説明

除雪機

【課題】 橇を雪面に沿わせることが容易にできるようにすることにより適正な除雪作業ができる除雪機を提供すること。
【解決手段】 除雪機Aの幅方向に延ばした状態で除雪機本体10に支持軸36を設け、この支持軸36に、橇31の前後方向の中間部を揺動自在に取り付けた。そして、橇31の接雪面に前後方向に延びるガイド突条33a,33bを設けた。また、橇31の接雪面における支持軸36よりも前部側に平面部31aを形成し、橇31の接雪面における支持軸36よりも後部側に傾斜面部31cを形成し、かつ傾斜面部31cが後部側ほど急勾配になるようにした。さらに、支持軸36に一対の移動用車輪32a,32bを取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪機本体を支持する橇を備え、橇を雪面でスライドさせながら除雪する除雪機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雪面の雪を除いて路面を露出させる際などには除雪機が用いられている。このような除雪機には、エンジン等、除雪機を駆動させるための各装置を収容する除雪機本体の前部に回転することにより雪を掻き込むオーガを備えた除雪部が設けられ、除雪機本体の後部に除雪機を運転操作するためのハンドルを備えた操作部が設けられている。そして、除雪機本体の下部には、除雪機本体を支持するとともに、雪面でスライドすることにより除雪機の移動をし易くする橇が設けられている。
【0003】
また、このような従来の除雪機の中には、橇が除雪機本体に固定されたものがあり、これによるとハンドルを操作して除雪機を移動させる際に、オーガの位置を雪面に適正に沿わせることが難しくなる。このため、橇の角度を調整可能にした除雪機も開発されている(例えば、特許文献1参照)。この除雪機では、車輪の車軸を支持する除雪機本体のフレームの下方側に橇が設けられており、この橇の前端は、除雪部が備えるブロアハウジングの後部下部に角度調整可能に取り付けられている。このため、積雪量が多く車輪が雪に埋もれても除雪作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−193953号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、前述した除雪機では、橇の角度を調整することはできるが、一旦角度調整された橇は、再度角度調整されるまでその位置に保持される。このため、雪面が凹凸や傾斜面等のある起伏の多い面である場合には、その雪面に合わせてハンドル操作をしてオーガを雪面に沿わせることは難しい。
【0006】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、橇を雪面に沿わせることが容易にできるようにすることにより適正な除雪作業ができる除雪機を提供することである。
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明に係る除雪機の構成上の特徴は、除雪機本体と、除雪機本体の前部側に設けられた除雪部と、除雪機本体の後部側に設けられた操作部と、除雪機本体を支持する橇とを備えた除雪機であって、軸方向を除雪機の幅方向に延ばした状態で除雪機本体に設けられた揺動軸に、橇の前後方向の中間部を揺動自在に取り付け、橇の接雪面における揺動軸よりも前部側部分に平面部を形成するとともに、橇の接雪面における揺動軸よりも後部側部分を、上方に向って傾斜し滑らかに連続する2以上の傾斜面または傾斜曲面で形成し、かつ2以上の傾斜面または傾斜曲面を後部側ほど急勾配になった傾斜面部で構成したことにある。
【0008】
このように構成した除雪機においては、橇が除雪機本体に設けられた揺動軸に揺動自在に取り付けられている。このため、操作部に大きな力を加えることなく除雪機本体を、雪面に接した橇に対して上下方向に回転移動できるようになり、除雪部と雪面との相対位置を容易に変更できる。これによって、特に、凹凸等の起伏のある雪面での除雪作業が容易になる。また、橇の接雪面における揺動軸よりも前部側部分に平面部を形成したため、除雪機を平面状の雪面で移動させる場合には、この平面部に除雪機の重さをかけるようにして操作部を操作することにより除雪機の移動をスムーズにすることができる。
【0009】
