説明

除電装置

【課題】高電圧発生回路を構成する電子部品の温度上昇を抑制する。
【解決手段】除電装置であって、高電圧発生回路基板130、150に実装された電子部品は樹脂にてモールドされ、抵抗基板170に実装された第一放電抵抗R1と第二放電抵抗R2は樹脂にてモールドされ、前記電子部品を樹脂にてモールドした電子部品側モールド部と、前記両放電抵抗を樹脂にてモールドした放電抵抗側モールド部との間に、断熱層である空気層Uを設ける。この構成では、放電抵抗R1、R2が発熱しても、その熱が高電圧発生回路基板130、150側の電子部品に伝わるのを空気層Uが抑える。そのため、電子部品が温度上昇し難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、正極性のイオンと負極性のイオンを交互に発生させる除電装置において、正極性のイオンを発生させる正極性側の高電圧発生回路の出力端と負極性のイオンを発生させる負極性側の高電圧発生回路の出力端を一対の抵抗を介して接続し、その中点に放電電極を接続したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4219451号公報の図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対の抵抗は、極性を切り換えるときに高電圧発生回路にチャージされた電荷を放電する放電抵抗である。この一対の抵抗は、放電により発熱する。そのため、高電圧発生回路を構成する電子部品の温度が高くなる。その結果、回路動作が不安定になる恐れがあった。また、正負の切り替えを高速で行うことができなかった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、高電圧発生回路を構成する電子部品を、放電抵抗から熱的に分離することで、高電圧発生回路を構成する電子部品の温度上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電源に対して接続され前記電源から給電される第一トランスと、前記第一トランスの二次側に設けられ、前記第一トランスの二次電圧を昇圧して正極性の高電圧を発生させる正極性側高電圧発生回路と、前記電源に対して前記第一トランスと並列的に接続され前記電源から給電される第二トランスと、前記第二トランスの二次側に設けられ、前記第二トランスの二次電圧を昇圧して負極性の高電圧を発生させる負極性側高電圧発生回路と、前記電源を前記第一トランス側及び前記第二トランス側に交互に接続する切り換え制御を行う制御手段と、前記正極性側高電圧発生回路により印加される正極性の高電圧に対応して正極性のイオンを発生させ、前記負極性側高電圧発生回路により印加される負極性の高電圧により負極性のイオンを発生させる放電電極と、前記電源への接続を、前記第一トランス側から前記第二トランス側に切り替えるときに、前記正極性側高電圧発生回路にチャージされた電荷を放電させる第一放電抵抗と、前記電源への接続を、前記第二トランス側から前記第一トランス側に切り替えるときに、前記負極性側高電圧発生回路にチャージされた電荷を放電させる第二放電抵抗と、を備えた除電装置であって、前記正極性側高電圧発生回路及び前記負極性側高電圧発生回路を構成する電子部品は樹脂にてモールドされ、前記第一放電抵抗と前記第二放電抵抗は樹脂にてモールドされ、前記電子部品を樹脂にてモールドした電子部品側モールド部と、前記両放電抵抗を樹脂にてモールドした放電抵抗側モールド部との間に、両モールド部を仕切る断熱層を設けたところに特徴を有する。
【0006】
本発明では、放電抵抗が発熱しても、その熱が高電圧発生回路を構成する電子部品に伝わるのを断熱層が抑える。そのため、高電圧発生回路を構成する電子部品が温度上昇し難い。以上のことから、高電圧発生回路の回路動作の安定化を図ることが可能である。また、正負の切り替えを高速で行うことが可能となる。
【0007】
この発明の実施態様として、以下の構成とすることが、好ましい。
