説明

防黴剤、抗菌剤及び消臭剤並びに防黴、抗菌及び消臭方法

【課題】 この発明は、安全性、環境適合性、効果の持続性、耐性菌の発生防止などを達成し、広範な種類の黴の阻止ができると共に、有機変化を起こし難いようにすることを目的としたものである。
【解決手段】 この発明は、化学式が
Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)
(Rは炭素数1〜4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数値であり、x+3y+2z+m+n=4を満たす。)
で表されるリン酸チタニウム系化合物又はその縮合体を有効成分とする消臭組成物に、ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、ベンツイミダゾール系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、イソチアゾリル系抗菌剤及びチアゾール系抗菌剤の2種以上を0.1質量%〜40質量%夫々加えてなる抗菌組成物1質量%〜10質量%を加えたことを特徴とする防黴剤、抗菌剤及び消臭剤により目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、安全性、環境適合性、効果の持続性、耐性菌の発生防止などを達成し、バリア効果があって、広範な種類の黴の阻止ができると共に、有機変化を起こし難いようにすることを目的とした防黴剤、抗菌剤及び消臭剤並びに防黴、抗菌及び消臭方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明の出願前に、環境に優しく、人体に影響を与えない抗菌剤、消臭剤及び防黴剤並びに抗菌、消臭または防黴方法が提案されている。
【0003】
前記提案された発明は、式:Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)(Rは炭素数1〜4のアルキル基、x、y、z、1およびmは、それぞれ0以上の数値であり、x+3y+2z+1+m=4を満たす。)で表されるリン酸チタニウム系化合物を有効成分とする抗菌剤、消臭剤並びに防黴剤、及び、これらを噴霧または塗布する方法。リン酸チタニウム系化合物は、四塩化チタンと水もしくは炭素数1〜4のアルコールまたは、それらの混合溶液と反応させたのち、さらにリン酸と反応させることにより得られる。
【特許文献1】特開平14−308712
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の発明は、水やアルコールなどの溶剤で希釈された抗菌・消臭剤溶液として使用することができるものであり、スプレーによる散布に適したものであるが、保存性が悪く、保存中に固形物が析出して濁りが発生し、スプレーノズルを詰らせるおそれがあるのみならず、防黴、抗菌効果が充分でない問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、特許文献1の発明に、ケイ酸チタニウム系化合物とホウ酸チタニウム系化合物のうち少なくとも一方を添加することによって経時的固形物の析出を防止し、ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、ベンツイミダゾール系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤及びチアゾール系抗菌剤を有効成分として含有することにより、防黴、抗菌、消臭効果を飛躍的に向上させることに成功し、前記問題点を解決したのである。
【0006】
即ちこの発明は、化学式が
Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)
(Rは炭素数1〜4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数値であり、x+3y+z+m+n=4を満たす。)
で表されるリン酸チタニウム系化合物又はその縮合体を有効成分とする消臭組成物に、ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、ベンツイミダゾール系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、イソチアゾリル系抗菌剤及びチアゾール系抗菌剤の2種以上を0.1質量%〜40質量%夫々加えてなる抗菌組成物1質量%〜10質量%を加えたことを特徴とする防黴剤、抗菌剤及び消臭剤である。
【0007】
また他の発明は、化学式が
Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)
(Rは炭素数1〜4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数であり、x+3y+2z+m+n=4を満たす。)
