陰唇間パッド
【課題】装着者が身体動作をしても違和感を覚えない陰唇間パッドを提供すること。
【解決手段】着用者の身体側に位置する表面側シート26、着用者の反身体側に位置する裏面側シート30、及び表面側シート26と裏面側シート30との間に配置される吸収体28を備える陰唇間パッド10であって、表面側シート26及び吸収体28は、水分散性素材により構成され、裏面側シート30の外面は、外面同士のしゅう動による抵抗、又は該外面と該外面を構成する部材とは異なる部材により構成される面とのしゅう動による抵抗が低い低摩擦構造を有しており、低摩擦構造は、少なくとも外面にシリコーン処理が施された水溶性フィルムにより裏面側シート30を構成することで形成される。
【解決手段】着用者の身体側に位置する表面側シート26、着用者の反身体側に位置する裏面側シート30、及び表面側シート26と裏面側シート30との間に配置される吸収体28を備える陰唇間パッド10であって、表面側シート26及び吸収体28は、水分散性素材により構成され、裏面側シート30の外面は、外面同士のしゅう動による抵抗、又は該外面と該外面を構成する部材とは異なる部材により構成される面とのしゅう動による抵抗が低い低摩擦構造を有しており、低摩擦構造は、少なくとも外面にシリコーン処理が施された水溶性フィルムにより裏面側シート30を構成することで形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性の陰唇に密着して装着できる陰唇間パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、女性用生理用品としては、生理用ナプキン、タンポンが一般的に用いられている。ここで、生理用ナプキンについては、膣口付近への密着性の乏しさゆえに生じる隙間からの経血のモレを防ぐべく、多大な努力が払われている。また、タンポンにおいても、その物品の属性に起因して、着用時の異物感や不快感、膣内への装着困難性を生じることから、これらを除去するために多大な努力がなされている。
【0003】
このような状況下、生理用ナプキンやタンポンの中間に位置する生理用品として、近年、陰唇間パッドなる生理用品が注目されるようになってきている。この陰唇間パッドは、女性の陰唇間にその一部分を挟み込ませ、陰唇内面に当接させて装着するというものであり、生理用ナプキンに比して身体との密着性が高いために経血のモレが防止されるとともに、経血が拡散して身体に広く接することを防ぐために衛生的かつ清潔なものである。また、生理用ナプキンよりも小型であるために、装着感に優れて快適であり、膣内に挿入するタンポンに比べて着用時の心理抵抗も低いという特徴を有している。
【0004】
通常、陰唇間パッドは、ショーツに固定して使用する生理用ナプキンや、体内に挿入し固定して使用するタンポンと異なり身体動作により左右位相変化が可能な女性陰唇間に狭み込むことで身体に固定し使用する。このため陰唇間パッドは柔軟に左右位相変化できることが必要であり、着用者の身体動作に追従する必要がある。即ち、歩行において右足と左足を交互に前に出した場合のように、身体の前後に広がる身体の中心面に対して非対称な身体の動きに対応する陰唇の動きに対しても追従する必要がある。陰唇間パッドが身体動作に追従することが困難で着用者の陰唇間から脱落した場合には、経血のモレによる被害は甚大なものとなる。ここで、左右位相変化というのは、左右が非対称に若しくはバラバラに変化(この変化は、位置を変えることや動くことを含む)することを含む広い概念である。
【0005】
このような従来例としては、例えば、吸収陰唇間装置(特許文献1参照)のようなものがある。この吸収陰唇間装置は、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシート、これら2つの間に位置付けられている吸収性核を含み、装置の長さは約60mmと約130mmとの間で、幅は約25mmと50mmとの間である。装置はその長手方向中心線に沿って好ましい曲げ軸を有し、この軸に沿って折り曲げられ着用者の陰唇間の空間中に挿入された時、トップシートが着用者の陰唇の壁との接触を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−506168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この吸収陰唇間装置は、陰唇間への装着された際に2つ折になるようになっており、陰唇間に収まる構造となっている。しかし、通常の生理用ナプキンと異なり、下着に固定されるものではなく、タンポンのように挿入による固定もされない。即ち、ズレが生じ得る状態で陰唇間に挟み込まれるものであって、ナプキンやタンポンよりも固定の程度が低いものであるため、装着者の身体動作により、該吸収陰唇間装置(陰唇間パッドに相当)と陰唇との間にズレが生じやすく、装着者は違和感を感じやすくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、女性の陰唇に密着して装着できる陰唇間パッドにおいて、身体動作により陰唇間パッドと陰唇に何らかの力が加わった場合においても、装着者への違和感を可能な限り低減することである。
【0009】
