説明

除草剤塗布方法および塗布用刷毛具

【課題】 圃場地、果樹園地、あるいは鉢植土などに生育する植物群域から、特定植物を選んで除草剤を適用する方法と、その器具を提供すること。
【解決手段】 植物群域における生育植物のうち、除草剤を塗布したい特定植物を選んで、筆状刷毛具29の筆部30によって、液状除草剤を毛筆文字を書く如く、除草剤塗布部26、27、あるいは28に描く如く、前記特定植物に液状除草剤を部分的に塗布する方法と器具を提供した。
散布式のように、植物群全域に液状除草剤を散布して適用する場合に比較して、除草剤の非適用植物には除草剤を塗布せずに、除草剤を適用すべき特定植物を選んで、除草剤の適用ができるので、除草剤の使用量を著しく低減化することができる。また、物理的な選択除草作業に比較して、時間、労力などの負担を大幅に低減化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草剤を生育植物群域に適用する方法と、除草剤の塗布用器具に係わり、さらに詳しくは液状除草剤の塗布に適用される発明である。
【背景技術】
【0002】
農薬には、殺虫、殺ダニ、殺線虫、あるいは殺鼠などを対象とした有害昆虫・有害動物防除剤、殺菌などを対象とした有害微生物防除剤、除草を対象とした除草剤(雑草防除剤)、植物の生長促進などを対象とした植物生長調節剤などがある。
また、製剤化された農薬には、水溶液剤、乳剤あるいは水和剤などの液状農薬、粉剤、粒剤などの固形状農薬、その他ガス剤、薫煙剤、エアゾル(煙霧剤)などがある。
製剤化された農薬は、その態様によってそれぞれ植物への適用方法が考慮されている。
【0003】
液状薬剤を植物に適用する方法は、スプレ−式や散水式などの散布法によって、植物に、ほぼ均等に散布するのが普通である。
例えば、有害昆虫・有害動物防除剤や有害微生物防除剤は、生育植物群にほぼ均等に散布する方法がとられ、生育植物群全体に作用を及ぼす。
除草剤については適用対象が域内全体の雑草を除草する必要がある開墾地などの場合、植物生長促進剤については鉄道線路、道路などの路盤法部などの強化の場合は、生育する雑草全体が対象ゆえ、均等に散布する方法がとられる。
【0004】
次に、除草剤について述べれば、除草剤には選択的除草剤と非選択的除草剤とがあり、前者にはホルモン型と非ホルモン型とがあり、後者は主としてホルモン型である。
生育する雑草群などの植物全体が除草の対象であれば、非選択的除草剤の適用が可能である。
しかしながら、圃場地、果樹園地、あるいは鉢植土などに生育する植物群域に、除草剤を適用するとき、除草作用を必要とする植物、および除草作用を回避しなければならない植物、例えば育成植物、栽培植物などに区別なく全般的に散布する場合には、除草作用を回避しなければならない植物に害がないように、選択的除草剤を適用する必要がある。
【0005】
非選択的除草剤の例をあげれば、接触型のフェノ−ル系、移行型のジニトロアニリン系などがある。
接触型とは薬剤が付着した部分にだけ障害を与える型で、移行型とは薬剤が吸収された植物体内を移動して除草活性を示す型をいう。
選択的除草剤の例をあげれば、移行型のフェノキシ酢酸系除草剤や安息香酸系除草剤は、ホルモン型除草剤で、広葉雑草を枯らし、イネ科植物には効果が弱いとされている。
また、移行型の尿素系除草剤には非ホルモン型で光合成阻害型除草剤があり、イネそのものには効果を示さないが、イネ科雑草には殺草力を示すことから、禾穀類、野菜畑、果樹園などの除草に使われている。
【0006】
選択的除草剤の適用以外に、植物の特定部分、あるいは植物群において植物種を選択して、器具などを用いて農薬を適用することも行われている。
【特許文献1】 特開2003−137703
【特許文献2】 特開平7−289102
【特許文献3】 実開平5−9283
【0007】
また、栽培植物域および雑草群域において、有益な雑草を起用することが行われている。
【非特許文献1】 フル−ツひろしま;24巻、4号、p.1〜3、JA広島果実連(2004.4)
なお、前記文献の引用や説明などにおいては、その文献の表現をそのまま用いるものとする。
【0008】
「特許文献1」は、植物の有害生物防除剤と有害生物防除方法に関する開示で、植物の病巣患部に防除剤を塗布することが記載されている。
