説明

除草装置

【課題】
狭い場所や狭い範囲の除草作業を簡単にかつ確実に行なえる除草装置を提供する。
【解決手段】
手持ち式の支持杆1の先端に作業面に対して略平行に延び回転駆動される回転軸2を設ける。回転軸2は高さ調整をすることができる接地手段を備えることによって地表面から一定の高さを維持する。回転軸2の軸方向の複数位置において放射方向に延びる刃体3を設ける。刃体3は基端部を回転軸2の軸心方向の軸で回動自在に軸支し先端部に作業刃5を形成する。回転軸2が回転し、回転軸2に軸支されている刃体3の先端が雑草の生えている地面に当たると、刃体3は回転軸2の回転にともなって回転の後方に回動し、刃体3先端の作業刃5が地表面を擦るように移動して雑草を引き抜く。上記除草装置は、アタッチメントとして公知の刈払機に装着して実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手持ち式の支持杆の先端に作業部分が装着され、狭い場所や大型の機械が入れないような場所、あるいは狭い範囲の除草や整地などの作業を能率的に行なうことができる除草装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手持ち式の支持杆の先端部分に回転駆動させる作業部を備えた作業機械には、代表的なものとして回転刃によって雑草などの刈り払いを行なう刈払機が広く利用されているが、除草装置には狭い場所や狭い範囲の除草作業は手作業によるのが一般的であり、効果的かつ能率的に除草作業を動力によって行なうものが要望されている。このような要望に対して、特許文献1や特許文献2に開示されるような除草機が提案されている。
【特許文献1】特許2899799号公報
【特許文献1】特開平8−187006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された除草機は、エンジンによって回転駆動する駆動手段を備えた支持杆の先端に、カップ状のホイールを装着し、カップ状のホイールの端面で水田の泥土を掻き混ぜることにより除草を行なうものである。ホイールの端面に突起を形成することにより、水田だけでなく畑土表面を攪拌し除草ができることも開示されている。
特許文献2には、操作杆先端の両端に回転駆動されるロータを取り付けた除草機の思想が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された除草機は、垂直方向の回転軸によって回転するホイールの端面で、泥土や畑土表面を擦るように攪拌するものであるため、土中にある雑草の根を除去するのが困難であるとともに、ホイールは平面的に接地して回動しているためホイールそのものが安定しない可能性がある。また、特許文献2に記載された除草機では、直接接地しているロータが比較的低速で回転するものであるため、接地面の状況によって除草できない状況が発生し、固い地表面などでは十分に目的を達成することができるものであるとはいい難い。
上記、従来技術の欠点に鑑み、本発明は狭い場所や狭い範囲の除草作業をより簡単にかつ確実に行なうことができる除草装置を提供することを目的とするものである。また、別の目的は、広く利用されている刈払機に取り付けて除草装置として利用することができる構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は手持ち式の支持杆1の先端に地表面に対して略平行に延び回転駆動される回転軸2を設ける。この回転軸2は、高さ調整できるような接地手段を備えることによって地表面、すなわち作業面から一定の高さを維持しながら高速回転する。また、回転軸2には、軸方向の複数位置において放射方向に刃体3を設け、該刃体3は基端部を回転軸2の軸心方向の支持軸4によって回動自在に軸支し、基端部が軸支された刃体3の先端部には、除草作業や整地あるいは地表面の荒い土の粉砕などに適した任意形状の作業刃5を形成する。
【0006】
回転軸2が回転し、回転軸2に軸支されている刃体3の先端が雑草の生えている地面に当たると、刃体3が回転軸2の回転にともなって移動する。このとき、刃体3は先端の作業刃5が地表面を擦るように移動して雑草を引き抜く。刃体3は、回転軸2に対して回動自在に軸支しているため、地表面の固さに応じて移動方向の後方に回動する。すなわち、固い地面の場合は無理な負荷が掛かることなく地表面を引きずるように移動し、柔らかい地面の場合は、ある程度地中に入り込んで引っ張られる如く移動する。
