説明

除細動器の電極テスト

【課題】電極テストを改善した除細動器を提供する。
【解決手段】複数の電極3と、複数の電極を相互に電気接続する接続部5と、複数の電極に接続された除細動回路9と、電極テストシステム7とを具える除細動器であって、テスト開始信号を生成するように動作可能なテスト開始デバイスと、直流電圧テスト信号を生成するように動作可能なテスト信号発生器15と、複数の電極に接続したテスト信号スイッチであって、テスト開始信号を受信した際に、複数の電極をテスト信号発生器に接続して複数の電極に直流電圧テスト信号を通過させるように動作可能なテスト信号スイッチ17と、テスト信号スイッチに接続されたテスト処理デバイス19であって、直流電圧電極帰還信号を受信して当該電極帰還信号を処理して電極の合格のテスト結果又は故障のテスト結果を決定するテスト処理デバイスとを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動器の電極テストに関し、特に電極の電気的完全性のテスト、すなわち電気信号を伝導する電極の機能テストに関する。
【背景技術】
【0002】
除細動器は、心停止後に患者の心臓に「ショック」を与える、すなわち電気信号を与えるために用いられる。ショックの効果は、心停止から時間が増加するにつれて有意に減少することが調査によって示されている。したがって、除細動器を用いてできる限り早く患者の心臓に電気信号を与えることが重要である。このため、現在では病院だけでなく様々な公共の場所で頻繁に除細動器を見かける。このような場所では、除細動器を使用することは殆どないかもしれない。除細動器の電極は通常、ずっと梱包されたままである。除細動器の電極の電気的完全性がこの間に維持されているかどうか、あるいは完全性を損なう場合には、除細動器の潜在的なユーザがこの情報を利用できるかどうかが重要である。これは、除細動器の技術あるいは操作した経験が殆どない一般人あるいは経験が全くない一般人が除細動器を使用する場合には、特に重要である。したがって、電極の完全性をテストできる手段を具えた除細動器を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、複数の電極と、複数の電極を相互に電気接続する接続部と、複数の電極に接続された除細動回路と、電極テストシステムとを具える除細動器であって、テスト開始信号を生成するように動作可能なテスト開始デバイスと、直流電圧テスト信号を生成するように動作可能なテスト信号発生器と、複数の電極に接続したテスト信号スイッチであって、テスト開始信号を受信した際に、複数の電極をテスト信号発生器に接続して複数の電極に直流電圧テスト信号を通過させるように動作可能なテスト信号スイッチと、テスト信号スイッチに接続されたテスト処理デバイスであって、直流電圧電極帰還信号を受信し、当該電極帰還信号を処理して電極の合格のテスト結果又は故障のテスト結果を決定するテスト処理デバイスとを具えた除細動器を提供することができる。
【0004】
テスト開始デバイスは、テスト開始信号を自動的に生成することができる。テスト開始デバイスは、例えば自動除細動器セルフチェックプロセスの一部として、電極テストが必要であると決定した場合にテスト開始信号を生成することができる。テスト開始デバイスは、手動刺激を受信した際にテスト開始信号を生成することができる。
【0005】
電極テストは、規則的な間隔、例えば週1回、月1回実行してもよいし、又は患者にショックを与える前、あるいは除細動器の電源投入時に実行してもよい。
【0006】
テスト信号発生器は、一定に調整した直流電圧テスト信号を生成する直流電圧発生器を具えることができる。直流電圧テスト信号は、テスト信号プロセッサと互換性のある任意の電圧値を有することができる。直流電圧テスト信号は、約3Vオーダーの電圧値を有することができる。
【0007】
テスト信号スイッチは、直流電圧テスト信号を複数の電極に通過させ、同時に直流電圧電極帰還信号をテスト処理デバイスに通過させるように動作可能なデュアルスイッチングデバイスを具えることができる。テスト信号スイッチは、トランジスタなどの電子スイッチングデバイスを具えることができる。あるいは又はさらに、テスト信号スイッチは電磁リレーなどの電磁気スイッチングデバイスを具えることができる。テスト信号スイッチは、アナログマルチプレクサを具えることができる。
【0008】
テスト処理デバイスは、トランジスタ又はトランジスタと抵抗との組み合わせを具えることができる。テスト処理デバイスは、電極帰還信号を受信した際に、第1の状態を呈して故障のテスト結果を表す信号を生成するか、又は第2の状態を呈して合格のテスト結果を表す信号を生成するように構成することができる。テスト処理デバイスは、複数の電極が電気的に伝導せず、テスト信号発生器とテスト処理デバイスとともに開回路を形成し、直流電圧電極帰還信号が直流電圧テスト信号とほぼ同じ電圧値を有する場合に第1の状態を呈することができる。テスト処理デバイスは、複数の電極が電気的に伝導し、テスト信号発生器とテスト処理デバイスとともに閉回路を形成し、直流電圧電極帰還信号が約200mVオーダーの電圧値を有する場合に、第2の状態を呈することができる。
【0009】
テスト処理デバイスは、除細動器のプロセッサに電極の合格のテスト結果を表す信号を送信することができ、当該プロセッサは除細動回路による除細動信号の生成を許可する。テスト処理デバイスは、除細動器のプロセッサに電極の故障のテスト結果を表す信号を送信することができ、当該プロセッサは除細動回路による除細動信号の生成を禁止する。テスト処理デバイスは、除細動器のプロセッサに電極の故障のテスト結果を表す信号を送信することができ、当該プロセッサが故障のテスト結果を表す警報を除細動器に出力させる。警報は、可聴式警報とすることができる。警報は、除細動器に設けられた警報灯の点灯などの可視式警報でもよい。
