説明

除電体

【課題】導電性テープや導電性接着剤を不要とする構造からなり、例えばドアハンドル自体に除電性能を付与させた除電体を提供する。
【解決手段】帯電した人体を除電する除電体であって、軸方向に金属体が延び、その周囲に成形体が押出された構造からなり、当該成形体が導電性物質であり、その除電体の導電性物質の表面抵抗率が1011Ω/□オーダーであり、導電性物質がアクリル樹脂と帯電防止剤とゴム成分を含んでいる。当該導電性物質は、アクリル樹脂が75重量部、帯電防止剤が15重量部、ゴム成分が10重量部からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築用ドアハンドル、建築用手摺り、自転車用または自動車用ハンドルに中間材料として利用できる除電体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば冬場の乾燥した状態で、指先などが金属製のドアハンドルなどに触れる場合、その直前に、指先に激痛を感じることがある。これは、人体に帯電した静電気がアーク放電するためである。しかし現代社会においては、人体に静電気を帯電させないことはほとんど不可能である。このため人体には静電気が帯電することを前提に、指先などに激痛を感じることなく静電気を除去する方法が必要とされる。そのためには、静電気をアーク放電させなければ良い。
【0003】
ここで以前本発明者らは、6.4mm離れた表面抵抗測定値が1×10〜5×1010Ωの物質であれば、人体のような電気伝導性のある物体に帯電した静電気を、コロナ放電にて除電できることを見いだしている。アーク放電と異なり、コロナ放電のような弱い放電では、放電時に指先などに激痛を感じることはない。かかる現象を利用して、表面抵抗値を10〜1010Ω程度に調整した物質による除電機能を持つ除電成形体(ドアノブ)が知られている。例えば特許文献1では、表面抵抗値が1×10〜2×1011Ωであるポリエーテル樹脂を主成分とした、抵抗値が均一化された除電性を有する樹脂成形体が提案されている。
【特許文献1】特開11−302399号公報
【0004】
人体に帯電した静電気が除電成形体にコロナ放電した場合、静電気は当該除電成形体に移動して帯電することになる。除電成形体への帯電状態が解消されるためには、当該除電成形体がアースされている必要がある。すなわち、除電成形体は、帯電状態を速やかに解消するため、金属などの導電性のある部材に導電性を有した状態で接触してなければならない。
【0005】
そうすると、例えば金属製ドアハンドルなどの部材に、後付けで除電効果を付与するために、当該金属部材の表面に除電成形体を例えば両面テーブで貼り付けることより達成しようとする場合、当該両面テープは導電性テープでなければならないことになる。また、接着剤などで接着しようとする場合も同様であり、導電性のある接着剤を用いることになる。しかしながら、導電性両面テープや導電性を有する接着剤は、一般的な両面テープや接着剤に比較するとはるかに高価であり、除電成形体の普及の妨げとなる。
【0006】
さらに、このような導電性のテープや接着剤は、経済的に導電性付与のため、カーボンブラックを含有させることが多いが、このようにカーボンブラックを含有させた場合、導電性のテープや接着剤は黒色になる。そうなると、特に除電成形体が透明または半透明色の場合、除電成形体表面から導電性テープや接着剤跡が透けて見えることになるので、意匠的に見劣りするものとなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を鑑みたとき、本発明で解決しようとする問題点は、ドアハンドルのような被接着部材に除電成形体を接着する際に、被接着部材と除電成形体との貼り付けには、導電性テープや導電性接着剤が必要となり、高価であるにもかかわらず、意匠的に見劣りしてしまうことにある。
【0008】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、導電性テープや導電性接着剤を不要とする構造からなり、例えばドアハンドル自体に除電性能を付与させた除電体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本請求項1の発明は、帯電した人体を除電する除電体であって、
軸方向に金属体が延び、その周囲に成形体が押出された構造からなり、
当該成形体が導電性物質であり、
その除電体の導電性物質の表面抵抗率が1011Ω/□オーダーであり、
導電性物質がアクリル樹脂と帯電防止剤とゴム成分を含む、除電体である。
【0010】
上記導電性物質としては導電性物質100重量部に対しアクリル樹脂が75量部、帯電防止剤が15重量部、ゴム成分が10重量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