【0007】
本発明は、公知の刈払機をそのまま除草装置として利用することができる。すなわち、手持ち式の支持杆1は、基端部にエンジン6もしくはモータといった回転駆動する動力源を備え、先端に回転刃を回転駆動させる駆動軸7を備えた刈払機を利用し、刈払機の回転刃に代えて除草用の刃体3を備えた、前記回転軸2を着脱自在に装着する。
回転軸2に対して軸支される刃体3は、回転軸2の複数位置に支持片8を突出させ、先端に作業刃5を備えた刃体3の基端部を、回転軸と平行な支持軸4によって軸支することができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の本発明除草装置によれば、地表面から一定の高さで回転する回転軸2に放射方向に延びる刃体3を設けている。したがって、回転軸2の回転によって刃体3の先端部が地表面に当たって、刃体3の回転移動によって除草作業が行われる。このとき、刃体3は回転軸2と平行な支持軸4によって支持されているため、刃体3そのものは回転の後方に自由に回動し、固い地面の場合は地表面もしくは地表面を浅く削るように移動し、雑草を効率的に引き抜くとともに、回転軸に対して過大な負荷を掛けることがなく、安全かつ効率的に除草作業を行なうことができる。本発明に係る除草装置では、除草作業だけでなく整地作業や地表面の塊状物の粉砕作業などを行なうことができる。このような作業は、作業者が腰をかがめることなく、立った姿勢でスピーディに進めることができる。
【0009】
請求項2記載の除草装置によれば、汎用されている刈払機に除草用アタッチメントとして安価に提供することにより、既に使用されている刈払機を除草装置として有効に活用することができる。請求項3記載の発明によれば、回転軸2の複数位置に支持片8を突出させ、先端に作業刃5を備えた刃体3の基端部を軸支させるため、刃体3を円滑に回動させることができるとともに、刃体3の交換を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る除草装置の、好ましい実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は一部を切欠した除草装置の斜視図、図2は刈払機の先端に装着して利用した状態を示す斜視図、図3は回転軸方向に切断した縦断面図、図4は回転軸と直交する方向に切断した縦断面図である。
【0011】
図1及び図3に示すように、手持ち式の支持杆1の先端に除草装置を取り付ける。除草装置は、地表面に対して略平行に延び回転駆動される回転軸2を備える。この回転軸2は、高さ調整できるような接地手段を備えることによって地表面、すなわち作業面から一定の高さを維持することができる。すなわち、回転軸2を装着するケーシング9に高さ調節が可能な接地手段を設ける。接地手段は、例えばキャスターのようなものであってもよいが、図示例ではケーシング9の左右両側面部分に橇形状のガイド板10,10を設けている。このガイド板10は、後端部をケーシング9の側面板9aに軸11によって軸支し、前端部に軸11までの寸法を半径とする円弧状の長孔12を穿設した固定板13を設けたものであって、ガイド板10を任意位置に回動させてボルト14を用いてケーシング9の側面板9aに固定するものである。したがって、ボルト14を緩めてガイド板10を回動させ、任意所望位置においてボルト14を締め付けることによって、地表面から回転軸2までの高さを自由に調節することができる。換言すれば、地表面に当たる刃体3の深さを調節することができる。
【0012】
支持杆1の先端部分にはギアヘッド15を設け、このギアヘッド15をケーシング9の側面板9aにボルト16によって固定している。すなわち、図2及び図3に示すように、支持杆1の基端部にエンジン6を取り付け、支持杆1の内部を貫通するシャフト22によってギアヘッド15内の傘歯車17を駆動する。傘歯車17を駆動軸7に固定した傘歯車18に噛合させることによって駆動軸7を駆動する。駆動軸7の先端には取り付けネジが形成してあり、駆動軸7を回転軸2に連結することによって回転軸2を駆動する。
【0013】
