、型鋼材21は山型鋼であり、型鋼材31は溝型鋼である。型鋼材21のフランジ22表面と型鋼材31のフランジ32表面とは接合面となり、型鋼材21と型鋼材31とが接合し、その結果、パネル20とパネル30とが接合する。
【0030】
図3は、B方向(図2参照)から見た型鋼材21と型鋼材31との接合構造を示す平面図であり、図4は、C方向(図2参照)から見た型鋼材21と型鋼材31との接合構造を示す側面図である。
【0031】
型鋼材21の接合面22には、型鋼材21長手方向に複数のワイヤガイド孔23が複数設けられ、各ワイヤガイド孔23から型鋼材21の短手方向にフランジ22の一部を切り欠くようにワイヤ挿入溝24が設けられ、また、任意の場所に、位置決め孔25が設けられている。
【0032】
各ワイヤガイド孔23間には、一つおきにコマ部材26が設けられている。すなわち、ワイヤガイド孔23a,23b,23c,23d,23eに対し、ワイヤガイド孔23aと次のワイヤガイド孔23bの間に、コマ部材26aが設けられ、ワイヤガイド孔23cと次のワイヤガイド孔23dの間に、コマ部材26bが設けられている。コマ部材26は円筒部材であり、円筒の高さはフランジ22の幅と同程度であり、円筒の軸方向が型鋼材21の短手方向に向くように、フランジ22裏面に溶接されている。
【0033】
型鋼材31の接合面32には、型鋼材31長手方向に複数のワイヤガイド孔33が複数設けられ、各ワイヤガイド孔33から型鋼材31の短手方向にフランジ32の一部を切り欠くようにワイヤ挿入溝34が設けられ、また、任意の場所に、位置決め孔35が設けられている。
【0034】
各ワイヤガイド孔33間には、一つおきにコマ部材36が設けられている。すなわち、ワイヤガイド孔33a,33b,33c,33d,33eに対し、ワイヤガイド孔33bと次のワイヤガイド孔33cの間に、コマ部材36aが設けられ、ワイヤガイド孔33dと次のワイヤガイド孔33eの間に、コマ部材36bが設けられている。コマ部材36は円筒部材であり、円筒の高さはフランジ32の幅と同程度であり、円筒の軸方向が型鋼材31の短手方向に向くように、フランジ32裏面に溶接されている。
【0035】
型鋼材31の一端部には、フック47が設けられている。
【0036】
位置決め孔25,35には、位置決めピン45が挿入されており、これにより、型鋼材21と型鋼材31とは適切な接合位置に配置されている。この配置において、ワイヤガイド孔23とワイヤガイド孔33とが一致し、ワイヤガイド孔43が列状に形成されている。同様に、ワイヤ挿入溝24とワイヤ挿入溝34とが一致し、ワイヤ挿入溝44がワイヤガイド孔43に対応して形成されている。また、コマ部材26a,26b,26cとコマ部材36a,36bは、千鳥状に配置されている。
【0037】
ワイヤ50は、一般的な吊荷作業に用いられる鋼線を撚り合わせたロープである。ワイヤ50の両端部51,52は結束部材により輪状に形成されている。ワイヤ端部51は、フック47に係止している。
【0038】
ワイヤ50は、ワイヤガイド孔43aに、型鋼材31側から型鋼材21側に挿通し、コマ部材26aに係止し、ワイヤガイド孔43bに、型鋼材21側から型鋼材31側に挿通し、コマ部材36aに係止し、ワイヤガイド孔43cに、型鋼材31側から型鋼材21側に挿通し、コマ部材26bに係止し、ワイヤガイド孔43dに、型鋼材21側から型鋼材31側に挿通し、コマ部材36bに係止し、ワイヤガイド孔43eに、型鋼材31側から型鋼材21側に挿通し、コマ部材26cに係止し、このような挿通・係止を繰り返す結果、接合面22,32を縫うように配置されている。
【0039】
型鋼材21の他端部は、ウインチレバー48が固定できるように加工されている。ワイヤ端部52は、ウインチレバー48のフックに係止している。ウインチレバー48は、ラチェット式のウインチであり、型鋼材21に固定され、ワイヤ50に張力を与えている。
【0040】
ワイヤ50に作用する張力は、コマ部材26a,26b,26cにおいて型鋼材21を型鋼材31側に押し付けるように作用し、コマ部材36a,36bにおいて型鋼材31を型鋼材21側に押し付けるように作用する。その結果、接合面22,32において、型鋼材21と型鋼材31とが接合している。
【0041】
〜組み立て方法〜
防音エンクロージャ10の組み立て方法について説明する。
【0042】
防音エンクロージャ10は、パネル20,30を含む複数のパネルを接合することにより組み立てられる。型鋼材21と型鋼材31とを接合することにより、パネル20とパネル30とを接合する。パネル30が既に設置されパネル20を新たに接合する場合の、型鋼材21と型鋼材31との接合方法について説明する。
