説明

除草用製剤

効果量のグリホサート酸と、効果量のオリザリンと、ポリアルキレンオキシド及びEO/PO共重合体などのその共重合体とを含む除草用懸濁剤である。また、本発明の除草用懸濁剤の製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリザリンと共にグリホサート酸を含む懸濁剤(suspension concentrate formulation)に関する。特に、本発明はグリホサート酸とオリザリンとを含む保存安定性のよい懸濁剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般名「グリホサート」としても知られているN−(ホスホノメチル)グリシンは、不要な植物の成長・増殖の抑制に広く使用されている出芽後除草剤(post-emergent herbicide)である。通常、標的植物の葉に塗布され、その後葉組織に吸収されて植物体全体に拡散する。従来より、グリホサートは水溶性のよい塩の水性組成物として塗布されている。市販のグリホサート製剤は、グリホサートをその任意の農業上許容される塩の水溶液として含むが、除草に有用なN−(ホスホノメチル)グリシンの塩の範囲は非常に広い(非特許文献1;本明細書に参照により援用する)。また、遊離酸形態のグリホサート自身は比較的水に溶けず、通常は任意の水溶性塩の形態で製剤化される。
【0003】
非特許文献2はグリホサート酸を含む製剤に関する。非特許文献2では、これらの公知のグリホサート塩製剤は吸収を向上させるために相当量の界面活性剤を必要とするというデメリットが教示されている。遊離酸形態のグリホサートを含む製剤は、良好な吸収性及び除草効果を得るために表面張力低減等の界面活性剤効果に依存する必要はないと考えられている。例えば、公知の41%グリホサートイソプロピルアミン塩液剤(SL剤)では、アミンエトキシレート系界面活性剤が約15%以上使用されており、これは明らかに望ましくない。
【0004】
また、本発明者らにより、グリホサートを他の有効成分と共に含む公知の製剤は懸濁性が非常に悪いことが明らかにされており、湿式篩い試験に合格できないことが多いことが知られている。これらの製品の経時による沈殿量は大きいため、多くの場合硬い石状の塊が保存容器の底に形成される。沈殿量が多いと、農作業者による噴霧の際のノズル詰まりの問題が悪化する。このような製剤を噴霧用希釈液又は溶液として調製すると、不溶物含有量が高いため所定時間が経過すると噴霧できなくなることが観察される。これは、本来ならば良製品である製剤を農作業者が拒絶することになることもあるため、明らかに望ましくない。
【0005】
本発明者らは、既存の40%ペンジメタリン懸濁剤(SC剤)と41%グリホサートイソプロピルアミン塩液剤(SL液剤)とを1:1で混合して20:20製剤を得ることを試みた。このプレミックスの懸濁性は23%であり、500BSSメッシュの篩い上に粒子が顕著に残留した。このことから、グリホサート塩とペンジメタリン以外の他のジニトロアニリン系除草剤(オリザリン等)とは互いに両立できないであろうという結論に達した。
【0006】
さらに、グリホサート塩とオリザリンとを含む従来の製剤は湿式スクリーン(#150)上に約30〜50%残留することがわかった。したがって、グリホサートを好適な形態で含む懸濁剤であって、従来製剤に係る詰まりの問題が解決され、かつ好ましくは標準湿式篩い分析における篩い残率が約0%〜約10%である懸濁剤が望まれている。
【0007】
また、文献に記載されている従来のグリホサート製造方法の多くは、酸形態のグリホサートを分離し、製剤化前に所望の塩に変換している。よって、グリホサートを酸形態で含む製剤は、製剤化前にグリホサートを所望な塩に変換する必要がないため好ましい。
【0008】
グリホサート酸を含む製剤は非特許文献3で述べられている。しかしながら、本文献ではグリホサート酸を水中で過剰量の脂肪族アミンと100℃で約1時間加熱し、製剤中に存在するグリホサート酸を塩に変換することが教示されている。
【0009】
特許文献1にはグリホサート誘導体を含む固形製剤が記載されている。かかる製剤は、界面活性剤を融解した後、溶剤に溶解したグリホサート化合物を得られた濃縮溶液に添加することにより調製されることが教示されている。溶剤はその後除去される。本公報ではグリホサート遊離酸を含む製剤は例示されていない。