「特許文献1」の段落番号「0052」に、「・・具体的には、1)病斑部において病巣患部の樹皮の削り取りを行わずに、病斑部分に本発明の防除剤を塗布する、2)病班部における重症部分の樹皮のみを削り取り、然る後に病班部全体に本発明の防除剤を塗布する、又は、3)病巣患部の樹皮を完全に削り取り、然る後に本発明の防除剤を塗布すること等により行われる。また、この方法を実施する場合には、必要に応じて、塗布量を増加したり、塗布処理を数回繰り返すと、本発明の防除剤の治癒効果を更に確実なものとすることができる」、との開示がある。
かように、塗布とは記載しているが、如何にして塗布するかの開示はない。
【0009】
「特許文献2」は、作物の根圏に薬剤を施用する施用容器およびその方法に関する開示である。
「特許文献2」の「要約」の「構成」欄に、「円筒状、円錐台状、多角筒状又は多角錐台状のパイプ構造からなり、かつ、中途部に薬剤(農薬)3を保持させた容器本体の1の先端を土壌中に挿し込み、容器本体1の上部開口4から流入する雨水又は灌水により溶けた薬剤3を、容器本体1の下部開口2から作物の根圏に施用せしめることを特徴とする」、との開示がある。
また、「特許文献2」の段落番号「0004」に、「・・作物が最も吸収しやすい根圏内部又はその周辺に直接農薬などの薬剤を施用し、薬効の向上を図るとともに施用薬量を必要最小限に抑え、一方、作物の苗を定植するときは支柱としての役割も果たしうる方法及び施用容器を提供することにある」、との開示がある。
かように、「特許文献2」には、植物の根部への薬剤の注入方法と器具の開示がなされている。
【0010】
「特許文献3」は、芝生などへの農薬塗布装置に関する開示である。
「特許文献3」の段落番号「0004」に、「・・芝生等の防除装置において、前後に2本平行に農薬塗布用スポンジを貼付した農薬噴出管を横架し、それぞれの農薬噴出管にホ−スを介して農薬を供給し、一方の農薬塗布用スポンジを正転し、他方の農薬塗布用スポンジを逆回転すべく構成したものである」、との開示がある。
「特許文献3」の段落番号「0005」には、「・・1本の農薬塗布用スポンジ4が進行方向に沿って回転し、もう1本が逆回転することによって草の葉の裏側まで農薬を塗布する事が出来るのである」、との開示がある。
かように、スポンジロ−ラ−による農薬塗布装置の開示がなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
圃場地、果樹園地、あるいは鉢植土などに生育する植物群域に対して液状除草剤を適用する場合に、スプレ−式や散水式などの散布法による場合は、栽培植物など除草作用を回避しなければならない植物には除草作用のない、選択的除草剤を適用する必要がある。
除草剤は多数開発されていて、その中で多くの選択的除草剤が使われているものの、防除したい雑草と育成したい植物は、同じ植物であるばかりでなく、分類学上きわめて近縁のものも多い。
したがって、除草剤の選択性を利用しての適用については、大変厳しい現実がある。
【0012】
例えば、「非特許文献1」に記載されているように、混在して生育する雑草群のうち、ナギナタガヤを残してこれを繁茂させることは、果樹園などの場合に有益であり、これを残し、他の雑草には除草剤を適用した方がよい場合がある。
【0013】
圃場地、果樹園地、あるいは鉢植土などに生育する植物群域に対し除草剤を適用する場合に、栽培植物は勿論のこと、雑草群についても有益で残さなければならない種類が混在することが多い。
このような場合に、該当する選択的除草剤がないか、あるいは使用できない場合に、人手による手作業や機械的な除草手段を用いざるを得ず、時間的、労力的などの負担が極めて大きいのが現状となっている。
除草剤において、植物群域から必要とする植物種類を除いて、特定の植物に部分的に除草剤を適用する方法があれば、選択的除草剤を使用せずに、非選択的除草剤も任意に適用でき、かような方法と器具などの提供が、当業関係者において望まれているところである。
【0014】