で表されるリン酸チタニウム系化合物またはその縮合体と、ケイ酸チタニウム系化合物とホウ酸チタニウム系化合物のうち少なくとも一方とを含有して成る消臭組成物に、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン、2−(n一オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン、ジ・ヨードメチル−P−トリル−スルフオン、メチル(ベンツイミダゾール−2−イル)カルバメート、1,2ベンジソチアゾリン−3−オンの2種以上を0.1質量%〜40質量%夫々加えてなる抗菌組成物1質量%〜10質量%を加えたことを特徴とする防黴剤、抗菌剤及び消臭剤である。
【0008】
また他の発明は、請求項1又は2記載の防黴剤、抗菌剤及び消臭剤を噴霧又は塗布することを特徴とした防黴、抗菌及び消臭方法である。
【0009】
前記発明によれば、保存性、スプレー利用性が向上すると共に、防黴・抗菌・
消臭効果も飛躍的に向上することが認められる。また、スプレーなどした場合にコート性もよく、従って長期に亘り安定した効果を示すことができる。
【0010】
前記発明について、特に防黴・抗菌・脱臭効果の向上が認められる。
【0011】
次にこの発明の組成物は、表1〜表18に示すような各種菌に有効であることが認められた。従来斯かる多数の菌又は藻類に有効な組成物は知られていない。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【0012】
この発明で使用される抗菌・消臭剤の組成物は、リン酸チタニウム系化合物又はその縮合体(以下、リン酸チタニウム系化合物とのみ記す)からなる成分と、ケイ酸チタニウム系化合物とホウ酸チタニウム系化合物から選ばれる成分とを有効成分として含有するものである。
【0013】
一方、ケイ酸チタニウム系化合物やホウ酸チタニウム系化合物は消臭の有効成分であり、ケイ酸チタニウム系化合物やホウ酸チタニウム系化合物はいずれか一方を用いる他に、両方を併用することもできる。
【0014】
また、ホウ酸チタニウム系化合物は、ホウ酸と四塩化チタンを主原料として製造することができるものである。まずホウ酸を水もしくはアルコール、あるいは水とアルコールの混合溶液に溶解させる。アルコールとしては炭素数1〜4の脂肪族アルコールを用いるのが好ましく、中でもイソプロピルアルコールが最も好ましい。水とアルコールの混合溶液を用いる場合、混合比率は特に制限されないが、体積比で、水30%〜70%、アルコール70%〜30%の範囲が好ましい。水やアルコールに対するホウ酸の添加量は、体積比で、水やアルコール100部に対して、ホウ酸0.01〜30部の範囲が好ましい。ホウ酸の量が0.01部未満であると、消臭活性が低く、十分な消臭効果を得ることができない。またホウ酸の量が30部を超えると、白濁状態になり易くなる。
【0015】
次に、このようにして得られたホウ酸溶液に四塩化チタンを添加して反応させる。四塩化チタンの添加量は、体積比で、上記の反応溶液100部に対して8〜100部の範囲が好ましい。四塩化チタンの量が8部未満であると、消臭活性が低く、十分な消臭効果を得ることができない。また四塩化チタンの量が多過ぎると、スプレー塗布して形成される塗膜の製膜状態が悪くなって、剥離し易くなるので、100部以下が好ましく、50部以下がより好ましい。そしてこのように上記のホウ酸溶液に四塩化チタンを添加すると、室温で直ちに反応が生じ、ホウ酸チタニウム系化合物が生成し、ホウ酸チタニウム系化合物の水溶液もしくはアルコール溶液、あるいは水とアルコールの混合溶液にホウ酸チタニウム系化合物が溶解した溶液を得ることができる。生成されたホウ酸チタニウム系化合物は、分析結果によれば、TiO・Bの化学組成を有する化合物である。
【0016】
上記のようにして得られた、リン酸チタニウム系化合物の溶液に、ケイ酸チタニウム系化合物の溶液とホウ酸チタニウム系化合物の溶液のうち少なくとも一方を添加して混合し、ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、ベンツイミダゾール系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、イソチアゾリル系抗菌剤及びチアゾール系抗菌剤の2種以上を0.1質量%〜40質量%夫々加えてなる抗菌組成物を1質量%〜10質量%を加えて、この発明に係る防黴・抗菌・消臭剤を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明には他の薬剤に見られない次のような特別の効果がある。
【0018】
1.バリアー効果
細菌や真菌(黴)の細胞壁からDNA(核)まですべてを破壊して殺菌を行なう他の抗菌剤や殺菌剤と違い、この発明の組成物は細胞壁だけを破壊してたんぱく質やDNA(核)等の合成を阻害する。
【0019】
従って、合成を阻害された菌は、生育に必要な栄養分等を得られなくなり、自ら死滅する。その際、同種菌に危険情報を伝達する為、以後この発明の組成物は死滅した同種菌に対して忌避効果を発揮し、伝達範囲に阻止帯(バリアー)が形成される。
【0020】
2.406種類に及び広範囲の抗菌スペクトラム(表1〜表18)。
【0021】