さらに、橇の接雪面における揺動軸よりも後部側部分に上方に向って傾斜する2以上の傾斜面または傾斜曲面を形成したため、除雪機を雪面やアスファルト路面等で移動させる際の橇の雪面やアスファルト路面等に対する接触時の面圧が少なくなって摩擦抵抗が少なくなる。また、除雪機を、アスファルト路面から雪面の上り坂を登坂させる場合には、除雪機の重心を橇の前部側から後部側に移動させていく等をしながら操作部を操作することにより除雪機の移動をスムーズにすることができる。
【0010】
これによると特に、橇の後部側部分がアスファルト路面と雪面の上り坂との境界部分を通過する際の移動がスムーズになりより効果的に行える。すなわち、橇の後部側部分が2以上の滑らかに連続する傾斜面または傾斜曲面で形成されその後部側ほど急勾配になっているため除雪機の重心の移動が容易になり、除雪機はアスファルト路面と雪面の上り坂との境界部分をスムーズに通過できる。
【0011】
本発明に係る除雪機の他の構成上の特徴は、除雪機本体に、車軸を揺動軸の軸芯と一致させた状態で左右一対の移動用車輪を設けたことにある。これによると、一対の移動用車輪を支持するための車軸と橇を支持するための揺動軸とを除雪機本体に設ける場合の構造が単純になり除雪機全体をコンパクトに構成できる。また、移動用車輪を設けたことにより、除雪機を雪面以外の路面で移動させる際の操作が容易になる。
【0012】
本発明に係る除雪機のさらに他の構成上の特徴は、橇の平面部の前部に、橇の後部側に設けられた傾斜面部よりも前後方向の長さが短い傾斜面部を設けたことにある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る除雪機を示した側面図である。
【図2】除雪機を示した平面図である。
【図3】除雪機を示した正面図である。
【図4】橇を示しており、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は(a)の4−4断面図である。
【図5】橇の取り付け状態とロック機構がロックされた状態を示した一部切欠き断面図である。
【図6】図5のロック機構のロックが解除された状態を示した一部切欠き断面図である。
【図7】除雪機のハンドルを調整する状態と橇が揺動する状態とを示した側面図である。
【図8】除雪機を折り畳んだ状態を示した側面図である。
【図9】作業者が除雪機を操作する状態を示した側面図である。
【図10】除雪機が傾斜面を移動する状態を示した側面図である。
【図11】他の実施形態に係る橇を示した一部切欠き平面図である。
【図12】図11の橇を取り付ける状態を示した正面図であり、(a)は橇を支持軸の下方に設置した状態、(b)は橇を持ち上げた状態、(c)は被係合部と係合部を係合させて橇を取り付けた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る除雪機を図面を用いて説明する。図1ないし図3は、本発明に係る除雪機Aを示している。この除雪機Aは、除雪機本体10と、除雪機本体10の前部に設けられた除雪部20と、除雪機本体10を支持する支持部30と、除雪機本体10の後部に設けられた操作部40とで構成されている。除雪機本体10は、平面視が四角形で側面が略扇形の箱状に形成された外郭部11と、外郭部11の両側面(一方しか図示せず)における下縁部から後縁部にかけての部分を支持する屈曲した一対の支持フレーム12とを備えている。
【0015】
そして外郭部11の内部(図示せず)には、エンジン等、除雪機Aを駆動させるために必要な各種の装置が配置され、外郭部11の後方上面には、燃料タンク13が配置されている。この燃料タンク13の上面中央には燃料供給口が形成されており、この燃料供給口にタンクキャップ13aが着脱可能に取り付けられている。また、外郭部11の右側面(図2および図3の状態での右側面で、以後、左右方向は除雪機Aを前側から見た状態での方向として説明する。)における後部側部分からは、リコイルハンドル14が外側に向って突出している。
【0016】
このリコイルハンドル14は、リコイルロープを介してリコイルスタータに接続されており、リコイルハンドル14を引っ張ることによりリコイルスタータはクランク軸を回転させてエンジンを始動させる。また、外郭部11の内部に配置された装置としては、エンジンに燃料や空気を供給するための装置、点火装置、排気装置、エンジンの駆動力を伝達するための機構およびその駆動力の伝達機構を接続したり切断したりするクラッチ等がある。
【0017】
