説明

除電器

【課題】 圧縮空気を用いるが、コロナ放電の安定を損なうことなく強力な除電を行うことができる除電器を提供する。
【解決手段】放電針と、該放電針を包囲するように構成されたカバーと、圧縮空気を該放電針に向けないように該放電針と前記カバーとの間に配置された風除けと、を有する。圧縮空気のバイパスを形成するように放電針のほぼ先端部に配置されたイオン蓄積部材をさらに有してもよい。放電針と、該放電針に対して圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、該圧縮空気供給手段から供給される圧縮空気の一部を放電針に向け、残りの圧縮空気をバイパスする圧縮空気分割手段と、を有するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の除電器が、例えば、特開2000−138090号公報、特開2003−203745号公報に記載されている。これらの公報に記載の従来の除電器の放電部の構造は、下記のようなものである。
(1)放電針への印加電圧は、イオンバランスを制御する目的以外は常に一定であった。
(2)放電針に対向する対向電極を用いている。
(3)放電針と対向電極の間に発生したイオンを蓄積するイオン蓄積部材を用い、イオン蓄積部材として導体又は絶縁体で被覆した導体が用いられている。
(4)圧縮空気の流速が、放電針とその周囲において、一様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−138090号公報
【特許文献2】特開2003−203745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の除電器の放電部の構造が前述のとおりであるため、以下のような問題があった。(1)放電針への印加電圧は、イオンバランスを制御する目的以外は常に一定であるため、一般的に放電開始時は放電維持時より大きなエネルギーすなわち大きな電圧が必要である。そのため、放電が開始した後の放電維持時には過大な電圧が印加されていた。結果として、放電針の減耗を引き起こし、寿命を縮めていた。また圧電トランス等の高電圧電源に過負荷を強いることになり寿命を縮めたり、加熱による火災事故を誘発していた。
(2)放電針に対向する対向電極を用いており、すなわち、高電圧を印加する放電電極に対向させて、グランドまたはグランドに近い電位の対向電極を配置しており、これにより放電は発生しやすくなるが、2つの電極を対向させねばならないため、構造を複雑にし、必要な部品点数を増やし、結果としてコスト高をもたらしている。
(3)放電電極の周囲にイオン蓄積部材を配置し、イオンバランスを自動的に調整させている。このような方式では構造を複雑にし、必要な部品点数を増やし、結果としてコスト高をもたらしている。
(4)圧縮空気の流速が放電針とその周囲において、一様であるので、イオン化空気の吐出量を増やそうとすると圧縮空気の流量を多くしなければならない。ところがコロナ放電をしている放電針の先端に早い空気の流れが当たると、放電が不安定になり、イオンバランスが悪化し、最悪、コロナ放電が停止してしまう。そのため空気の流量を制限せざるを得ず、大量の空気を用いて強力に除電したり除塵することは難しかった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、圧縮空気を用いるが、コロナ放電の安定を損なうことなく強力な除電を行うことができる除電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、本発明は、放電針と、該放電針を包囲するように構成されたカバーと、圧縮空気を該放電針に向けないように該放電針と前記カバーとの間に配置された風除けと、を有することを特徴とする除電器を採用するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、圧縮空気を用いるが、コロナ放電の安定を損なうことなく強力な除電を行うことができる除電器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来の除電器と本発明の参考例1の除電器を比較し易いように示したそれぞれの断面図であり、図1a、図1bが従来の除電器を示し、図1c、図1dが参考例1の除電器を示す。
【図2】従来の除電器と本発明の参考例2の除電器を比較し易いように示したそれぞれの断面図であり、図2a、図2bが従来の除電器を示し、図2c、図2dが参考例2の除電器を示す。
【図3】従来の除電器と本発明の除電器を比較し易いように示したそれぞれの断面図であり、図3aが従来の除電器を示し、図3bが本発明の実施例1の除電器を示す。
【図4】本発明の実施例2の除電器の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、放電針と、該放電針を包囲するように構成されたカバーと、圧縮空気を該放電針に向けないように該放電針と前記カバーとの間に配置された風除けと、を有する。
【実施例】
【0010】
(参考例1)
