説明

除電器

【課題】外乱からの影響による除電効果の低下が抑制され、非除電物以外へイオンが送出されてしまうのを、できるだけ抑制できる除電器を提供する。
【解決手段】誘電体と、該誘電体の背中合わせの面に配設される少なくとも2つの放電電極と、前記誘電体の内部に配設されて前記少なくとも2つの放電電極の作用を受ける誘導電極とを有し、正イオンと負イオンとを誘電体の背中合わせの面で発生させる構成のイオン発生素子2と、非導電性材料から主として形成され、前記イオン発生素子を被覆する構成の絶縁隔壁体3と、を有してなり、前記放電電極が設けられている前記誘電体の面に対し略直角方向に配置される被除電物を除電する構成の除電器であって、前記絶縁隔壁体には、被除電物に向き合う部分に前面開口部が形成され、且つ前記少なくとも2つの放電電極と各々向き合う部分に側面開口部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除電器に関し、詳しくは、正イオン及び負イオンを発生させて被除電物の除電を行う除電器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な従来の除電器は、例えば、従来型除電器の場合では、先鋭な針形状のイオン発生電極に高電圧電源より高電圧を印加して、コロナ放電を生じさせ、空気をイオン化する。針形状のイオン発生電極は、対極する接地電極との間で、コロナ放電を効率的に発生する必要があるため、ある一定の絶縁距離を確保することが必要となり、イオン発生を構成するためのスペースに制約があり、効率的な除電器の小型化に限界が生じるという課題を有していた。
【0003】
また、長期間の使用により、針形状のイオン発生電極は、チリなどの堆積や物理スパッタリングによる摩耗などの影響により、コロナ放電が生じ難くなり、イオン発生効率が低下する傾向にあった。また、針形状のイオン発生電極と対向し、放電を安定させるために設けられた接地電極についても、高電圧による静電吸着及びイオン発生電極の物理スパッタリングなどにより、チリなどの堆積が生じ表面の汚れが進行し、イオン発生効率を低下させる要因ともなっていた。
【0004】
したがって使用者は定期的に、針形状のイオン発生電極先鋭部の清掃または交換、さらに接地電極及びその周辺の清掃を行ない、イオン発生効率を改善するためのメンテナンス作業を強いられることになる。かかるメンテナンス作業は、先鋭部を有する構造体内部の清掃であり、さらに高電圧が印加されている部分でもあるため、作業は危険かつ煩わしいものとなっている。
【0005】
そこで、イオン発生電極を針形状ではなく板状の誘電体に放電電極と誘導電極を配設した板状のイオン発生素子が開発され、更に発生する正イオンと負イオンの中和による発生効率の低下を抑制するために、板状の誘電体の一方の面から正イオン、他方の面から負イオンを発生させた技術が提案されている(特許文献1〜4参照)。
【0006】
また、本願出願人も同様の技術を既に提案している(特許文献5〜7参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2006−260963
【特許文献2】特開2005−243408
【特許文献3】特開平09−7735
【特許文献4】特開平03−108292
【特許文献5】特開2006−228641
【特許文献6】特開2006−228646
【特許文献7】特開2006−228681
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜7に示す技術を説明すると、図8(A)に示すように板状の誘電体22の表裏面の一方から正イオン、他方から負イオンを発生させることで正イオンと負イオンとが板状の誘電体22によって空間的に分離された状態で発生するため、中和(相殺)が低減されるのでイオン発生効率が高い。更に、正イオンと負イオンを生成する位置関係が常に一定しているため、発生能力のバラツキが少なく安定した技術である。
【0009】
尚、図8(B)に示すように、被除電物6に向き合うように、且つ、正イオンを発生する放電電極23と負イオンを発生する放電電極24とを並設配置した態様や、図8(C)に示すように、正イオンと負イオンを発生する放電電極23・24とを向き合うように配置した態様では、生成されたイオン同士の中和(相殺)によりイオン発生効率が低減する。図8(A)〜(C)において、符号2Aはイオン発生素子、符号22は板状の誘電体、符号23・24は放電電極、符号25は誘導電極、符号6は被除電物を各々示す。