【0010】
特許文献2には、グリホサート遊離酸と特定の界面活性剤とを含む水溶剤(water soluble powdery formulation)や流動性粒剤(granular free-flowing formulation)が記載されている。しかしながら、固形製剤には内在的なデメリットがいくつかある。多くの場合、除草剤は濃縮物とすることが望ましく、噴霧前に水と混合してエマルジョン噴霧剤とされうる。また、高除草剤含有量の製剤とすることも望ましく、これは固形製剤では必ずしも可能ではない。
【0011】
懸濁剤は溶剤を含まない水系粒子縣濁液を含むため、前記利点を有することが知られている。かかる除草剤の微粒子は塗布面に残留して容易に浸透し、また溶剤を含まないため着色や臭気の問題もない。
【0012】
したがって、遊離酸形態のグリホサートを含むことによって、製剤の除草効果を損なわず界面活性剤を相当量添加する必要がない懸濁剤を提供することが望まれる。
【0013】
一部のスルファニルアミド類は選択的出芽前除草剤(selective pre-emergent herbicide)として知られており、多くの雑草に対して効果的である。このようなスルファニルアミド類の一つに、オリザリンとして一般的に知られている4−(ジプロピルアミノ)−3,5−ジニトロベンゼンスルフォンアミドがある。オリザリンは、果樹、堅果樹、ブドウ園、バミューダグラス芝生、観葉植物における一年草や広葉雑草の抑制に使用される塗布用選択的出芽前除草剤である。
【0014】
特許文献3には、除草剤の回転式散布に有用な噴霧装置が開示されている。散布器から除草剤混合液を遠心力により吐出するように設計された装置を用いてN−ホスホノメチルグリシン系除草剤とスルファニルアミド系除草剤との公知の噴霧用混合液を使用する場合、均一な噴霧を得ることは困難である。
【0015】
特許文献4には、N−ホスホノメチルグリシンのエステル又はエステル酸付加物とオリザリンとの相乗的組み合わせが開示されている。
【0016】
特許文献5には、N−ホスホノメチルグリシンと、スルファニルアミド系除草剤と、高分子増粘剤とを含む除草用水系組成物であって、組成物100mlを25℃でFord B2カップの測定用オリフィスを通過させる時間が約20秒〜150秒となるように組成物を増粘させるのに十分な量の高分子増粘剤が含まれている除草用水系組成物が開示されている。かかる組成物は、特許文献3に開示されている回転式噴霧装置を用いて標的エリアへ送達されている。本発明者らが特許文献5に例示されている実験を試したところ、得られた製剤の懸濁性(%)は悪く、湿式篩い試験にも合格できないことがわかった。その結果、噴霧の際にノズル詰まりが観察された。また、何れの実施例にも遊離酸形態のグリホサートを含む懸濁剤は教示されていない。また、懸濁濃縮物として製剤化され、かつ、水よりも密度の大きい有効成分の場合、パッケージ製品中で沈殿する傾向があり望ましくない。
【0017】
したがって、グリホサートイソプロピルアンモニウム塩をオリザリンと組み合わせると即座に沈殿が起こり、物質系が均一でなくなりスプレーノズルがブロックされるため、噴霧に適さなくなることがわかった。グリホサートを塩形態で含む製剤の他のデメリットは界面活性剤を相当量必要とすることであり、これは明らかに望ましくない。
【0018】
特許文献6(全体を参照により本明細書に援用する)には、グリホサート酸を含む懸濁濃縮物を含む組成物と、当該懸濁濃縮物の製造方法とが開示されている。しかしながら、本公報ではグリホサート酸を他の除草剤と、特にはジニトロアニリン系除草剤と、更に特にはオリザリンと組み合わせることは検討されていない。したがって、本公報では、本発明の課題であるグリホサートとオリザリンとの物理的な非両立性の問題は検討されていない。
【0019】
以上より、当該技術分野では未達成なニーズである、オリザリンと遊離酸形態のグリホサートとを組み合わせて含む保存安定性のある懸濁剤を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許第206,537号明細書
【特許文献2】米国特許第5,118,338号明細書