本発明は、上記従来の課題を考慮して、圃場地、果樹園地、あるいは鉢植土などに生育する植物群域から、植物種類を選んで除草剤を適用し、特定植物に対して部分的に除草剤を塗布する方法と、器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者はかかる課題を達成すべく鋭意検討の結果次の発明に至ったものである。
すなわち、植物群に液状除草剤を適用する方法において、圃場地、果樹園地、あるいは鉢植土などにおける生育植物の植物群域のうち、例えば、図1における植物群1において、除草剤を適用しない非塗布植物5を除いて、液状除草剤を塗布したい特定植物を選んで、前記特定植物に部分的に液状除草剤を塗布する。
一例として図1の植物群1で説明すれば、植物群1における液状除草剤を塗布する特定植物の○印部、つまり特定植物(イ)6については、塗布位置10および11、特定植物(ロ)7については、塗布位置12、13、14および15、特定植物(ハ)8については塗布位置16、17および18の位置に、筆状刷毛具によって前記液状除草剤を、毛筆文字を書くように、例えば、図2の中図24の塗布部26に示す如く、移行型の液状除草剤を葉先などに部分的に塗布することを特徴とする、植物群に液状除草剤を塗布する方法の発明に至ったものである。
【0016】
また、植物群に液状除草剤を塗布する器具において、図3に描く如く、前記筆状刷毛具の筆状刷毛部36の後方部(図3では右側)に、前記筆状刷毛部に連なる前記液状除草剤を収容する容器部34を備えていて、前記容器部は軟質樹脂製で、人手の握り部を兼ねていて、前記容器部は人手による握り強さに応じて変形し、前記筆状刷毛部分へ送られる前記液状除草剤の送り量の調整が可能になっていることを特徴とする、液状除草剤塗布用の容器兼用人手握り部を具備する筆状刷毛具の発明である。
【0017】
さらに、植物群に液状除草剤を塗布する筆状刷毛具において、図4ならびに図5に描く如く、前記容器部が任意に交換可能なカ−トリッジ式になっていることを特徴とする、液状除草剤塗布用のカ−トリッジ式容器兼用人手握り部を具備する筆状刷毛具の発明である。
【発明の効果】
【0018】
(1) スプレ−式や散水式などの散布方法のように、植物群全域に液状除草剤を散布して適用する場合に比較して、除草剤の非適用植物には除草剤を塗布せずに、除草剤を適用すべき特定植物を選んで、除草剤の適用ができる。
(2) 液状除草剤を筆状刷毛具によって塗布するので、適用効率のよい葉先部などを選択して、また襞状部、凹状部、裏側部などにもほぼ完全に塗布することができるので、付着効率がよく、除草剤の作用を高めることができる。
したがって、除草剤の使用量を著しく低減化することができる。
(3) 散布法においては選択的除草剤の使用が必須であるが、非選択的除草剤も使用できるので、除草剤の使用範囲が拡大する。
(4) 植物群域に液状除草剤を散布して適用する場合に比較して、周囲空気などの環境を適用薬剤で汚染させることなく、環境負荷が低減化できる。
(5) 家庭などで鉢植土などに生育する植物群に、除草剤を適用する場合に、本発明を適用すれば、ガ−デニングなどにおける鉢植え植物の手入れが簡便化する。
(6) 人手による手作業や機械的な除草手段による場合に比較して、時間的、労力的などの面の負担を大幅に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の実施の形態を実施例にもとづき図面などを参照して説明する。
図1は、圃場に生育する植物群に筆状刷毛具で液状除草剤を塗布する方法を説明するための一例の略図である。
【0020】
図1は、圃場の畑地の土壌2に植物群1が生育している様子を示していて、前記液状除草剤を適用したくない非塗布植物5、ならびに前記液状除草剤を適用したい特定植物(イ)6、特定植物(ロ)7、特定植物(ハ)8が混在して植物群域として生育している様子を略図として描いている。
図1に適用した前記液状除草剤は、移行型除草剤を用いた例で描いている。
前記液状除草剤の塗布位置は、塗布植物(イ)6については、布位置10および11、塗布植物(ロ)7については同じく塗布位置12、13、14および15、塗布植物(ハ)8については同じく塗布位置16、17および18であることをおのおの示していて、塗布位置をおのおの○印で示している。
【0021】
図2は、図1において○印で示すところの、液状除草剤を塗布する位置と方法を説明するための略図で、前記液状除草剤を適用したい植物が土壌2に生育している状態を示す一例の略図である。
