説明

除塵脱臭フィルタ

【課題】除塵脱臭フィルタの脱臭フィルタを、十分な脱臭性能を有し、簡単に形成できるようにすることと、除塵フィルタの除塵性能と耐久寿命を確保することである。
【解決手段】矩形状の共通の枠体1を、前面側と後面側で内向きに張り出す鍔1aを有するコ字断面の枠で形成されたものとし、除塵フィルタ11の後面側を通気性の不織布22aで仕切って、不織布22aで仕切った除塵フィルタ11の後面側の枠体1の中に、粒状の活性炭23をコ字断面の枠2の内側まで充填して、充填した活性炭23の後面側をメッシュ部材24で覆い、メッシュ部材24の周囲を枠体1に固定して、枠体1の後面側に組み込まれる脱臭フィルタ21を形成することにより、十分な脱臭性能を有する脱臭フィルタ21を簡単に形成できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵性能と脱臭性能を備えた除塵脱臭フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
除塵性能と脱臭性能を備えた除塵脱臭フィルタは、工場、飲食店、ホテル等での悪臭を除去する空気清浄装置や、例えば、トナーを定着させるプリンタ装置のように、オゾン等の有害ガスが発生する装置の排気路等に装着されている。この除塵脱臭フィルタには、矩形状の共通の枠体に、空気が流入する前面側にプリーツ状の除塵フィルタを組み込み、その後面側に脱臭フィルタを組み込んだものが多く使用されている。
【0003】
前記プリーツ状の除塵フィルタの後面側に組み込まれる脱臭フィルタとしては、種々の形態のものが提案されている(例えば、特許文献1−4参照)。特許文献1に記載されたものは、一方に複数の突起部が形成された不織ろ材と吸着体とを交互に重ね合わせ、これらを不織布で包んで加熱成形している。特許文献2に記載されたものは、角形の柔軟な多孔ろ過体に脱臭剤を担持させている。特許文献3に記載されたものは、光触媒を担持させた活性炭等の担体をフィルタ用原紙に漉き込んだり、塗工したりして含有させ、この担体を含有させたフィルタ用原紙をハニカム形状やコルゲート形状に形成している。また、特許文献4に記載されたものは、接着剤を含浸させた脱臭シートの表裏面に活性炭粒子を付着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−137722号公報
【特許文献2】特開平9−206547号公報
【特許文献3】特開2000−153131号公報
【特許文献4】特開平7−213843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1−3に記載されたものは、不織ろ材と吸着体とを交互に重ね合わせたものを不織布で包んで加熱成形したり、脱臭剤を多孔ろ過体に担持させたり、活性炭等の担体をフィルタ用原紙に含有させて、フィルタ用原紙をハニカム形状やコルゲート形状に形成したりする必要があるので、脱臭フィルタの形成に非常に手間がかかる問題がある。一方、特許文献4に記載されたものは、接着剤を含浸させた脱臭シートに活性炭粒子を付着させるのみで脱臭フィルタを形成できるが、脱臭シートの表裏面に1層ずつしか活性炭粒子を付着させることができないため、脱臭層の厚みが不足し、接着部の脱臭効果も減少するので、十分な脱臭性能を確保できない問題がある。
【0006】
このような問題に対して、図4に示すように、脱臭フィルタ31を、矩形状の子枠体32に粒状や塊状の脱臭剤33を充填して、その前面側と後面側をメッシュ部材34で覆ったものとし、この脱臭フィルタ31を、プリーツ状の除塵フィルタ35を組み込んだ矩形状の枠体36の後面側に組み込んだ除塵脱臭フィルタがある。子枠体32の面積が広い場合は、脱臭剤33が充填される子枠体32を複数の区画に仕切る棧部材37が設けられ、各メッシュ部材34は子枠体32と棧部材37に固定されている。
【0007】
前記脱臭フィルタ31は、比較的簡単に形成でき、脱臭層の厚みも十分に確保できるが、充填された粒状や塊状の脱臭剤33が移動して、子枠体32との間に隙間ができないように、充填する脱臭剤33を密に詰め込む必要がある。このため、図4に示したように、脱臭剤33の前面側と後面側を覆うメッシュ部材34が外側へ膨らむように撓んで、脱臭層の厚みが不均一となり、子枠体32内での空気の通過位置によって、脱臭効果にバラツキが生じる問題がある。また、脱臭剤33を子枠体32に充填して、その前後面両側をメッシュ部材34で覆う必要があるので、部品点数が多くなるとともに、子枠体32が占有する面積だけ、ろ過面積が狭くなる問題もある。
【0008】