【0010】
しかし、本発明者の研究によれば、上記図8(A)に示す構成であっても、除電すべき被除電物の種類、除電作業を行う環境等の影響等の外乱等によって除電効果が低下する場合があることを突き止めた。また、被除電物以外へもイオンが送出されてしまことにより被除電物に対する除電効果が低下する場合もあることを突き止めた。
【0011】
そこで本発明の課題は、外乱からの影響による除電効果の低下が抑制され、非除電物以外へイオンが送出されてしまうのを、できるだけ抑制できる除電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、下記構成を有する。
【0013】
1.誘電体と、該誘電体の背中合わせの面に配設される少なくとも2つの放電電極と、前記誘電体の内部に配設されて前記少なくとも2つの放電電極の作用を受ける誘導電極とを有し、正イオンと負イオンとを誘電体の背中合わせの面で発生させる構成のイオン発生素子と、
非導電性材料から主として形成され、前記イオン発生素子を被覆する構成の絶縁隔壁体と、を有してなり、
前記放電電極が設けられている前記誘電体の面に対し略直角方向に配置される被除電物を除電する構成の除電器であって、
前記絶縁隔壁体には、被除電物に向き合う部分に前面開口部が形成され、且つ前記少なくとも2つの放電電極と各々向き合う部分に側面開口部が形成されていることを特徴とする除電器。
【0014】
2.前記絶縁隔壁体の側面開口部が、透孔、スリット、メッシュ孔のいずれかであることを特徴とする上記1に記載の除電器。
【0015】
3.前記絶縁隔壁体の前面開口部が、全面開放部であることを特徴とする上記1又は2に記載の除電器。
【0016】
4.前記イオン発生素子の放電電極が、微細な突起を複数有する線状の導電材を用いて構成されていることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の除電器。
【0017】
5.前記誘導電極が、前記放電電極に対向する線状の導電材を用いて構成されていることを特徴とする上記4に記載の除電器。
【0018】
6.前記イオン発生素子が、1つの誘電体の背中合わせの面の夫々に放電電極が配設され、該背中合わせの面の一方の面に配設された放電電極が正イオンを発生し、他方の面に配設された放電電極が負イオンを発生する構成であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の除電器。
【0019】
7.前記イオン発生素子が、2つの誘電体の背中合わせの面の夫々に放電電極が配設され、該背中合わせの面の一方の面に配設された放電電極が正イオンを発生し、他方の面に配設された放電電極が負イオンを発生する構成であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の除電器。
【0020】
8.前記イオン発生素子が、該イオン発生素子に通電するソケット型電源部に脱着可能なプラグ部を有し、該プラグ部には前記放電電極及び誘導電極の電極接点が設けられていることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の除電器。
【0021】
9.発生したイオンを気流によって送出する送出手段が設けられていることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の除電器。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に示す発明によれば、外乱からの影響による除電効果の低下が抑制され、非除電物以外へイオンが送出されてしまうのを、できるだけ抑制できる除電器を提供することができる。
【0023】
特に請求項1によれば、非導電性材料から主として形成された絶縁隔壁体により、除電作業を行う環境等の外乱からの影響を受け難くなり、しかも、該絶縁隔壁体には放電電極と対峙する近傍部分に側面開口部が形成されているのでイオン発生効率が阻害されることがなく、更には、被除電物に対する部分に前面開口部が形成されていることで発生したイオンは被除電物目掛けて送出され、被除電物以外への送出が制限されるので除電効果が極めて高い。従って、例えば、100mm以下の至近距離であれば、送出手段等を付加することなく被除電物の除電を行うことができる。