除雪部20は、エンジンの駆動力がクランク軸を介して伝達されるインペラ軸に連結されたインペラ21、オーガケース22内に設けられたオーガ23およびシュート24等を備えている。オーガケース22は、両端面が閉塞された略円筒体の周面の円周方向に沿った略半分の部分を除いた形状をしており、外周面部22aの中央部が除雪機本体10の外郭部11の前端部に連結されている。また、オーガケース22の両側面部22b,22cの中央部にはシャフト25が軸周り方向に回転可能な状態で掛け渡されており、このシャフト25にオーガ23が取り付けられている。
【0018】
オーガ23は、複数の螺旋状の回転刃23aと回転刃23aを支持する円板状の複数の支持板23bを組み付けることによって構成されており、シャフト25の回転にしたがって回転して、雪面の雪を捉えたときにその雪をオーガケース22内に掻き込む。また、インペラ軸の先端側部分は、インペラ21の前方に向って延びておりその前端側にウォームギア25aが連結されている。そして、このウォームギア25aを介してインペラ軸はシャフト25の中央部に連結されている。すなわち、このウォームギア25aは、前後方向に延びるインペラ軸の回転力を左右方向に延びるシャフト25に方向を変えて伝達する。
【0019】
インペラ21は、インペラ軸を中心として回転する複数の回転刃で構成されており、オーガケース22の後部中央に配置されている。オーガケース22の外周面部22aにおける除雪機本体10の外郭部11に連結された部分には後方に向って突出する凹部が形成されており、インペラ21はこの凹部内に配置されている。そして、オーガケース22の上面におけるインペラ21が配置された部分の左側部分に上方に向って延びるシュート24が設けられている。
【0020】
シュート24の本体部分を構成するシュート本体24aは湾曲した円筒体で構成されており、そのシュート本体24aの上端部に四角枠状の吐出口部24bが取り付けられている。シュート本体24aは、オーガケース22の上面から突出した筒状の基部22dの上部に、軸周り方向に回転可能でかつ基部22dに対して着脱可能な状態で連結されている。また、吐出口部24bは、シュート本体24aにおける湾曲が突出した側面の上端部に設けられた支軸24cを中心として上下方向に回転可能な状態でシュート本体24aに連結されている。
【0021】
そして、シュート本体24aの湾曲が突出した側面における上下方向の略中央には、支軸26aを中心として上下方向に回転可能になった棒状のL形レバー26が取り付けられ、L形レバー26の支軸26a側部分には、支軸26bを中心として回転可能になった棒状の連結レバー27が連結されている。また、吐出口部24bの上面における支軸24cの近傍には逆U字状の係合片28が外部に向って設けられており、この係合片28の上部に、連結レバー27の上端部が支軸28aを介して回転可能な状態で連結されている。
【0022】
このため、L形レバー26を左右に回転操作することにより吐出口部24bをシュート本体24aとともに左右に回転させて、吐出口部24bの開口の向きを左右方向に変えることができる。また、L形レバー26を上下に回転操作することにより吐出口部24bの開口の向きを所定の角度で上下方向に変えることができる。さらに、シュート24を上方に持ち上げることにより基部22dから取り外すことができる。
【0023】
支持部30は、橇31と、一対の移動用車輪32a,32b(図5および図6参照)とを備えている。橇31は、図4に示したように、平面視が略四角形で、側面視が略弓形に湾曲した板体で構成されており、中央から前部側にかけての部分に位置し平面状に形成された平面部31aと、平面部31aの前部に形成された傾斜面部31bと、平面部31aの後部に形成された傾斜面部31cとで構成されている。傾斜面部31bは、平面部31aの前端から所定の角度で屈曲して斜め前方に略真直ぐに延びており、傾斜面部31cは、平面部31aの後部側から緩やかに湾曲して斜め後方に延びている。この傾斜面部31cの傾斜の勾配は後部側にいくほど大きくなっている。また、傾斜面部31cの前後方向の長さは傾斜面部31bの前後方向の長さよりも長くなっている。
【0024】
そして、橇31の左右方向の両側部分における側縁部から所定間隔を保った部分にはそれぞれ上方に突出し前後方向に延びる幅の広い突条が形成されており、その下面に凹部からなるガイド溝31d,31eが形成されている。また、橇31の前縁部におけるガイド溝31d,31e間に対応する部分には左右方向の幅が広い切欠き部31fが形成されている。さらに、橇31の下面における左右方向の両縁部に沿って棒体からなる本発明の突条としてのガイド突条33a,33bが取り付けられている。このガイド突条33a,33bは、橇31の前後方向の長さよりも短く形成されており、傾斜面部31bの前部側の略半分と、傾斜面部31cの後端側部分とを除いた部分に溶接によって固定されている。