【特許文献3】英国特許第2,131,327号明細書
【特許文献4】国際公開第1997/031535A1号
【特許文献5】欧州特許第0376910号明細書
【特許文献6】国際公開第2003/026429号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】J. E. Franz et al., Glyphosate: A Unique Global Herbicide, ACS Monograph 189, American Chemical Society, Washington, D.C., 1997, pp. 27-64
【非特許文献2】“A unique formulation of glyphosate in the acid form”, Volgas G, Roberts J, Wayland M and Alford B, Journal of ASTM International, Volume 5, Issue 4
【非特許文献3】BCPC Monogram No. 28, 1985, by D J Turner and P M Tabbush
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明の目的は、オリザリンと共にグリホサート酸を含む保存安定性のある懸濁剤を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、オリザリンと共にグリホサート酸を含む保存安定性のある懸濁剤であって、所望の懸濁性を有し、かつ、湿式篩い試験に合格する懸濁剤を提供することである。
【0024】
本発明の更に他の目的は、オリザリンと共にグリホサート酸を含む保存安定性のある懸濁剤であって、ノズル詰まりを発生させないため所定時間が経過した後でも噴霧に好適である懸濁剤を提供することである。
【0025】
本発明の更に他の目的は、オリザリンと共にグリホサート酸を含む保存安定性のある懸濁剤であって、標準湿式篩い分析(湿式スクリーン#150)における篩い残率が約0%〜約10%である懸濁剤を提供することである。
【0026】
本発明の更に他の目的は、オリザリンと共にグリホサート酸を含む保存安定性のある懸濁剤であって、製剤化前にグリホサート酸を塩に変換する必要が無い懸濁剤を提供することである。
【0027】
本発明の更に他の目的は、オリザリンと共にグリホサート酸を含む保存安定性のある懸濁剤であって、有機溶媒を含まない懸濁剤を提供することである。
【0028】
本発明の更に他の目的は、吸収性及び除草効果を損なわずに界面活性剤の含有量が大幅に低減された、保存安定性のある懸濁剤を提供することを目的とする。
【0029】
本明細書の残りの箇所及び請求項は、かかる目的及び他の目的の少なくとも1つを充足するものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
したがって、一態様において、本発明は、(a)除草効果量のグリホサート酸と、(b)除草効果量のオリザリンとを含む、保存安定性のある懸濁剤を提供する。
【0031】
更に他の態様において、本発明は、
(a)除草効果量のグリホサート酸と、
(b)除草効果量のオリザリンと、
(c)凍結防止剤、固化防止剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、殺生物剤、及び、充填剤から選ばれる少なくとも1つの農薬補助剤とを含む、保存安定性のある懸濁剤を提供する。
【0032】
他の態様において、本発明は、
(a)凍結防止剤、固化防止剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、殺生物剤、及び、充填剤から選ばれる複数の農薬補助剤を混合・均一化するステップと、
(b)除草効果量のグリホサート酸及びオリザリンをステップ(a)で得られた均一混合液に攪拌しながら添加してスラリーを得るステップと、
(c)得られたスラリーを粉砕装置で微粒子化するステップと、
(d)所定量の増粘剤を添加して懸濁剤を得るステップとを含む、保存安定性のある懸濁剤の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