そもそも、装着者が違和感を感じるのは、陰唇間パッドと陰唇表面との間にズレが生じる場合や、陰唇間パッドと陰唇表面との間にズレは生じないが、何らかの力を感じる場合であろうということを発明者らは見出した。このような力は、主に装着者の左右非対称な動作が原因で生じやすい。例えば、2つ折りにして着用する陰唇間パッドにおいては、左側の陰唇は左側の陰唇間パッドに接し、右側の陰唇は右側の陰唇間パッドに接するため、陰唇間パッドが十分な柔軟性を持てば、かかる問題は生じないはずである。つまり、陰唇間パッドの左側部と右側部が折り線を中心として左右位相変化がある程度可能になるようになっているからである。しかしながら、身体動作時の左右位相変化によって互いに接触しあう裏面側シートの摩擦により、装着状態を維持し続けるのが困難である場合がある。例えば、着用者の歩行動作等で代表される身体の左右非対称的な動作により、陰唇に接触している該陰唇間パッドの左右2つの表面が左右非対称に追従しようとするが、裏面側シートの摩擦力のために、陰唇間パッドの左部と右部が折り線を中心として左右位相変化をすることが困難になる場合である。この結果、装着者は、違和感を感じるばかりでなく、程度がひどくなれば、陰唇表面に接触していた該陰唇間パッドの左と右の表面が、両者とも、或いは、いずれか一方、該陰唇表面から離れ、陰唇の狭持力を失い該陰唇間パッドが脱落することになる。
【0010】
また、陰唇間パッドが着用されている陰唇自体の狭持力に対して、裏面側シートと下着との摩擦抵抗が高くなった場合にも、着用者の身体動作に追従することできなくなり、装着者は違和感を感じるだけでなく、時には、該陰唇間パッドが脱落することも十分ありうる。即ち、裏面側シート同士、又は、裏面側シートと下着などの別の物との低摩擦を達成することが好ましいことが判明した。また、低摩擦の達成は、裏面側シートの表面形状を工夫することにより、簡易かつ効果的に達成することができるということも本発明者らは見出した。
【0011】
本発明は、以上のような発見を基になされたものであり、女性の陰唇に密着して装着できる陰唇間パッドにおいて、身体動作により陰唇間パッドに剪断力が加わった場合においても、自在に左右非対称な動きをできる構造及び/又は形状、つまり、低摩擦となる構造及び/又は形状を備えている陰唇間パッドを提供する。
【0012】
より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0013】
(1) 一部又は全部を陰唇間に無理なく挟み込んで保持することが可能な大きさ、重さ、柔軟性を備える陰唇間パッドであって、
前記陰唇間パッドは、身体側に配向される身体側面及び衣服側に配向される反身体側面を備え、該反身体側面の表面形状が、同一の面を含む他の面とのしゅう動による抵抗の低い低摩擦形状を有しており、前記反身体側面は、複数の凹部及び複数の凸部を有する不織布に不透水性のフィルムが積層された複合シートから構成されており、前記不織布と前記フィルムとの接合は、部分的に実施されており、前記低摩擦形状は、前記複数の凹部及び前記複数の凸部により形成されることを特徴とする陰唇間パッド。
【0014】
ここで、「一部又は全部」というのは、上記陰唇間パッドが、陰唇間に挟み込まれることにより、一部が外部から見えなくなること、又は、全てが見えなくなることであってよい。無理なく挟み込むとは、この陰唇間パッドを装着する装着者が行って無理なく挟み込むことであってよく、保持するとは、挟み込まれた部位から脱落しないことであってよい。身体側に配向される身体側面は、その面の少なくとも一部が身体側に配向していればよい。また、衣服側に配向される反身体側面とは、その面の少なくとも一部が身体側ではない側に配向していればよい。
【0015】
「反身体側の表面形状」とは、反身体側に位置する部材又は面が保有する形状であって、必ずしも該部材又は面の全体がそのような形状を保有する必要はなく、少なくとも一部がそのような形状であればよい。同一の面とは、該反身体側に位置する部材又は面によって形成される同一の面であり、その位置が異なる面のことであってよい。例えば、該部材を折り曲げることにより、接触することになる、該部材の同一面上の異なる位置の面(部位)のことを意味してよい。他の面とは、このような同一の面を含み、全く別の部材から構成される面を含んでよい。例えば、下着などの衣服により構成される面を含んでよい。
【0016】
しゅう動による抵抗の低い形状(「低摩擦形状」)とは、表面形状であって、所定の条件下で同一種類の面と若しくは所定の面としゅう動させた場合、摩擦抵抗が低い形状をいい、フックとループ(例えば、マジックテープ(登録商標))のような、接触面の噛み合いがある場合を除く形状である。
【0017】
(2) 前記低摩擦形状が、しゅう動する2面間の実質的接触面積が少ない形状からなるものであることを特徴とする上記(1)に記載の陰唇間パッド。
【0018】
ここで、「しゅう動する2面」とは、1面が反身体側面の面であり、他の1面は、同じく反身体側面の面であって他の部位又は衣服等の別の面をいってよい。実質的接触面積とは、見かけ上接触している2つの面において、実際に相互に接触している場所の面積を集約した面積であってよい。「接触」とは、固体若しくは粘性の高い液状のものを間に挟んだ接触を含み、しゅう動により相手面に摩擦力が伝わる状態にあることをいってよい。「実質的接触面積が少ない形状」をより具体的にいえば、面相互の実際の接触面積が少ない形状であってよい。