【0043】
まず、パネル20をクレーン等で吊り下げ、型鋼材21のフランジ22と型鋼材31のフランジ32とが対向するように、型鋼材21を適切な位置に配置する。位置決め孔25と位置決め孔35を一致させると、位置決め孔25,35に位置決めピン45を挿入して、位置決めを行う。その結果、ワイヤガイド孔23とワイヤガイド孔33とが一致し、ワイヤガイド孔43a〜43eが列状に形成され、ワイヤ挿入溝24とワイヤ挿入溝34とが一致し、ワイヤ挿入溝44a〜44eがワイヤガイド孔43a〜43eに対応して形成される。
【0044】
位置決め後、ワイヤ50の一端部51をフック47に係止し、他端部52をウインチレバー48のフックに係止し、ワイヤ50をやや弛ませた状態で配置する。
【0045】
そして、ワイヤ50がワイヤガイド孔43aに型鋼材31側から型鋼材21側に挿通するように、ワイヤ50をワイヤ挿入溝44aに挿入し、さらに、コマ部材26aに係止する。つぎは、逆にワイヤ50がワイヤガイド孔43bに型鋼材21側から型鋼材31側に挿通するように、ワイヤ50をワイヤ挿入溝44bに挿入し、さらに、コマ部材36aに係止する。
【0046】
同じように、ワイヤ50がワイヤガイド孔43cに型鋼材31側から型鋼材21側に挿通するように、ワイヤ50をワイヤ挿入溝44cに挿入し、さらに、コマ部材26bに係止する。つぎは、逆にワイヤ50がワイヤガイド孔43dに型鋼材21側から型鋼材31側に挿通するように、ワイヤ50をワイヤ挿入溝44dに挿入し、さらに、コマ部材36bに係止する。
【0047】
最後に、ワイヤ50がワイヤガイド孔43eに型鋼材31側から型鋼材21側に挿通するように、ワイヤ50をワイヤ挿入溝44eに挿入し、さらに、コマ部材26cに係止する。このように挿通・係止を繰り返して、ワイヤ50が接合面22,32を縫うように、ワイヤ50を適切な位置に配置する。
【0048】
このようにワイヤ50を配置した後、ウインチレバー48を操作することにより、ワイヤ50を緊張する。これにより、型鋼材21と型鋼材31とが互いに引き付けあうような力が作用し、型鋼材21と型鋼材31とを接合する。接合後、パネル20のクレーン吊り状態を解除する。
【0049】
一連のパネル接合を繰り返すことにより、防音エンクロージャ10を組み立てる。
【0050】
〜解体方法〜
防音エンクロージャ10の解体方法について説明する。
【0051】
前述の通り、防音エンクロージャ10は、複数のパネルを接合することにより形成される。パネル20とパネル30との接合を分解してパネル20を取り外す場合の、型鋼材21と型鋼材31との接合の分解方法について説明する。
【0052】
まず、パネル20をクレーン等で吊り下げる。パネル20の安定状態を維持しながら、ワイヤ50の緊張を解除するようにウインチレバー48を操作する。ワイヤ50をやや弛ませた状態で、ワイヤ50のコマ部材26a〜26c,コマ部材36a,36bへの係止状態を解除し、ワイヤ50をワイヤ挿入溝44a〜44eから抜き出す。
【0053】
ワイヤ50をフック47およびウインチレバー48のフックから外し、撤去する。位置決めピン45を位置決め孔25,35から抜く。これにより、型鋼材21と型鋼材31との接合が分解する。分解後、クレーンにより、パネル20を撤去する。
【0054】
一連のパネル分解を繰り返すことにより、防音エンクロージャ10を解体する。
【0055】
〜効果〜
従来技術の防音エンクロージャのパネル接合構造と比較することにより、本実施形態の効果について説明する。
【0056】
図5は、従来技術に係る型鋼材21と型鋼材31との接合構造を示す側面図であり、本実施形態の図4に対応する図である。接合面22,32には、複数のボルト孔28,38が設けられている。ボルト55の軸を型鋼材21側からボルト孔28およびボルト孔38に挿通し、フランジ22にボルト55の係止部を係止するとともに、型鋼材31側からナット56をボルト軸に螺合する。このようなボルト締めを繰り返すことにより、型鋼材21と型鋼材31とを接合する。
【0057】
しかし、ボルト・ナットの員数が多く、ボルト締め・ボルト取り外しの際に作業性に係る課題があった。また作業性に係る課題に起因してコストに係る課題もあった。さらに、高所作業になる場合、ボルトやナットが落下するおそれもあり、安全性に係る課題もあった。
【0058】