N−ホスホノメチルグリシン(グリホサート)は、有機リン系の非選択性浸透性除草剤であり、葉から吸収させたり、樹幹に注入したり、樹木の根株に塗布する。グリホサートは、草、広葉植物、樹木植物を含む様々な植物の駆除に効果的である。通常、雑草(特に多年草)を除草するために散布されるが、森林用除草剤としてカット切株処理にも使用される。
【0034】
スルファニルアミド系除草剤であるオリザリンは、果樹、堅果樹、ブドウ園、バミューダグラス芝生、観葉植物における一年草や広葉雑草の抑制に使用される塗布用選択的出芽前除草剤である。
【0035】
驚くべきことに、オリザリンと共にグリホサート酸を含む濃縮剤は予想以上に保存安定性がよく、かつ、所望の懸濁性を示し、湿式篩い試験に合格することがわかった。
【0036】
したがって、一態様において、本発明は、(a)除草効果量のグリホサート酸と、(b)除草効果量のオリザリンとを含む、保存安定性のある懸濁剤を提供する。
【0037】
本態様に係る保存安定性のある組成物は、凍結防止剤、固化防止剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、殺生物剤、及び、充填剤から選ばれる少なくとも1つの農薬補助剤を更に含むことが好ましい。
【0038】
したがって、他の一態様において、本発明は、
(a)除草効果量のグリホサート酸と、
(b)除草効果量のオリザリンと、
(c)凍結防止剤、固化防止剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、殺生物剤、及び、充填剤から選ばれる少なくとも1つの農薬補助剤とを含む、保存安定性のある懸濁剤を提供する。
【0039】
本発明の製剤は懸濁性が良好でありまた沈殿しないため、長時間経過後であっても噴霧可能であることがわかった。よって、本発明の製剤は農作業者による噴霧中にノズル詰まりを生じさせない。驚くべきことに、本発明の保存安定性のある懸濁剤は、標準湿式篩い分析(湿式スクリーン#150)における篩い残率が約0%〜約10%であることがわかった。
【0040】
グリホサート酸又はオリザリンの「農薬的効果量」とは、グリホサート酸又はオリザリンを任意の量で付与したときに広葉雑草や草を必要なだけ防除する量をいう。特定の量は、農作物、防除対象の草、環境条件などの多くの要因に依拠するが、有効成分の使用量を適切に設定することは当業者の技術知識の範囲内であり、特に限定されるものではない。
【0041】
しかしながら、好適な実施形態において、オリザリン含有量は製剤全量に対して2%〜約40%の範囲でありうる。他の好適な実施形態において、グリホサート酸含有量は製剤全量に対して2%〜約50%の範囲でありうる。
【0042】
このように、本発明はオリザリンと共にグリホサート酸を含む懸濁剤を提供する。実際は、グリホサート塩を公知のオリザリンSC剤と混合することにより良製品が得られることを期待したが、逆に、オリザリンSC剤を市販のグリホサートSL剤及びSG剤と混合すると、最終製品の懸濁性が顕著に悪化し、湿式篩い試験に合格できなかった。また、グリホサートイソプロピルアンモニウム塩とオリザリンとを含む全ての製剤が、サスポ溶液剤(susposolution)や水和剤(顆粒水和剤)として懸濁性に問題があることがわかった。
【0043】
驚くべきことに、グリホサート酸と好ましくは除草効果量のオリザリンとを含む濃縮剤は、驚くほど懸濁性に優れ、湿式篩い試験に常に合格することがわかった。また、遊離酸形態のグリホサートはグリホサートの全ての塩と比較して生物活性がより高いため、本発明の製剤は低使用量でより高い生物活性が得られることがわかった。また、本発明の製剤は、タンクに入れたグリホサート/オリザリン混合液を散布する際に頻繁に起こるノズル詰まりの問題も同時に解決できることがわかった。
【0044】
さらに、オリザリンとグリホサートとの非両立性に起因するオリザリン/グリホサート塩の組み合わせに係る沈殿及び低保存安定性の問題は、本発明の保存安定性のある懸濁剤により解決されることが観察された。
【0045】
他の態様において、本発明は、
(a)凍結防止剤、固化防止剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、殺生物剤、及び、充填剤から選ばれる複数の農薬補助剤を混合・均一化するステップと、