【0010】
テスト開始デバイスは、プロセッサを具えることができる。テスト処理デバイスは、プロセッサを具えることができる。テスト開始デバイス及びテスト処理デバイスは、共通のプロセッサを具えてもよい。テスト開始デバイスのプロセッサ及び/又はテスト処理デバイスのプロセッサは、除細動器コントローラに設けることができる。
【0011】
電極テストシステムのテスト開始デバイス、テスト信号発生器、及びテスト処理デバイスはそれぞれ、ハードウェアで実装することができる。テスト開始デバイス、テスト信号発生器、及びテスト処理デバイスはそれぞれ、別個の集積回路に実装するか、又は1つの集積回路あるいは1以上の集積回路に実装することができる。
【0012】
テスト中に複数の電極を相互に電気接続する接続部は、複数の電極を格納するパッケージングに設けることができる。パッケージングは、一方の電極から他方の電極への導電路を提供することができる。導電路は、複数の電極に設けたゲルを覆うパッケージングライナーに開口部を設けることによって得ることができ、これにより、パッケージングに配置した場合に、露出したゲルを介して複数の電極が接続される。
【0013】
除細動回路は、複数の電極に接続された患者インピーダンス測定システムを具えることができる。除細動器は、除細動回路に接続された除細動器コントローラを具えることができる。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、除細動器の複数の電極の導電率をテストする方法であって、テスト中に複数の電極を相互に接続するステップと、テスト開始信号を生成するステップと、直流電圧テスト信号を生成するステップと、テスト開始信号を受信した際に、テスト信号スイッチを作動し、直流電圧テスト信号を複数の電極に通過させるステップと、複数の電極から直流電圧電極帰還信号を受信し、当該電極帰還信号を処理して電極の合格のテスト結果又は故障のテスト結果を決定するステップとを具える方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第1の態様に係る除細動器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、本発明の第1の態様に係る除細動器の概略図である図面のみを参照して、実施例により本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図は、複数の電極3と、テスト中に複数の電極を相互に電気接続する接続部5と、電極テストシステム7と、除細動回路9と、患者信号受信機11と、除細動器コントローラ13とを具えた除細動器1を示している。電極テストシステム7は、テスト信号発生器15と、テスト信号スイッチ17と、テスト処理デバイス19とを具える。電極テストシステム7はさらにテスト開始デバイスを具え、この実施形態では、テスト開始デバイスを除細動器コントローラ13に設ける。除細動器1の構成要素は、構成要素間の電気信号を送受信するため、図に示すように相互に接続される。
【0018】
除細動器1を使用して患者に除細動信号を適用するとき、複数の電極3は電気的完全性、すなわち電気信号を伝導する機能を有していなければならない。これは、電極テストシステム7を用いて電極の導電率をテストすることによって決定される。
【0019】
複数の電極3は、テスト中に接続部5を介して相互に抵抗接続される。この実施形態では、複数の電極の接続部5が複数の電極を格納するパッケージングに設けられ、各電極にゲルを設ける。パッケージングは、一方の電極から他方の電極への導電路を提供することができる。導電路は、複数の電極に設けたゲルを覆うパッケージングライナーに開口部を設けることによって得ることができ、これにより、複数の電極は、パッケージングに配置した場合に、露出したゲルを介して接続される。しかしながら、複数の電極を相互に電気接続するのに他の接続手段を使用してもよいことを認識することができる。
【0020】
電極テストシステム7は、以下のように動作する。テスト開始デバイスとして動作する除細動器コントローラ13は、自動除細動器セルフチェックプロセスの一部として電極テストが必要であるとコントローラ13が決定した場合に、テスト開始信号を生成する。テスト開始デバイスはテスト信号スイッチ17にテスト開始信号を送信し、テスト信号スイッチは除細動回路9から複数の電極3を切り離し、テスト信号発生器15に複数の電極3を接続するように動作する。テスト信号発生器15は一定に調整した直流電圧テスト信号を生成し、当該直流電圧テスト信号は抵抗器(図示せず)及びテスト信号スイッチ17を介して複数の電極3に加えられる。得られた直流電圧電極帰還信号は、テスト処理デバイス19に加えられる。
【0021】
テスト処理デバイス19は、トランジスタ(図示せず)を具えており、当該トランジスタは、テスト処理デバイス19が受信した電極帰還信号に従って第1の状態又は第2の状態を呈することができる。複数の電極3が接続していない場合、電極帰還信号はテスト信号発生器15によって生成された、一定に調整した電圧信号の直流電圧値をほぼ有している。このような電極帰還信号を受信した場合、トランジスタが第1の状態(オン)を呈し、故障のテスト結果を表す故障信号を生成する。複数の電極3が接続している場合、電極帰還信号は約200mVの直流電圧値を有する。このような電極帰還信号を受信した場合、トランジスタが第2の状態(オフ)を呈し、合格のテスト結果を表す合格信号を生成する。