世界災害微生物防止学界で確認された「一般建築物から高い頻度で検出される57菌」を含む406種類に及ぶ微・細菌・藻類に対し、効果試験を実施し、個別の菌夫々への効果を確認した抗菌スペクトラムを保有する。従って、黴・細菌・藻類に対する効果で、この発明の組成物に匹敵するものはなく、抜群である。
【0022】
3.安全性を重視している。
【0023】
この発明の組成物に各種試験で、高い安全性が確認されている。また、この発明の組成物は気化溶出を殆んどしないため、住原病の原因となったり、アレルギーの原因となるおそれもない。
【0024】
(財)日本食品分析センターにおける試験で薬剤中にダイオキシン類が含まれていないことが証明されていて、環境ホルモンとしてリストアップされた化学物質も一切使用していないため、環境にも非常に優しいし、他に類をみない抗菌・防黴・防藻剤である。
【0025】
4.効果の持続性がある。
【0026】
今までの防黴剤は、溶出や気化により効果を発現させるため、水分の多いところほど効果が持続しなかった。また、薬剤の残留濃度が減少するとそれまで拮抗していた繁殖力の強いカビが一気に勢力を増して繁殖する為、黴による被害は薬剤使用前よりひどくなることが多々あった。この発明に用いる組成物は、表19、表20のように、他の薬剤と比べ効果期間が長いのが特長である。
【表19】

【表20】

【0027】
これは他の薬剤と違い、成分の溶出や気化の少ない被溶出型の薬剤の為であり、この発明の組成物の効果と持続性は、今までの薬剤では抑止が困難だった苛酷な環境ほど際立っている。
【0028】
5.耐菌性が生まれない。
【0029】
この発明の組成物は、遅効性忌避効果型複合合成剤を採用しているため、黴・細菌を48時間から72時間(2〜3日)かけて自然に死ぬ(兵糧攻め)ようにする。このため無理矢理殺す殺菌剤のように耐性菌が生まれない。また、複合合成剤であるため、単一薬剤と違って、一つの耐性菌になっても、他の薬剤が効くので、そういった面からも耐性菌が発生しにくい薬剤になっている。従って、前の製品が効かなくなって改良製品を出さなければならなくなるケースがない。
【0030】
6.有機変化を起こさない。
【0031】
この発明の組成物は、熱、紫外線、酸、アルカリ、有機溶剤などによって分解しない安定性を持っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
抗菌・消臭剤の発明は、イソプロピルアルコールと、精製水の混合液に、室温で撹絆しながら四塩化チタンを混合して反応させ、この反応溶液を精製水で希釈し、ついでリン酸水溶液を加えて反応させることにより、Ti(OH)(PO4)(HPO(HPO(OCH(CHのリン酸チタニウム系化合物ができた。
【0033】
一方イソプロピルアルコールと精製水の混合溶液に四塩化ケイ素を添加し、室内で反応させた。この反応溶液に四塩化チタンを添加し、室温で反応させることによって、ケイ酸チタニウム系化合物の溶液を得た。
【0034】
前記リン酸チタニウム系化合物の溶液に、前記ケイ酸チタニウム系化合物の溶液を混合し、精製水で希釈して得た抗菌・消臭組成物にニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、ベンツイミダゾール系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、イソチアゾリル系抗菌剤及びチアゾール系抗菌剤の2種以上を0.1質量%〜40質量%夫々加えた防菌、防黴、防藻、抗菌組成物を1質量%〜4質量%添加して、この発明の防黴、抗菌、消臭剤を得た。
【実施例1】
【0035】
この発明の実施例を説明すると、リン酸チタニウム系化合物は抗菌、消臭及び防黴の有効成分であり、化学式がTi(OH)(PO(HPO(HPO(OR)
(Rは炭素数1〜4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数であり、x+3y+2z+m+n=4を満たす。)
で表されるものである。Rの炭素数が少なすぎると、抗菌・消臭剤溶液の粘度が低くなって、スプレーして製膜した時の膜厚が薄くなり、抗菌、消臭または防黴の効果が低くなる傾向がある。逆に炭素数が多すぎると、抗菌・消臭剤溶液の粘度が高くなって膜厚が大きくなり、製膜したときの皮膜が剥離し易くなる傾向がある。Rはエチル基またはイソプロピル基であることが好ましい。
【0036】
このリン酸チタニウム系化合物としては、例えば、Ti(OH)(HPO(OR)、Ti(OH)(PO)、Ti(OH)(HPO)(OR)、Ti(OH)(HPO)(OR)、Ti(OH)(HPO)(HPO)、Ti(OH)(HPO、Ti(OH)(HPO)、Ti(OH)(OR)などが好ましい。
【0037】
そしてこのリン酸チタニウム系化合物を製造するにあたっては、まず四塩化チタンを、水もしくは炭素数1〜4のアルコール、あるいはこれらの混合溶液と反応させる。水とアルコールの混合溶液を用いる場合、水が30〜70体積%であることが好ましい。また四塩化チタンの添加量は、体積比で水もしくはアルコール、または混合溶液100部に対して、0.01〜30部の範囲が好ましい。四塩化チタンと水やアルコールとの反応温度は常温、例えば5〜35℃であればよい。四塩化チタンと水やアルコールを混合する際の相対湿度は、10%〜80%、特に20%〜60%であることが好ましい。相対湿度が80%を超えると四塩化チタンの黄色粉末が多く生じ、その粒径が大きくなって活性が低下する傾向がある。逆に10%未満では白色粉末が生じ、膜硬度、活性の持続性に問題が生じる傾向がある。反応終了時の反応溶液のpHは、通常約1となる。