・前記正極性側高電圧発生回路及び前記負極性側高電圧発生回路を構成する電子部品を実装した高電圧発生回路基板から、前記第一放電抵抗と前記第二放電抵抗を実装した抵抗基板を別基板として分離する。このようにすれば、基板を通じた熱の伝達を遮断できる。そのため、放電抵抗側から高電圧発生回路側に熱が一層伝わり難くなる。
【0008】
・前記断熱層を、空気層とする。このようにすれば、断熱材を用いる場合に比べて、安価である。
【0009】
・前記電子部品側モールド部と、前記放電抵抗側モールド部を収容する合成樹脂製の回路ケーシングの外周壁に、金属製の放熱板を装着する。このようにすれば、放熱板の作用により、両高電圧発生回路基板やそれに実装された電子部品が温度上昇し難くなる。
【0010】
・前記回路ケーシングは、前記高電圧発生回路基板を収容する第一収容部と前記抵抗基板を収容する第二収容部の二つの収容部を一定距離離して形成することにより、前記断熱層としての空気層を形成する。このようにすれば、回路ケーシングの形状がシンプルな形状となり、コストメリットがある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高電圧発生回路を構成する電子部品の温度上昇を抑制できる。以上のことから、高電圧発生回路の回路動作の安定化を図ることが可能である。また、正負の切り替えを高速で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態における除電装置の斜視図
【図2】除電装置の回路構成を示す図
【図3】正極性側の高電圧発生回路の充電動作を示す図
【図4】正極性側の高電圧発生回路の放電動作を示す図
【図5】負極性側の高電圧発生回路の充電動作を示す図
【図6】負極性側の高電圧発生回路の放電動作を示す図
【図7】高圧電源部の斜視図
【図8】高圧電源部の断面図
【図9】各基板の電気的な接続関係を示す図
【図10】変形例を示す回路基板の模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図1ないし図9を参照して説明する。
1.除電装置Zの全体構造の説明。
除電装置Zは、図1に示すように、ヘッド部Z1と、高圧電源部Z2と、高圧電源部Z2を制御する制御回路20を有するコントローラ部Z3とを含む構成となっている。ヘッド部Z1は、一方向に長概ね柱状をしたケース100内に複数の放電電極15を備えたものである。高圧電源部Z2は、放電電極15に印加する正の高電圧と負の高電圧を生成するものであり、回路ケーシング120内に第一高電圧発生回路基板130と、第二高電圧発生回路基板150と、抵抗基板170などの各基板を収容している。尚、図1は、後述する放熱板210を省略した図面となっている。
【0014】
2.除電装置Zの回路構成の説明。
図2は、本実施形態に適用された除電装置Zの回路構成を示す図である。本除電装置Zは、放電電極15から正極性のイオンと負極性のイオンを交互に発生させるものである。尚、図2〜図6では、放電電極15を1本だけ示してあるが、実際には複数本の放電電極15が並列接続されている。
【0015】
本除電装置Zは、直流電源1と、一対の発振回路5a、5bと、一対のトランス6a、6bと、一対の高電圧発生回路7、8と、放電電極15と、一対のスイッチ3a、3bと、スイッチ3a、3bを切り替え制御する制御回路20と、第二放電抵抗R2と、第一放電抵抗R1と、接続ラインLを主体に構成されている。
【0016】
具体的に説明すると、直流電源1には一対の発振回路5a、5bが並列接続されている。そして、各発振回路5a、5bに対する各通電路A、Bにはスイッチ3aとスイッチ3bがそれぞれ設けられており、これら両スイッチ3a、3bを、制御回路20によって交互に開閉させる構成となっている。
【0017】
発振回路5aは、直流電源1から電源供給(給電)を受けて第一トランス6aに一次電流(発振電流)を流すものであり、第一トランス6aの一次側に接続されている。また、発振回路5bは、直流電源1から電源供給(給電)を受けて第二トランス6bに一次電流(発振電流)を流すものであり、第二トランス6bの一次側に接続されている。
【0018】
また、第一トランス6aの二次側には、高電圧発生回路(本発明の「正極性側高電圧発生回路」に相当)7が接続され、第二トランス6bの二次側に高電圧発生回路(本発明の「負極性側高電圧発生回路」に相当)8が接続されている。