【0019】
(3) 前記低摩擦形状が、微小凸形状の群からなるものであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の陰唇間パッド。
【0020】
「微小凸形状」とは、前記反身体側面の基材の基準面より、部分的に突出している形状をいってよく、その大きさが、前記反身体側面の基材に比べ小さいものでよい。「群」とあるのは、かかる凸形状が1つでは、低摩擦形状にならないため、複数あるようにするためであってよい。
【0021】
(4) 前記微小凸形状が、エンボス賦型によるエンボス部であることを特徴とする上記(3)に記載の陰唇間パッド。
【0022】
ここで、「エンボス部」とは、前記反身体側面の基材の基準面と比べ突出している部分をいい、特に、その突出部が前記反身体側面の基材に比べ十分に小さいものをいう。上に突出するエンボス部の突出部を上から見た形状は、通常円であるが、矩形、楕円、その他の形状であってよく、円に限られるものではない。
【0023】
(5) 前記微小凸形状のエンボス率が1%以上で50%以下であることを特徴とする上記(4)に記載の陰唇間パッド。
【0024】
ここで、「エンボス率」とは、エンボス形状になっている総面積を反身体側面であって、エンボス加工ができる総面積で割ったものをいう。
【0025】
(6) 前記低摩擦形状が、繊維集合体によって形成されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の陰唇間パッド。
【0026】
ここで、「繊維集合体」とは、複数の繊維が集まって固まり状となったもので、織布および不織布を含む。
【0027】
(7) 前記繊維集合体が、不織布からなることを特徴とする上記(6)に記載の陰唇間パッド。
【0028】
ここで、「不織布」とは、織布以外の布をいってよく、スパンボンド、スパンレース、スルーエアー、ニードルパンチ等の製法で作られたものを含んでよい。
【0029】
(8) 前記反身体側面体が、低摩擦素材からなることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【0030】
ここで、「低摩擦素材」とは、例えば、4フッ化エチレンのような高分子等の有機材料や無機材料を含むもので、一般に乾燥中で摩擦係数が小さいもの、繊維からなる布や不織布等との摩擦係数が低いもの、また自分自身との摩擦係数が低いものである。摩擦係数が低いとは、その値が、0.3以下、より好ましくは、0.1以下である。
【0031】
(9) 前記反身体側面体に、潤滑剤を付与したことを特徴とする上記(1)から(8)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【0032】
ここで、潤滑材としては、さらさらした粉末を含む固体潤滑剤やシリコーンオイルを含む油等の流体潤滑剤で衛生上や健康上問題のない、毒性の特に低いものをいう。
【0033】
(10) 前記陰唇間パッドが、ミニシート片を有することを特徴とする上記(1)から(9)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【0034】
ここで、ミニシート片とは、前記陰唇間パッドの外側につけられるものであってよく、該陰唇間パッドと共に袋を形成したり、ブリッジを形成してよい。
【0035】
(11) 前記陰唇間パッドは尿失禁用の陰唇間パッドであることを特徴とする上記(1)から(10)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【0036】
本発明に係る陰唇間パッドによれば、尿失禁用の吸収パッドとして使用することができる。即ち、経血を排出する膣口と尿を排出する尿道口とはいずれも陰唇間に位置するものであるため、本発明に係る陰唇間パッドを陰唇間に挟み込んで使用した場合には、尿を吸収することができる。
このように、本発明によれば、尿を陰唇間、特に尿道口付近で吸収できるので、尿失禁特に軽度の尿失禁に対して有効な吸収パッドを得ることができる。
【0037】
(12) 前記陰唇間パッドはおりもの吸収用の陰唇間パッドであることを特徴とする上記(1)から(10)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【0038】
本発明に係る陰唇間パッドによれば、陰唇間パッドをおりもの吸収用として使用することができる。即ち、本発明に係る陰唇間パッドは陰唇間に挟み込んで使用するものであることから、膣口からの経血以外の分泌物(おりもの)も吸収することができるので、そのための用途(おりもの吸収用)にも使用することができるのである。
このように、本発明によれば、おりものを吸収して着用者の不快感を軽減することができるため、生理時以外の着用者にとっても有効である。
【0039】
(13) 上記(1)から(12)のいずれかに記載の陰唇間パッドを用いて陰唇間パッド装着者の違和感を減らす方法。
【0040】