【0038】
次に、このようにして得られた反応溶液を水又はアルコールなどの溶剤で10〜500倍の範囲で希釈した後、リン酸を添加して反応させる。希釈が10倍未満では、リン酸を少量添加しただけでも白濁する傾向がある。白濁液には白色固
形物が析出しているのでスプレーノズルを詰らせるおそれがあり、またスプレー塗布した膜の表面に白色粉末が現出したり、膜硬度が下がって剥離や脱落が生じ持続性に問題が生じる。リン酸の添加量は、体積比で、前記の反応溶液100部に対して8〜500部の範囲が好ましい。500部を超えると溶液が白濁する傾向があり、450部以下、特に400部以下であることが好ましい。そしてこのように上記反応溶液にリン酸を添加すると、室温で直ちに反応が生じ、リン酸チタニウム系化合物が生成し、リン酸チタニウム系化合物の水溶液もしくはアルコール溶液、水とアルコールの混合溶液にリン酸チタニウム系化合物が溶解した溶液を得ることができる。
【0039】
前記溶液にニトリル系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤を有効成分として含有した組成物を5質量%、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム11質量%、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン16質量%、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン16質量%、ジ・ヨードメチル−P−トリル−スルフォン16質量%、メチル(ベンツイミダゾール−2−イル)カルバメート16質量%、1,2ベンジソチアゾリン−3−オン20質量%を混合して得た組成物2質量%を添加すると、この発明の防黴剤、抗菌剤及び消臭剤を得た。
【実施例2】
【0040】
この発明の実施例を説明すると、ケイ酸チタニウム系化合物は、四塩化ケイ素と四塩化チタンを主原料として製造することができるものであり、まず四塩化ケイ素を水もしくはアルコール、あるいは水とアルコールの混合溶液と反応させる。アルコールとしては炭素数1〜4の脂肪族アルコールを用いるのが好ましく、なかでもイソプロピルアルコールが最も好ましい。水とアルコールの混合溶液を用いる場合、体積比で、水30〜70%、アルコール70%〜30%の範囲が好ましい。水やアルコールに対する四塩化ケイ素の添加量は、体積比で、水やアルコール100部に対して0.01〜30部の範囲が好ましい。四塩化ケイ素の量が0.01部未満であると、消臭活性が低く、十分な消臭効果を得ることができない。また四塩化ケイ素の量が30部を超えると白濁状態になり易くなる。水やアルコールに四塩化ケイ素を添加して反応させる際の、雰囲気の相対湿度は10〜80%、特に20〜60%であることが望ましい。相対湿度が80%を超えると、四塩化ケイ素の黄色粉末が生じ、その粒径が大きくなり、消臭活性が低下する傾向がある。また相対湿度が10%未満であると、四塩化ケイ素の白色粉末が生じるおそれがある。上記の反応は室温で行うことができるものであり、水やアルコールに四塩化ケイ素を添加すると直ちに反応が生じ、溶液のpHは約1になる。
【0041】
次に、このようにして得られた反応溶液に四塩化チタンを添加して反応させる。四塩化チタンの添加量は、体積比で、上記の反応溶液100部に対して8〜100部の範囲が好ましい。四塩化チタンの量が8部未満であると、消臭活性が低く、十分な消臭効果を得ることができない。また四塩化チタンの量が多過ぎると、スプレー塗布して形成される塗膜の製膜状態が悪くなって、剥離し易くなるので、100部以下が好ましく、50部以下がより好ましい。そしてこのように上記反応溶液に四塩化チタンを添加すると、室温で直ちに反応が生じ、ケイ酸チタニウム系化合物が生成し、ケイ酸チタニウム系化合物の水溶液もしくはアルコール溶液、水とアルコールの混合溶液にケイ酸チタニウム系化合物が溶解した溶液を得ることができる。生成されたケイ酸チタニウム系化合物は、分析結果によれば、TiO・SiOの化学組成を有する化合物である。
【0042】
前記溶液にニトリル系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤を有効成分として含有した組成物を5質量%、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム11質量%、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン16質量%、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン16質量%、ジ・ヨードメチル−P−トリル−スルフォン16質量%、メチル(ベンツイミダゾール−2−イル)カルバメート16質量%、1,2ベンジソチアゾリン−3−オン20質量%を混合して得た組成物2質量%を添加すると、この発明の防黴剤、抗菌剤及び消臭剤を得た。