【0019】
高電圧発生回路7は半波倍電圧整流回路を多段接続したものであり、いわゆるコッククロフト・ウォルトン型の倍電圧整流回路として知られている。本実施形態の高電圧発生回路7は、半波倍電圧整流回路71、72、73を直列的に3段接続している。
【0020】
一段目の整流回路71はコンデンサC1、ダイオードD1と、コンデンサC2、ダイオードD2より構成されている。2段目の整流回路72は、コンデンサC3、ダイオードD3と、コンデンサC4、ダイオードD4より構成されている。3段目の整流回路73は、コンデンサC5、ダイオードD5と、コンデンサC6、ダイオードD6より構成されている。
【0021】
各ダイオードD1、D3、D5は電源ラインL1、接地ラインL2間において、接地ラインL2から電源ラインL1に向かう電流に対して、順方向となるように接続されている。また、ダイオードD2、D4、D6は電源ラインL1、接地ラインL2間において、電源ラインL1から接地ラインL2に向かう電流に対して、順方向となるように接続されている。そして、電源ラインL1上においてコンデンサC1、C3、C5が直列的に設置され、接地ラインL2上において、コンデンサC2、C4、C6が直列的に設置されている。
【0022】
尚、高電圧発生回路7は正極性の高電圧を発生させるためのものであり、出力端子(本発明の「第一の出力端子」に相当)77に正の高電圧(例えば、7kv)を発生させる。一方、次に述べる高電圧発生回路8は負極性の高電圧を発生させるためのものであり、出力端子(本発明の「第二の出力端子」に相当する)87に負極性の高電圧(例えば、−7kv)を発生させる。
【0023】
高電圧発生回路8の基本的な回路構成は、高電圧発生回路7の回路構成と同様であり、半波倍電圧整流回路を多段接続したものである。
【0024】
一段目の整流回路81はコンデンサC7、ダイオードD7と、コンデンサC8、ダイオードD8より構成されている。2段目の整流回路82は、コンデンサC9、ダイオードD9と、コンデンサC10、ダイオードD10より構成されている。3段目の整流回路83は、コンデンサC11、ダイオードD11と、コンデンサC12、ダイオードD12より構成されている。
【0025】
各ダイオードD7、D9、D11は電源ラインL3、接地ラインL4間において、電源ラインL3から接地ラインL4に向かう電流に対して、順方向となるように接続されている。また、ダイオードD8、D10、D12は電源ラインL3、接地ラインL4間において、接地ラインL4から電源ラインL3に向かう電流に対して、順方向となるように接続されている。
【0026】
このように、高電圧発生回路8は、高電圧発生回路7の回路構成に対して、各ダイオードD7〜D12の接続方向(極性)が、全て反対になっている。そして、電源ラインL3上においてコンデンサC7、C9、C11が直列的に設置され、接地ラインL4上において、コンデンサC8、C10、C12が直列的に設置されている。そして、高電圧発生回路8の出力端子87に対して放電電極15が接続されている。
【0027】
また、本除電装置Zでは、正極性の高電圧発生回路7の出力端子77と負極性の高電圧発生回路8の出力端子87とを第二放電抵抗R2により接続している。
【0028】
また、第二トランス6bの二次側の端子のうち接地側の端子F2とそれに対応する高電圧発生回路8の入力端子86とを、第一放電抵抗R1によって接続している。また、第一放電抵抗R1のうち高電圧発生回路8側の接続点である入力端子86と、正極性側の高電圧発生回路7の出力端子77との間を接続ラインLによって接続している。
【0029】
2.除電装置Zの回路動作の説明
以下説明するように、除電装置Zは、スイッチ3a、3bを制御回路20によって交互に開閉させることで、放電電極15に正負の高圧を交互に印加することが出来る。
【0030】
(1)正極性の高電圧を出力する時の回路動作
正極性の高電圧を出力する場合には、制御回路20によりスイッチ3aがONされ、これとは反対にスイッチ3bはOFFされる。
【0031】