この方法によれば、違和感を訴える類似するが異なる陰唇間パッドの着用者の不満を解決することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、着用中に左右位相変化可能な陰唇間パッドにおいて、裏面側シートの衣服側面に裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造及び/又は形状を有することで、裏面側シート同士の摩擦抵抗を低減し陰唇間パッドが容易に左右位相変化することが可能となる。従って、装者の際の違和感を低減させることができ、更には、着用者の身体動作によって陰唇間パッドに陰唇自体の挟持力を上回る摩擦抵抗が陰唇間パッドの裏面側シートに加わることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態における陰唇間パッドの身体側面から見た平面図である。
【図2】第1図のX1−X2断面図である。
【図3】本実施形態における陰唇間パッドであって、2つ折りにして用いる陰唇間パッドを前から見た正面図(A)及び左から見た側面図(B)である。
【図4】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、繊維積層体を用いたパッドの裏面側シートの一部を拡大して下から見た平面図である。
【図5】第4図のA−A断面図である。
【図6】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、繊維積層体を用いたパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図7】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、繊維積層体を用いたもう1つのパッドの一部を示した断面図である。
【図8】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、繊維積層体を用いたもう1つのパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図9】第8図のB部拡大図である。
【図10】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、繊維積層体を用いた更にもう1つのパッドの一部を示した断面図である。
【図11】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、エンボス部を用いたパッドの裏面側シートの一部を拡大して下から見た平面図である。
【図12】第11図のB−B断面図に相当するが、二つの異なるケースをそれぞれ(A)及び(B)で示している。
【図13】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、エンボス部を用いた1つのパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図14】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、エンボス部を用いたもう1つのパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図(A)、(B)である。
【図15】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、エンボス部を用いた更にもう1つのパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図16】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、ミニシートを更に有するパッドの断面図である。
【図17】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、ミニシートを更に有すると共に、積層体と複合した裏面側シートを用いたパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図18】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、ミニシートを更に有すると共に、エンボス部を持つ裏面側シートを用いたパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図19】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、ミニシートを更に有するもう1つのパッドの断面図である。
【図20】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、ミニシートを更に有する更にもう1つのパッドの断面図である。
【図21】本発明の実施例において、低摩擦のメカニズムの解析を試みる図面である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、本発明の陰唇間パッドの実施形態について、図を参照しつつ説明する。
【0044】
[基本的な陰唇間パッド]