図1は、従来の除電器と本発明の参考例1の除電器を比較し易いように示したそれぞれの断面図であり、図1a、図1bが従来の除電器を示し、図1c、図1dが参考例1の除電器を示す。従来は放電を容易にするために、図1a、図1bに示すように、放電針30に対向する導体の対向電極34または36を配置し、コロナ放電をさせている。
【0011】
図1aで示す従来例では、対向電極34が仕切り壁32と共に放電針30を囲む放電室を形成しており、放電室内に導入される圧縮空気で内圧が上がっている中でコロナ放電する場合であり、図1bで示す従来例では、対向電極36を用いるが、放電針30を囲む放電室が無く、大気圧の下で開放空間中でコロナ放電する場合である。これらの場合の放電針への印加電圧は、やや低めで良いが、対向電極を設けねばならず、構造的に複雑で、必要な部品点数を増やし、コスト高であった。
【0012】
これに対し、本発明の参考例では、対向電極を用いずに、絶縁体のカバー38が仕切り壁32と共に放電室を形成している。または、単なる絶縁体のカバー50を用いている。
【0013】
(参考例2)
図2は、従来の除電器と本発明の参考例2の除電器を比較し易いように示したそれぞれの断面図であり、図2a、図2bが従来の除電器を示し、図2c、図2dが参考例2の除電器を示す。従来は、図2a、図2bに示すように、放電針30と導体の対向電極34の間にイオン蓄積部材40を設けているが、イオン蓄積部材40は導体または絶縁体で被覆された導体である。
【0014】
図2aで示す従来例では、対向電極34が仕切り壁32と共に放電針30を囲む放電室を形成しており、圧縮空気で内圧が上がっている中でコロナ放電する場合であり、図2bで示す従来例では、放電針30を囲む放電室が無く、大気圧の下で開放空間中でコロナ放電する場合である。
【0015】
対向電極34はコロナ放電を容易にさせるための部材で、イオン蓄積部材40はイオンバランスを改善するための部材である。構造が複雑で、必要な部品点数も多く、コスト高をもたらしていた。
【0016】
これに対し、参考例2では、放電針30と好ましくは絶縁体(導体または絶縁被膜を施した導体でもよい)のイオン蓄積部材42のみを用い、対向電極34を不要としている。イオン蓄積部材を絶縁体で形成した場合、図2cに示すように、絶縁体のカバー38と絶縁体のイオン蓄積部材42を一体に成形でき、コストを安くできる。
【0017】
(実施例1)
図3は、従来の除電器と本発明の除電器を比較し易いように示したそれぞれの断面図であり、図3aが従来の除電器を示し、図3bが本発明の除電器を示す。コロナ放電は放電針30の先端が強い風に曝されると、イオンバランスが悪化したり、放電が停止しやすくなり、不安定になる。そこで、図3bに示すように、本発明の実施例では、放電針30の先端に強い風が当たらないように風除け44を設けている。これにより安定した放電が行われる。
【0018】
(実施例2)
図4は本発明の実施例2の除電器の断面図である。圧縮空気は二手に分かれて、一部が放電針30に廻りコロナ放電により作られたイオンを運び出し、残りはバイパスを通って、そのまま外部に噴射される。これにより、放電針30に強い気流を与えないので安定なコロナ放電が確保できる。また作られたイオンはこの弱い気流で、放電針から前に送り出し、その後バイパスを通ってきた大量の気流に乗って外部に運び出される。こうして風量が多く、イオンバランスの良い、放電が安定した、強力な除電装置を実現できる。さらに、コストを安くするために、イオン蓄積部材42は風除け44と一体に形成することもできる。
【符号の説明】
【0019】
30 放電電極(放電針)
32 仕切り壁
34 対向電極(従来例)
36 対向電極(従来例)
38 カバー
40 導体または絶縁体被覆導体のイオン蓄積部材(従来例)
42 絶縁体のイオン蓄積部材
44 風除け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電針と、該放電針を包囲するように構成されたカバーと、圧縮空気を該放電針に向けないように該放電針と前記カバーとの間に配置された風除けと、を有することを特徴とする除電器。
【請求項2】
請求項1記載の除電器において、圧縮空気のバイパスを形成するように放電針のほぼ先端部に配置されたイオン蓄積部材をさらに有することを特徴とする除電器。
【請求項3】
放電針と、該放電針に対して圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、該圧縮空気供給手段から供給される圧縮空気の一部を放電針に向け、残りの圧縮空気をバイパスする圧縮空気分割手段と、を有することを特徴とする除電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−278019(P2010−278019A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178365(P2010−178365)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【分割の表示】特願2005−8477(P2005−8477)の分割
【原出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(391038475)株式会社TRINC (35)
【Fターム(参考)】