(b)除草効果量のグリホサート酸及びオリザリンをステップ(a)で得られた均一混合液に攪拌しながら添加してスラリーを得るステップと、
(c)得られたスラリーを粉砕装置で微粒子化するステップと、
(d)所定量の増粘剤を得られたスラリーに添加して懸濁剤を得るステップとを含む、保存安定性のある懸濁剤の製造方法を提供する。
【0046】
本発明の製剤は、公知の農薬補助剤を少なくとも1つ又は複数含みうることが好ましい。かかる補助剤は、凍結防止剤、固化防止剤、界面活性剤又はその混合物、増粘剤、消泡剤、殺生物剤、及び、充填剤から選ばれうることが好ましい。
【0047】
凍結防止剤の例としては、尿素、メタノール、エチレングリコール、及び、プロピレングリコールから選ばれる化合物を含むことが好ましいが、他の凍結防止剤を排除するものではない。凍結防止剤の含有量は製剤全量に対して約0.2%〜約10%の範囲でありうることが好ましい。
【0048】
固化防止剤は通常、製剤の凝集化を防止するために使用されるものであり、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム;酢酸ナトリウム;メタ珪酸ナトリウム;硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸カルシウム;水酸化マグネシウム;無水塩化カルシウム;アルキルスルホコハク酸ナトリウム;酸化カルシウム、酸化バリウム;及び、沈降シリカから選ばれうる。本発明の一実施形態に係る固化防止剤は沈降シリカであることが好ましい。
【0049】
本実施形態において、固化防止剤の含有量は製剤全量に対して最大約2.0%でありうる。
【0050】
本発明の製剤は、少なくとも1つの界面活性剤を含むことが好ましい。また本発明の製剤は、分散剤及び/又は湿潤剤として機能しうる、界面活性剤の混合物を含むことが好ましい。
【0051】
好適な界面活性剤は水溶性又は非水溶性でありうり、ポリエトキシ化されてもよい、リグニンスルホン酸のナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩;無水マレイン酸共重合体の塩、ポリアクリル酸の塩;縮合フェノールスルホン酸の塩;ナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリアルキレンオキシド及びその共重合体(EO/PO共重合体など)から選ばれうる。
【0052】
他の一実施形態において、界面活性剤はまた、アルキルスルホコハク酸塩、タウリン酸塩;アルキル硫酸塩、リン酸エステル;アセチレン性ジオール;エトキシフッ素化アルコール;エトキシ化シリコーン、アルキルフェノールエトキシレート;アルコールエトキシレート、及び、有機スルホン酸塩から選ばれうる。
【0053】
好適な実施形態において、ポリアルキレンオキシド及びその共重合体(EO/PO共重合体など)を含む非イオン性界面活性剤の存在下でグリホサート酸とオリザリンとの物理的な非両立性が大幅に改善され、本発明の驚くべき保存安定性のある製剤が得られることがわかった。ポリアルキレンオキシド及びその共重合体(EO/PO共重合体など)は、本発明の製剤のハンドリングを特に容易にすることがわかった。
【0054】
本実施形態において、界面活性剤又はその混合物の含有量は、製剤全量に対して約0.2%〜約30%でありうる。本発明の製剤は界面活性剤、好ましくはポリアルキレンオキシド及びその共重合体(EO/PO共重合体など)を含み、その含有量は製剤全量に対して約3%〜約6%、より好ましくは約3%であることが更に好ましい。
【0055】
したがって、本実施形態において、本発明は、吸収性及びその除草活性を損なわずに、界面活性剤の必要量が低減された保存安定性のある懸濁剤を提供する。
【0056】
したがって、遊離酸形態のグリホサートを含むことによって、製剤の除草効果を損なわず界面活性剤を相当量添加する必要がない懸濁剤を提供することが望まれる。
【0057】
本発明の組成物は少なくとも1つの増粘剤を含むことが好ましい。本発明に係る増粘剤は、ヘテロポリサッカライド、合成ガム、天然ガムから選ばれうる。前記ガムは所定ゲル強度(例えば2%)のゲル状でありうることが好ましい。