本実施形態では、ワイヤ50を配置し、緊張することにより、従来技術と同等の接合強度を得ることができる。このとき、ワイヤ50を配置し、緊張するのみの工程であり、従来技術に比べて作業性を改善できる。すなわち、組立・解体の作業時間を短くすることができる。
【0059】
その結果、検査期間が短くなり、検査コストを削減できる。また、早期にガスタービン発電設備を稼働でき、ガスタービン発電設備の運用コストを削減できる。
【0060】
ボルトやナットの落下のおそれも無く、安全性も改善できる。
【0061】
〜変形例〜
(1)本実施形態では、ガスタービン発電設備を囲う防音エンクロージャについて説明したが、本発明は、他のパネル接合により形成される構造物にも適用できる。
【0062】
(2)本実施形態では、ウインチレバー48を型鋼材21に固定しているが、他の構成でもよい。図6は、変形例に係る構成を示す図である。
【0063】
型鋼材21の端部には、フック46が設けられている。接合状態においてフック46とフック47は点対称となる。
【0064】
本実施形態と同様にワイヤ50を配置した後、ウインチレバー48を操作することにより、ワイヤ50を緊張するとともに、ワイヤ端部52をフック46の位置まで移動させ、ワイヤ端部52をフック46に係止する。ワイヤ50の張力がフック46に作用した状態で、ウインチレバー48を取り外す。
【0065】
本実施形態では、パネル接合構造ごとにウインチレバー48を必要とするが、この変形例では、1つのウインチレバー48を繰り返し使うことができ、さらにコスト削減できる。
【0066】
(3)本実施形態では、ワイヤ50を緊張し係止する手段として、ウインチレバー48を用いたが、他の構成でもよい。図7は、別の変形例に係る構成を示す図である。
【0067】
型鋼材21の端部には、フック46が設けられている。フック46にはターンバックル49が係止し、ワイヤ端部52は、ターンバックル49のフックに係止している。ワイヤ50を配置した後、ターンバックル49により、ワイヤ50を緊張する。
【0068】
(4)本実施形態では、ワイヤ50は鋼製ロープであるが、張力が作用する弾性があり、接合面を縫うように配置できる可撓性があれば、他の材質でもよい。例えば炭素繊維を用いてもよい。
【0069】
(5)従来技術の接合構造が、ボルト・ナットによる接合であるのに対し、本実施形態の接合構造は、ワイヤの張力による接合である。ところで、一般にパネルは長方形であり、長手方向と短手方向とがある。長手方向の接合にワイヤの張力による接合を適用し、短手方向の接合にボルト・ナットによる接合を併用してもよい。短手方向の接合に要するボルト・ナットの員数は、長手方向に比べて少なく、作業性等の課題は顕著ではない。従って、本実施形態に準ずる効果が得られる。
【符号の説明】
【0070】
1 空気圧縮機
2 ガスタービン
3 減速機
4 発電機
5 起動用電動機
6 燃焼器
7 排気ダクト
8 吸気ダクト
9 空気取入室
10 防音エンクロージャ
20 パネル(第1パネル)
21 型鋼材(第1接合部材)
22 フランジ(接合面)
23 ワイヤガイド孔(第1ワイヤガイド孔)
24 ワイヤ挿入溝(第1ワイヤ挿入溝)
25 位置決め孔
26 コマ部材(第1コマ部材)
28 ボルト孔
30 パネル(第2パネル)
31 型鋼材(第2接合部材)
32 フランジ(接合面)
33 ワイヤガイド孔(第2ワイヤガイド孔)
34 ワイヤ挿入溝(第2ワイヤ挿入溝)
35 位置決め孔
36 コマ部材(第2コマ部材)
38 ボルト孔
43 ワイヤガイド孔
44 ワイヤ挿入溝
45 位置決めピン
46 フック
47 フック(第1ワイヤ係止手段)
48 ウインチレバー(第2ワイヤ係止手段)
49 ターンバックル
50 ワイヤ
51 ワイヤ端部
52 ワイヤ端部
55 ボルト
56 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合部材を有する第1パネルおよび第2接合部材を有する第2パネルを含む複数のパネルを組み立てることにより形成される防音エンクロージャのパネル接合構造において、
前記第1接合部材の接合面に、第1接合部材の長手方向に複数設けられる第1ワイヤガイド孔と、
前記第2接合部材の接合面に、第2接合部材の長手方向に複数設けられる第2ワイヤガイド孔と、
前記第1ワイヤガイド孔と次の第1ワイヤガイド孔の間に、一つおきに設けられた第1コマ部材と、
前記第2ワイヤガイド孔と次の第2ワイヤガイド孔の間に、接合状態において前記第1コマ部材に対し千鳥配置となるように設けられた第2コマ部材と、