【0024】
請求項2に示す発明によれば、イオン発生素子を絶縁隔壁体で被覆した状態で開口部を設けることが可能でなる。
【0025】
請求項3に示す発明によれば、被除電物に対して効率的にイオンを送出することができるので、被除電物の除電効果が高い。
【0026】
請求項4に示す発明によれば、放電電極が微細で複数であることにより、小型省スペース化や低電力化に寄与する。
【0027】
請求項5に示す発明によれば、誘導電極が放電電極に対向する線状の導電材を用いて構成されていることにより、放電電極に対する誘導電極の位置関係が一定となり安定したイオン発生が得られる。
【0028】
請求項6に示す発明によれば、1つのイオン発生素子で正イオンと負イオンの両イオンを発生させることができるので、除電器における実装スペースの省スペース化が可能となるだけでなく、イオン発生素子の交換・清掃等のメンテナンス工数も低減される。
【0029】
請求項7に示す発明によれば、正イオン及び/又は負イオンを片面で発生する構成の事公知公用のイオン発生素子と同様の構成のものを用いることができるので、イオン発生素子の製作が極めて容易である。
【0030】
請求項8に示す発明によれば、イオン発生素子の脱着時の配線作業が不要であるため、配線トラブルが生じ難く、交換・清掃等のメンテナンス性が良好となる。
【0031】
請求項9に示す発明によれば、発生したイオンを気流によって送出する送出手段が設けられているので、発生したイオンを遠くまで容易に送出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の除電器の詳細について添付図面に基づき説明する。
図1は本発明の除電器の一実施例を示す斜視図、図2は図1に示す除電器の要部の概略断面図、図3は図1に示す除電器の要部の分解拡散斜視図、図4は本発明の除電器に好ましく用いられるイオン発生素子の一例を示す概略正面図、図5は図4に示すイオン発生素子の概略側面図、図6は放電電極の突起形状の複数例を示す説明図、図7は誘導電極の形状の複数例を示す説明図、図8はイオン発生素子の配置例を示す概略側面図である。
【0033】
図1〜図3に示すように本発明に係る除電器1は、イオン発生素子2と、該イオン発生素子2を被覆する絶縁隔壁体3とを有してなり、イオン発生素子2から生成される正イオン及び/又は負イオンにより被除電物(図2に示す符号6)の除電を行うものである。尚、図中の符号4はイオン発生素子2及び絶縁隔壁体3が取り付けられる除電器本体部であり、符号5は除電器1に通電する配線である。尚また、図2において、除電器本体部4の内部機構は図示を省略している。
【0034】
イオン発生素子2は、図2、図4及び図5に示すように、誘電体22と、該誘電体22の背中合わせの面に配設される2つの放電電極23・24と、前記誘電体22の内部に配設されて前記2つの放電電極23・24の作用を受ける誘導電極25とを有し、正イオンと負イオンとを誘電体22の背中合わせの面で発生させる構成を有する。図2に示すように、該イオン発生素子2から発生される正イオンと負イオンとによって除電される被除電物6は 前記放電電極23・24が設けられている前記誘電体22の面に対し略直角方向に配置されることになる。即ち、前述した図8(A)に示す態様と同様の配置関係となる。
【0035】
絶縁隔壁体3は、イオン生成を阻害しないように非導電性材料から主として形成されており、イオン発生素子2の放電電極23が配設された面を被覆する第1絶縁隔壁板32と、放電電極24が配設された面を被覆する第2絶縁隔壁板33とから構成されている。第1絶縁隔壁板32と第2絶縁隔壁板33には、前記イオン発生素子2の放電電極23・24の各々と向き合う部分に側面開口部34・35が各々形成されている。
【0036】
第1絶縁隔壁板32と第2絶縁隔壁板33の各々に形成される側面開口部34・35は、被覆されているイオン発生素子2の放電電極23・24の近傍に設けられることでイオン発生効率の低下を抑制する。該側面開口部34・35の形状としては、本実施例に示される矩形透孔に限定されず、他の形状の透孔、スリット、メッシュ孔等であってもよい。また、該側面開口部34・35の大きさは、メンテナンス時等の安全性も考慮して、例えば、縦又は横のいずれかを10mm以下程度とすることが好ましく、7mm以下とすることがより好ましい。
【0037】
また、イオン発生素子2の放電電極23・24が設けられている誘電体22の面に対し略直角方向であって且つ被除電物6に向き合う部分については、絶縁隔壁体3による被覆はなく全面開放部とすることで前面開口部31を形成している。被除電物6と向き合う前面部分に前面開口部31を形成することで、イオン発生素子2によって発生される正イオンと負イオンは何ら制限を受けることなく前面開口部31から被除電物6に向けて送出することになる。尚、メンテナンス時等の安全性も考慮して、イオン発生素子2の両面と第1絶縁隔壁体31・第2絶縁隔壁体32との間隔は10mm以下程度とすることが好ましく、7mm以下とすることがより好ましい。
【0038】
尚、後面部分については、後面部分に位置する除電器本体部4等の構成部材が絶縁隔壁体3の一構成部材して機能し絶縁することになる。
【0039】
絶縁隔壁体3を構成する非導電性材料としては、除電器を含むこの種の電気機械器具等に用いられる絶縁材として公知公用のものを用いることができる。また、絶縁隔壁体3は合成樹脂等の非導電性材料のみで形成してもよいし、金属等の導電性を有する板材等を基体とし、該基体を非導電性材料からなるフィルムないしシートや塗膜等で被覆することで実質的に非導電性としてもよい。
【0040】
本発明の除電器1に好ましく用いられるイオン発生素子2は、例えば、前述した本願出願人による先提案技術(特許文献5〜7等)に記載のものと同様の構成を有するイオン発生素子を用いることができ、具体的には、図4及び図5に示すように、誘電体22と、該誘電体22の背中合わせの面に配設される少なくとも2つの放電電極23・24と、前記誘電体22の内部に配設されて前記少なくとも2つの放電電極23・24の作用を受ける誘導電極25とを有し、正イオンと負イオンとを誘電体22の背中合わせの面で発生させる構成を有する。
【0041】
また、イオン発生素子2の放電電極23・24及び誘導電極25の構成についても同先提案技術に記載の構成と同様の構成を採ったものを用いることができ、放電電極23・24は、微細な突起を複数有する線状の導電材を用いて構成されていることが好ましく、誘導電極25は、前記放電電極23・24に対向する線状の導電材を用いて構成されていることが好ましい。
【0042】
放電電極23・24の材質としては、導電性を有するものであれば特に制限するものではなく、例えば、ステンレス、タングステン、導電性セラミックス、チタン等がある。放電電極23・24は放電により劣化、溶融などし難い材料が望ましい。放電電極23・24の材質や使用用途などに応じて、表面コーティングなどの絶縁保護層で放電電極23・24を覆うようにして形成し保護すれば、放電電極23・24の耐久寿命を延ばすことも可能なり、同時に放電電極23・24からの発塵の低減及びメンテナンスの簡略化も可能となる。表面コーティングの材料としては、シリコンコーティング、ガラスコーティング、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜コーティング、エポキシ系の絶縁材などがある。
【0043】
放電電極23・24の形状としては、微細な突起を複数有する線状のものが望ましく、微細な突起は0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。突起の形状は、イオン発生可能な形状であれば特に制限されるものでなく、例えば、図6の(a)に示すような形状でもよいし、その他の波状、円状、格子状等の形状でもよい。イオン発生効率は、放電電極23・24の形状依存に比べ、対極する誘導電極25と放電電極23・24の微細な突起物との距離及びその突起形状による関係において、最も影響することがわかっている。なお、その形状は電界集中が有効に生じ易い形状であれば、特に制限するものではなく、例えば、図6(b)〜(g)に示す形状が挙げられる。尚、図6の(b)〜(g)は部分拡大図である。
【0044】
誘電体22は、放電電極23・24をそれぞれ各面に形成し、誘導電極25を囲むように形成した構成となっている。各面に形成されている放電電極23・24と、囲むように形成されている誘導電極25との距離は、誘電体22の厚みによって制御され、誘電体22の誘電率によってその厚みを決定するが、0.01〜5mmの範囲が好ましい。誘電体22の材質としては、アルミナ、ガラス、マイカなどの誘電材料が挙げられる。成形に際しては、誘電材料を積層することで材料のピンホール等による絶縁破壊を抑制することができ、絶縁耐圧等を向上させることができる。
【0045】
誘電体22への放電電極23・24の形成は、公知公用の手段を採ることもできるが、本発明ではインクジェット印刷やシルク印刷、スクリーン印刷によって形成することが好ましい。
【0046】
誘導電極25は、誘電体22に囲まれたように形成されており、それぞれの放電電極23・24に対向し形成されている共通な電極として作用している。誘導電極25の材料としては、導電性を有するものであれば特に制限するものではなく、例えば、ステンレス、タングステン、導電性セラミックス、チタン等が挙げられる。
【0047】
誘導電極25の形状としては、放電電極23・24に対向した電極構造であれば、その形状については特に制限されるものでなく、例えば、図7(a)〜(d)に示す種々の形状を採ることができる。
【0048】
以上の本実施例では、1つのイオン発生素子で正イオンと負イオンの両方を発生させる構成、即ち、1つの誘電体22の背中合わせの面の夫々に放電電極23・24が配設され、該背中合わせの面の一方の面に配設された放電電極23(又は24)が正イオンを発生し、他方の面に配設された放電電極24(又は23)が負イオンを発生する構成であるが、本発明はこれに限定されず、図8(A)に示すように、背中合わせに配置した2つのイオン発生素子で正イオンと負イオンを発生させる構成、即ち、2つの誘電体の背中合わせの面の夫々に放電電極が配設され、該背中合わせの面の一方の面に配設された放電電極が正イオンを発生し、他方の面に配設された放電電極が負イオンを発生する構成であってもよい。
【0049】
尚、本実施例では、1つの誘電体22の背中合わせの面の夫々に放電電極を1つずつ配設した構成であるが、本発明はこれに限定されず、2つ以上ずつ配設した構成であってもよい。
【0050】
また、イオン発生素子2の電源(DC型電源、AC型電源)や、イオンバランスの調整(出力電圧のON・OFF制御、出力電流制御、電源のバイアス制御、誘導電極のバイアス制御等)等についても前述の先提案技術(特許文献5〜7)等を参照することができる。
【0051】
本発明に好ましく用いられるイオン発生素子2は上記構成を有することにより、放電電極23・24と誘導電極25の電極間に駆動用電圧を印加し、その電位差に基づいて発生した放電により、正イオンがいずれか一方の面から発生、負イオンが他方の面から発生することにより、正イオンと負イオンとが空間的に分離された状態で発生するため、中和(相殺)が低減され、イオン発生効率がよい。
【0052】
上記構成を有するイオン発生素子2の除電器本体部4への取付手段としては、図3に示すように、イオン発生素子2に設けられたプラグ部21・21を、除電器本体部4に設けられたソケット部41・41に装着することで取り付ける構成であることが好ましい。プラグ部21・21には、放電電極23・24及び誘導電極25の電極接点(図示は省略)が設けられ、ソケット部41・41は内部配線(図示は省略)と配線5を介して電源(図示せず)に接続することで通電可能となる。プラグ部21・ソケット部41の具体的構成については先提案技術(特許文献6)を参照することができる。
【0053】
本発明の除電器1は、発生したイオンを気流によって送出する送出手段が設けられていることが好ましく、イオン発生素子1の正イオンを発生する面と負イオンを発生する面の両面が、等量の気流環境下となるように、気流方向に直行する両側に前記両面が振り分けられるようにイオン発生素子2を気流方向に沿って配設する構成を有することが好ましい。かかる構成によって、正イオンと負イオンとが空間的に分離された状態で発生され、中和(相殺)が低減された良好な発生効率を維持した状態で、振り分けられた気流によって、正イオンと負イオンとが運ばれることになる。従って、イオン送出効率が高く、被除電物6と除電器1との距離が離れていても除電が可能となる。
【0054】
送出手段としては、前述の先提案技術(特許文献5〜7等)に記載のファンによって気流を送出する構成、圧縮エアーによって気流を送出する構成等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の除電器の一実施例を示す斜視図