【0058】
本実施形態において、増粘剤の含有量は製剤全量に対して約1%〜約15%でありうる。
【0059】
本発明の製剤は少なくとも1つの消泡剤を更に含みうる。本発明の製剤に含まれる消泡剤は、ステアリン酸塩;シリコーン;HLB値が5未満であるジメチルポリシロキサン及びエトキシレートから選ばれうるが、これらに限定されるものではない。消泡剤はジメチルポリシロキサン又はシリコーン系の消泡剤であることが好ましい。
【0060】
一実施形態において、本発明の製剤中の消泡剤の含有量は、製剤全量に対して約0.1%〜約5%でありうる。
【0061】
本発明の製剤は殺生物剤を更に含むことが好ましく;これは、ジプロピレングリコール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、水酸化ナトリウム、及び、水の混合物でありうる。なお、本発明は上記特定の殺生物剤に限定されるものでなく、公知の他の殺生物剤も好適に使用されうる。
【0062】
一実施形態において、本発明の製剤中の殺生物剤の含有量は、製剤全量に対して約0.01%〜約1.0%でありうる。
【0063】
本発明の製剤は任意で充填剤を含みうり;これは好適な実施形態において蒸留水でありうる。
【0064】
本発明の製剤は、このような製剤に使用されている従来公知の安定化剤及び/又は希釈剤を1以上含みうる。
【0065】
好適な希釈剤の例には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及び、亜鉛の硫酸塩;塩化ナトリウム、塩化カリウム;ゼラチン;尿素;糖類;ソルビトール;安息香酸ナトリウム;ラクトース;アルカリ金属リン酸塩;アルカリ土類金属リン酸塩;デンプン又は化工デンプン;シクロデキストリン;酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムが含まれる。
【0066】
一実施形態において、本発明の保存安定性のある懸濁剤は、グリホサート酸とオリザリンとを任意の好ましい重量比で含む。さらに好ましくは、本発明の製剤においてグリホサート酸及びオリザリンは好ましい重量比である24:24の重量比で含まれ、当該重量比とすることにより標的雑草に対して良好な除草効果が得られることがわかった。
【0067】
さらに他の実施形態において、本発明の懸濁剤は120g/Lのグリホサート酸と240g/Lのオリザリンとを含む。
【0068】
さらに他の実施形態において、本発明の保存安定性のある懸濁剤はグリホサート酸及びオリザリンを好ましい重量比である36:12の重量比で含み、当該重量比とすることにより標的雑草に対して良好な除草効果が得られることが更にわかった。
【0069】
他の実施形態において、本発明の製剤はグリホサート酸及びオリザリンを最終用途に応じた推奨配合量及び/又は所望配合量で含む。例えば、オリザリンの所望配合量は、苗木や観葉植物用途の場合、1ガロンあたり3〜4ポンドであり;樹木や蔓性農作物の場合、1ガロンあたり4〜5ポンドであった。一方、グリホサート酸の所望配合量は、苗木、観葉植物、樹木、蔓性農作物の場合、1ガロンあたり1〜1.5ポンドであり;一年草及び多年草の除草の場合、1ガロンあたりそれぞれ0.28ポンド及び0.375ポンドであった。配合量の計算は、当該除草剤化合物の重量百分率濃度(1Lあたりの有効成分のグラム数)に基づく。例えば、本発明の除草剤化合物12%(すなわち、120g/L)は、本発明の製剤1ガロンあたり1ポンドに対応する。
【0070】
本実施形態において、製剤中のグリホサート酸及びオリザリンの所望配合量はそれぞれ12%及び36%で達成されることがわかった。本実施形態において、オリザリンの所望配合量の範囲は本発明の製剤1ガロンあたり3.0〜5.0ポンドであり;グリホサート酸の所望配合量の範囲は本発明の製剤1ガロンあたり1.0〜1.7ポンドであった。
【0071】
本態様及び他の態様並びに実施形態に係る本発明の例示的な製剤は下記のとおり製造した。以下、本発明を特定の実施例に基づいて説明するが、下記実施例は例示的であり本発明を何ら限定するのもではなく、当業者ならば本発明の要旨から逸脱しない範囲で多くの代替実施形態を設計することが可能である。
【実施例】
【0072】
実施例1
【表1】