スイッチ3aがON状態になると、第一トランス6aが通電され作動する。これにより、第一トランス6aの二次側には、一次側に加わる一次電圧に巻き数比を乗したレベルの二次電圧(ここではE)が発生し、これが、高電圧発生回路7の両入力端子75、76間に印加される。第一トランス6aの二次電圧Eは、極性が周期的に正負切り替わるので、高電圧発生回路7の両入力端子75、76に印加される二次電圧Eも、極性が周期的に正負切り替わる。
【0032】
すると、高電圧発生回路7では、印加される二次電圧Eの極性が切り替わる度に、ダイオードD1〜D6が順に導通状態となり、コンデンサC1〜C6が順次充電される。
【0033】
充電動作について簡単に説明すると、まず、入力端子76に正極性となるような二次電圧Eが印加されると、接地ラインL2の方が電源ラインL1よりEだけ電位が高い状態となる。この結果、ダイオードD1が通電状態となり、コンデンサC1が2次電圧Eの電圧レベルまで充電される。
【0034】
その後、二次電圧Eの極性が切り替わって、入力端子75が正極性となる電圧が印加されると、このときには、第一トランス6aの2次側とコンデンサC1が直列状態となり、電源ラインL1の電位が接地ラインL2に対して2Eだけ電位が高い状態となる。この結果、ダイオードD2が通電状態となり、コンデンサC2が両ラインの電位差2Eの電圧レベルまで充電される。
【0035】
次に、二次電圧Eの極性が切り替わって、入力端子76に正極性となるような二次電圧Eが印加されると、このときには、第一トランス6aの2次側とコンデンサC2が直列状態となり、接地ラインL2の電位が電源ラインL1に対して2Eだけ電位が高い状態となる。この結果、ダイオードD3が通電状態となり、コンデンサC3が両ラインの電位差2Eの電圧レベルまで充電される。
【0036】
このように、二次電圧Eの極性が切り替わる度に、電源ラインL1と接地ラインL2の電位の高低が切り替わる結果、各ダイオードが順次通電状態になり、通電状態となったダイオードに対応するコンデンサが、両ラインL1、L2間の電位差に応じて充電される。
【0037】
そして、最終的には、図3に示すように、各コンデンサC1〜C6が全て充電され、高電圧発生回路7の出力端子77には、二次電圧Eの約6倍の電圧(一例として約7kv)が発生する。
【0038】
そして、高電圧発生回路7のコンデンサC2、C4、C6と、第一放電抵抗R1とは並列に接続されているから、高電圧発生回路7が出力を発生させているときには、第一放電抵抗R1に電流が流れ、第一放電抵抗R1の両端に、高電圧発生回路7の出力電圧(約7kVの高電圧)がかかる。従って、高電圧発生回路7の出力電圧(約7kVの高電圧)が放電電極15に対してそのまま印加されることとなる。
【0039】
また、このものでは、第二トランス6bの二次側の端子のうち接地側の端子F2とそれに対応する高電圧発生回路8の入力端子86との間に、第一放電抵抗R1を設けてあるので、高電圧発生回路7が出力を発生させているときに、第二トランス6bの二次側の端子(接地側の端子)F2の電圧はゼロボルトになり、高電圧がかからない。よって、第二トランス6bに、耐圧のそれほど高くない通常のトランスを使用することが可能となる。
【0040】
尚、高電圧発生回路7の各コンデンサC1〜C6は、スイッチ3aがオンされている期間は充電状態を維持するが、スイッチ3aがオフされると、チャージした電荷は、第一放電抵抗R1を介して接地に流れる(図4にて太線で示す経路)ことで放電され、元の状態に戻る。
【0041】
(2)負極性の高電圧出力時の動作
負極性の高電圧を出力する場合には、制御回路20によりスイッチ3aがOFFされ、これとは反対にスイッチ3bがONされる。
【0042】
スイッチ3bがON状態になると、第二トランス6bが通電され作動する。これにより、第二トランス6bの二次側には、一次電圧に巻き数比を乗したレベルの電圧(ここではE)が発生し、これが、高電圧発生回路8の両入力端子85、86間に印加される。第二トランス6bの二次電圧Eは、極性が周期的に正負切り替わるので、高電圧発生回路8の両入力端子85、86に印加される二次電圧Eも、極性が周期的に正負切り替わる。