第1図に、陰唇間パッド10の正面概略図を示す。陰唇間パッドは実質的に前後方向に縦長の形態で、縦軸(Y軸)において前14と後16を長径とし、横軸(X軸)において右18と左20を短径とするような楕円形をしている。ただし、製品形状は、楕円型、瓢箪型、雫型等の女性の陰唇領域に適合する形態で着用時に左右位相変化可能となる形態であれば特に限定するものではない。
【0045】
第2図に、第1図のX1−X2断面概略図を示す。陰唇間パッド10は着用者の身体側面22であり、陰唇内面と接触する液透過性の表面側シート26、着用者の衣服側であり、反身体側面24を向く液透過性もしくは液不透過性の裏面側シート30と吸収体28で構成されており、吸収体の周縁で表面側シートと裏面側シートを接合した貼り合わせのタイプのものである。表面側シート26と裏面側シート30とを貼り付ける際にヒートシール単独による接合のほか、ホットメルト型接着剤と併用した接合としても構わない。また、陰唇間パッド10の構成は、上述の貼り合わせタイプに限定されるものではなく、吸収体の下に不透水性材料を配置し、透水性のシートで全体を被覆した封入タイプとすることもできる。
【0046】
以下、陰唇間パッドの主要な構成要素である表面側シート及び吸収体について簡単に説明する。裏面側シートは、後に低摩擦との関係で説明する。
【0047】
[表面側シート(透水性シート)]
陰唇間パッドの身体側に配置される表面側シートは、上述のように透水性であることが好ましい。透水性のシートには、液親水性であり、肌に刺激を与えない材料が使用される。このようなものとしては、メルトブローン、スパンボンド、ポイントボンド、スルーエアー、ニードルパンチ、湿式スパンレース、フォームフィルム等の製造方法から得られる不織布を単独又はこれらを複合した材料が挙げられる。
繊維状シートとしては、レーヨン、アセテート、コットン、パルプ又は合成樹脂を成分としたものを単独又は芯鞘構造を成すように複合したものを単独又は混合した繊維をシート化したものが挙げられる。
【0048】
このような材料のうち、陰唇内面からの液移動性や活性剤による化学的刺激及び陰唇内壁との密接性を考慮すると、身体面側には繊度1.1〜4.4dtex、繊維長7〜51mmからなるレーヨンを合計目付に対して40〜80%を積層、その衣服面側には繊度1.1〜4.4dtex、繊維長7〜51mmからなり合計目付に対して14〜42%のレーヨンと繊度1.1〜4.4dtex、繊維長7〜51mmからなり合計目付に対して6〜18%のPETを混合して積層し、2層の合計目付が20〜60g/m2となるよう積層した後、水流交絡により繊維同士を絡合させて乾燥させ、厚みを0.13〜0.50mmの範囲で調整したスパンレース不織布が好ましい。この際、衣服面側にPETを混入する事により、透水性シートが湿潤状態になっても嵩を維持しやすいため陰唇内壁との密接性を保つことができる。
【0049】
<吸収体>
陰唇間パッドに内包される吸収体に用いられる材料としては、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、高分子吸収体、繊維状高分子吸収体、合成繊維を単独又はこれらを混合した物が使用できる。所要に配合した混合物をエンボス加工による圧着、ニードリングによる絡合などの公知技術によりシート化させ、必要に応じて嵩を調整する、重ねる、折り重ねる等により適宜調整することができる。
シート状の材料としては、これらをシート状若しくは粉状に加工して使用してもよく、使用方法に限定されるものではない。
【0050】
吸収体は、液体(体液)の吸収保持が可能であればよいが、嵩高であり、型崩れし難く、化学的刺激が少ないもので、さらには陰唇への適合が高い柔軟性を有することが好ましい。具体的には、衣服面側には、繊維長1〜10mmの範囲から選ばれるパルプを50〜150g/m2積層し、その身体面側には、繊度1.1〜4.4dtex、繊維長20〜51mmの範囲から選ばれるレーヨンを60〜90%、天然コットンを40〜10%の混合比で150〜250g/m2積層してドット状のエンボス加工によりシート化させた、嵩2〜10mm、好ましくは3〜5mmに調整した不織布シートが挙げられる。これにより、身体面側から衣服面側へ液体を移行させやすく、吸収保持力が高まる。さらには、上記パルプ層の身体面側には繊度1.1〜4.4dtex、繊維長25〜51mmからなるレーヨンを目付15〜40g/m2に調整したメッシュスパンレース不織布を敷設する事により、身体面側から移行してきた液体をメッシュスパンレースにより拡散させ、パルプ層のほぼ全域に液体を誘導させる事ができるので、効率良くより多くの液体を吸収する事が可能である。
【0051】
第1図及び第2図の陰唇間パッド10は、第3図にあるようにX軸に沿った前14と後16を結ぶ線により2つに折って用いてもよい。このとき、身体側面22に表面側シート26が上(又は外側)になる。一方反身体側24は、下になり、裏面側シート30は、折り曲げた内側に位置する。このような構造では、陰唇表面に接触するのは、表面側シート26であり、その右側及び左側が、陰唇の右側部及び左側部に接触することとなる。このため、陰唇の右部及び左部が非対称な動きをしたときに、陰唇間パッドの右側と左側がそれぞれ、陰唇の右部及び左部に則してある程度動くことができる。即ち、身体動作による陰唇間パッドの左右位相変化に対して、比較的容易に追従可能となるシート状物である。ただし、この際に、裏面側シート同士がしゅう動することとなり、そのときの摩擦力低減が本発明の目的である。