【実施例3】
【0043】
この発明の実施例をリン酸チタニウム系化合物利用の抗菌、消臭方法について説明すると、イソプロピルアルコール25mlと精製水25mlの混合液に、撹拌しながら四塩化チタン5mlを混合したのち、精製水で100倍に希釈した。これに85%のリン酸水溶液5mlを加えて、ほぼ5.5lのリン酸チタニウム系化合物を得た。このリン酸チタニウム系化合物は、Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OCH(CHまたはこれが縮合した組成であると推定される。
【0044】
一方、精製水100mlとイソプロビルアルコール100mlの混合溶液に四塩化ケイ素を30g添加し、室温で反応させた。次にこの反応溶液に四塩化チタンを50g添加し、室温で反応させることによって、ケイ酸チタニウム系化合物の溶液ほぼ300mlを得た。得られたケイ酸チタニウム系化合物は、TiO・SiOの化学組成であると推定された。
【0045】
そして、上記のようにして得られたリン酸チタニウム系化合物溶液100容量部とケイ酸チタニウム系化合物溶液10容量部を混合し、さらに精製水で10倍に希釈して、抗菌・消臭剤として調製した。前記で調整した組成物に、ニトリル系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤を有効成分として含有した組成物を5質量%、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム11質量%、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン16質量%、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン16質量%、ジ・ヨードメチル−P−トリル−スルフォン16質量%、メチル(ベンツイミダゾール−2−イル)カルバメート16質量%、1,2ベンジソチアゾリン−3−オン20質量%を混合して得た組成物2質量%を添加すると、この発明の防黴剤、抗菌剤及び消臭剤を得た。
【実施例4】
【0046】
この発明の実施例を説明すると、イソプロピルアルコール25mlと精製水25mlの混合溶液に、室温で撹絆しながら四塩化チタン5mlを混合して反応させ、この反応溶液を精製水で100倍に希釈した。次に、これに85質量%濃度のリン酸水溶液5mlを加えて反応させることによって、リン酸チタニウム系化合物の溶液を得た。得られたリン酸チタニウム系化合物は、分析の結果、Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OCH(CHの化学組成又はこれが縮合した化学組成であると推定された。
【0047】
一方、精製水100mlとイソプロピルアルコール100mlの混合溶液に四塩化ケイ素を30g添加し、室温で反応させた。次にこの反応溶液に四塩化チタンを50g添加し、室温で反応させることによって、ケイ酸チタニウム系化合物の溶液ほぼ300mlを得た。得られたケイ酸チタニウム系化合物は、TiO・SiOの化学組成であると推定された。
【0048】
前記のようにして得たリン酸チタニウム系化合物溶液100容量部と、ケイ酸チタニウム系化合物溶液10容量部を混合し、さらに精製水で10倍に希釈して抗菌、脱臭組成物を得た。
【0049】
前記組成物にニトリル系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤を有効成分として含有した組成物を10質量%、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム10質量%、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン16質量%、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン16質量%、ジ・ヨードメチル−P−トリル−スルフォン18質量%、メチル(ベンツイミダゾール−2−イル)カルバメート30質量%を混合して得た組成物4質量%を添加すると、この発明の防黴剤、抗菌剤及び消臭剤を得た。
【0050】
[効果試験]
この発明の効果試験は次のとおりである。
【0051】
防かび試験MIL STD 810DMethod508・3変法を採用し、以下に示す60種の混合かびを使用した。湿式法による試験菌混合胞子懸濁液から直接接種し、ポテトデキストロースアガー培地(PDA、クロラムフェニコール等の抗生物質無添加)で、温度30±5℃、湿度95%±15%RH、風速60cm/秒の条件で28日間培養した。以下の5段階により評価した。
【0052】
0・・・かびの発育が全く見られない。
【0053】
1・・・かびの発育が僅かにある。
【0054】
2・・・かびの発育が少しある。
【0055】
3・・・かびの発育がかなりある。
【0056】