【0043】
すると、高電圧発生回路8では、印加される二次電圧Eの極性が切り替わる度に、ダイオードD7〜D12が順に導通状態となる。これにより、各コンデンサC7〜C12が、上述した高電圧発生回路7の場合とは逆の極性で、順次充電される。その結果、高電圧発生回路8の出力端子87には、二次電圧Eの約−6倍の電圧(本実施形態では、約−7kv)が発生する。
【0044】
そして、高電圧発生回路8のコンデンサC8、C10、C12と、第二放電抵抗R2は並列に接続されているから、高電圧発生回路8が出力を発生させているときには、第二放電抵抗R2に電流が流れ、第二放電抵抗R2の両端に高電圧発生回路8の出力電圧(約−7kVの高電圧)がかかる。従って、高電圧発生回路8の出力電圧(約−7kVの高電圧)が放電電極15に対してそのまま印加されることとなる(図5参照)。
【0045】
尚、高電圧発生回路8の各コンデンサC7〜C12は、スイッチ3bがオンされている期間は充電状態を維持するが、スイッチ3bがオフされると、チャージした電荷は、第二放電抵抗R2を介して図6にて太線で示す経路を流れることにより放電され、元の状態に戻る。
【0046】
このように本実施形態の除電装置Zは、スイッチ3a、3bを制御回路20によって交互に開閉させることで、放電電極15に正負の高電圧を交互に印加できる。これにより、放電電極5で放電が起こり、正負のイオンを交互に生成できる。
【0047】
3.高圧電源部Z2の構造説明
高圧電源部Z2は、図7に示すように概ね箱型の回路ケーシング120を備える。回路ケーシング120は合成樹脂製であり、第一収容部121と第二収容部125とを有する。
【0048】
第一収容部121には、第一高電圧発生回路基板130と、第二高電圧発生回路基板150の2つの回路基板が板面を上下方向に向けつつ、一定距離はなして収容されている。
【0049】
第一高電圧発生回路基板130は、プリント基板上に、上記した発振回路5aを構成する電子部品、トランス6a、高電圧発生回路7を構成する電子部品、具体的にはダイオードD1〜D6とコンデンサC1〜C6を実装した回路基板である。
【0050】
第二高電圧発生回路基板150は、プリント基板上に、上記した発振回路5bを構成する電子部品、トランス6b、高電圧発生回路8、具体的にはダイオードD7〜D12とコンデンサC7〜C12を実装した回路基板である。
【0051】
また、第二収容部125には、抵抗基板170が板面を上下方向に向けて収容されている。抵抗基板170は、プリント基板上に、第一放電抵抗R1と第二放電抵抗R2を実装した基板である。
【0052】
そして、第一収容部121と第二収容部125には、いずれも絶縁性の樹脂材料(一例としてエポキシ樹脂)Wが充填されていて、各収容部121、125に収容された3枚の基板、すなわち両高電圧発生回路基板130、150及び抵抗基板170に実装された電子部品や、放電抵抗R1、R2を樹脂モールドしている。これは、絶縁のためである。尚、樹脂材料Wは、各収容部121、125への充填時は液状であり、その後硬化する。これにて、各基板130、150、170が樹脂モールドされる。
【0053】
そして、両収容部121、125は、回路ケーシング120の奥行き方向(図8の左右方向)に、一定距離離れて形成されている。具体的には図8中のA寸法だけ離れて形成されていて、両収容部121、125の間に本発明の断熱層にあたる空気層Uが設けられている。この空気層Uは、回路ケーシング120の全幅に亘って設けられており、第一収容部121側と第二収容部125側とを、回路ケーシング120の全幅に渡って仕切っている。このようにすることで、第一収容部121に収容された高電圧発生回路基板130、150と、第二収容部125に収容された抵抗基板170とを熱的に切り離すことが可能となる。
【0054】
尚、上記により、本発明の「前記電子部品を樹脂にてモールドした電子部品側モールド部(ここでは、第一収容部121に収容された高電圧発生回路基板130、150に実装された電子部品を樹脂材料Wでモールドしたもの)と、前記両放電抵抗を樹脂にてモールドした放電抵抗側モールド部(ここでは、第二収容部122に収容された抵抗基板170に実装された放電抵抗R1、R2を樹脂材料Wでモールドしたもの)との間に両モールド部を仕切る断熱層(ここでは、空気層U)を設けた」が実現されている。
