説明

降雨予報提供装置と降雨予報受信端末装置

【課題】公開気象情報を有効活用して、的確かつ利便性の高い降雨予報を提供する。
【解決手段】降雨予報提供装置1は、端末装置TMから通信ネットワークNTを介して降雨予報要求位置を表す位置情報を受信する。また、気象データサーバDSから1kmメッシュレーダデータ13a及び降水ナウキャストデータ13bを受信し、データ格納部13に記憶する。そして、降雨判定部14は、1kmメッシュレーダデータ13a及び降水ナウキャストデータ13bを順に読み出し、上記降雨予報要求位置を中心とする判定メッシュのうち雨域の割合である降水メッシュレートをそれぞれ算出する。この降雨判定部14により降水メッシュレートが閾値以上と判定された場合に、情報発信部15は、各データの観測/予測時間に降雨が発生することを表す降雨予報データを端末装置TMに送信するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば気象庁の気象データサーバから提供される降水予測情報をもとに降雨予報を提供する降雨予報提供装置と降雨予報受信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、気象庁から1kmメッシュ気象レーダデータと降水ナウキャストデータが公開されている。1kmメッシュ気象レーダデータは、気象庁による全国20箇所での気象レーダ観測により得られたレーダエコーを合成し、1km四方ごとの降水強度分布(mm/h)で示したもので、これにより降水状況をより詳細に把握することが可能である。
【0003】
また、降水ナウキャストデータは、気象レーダによる降水強度分布と、降水域の移動状況をもとに60分先まで10分間毎の雨量を1km四方の領域ごとに予測するものである。このデータは、最新の観測に基づき10分毎に更新されるため、急速に発達する雨雲の変化や移動を捉えることができる(例えば、非特許文献1を参照。)。
【非特許文献1】気象庁、2005年6月10日検索、[online]、インターネット<URL:http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jma/index.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述したように詳細な気象情報が公開されているにも拘わらず、一般的には、あまり知られることがなく、広く活用されていないのが現状である。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、公開気象情報を有効活用して、的確かつ利便性の高い降雨予報を提供する降雨予報提供装置と降雨予報受信端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためにこの発明に係わる降雨予報提供装置は、気象データサーバから定期的に提供される、一定時間経過後の降雨予測領域を含む降水予測データをもとに降雨予報を提供する降雨予報提供装置であって、降雨予報要求位置を表す位置情報の入力を受け付ける位置情報入力手段と、上記気象データサーバから提供される降水予測データを受信する降水予測データ受信手段とを備える。さらに、上記降雨予報要求位置に基づいて判定領域を決定し、この判定領域と上記降水予測データによる降雨予測領域とを比較して上記判定領域中の雨域割合を算出する雨域割合算出手段と、上記雨域割合が閾値以上か否かを判定する判定手段とを備え、上記判定手段により閾値以上と判定された場合に、比較した降水予測データの予測時間経過後に降雨が発生することを表す降雨予報を出力するものである。
【0007】
上記構成による降雨予報提供装置では、気象データサーバから提供される降水予測データによる降雨予測領域と、降雨予報要求位置に基づいて決定された判定領域とを比較して、判定領域における雨域の割合を算出する。そして、上記算出された雨域の割合が予め設定された閾値以上か否かの判定を行い、この判定により閾値以上の判定した場合に、上記比較した降水予測データの予測時間経過後に降雨が発生することを表す降雨予報を出力する。このように構成することにより、公開された気象情報を有効活用して、的確かつ利便性の高い降雨予報を提供することが可能となる。
【0008】