【0073】
実施例1の製剤の安定性結果を下記表1にまとめる。驚くべきことに、界面活性剤を3%しか含まないのにもかかわらず、望ましい製剤特性が得られた。これはグリホサート含有製剤では予想外のことである。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例2
【表3】

【0076】
実施例2の製剤の安定性結果を下記表2に示す。驚くべきことに、界面活性剤を3%しか含まないのにもかかわらず、望ましい製剤特性が得られた。これはグリホサート含有製剤では予想外のことである。
【0077】
【表4】

【0078】
実施例3
【表5】

【0079】
実施例3の製剤の安定性結果を下記表3に示す。驚くべきことに、界面活性剤を4.63%しか含まないのにもかかわらず、望ましい製剤特性が得られた。これは、従来から界面活性剤を30wt%超含むことが知られているグリホサート含有製剤では予想外のことである。
【0080】
【表6】

【0081】
実施例4
【表7】

【0082】
実施例4の製剤の安定性結果を下記表4に示す。驚くべきことに、界面活性剤を6%しか含まないのにもかかわらず、望ましい製剤特性が得られた。これは、従来から界面活性剤を30wt%超含むことが知られているグリホサート含有製剤では予想外のことである。
【0083】
【表8】

【0084】
このように、本発明ではオリザリン及びグリホサート酸のプレミックス製剤が可能である。本発明のプレミックス製剤の利点を下記表5に示す。
【0085】
【表9】

【0086】
実施例5
グリホサート酸360g/L及びオリザリン120g/Lを含む下記表に示す製剤を前述の製造方法により調製した。本製剤もまた、良好な懸濁性を示し、湿式篩い試験に常に合格した。
【0087】
【表10】

【0088】
本発明者らは、本発明の製剤のグリホサート酸成分を公知のグリホサート塩に変更したみたところ、得られた製剤の懸濁性は非常に悪く、また湿式篩い試験にも合格できなかった。また、このように改変された製剤はスプレーノズルに顕著な詰まりを引き起こし、噴霧に不適切であった。
【0089】
グリホサート酸成分をグリホサートイソプロピルアンモニウム(IPA)塩に変更した本発明の製剤の懸濁率(%)及び湿式篩い試験の結果を下記表6に示す。
【0090】
【表11】

【0091】
オリザリンと共にグリホサートイソプロピルアンモニウム塩を含み、かつ公知の増粘剤、消泡剤、界面活性剤、殺生物剤、充填剤を含むサスポ溶液製剤を下記表7に示す。表6に示す得られた製剤について懸濁性(%)及び湿式篩い試験を行った。
【0092】
【表12】

【0093】
試験を行った製剤の懸濁性は52.17%程度であり、湿式篩い試験における200BSSメッシュでの篩い残率は12.14%であった。したがって、本製剤は湿式篩い試験及び懸濁性試験に不合格であり、ノズル詰まりを発生させる可能性があった。本製剤の1%水溶液のpH値は5.7であった。10mlの持続的な泡が1分後観察された一方、注入試験(pourability test)における残渣は2.10%であった。
【0094】
下記に示すように、本発明の実施例1の製剤の安定性パラメータを、前記試験を行ったグリホサート塩を含む従来の製剤と比較した。
【0095】
【表13】