【0055】
また、回路ケーシング120には、低圧回路基板(図中は省略)が収容されている。低圧回路基板は、直流電源1を構成する電子部品やスイッチ3a、3bを実装したものであり、たとえば、回路ケーシング120の上部に収容されている。具体的には、3枚の基板130、150、170から一定距離離れつつ水平な姿勢で収容されている。上記した回路ケーシング120は、図8に示すように蓋部材200により閉止されている。また、回路ケーシング120の外側には金属製の放熱板210が、回路ケーシング120に密着するように取り付けられている。放熱板210は、回路ケーシング120の底面壁及び側面壁を囲む箱形状をしており、回路ケーシング120に収容された各基板130、150、170や電子部品、放電抵抗R1、R2の放熱性を高める機能を果たす。
【0056】
尚、回路ケーシング120に収容された3枚の基板130、150、170の電気的な接続関係は、図9に示す通りであり、図中のJはジャンパ線である。すなわち、ジャンパ線Jにより各基板間で電子部品や放電抵抗を電気的に接続している。
【0057】
4.効果説明
本実施形態では、第一収容部121と第二収容部125との間に空気層Uを設けることで、第一収容部121に収容された両高電圧発生回路基板130、150と、第二収容部125に収容された抵抗基板170を熱的に切り離すようした。そのため、スイッチ3a、3bの切り換えに伴って流れる放電電流により、放電抵抗R1、R2が発熱しても、その熱が、両高電圧発生回路基板130、150に対して伝わり難くなる。そのため、正負極性の高電圧発生回路7、8を構成する電子部品が温度上昇し難い。
【0058】
以上のことから、高電圧発生回路7、8の回路動作の安定化を図ることが可能である。また、別の見方をすれば、放電抵抗R1、R2に対してある程度大きな放電電流を流しても発熱の心配がないので、正負の切り替えを高速で行うことが可能となる。
【0059】
また、この実施形態では、両高電圧発生回路基板130、150から、抵抗基板170を別基板として分離させている。このようにすれば、基板を通じた熱の伝達を遮断できる。そのため、放電抵抗R1、R2側から高電圧発生回路7、8側に、熱が一層伝わり難くなる。
【0060】
また、この実施形態では、回路ケーシング120を放熱板210で囲っている。そのため、放電抵抗R1、R2が発熱しても、その熱を効率よく放熱できる。そのため、高電圧発生回路基板130、150やそれに実装された電子部品が温度上昇し難くなる。
【0061】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0062】
(1)上記実施形態では、第一高電圧発生回路基板130と、第二高電圧発生回路基板150と、抵抗基板170の3枚の基板を備えた除電装置を例示した。基板は、複数枚に分割する構成に限定されるものではなく1枚にすることが可能である。
【0063】
そして、基板を1枚にする場合、例えば、図10に示すように、共通基板300に対して、放電抵抗R1、R2と、除電装置のそれ以外の電子部品Kを分けて配置すると共に、放電抵抗R1、R2のグループとそれ以外の電子部品のグループをそれぞれ樹脂モールドする。そして、電子部品Kを樹脂にてモールドした電子部品側モールド部310と、両放電抵抗R1、R2を樹脂にてモールドした放電抵抗側モールド部330との間に、例えば、グラスウールなどの断熱材よりなる断熱層350を設ける。このようにすれば、断熱層350により、放電抵抗R1、R2側から、それ以外の電子部品Kを熱的に切り離すことが可能になることから、実施形態1と同様に電子部品Kの温度上昇を防止できる。
【0064】
尚、図10において、放電抵抗R1、R2を囲む太線の枠は樹脂モールドしたエリアを示し、同じく電子部品Kを囲む太線の枠は樹脂モールドしたエリアを示している。
【0065】
(2)上記実施形態では、電源1として直流電源を用いた。電源1は直流電源に限定されるものではなく、交流電源を用いることも可能であり、この場合には、発振回路を廃止できる。