また、この発明に係わる降雨予報受信端末装置は、気象データサーバから定期的に提供される、一定時間経過後の降雨予測領域を含む降水予測データを取得し、降雨予報要求位置に基づいて判定領域を決定し、この判定領域と上記降雨予測領域とを比較して上記判定領域中の雨域割合を算出し、この雨域割合が閾値以上か否かを判定し、閾値以上と判定された場合に、比較した降水予測データの予測時間経過後に降雨が発生することを表す降雨予報を出力する降雨予報提供装置と通信回線を介して接続される端末装置であって、上記降雨予報提供装置に上記通信回線を介して上記降雨予報要求位置を表す位置情報を送信する送信手段と、上記降雨予報提供装置から上記通信回線を介して通知される上記位置情報に対応する降雨予報を受信する受信手段と、上記受信された降雨予報を提示する提示手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成による降雨予報受信端末装置では、降雨予報提供装置に対して降雨予報要求位置を表す位置情報を送信することにより、降雨予報提供装置から送信される上記降雨予報要求位置に対する降雨予報を受信して提示する。このように構成することにより、これにより、例えば、急激に発達した雨雲による局地的な降雨などを降水予測時間と共に利用者に報知することができるため、利用者の行動を支援することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
したがってこの発明によれば、公開気象情報を有効活用して、的確かつ利便性の高い降雨予報を提供する降雨予報提供装置と降雨予報受信端末装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、この発明に係わる降雨予報提供装置と降雨予報受信端末装置を備えた降雨予報提供システムの一実施形態を示すブロック構成図である。図1において、降雨予報提供装置1は、ネットワークNTを介して気象データサーバDSと端末装置TMとにそれぞれ接続されている。端末装置TMは、降雨予報提供装置1から提供される降雨予報を受信する端末装置であり、例えば、パーソナル・コンピュータや携帯電話等の携帯通信端末が用いられる。
【0012】
降雨予報提供装置1の受信処理部11は、通信インタフェース12を通じてネットワークNTに接続され、当該ネットワーク上の気象庁等の気象データサーバDSから配信される1kmメッシュ気象レーダデータ13a及び降水ナウキャストデータ13bを取得する。降水ナウキャストデータ13bは、10分先毎の予測時間における降水予測データで60分先までの6ファイルで構成される。この受信処理部11により取得された1kmメッシュ気象レーダデータ13a及び降水ナウキャストデータ13bはデータ格納部13に記憶され、降雨判定部14からの要求に応じて選択的に取り込まれる。
【0013】
また、受信処理部11は、携帯電話等の端末装置TMから送られる降雨予報要求位置を表す位置情報をネットワークNTを介して受信する。この位置情報には、例えば緯度経度情報や住所等が利用される。降雨予報提供装置1は、この降雨予報要求位置を登録位置とし、この登録位置に関する降雨予報を提供する。降雨判定部14は、データ格納部13から1kmメッシュ気象レーダデータ13a及び降水ナウキャストデータ13bを読み出し、上記登録位置の降水予測を行う。この降水予測結果は情報発信部15に出力され、降雨予報データとして通信インタフェース12により端末装置TMに向け送信される。
【0014】
次に、以上のように構成された降雨予報提供システムの動作について説明する。図2は、図1に示す降雨予報提供装置1の降水予測の処理手順とその処理内容を示すフローチャートである。これに先立ち、降雨予報提供装置1は、端末装置TMから降雨予報要求位置を含む降雨予報取得要求を受信したものとする。
まず、ステップS1において、降雨判定部14は、データ格納部14から1kmメッシュレーダデータ13aを読み込む。そして、下記式により、雨域の割合を示す降雨メッシュレートを算出する。
降雨メッシュレート(%)=(降雨メッシュ数)/(判定メッシュ数)×100
ここで、上式において、判定メッシュ数は、上記端末装置TMにより指定された降雨予報要求位置である登録位置を含む判定領域に含まれるメッシュの合計数である。また、降雨メッシュ数は、上記判定メッシュ数のうち1kmメッシュレーダデータにおいて雨域に該当するメッシュ数である。図3は、降雨判定の一例を示す概念図である。図3において、例えば、登録位置を中心にして半径Xkmの範囲を判定メッシュとし、この判定メッシュにおける雨域の割合を降雨メッシュレートとして算出する。