【0052】
[裏面側シート]
<不透水性>
陰唇間パッドの裏面側シートに使用される不透水性のシートの材料としては、吸収体に保持された経血が陰唇間パッドの外へ漏れ出すことを防止できるものを使用することができる。また、透湿性素材とすることにより、装着時のムレを低減させることができ、装着時における不快感を低減させることが可能となる。
【0053】
このような材料としては、例えば、合成樹脂を膜化したシート状フィルム、無機フィラーを充填させて延伸処理を施すことにより得られる通気フィルム、紙、不織布とフィルムを複合したラミネート物、10〜30%の開孔を有し孔径が0.1〜0.6mmの範囲で毛細管を吸収性体側に向かうように配置することにより得られる通気性液遮断シート、等を使用することができる。
【0054】
更に、装着感を損なわない柔軟性を考慮した場合には、例えば、密度が0.900〜0.925g/cm3の密度の低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とした目付15〜30g/m2の範囲から得られるフィルムを使用することが好ましい。但し、以下に述べられる低摩擦特性を満足するように組み合わせや材料構成の変更などがあってよい。
【0055】
<低摩擦特性>
本発明にかかる陰唇間パッドの裏面側シートの衣服側面には、裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造を有しており、裏面側シート同士の摩擦抵抗を低減し陰唇間パッドが容易に左右位相変化することが可能となる。具体的には裏面側シート同士の最表面における表面接触率を低下させることによって密接な接触を起こしにくくすることができる。また、裏面側シートの衣服側面にシリコーンオイル、グリセリンやエチレングリコールといった多価アルコール、パラフィンワックス、パラフィンオイル等といった潤滑剤を塗布し、裏面側シート同士が潤滑剤を介在して接触する事で密接な接触を起こしにくくすることも挙げられる。
【0056】
[積層繊維の複合タイプ]
第4図に、第1の実施例である繊維積層体を複合した裏面側シート32の下から見た正面図を示す。この裏面側シート32は、繊維積層体34が作る凹凸により(第5図)、裏面側シート同士の最表面の接点が減少し密接な接触を起こしにくく、この形状により低摩擦が実現できる。第4図におけるA−A断面を示している第5図のように、繊維積層体34とフィルムを複合した裏側シート32は、剛性が高くなりやすいと考えられたが、樹脂フィルムの薄膜化や接合方法の選択等により陰唇間パッドに相応しい柔軟性を付与することができ、陰唇間パッド10裏面側シート32として適している。
【0057】
なお、特に第5図にある実施例においては、繊維積層体34を構成する繊維集合体として、スパンボンド不織布36が用いられている。また、フィルム38にはポリスチレン樹脂フィルム38が用いられている。
【0058】
第6図に、裏面側シート同士が接触する状態を模式的に示した。第6図からわかるように、接触点が少ないだけでなく空隙40を形成するために、湿潤時においても水分が裏面側同士の接触面に溜まることが無く、摩擦抵抗に大きな変化を生じることがない。そのため、湿潤時又は乾燥時において、陰唇間パッドの左右部位の追従性に変化が少なく、安定した品質を確保できる。本実施例の樹脂フィルム38には、密度0.923g/cm3の低密度ポリエチレンを主体としたキャスト法で成膜された22g/m2のフィルムを用いた。
【0059】
尚、これ以外にフィルムとして、PPやPETといった合成樹脂を膜化したシート状フィルム等を使用することもできる。また装着感を損なわない柔軟性を考慮した場合には、密度0.900〜0.925g/cm3の低密度ポリエチレンを主体とした目付5〜30g/m2の範囲から得られるフィルムを使用することが好ましい。さらに炭酸カルシウムや硫酸バリウム等の無機フィラーを充填させて延伸処理を施すことでフィルム内に空隙が形成され柔軟性を高める事が可能となる。また一般的にこの手法で通気性が得られるため装着時のムレを低減させることができ装着時における不快感を低減することも可能となる。
【0060】
本実施例では、繊維積層体として、目付け20g/m2で繊度2.2dtexのポリプロピレン系スパンボンド不織布を用いた。但し、このような繊維積層体として用いられるのは、スパンボンド不織布に限定されるのもではなく、PP、PET、PP/PE、PET/PE(芯鞘複合合成繊維)等の繊維を好適に使用することができる。これらの繊維の繊度は、1.1dtex〜6.6dtexであるのが好ましく、より好ましくは、1.7dtex〜3.3dtexである。また、これらの繊維積層体の製法として、スパンボンド、スパンレース、スルーエアー、ニードルパンチ、その他の公知の方法が用いられる。また、繊維積層体の目付けは、15〜50g/m2が好ましく、より好ましくは、18〜25g/m2である。このような範囲の物であれば柔軟性とドレープ感を損なうことなく空隙を付与し裏面側シート同士の最表面の接点を低減することが可能となるからである。
【0061】