【0066】
(3)上記実施形態では、高電圧発生回路7、8の例として、半波倍電圧整流回路を三段にしたものを示したが、接続段数は、3段に限定されるものではなく、それ以外の段数でもよい。
【符号の説明】
【0067】
1・・・電源
6a・・・第一トランス
6b・・・第二トランス
7・・・正極性側の高電圧発生回路(本発明の「正極性側高電圧発生回路」に相当)
8・・・負極性側の高電圧発生回路(本発明の「負極性側高電圧発生回路」に相当)
15・・・放電電極
20・・・制御回路(本発明の「制御手段」に相当)
120・・・回路ケーシング
121・・・第一収容部
125・・・第二収容部
130・・・第一高電圧発生回路基板
150・・・第二高電圧発生回路基板
170・・・抵抗基板
210・・・放熱板
R1・・・第一放電抵抗
R2・・・第二放電抵抗
U・・・空気層
Z・・・除電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に対して接続され前記電源から給電される第一トランスと、
前記第一トランスの二次側に設けられ、前記第一トランスの二次電圧を昇圧して正極性の高電圧を発生させる正極性側高電圧発生回路と、
前記電源に対して前記第一トランスと並列的に接続され前記電源から給電される第二トランスと、
前記第二トランスの二次側に設けられ、前記第二トランスの二次電圧を昇圧して負極性の高電圧を発生させる負極性側高電圧発生回路と、
前記電源を前記第一トランス側及び前記第二トランス側に交互に接続する切り換え制御を行う制御手段と、
前記正極性側高電圧発生回路により印加される正極性の高電圧に対応して正極性のイオンを発生させ、前記負極性側高電圧発生回路により印加される負極性の高電圧により負極性のイオンを発生させる放電電極と、
前記電源への接続を、前記第一トランス側から前記第二トランス側に切り替えるときに、前記正極性側高電圧発生回路にチャージされた電荷を放電させる第一放電抵抗と、
前記電源への接続を、前記第二トランス側から前記第一トランス側に切り替えるときに、前記負極性側高電圧発生回路にチャージされた電荷を放電させる第二放電抵抗と、を備えた除電装置であって、
前記正極性側高電圧発生回路及び前記負極性側高電圧発生回路を構成する電子部品は樹脂にてモールドされ、
前記第一放電抵抗と前記第二放電抵抗は樹脂にてモールドされ、
前記電子部品を樹脂にてモールドした電子部品側モールド部と、前記両放電抵抗を樹脂にてモールドした放電抵抗側モールド部との間に、両モールド部を仕切る断熱層を設けたことを特徴とする除電装置。
【請求項2】
前記正極性側高電圧発生回路及び前記負極性側高電圧発生回路を構成する電子部品を実装した高電圧発生回路基板から、前記第一放電抵抗と前記第二放電抵抗を実装した抵抗基板を別基板として分離したことを特徴とする請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
前記断熱層は、空気層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の除電装置。
【請求項4】
前記電子部品側モールド部と、前記放電抵抗側モールド部を収容する合成樹脂製の回路ケーシングの外周壁に、金属製の放熱板を装着したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の除電装置。
【請求項5】
前記回路ケーシングは、前記高電圧発生回路基板を収容する第一収容部と前記抵抗基板を収容する第二収容部の二つの収容部を一定距離離して形成することにより、前記断熱層としての空気層を形成する請求項4に記載の除電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−252800(P2012−252800A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122497(P2011−122497)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】