回転軸2には、放射方向に延びる複数の刃体3を取り付ける。すなわち、軸方向の複数位置に支持片8,8を固定し、この支持片8に対し回転軸2と同じ方向の支持軸4によって刃体3を回動自在に軸支させる。このとき、図4において二点鎖線で示すように、刃体3はその先端が、地表面近くに達する位置から実線で示すように地表面よりも深く達する長さに調節することができる寸法としておく。また刃体3は、例えば回転軸2の表面に凹所を形成し、凹所内において刃体3の基端部を軸支させるように、回転軸2そのものに軸支するものであってもよいが、図示例のように回転軸2に支持片8を固定し、該支持片8に刃体3を軸支させることによって、刃体3の取り付けを容易に行なうことができるとともに、刃体3の取り替えを容易に行なうことができる。
【0014】
上記、本発明に係る除草装置によって除草作業を行なう場合、機体の前進速度に関係なく回転軸2が高速回転をする。回転軸2が回転し、回転軸2に装着されている刃体3の作業刃5が、図5(a)に示すように地表面に達すると、刃体3の作業刃5は回転軸2の回転に引っ張られて地表面を引き摺られるように移動する。すなわち、回転軸2の回転によって、刃体3の基端部を支持している3支持軸4の回転軌跡は、回転方向に移動するとともに下方に移動する。すると、作業刃5に作用する抵抗によって、刃体3そのものが支持軸4を中心として回動し、図5(b)に示すように作業刃5が地表面を引き摺るように移動して雑草Aを取り除く。作業刃5が、接地部分を通過すると、回転の慣性によって軸支されている刃体3は回転軸2の放射方向に復帰し、回転軸2はバランスよく回転する。
【0015】
除草しようとする作業面、すなわち地表面が固くて抵抗が大きなものであると、作業刃5は地表面を僅かに削り取る程度に入り込み、地表面が柔らかいものであると作業刃5は多少深く入り込む。このように刃体3には、作業面の状況に拘わらず過大な抵抗が作用することなく、効果的に除草作業を行うことができる。もっとも、回転軸2の回転によって刃体3には慣性が作用し、接地の瞬間に作業刃5が地表面に強く衝突してある程度地表面から入り込むため、この位置よりも後方の雑草を確実に除草することができる。また、除草装置全体の進行速度にもよるが、作業刃が先の回転軌跡と極めて近い位置を通過することによって整地することができる。また、刃体3の作業刃5が、地表面に強く衝突することによって、地表面の塊状物を効果的に粉砕することができる。
【0016】
水田用の除草装置や耕耘機に取り付けて整地や除草に利用するものなど、回転する刃体によって除草作業を行なう従来のものは、刃体が比較的低速回転をするものである。これに対し一般的な刈払機では、刃板の高速回転によって雑草を切断するようにして作業が行われる。具体的には、一例として毎分6000回転ないし8000回転のエンジン出力を、ギアヘッドの歯車の減速によって、駆動軸7が毎分2000回転ないし3000回転の高速回転を行う状態で刈り払い作業を行なっている。したがって、刈払機の動力機構をそのまま利用し、刈払機の刃体を変更することによって除草機として利用することはできないものである。これに対し、本発明では、刃体3が回転軸2に対して自由に回動し、過大な負荷が掛からないものであるから、一般に汎用されている刈払機の動力伝達手段をそのまま利用して、除草機として利用することができる。
【0017】
すなわち、ケーシング9に回転軸2を収蔵した図1に示す除草装置を除草用アタッチメントとし、図2に示すように、刈払機のギアヘッド部分に取り付けることによって刈払機を除草機として利用することができる。具体的には、刈り払い用の回転刃を取り除いたギアヘッド15のフランジ部分を、ケーシング9の側面板9aに固定する。このとき、ギアヘッド15から突出している駆動軸7をケーシング9内の回転軸に連結する。なお、ギアヘッド15は、作業者が支持する状態において駆動軸7が横(水平)方向を向く状態で使用する。
【0018】
回転軸2に装着する刃体3及び刃体3に形成する作業刃5の具体的な形状は、特に限定されるものではなく、用途に応じた任意形状に形成することができる。
図6に示す実施形態は、刃体3に略L字状となるように作業刃5を形成したもので、作業刃5の前後両側縁に刃部5aを形成している。図6に示す刃体3は、使用により一方の側縁に形成した刃部5aが摩滅した場合、刃体3を反転させることによって他方の側縁に形成した刃部5aを回転の前端に位置させて使用することができる。除草用の作業刃体3の上部には、回転軸の支持片に取り付けるための取り付け孔19を穿設している。