これにより、本発明は表面が導電性物質で覆われているため導電性テープや導電性接着剤を不要となすことができる。しかもこの導電性物質は1011Ω/□オーダー、すなわち1×1011Ω/□以上〜1.0×1012Ω/□未満を採用することでアーク放電しないで除電する機能を有している。しかも導電性物質はアクリル樹脂と帯電防止剤とゴム成分を含んでおり、特に導電性物質100重量部に対しアクリル樹脂が75量部、帯電防止剤が15重量部、ゴム成分が10重量部であるため、成形性及び除電性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の除電体は、軸方向に金属体、その周囲に除電成形体を被覆して構成されている。
【0013】
本発明に用いられる除電成形体の導電性物質は、表面抵抗率が1011Ω/□オーダー、すなわち1.0×1011Ω/□以上〜1.0×1012Ω/□未満の物質であれば、適宜選択することができる。1.0×1011Ω/□未満の場合アーク放電する傾向が生じ、1.0×1012Ω/□以上の場合除電しない。除電効果を得るためには1011Ω/□オーダーが好適である。
【0014】
この導電性物質はアクリル樹脂と帯電防止剤とゴム成分を混合状態で含む構成からなる。具体的にはメチルメタクリレートのようなアクリル樹脂に、導電性物質にて表面抵抗率を調整した帯電防止剤があげられる。帯電防止剤としては、イオン性帯電防止剤、非イオン性帯電防止剤、高分子界面活性剤などが使用できる。ゴム成分は当該除電体を保護するために加えられる。
【0015】
本発明における除電成形体として、ゴム成分に表面抵抗率1011Ω/□オーダーの導電性を付与した熱可塑性エラストマー樹脂を用いると、熱可塑性エラストマー樹脂がゴム弾性を有する材料であるので、特にシート状に成形したものを被接着部材の表面に付加する場合に、伸び縮みすることで被接着部材にフィットしやすく好ましい。また、熱可塑性エラストマー樹脂に適度な弾力性があるので、これを用いた除電部材に触れたときの感触が好ましい。熱可塑性エラストマー樹脂としては公知のスチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの樹脂を用いることができる。
【0016】
この導電性物質は導電性物質100重量部に対しアクリル樹脂が75量部、帯電防止剤が15重量部、ゴム成分が10重量部であるため、押出成形性及び除電性が良好である。
この導電性物質は導電性物質100重量部に対しアクリル樹脂が70量部、帯電防止剤が20重量部、ゴム成分が10重量部では放電現象が生じ、アクリル樹脂が80量部、帯電防止剤が10重量部、ゴム成分が10重量部では除電できない。従って、この導電性物質は導電性物質100重量部に対しアクリル樹脂が75量部、帯電防止剤が15重量部、ゴム成分が10重量部が最適である。
なお、表面抵抗率1×1011Ω/□オーダーを維持できる限りにおいて、顔料などの添加物を添加しても良い。
【0017】
本発明で使用できる金属体としては、アルミニウム、ステンレスなどを用いることができる。特に、金属体の中でもアルミニウム等の金属管は好適である。
【0018】
本発明の製造方法は、溶融した導電性物質を軸方向に流れる金属体に押出成形することによって得られるものである。押出しの溶融温度は185〜190℃でこの温度範囲に設定される。
【実施例】
【0019】
押出温度185〜190℃に設定された溶融した導電性物質をアルミニウム製の円筒体(金属体)の周囲に軸方向に押出成形して、導電性物質の表面抵抗率が1011Ω/□オーダーの除電体を作成した。なお、アルミニウム製円筒体の断面層は直径22mm、導電層は厚みは1.5mmである。導電性物質はアクリル樹脂と帯電防止剤とゴム成分を含んでいる。当該導電性物質は導電性物質100重量部に対しメチルメタクリレートが75量部、帯電防止剤が15重量部、ゴム成分が10重量部である。
本実施例は、表面が導電性物質で覆われているため導電性テープや導電性接着剤を不要となすことができる。しかもこの導電性物質は1011Ω/□オーダー、すなわち1×1011Ω/□以上〜1.0×1012Ω/□未満を採用することでアーク放電しないで除電する機能を有している。しかも導電性物質はアクリル樹脂と帯電防止剤とゴム成分を含んでおり、特に導電性物質100重量部に対しアクリル樹脂が75量部、帯電防止剤が15重量部、ゴム成分が10重量部であるため、成形性及び除電性が良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した人体を除電する除電体であって、
軸方向に金属体が延び、その周囲に成形体が押出された構造からなり、
当該成形体が導電性物質であり、
その除電体の導電性物質の表面抵抗率が1011Ω/□オーダーであり、
導電性物質がアクリル樹脂と帯電防止剤とゴム成分を含む、除電体。
【請求項2】
当該導電性物質100重量部に対しアクリル樹脂が75量部、帯電防止剤が15重量部、ゴム成分が10重量部である、請求項1記載の除電体。



【公開番号】特開2010−6951(P2010−6951A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167755(P2008−167755)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(504156795)株式会社ネオスター (6)
【Fターム(参考)】