さらに、図4に一点鎖線で示したように、除塵フィルタ35の後面側で脱臭フィルタ31との間に隙間が形成されるので、プリーツ状の除塵フィルタ35が、図中に矢印で示す流入する空気の圧力で後面側へ撓むように変形し、除塵性能が低下するとともに、除塵フィルタ35の耐久寿命が短くなる問題もある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、除塵脱臭フィルタの脱臭フィルタを、十分な脱臭性能を有し、簡単に形成できるようにすることと、除塵フィルタの除塵性能と耐久寿命を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、矩形状の共通の枠体に、空気が流入する前面側にプリーツ状の除塵フィルタを組み込み、その後面側に脱臭フィルタを組み込んだ除塵脱臭フィルタにおいて、前記枠体を、前面側と後面側で内向きに張り出す鍔を有するコ字断面の枠で形成されたものとし、前記除塵フィルタの後面側を通気性の仕切り部材で仕切って、この仕切り部材で仕切った除塵フィルタの後面側の枠体の中に、粒状の脱臭剤を前記コ字断面の枠の内側まで充填して、この枠体の中に充填した脱臭剤の後面側をメッシュ部材で覆い、このメッシュ部材の周囲を枠体に固定して、前記枠体の後面側に組み込まれる脱臭フィルタを形成した構成を採用した。
【0011】
すなわち、枠体を、前面側と後面側で内向きに張り出す鍔を有するコ字断面の枠で形成されたものとし、除塵フィルタの後面側を通気性の仕切り部材で仕切って、この仕切り部材で仕切った除塵フィルタの後面側の枠体の中に、粒状の脱臭剤をコ字断面の枠の内側まで充填して、この枠体の中に充填した脱臭剤の後面側をメッシュ部材で覆い、このメッシュ部材の周囲を枠体に固定して、枠体の後面側に組み込まれる脱臭フィルタを形成することにより、脱臭剤が移動して枠体との間に隙間が形成されても、この隙間がコ字断面の枠の内側で形成され、空気がそのまま隙間を通過しないようにして、脱臭剤を密に詰め込むのを不要とし、メッシュ部材が膨らむように撓んで、脱臭層の厚みが不均一となるのを防止するとともに、子枠体や前面側のメッシュ部材を不要とし、十分な脱臭性能を有する脱臭フィルタを簡単に形成できるようにした。
【0012】
前記仕切り部材を可撓性のシート部材とし、前記除塵フィルタの後面側に当接させることにより、除塵フィルタと充填された脱臭剤とが可撓性のシート部材を介して互いに押し当てられるようにし、プリーツ状の除塵フィルタが流入する空気の圧力で後面側へ撓み変形するのを防止して、除塵フィルタの除塵性能と耐久寿命を確保できるとともに、充填された脱臭剤の移動も抑制することができる。
【0013】
前記脱臭剤の後面側を、通気性のシート部材を介して前記メッシュ部材で覆うことにより、粒状や塊状の脱臭剤から分離する微粉が流出するのを防止することができる。
【0014】
前記脱臭剤を充填した枠体の後面側を複数の区画に仕切る棧部材を設け、この棧部材に前記メッシュ部材の中間部を固定することにより、脱臭剤の移動を抑制できるとともに、メッシュ部材を強固に固定することができる。
【0015】
前記枠体を金属で形成する場合は、その外周面を布部材で覆うことにより、高温の空気をろ過するときに枠体が熱くなっても、メンテナンスや点検等を行うときに、枠体を素手で持って除塵脱臭フィルタを取り外すことができる。特に、トナーを定着させるプリンタ装置の排気路に装着される除塵脱臭フィルタは、オゾンを含有する高温の空気をろ過するので、枠体が50℃以上に熱くなり、サービス員がプリンタ装置の納入先へ出向いてメンテナンスや点検等を行うことが多いため、除塵脱臭フィルタを取り外すときに火傷をする恐れがある。このため、このような用途の除塵脱臭フィルタに好適である。
【0016】
上述した各除塵脱臭フィルタは、トナーを定着させるプリンタ装置の排気路に装着されるものに好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る除塵脱臭フィルタは、枠体を、前面側と後面側で内向きに張り出す鍔を有するコ字断面の枠で形成されたものとし、除塵フィルタの後面側を通気性の仕切り部材で仕切って、この仕切り部材で仕切った除塵フィルタの後面側の枠体の中に、粒状の脱臭剤をコ字断面の枠の内側まで充填して、この枠体の中に充填した脱臭剤の後面側をメッシュ部材で覆い、このメッシュ部材の周囲を枠体に固定して、枠体の後面側に組み込まれる脱臭フィルタを形成したので、十分な脱臭性能を有する脱臭フィルタを簡単に形成することができる。
【0018】
前記仕切り部材を可撓性のシート部材とし、除塵フィルタの後面側に当接させることにより、除塵フィルタと充填された脱臭剤とが可撓性のシート部材を介して互いに押し当てられるようにし、プリーツ状の除塵フィルタが流入する空気の圧力で後面側へ撓み変形するのを防止して、除塵フィルタの除塵性能と耐久寿命を確保できるとともに、充填された脱臭剤の移動も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】除塵脱臭フィルタの実施形態を示す一部切欠き正面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図2を拡大して示す断面図