【図2】図1に示す除電器の要部の概略断面図
【図3】図1に示す除電器の要部の分解拡散斜視図
【図4】本発明の除電器に好ましく用いられるイオン発生素子の一例を示す概略正面図
【図5】図4に示すイオン発生素子の概略側面図
【図6】放電電極の突起形状の複数例を示す説明図
【図7】誘導電極の形状の複数例を示す説明図
【図8】イオン発生素子の配置例を示す概略側面図
【符号の説明】
【0056】
1 除電器
2・2A イオン発生素子
21 プラグ部
22 誘電体
23・24 放電電極
25 誘導電極
3 絶縁隔壁体
31 前面開口部
32 第1絶縁隔壁板
33 第2絶縁隔壁板
34・35 側面開口部
4 除電器本体部
41 ソケット部
5 配線
6 被除電物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体と、該誘電体の背中合わせの面に配設される少なくとも2つの放電電極と、前記誘電体の内部に配設されて前記少なくとも2つの放電電極の作用を受ける誘導電極とを有し、正イオンと負イオンとを誘電体の背中合わせの面で発生させる構成のイオン発生素子と、
非導電性材料から主として形成され、前記イオン発生素子を被覆する構成の絶縁隔壁体と、を有してなり、
前記放電電極が設けられている前記誘電体の面に対し略直角方向に配置される被除電物を除電する構成の除電器であって、
前記絶縁隔壁体には、被除電物に向き合う部分に前面開口部が形成され、且つ前記少なくとも2つの放電電極と各々向き合う部分に側面開口部が形成されていることを特徴とする除電器。
【請求項2】
前記絶縁隔壁体の側面開口部が、透孔、スリット、メッシュ孔のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の除電器。
【請求項3】
前記絶縁隔壁体の前面開口部が、全面開放部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の除電器。
【請求項4】
前記イオン発生素子の放電電極が、微細な突起を複数有する線状の導電材を用いて構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の除電器。
【請求項5】
前記誘導電極が、前記放電電極に対向する線状の導電材を用いて構成されていることを特徴とする請求項4に記載の除電器。
【請求項6】
前記イオン発生素子が、1つの誘電体の背中合わせの面の夫々に放電電極が配設され、該背中合わせの面の一方の面に配設された放電電極が正イオンを発生し、他方の面に配設された放電電極が負イオンを発生する構成であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の除電器。
【請求項7】
前記イオン発生素子が、2つの誘電体の背中合わせの面の夫々に放電電極が配設され、該背中合わせの面の一方の面に配設された放電電極が正イオンを発生し、他方の面に配設された放電電極が負イオンを発生する構成であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の除電器。
【請求項8】
前記イオン発生素子が、該イオン発生素子に通電するソケット型電源部に脱着可能なプラグ部を有し、該プラグ部には前記放電電極及び誘導電極の電極接点が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の除電器。
【請求項9】
発生したイオンを気流によって送出する送出手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の除電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−258105(P2008−258105A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101826(P2007−101826)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)文部科学省科学技術振興調整費「戦略的研究拠点育成」事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(394018225)フィーサ株式会社 (29)
【Fターム(参考)】