【0019】
刃体3の主体部分と作業刃5のなす角度αは、図6に示すように略90度のL字形であってもよいが、90度よりも小さな鋭角のV字形に形成するものであってもよい。この場合、V字状の先端部分が接地し、地表面への食い込みが容易となり、雑草の根を取り除くのに有効である。また、図8に示すように、90度よりも大きな鈍角のく字状に形成することもできる。この場合、く字状である刃体3の先端部分が、地表面からより深く地中に入り込み、雑草の根を確実に掘り起こすことができる。このとき、刃体3は地表面に対して斜めに進入するため、進入の抵抗が少なく作業を円滑に進めることができる。
刃体3の作業刃5は、一例として図9に示すように、切れ込みを良くするために三角形状に形成することもできる。
【0020】
図7に示す実施形態は、刃体3の別の実施形態を示すもので、刃体3の主体部分の先端に、回転の接線方向に平板状の作業刃5を固定したものである。平板状の作業刃5の前端及び後端には、V字状の切り込み20,20を形成し、V字状の切り込み20の内側縁に刃部21を形成している。この実施形態では、地表面に多少入り込んで、あるいは地表面にほぼ接して移動する作業刃5の切り込み20に雑草の根が入り込み、雑草の根そのものを引き抜くように作用し、根をできるだけ残さない効果的な除草作業を実現することができる。図7に示す刃体3は、使用により刃部21が摩滅した場合、刃体3を反転させることによって新たな刃部21を除草作業に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、一部を切欠した除草装置の斜視図、
【図2】図2は、除草装置を刈払機の先端に装着して利用した状態を示す斜視図、
【図3】図3は、回転軸方向に切断した除草装置全体の縦断面図、
【図4】図4は、回転軸と直交する方向に切断した縦断面図、
【図5】図5は、除草装置による除草作業の過程を示す概略図、
【図6】図6は、刃体の一実施例を示す斜視図、
【図7】図7は、刃体の別の実施例を示す斜視図である。
【図8】図8は、刃体のさらに別の実施例を示す斜視図、
【図9】図9は、さらに別の実施例を示す刃体の斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1…支持杆、 2…回転軸、 3…刃体、 4…支持軸、 5…作業刃、 5a…刃部、 6…エンジン、 7…駆動軸、 8…支持片、 9…ケーシング、 9a…側面板、 10…ガイド板、 11…軸、 12…長孔、 13…固定板、 14…ボルト、 15…ギアヘッド、 16…ボルト、 17,18…傘歯車、 19…取り付け孔、 20…切り込み、 21…刃部、22…シャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式の支持杆の先端に作業面に対して略平行に延び回転駆動される回転軸を設け、該回転軸は接地手段を備えることによって地表面から一定の高さを維持するとともに、回転軸には、軸方向の複数位置において放射方向に刃体を設け、該刃体は基端部を回転軸の軸心方向の軸に対して回動自在に軸支し、先端部に作業刃を形成したことを特徴とする除草装置。
【請求項2】
手持ち式の支持杆は、基端部にエンジンもしくはモータの動力源を備え、先端に回転刃を回転駆動させる駆動軸を備えた刈払機であって、刈払機の回転刃に代えて回転軸を着脱自在に装着することを特徴とする請求項1記載の除草装置。
【請求項3】
回転軸の複数位置に支持片を突出させ、先端に作業刃を備えた刃体の基端部を軸支したことを特徴とする請求項1又は2記載の除草装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−6260(P2006−6260A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190968(P2004−190968)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(592026819)伊東電機株式会社 (71)
【Fターム(参考)】