【0025】
そして、橇31の上面における前後方向の中央部の両側に、それぞれパイプ状の揺動軸受部34aと固定片34bとからなる連結部34と、パイプ状の揺動軸受部35aと固定片35bとからなる連結部35とが固定されている。固定片34b,35bは、それぞれL形に屈曲した板で構成されており、垂直片を橇31の外部側に位置させた状態で水平片が橇31の上面に固定されている。そして、軸方向を左右に向けた揺動軸受部34aが固定片34bの垂直片の中央を貫通した状態で固定され、軸方向を左右に向けた揺動軸受部35aが固定片35bの垂直片の中央を貫通した状態で固定されている。この連結部34,35は、傾斜面部31cの前端部近傍に位置している。
【0026】
また、除雪機本体10の一対の支持フレーム12の中央部分からそれぞれ支持穴を備えた支持片36a,36bが、図5および図6に示したように下方に延びており、両支持片36a,36bの支持穴に本発明の揺動軸としての支持軸36が掛け渡されている。そして、橇31は揺動軸受部34a,35a内に支持軸36を挿通させることにより除雪機本体10に揺動可能な状態で支持されている。また、移動用車輪32a,32bは、それぞれリング状の車輪本体と、中央に軸受け穴が形成された軸受け部と、軸受け部から車輪本体に向かって放射状に延びる複数のスポークとで構成されており、軸受け穴内に支持軸36を挿通させた状態で橇31の両側に配置されている。
【0027】
また、支持片36aの内面には、支持軸36の近傍に向って斜め下方に延びるロック機構取付片36cが取り付けられており、このロック機構取付片36cに、ロック機構37が設けられている。このロック機構37は、軸方向を前後に向けてロック機構取付片36cに取り付けられた軸部37aと、軸部37aの先端部に回転可能に設けられ移動用車輪32aのスポーク間に係合可能になった係止片37bと、係止片37bを移動用車輪32a側に付勢するばね部材37cと、係止片37bとともに回転な状態で軸部37aに設けられたブレーキレバー37dとを備えている。
【0028】
このため、係止片37bは、ばね部材37cの弾性力によって移動用車輪32a側に付勢されて、図5に示したように、移動用車輪32aに係合して移動用車輪32aの回転を制止する。また、ブレーキレバー37dの下端部は、操作部40側から延びてくるホイールブレーキワイヤ38の先端部に連結されており、ばね部材37cの弾性力に抗してホイールブレーキワイヤ38を操作部40側に引っ張ることにより、図6に示したように、係止片37bは、ブレーキレバー37dとともに移動用車輪32a側から離れて、移動用車輪32aを回転可能な状態にする。
【0029】
操作部40は、一対の支持フレーム12の両上端部に接続されたハンドル41、操作レバー42および後述する各種の連動機構等を備えている。ハンドル41は、平面視が略コ字状で側面視がL形に形成されたパイプで構成されており、前部側部分が一対の支持フレーム12の両上端部から後部斜め上方に向って平行して延びる側部41a,41bで構成され、後部側部分が側部41a,41bの後端部から屈曲して上方に延びる略コ字状の把持部41cで構成されている。また、このハンドル41は、左右一対の接続機構43(一方しか図示せず)を介して上下方向に回転可能な状態で一対の支持フレーム12に接続されている。
【0030】
接続機構43は、支持フレーム12の上端部に形成された側面の幅が広い支持平面部43aと、側部41a,41bの前端部を押し潰して側面の幅を広くした被支持平面部43bとを接続する機構である。そして、支持平面部43aにおける支持フレーム12との境界部分には軸穴が形成され、支持平面部43aの後部側部分にはその軸穴を中心とした円弧状のガイド孔43cが形成されている。また、被支持平面部43bの先端部と後端部とにそれぞれ軸穴が形成されており、被支持平面部43bの先端部の軸穴と支持平面部43aの軸穴とに軸部材43dを挿通させることにより、ハンドル41は上下方向に回転可能な状態で一対の支持フレーム12に接続されている。
【0031】
そして、被支持平面部43bの後端部の軸穴と支持平面部43aのガイド孔43cとにボルトとナットからなる締付部材43eが取り付けられている。この締付部材43eを緩めることによって、図7に示したように、ハンドル41を軸部材43dを中心として上下方向に回転することができ、締付部材43eを締めることによってハンドル41をその位置に固定することができる。この場合のハンドル41の回転可能な角度は、軸部材43dを中心としたガイド孔43cの円弧方向の長さで決定される。
【0032】
なお、図7には、橇31が揺動する状態も示している。また、除雪機Aを収容庫等に収納する際には、被支持平面部43bの後端部の軸穴を締付部材43eから外すことによって、図8に示したように、ハンドル41を軸部材43dを中心として前方に回転させて、除雪機本体10の上部側に折り畳むことができる。また、その際、シュート24を基部22dから取り外して倒すことにより、除雪機Aをさらにコンパクトに折り畳むことができる。
【0033】
操作レバー42は、ハンドル41の後部側部分と略同形でハンドル41の後部側部分よりも全体がやや小さくて細い棒体で構成されており、両側の側部42a,42bと把持部42cとで構成されている。この操作レバー42は、下方への押圧操作によりハンドル41の後部側部分に重なるようにして、一対の接続部材44,45を介してハンドル41に取り付けられている。接続部材44は、側部41aの中央部分に固定された固定片44aと、側部41aの後部側に一方の端部側を中心として回転可能に取り付けられた回動片44bと、固定片44aと回動片44bの自由端側との間に掛け渡されて、回動片44bの自由端を固定片44a側に付勢するコイルばね44cとで構成されている。
【0034】
また、固定片44aにおける側部41aの内部側に突出した部分には、オーガブレーキワイヤ46が挿通しており、そのオーガブレーキワイヤ46の端部は回動片44bの自由端近傍に係止されている。そして、操作レバー42における側部42aの端部は、回動片44bの後面に固定されている。また、接続部材45は、側部41bの中央部分に固定された固定片45aと、側部41bにおける後部側に固定片45aと間隔を保って取り付けられた一対の回動片45b,45cと、固定片45aと回動片45cとの間に掛け渡されたコイルばね45dとで構成されている。
【0035】
固定片45aは、スロットルワイヤ47を挿通させるための切欠孔と、ホイールブレーキワイヤ38を挿通させるための切欠孔とを備えた幅広の略四角形の板で構成されている。そして、固定片45aは、側部41bの上部から両側に突出するようにして側部41bの上部に固定されており、両切欠孔が形成された部分は側部41bの両側にそれぞれ突出している。
【0036】
また、回動片45b,45cは、側部41bを挟んで側部41bの内部側と外部側とにそれぞれ配置された略L形の板部材からなっており、側部41aの外側に配置された回動片45cには3個の穴部が間隔を保って形成され、側部41bの内側に配置された回動片45bには2個の穴部が間隔を保って形成されている。この一対の回動片45b,45cは、それぞれ一方の穴部に支軸を挿通させて側部41bの両側に上下方向に回転可能な状態で取り付けられている。そして、回動片45bのもう一方の穴部にスロットルワイヤ47のワイヤ部の端部を係止させている。
【0037】
また、回動片45cの中央の穴部にはホイールブレーキワイヤ38のワイヤ部の端部を係止させている。そして、コイルばね45dは、両端部を、回動片45cの他方の穴部と固定片45aとに係合させた状態で取り付けられている。また、操作レバー42における側部42bの端部は、回動片45bの後面に固定されている。そして、回動片45cの後面には、L形のパーキングレバー48が設けられており、このパーキングレバー48の後部は側部42bの下部に係合している。
【0038】
このため、操作レバー42は、コイルばね44c弾性力によって上方に付勢されるとともに、コイルばね45dの弾性力によって上方に付勢されるパーキングレバー48を介してコイルばね45dによって上方に付勢されて、ハンドル41から離れる。また、操作レバー42の把持部42cをハンドル41の把持部41c側に押し付けると、パーキングレバー48も操作レバー42とともに把持部41c側に移動して、オーガブレーキワイヤ46、スロットルワイヤ47およびホイールブレーキワイヤ38がそれぞれ後方に引っ張られる。オーガブレーキワイヤ46の先端部は、エンジンのクランク軸とインペラ軸との間の駆動力伝達機構を接続したり切断したりするクラッチの近傍に延びている。
【0039】