図2の左図23は、液状除草剤を適用したい特定植物の未塗布状態を描き、図2の中図24は前記液状除草剤を部分的に塗布した前記特定植物で、上方葉先位置に液状除草剤の部分塗布部26を示し、黒色部でその位置を示している。
また、中図24には、前記特定植物の幹部位置に液状除草剤の部分塗布部27を示し、黒色部でその位置を示している。
図2の右図25は、前記液状除草剤部分塗布植物で、前記特定植物の根元近傍に液状除草剤の部分塗布部28を描き、黒色部でその位置を示している。
【0022】
図2の中図24においては、液状除草剤として移行型除草剤を使用した場合であり、前記植物の上方の葉先の液状農薬の部分塗布部26を示している。
移行型除草剤は、塗布され吸収された部分から植物体内を移動しながら除草活性を示す型であるので、基本的には適用植物のどの塗布位置でもその植物全体に作用し、その植物全体が枯れる。
しかしながら、移行型除草剤であっても塗布場所は、植物の葉部、好ましくは葉部の葉先が効果的である。
何故なら、植物は主として葉部で光合成を行うゆえ、葉部で作られた養分が葉部から植物全体に行き渡る経路の起点でもあるから、この経路によって除草剤の作用がその植物全体に及ぶからである。
しかしながら、除草剤を塗布すべき特定植物の葉部が、除草剤の非塗布植物と近接していたり、交錯しているなど止むを得ぬ場合は、適用する植物の葉部以外の位置を部分塗布部としてもよく、中図24に幹部を部分塗布部27とした例を示し、黒色部でその位置を描いている。
【0023】
右図25においては、接触型除草剤を使用した場合であり、前記特定植物の根元近傍位置に液状除草剤の部分塗布部28を示しているが、接触型除草剤は付着した部分にだけ障害を与える型であるので、適用植物全体を枯らすためには、かように根元近傍位置に部分的に塗布する必要がある。
【0024】
また、図2の右図25には、筆状刷毛具29の略図を描き、前記筆状刷毛具の筆部30で植物の根元近傍に前記接触型除草剤を塗布している様子を描いている。
人手握り部31は筆状刷毛具の柄の部分で、描いてはいないが、塗布作業者が塗布作業をするために手で握る部分である。
このように、植物群域中から除草したい特定植物種を選んで、部分的に液状農薬を筆状刷毛具で液状除草剤を塗布する。
筆状刷毛具は、硯あるいは墨汁容器などを用いて毛筆の筆先に墨液を含ませながら字を書く如く、逐一筆状刷毛部に液状除草剤を含ませながら植物に塗布してもよい。
しかしながら、塗布植物の周辺の汚染防止や塗布効率などを上げるため、万年筆やフェルトペンの機能の如く、液状除草剤を充填し、筆部に供給する機能をもつ筆状刷毛具によってもよい。
【0025】
図3は、液状除草剤の容器部兼用人手握り部を具備する筆状刷毛具33の一例の側面略図であり、非使用時に用いるキャップ部については描くのを省略している。
図3の前記筆状刷毛具は、筆状刷毛部36の後方に液状除草剤の容器を有することがその構成であり、図3はその一例を示す略図である。
図3の容器部兼用人手握り部34は、液状農薬を収容する軟質樹脂製の容器部となっていて、容器部兼用人手握り部34の、ハッチング部35で示す部分断面略図に示すように、容器の壁面37で囲まれた容器室部38を形成し、ここに前記液状除草剤が充填されている。
前記容器部兼用人手握り部は軟質樹脂製であるので、塗布作業者の人手による握り強さに応じて変形し、オリフィス39を通って押し出され、筆状刷毛部36、筆部30へ送られる前記液状除草剤の送り量の調整が可能になっている。
【0026】
図4は、カートリッジ式容器部を具備する筆状刷毛具43の側面略図である。
なお、非使用時に用いる筆部30に被せるキャップは描くのを省略している。
図4の前記筆状刷毛具は、筆状刷毛部46の後方に、前記筆状刷毛部に着脱可能なカ−トリッジ式容器を有することがその構成であり、図4はその一例を示す略図である。
図4に描く、カ−トリッジ式容器兼用人手握り部44は、液状除草剤を収容する軟質樹脂製の容器部となっていて、ハッチング部45で示す部分は、筆状刷毛部46とカ−トリッジ式容器部兼用人手握り部44との嵌合部の部分断面略図である。