4・・・かびの発育が激しくある。
【0057】
使用したかびは次に示すかびであった。アクレモニウム チャルティコーラ、アスペルギルス オリゼー、アスペルギルス カンディダス、アスペルギルス ニガー、アスペルギルス フュミガタス、アスペルギルス フェルシコール、アスペルギルス フレーバス、アルテルナリア アルテルナータ、アルテルナリア テナース、アルテルナリア ブラッシコーラ、ウロクラディウム アトラム、エピコッカム パープラセンス、オーレオバシディウム プルランス、カルバラリア ルナータ、カンジタ アルビカンス、クラドスポリウム クラドスポリオイダス、クラドスポリウム サファエロスペルマ、クラドスポリウム ヘルバレム、クラドスポリウム レジネ、ゲオトリカム カンディダム、ゲオトリカム ラクタス、ケトミウム グロボーサム、トリコデルマ コニンギ、トリコデルマ ビリディ、トリコフィートン メンタグロフィテス、ドレッシラ オストラライン、ニグロスポラ オリゼー、ニューロスポラ ジトフィーラ、フォーマ グロメラータ、フオーマ テレスチアス、フザリウム オキシスポラム、フザリウム セミテクタム、フザリウム ソラニ、フザリウム モニリフォルメ、フザリウム ロゼウム、プルラリア プルランス、ペスタロチア アダスタ、ペスタロチア ネグレクタ、ペニシリウム アイランディカム、ペニシリウム イクパンサ、ペニシリウム シクロピウム、ペニシリウム シトリナム、ペニシリウム シトレオビリティ、ペニシリウム ニグリカンス、ペニシリウム フュニキュローザム、ペニシリウム フレクエンタス、ペニシリウム リラシナム、ポトリティス シネレア、ミロテシウム フェルカリア、ムコール スピネッセンス、ムコール ラセマサス、モニリア フルクチガーナ、ユーロチウム アムステロダミ、ユーロチウム シバリエリ、ユーロチウム トナフィラム、ユーロチウム ルブラム、リゾプス オリゼー、リゾプス ストロニフェル、リゾプス ニグリカンス、ワレミア セビ。これらのかびは、それそれ6℃±4℃で保存された30日以内のストックカルチャー純培養菌、またはサブカルチャー菌であった。
【0058】
上記試験の結果、表21を得た。
【表21】

【0059】
また前記試験における組成物の条件は表22のとおりである。
【表22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式が
Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)
(Rは炭素数1〜4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数値であり、x+3y+z+m+n=4を満たす。)
で表されるリン酸チタニウム系化合物又はその縮合体を有効成分とする消臭組成物に、下記抗菌組成物1質量%〜10質量%を加えたことを特徴とする防黴剤、抗菌剤及び消臭剤。
ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、ベンツイミダゾール系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、イソチアゾリル系抗菌剤及びチアゾール系抗菌剤の2種以上を0.1質量%〜40質量%夫々加えてなる抗菌組成物。
【請求項2】
化学式が
Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)
(Rは炭素数1〜4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数であり、x+3y+2z+m+n=4を満たす。)
で表されるリン酸チタニウム系化合物またはその縮合体と、ケイ酸チタニウム系化合物とホウ酸チタニウム系化合物のうち少なくとも一方とを含有して成る消臭組成物に、下記抗菌組成物1質量%〜10質量%を加えたことを特徴とする防黴剤、抗菌剤及び消臭剤。
2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン、2−(n一オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン、ジ・ヨードメチル−P−トリル−スルフオン、メチル(ベンツイミダゾール−2−イル)カルバメート、1,2ベンジソチアゾリン−3−オンの2種以上を0.1質量%〜40質量%夫々加えてなる抗菌組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防黴剤、抗菌剤及び消臭剤を噴霧又は塗布することを特徴とした防黴、抗菌及び消臭方法。

【公開番号】特開2006−52209(P2006−52209A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202092(P2005−202092)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(304006078)
【出願人】(000187220)昭和薬品化工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】