【図4】従来の除塵脱臭フィルタを示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この除塵脱臭フィルタは、トナーを定着させるプリンタ装置の排気路に装着されるものであり、図1および図2に示すように、共通の矩形状の枠体1に、空気が流入する前面側に除塵フィルタ11が組み込まれ、その後面側に脱臭フィルタ21が組み込まれており、前面側の除塵フィルタ11でトナー等を除塵するとともに、後面側の脱臭フィルタ21で、高温空気に含まれる臭気やオゾン等の有害ガスを吸着する。
【0021】
前記枠体1は、前面側と後面側で内向きに張り出す鍔1aを有するコ字断面の4本のアルミニウム製の枠を、L字状の連結具2で直角に連結して形成されており、枠体1の外周面と前面側の鍔1aの外面には、布部材としての不織布3が貼付され、後面側の鍔1aの外面にはパッキン材4が貼付されている。各連結具2は、各鍔1aの内面側に形成された内鍔1bとの間の内面側に開口する空間に装着されている。
【0022】
図3に拡大して示すように、前記除塵フィルタ11は、ろ材12をプリーツ状に折り曲げたものであり、プリーツ間の隙間を確保するために、複数のビード13がプリーツと直交するように間隔を開けて設けられている。ろ材12は、各種合成樹脂の繊維、ガラス繊維、セルロース繊維等の不織布で形成され、ビード13は熱融着樹脂等で形成されている。
【0023】
前記脱臭フィルタ21は、除塵フィルタ11の後面側に、可撓性を有する通気性のシート部材としての不織布22aを当接させて、枠体1の後面側を仕切り、不織布22aで仕切った除塵フィルタ11の後面側の枠体1の中に、脱臭剤としての粒状の活性炭23をコ字断面の枠2の内側まで充填して、枠体1の中に充填した活性炭23の後面側を、不織布22bを介して金属製のメッシュ部材24で覆って形成したものである。したがって、運搬時や取り扱い時に充填された活性炭23が移動し、枠体1との間に隙間が形成されても、この隙間はコ字断面の枠2の内側で形成されるので、空気がそのまま隙間を通過することはない。また、活性炭23を充填した枠体1の後面側は、棧部材25で複数の区画に仕切られ、メッシュ部材24は、周囲を接着性のシール材26で枠体1に固定されるとともに、中間部を留め具27で棧部材25に固定されている。
【0024】
上述した実施形態では、脱臭剤を粒状の活性炭としたが、脱臭剤はイオン交換樹脂等の他の吸着材料とすることもでき、これらに光触媒を担持させることもできる。また、脱臭剤を覆うメッシュ部材を金属製のものとしたが、メッシュ部材は樹脂製等のものとすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 枠体
1a 鍔
1b 内鍔
2 連結具
3 不織布
4 パッキン材
11 除塵フィルタ
12 ろ材
13 ビード
21 脱臭フィルタ
22a、22b 不織布
23 活性炭
24 メッシュ部材
25 棧部材
26 シール材
27 留め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の共通の枠体に、空気が流入する前面側にプリーツ状の除塵フィルタを組み込み、その後面側に脱臭フィルタを組み込んだ除塵脱臭フィルタにおいて、前記枠体を、前面側と後面側で内向きに張り出す鍔を有するコ字断面の枠で形成されたものとし、前記除塵フィルタの後面側を通気性の仕切り部材で仕切って、この仕切り部材で仕切った除塵フィルタの後面側の枠体の中に、粒状の脱臭剤を前記コ字断面の枠の内側まで充填して、この枠体の中に充填した脱臭剤の後面側をメッシュ部材で覆い、このメッシュ部材の周囲を枠体に固定して、前記枠体の後面側に組み込まれる脱臭フィルタを形成したことを特徴とする除塵脱臭フィルタ。
【請求項2】
前記仕切り部材を可撓性のシート部材とし、前記除塵フィルタの後面側に当接させた請求項1に記載の除塵脱臭フィルタ。
【請求項3】
前記脱臭剤の後面側を、通気性のシート部材を介して前記メッシュ部材で覆った請求項1または2に記載の除塵脱臭フィルタ。
【請求項4】
前記脱臭剤を充填した枠体の後面側を複数の区画に仕切る棧部材を設け、この棧部材に前記メッシュ部材の中間部を固定した請求項1乃至3のいずれかに記載の除塵脱臭フィルタ。
【請求項5】
前記枠体を金属で形成し、その外周面を布部材で覆った請求項1乃至4のいずれかに記載の除塵脱臭フィルタ。
【請求項6】
前記除塵脱臭フィルタが、トナーを定着させるプリンタ装置の排気路に装着されるものである請求項1乃至5のいずれかに記載の除塵脱臭フィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−67263(P2011−67263A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219101(P2009−219101)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(593107373)株式会社アクシー (10)
【Fターム(参考)】