接合状態において、前記複数の第1ワイヤガイド孔と前記複数の第2ワイヤガイド孔とにより列状に形成されるワイヤガイド孔に、第2接合部材側から第1接合部材側に挿通し、前記第1コマ部材に係止し、次のワイヤガイド孔に、第1接合部材側から第2接合部材側に挿通し、前記第2コマ部材に係止し、更に次のワイヤガイド孔に、第2接合部材側から第1接合部材側に挿通し、この挿通・係止を繰り返して接合面を縫うように、かつ、緊張状態で配置されるワイヤと、
前記ワイヤの一端部を係止する第1ワイヤ係止手段と、
前記ワイヤの他端部を係止する第2ワイヤ係止手段と
を備えることを特徴とする防音エンクロージャのパネル接合構造。
【請求項2】
請求項1記載の防音エンクロージャのパネル接合構造において、
前記第1ワイヤガイド孔から第1接合部材の短手方向に設けられた切り欠けである第1ワイヤ挿入溝と、
前記第2ワイヤガイド孔から第2接合部材の短手方向に設けられた切り欠けである第2ワイヤ挿入溝と
を備え、
接合状態において、前記第1ワイヤ挿入溝と前記第2ワイヤ挿入溝とにより前記ワイヤガイド孔に対応してワイヤ挿入溝が形成される
ことを特徴とする防音エンクロージャのパネル接合構造。
【請求項3】
第1接合部材を有する第1パネルおよび第2接合部材を有する第2パネルを含む複数のパネルから形成される防音エンクロージャのパネル組み立て方法において、
前記第1接合部材と前記第2接合部材を対向する位置に配置する接合部材配置ステップと、
前記第1接合部材の接合面に第1接合部材の長手方向に複数設けられる第1ワイヤガイド孔と、前記第2接合部材の接合面に第2接合部材の長手方向に複数設けられる第2ワイヤガイド孔とが、一致してワイヤガイド孔の列を形成するように、前記第1接合部材と前記第2接合部材とを位置決めする位置決めステップと、
ワイヤの一端部を係止する第1係止ステップと、
前記ワイヤを、前記ワイヤガイド孔に、第1接合部材側から第2接合部材側に挿通し、前記第2部材に設けられた第2コマ部材に係止し、次のワイヤガイド孔に、第2接合部材側から第1接合部材側に挿通し、前記第1部材に設けられた第1コマ部材に係止し、更に次のワイヤガイド孔に、第1接合部材側から第2接合部材側に挿通し、この挿通・係止を繰り返して接合面を縫うように、配置するワイヤ配置ステップと、
前記ワイヤ配置状態で、ワイヤを緊張するワイヤ緊張ステップと、
前記ワイヤの他端部を係止する第2係止ステップと、
一連のステップによる第1接合部材と第2接合部材との接合を繰り返すことにより、パネルを組み立てるパネル組み立てステップと
を備えることを特徴とする防音エンクロージャのパネル組み立て方法。
【請求項4】
請求項3記載の発明により組み立てされた防音エンクロージャのパネル解体方法において、
前記ワイヤの緊張状態を解除する緊張解除ステップと、
前記第2係止ステップによる係止状態を解除する第2係止解除ステップと、
前記ワイヤを前記ワイヤガイド孔の列から引き抜くワイヤ引き出しステップと、
前記第1係止ステップによる係止状態を解除する第1係止解除ステップと、
一連のステップによる第1接合部材と第2接合部材との分解を繰り返すことにより、パネルを分解するパネル分解ステップと
を備えることを特徴とする防音エンクロージャのパネル解体方法。
【請求項5】
第1接合部材と第2接合部材との接合構造であって、
前記第1接合部材の接合面に、第1接合部材の長手方向に複数設けられる第1ワイヤガイド孔と、
前記第2接合部材の接合面に、第2接合部材の長手方向に複数設けられる第2ワイヤガイド孔と、
前記第1ワイヤガイド孔と次の第1ワイヤガイド孔の間に、一つおきに設けられた第1コマ部材と、
前記第2ワイヤガイド孔と次の第2ワイヤガイド孔の間に、接合状態において前記第1コマ部材に対し千鳥配置となるように設けられた第2コマ部材と、
接合状態において、前記複数の第1ワイヤガイド孔と前記複数の第2ワイヤガイド孔とにより列状に形成されるワイヤガイド孔に、第2接合部材側から第1接合部材側に挿通し、前記第1コマ部材に係止し、次のワイヤガイド孔に、第1接合部材側から第2接合部材側に挿通し、前記第2コマ部材に係止し、更に次のワイヤガイド孔に、第2接合部材側から第1接合部材側に挿通し、この挿通・係止を繰り返して接合面を縫うように、かつ、緊張状態で配置されるワイヤと、
前記ワイヤの一端部を係止する第1ワイヤ係止手段と、
前記ワイヤの他端部を係止する第2ワイヤ係止手段と
を備えることを特徴とする接合構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate