説明

除雪機

【課題】製造コストの増大を伴わずに除雪部を電動で昇降するための部材群の発熱を抑えることが可能な除雪機を提供する。
【解決手段】除雪機1に、クローラ5L・5Rを備える機体2、機体2に昇降可能に支持される除雪部12、各部を駆動するエンジン17、除雪部12を昇降させる昇降シリンダ24、除雪部12の上昇、下降および昇降停止を指示する昇降レバー34、昇降レバー34の操作を検知する昇降操作センサ、および昇降操作センサに検知された昇降レバー34の操作に基づいて昇降シリンダ24の動作を制御する制御部50を具備し、制御部50は昇降シリンダ24を動作させた場合には正の値、昇降シリンダ24を停止させた場合には負の値を積算し、積算値が所定の値に到達した場合には一定期間が経過するまで昇降シリンダ24を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータにより機体に対して除雪部を昇降可能な除雪機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対のクローラを備えた機体の前部にオーガからなる除雪部を設け、走行しつつ機体前方の地面に積もった雪を除雪する除雪機が知られている。このような除雪機の多くは、地面の傾斜あるいは凹凸に応じ、機体に対して除雪部を昇降することが可能である。
機体に対して除雪部を昇降可能な除雪機としては、機体に対して除雪部をネジ止めする位置(高さ)を変更可能な除雪機、機体および除雪部の間に設けられたアクチュエータ(油圧シリンダ、電動シリンダ等)を伸長あるいは収縮させる除雪機、等が知られている。
例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
機体および除雪部の間に設けられた電動シリンダにより機体に対して除雪部を昇降させる除雪機において除雪部の昇降動作を頻繁に行った場合、電動シリンダに設けられるモータ、電動シリンダに電力を供給する電気配線の中途部に設けられるリレースイッチ等の電装部品に流れる電流量が増大し、これらの電装部品が過度に発熱し、ひいてはこれらの電装部品の故障(耐久性の低下)の原因となる。
【0004】
このような事態を回避する一般的な方法としては、耐熱性に優れた電装部品を使用する、電装部品に設けられた温度センサにより検知された電装部品の温度が予め設定された許容温度以上となった場合には電動シリンダへの伸長および収縮の指令をキャンセルする、といった方法が挙げられる。
しかし、これらの方法は除雪機の製造コストの増大を招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−200201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みて為されたものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、製造コストの増大を伴わずに除雪部を電動で昇降するための部材群の発熱を抑えることが可能な除雪機を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に上記課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、一対のクローラを備える機体と、前記機体に昇降可能に支持される除雪部と、前記一対のクローラおよび前記除雪部を駆動するエンジンと、前記機体に対して前記除雪部を昇降させる昇降用電動アクチュエータと、前記昇降用電動アクチュエータへの電力の供給およびその停止を切り替える昇降用ドライバと、作業者の操作により前記除雪部の上昇、下降および昇降停止を指示する昇降操作部と、前記昇降操作部が上昇を指示していると検知した場合には上昇信号、下降を指示していると検知した場合には下降信号を送信し、昇降停止を指示していると検知した場合には信号を送信しない昇降操作検知部と、前記昇降操作検知部から前記上昇信号を受信した場合には前記昇降用ドライバに前記除雪部を上昇させるための上昇指令信号を送信し、前記昇降操作検知部から前記下降信号を受信した場合には前記昇降用ドライバに前記除雪部を下降させるための下降指令信号を送信し、前記昇降操作検知部から信号を受信しなかった場合には前記昇降用ドライバに信号を送信しない制御部と、を具備し、前記制御部は、前記昇降用ドライバに前記上昇指令信号を送信した場合には予め設定された正の上昇定数、前記昇降用ドライバに前記下降指令信号を送信した場合には予め設定された正の下降定数、前記昇降用ドライバに信号を送信しなかった場合には予め設定された負の昇降停止定数を予め設定された周期毎に積算することにより積算値を算出し、前記積算値が予め設定された許容積算値に到達した時点から予め設定された動作停止時間を経過するまでの間については、前記上昇信号および前記下降信号のいずれを受信した場合でも前記昇降用ドライバに信号を送信しない。
【0009】
請求項2においては、前記制御部は、前記昇降用ドライバに前記上昇指令信号を連続して送信している時間が予め設定された許容連続上昇時間に到達した時点から予め設定された上昇側停止時間を経過する時点までの間、および、前記昇降用ドライバに前記下降指令信号を連続して送信している時間が予め設定された許容連続下降時間に到達した時点から予め設定された下降側停止時間を経過する時点までの間、については、前記昇降操作検知部から前記上昇信号および前記下降信号のいずれを受信した場合でも前記昇降用ドライバに信号を送信しない。
【0010】
請求項3においては、前記エンジンの駆動力を前記一対のクローラに伝達する差動機構と、前記差動機構に駆動力を入力して前記一対のクローラの回転数に差分を発生させることにより前記機体を旋回させる旋回用電動モータと、前記旋回用電動モータへの電力の供給およびその停止を切り替える旋回用ドライバと、前記一対のクローラの回転数を検知する回転数検知部と、作業者の操作により前記機体の左旋回、右旋回または旋回停止を指示する旋回操作部と、前記旋回操作部が左旋回を指示していると検知した場合には左旋回信号、右旋回を指示していると検知した場合には右旋回信号を送信する旋回操作検知部と、をさらに具備し、前記制御部は、前記回転数検知部により検知された前記一対のクローラの回転数が予め設定された基本回転数以上のとき、前記旋回操作検知部から前記左旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記機体を左旋回させるための左旋回指令信号を送信し、前記旋回操作検知部から前記右旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記機体を右旋回させるための右旋回指令信号を送信し、前記回転数検知部により検知された前記一対のクローラの回転数が予め設定された基本回転数未満のとき、前記旋回操作検知部から前記左旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記左旋回指令信号のときよりも少ない電力で左旋回させるための緩左旋回指令信号を送信し、前記旋回操作検知部から前記右旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記右旋回指令信号のときよりも少ない電力で右旋回させるための緩右旋回指令信号を送信する。
【0011】
請求項4においては、前記旋回用電動モータへの電力の供給量を検知する電力供給量検知部をさらに具備し、前記制御部は、予め設定された積算時間の間における前記旋回用電動モータへの電力の供給量の積算値である電力積算値を前記電力供給量検知部により検知された前記旋回用電動モータへの電力の供給量に基づいて算出し、前記電力積算値が予め設定された許容電力積算値に到達した時点から予め設定された旋回抑制時間を経過するまでの間については、前記旋回操作検知部から前記左旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記緩左旋回指令信号を送信し、前記旋回操作検知部から前記右旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記緩右旋回指令信号を送信する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、製造コストの増大を伴わずに除雪部を電動で昇降するための部材群の発熱を抑えることが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る除雪機の実施の一形態を示す左側面図。
【図2】本発明に係る除雪機の実施の一形態の要部を示すブロック図。
【図3】第一発熱抑制昇降制御の実施例を示すタイムチャート図。
【図4】第二発熱抑制昇降制御の実施例を示すタイムチャート図。
【図5】基本旋回制御におけるパルス信号のデューティ比と第一発熱抑制旋回制御におけるパルス信号のデューティ比との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しつつ本発明に係る除雪機の実施の一形態である除雪機1の各部について説明する。
図1に示す除雪機1は走行経路上に積もっている雪を取り除き、当該走行経路から離れた位置に移動させる装置である。本実施形態の除雪機1はいわゆる歩行型の除雪機であり、作業者は、走行する除雪機1の後方を歩きつつ、除雪機1の各部の操作を行う。
図1および図2に示す如く、除雪機1は機体2、除雪部12、エンジン17、除雪クラッチ18、HST19、斜板モータ20、走行クラッチ21、差動機構22、左旋回モータ23L、右旋回モータ23R、昇降シリンダ24、発電機25、バッテリ26、電力計10、昇降用ドライバ27、左旋回用ドライバ28L、右旋回用ドライバ28R、回転数センサ29、操作ユニット30および制御部50を具備する。
【0015】
機体2は除雪機1の主たる構造体を成す部材である。機体2はメインフレーム3、ミッションケース4、一対のクローラ5L・5R、昇降フレーム9および機体カバー11を備える。メインフレーム3は機体2の主たる構造体を成す部材である。ミッションケース4はメインフレーム3の後端部に固定される。一対のクローラ5L・5Rは除雪機1の走行部を成す部材である。クローラ5Lはメインフレーム3の左側に設けられ、クローラ5Rはメインフレーム3の右側に設けられる。クローラ5Lは駆動輪6L、従動輪7L、およびこれらに巻回されるクローラベルト8Lを備える。同様に、クローラ5Rは駆動輪6R、従動輪7R、およびこれらに巻回されるクローラベルト8Rを備える。昇降フレーム9はメインフレーム3とともに機体2の主たる構造体を成す部材である。昇降フレーム9はメインフレーム3に対して昇降可能に(上下方向に相対移動可能に)支持される。機体カバー11は昇降フレーム9に固定され、機体2の上部を覆う。
【0016】
除雪部12は除雪カバー13、オーガ14、ブロワ15およびシュータ16を備える。
除雪カバー13は機体2の前方に配置され、昇降フレーム9の前端部に固定され、オーガ14およびブロワ15を収容する。オーガ14は除雪機1の走行経路上に積もっている雪を破砕しつつ後方に掻き込む(搬送する)。ブロワ15はオーガ14により掻き込まれた雪を上方に跳ね飛ばす。シュータ16はブロワ15により跳ね飛ばされた雪をガイドしつつ除雪カバー13の外部に放出し、放出された雪が落下する方向および距離を調整する。
【0017】
昇降フレーム9がメインフレーム3に対して上下移動することにより、昇降フレーム9の前端部に固定された除雪カバー13(ひいては除雪部12)もメインフレーム3(ひいては、機体2)に対して上方あるいは下方に移動する。このように、除雪部12は機体2に昇降可能に支持される。
【0018】
エンジン17は除雪機1の主たる駆動源であり、一対のクローラ5L・5Rおよび除雪部12を駆動する。エンジン17は防振ゴムを介して昇降フレーム9に固定される。エンジン17の出力軸は図示せぬ駆動力伝達機構を介して除雪部12(厳密には、オーガ14およびブロワ15)に接続され、エンジン17の駆動力(エンジン17により発生した駆動力)により駆動される。
除雪クラッチ18はエンジン17と除雪部12との間で駆動力を伝達する図示せぬ駆動力伝達機構の中途部に設けられる。本実施形態の除雪クラッチ18はいわゆる電磁クラッチであり、エンジン17から除雪部12への駆動力の伝達およびその停止を切り替える。
HST(Hydraulic Static Transmission;静油圧式無段変速機)19はいわゆる斜板式の無段変速機であり、斜板の角度を変更することにより入力軸に対する出力軸の回転方向(正転、逆転および停止)および入力軸の回転数に対する出力軸との回転数の比率を変更する。HST19の入力軸は図示せぬ駆動力伝達機構を介してエンジン17の出力軸に接続される。HST19の入力軸からHST19に入力されたエンジン17の駆動力は変速された後、HST19の出力軸から出力される。
斜板モータ20は電動式のサーボモータであり、その出力軸は図示せぬリンク機構を介してHST19の斜板に連結される。斜板モータ20の出力軸が回動することにより、HST19の斜板の角度を変更することが可能である。
走行クラッチ21はエンジン17とHST19との間で駆動力を伝達する図示せぬ駆動力伝達機構の中途部に設けられる。本実施形態の走行クラッチ21はいわゆる電磁クラッチであり、エンジン17からHST19への駆動力の伝達およびその停止を切り替える。
差動機構22はHST19により変速されたエンジン17の駆動力を更に変速して一対のクローラ5L・5R(駆動輪6L・6R)に伝達する。本実施形態の差動機構22は一対の遊星歯車機構22L・22Rを備える。本実施形態の一対の遊星歯車機構22L・22Rは互いに左右対称な形状を有し、いずれもサンギア、キャリア、アウターギアおよび複数のプラネタリギアを備える。一対の遊星歯車機構22L・22Rはミッションケース4に収容される。一対の遊星歯車機構22L・22Rのサンギアはいずれも図示せぬ駆動力伝達機構を介してHST19の出力軸に接続され、一対の遊星歯車機構22L・22Rのキャリアはそれぞれ一対のクローラ5L・5R(駆動輪6L・6R)に接続される。
【0019】
左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rを合わせたものは本発明に係る旋回用電動モータの実施の一形態である。本実施形態では、左旋回モータ23Lの出力軸に設けられたウォームギアがウォームホイールとしての遊星歯車機構22Lのアウターギアに噛合することにより、左旋回モータ23Lが遊星歯車機構22Lに接続される。同様に、右旋回モータ23Rの出力軸に設けられたウォームギアがウォームホイールとしての遊星歯車機構22Rのアウターギアに噛合することにより、右旋回モータ23Rが遊星歯車機構22Rに接続される。左旋回モータ23Lを回転駆動し、遊星歯車機構22Lに駆動力を入力する(遊星歯車機構22Lのアウターギアを回転させる)ことにより、遊星歯車機構22Lのキャリア、ひいてはクローラ5Lの回転数を変更可能である。同様に、右旋回モータ23Rを回転駆動し、遊星歯車機構22Rに駆動力を入力する(遊星歯車機構22Rのアウターギアを回転させる)ことにより、遊星歯車機構22Rのキャリア、ひいてはクローラ5Rの回転数を変更可能である。従って、左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rに供給する電力を適宜調整し、左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rの回転数の間に差分を発生させることにより、一対のクローラ5L・5Rの回転数の間に差分が発生し、除雪機1は一対のクローラ5L・5Rのうち回転数が小さい方を内側として旋回する。
【0020】
昇降シリンダ24は本発明に係る昇降用電動アクチュエータの実施の一形態である。本実施形態の昇降シリンダ24は複動式の油圧シリンダ、ポンプおよび電動式モータを備え、これらを一つのユニットとして組み上げたものである。昇降シリンダ24の電動式モータに通電することにより昇降シリンダ24のポンプが回転駆動され、当該ポンプが当該油圧シリンダに作動油を圧送し、当該油圧シリンダが伸長または収縮する。
図1に示す如く、昇降シリンダ24の油圧シリンダの一端部および他端部は、それぞれ「メインフレーム3に設けられたブラケット3a」および「昇降フレーム9に設けられたブラケット9a」に回動可能に連結される。昇降シリンダ24が伸長したとき除雪部12は機体2に対して上昇し、昇降シリンダ24が収縮したとき除雪部12は機体2に対して下降する。このように、昇降シリンダ24は機体2に対して除雪部12を昇降させる。
【0021】
発電機25は除雪機1の各部に供給するための電力を発生させるものである。エンジン17の出力軸に接続された発電機25の入力軸が回転することにより、発電機25は電力を発生させる。
バッテリ26は発電機25に接続され、発電機25により発生した電力を蓄える。また、バッテリ26は蓄えた電力を後述する制御部50により制御されるドライバ群(昇降用ドライバ27、左旋回用ドライバ28L、右旋回用ドライバ28R等)を介して昇降シリンダ24(厳密には、昇降シリンダ24の電動式モータ)、左旋回モータ23L、右旋回モータ23Rおよび斜板モータ20に供給する。
電力計10は本発明に係る電力供給量検知部の実施の一形態である。電力計10はバッテリ26から左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rに供給される電力量を検知し、検知された電力量を示す電気信号を送信する。
【0022】
昇降用ドライバ27はバッテリ26と昇降シリンダ24とを接続する配線の中途部に設けられ、後述する制御部50から受信する電気信号に応じてバッテリ26から昇降シリンダ24への電力の供給およびその停止を切り替え、ひいては昇降シリンダ24の伸長、収縮および長さの保持を行う。
【0023】
左旋回用ドライバ28Lおよび右旋回用ドライバ28Rを合わせたものは本発明に係る旋回用ドライバの実施の一形態である。左旋回用ドライバ28Lはバッテリ26と左旋回モータ23Lとを接続する配線の中途部に設けられ、後述する制御部50から受信する電気信号に応じてバッテリ26から左旋回モータ23Lへの電力の供給およびその停止を切り替える。右旋回用ドライバ28Rはバッテリ26と右旋回モータ23Rとを接続する配線の中途部に設けられ、後述する制御部50から受信する電気信号に応じてバッテリ26から右旋回モータ23Rへの電力の供給およびその停止を切り替える。本実施形態の左旋回用ドライバ28Lおよび右旋回用ドライバ28RはいずれもPWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)制御を行うためのスイッチング素子を備え、制御部50から受信したパルス信号(電気信号)に対応するデューティ比でスイッチング動作する。制御部50が当該パルス信号のデューティ比を変更することにより、左旋回用ドライバ28Lを経て左旋回モータ23Lに供給される電力量および右旋回用ドライバ28Rを経て右旋回モータ23Rに供給される電力量を変更することが可能である。
【0024】
回転数センサ29は本発明に係る回転数検知部の実施の一形態である。本実施形態の回転数センサ29はHST17の出力軸と差動機構22との間で駆動力を伝達する駆動力伝達機構を構成する図示せぬ伝動軸の回転数を検知するタコメータであり、当該回転数に係る情報(除雪機1が直進している場合における一対のクローラ5L・5Rの回転数に係る情報)を電気信号として送信する。
【0025】
操作ユニット30は機体2の後部に設けられる。操作ユニット30はハンドル31、変速レバー32、変速操作センサ33、昇降レバー34、昇降操作センサ35、左旋回レバー36L、左旋回操作センサ37L、右旋回レバー36R、右旋回操作センサ37R、走行クラッチレバー38、走行クラッチスイッチ39、除雪クラッチボタン40および除雪クラッチスイッチ41を備える。
【0026】
ハンドル31は除雪機1による除雪作業を行う際に作業者が手で持って姿勢を保持するための部材である。本実施形態のハンドル31は金属管を適宜屈曲することにより製造される。ハンドル31の前下端部は昇降フレーム9の後端部に固定され、ハンドル31の後上部は除雪機1の機体2の後方に突出する。
変速レバー32は作業者が後述する制御部50に除雪機1の前進、後進および走行停止を指示し、かつ前進時または後進時における除雪機1の走行速度を指示するための部材である。変速レバー32はハンドル31に回動可能に連結される。作業者が変速レバー32を回動させ(変速レバー32を操作し)、ハンドル31に対する変速レバー32の回動角度を変更することにより、変速レバー32は除雪機1の前進、後進および走行停止を指示し、前進時または後進時における除雪機1の走行速度を設定(指示)することが可能である。
変速操作センサ33は変速レバー32をハンドル31に回動可能に連結する回動軸に設けられ、変速レバー32の回動角度、ひいては「変速レバー32が前進、後進および走行停止のいずれを指示しているか、ならびに前進時または後進時における除雪機1の走行速度の指示値」を検知する。本実施形態の変速操作センサ33はポテンショメータであり、変速レバー32の回動角度に係る情報を電気信号として送信する。
【0027】
昇降レバー34は本発明に係る昇降操作部の実施の一形態であり、作業者が除雪部12の上昇、下降および昇降停止を後述する制御部50に指示するための部材である。本実施形態の昇降レバー34はハンドル31に回動可能に連結される。作業者が昇降レバー34を回動させ(昇降レバー34を操作し)、昇降レバー34を予め設定された「上昇位置」、「下降位置」および「昇降停止位置」の三つの位置のいずれかに移動させることにより、昇降レバー34は除雪部12の上昇、下降および昇降停止を指示することが可能である。
【0028】
昇降操作センサ35は本発明に係る昇降操作検知部の実施の一形態である。昇降操作センサ35は「昇降レバー34が予め設定された上昇位置、下降位置および昇降停止位置のいずれに配置されているか(昇降レバー34が除雪部12の上昇、下降および昇降停止のいずれを指示しているか)」を検知する。昇降操作センサ35は昇降レバー34が上昇位置に配置されていると検知した場合には(後述する制御部50に)「上昇信号」を電気信号として送信し、下降位置に配置されていると場合には「下降信号」を電気信号として送信し、昇降停止位置に配置されていると検知した場合には電気信号(信号)を送信しない。
本実施形態の昇降操作センサ35は昇降レバー34に設けられる一対のスイッチであり、昇降レバー34が上昇位置に配置されたときには当該一対のスイッチの一方がオンになり、昇降レバー34が下降位置に配置されたときには当該一対のスイッチの他方がオンになり、昇降レバー34が昇降停止位置に配置されたときには当該一対のスイッチがいずれもオフになる。このように、本実施形態では上記の昇降操作センサ35を構成する一対のスイッチのオン・オフの組み合わせがそれぞれ「上昇信号を送信する」、「下降信号を送信する」、および「信号を送信しない」に相当する。
【0029】
左旋回レバー36Lおよび右旋回レバー36Rを合わせたものは本発明に係る旋回操作部の実施の一形態である。本実施形態の左旋回レバー36Lはハンドル31の左側部に回動可能に連結され、右旋回レバー36Rはハンドル31の右側部に回動可能に連結される。左旋回レバー36Lおよび右旋回レバー36Rはいずれも、これらのレバーの先端部(後端部)がハンドル31の下方に移動する方向に(左側面視で時計回りに)回動するように図示せぬバネで付勢されている。作業者が左手で左旋回レバー36Lまたは右旋回レバー36Rのいずれかとハンドル31とを合わせて握り、適宜回動させる(これらのレバーを操作する)ことにより、左旋回レバー36Lおよび右旋回レバー36Rを合わせたものは除雪機1の機体2の左旋回、右旋回および旋回停止(直進)を後述する制御部50に指示することが可能である。
【0030】
左旋回操作センサ37Lおよび右旋回操作センサ37Rは本発明に係る旋回操作検知部の実施の一形態である。本実施形態の左旋回操作センサ37Lは左旋回レバー36Lをハンドル31に回動可能に連結する回動軸に設けられるポテンショメータであり、右旋回操作センサ37Rは右旋回レバー36Rをハンドル31に回動可能に連結する回動軸に設けられるポテンショメータである。左旋回操作センサ37Lは左旋回レバー36Lの回動角度を検知し、当該回動角度に応じた電気信号(電圧)を送信する。同様に、右旋回操作センサ37Rは右旋回レバー36Rの回動角度を検知し、当該回動角度に応じた電気信号(電圧)を送信する。本実施形態の場合、後述する制御部50は左旋回レバー36Lの回動角度が大きい(作業者が左旋回レバー36Lを強く握り込む)ほどクローラ5Lの回転数を減少させ、右旋回レバー36Rの回動角度が大きい(作業者が右旋回レバー36Rを強く握り込む)ほどクローラ5Rの回転数を減少させる制御を行う。
【0031】
走行クラッチレバー38は作業者が走行クラッチ21を操作するための部材である。走行クラッチレバー38はハンドル31の後端部の上側に回動可能に連結される。走行クラッチレバー38は走行クラッチレバー38の先端部(後端部)が上方に回動する向きに(左側面視で反時計回りに)図示せぬバネで付勢される。作業者がハンドル31および走行クラッチレバー38を一緒に握ったとき(走行クラッチレバー38の先端部が下方に回動しているとき)、走行クラッチレバー38は「クラッチ入」を指示する。作業者が走行クラッチレバー38に触れずに走行クラッチレバー38の先端部が上方に回動しているとき、走行クラッチレバー38は「クラッチ切」を指示する。
走行クラッチスイッチ39は走行クラッチレバー38に設けられるスイッチであり、走行クラッチレバー38が「クラッチ入」および「クラッチ切」のいずれを指示しているかを検出する。走行クラッチスイッチ39は走行クラッチレバー38が「クラッチ入」を指示しているときにその旨を示す電気信号(オン信号)を送信し、「クラッチ切」を指示しているときに電気信号を送信しない。
【0032】
除雪クラッチスイッチ41はボタンと一体的に構成されるスイッチである。除雪クラッチスイッチ41が「クラッチ入」を指示しているときにはその旨を示す電気信号(オン信号)を送信し、除雪クラッチスイッチ41は「クラッチ切」を指示しているときには電気信号を送信しない。
【0033】
制御部50は除雪機1の各部の動作(除雪機1の走行、除雪機1の旋回(操向)、除雪部12の駆動、除雪部12の昇降等)を制御するものであり、ハンドル31に固定される。
制御部50は種々のプログラム等を格納し、これらのプログラム等を展開し、これらのプログラム等に従って所定の演算を行い、当該演算の結果等を記憶することができる。本実施形態の制御部50はバスで接続されたCPU、ROM、RAM等を備える。
制御部50は除雪クラッチ18、斜板モータ20、走行クラッチ21、昇降用ドライバ27、左旋回用ドライバ28Lおよび右旋回用ドライバ28Rに接続され、これらに電気信号を送信することが可能である。また、制御部50は電力計10、回転数センサ29、変速操作センサ33、昇降操作センサ35、左旋回操作センサ37L、右旋回操作センサ37R、走行クラッチスイッチ39および除雪クラッチスイッチ41に接続され、これらから電気信号を受信することが可能である。
【0034】
以下では、制御部50による除雪機1の走行制御について説明する。
作業者がハンドル31および走行クラッチレバー38を一緒に握り、走行クラッチスイッチ39が制御部50に「オン信号」を送信したとき、「オン信号」を受信した制御部50は走行クラッチ21に「クラッチ入り信号」を送信し、「クラッチ入り信号」を受信した走行クラッチ21は「入」となってエンジン17からHST19に駆動力を伝達可能な状態に切り替わる。作業者が走行クラッチレバー38から手を離したとき、走行クラッチスイッチ39は制御部50に電気信号を送信せず、走行クラッチスイッチ39から電気信号を受信しない制御部50は走行クラッチ21に電気信号を送信せず、制御部50から電気信号を受信しない走行クラッチ21は「切」となってエンジン17からHST19への駆動力の伝達を停止する状態に切り替わる。
作業者が変速レバー32を回動させ、ある回動角度で保持したとき、変速操作センサ33は変速レバー32の回動角度に係る情報を制御部50に電気信号として送信する。制御部50は変速操作センサ33から受信した電気信号に基づき、変速レバー32が除雪機1の前進、後進および走行停止のいずれを指示しているか、並びに、前進時または後進時における除雪機1の走行速度の指示値(設定値)を判定し、その判定結果に対応する電気信号を斜板モータ20に送信する。斜板モータ20は制御部50から受信した電気信号に基づいてHST19の斜板の角度を変更し、HST19の入力軸に対する出力軸の回転方向(正転、逆転および停止)および入力軸の回転数に対する出力軸との回転数の比率を変更する。このように、制御部50は除雪機1の走行(前進、後進、走行停止および走行時の速度)を制御する。
【0035】
以下では、制御部50による除雪部12の駆動制御について説明する。
作業者が除雪クラッチボタン40を一度押したとき、除雪クラッチスイッチ41は「クラッチ入」を示すオン信号を制御部50に送信し、当該オン信号を受信した制御部50は除雪クラッチ18に「クラッチ入り信号」を送信し、「クラッチ入り信号」を受信した除雪クラッチ18は「入」となってエンジン17から除雪部12に駆動力を伝達可能な状態に切り替わる。作業者が除雪クラッチボタン40を再度押したとき、除雪クラッチスイッチ41は制御部50に電気信号を送信せず、除雪クラッチスイッチ41から電気信号を受信しない制御部50は除雪クラッチ18に電気信号を送信せず、制御部50から電機信号を受信しない除雪クラッチ18は「切」となってエンジン17から除雪部12への駆動力を停止した状態に切り替わる。
【0036】
以下では、制御部50による除雪部12の昇降制御について説明する。
本実施形態では、制御部50による除雪部12の昇降制御は「基本昇降制御」、「第一発熱抑制昇降制御」、および「第二発熱抑制昇降制御」の三つの制御を含む。
【0037】
以下では、制御部50による除雪部12の基本昇降制御について説明する。
作業者が昇降レバー34を「上昇位置」に移動させたとき、昇降操作センサ35は「上昇信号」を制御部50に送信する。昇降操作センサ35から「上昇信号」を受信したとき、制御部50は昇降用ドライバ27に「上昇指令信号」を送信する。ここで、「上昇指令信号」は除雪部12を上昇させるための電気信号(除雪部12を上昇させるべく昇降シリンダ24に電力を供給する旨の電気信号)である。制御部50から「上昇指令信号」を受信したとき、昇降用ドライバ27は自己の内部接点を切り替え、昇降シリンダ24が伸長する方向に昇降シリンダ24の電動式モータが回転駆動されるようにバッテリ26からの電力を昇降シリンダ24に供給する。その結果、昇降シリンダ24は伸長し、昇降フレーム9、ひいては除雪部12が機体2に対して上昇する。
【0038】
作業者が昇降レバー34を「下降位置」に移動させたとき、昇降操作センサ35は「下降信号」を制御部50に送信する。昇降操作センサ35から「下降信号」を受信した制御部50は昇降用ドライバ27に「下降指令信号」を送信する。ここで「下降指令信号」は除雪部12を下降させるための電気信号(除雪部12を下降させるべく昇降シリンダ24に電力を供給する旨の電気信号)である。制御部50から「下降指令信号」を受信したとき、昇降用ドライバ27は自己の内部接点を切り替え、昇降シリンダ24が収縮する方向に昇降シリンダ24の電動式モータが回転駆動されるようにバッテリ26からの電力を昇降シリンダ24に供給する。その結果、昇降シリンダ24は収縮し、昇降フレーム9、ひいては除雪部12が機体2に対して下降する。
【0039】
作業者が昇降レバー34を「昇降停止位置」に移動させたとき、昇降操作センサ35は制御部50に電気信号を送信しない。昇降操作センサ35から電気信号を受信していないとき、制御部50は昇降用ドライバ27に電気信号(信号)を送信しない。制御部50から電気信号を受信していないとき、昇降用ドライバ27は自己の内部接点を切り替え、バッテリ26から昇降シリンダ24への電力の供給を停止する。その結果、昇降シリンダ24は伸長も収縮もせず、機体2に対する除雪部12の高さは保持される。
【0040】
以下では、制御部50による除雪部12の第一発熱抑制昇降制御について説明する。
制御部50は、予め設定された「許容連続上昇時間」、「上昇側停止時間」、「許容連続下降時間」および「下降側停止時間」を記憶している。本実施形態における「許容連続上昇時間」、「上昇側停止時間」、「許容連続下降時間」および「下降側停止時間」は、いずれも除雪部12を電動で昇降するための部材群(昇降シリンダ24の電動式モータ、昇降用ドライバ27、およびこれらを接続する配線等)の発熱を抑え、ひいてはこれらの部材群の発熱(温度上昇)による故障、破損、耐久性の低下、性能の低下等を防止する観点から定められる。本実施形態における「許容連続上昇時間」は、上記観点から除雪部12を連続で上昇させることが許容される時間(の長さ)である。本実施形態における「許容連続下降時間」は、上記観点から除雪部12を連続で下降させることが許容される時間(の長さ)である。本実施形態における「上昇側停止時間」は、「許容連続上昇時間」だけ除雪部12を連続で昇降させた場合において、その後上記観点から除雪部12の昇降を停止させておくべき時間(の長さ)である。本実施形態における「下降側停止時間」は、「許容連続下降時間」だけ除雪部12を連続で昇降させた場合において、その後上記観点から除雪部12の昇降を停止させておくべき時間(の長さ)である。
「許容連続上昇時間」、「上昇側停止時間」、「許容連続下降時間」および「下降側停止時間」は実験あるいはシミュレーションにより求められる。「許容連続上昇時間」および「許容連続下降時間」は等しい値でも良く、異なった値でも良い。また「上昇側停止時間」および「下降側停止時間」は等しい値でも良く、異なった値でも良い。
【0041】
制御部50は、昇降用ドライバ27に「上昇指令信号」を連続して送信している時間が「許容連続上昇時間」に到達した場合(昇降用ドライバ27に「上昇指令信号」を連続して送信している時間と「許容連続上昇時間」とが同じ長さになった場合)、その時点から「上昇側停止時間」を経過する時点までの間は基本昇降制御よりも優先して(基本昇降制御に替えて)第一発熱抑制昇降制御を適用する。また、制御部50は、昇降用ドライバ27に「下降指令信号」を連続して送信している時間が「許容連続下降時間」に到達した場合、その時点から「下降側停止時間」を経過する時点までの間は基本昇降制御よりも優先して(基本昇降制御に替えて)第一発熱抑制昇降制御を適用する。
【0042】
第一発熱抑制昇降制御が適用されている間において、制御部50は昇降操作センサ35から「上昇信号」、「下降信号」のいずれの電気信号を受信した場合でも昇降用ドライバ27に電気信号(信号)を送信しない。従って、第一発熱抑制昇降制御が適用されている間において、昇降用ドライバ27は自己の内部接点を切り替え、バッテリ26から昇降シリンダ24への電力の供給を停止する。その結果、昇降シリンダ24は伸長も収縮もせず、機体2に対する除雪部12の高さは保持される。
このように、第一発熱抑制昇降制御が適用されている間、除雪部12を電動で昇降するための部材群(昇降シリンダ24の電動式モータ、昇降用ドライバ27、およびこれらを接続する配線等)には通電されないので、これらの部材群の発熱が抑えられる。
【0043】
なお、「許容連続上昇時間」は除雪部12の下限位置(除雪部12および機体2の干渉等の観点からこれ以上除雪部12を機体2に対して下降させることが出来ない位置)から除雪部12の上限位置(除雪部12および機体2の干渉等の観点からこれ以上除雪部12を機体2に対して上昇させることが出来ない位置)まで除雪部12を上昇させるのに要する時間よりも長い値に設定することが望ましい。同様に、「許容連続下降時間」は除雪部12の上限位置から除雪部12の下限位置まで除雪部12を下降させるのに要する時間よりも長い値に設定することが望ましい。このように「許容連続上昇時間」および「許容連続下降時間」を設定することにより、作業時やメンテナンス時に除雪部12が上限位置または下限位置に達した状態で除雪部12が更に上限位置または下限位置を超える方向に昇降レバー34を操作し続けた場合でも、制御部50は第一発熱抑制昇降制御を適用し、昇降シリンダ24の伸縮動作が停止され、除雪部12の上限位置または下限位置を容易に認識できるとともに、空費される電力を抑えることが可能である。
【0044】
以下では図3を用いて制御部50による第一発熱抑制昇降制御の実施例を示す。
図3に示す実施例では、制御部50は昇降操作センサ35から時刻t10から時刻t11までの間については上昇信号を受信し、時刻t11から時刻t12までの間については電気信号を受信せず(信号オフ)、時刻t12から時刻t13までの間は下降信号を受信し、時刻t13以降については電気信号を受信しない(図3の(b)を参照)。また、本実施例では、許容連続上昇時間はTua、許容連続下降時間はTda、上昇側停止時間はTus、下降側停止時間はTdsと設定される。
なお、本実施例ではt10<(t10+Tua)<t11<(t10+Tua+Tus)<t12<(t12+Tda)<t13<(t12+Tda+Tds)が成立する。
図3の(a)において太い実線で示す如く、制御部50は、時刻t10から時刻(t10+Tua)までの間、時刻(t10+Tua+Tus)から時刻(t12+Tda)までの間、および時刻(t12+Tda+Tds)以降は基本昇降制御を適用する。
また、制御部50は、時刻(t10+Tua)から時刻(t10+Tua+Tus)までの間、および時刻(t12+Tda)から時刻(t12+Tda+Tds)までの間は第一発熱抑制昇降制御を適用する。
従って、図3の(c)において太い実線で示す如く、制御部50は、昇降用ドライバ27に時刻t10から時刻(t10+Tua)までの間については上昇指令信号を送信し、時刻(t10+Tua)から時刻t12までの間については電気信号を送信せず、時刻t12から時刻(t12+Tda)までの間については下降指令信号を送信し、時刻(t12+Tda)以降については電気信号を送信しない。なお、図3の(c)における太い点線は「基本昇降制御のみの昇降制御を仮に行った場合」における送信信号の推移を示す。
【0045】
以下では、制御部50による除雪部12の第二発熱抑制昇降制御について説明する。
制御部50は、予め設定された「上昇定数」、「下降定数」、「昇降停止定数」、「許容積算値」および「動作停止時間」を記憶している。本実施形態における「上昇定数」は除雪部12の上昇に起因して除雪部12を電動で昇降するための部材群が発熱する場合の発熱量(温度上昇)に相関する値であり、正の値で表される。本実施形態における「下降定数」は除雪部12の下降に起因して除雪部12を電動で昇降するための部材群が発熱する場合の発熱量(温度上昇)に相関する値であり、正の値で表される。本実施形態における「昇降停止定数」は除雪部12の昇降停止に起因して除雪部12を電動で昇降するための部材群が放熱する場合の放熱量(温度低下)に相関する値であり、負の値で表される。
【0046】
制御部50は、予め設定された周期(サイクルタイム)毎に昇降用ドライバ27に送信する電気信号が「上昇指令信号」、「下降指令信号」または「信号オフ(信号を送信しない)」のいずれであるかを判定し、「上昇指令信号」であると判定した場合には「上昇定数(正の値)」、「下降指令信号」であると判定した場合には「下降定数(正の値)」、「信号オフ」であると判定した場合には「昇降停止定数(負の値)」を積算することにより、「積算値」を算出する。なお、本実施形態では、制御部50は、ある時刻の一周期前の時刻に算出された積算値がゼロとなり、かつ当該時刻において昇降用ドライバ27に送信する電気信号が「信号無し」である場合には、当該時刻における積算値を「ゼロ」とする(算出された積算値が負の値になる場合には、積算値を「ゼロ」に補正する)。
【0047】
本実施形態における「許容積算値」および「動作停止時間」は、いずれも除雪部12を電動で昇降するための部材群の発熱を抑え、ひいてはこれらの部材群の発熱(温度上昇)による故障、破損、耐久性の低下、性能の低下等を防止する観点から定められる。本実施形態における「許容積算値」は上記観点から許容される積算値の上限値であり、「動作停止時間」は積算値が許容積算値に到達した場合に上記観点から除雪部12の昇降を停止させるべき時間(の長さ)である。
【0048】
制御部50は、前記積算値が予め設定された許容積算値に到達した場合(前記積算値が許容積算値と同じ値になった場合)、その時点から「動作停止時間」を経過するまでの間は基本昇降制御に優先して(に替えて)第二発熱抑制昇降制御を適用する。
【0049】
第二発熱抑制昇降制御が適用されている間において、制御部50は昇降操作センサ35から「上昇信号」、「下降信号」のいずれの電気信号を受信した場合でも昇降用ドライバ27に電気信号(信号)を送信しない。従って、制御部50から電気信号(信号)を受信した昇降用ドライバ27は自己の内部接点を切り替え、バッテリ26から昇降シリンダ24への電力の供給を停止する。その結果、昇降シリンダ24は伸長も収縮もせず、機体2に対する除雪部12の高さは保持される。このように、第二発熱抑制昇降制御が適用されている間、除雪部12を電動で昇降するための部材群には通電されないので、これらの部材群の発熱が抑えられる。
【0050】
以下では図4を用いて制御部50による第二発熱抑制昇降制御の実施例を示す。
図4に示す実施例では、制御部50は昇降操作センサ35から時刻t20から時刻t21までの間については信号を受信せず、時刻t21から時刻t22までの間については下降信号を受信し、時刻t22から時刻t23までの間については信号を受信せず、時刻t23から時刻t24までの間については上昇信号を受信し、時刻t24から時刻t25までの間については信号を受信せず、時刻t25から時刻t26までの間については上昇信号を受信し、時刻t26から時刻t27までの間については下降信号を受信し、時刻t27から時刻t28までの間については上昇信号を受信し、時刻t28から時刻t29までの間については下降信号を受信し、時刻t29以降については上昇信号を受信する(図4の(b)を参照)。本実施例では上昇定数は「+1」、下降定数は「+1」、昇降停止定数は「−1」、許容積算値はNia(正の値)、動作停止時間はTmsと設定される。
図4の(a)に示す如く、制御部50は、時刻t20から時刻t30までの間は基本昇降制御を適用する。なお、時刻t30は時刻t27と時刻t28の間の時刻である(t27<t30<t28)。
図4の(d)に示す如く、制御部50が算出する積算値は、時刻t20から時刻t21までの間についてはゼロであり、時刻t21から時刻t22までの間については時間の経過とともに増加し、時刻t22から時刻t23までの間については時間の経過とともに減少し、時刻t23から時刻t24までの間については時間の経過とともに増加し、時刻t24から時刻t25までの間については時間の経過とともに減少し、時刻t25から時刻t30までの間については時間の経過とともに増加し、時刻t30において許容積算値Niaに到達する。
図4の(a)において太い実線で示す如く、制御部50は、時刻t30から時刻(t30+Tms)までの間は第二発熱抑制昇降制御を適用する。なお、時刻(t30+Tms)は時刻t29よりも後の時刻である(t29<t30+Tms)。図4の(c)に示す如く、制御部50は昇降用ドライバ27に時刻t30から時刻(t30+Tms)までの間については信号を送信しない。図4の(d)に示す如く、制御部50が算出する積算値は、時刻t30から時刻(t30+Tms)までの間については時間の経過とともに減少する。
図4の(a)に示す如く、制御部50は、時刻(t30+Tms)以降は基本昇降制御を適用する。なお、時刻(t30+Tms)は時刻t29よりも後の時刻である(t29<(t30+Tms))。図4の(c)に示す如く、制御部50は、時刻(t30+Tms)以降は昇降用ドライバ27に上昇指令信号を送信する。図4の(d)に示す如く、制御部50が算出する積算値は、時刻(t30+Tms)以降については時間の経過とともに増加する。なお、図4の(c)における太い点線は「基本昇降制御のみの昇降制御を仮に行った場合」における送信信号の推移を示す。
【0051】
以下では、制御部50による除雪機1の旋回制御について説明する。
本実施形態では、制御部50による除雪機1の旋回制御は「基本旋回制御」、「第一発熱抑制旋回制御」、および「第二発熱抑制旋回制御」の三つの制御を含む。
制御部50は予め設定された「基本回転数」を記憶している。本実施形態における「基本回転数」は制御部50が「基本旋回制御」および「第一発熱抑制旋回制御」のいずれを適用するかを判定する指標となるものであり、「除雪機1の直進時の走行速度」を反映する値である。本実施形態における「基本回転数」は実験あるいはシミュレーションにより求められる。なお、除雪機1がスピンターンし得る速度(一対のクローラ5L・5Rの一方が前進方向に回転し、他方が後進方向に回転することにより除雪機1が旋回し得る速度)に基づいて「基本回転数」を設定しても良い。制御部50は回転数センサ29から受信した「HST17の出力軸と差動機構22との間で駆動力を伝達する駆動力伝達機構を構成する伝動軸の回転数」が「基本回転数」以上である場合は「基本旋回制御」を適用し、算出された「除雪機1の直進時の走行速度」が「基本回転数」未満である場合は「第一発熱抑制旋回制御」を適用する。
【0052】
以下では、制御部50による除雪機1の基本旋回制御について説明する。
左旋回操作センサ37Lは左旋回レバー36Lの回動角度を示す電気信号を制御部50に送信し、右旋回操作センサ37Rは右旋回レバー36Rの回動角度を示す電気信号を制御部50に送信する。これらの電気信号を受信した制御部50は、左旋回レバー36Lの回動角度を示す電気信号に対応するデューティ比のパルス信号を左旋回用ドライバ28Lに送信し、右旋回レバー36Rの回動角度を示す電気信号に対応するデューティ比のパルス信号を右旋回用ドライバ28Rに送信する。本実施形態では左旋回レバー36Lの回動角度が大きい(作業者が左旋回レバー36Lおよびハンドル31を強く握る)ほど制御部50が左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号のデューティ比(パルス信号の周期(オン時間およびオフ時間を合わせたもの)を分母とし、パルス信号のオン時間を分子とする値)が大きくなる。右旋回レバー36Rの回動角度と制御部50が右旋回用ドライバ28Rに送信するパルス信号のデューティ比との関係についても同様である。なお、これらのデューティ比の最小値は「0」、最大値は「1」である。
【0053】
基本旋回制御が適用されているときに作業者が左旋回レバー36Lおよびハンドル31を合わせて握り、かつ右旋回レバー36Rには触れていない場合、制御部50が左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号のデューティ比は「1以下の正の値」となり、制御部50が右旋回用ドライバ28Rに送信されるパルス信号のデューティ比は「0」となる。なお、このとき左旋回操作センサ37Lが制御部50に送信する電気信号および右旋回操作センサ37Rが制御部50に送信する電気信号の組み合わせは本発明に係る左旋回信号の実施の一形態に相当し、制御部50が左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号および制御部50が右旋回用ドライバ28Rに送信するパルス信号の組み合わせは本発明に係る左旋回指令信号の実施の一形態に相当する。制御部50からパルス信号を受信した左旋回用ドライバ28Lは当該パルス信号と同じデューティ比でバッテリ26から左旋回モータ23Lに電力を供給する。制御部50からデューティ比がゼロのパルス信号を受信した右旋回用ドライバ28Rはバッテリ26から右旋回モータ23Rへの電力の供給を停止する。電力が供給された左旋回モータ23Lは遊星歯車機構22Lのアウターギアを回転させ、遊星歯車機構22Lのキャリア、ひいてはクローラ5Lの回転数を減少させる。一方、電力の供給が停止された右旋回モータ23Rは遊星歯車機構22Rのアウターギアを回転させず、遊星歯車機構22Rのキャリア、ひいてはクローラ5Rの回転数を減少させない。その結果、クローラ5Lの回転数はクローラ5Rの回転数よりも小さくなり、除雪機1は左に旋回する。
【0054】
基本旋回制御が適用されているときに作業者が右旋回レバー36Rおよびハンドル31を合わせて握り、かつ左旋回レバー36Lには触れていない場合、クローラ5Rの回転数はクローラ5Lの回転数よりも小さくなり、除雪機1は右に旋回する。このときの制御部50、左旋回用ドライバ28L、右旋回用ドライバ28R、左旋回モータ23L、右旋回モータ23Rの動作は先に説明した「基本旋回制御により除雪機1が左に旋回する場合」とちょうど左右対称となるため、説明を省略する。なお、このとき左旋回操作センサ37Lが制御部50に送信する電気信号および右旋回操作センサ37Rが制御部50に送信する電気信号の組み合わせは本発明に係る右旋回信号の実施の一形態に相当し、制御部50が左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号および制御部50が右旋回用ドライバ28Rに送信するパルス信号の組み合わせは本発明に係る右旋回指令信号の実施の一形態に相当する。
【0055】
基本旋回制御が適用されているときに作業者が左旋回レバー36Lおよび右旋回レバー36Rのいずれにも触れていない場合、制御部50が左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号のデューティ比および制御部50が右旋回用ドライバ28Rに送信するパルス信号のデューティ比はいずれも「0」となる。なお、このとき左旋回操作センサ37Lが制御部50に送信する電気信号および右旋回操作センサ37Rが制御部50に送信する電気信号の組み合わせは本発明に係る旋回停止信号の実施の一形態に相当し、制御部50が左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号および制御部50が右旋回用ドライバ28Rに送信するパルス信号の組み合わせは本発明に係る旋回停止指令信号の実施の一形態に相当する。このとき、左旋回用ドライバ28Lはバッテリ26から左旋回モータ23Lへの電力の供給を停止し、右旋回用ドライバ28Rはバッテリ26から右旋回モータ23Rへの電力の供給を停止する。従って、左旋回モータ23Lは遊星歯車機構22Lのアウターギアを回転させず、遊星歯車機構22Lのキャリア、ひいてはクローラ5Lの回転数を減少させない。同様に、右旋回モータ23Rは遊星歯車機構22Rのアウターギアを回転させず、遊星歯車機構22Rのキャリア、ひいてはクローラ5Rの回転数を減少させない。
その結果、クローラ5Lの回転数はクローラ5Rの回転数と等しくなり、除雪機1は旋回せずに直進する。
【0056】
以下では、制御部50による除雪機1の第一発熱抑制旋回制御について説明する。
左旋回操作センサ37Lは左旋回レバー36Lの回動角度を示す電気信号を制御部50に送信し、右旋回操作センサ37Rは右旋回レバー36Rの回動角度を示す電気信号を制御部50に送信する。
第一発熱抑制旋回制御が適用されているときに作業者が左旋回レバー36Lおよびハンドル31を合わせて握り、かつ右旋回レバー36Rには触れていない場合、制御部50は「基本旋回制御の場合に左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号のデューティ比に1よりも小さい正の値の係数K(0<K<1)を乗算したデューティ比」を有するパルス信号(デューティ補正パルス信号)を左旋回用ドライバ28Lに送信し、デューティ比がゼロのパルス信号を右旋回用ドライバ28Rに送信する(図5参照)。なお、このとき制御部50が左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号および制御部50が右旋回用ドライバ28Rに送信するパルス信号の組み合わせは本発明に係る緩左旋回指令信号の実施の一形態に相当する。制御部50からデューティ補正パルス信号を受信した左旋回用ドライバ28Lは当該デューティ補正パルス信号と同じデューティ比でバッテリ26から左旋回モータ23Lに電力を供給する。制御部50からデューティ比がゼロのパルス信号を受信した右旋回用ドライバ28Rはバッテリ26から右旋回モータ23Rへの電力の供給を停止する。電力が供給された左旋回モータ23Lは遊星歯車機構22Lのアウターギアを回転させ、遊星歯車機構22Lのキャリア、ひいてはクローラ5Lの回転数を減少させる。一方、電力の供給が停止された右旋回モータ23Rは遊星歯車機構22Rのアウターギアを回転させず、遊星歯車機構22Rのキャリア、ひいてはクローラ5Rの回転数を減少させない。その結果、クローラ5Lの回転数はクローラ5Rの回転数よりも小さくなり、除雪機1は左に旋回する。
第一発熱抑制旋回制御が適用されているときに作業者が右旋回レバー36Rおよびハンドル31を合わせて握り、かつ左旋回レバー36Lには触れていない場合、クローラ5Rの回転数はクローラ5Lの回転数よりも小さくなり、除雪機1は右に旋回する。このときの制御部50、左旋回用ドライバ28L、右旋回用ドライバ28R、左旋回モータ23L、右旋回モータ23Rの動作は先に説明した「第一発熱抑制旋回制御により除雪機1が左に旋回する場合」とちょうど左右対称となるため、説明を省略する。なお、このとき制御部50が左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号および制御部50が右旋回用ドライバ28Rに送信するパルス信号の組み合わせは本発明に係る緩右旋回指令信号の実施の一形態に相当する。
第一発熱抑制旋回制御が適用されているときに作業者が左旋回レバー36Lおよび右旋回レバー36Rのいずれにも手を触れていない場合、制御部50は左旋回用ドライバ28Lおよび右旋回用ドライバ28Rのいずれにもデューティ比がゼロのパルス信号を送信する(図5参照)。なお、このとき制御部50が左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号および制御部50が右旋回用ドライバ28Rに送信するパルス信号の組み合わせは本発明に係る旋回停止指令信号の実施の一形態に相当する。このとき、左旋回用ドライバ28Lはバッテリ26から右旋回モータ23Rに電力の供給を停止し、右旋回用ドライバ28Rはバッテリ26から右旋回モータ23Rへの電力の供給を停止する。従って、左旋回モータ23Lは遊星歯車機構22Lのアウターギアを回転させず、遊星歯車機構22Lのキャリア、ひいてはクローラ5Lの回転数を減少させない。また、右旋回モータ23Rは遊星歯車機構22Rのアウターギアを回転させず、遊星歯車機構22Rのキャリア、ひいてはクローラ5Rの回転数を減少させない。その結果、クローラ5Lの回転数はクローラ5Rの回転数と等しくなり、除雪機1は旋回せずに直進する。
【0057】
除雪機1が比較的低速で走行しつつ旋回するとき、除雪機1が比較的高速で走行しつつ旋回するときに比べて一対のクローラ5L・5Rに作用する外力(地面から受ける摩擦力等)が大きい。そのため、除雪機1が比較的低速で走行しつつ旋回するときには左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rへの過負荷(ひいては、発熱量)が大きくなる傾向がある。本実施形態では除雪機1が比較的低速で走行している(除雪機1の走行速度が比較的小さい)ときに第一発熱抑制旋回制御が適用されるので、除雪機1が比較的高速で走行している(基本旋回制御が適用されている)ときよりも左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rに供給される電力が少ない。従って、除雪機1が比較的低速で走行しつつ旋回するとき、除雪機1を電動で旋回させるための部材群(左旋回モータ23L、右旋回モータ23R、左旋回用ドライバ28L、右旋回用ドライバ28R、およびこれらを接続する配線等)の発熱を抑え、ひいてはこれらの部材群の発熱(温度上昇)による故障、破損、耐久性の低下、性能の低下等を防止することが可能である。
【0058】
以下では、制御部50による除雪機1の第二発熱抑制旋回制御について説明する。
制御部50は、所定のサイクルタイム毎に、電力計10により検知された左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rへの電力の供給量に基づいて、「積算時間」における電力積算値(積算時間中に左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rに供給された電力量の合計)を算出する。
制御部50は、予め設定された「積算時間」、「許容電力積算値」および「旋回抑制時間」を記憶している。本実施形態における「積算時間」、「許容電力積算値」および「旋回抑制時間」は除雪機1を電動で旋回させるための部材群の発熱を抑え、ひいてはこれらの部材群の発熱(温度上昇)による故障、破損、耐久性の低下、性能の低下等を防止する観点から定められる。本実施形態における「積算時間」は電力積算値の算出の対象となる時間(の長さ)であり、例えば「電力積算値を算出する時刻から遡って10sec前までの時間」と設定される。本実施形態における「許容電力積算値」は上記観点から許容される電力積算値の上限値である。本実施形態における「旋回抑制時間」は上記観点から左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rに供給する電力を抑えるべき時間(の長さ)である。
【0059】
制御部50は、前記電力積算値が予め設定された許容電力積算値に到達した場合(前記電力積算値が許容電力積算値と同じ値になった場合)、その時点から「旋回抑制時間」を経過するまでの間は基本旋回制御に優先して(に替えて)第二発熱抑制旋回制御を適用する。
第二発熱抑制旋回制御が適用されている間において、制御部50は、作業者が左旋回レバー36Lおよびハンドル31を合わせて握り、かつ右旋回レバー36Rには触れていない場合に対応する「左旋回操作センサ37Lが制御部50に送信する電気信号および右旋回操作センサ37Rが制御部50に送信する電気信号の組み合わせ」を受信した場合には、「基本旋回制御の場合に左旋回用ドライバ28Lに送信するパルス信号のデューティ比に上記係数Kを乗算したデューティ比」を有するパルス信号(デューティ補正パルス信号)を左旋回用ドライバ28Lに送信し、デューティ比がゼロのパルス信号を右旋回用ドライバ28Rに送信する(図5参照)。
第二発熱抑制旋回制御が適用されている間において、制御部50は、作業者が右旋回レバー36Rおよびハンドル31を合わせて握り、かつ左旋回レバー36Lには触れていない場合に対応する「左旋回操作センサ37Lが制御部50に送信する電気信号および右旋回操作センサ37Rが制御部50に送信する電気信号の組み合わせ」を受信した場合には、「基本旋回制御の場合に右旋回用ドライバ28Rに送信するパルス信号のデューティ比に上記係数Kを乗算したデューティ比」を有するパルス信号(デューティ補正パルス信号)を右旋回用ドライバ28Rに送信し、デューティ比がゼロのパルス信号を左旋回用ドライバ28Lに送信する(図5参照)。
第二発熱抑制旋回制御が適用されているときに作業者が左旋回レバー36Lおよび右旋回レバー36Rのいずれにも手を触れていない場合、制御部50は左旋回用ドライバ28Lおよび右旋回用ドライバ28Rのいずれにもデューティ比がゼロのパルス信号を送信する(図5参照)。
【0060】
このように、第二発熱抑制旋回制御が適用されている間は、第一発熱抑制旋回制御が適用されている間と同様に左旋回モータ23Lおよび右旋回モータ23Rに供給される電力が少ないので、除雪機1を電動で旋回させるための部材群の発熱を抑え、ひいてはこれらの部材群の発熱(温度上昇)による故障、破損、耐久性の低下、性能の低下等を防止することが可能である。
【0061】
本発明に係る除雪機は本実施形態の除雪機1の如き歩行型の除雪機にだけでなく「作業者が機体に搭乗して各部の操作を行う形式の除雪機」も含む。
本発明に係る除雪部は本実施形態の除雪部12の如きいわゆるスノーブロワだけでなく、雪を掬い取るバケット、雪を押し退けるスノープラウ等も含む。
本発明に係る昇降用電動アクチュエータは本実施形態の昇降シリンダ24の如き複動式の油圧シリンダ、ポンプおよび電動式モータを一つのユニットとしたものだけでなく、出力軸に雄ネジが形成された電動式モータおよび当該出力軸に螺合するシャフトを備える電動アクチュエータ等も含む。
図4に示す第二発熱抑制昇降制御の実施例では上昇定数が「+1」、下降定数が「+1」、昇降停止定数を「−1」が設定されるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係る除雪機の除雪部の仕様に応じて上昇定数を正の値に設定し、下降定数を正の値に設定し、昇降停止定数を負の値に設定すれば良い。例えば、上昇定数を「+2」、下降定数を「+1」、昇降停止定数を「−1.5」と設定することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 除雪機、2 機体、5L・5R 一対のクローラ、10 電力計、12 除雪部、17 エンジン、22 差動機構、22L・22R 遊星歯車機構、23L 左旋回モータ、23R 右旋回モータ、24 昇降シリンダ、27 昇降用ドライバ、28L 左旋回用ドライバ、28R 右旋回用ドライバ、29 回転数センサ、34 昇降レバー、35 昇降操作センサ、36L 左旋回レバー、36R 右旋回レバー、37L 左旋回操作センサ、37R 右旋回操作センサ、50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のクローラを備える機体と、
前記機体に昇降可能に支持される除雪部と、
前記一対のクローラおよび前記除雪部を駆動するエンジンと、
前記機体に対して前記除雪部を昇降させる昇降用電動アクチュエータと、
前記昇降用電動アクチュエータへの電力の供給およびその停止を切り替える昇降用ドライバと、
作業者の操作により前記除雪部の上昇、下降および昇降停止を指示する昇降操作部と、
前記昇降操作部が上昇を指示していると検知した場合には上昇信号、下降を指示していると検知した場合には下降信号を送信し、昇降停止を指示していると検知した場合には信号を送信しない昇降操作検知部と、
前記昇降操作検知部から前記上昇信号を受信した場合には前記昇降用ドライバに前記除雪部を上昇させるための上昇指令信号を送信し、前記昇降操作検知部から前記下降信号を受信した場合には前記昇降用ドライバに前記除雪部を下降させるための下降指令信号を送信し、前記昇降操作検知部から信号を受信しなかった場合には前記昇降用ドライバに信号を送信しない制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記昇降用ドライバに前記上昇指令信号を送信した場合には予め設定された正の上昇定数、前記昇降用ドライバに前記下降指令信号を送信した場合には予め設定された正の下降定数、前記昇降用ドライバに信号を送信しなかった場合には予め設定された負の昇降停止定数を予め設定された周期毎に積算することにより積算値を算出し、
前記積算値が予め設定された許容積算値に到達した時点から予め設定された動作停止時間を経過するまでの間については、前記上昇信号および前記下降信号のいずれを受信した場合でも前記昇降用ドライバに信号を送信しない、
除雪機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記昇降用ドライバに前記上昇指令信号を連続して送信している時間が予め設定された許容連続上昇時間に到達した時点から予め設定された上昇側停止時間を経過する時点までの間、および、前記昇降用ドライバに前記下降指令信号を連続して送信している時間が予め設定された許容連続下降時間に到達した時点から予め設定された下降側停止時間を経過する時点までの間、については、前記昇降操作検知部から前記上昇信号および前記下降信号のいずれを受信した場合でも前記昇降用ドライバに信号を送信しない、
請求項1に記載の除雪機。
【請求項3】
前記エンジンの駆動力を前記一対のクローラに伝達する差動機構と、
前記差動機構に駆動力を入力して前記一対のクローラの回転数に差分を発生させることにより前記機体を旋回させる旋回用電動モータと、
前記旋回用電動モータへの電力の供給およびその停止を切り替える旋回用ドライバと、
前記一対のクローラの回転数を検知する回転数検知部と、
作業者の操作により前記機体の左旋回、右旋回または旋回停止を指示する旋回操作部と、
前記旋回操作部が左旋回を指示していると検知した場合には左旋回信号、右旋回を指示していると検知した場合には右旋回信号を送信する旋回操作検知部と、
をさらに具備し、
前記制御部は、
前記回転数検知部により検知された前記一対のクローラの回転数が予め設定された基本回転数以上のとき、
前記旋回操作検知部から前記左旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記機体を左旋回させるための左旋回指令信号を送信し、前記旋回操作検知部から前記右旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記機体を右旋回させるための右旋回指令信号を送信し、
前記回転数検知部により検知された前記一対のクローラの回転数が予め設定された基本回転数未満のとき、
前記旋回操作検知部から前記左旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記左旋回指令信号のときよりも少ない電力で左旋回させるための緩左旋回指令信号を送信し、前記旋回操作検知部から前記右旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記右旋回指令信号のときよりも少ない電力で右旋回させるための緩右旋回指令信号を送信する、
請求項1または請求項2に記載の除雪機。
【請求項4】
前記旋回用電動モータへの電力の供給量を検知する電力供給量検知部をさらに具備し、
前記制御部は、
予め設定された積算時間の間における前記旋回用電動モータへの電力の供給量の積算値である電力積算値を前記電力供給量検知部により検知された前記旋回用電動モータへの電力の供給量に基づいて算出し、
前記電力積算値が予め設定された許容電力積算値に到達した時点から予め設定された旋回抑制時間を経過するまでの間については、前記旋回操作検知部から前記左旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記緩左旋回指令信号を送信し、前記旋回操作検知部から前記右旋回信号を受信した場合には前記旋回用ドライバに前記緩右旋回指令信号を送信する、
請求項3に記載の除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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