【0015】
次に、ステップS2において、降雨判定部14は、上記求められる降雨メッシュレートが予め設定された閾値を超えるか否かを判定する。この判定において、降雨メッシュレートが閾値以上であると判定された場合は雨と判定し、判定結果を情報発信部15に出力する。そして、ステップS3に移行し、情報発信部15は、上記判定結果に基づいて、例えば、「まもなく雨が降ります。」のような内容を表す降雨予報データを作成し、通信I/F12により端末装置TMに向け送信する。端末装置TMは、上記送信された降雨予報データを受信すると、例えば、端末装置TMに設けられる表示部に出力し、降雨予報を提示する。
【0016】
一方、上記ステップS2において、降雨メッシュレートが閾値に達しないと判定された場合は、ステップS4に移行し、降雨判定部14は、データ格納部13からナウキャストデータ13b(10分後)を読み込む。そして、上記ステップS2と同様に、1kmメッシュレーダデータの代わりにナウキャストデータ13b(10分後)を用いて降雨メッシュレートを算出する。そして、ステップS5により、降雨判定部14において、降雨メッシュレートが閾値以上か否かを判定する。この判定により閾値以上と判定されると、ステップS6に移行し、情報発信部15は、「10分後に雨が降ります」のような内容を表す降雨予報データを通信I/F12により端末装置TMに向け送信する。
【0017】
上記ステップS5の判定において、雨と判定されない場合は、ステップS7に移行し、さらにM分後のナウキャストデータ(Mは、20,30,40,50,60とする)を読み込み、読み込んだM分後のナウキャストデータついてステップS8において上記同様に降雨判定を行う。ただし、ナウキャストデータは、予測時間が大きくなるにつれて降水予測データの信頼性は低下するため、予測時間に応じて判定メッシュを広範囲にする。
【0018】
ここで、図4を参照して、ナウキャストデータの降雨判定方法について詳しく説明する。図4において、予測時間が1時間のときの判定メッシュを半径Xkmの範囲とし、予測時間が10分のときの判定メッシュを半径X´kmの範囲とした場合、Xkm>X´kmと設定する。図4に示すように登録位置の周辺に局地的に降雨が存在する場合に特に有効であり、雨の降り始め時間をより正確に伝達することができる。
【0019】
そして、上記ステップS8の判定において雨と判定されると、ステップS9に移行して、「M分後に雨が降ります」等の内容を示す降雨予報データが情報発信部15から端末装置TMに向け送信される。なお、60分後のナウキャストデータについても、雨と判定されない場合は、降雨予報データは送信されずに処理は終了する。
【0020】
以上述べたように、上記実施形態では、降雨予報提供装置1は、端末装置TMから通信ネットワークNTを介して降雨予報要求位置を表す位置情報を受信する。また、気象データサーバDSから1kmメッシュレーダデータ13a及び降水ナウキャストデータ13bを受信し、データ格納部13に記憶する。そして、降雨判定部14は、1kmメッシュレーダデータ13a及び降水ナウキャストデータ13bを順に読み出し、上記降雨予報要求位置を中心とする判定メッシュのうち雨域の割合である降水メッシュレートをそれぞれ算出する。この降雨判定部14により降水メッシュレートが閾値以上と判定された場合に、情報発信部15は、各データの予測時間に降雨が発生することを表す降雨予報データを端末装置TMに送信するものである。
【0021】
したがって上記実施形態によれば、例えば気象庁の気象データサーバDSから提供される1kmメッシュレーダデータ13a及び降水ナウキャストデータ13bを利用することにより、登録位置に対する60分先までの降雨予報を提供することができる。これにより、急激に発達した雨雲による局地的な降雨などを降水予測時間と共に利用者に報知することができるため、利用者の行動を支援することが可能となる。
【0022】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、ナウキャストデータの降雨判定方法において、予測時間に応じて判定領域を可変にするように構成したが、降雨メッシュレートの閾値を可変にするようにしてもよい。つまり、予測時間が大きくなるにつれて雨判定とする閾値を高くすることにより、予測時間が大きくなった場合でも、降雨予報の信頼性を保持することができる。さらに、判定領域と降雨メッシュレートの閾値の2つの設定値を組み合わせて可変にするように構成してもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、気象庁が公開している降水ナウキャストデータを利用する場合について説明したが、同様の気象予測情報を公開している気象データサーバが存在する場合には、これを利用することも可能である。