【0022】
テスト処理デバイス19が電極3の合格のテスト結果を決定する場合、テスト処理デバイスは除細動器コントローラ13に合格信号を送信し、当該コントローラは除細動回路9による除細動信号の生成を許可する。電極の合格のテスト結果は、複数の電極3が抵抗接続され、複数の電極3の接続部の電気的完全性が損なわれておらず、電極の構成が高い確率で規格の範囲内にあることを示している。テスト処理デバイス19が電極3の故障のテスト結果を決定する場合、テスト処理デバイスは除細動器コントローラ13に故障信号を送信し、当該コントローラは除細動回路9による除細動信号の生成を禁止する。テスト処理デバイス19はさらに、故障のテスト結果を表す警報信号を出力することができ、当該テスト処理デバイスは可聴式警報及び/又は可視式警報(例えば、除細動器1に設けられた警報灯の点灯)といった警報を生成するのに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極と、前記複数の電極を相互に電気接続するための接続部と、前記複数の電極に接続された除細動回路と、電極テストシステムとを具える除細動器であって、
テスト開始信号を生成するように動作可能なテスト開始デバイスと、
直流電圧テスト信号を生成するように動作可能なテスト信号発生器と、
前記複数の電極に接続したテスト信号スイッチであって、前記テスト開始信号を受信した際に、前記複数の電極を前記テスト信号発生器に接続して前記複数の電極に前記直流電圧テスト信号を通過させるように動作可能なテスト信号スイッチと、
前記テスト信号スイッチに接続されたテスト処理デバイスであって、直流電圧電極帰還信号を受信し、当該電極帰還信号を処理して前記電極の合格のテスト結果又は故障のテスト結果を決定するテスト処理デバイスとを具えることを特徴とする除細動器。
【請求項2】
請求項1に記載の除細動器において、前記テスト開始デバイスは、前記テスト開始信号を自動的に生成することを特徴とする除細動器。
【請求項3】
請求項2に記載の除細動器において、前記テスト開始デバイスは、自動除細動器セルフチェックプロセスの一部として電極テストが必要であると決定した場合に前記テスト開始信号を生成することを特徴とする除細動器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の除細動器において、前記テスト信号発生器は、一定に調整した直流電圧テスト信号を生成する直流電圧発生器を具えることを特徴とする除細動器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の除細動器において、前記テスト信号スイッチは、前記直流電圧テスト信号を前記複数の電極に通過させ、同時に前記直流電圧電極帰還信号を前記テスト処理デバイスに通過させるように動作可能なデュアルスイッチデバイスを具えることを特徴とする除細動器。
【請求項6】
請求項5に記載の除細動器において、前記テスト信号スイッチはアナログマルチプレクサを具えることを特徴とする除細動器。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の除細動器において、前記テスト処理デバイスは、電極帰還信号を受信した際に、第1の状態を呈して故障のテスト結果を表す信号を生成するか、又は第2の状態を呈して合格のテスト結果を表す信号を生成するように構成されていることを特徴とする除細動器。
【請求項8】
請求項7に記載の除細動器において、前記テスト処理デバイスは、前記複数の電極が電気的に伝導せず、前記テスト信号発生器と前記テスト処理デバイスとともに開回路を形成し、前記直流電圧電極帰還信号が前記直流電圧テスト信号とほぼ同じ電圧値を有する場合に、前記第1の状態を呈することを特徴とする除細動器。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の除細動器において、前記テスト処理デバイスは、前記複数の電極が電気的に伝導し、前記テスト信号発生器と前記テスト処理デバイスとともに閉回路を形成し、前記直流電圧電極帰還信号が約200mVオーダーの電圧値を有する場合に、前記第2の状態を呈することを特徴とする除細動器。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の除細動器において、前記テスト処理デバイスは、前記除細動器のプロセッサに前記電極の合格のテスト結果を表す信号を送信し、当該プロセッサは前記除細動回路による除細動信号の生成を許可することを特徴とする除細動器。
【請求項11】
除細動器の複数の電極の導電率をテストする方法であって、
テスト中に前記複数の電極を相互に接続するステップと、
テスト開始信号を生成するステップと、
直流電圧テスト信号を生成するステップと、
前記テスト開始信号を受信した際に、テスト信号スイッチを作動し、前記直流電圧テスト信号を前記電極に通過させるステップと、
前記電極から直流電圧電極帰還信号を受信し、当該電極帰還信号を処理して前記電極の合格のテスト結果又は故障のテスト結果を決定するステップとを具えることを特徴とする方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−63265(P2013−63265A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−193234(P2012−193234)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【出願人】(503338457)ハートサイン テクノロジーズ リミテッド (8)
【Fターム(参考)】