本実施例の繊維積層体とフィルムとの複合方法は、ホットメルトによる貼り合わせを用いた。ただし、ホットメルトによる貼り合わせに限定される物ではなく、繊維積層体への熱可塑性樹脂の押出ラミネーションによる複合等も可能である。また複合することにより剛性が高くなり柔軟性が低下するのを防ぐために、フィルムと繊維積層体の接合は部分的に実施することが好ましい。このようにすれば、陰唇間パッドに適した柔軟性とドレープ感を与えられるからである。より、具体的には、ホットメルト接着であればドット、ストライプ、スパイラルといった部分塗布による貼り合わせを選択することが可能である。さらに押出ラミネーションによる接着であれば、チルロールにドットパターンや畝溝パターンといったデザイン化により可能となる。
【0062】
第7図に、繊維積層体を用いたもう1つの実施例を模式的に示す。本実施例においては、上側が身体側面22であり、この図では、破断した吸収体28がそちら側に位置している。フィルム38及び繊維積層体42は、前の実施例と同じ物である。繊維積層体には、凸部44と凹部46がある。このような形状のため、接触面積を少なくすることができる。また、繊維積層体の弾力性から、接触した相手面と適度に離隔され、接触面積の減少及び摩擦の低減の効果があると考えられる。
【0063】
第8図は、この裏面側シートが適用された陰唇間パッド10の一部を示したものである。吸収体28は、表面側シート26と裏面側シート30の間にあり、頭頂部ではつながっているものの表面側シートが接触する陰唇に追従して動けるように、右部と左部が裏面側シートを隔てて分かれている。第9図は、第8図のB部を拡大したものである。第6図と同様、繊維積層体の凹凸(46、44)により、空隙47があり、摩擦係数の安定と減少に役立っている。
【0064】
第10図には、もう一つの実施例を示す。この繊維積層体42の場合も第1の実施例と同じ繊維及びフィルムを用いている。また、同様に凸部44を有する。凹部に相当する部位にホットメルトによるフィルムとの溶着部49がある。このように、複合化する方法により、所望の凹凸を作り、低摩擦の形状を形成することができる。
【0065】
[表面凹凸賦型フィルムタイプ]
第11図に、本発明の第4の実施例の裏面側シート50の正面図を示す。裏面側シート50は、基材の標準面(又は平坦面)56と凸部52を含んでいる。これら複数の凸部により、裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造とした。また裏面側シート50の樹脂および賦型柄は陰唇間パッドに相応しい柔軟性を考慮し選択することができる。このような実施例としては、第11図のB−B断面図である図12の(A)及び(B)に示すような異なる二つのケースに分けて考えることができる。第12図の(A)は、凸部52がフィルム56をパンチ等で押してエンボス状に作られたようにその裏側に凹部54を有する裏面側シート50を示している。また、第12図の(B)は、裏面側シート50が単に凸部52を有する場合であって、そのシートの裏面側が平坦である裏面側シート50を示している。
【0066】
第13図に、裏面側シート同士が接触する場合を模式的に示した。フィルム56の凸部52により空隙58を形成するため湿潤時においても水分が裏面側シート同士の接触面に溜まることが無く、摩擦抵抗に大きな変化を生じることがない。本実施例のフィルム56は、ポリエチレン樹脂フィルムである。これ以外に、限定されることなく、PPやPETという合成樹脂を膜化したシート状フィルム等を使用することができる。また装着感を損なわない柔軟性を考慮した場合には、密度0.900〜0.925g/cm3の範囲から得られるフィルムを使用することが好ましい。さらに炭酸カルシウムや硫酸バリウム等の無機フィラーを充填させて微細な凹凸を更に付与することで密接した接触を減少することができる。加えて延伸処理を施すことでフィルム内に空隙を形成することができ剛性を低下させる事が可能となる。また一般的にこの手法で通気性が得られるための装着時のムレを低減させることができ装着時における不快感を低減することも可能となる。
【0067】
本実施例のエンボス加工は、エンボス部の頂部Φ0.2mm、低部Φ0.6mm、高さ0.12mm、となるように施されたものである。また、ドットの配列は、ピッチ1.0mmの60°チドリ柄(平均エンボス率5%)で行った。但しエンボス加工は以下の陰唇間パッドに相応しい範囲で使用することができる。エンボス加工によるエンボス率は、1%以上50%以下が好ましく、より望ましくは、1〜30%である。エンボス率が1%未満であるとエンボス面積が少なく最表面同士の表面接触率を低下させるに至らず賦型の効果が得られない可能性が生じる。一方、50%より大きいと最表面同士の表面接触率がかえって増加するばかりでなくエンボス加工の生産性が低下する可能性があるからである。
【0068】
エンボス加工のもう1つの実施例を第14図の(A)に模式的に示す。ここでは、第13図と同様に、裏面側シート30同士が接触した場合について説明する。
【0069】