その他、降雨予報提供装置の構成や活用する気象予測データの種類や形式、また、降雨判定処理の手順とその内容についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0024】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に係わる降雨予報提供システムの一実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示す降雨予報提供装置の降雨判定動作の処理手順とその処理内容を示すフローチャート。
【図3】降雨判定方法の一例を示す概念図。
【図4】降雨判定方法の一例を示す概念図。
【符号の説明】
【0026】
1…降雨予報提供装置、11…受信処理部、12…通信インタフェース、13…データ格納部、14…降雨判定部、15…情報発信部、NT…ネットワーク、DS…気象データサーバ、TM…端末装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象データサーバから定期的に提供される、一定時間経過後の降雨予測領域を含む降水予測データをもとに降雨予報を提供する降雨予報提供装置であって、
降雨予報要求位置を表す位置情報の入力を受け付ける位置情報入力手段と、
前記気象データサーバから提供される降水予測データを受信する降水予測データ受信手段と、
前記降雨予報要求位置に基づいて判定領域を決定し、この判定領域と前記降水予測データによる降雨予測領域とを比較して前記判定領域中の雨域割合を算出する雨域割合算出手段と、
前記雨域割合が閾値以上か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により閾値以上と判定された場合に、比較した降水予測データの予測時間経過後に降雨が発生することを表す降雨予報を出力する降雨予報出力手段と
を具備することを特徴とする降雨予報提供装置。
【請求項2】
前記気象データサーバが定期的に複数の予測時間の降水予測データを提供しているとき、
前記雨域割合算出手段は、前記複数の予測時間の降水予測データそれぞれによる複数の降雨予測領域を前記判定領域と比較して前記複数の予測時間の雨域割合を算出し、
前記判定手段は、前記複数の予測時間の雨域割合それぞれについて閾値と比較判定し、
前記降雨予報送信手段は、前記閾値以上となる雨域割合のうち最初の予測時間を降雨発生の予測時間とすることを特徴とする請求項1記載の降雨予報提供装置。
【請求項3】
前記雨域割合算出手段は、比較する降雨予測領域の予測時間に応じて前記判定領域を可変することを特徴とする請求項1または2記載の降雨予報提供装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記雨域割合算出手段で比較する降雨予測領域の予測時間に応じて前記閾値を可変することを特徴とする請求項1または2記載の降雨予報提供装置。
【請求項5】
気象データサーバから定期的に提供される、一定時間経過後の降雨予測領域を含む降水予測データを取得し、降雨予報要求位置に基づいて判定領域を決定し、この判定領域と前記降雨予測領域とを比較して前記判定領域中の雨域割合を算出し、この雨域割合が閾値以上か否かを判定し、閾値以上と判定された場合に、比較した降水予測データの予測時間経過後に降雨が発生することを表す降雨予報を出力する降雨予報提供装置と通信回線を介して接続される端末装置であって、
前記降雨予報提供装置に前記通信回線を介して前記降雨予報要求位置を表す位置情報を送信する送信手段と、
前記降雨予報提供装置から前記通信回線を介して通知される前記位置情報に対応する降雨予報を受信する受信手段と、
前記受信された降雨予報を提示する提示手段と
を具備することを特徴とする降雨予報受信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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