【0096】
このように、遊離酸形態のグリホサートを含む本発明の製剤は、グリホサート塩を含む製剤と比較して、同じ実験条件下で、驚くほど懸濁性が良好であり、また湿式篩い残率も非常に低かった。本発明の製剤は均一な縣濁液を形成したが、従来の製剤では顕著な沈殿又は凝集が観察された。驚くべきことに、オリザリンと共に含まれるグリホサート酸は、製剤の有効成分であることは別として、懸濁剤を安定化させることがわかった。
【0097】
以上、本発明を特定の実施例に基づいて説明したが、上記実施例は例示的であり本発明を何ら限定するのもではなく、当業者ならば本発明の要旨から逸脱しない範囲で多くの代替実施形態を設計することが可能である。上記実施例又は特段指定のある箇所以外、成分の量又は反応条件を表す全ての数値は、いかなる場合においても「約」との語句により修飾されているものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)除草効果量のグリホサート酸と、(b)除草効果量のオリザリンとを含む、除草用懸濁剤。
【請求項2】
凍結防止剤、固化防止剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、殺生物剤、及び、充填剤から選ばれる少なくとも1つの農薬補助剤を更に含む、請求項1に記載の除草用懸濁剤。
【請求項3】
標準湿式篩い分析において、湿式スクリーン#150上の篩い残率が約0%〜約10%である、請求項1又は2に記載の除草用懸濁剤。
【請求項4】
前記除草効果量のオリザリンは、製剤全量に対して約2%〜約40%含まれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の除草用懸濁剤。
【請求項5】
前記除草効果量のグリホサート酸は、製剤全量に対して約2%〜約50%含まれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の除草用懸濁剤。
【請求項6】
前記凍結防止剤は、尿素、メタノール、エチレングリコール、及び、プロピレングリコールから選ばれ、製剤全量に対して約0.2%〜約10%含まれる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の除草用懸濁剤。
【請求項7】
前記固化防止剤は、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、無水塩化カルシウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、及び、沈降シリカから選ばれ、製剤全量に対して最大約2.0%含まれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の除草用懸濁剤。
【請求項8】
前記固化防止剤は沈降シリカであり、製剤全量に対して最大約2.0%含まれる、請求項7に記載の除草用懸濁剤。
【請求項9】
前記界面活性剤又はその混合物は、ポリエトキシ化されてもよい、リグニンスルホン酸のナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩;無水マレイン酸共重合体の塩、ポリアクリル酸の塩;縮合フェノールスルホン酸の塩;ナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリアルキレンオキシド及びEO/PO共重合体などのその共重合体;アルキルスルホコハク酸塩、タウリン酸塩;アルキル硫酸塩、リン酸エステル;アセチレン性ジオール;エトキシフッ素化アルコール;エトキシ化シリコーン、アルキルフェノールエトキシレート;アルコールエトキシレート、及び、有機スルホン酸塩から選ばれる、分散剤及び/又は湿潤剤である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の除草用懸濁剤。
【請求項10】
前記界面活性剤の含有量は製剤全量に対して約0.2%〜約30%である、請求項9に記載の除草用懸濁剤。
【請求項11】
前記界面活性剤は、ポリアルキレンオキシド及びEO/PO共重合体などのその共重合体である、請求項9又は10に記載の除草用懸濁剤。
【請求項12】
ポリアルキレンオキシド及びEO/PO共重合体などのその共重合体である前記界面活性剤の含有量は、製剤全量に対して約3%〜約6%である、請求項12に記載の除草用懸濁剤。
【請求項13】
前記増粘剤は、ヘテロポリサッカライド、合成ガム、及び、天然ガムから選ばれる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の除草用懸濁剤。
【請求項14】
前記合成ガム又は天然ガムはゲル強度約2%のゲル状である、請求項13に記載の除草用懸濁剤。
【請求項15】
前記増粘剤の含有量は、製剤全量に対して約1%〜約15%である、請求項13又は14に記載の除草用懸濁剤。
【請求項16】
前記消泡剤は、ステアリン酸塩;シリコーン;HLB値を有するジメチルポリシロキサン及びエトキシレートから選ばれ、製剤全量に対して約0.1%〜約5%含まれる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の除草用懸濁剤。
【請求項17】
前記消泡剤はジメチルポリシロキサン又はシリコーン系の消泡剤であり、製剤全量に対して約0.1%〜約5%含まれる、請求項16に記載の除草用懸濁剤。
【請求項18】
前記殺生物剤は、ジプロピレングリコール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、水酸化ナトリウム、水、及び、それらの混合物から選ばれ、製剤全量に対して約0.01%〜約1.0%含まれる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の除草用懸濁剤。
【請求項19】
ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及び、亜鉛の硫酸塩;塩化ナトリウム、塩化カリウム;ゼラチン;尿素;糖類;ソルビトール;安息香酸ナトリウム;ラクトース;アルカリ金属リン酸塩;アルカリ土類金属リン酸塩;デンプン又は化工デンプン;シクロデキストリン;酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、及び、硫酸バリウムから選ばれる希釈剤を更に含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の除草用懸濁剤。
【請求項20】
約12%のグリホサート酸と約36%のオリザリンとを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の除草用懸濁剤。
【請求項21】
(a)凍結防止剤、固化防止剤、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、殺生物剤、及び、充填剤から選ばれる複数の農薬補助剤を混合・均一化するステップと、
(b)除草効果量のグリホサート酸及びオリザリンをステップ(a)で得られた均一混合液に攪拌しながら添加してスラリーを得るステップと、
(c)前記スラリーを粉砕装置で微粒子化するステップと、
(d)所定量の増粘剤を前記スラリーに添加して懸濁剤を得るステップとを含む、保存安定性のある懸濁剤の製造方法。
【請求項22】
本明細書中の実施例を参照して実質的に記載された除草用懸濁剤。


【公表番号】特表2013−509399(P2013−509399A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536016(P2012−536016)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000692
【国際公開番号】WO2011/051969
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512113227)ユナイテッド フォスフォラス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】