前記ハッチング部で示すように、容器の壁面47で囲まれた容器室部48を形成し、ここに液状除草剤が充填していて、この部分が任意に交換可能なカ−トリッジ式になっている。
【0027】
また、図4に描くカ−トリッジ式容器兼用人手握り部44は軟質樹脂製で、容器室部48に充填されている液状除草剤が、尖端部52に通じるオリフィス50を通って筆状刷毛部46に送られ、人手による握り強さを調節することによって前記液状除草剤の筆状刷毛部46および筆部30への送り量の調整が可能になっている。
【0028】
図5は、図4におけるカ−トリッジ式容器兼用人手握り部44と、筆状刷毛部46の境界部であるハッチング部45で示す部分の、おのおのの嵌合前の状態を描いている。
図5の左図55は、嵌合前の筆状刷毛部46を描き、ハッチング部57は、嵌合前の筆状刷毛部の右側の部分断面略図である。
図5の右図56は、筆状刷毛部46に嵌合前のカ−トリッジ式容器兼用人手握り部44を描き、ハッチング部58は、嵌合前のカ−トリッジ式容器兼用人手握り部44の左側の部分断面略図である。
【0029】
図5の左図55に描く筆状刷毛部46の凸状嵌合部49を、図5の右図56に描くカ−トリッジ式容器兼用人手握り部44の隔壁部59に、凸状嵌合部49の尖端部52を突き刺すように凹状嵌合部51に挿入嵌合すると、筆状刷毛部46とカートリッジ式容器兼用人手握り部44とが合体し、図4に描く如きカ−トリッジ式容器部兼用人手握り部を具備する筆状刷毛具となる。
【0030】
次に、本発明の筆状刷毛具の各部材について、主として図3において説明する。
繊維集合体である筆部29は、構造的には毛筆や一般塗料用の刷毛に準拠した構造である。
しかしながら、図2の右図25に描く筆部30や、図3に描く筆部30のように、前記筆部の先端部が習字用毛筆の穂先様に先細り状に必ずしもなっている必要はなく、一般の塗料用の刷毛の如く刷毛の根元と先端部がほぼ平行になっている形状でもよいが、これらも含めて本発明では筆状刷毛と表現している。
前記繊維集合体を構成する繊維は、動物のヘア、合成繊維など、塗料などの刷毛に用いられる繊維に準拠し、筆部30の長さは大凡3〜7cm程度である。
【0031】
液状除草剤を充填する機能をもつ図3の筆状刷毛具33や、図4の筆状刷毛具43の大きさについては、長さが大凡20〜50cm程度、直径が大凡2〜7cm程度がその目安であるが、要は作業者が手で持って塗布作業が容易にできる程度の大きさにする必要があり、本発明がこの値に限定されるものではない。
図3の容器兼用人手握り部34や、図4のカ−トリッジ式容器兼用人手握り部44の断面形状は、通常は円形であるが、四角形や他の多角形でもよい。
【0032】
前記容器兼用人手握り部は軟質樹脂製である必要があるが、軟質樹脂としてはPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエステル)、Ny(ナイロン)など、当業者に知られている軟質樹脂が使用できる。
使用樹脂の選択に当たっては、充填する液状除草剤の種類や性質などを考慮する必要がある。
容器の樹脂は充填する液状除草剤に溶けたり、侵されないことは勿論のこと、透湿度が低く、酸素、炭酸ガスあるいは窒素などのガス透過性が低い樹脂を用いることが望ましい。
したがって、PEやPPはガス透過性が高いので、充填液状除草剤の種類や性質などによっては採用できない場合もある。
【0033】
射出二軸延伸ブロ−成形法などによる二軸延伸PET容器は、透湿度が低く、ガス透過性が低いので、適合性の高い樹脂の一つである。
また、充填除草剤の種類によっては、樹脂壁の断面が異種樹脂の2層構造や多層構造の容器の使用が必要になることもあり、例えば、PE−Ny積層構造、PE−EVOH(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)積層構造、PE−EVOH−Ny積層構造などの使用が適合する場合もある。
充填液状除草剤の種類や性質などとの関連で、2層構造や多層構造を含めて、当業者に知られている樹脂を容器として選択して使用できる。
図3に描く容器兼用人手握り部34、並びに図4に描くカ−トリッジ式容器兼用人手握り部44は、充填除草剤の量が目視できるように、透明であることが望ましい。
【0034】