そして、オーガブレーキワイヤ46の先端部には、クラッチにおけるインペラ軸側の回転体に当接することによりオーガ23の回転を制止するブレーキパッドを備えたブレーキ機構が接続されている。また、スロットルワイヤ47の先端部は、エンジンの近傍に延びて、エンジンの回転数を調節するアクセル機構に接続されている。ホイールブレーキワイヤ38は、前述したように、ロック機構37に接続されている。このため、オーガブレーキワイヤ46、スロットルワイヤ47およびホイールブレーキワイヤ38が後方に引っ張られることによって、オーガ23および移動用車輪32aは回転可能な状態になり、エンジンは回転数を増加させていく。
【0040】
また、パーキングレバー48は、操作レバー42とは別に、単独で操作することにより移動用車輪32aを回転可能な状態にすることもできる。このため、エンジンを駆動させない状態で、パーキングレバー48だけを把持部41c側に押し付けることにより除雪機Aを移動させることができる。また、エンジンを駆動させた状態で、パーキングレバー48だけを把持部41c側に押し付けることによりエンジンの駆動を停止させることなくアイドリング状態にして除雪機Aを移動させることができる。また、外郭部11の後面には、除雪機Aを始動可能な状態と始動不可の状態とに切り換えるための始動スイッチSWが設けられている。
【0041】
この構成において、除雪機Aを作動させる際には、まず、図9に示したように、ハンドル41の把持部41cを持ったのちに、操作レバー42の把持部42cをハンドル41の把持部41c側に押さえ付けて移動用車輪32aを回転可能な状態にする。ついで、ハンドル41を押しながら左右に操作して移動用車輪32a,32bを路面a上で回転させることにより除雪機Aを雪面まで移動させる。この場合、図10に示したように、除雪機Aを移動させる経路が路面aから傾斜状の雪面bに変化している場合には、除雪機Aを雪面bに向って押していくと、橇31の傾斜面部31bは雪面b上をスライドし、路面a上に残った傾斜面部31cはガイド突条33a,33bの湾曲した後部側を路面aに接触させながら前進する。
【0042】
このため橇31の底面にかかる路面aや雪面bからの摩擦抵抗は小さくなり、除雪機Aを容易に移動させることができる。また、その際、橇31が除雪機本体10に対して揺動自在になっているため、橇31が路面aや雪面bに接面することによって上下に傾いても除雪機本体10は作業者が操作し易い姿勢に保持させたまま除雪機Aを移動させることができる。そして、除雪機Aを、除雪作業を行う場所まで移動させたのちに、始動スイッチSWをオン側に操作するとともにリコイルハンドル14を引っ張ってエンジンを始動させる。さらに、シュート24の吐出口部24bを所定の方向、例えば除雪機Aの側方に向けたのちに、操作レバー42の把持部42cを再度ハンドル41の把持部41c側に押さえていく。
【0043】
これによって、再度移動用車輪32aとオーガ23は回転可能な状態になり、エンジンの回転数は徐々に増加していく。そして、クラッチが接続されてインペラ21とオーガ23とが回転を始める。このオーガ23の回転によって雪面bの雪はオーガケース22内に掻き込まれ、オーガケース22内に掻き込まれた雪はインペラ21の回転によってシュート24の上部側に吹き上げられる。シュート24の上部側に吹き上げられた雪は、吐出口部24bの開口から除雪機Aの側方に放出される。
【0044】
そして、操作レバー42の操作量を雪面の状態に応じて変更しながら、除雪機Aを雪面b上で移動させて除雪作業を順次行う。この場合、橇31が雪面bに接して滑ることにより、除雪機Aを容易に移動させることができ、橇31の下面に設けられたガイド溝31d,31eおよびガイド突条33a,33bのガイド作用によって除雪機Aは横滑りすることなく適正な状態で前進する。また、雪面bが水平面から傾斜面に変わる場合には、橇31の前部と後部にそれぞれ傾斜面部31b,31cが形成されているため、図10に示した状態のときと同様、除雪機Aをスムーズに前進させることができる。特に、傾斜面部31cは滑らかに湾曲しているため、雪面bの角部に入り込むことがなくスムーズに角部を通過できる。
【0045】
また、雪面bに凹凸があって橇31が上下に揺れても、除雪機本体10は操作し易い姿勢に維持できる。そして、除雪作業を停止する場合には、操作レバー42から手を離して操作レバー42の押圧操作を解除する。これによって、クラッチの接続が切断されて、エンジンからオーガ23への駆動力の伝達が遮断されると同時に、ブレーキ機構のブレーキパッドがクラッチの回転体の外周面に当接して回転体の回転を制止する。これによって、オーガ23は慣性によって回転を継続することを制止される。また、ロック機構37の係止片37bは移動用車輪32aのスポーク間に係合して移動用車輪32aを回転不能な状態にする。そして、エンジンの駆動を停止させるときには、始動スイッチSWをオフ側に操作する。