植物に塗布する、液状除草剤は、植物に塗布された薬剤がなるべく均一に付着し、長時間保持されることが望ましく、液状除草剤に展着剤を添加することが望ましい。
展着剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類などの非イオン界面活性剤、リグニンスルフォン酸塩などのアニオン界面活性剤などを用いることができるが、当業者に知られている展着剤が適宜使用できる。
また、塗布の様子が目視できるように、使用する液状除草剤が無色の場合、着色トレ−サを添加することが望ましい。
以上、主として図3に描く容器部兼用人手握り部を具備する筆状刷毛具の場合で説明したが、前記筆状刷毛具の部材の要件や前記農薬などの共通部分については、逐一液状農薬を筆状刷毛部に含ませながら植物に塗布する型の筆状刷毛具の場合、ならびにカ−トリッジ式容器部兼用人手握り部を具備する筆状刷毛具の場合とも同様である。
【実施例】
【0035】
「非特許文献1」に記載している雑草の一種である、ウシノケグサ属(Festuca)のナギナタガヤは、雑草に分類されるが、中国地方などの柑橘類の果樹園において保護用や堆肥用雑草として利用されている。
ナギナタガヤは秋季に播種し、10cm程度年内に芽を出し、翌春季に生長し、五月下旬には倒伏して枯れ、保護剤としてのわら敷きの代わりになり、やがて堆肥化して、土壌の物理的向上につながるので、これを利用する農法が採用されている。
柑橘類などの果樹園では、果樹下の農地に生育する雑草群のうちナギナタガヤを残し、他の雑草を除草した方がナギナタガヤが繁茂し、この雑草の利用性が高まるので、従来はナギナタガヤ以外の雑草を草取り作業で物理的に除去し、ナギナタガヤを繁茂させていたが、過大な労力と時間を必要としていた。
【0036】
そこで、本発明の部分塗布法を、本発明の筆状刷毛具によって実施した。
図4に示すカ−トリッジ式容器兼用人手握り部を具備する筆状刷毛具43を用意して、移行型である液状の安息香酸系除草剤を、カ−トリッジ式容器兼用人手握り部44に充填した前記筆状刷毛具を用意した。
【0037】
本発明を実施した場合と、実施しない場合との比較のため、ほぼ同様な環境と考えられるところの、柑橘類の果樹が栽培されている混合雑草域を2ケ所用意した。
前記両混合雑草域とも、秋季にナギナタガヤの種子を播種した。
一方の混合雑草群域においては、雑草がある程度生長した一月下旬に前記筆状刷毛具を用いて、混合雑草群域のナギナタガヤ以外の雑草群に、図2の中図24に示すように、移行型の前記液状除草剤を主としてその葉部分に塗布した。
他方の混合雑草群域は、そのままの状態で放置した。
四月上旬に観察したところ、前記筆状刷毛具を用いて、前記液状除草剤を部分塗布した混合雑草域では、ナギナタガヤがほぼ全面に青々と生育繁茂し、ナギナタガヤ以外の前記除草剤を塗布した雑草は枯れたことが確認された。
【0038】
前記液状除草剤塗布の方の果樹園は、五月下旬には前記ナギナタガヤが倒伏して枯れ、枯れた前記ナジナタガヤによる均一なわら敷き状態になり、翌年に堆肥となった。
他方のそのままの状態で放置した果樹園では、ナギナタガヤが他の雑草群に邪魔されて斑状に生育し、不均一で疎なわら敷き状態に留どまった。
【0039】
前記柑橘類の秋の収穫時には、後者に比較して前者の前記柑橘類の収穫量が2割ほど高くなった。
なお、前記筆状刷毛具を用いて、雑草群に塗布する労力と作業時間は、草取り作業で除去していた従来の物理的な除草方法の場合の大凡1/5程度であった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
除草すべき特定植物に液状除草剤を筆状刷毛具によって、特定植物ごとに任意位置に塗布することができ、また特定植物の襞状部、凹状部、裏側などにもほぼ完全に塗布することができる。
したがって、付着効率がよく、除草剤の作用を高めることができるので、除草剤の使用量を著しく低減化することがでる。
また、特定植物の部分的塗布場所は、葉先部の方が除草効率がよく、葉部は一般に植物の上部にあるゆえ、塗布作業に適しているといえる。
【0041】
また、コストの低い非選択的農薬が自由に使用できるので、除草剤の使用範囲が拡大するなど、農産物のコストの軽減化ができる。
さらに、植物群域に液状農薬を散布して農薬を適用する場合に比較して、周囲空気を適用除草剤で汚染させることなく、環境負荷が少なくなる。
また、人手による手作業や機械的な除草手段による場合に比較して、時間的、労力的な負担の大幅な低減が可能になる。
したがって本発明は、畑地などの圃場地、果樹園、鉢植地のほか、森林地、公園地、街路樹地などにも適用できるので、産業上の利用可能性が極めて広いと云い得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】 生育する植物群に液状除草剤を塗布する方法の説明略図
【図2】 液状除草剤を塗布する方法とその塗布位置の説明略図
【図3】 容器部兼用人手握り部を具備する筆状刷毛具の側面略図
【図4】 カートリッジ式容器兼用人手握り部を具備する筆状刷毛具の側面略図
【図5】 カ−トリッジ式容器兼用人手の握り部ならびに筆状刷毛部の嵌合前の部分略図
【符号の説明】
【0043】
1 植物群
2 土壌
5 除草剤の非塗布植物
6 除草剤塗布の特定植物(イ)
7 除草剤塗布の特定植物(ロ)
8 除草剤塗布の特定植物(ハ)
10、11 除草剤塗布の特定植物(イ)の塗布位置の例
12〜15 除草剤塗布の特定植物(ロ)の塗布位置の例
16〜18 除草剤塗布の特定植物(ハ)の塗布位置の例
23 左図;液状除草剤の未塗布植物略図
24 中図;液状除草剤を上方に部分的に塗布した植物
25 右図;液状除草剤を根元近傍に部分的に塗布した植物
26 液状除草剤の部分塗布部(黒色部)
27 液状除草剤の部分塗布部(黒色部)
28 液状除草剤の部分塗布部(黒色部)
29 筆状刷毛具
30 筆部
31 人手握り部
33 筆状刷毛具
34 容器部兼用人手握り部
35 ハッチング部;容器部兼用人手握り部の部分断面略図
36 筆状刷毛部
37 容器の壁部
38 容器の室部
39 オリフィス
43 筆状刷毛具
44 カ−トリッジ式容器部兼用人手握り部
45 ハッチング部;筆状刷毛部とカ−トリッジ式容器部との嵌合部の部分断面略図
46 筆状刷毛部
47 容器の壁部
48 容器の室部
49 凸状嵌合部
50 オリフィス
51 凹状嵌合部
52 尖端部
55 左図;嵌合前の筆状刷毛部
56 右図;嵌合前のカ−トリッジ式容器部兼用人手握り部の部分略図
57 ハッチング部;嵌合前の筆状刷毛部の右側の部分断面略図
58 ハッチング部;カ−トリッジ式容器部兼用人手握り部の左側の部分断面略図
59 隔壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物群に液状除草剤を適用する方法において、
圃場地、果樹園地、あるいは鉢植土などにおける生育植物の植物群域のうち、液状除草剤を塗布したい特定植物を選んで、
筆状刷毛具によって前記液状除草剤を、毛筆文字を書く如く前記特定植物に部分的に塗布することを特徴とする、植物群に液状除草剤を塗布する方法。
【請求項2】
植物群に液状除草剤を塗布する筆状刷毛具において、
前記筆状刷毛具の筆状刷毛部の後方部に、前記筆状刷毛部に連なる前記液状除草剤を収容する容器部を備えていて、
前記容器部は軟質樹脂製で、人手の握り部を兼ねていて、
前記容器部は人手による握り強さに応じて変形し、前記筆状刷毛部分へ送られる前記液状除草剤の送り量の調整が可能になっていることを特徴とする、
請求項1に記載する、容器兼用人手握り部を具備する液状除草剤塗布用の筆状刷毛具。
【請求項3】
植物群に液状除草剤を塗布する筆状刷毛具において、
前記容器部が任意に交換可能なカ−トリッジ式になっていることを特徴とする、
請求項1、および2に記載する、容器兼用人手握り部を具備する液状除草剤塗布用の筆状刷毛具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−321777(P2006−321777A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172910(P2005−172910)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(597073014)ロータリー株式会社 (5)
【出願人】(505221096)
【Fターム(参考)】