【0046】
このように、本実施形態に係る除雪機Aでは、橇31が除雪機本体10の支持軸36に揺動自在に取り付けられているため、ハンドル41に大きな力を加えることなく除雪機本体10を、雪面bに接した橇31に対して上下方向に回転できる。これによって、オーガ23と雪面bとの相対位置を容易に変更することができるようになり、凹凸等の起伏のある雪面bでの除雪作業が容易になる。また、橇31の接雪面に前後方向に延びるガイド突条33a,33bを設けたため、除雪機Aを雪面b上で移動させる際の摩擦抵抗が少なくり除雪機Aはスムーズに移動する。特に、除雪機Aを、アスファルト等の路面aから雪面bの上り坂を登坂させる場合に効果的である。
【0047】
さらに、ガイド溝31d,31eやガイド突条33a,33bを設けることによって、除雪機Aの直進性が向上するため、除雪作業や除雪機の移動作業がし易くなる。また、橇31の接雪面における支持軸36よりも前部側部分に平面部31aを形成したため、除雪機Aを平面状の雪面bで移動させる場合には、この平面部31aに除雪機Aの重さをかけるようにしてハンドル41を操作することにより除雪機Aの移動をスムーズにすることができる。さらに、橇31の接雪面における支持軸36よりも後部側部分に上方に向って傾斜する傾斜面部31cを形成したため、除雪機Aを雪面bや路面aにおける平面から傾斜面に変わる部分での移動がスムーズになる。
【0048】
特に、除雪機Aを、路面aから雪面bの上り坂を登坂させる場合には、橇31の前部側から後部側に除雪機の重さを移動させるようにしてハンドル41を操作することにより除雪機Aの移動をスムーズにすることができる。また、橇31の傾斜面部31cが滑らかな連続する曲面に形成されその後部側ほど急勾配になっているため除雪機Aの重心の移動が容易になり、除雪機Aは路面aと雪面bの上り坂との境界部分をスムーズに通過できる。
【0049】
特に、橇31の傾斜面部31cが路面aと雪面bの上り坂との境界部分を通過する際には、より効果的である。また、除雪機本体10の下部に、一対の移動用車輪32a,32bを設けたため、除雪機Aを路面a上で移動させる場合には、橇31の下面を路面aに接触させずにすむ。さらに、移動用車輪32a,32bを、橇31を支持する支持軸36に取り付けたため、橇31と移動用車輪32a,32bとを除雪機本体10に取り付けるための構造が単純になり除雪機A全体をコンパクトに構成できる。
【0050】
また、図11および図12には、本発明の他の実施形態に係る除雪機が備える橇51を示している。この橇51では、パイプ状の揺動軸受部54aと固定片54bとからなる一対の連結部54(一方しか図示せず)が橇51とは別体で構成され、予め支持軸56に取り付けられている。そして、連結部54の水平片の上面に前後方向に間隔を保って一対のフック状の被係合部55a(1個しか図示せず)が設けられ、橇51の上面における前後方向の中央部の両側に、それぞれ被係合部55aに係合可能な一対の回転式の係合部52を備えた係合部材53が取り付けられている。
【0051】
係合部52はそれぞれ橇51の上面に回転可能に取り付けられたレバー部52aと、レバー部52aの略中央両側に回転可能に連結され被係合部55aに係合可能なコ字状の係合片52bとで構成されている。この係合部52と被係合部55aとで本発明の着脱機構が構成される。そして、この橇51を除雪機に取り付ける場合には、図12(a)に示したように、橇51を除雪機本体の下方に置いて、橇51の係合部52を支持軸56の連結部54の下方に位置させた状態から、係合片52bの先端部を上方に向けた状態で橇51を持ち上げることにより、図12(b)に示したように、係合片52bを被係合部55aの上方に位置させる。
【0052】
つぎに、係合片52bを被係合部55aに係合させたのちに、レバー部52aの先端部を橇51の上面側に押えて回転させることにより橇51を係合部材53および連結部54を介して支持軸56に取り付けることができる。また、橇51を除雪機から外す場合には、前述した取り付けの際の操作を逆に行う。なお、レバー部52aは、係合片52bを被係合部55aに係合させた状態で橇51の上面側に回転させる際に、回転途中に設けられたピーク点を境界として、それ以上、橇51の上面側に回転すると橇51の上面側に付勢され、ピーク点を越えるまでは、橇51の上面から離れる方に付勢されるように構成されている。
【0053】
したがって、レバー部52aを回転操作する場合には、ピーク点に達するまでは付勢力に抗する力を加え、ピーク点を越えるとレバー部52aは自身の付勢力によって橇51の上面側に回転して、係合片52bを被係合部55aに固定させる。係合片52bと被係合部55aとの係合を解除するときには、その逆になる。これによると、工具等が不要で素手による簡単な操作だけで済むため、橇51の着脱が容易になる。また、この橇51のそれ以外の部分の構成は、前述した橇31と同一であり、この橇51を備えた除雪機の構成も前述した除雪機Aと同一である。
【0054】
また、本発明に係る除雪機は、前述した実施形態に限定するものでなく、本発明の技術的範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、除雪機Aに移動用車輪32a,32bを設けているが、この移動用車輪32a,32bは省略することができる。この場合、除雪機Aを路面a上で移動させる場合には、橇31,51のガイド突条33a,33bを路面aに接触させる。これによっても、除雪機Aは、路面aからの摩擦抵抗を小さくした状態で移動できる。
【0055】
また、移動用車輪を1個だけ設けたり、3個以上設けたりすることもできる。さらに、前述した実施形態では、一対のガイド突条33a,33bを設けているが、このガイド突条も1個でもよいし、3個以上の複数にしてもよい。また、橇31,51の傾斜面部31cを滑らかな円弧状の傾斜面に形成しているが、これに代えて平面状の傾斜面を繋ぎ合わせて全体として滑らかな傾斜面に形成することもできる。これによっても、前述した除雪機Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
さらに、着脱機構としては、係合部52と被係合部55aとからなる着脱機構に限らず、素手で着脱できる着脱機構であれば他の着脱機構を用いてもよい。このような着脱機構としては、例えば、橇の上面にねじ棒を設けるとともに、連結部の固定片における水平片にねじ棒が挿通できる挿通穴を設け、挿通穴を挿通した状態のねじ棒に、平面状の把持部を備えたねじを着脱可能に螺合させることにより、橇を着脱できる着脱機構等がある。
【符号の説明】
【0057】
10…除雪機本体、20…除雪部、31,51…橇、31a…平面部、31b,31c…傾斜面部、32a,32b…移動用車輪、34,35,54…連結部、36,56…支持軸、40…操作部、A…除雪機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除雪機本体と、前記除雪機本体の前部側に設けられた除雪部と、前記除雪機本体の後部側に設けられた操作部と、前記除雪機本体を支持する橇とを備えた除雪機であって、
軸方向を前記除雪機の幅方向に延ばした状態で前記除雪機本体に設けられた揺動軸に、前記橇の前後方向の中間部を揺動自在に取り付け、前記橇の接雪面における前記揺動軸よりも前部側部分に平面部を形成するとともに、前記橇の接雪面における前記揺動軸よりも後部側部分を、上方に向って傾斜し滑らかに連続する2以上の傾斜面または傾斜曲面で形成し、かつ前記2以上の傾斜面または傾斜曲面を後部側ほど急勾配になった傾斜面部で構成したことを特徴とする除雪機。
【請求項2】
前記除雪機本体に、車軸を前記揺動軸の軸芯と一致させた状態で左右一対の移動用車輪を設けた請求項1に記載の除雪機。
【請求項3】
前記橇の前記平面部の前部に、前記橇の後部側に設けられた前記傾斜面部よりも前後方向の長さが短い傾斜面部を設けた請求項1または2に記載の除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−150925(P2010−150925A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87183(P2010−87183)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2007−33910(P2007−33910)の分割
【原出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000201766)ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】