向かい合う裏面側シート30は、エンボス部(凸部)52の頭頂部近傍で接触しているため接触面積が小さく、しゅう動による摩擦力が小さい。また、凸部以外の部分58が空隙となり、上述のように摩擦係数を安定化させる。仮に、右側の裏面側シート30が少し下にずれ、しかも、右側が矢印60のように上に動こうとし、左側が矢印62のように下に動こうとした場合を考える。このとき、両シートの接触は、エンボス部52の頭頂部より少し低いところで行われているため、接触面積は大きくない。但し、両シートの動きに対し、両シートのエンボス部が、相互に引っかかるようになり、接触面積とは別の要因で、摩擦力が発生する可能性がある。このような機械的な引っ掛かりによる摩擦力を避けるためには、3次元において、エンボス部が相互に噛み合うことのないよう、ピッチを調整するとよい。これを例えば2次元で現したものが、第15図である。第15図の向かい合う両シートのエンボス部はそれぞれ異なるピッチで作られているため、第14図の(B)のように噛み合うことがなく、接触面積の減少により、摩擦力を低減できる。
【0070】
<ミニシート片>
第16図は、ミニシート片80を裏面側シートに取り付けたときの陰唇間パッド70の1つの実施例を断面図において示す。
【0071】
これまでの実施例と同様、身体側面22にある表面側シート26と裏面側シート30との間に吸収体28が収納されている。ミニシート片80は、裏面側シート30にホットメルト等これまで述べられてきた方法又はそれ以外の公知の方法で付けることができる。
【0072】
このように、裏面側シートの衣服側面には長手方向を中心軸とした両側部に跨るようにしたミニシート片を、陰唇間パッドの左右位相変化を妨げない範囲内で備えることができる。ミニシート片は着用者が陰唇間パッドを装着した後、陰唇間パッドの裏面側シートに挟まれることにより裏面側シート同士の密接な接着を妨げることが可能となる。
【0073】
またミニシート片は陰唇間パッドの左右非対称な動きを妨げることのないように伸長性を有することが好ましい。
【0074】
第17図に、本発明のもう1つの実施例であるミニシート片80がついた陰唇間パッド72を模式的に示す。本実施例では、裏面側シート30に繊維積層体36とフィルムの複合体を用いた。
【0075】
材質は、これまでの実施例と同じである。本実施例では、ミニシート片80が、2つ折りにされ向かい合っている裏面側シート30の間に挟まれている。このような構造となっているため、向かい合う裏面側シート30同士が直接接触することがなく、かつ、せん断すべりが生じうる面が増えるため、摩擦は更に低減すると考えられる。
【0076】
第18図に、本発明のもう1つの実施例であるミニシート片80がついた陰唇間パッド74を模式的に示す。本実施例では、複数のエンボス部52をつけた裏面側シート30を用いた。
【0077】
材質は、以前の実施例と同じである。本実施例では、ミニシート片80が、2つ折りにされ向かい合っている裏面側シート30の間に挟まれている。このような構造となっているため、向かい合う裏面側シート30同士が直接接触することがなく、かつ、せん断すべりが生じうる面が増えるため、摩擦は更に低減すると考えられる。
【0078】
第19図に、本発明のもう1つの実施例であるミニシート片80がついた陰唇間パッド76を模式的に示す。裏面側シート30とミニシート片80に囲まれた空間82は、装着用のための指を入れることができる。
【0079】
この実施例では、ミニシート片の巾(陰唇間パッドの横方向の長さ)が狭いので、前の実施例と異なり、ミニシート片80が完全に向かい合う両裏面側シート30を隔離するとは限らない。この場合であっても、裏面側シート30は、本発明にかかる低摩擦形状を有しているので、裏面側シート30同士の摩擦力は小さい。
【0080】
第20図に、本発明のもう1つの本実施例であるミニシート片80がついた陰唇間パッド78を装着された状態で模式的に示す。
【0081】
ミニシート片80は、反身体側に飛び出しており、摩擦には特に大きな影響を与えない。このような陰唇間パッド78では、表面側シート26の左側部と陰唇の左側部が、表面側シート26の右側部と陰唇の右側部が、それぞれに接触している。
【0082】
従って、陰唇90の左側部が前(第20図において図から手前に飛び出す方向)に動き、陰唇90の右側部が後ろ(第20図において図から奥に入り込んで行く方向)に動いた場合、表面側シート26の左側部が前に、陰唇の右側部が後ろに動き、これに対応して吸収体28の左側部が前に吸収体28の右側部が後ろに動き、そして、裏面側シート30の左側部が前に裏面側シート30の右側部が後ろに動くことになる。
【0083】
このため、向かい合う裏面側シート30に摩擦が働き、この動きを阻止しようとするが、本発明にかかる裏面側シート30を用いているため、その摩擦力が小さく、陰唇の動きに逆らわず、裏面側シート30が滑りあうことになる。
【0084】
ここで、ミニシート片付き陰唇間パッド76、78の装着方法について第19図と第20図を参照しつつ、簡単に説明する。なお、第19図の陰唇間パッド76と、第20図の陰唇間パッド78は、そのミニシート片の取り付けにおいて一致せずそれぞれ別の陰唇間パッドの実施例とされ得るが、以下の装着方法の説明においては、同一の物として考えてもさしつかえない。
【0085】
着用者は、裏面側シート30とミニシート片80とから形成されるポケット82に、当該ポケット82の開口となる指挿入用口から指の第一関節付近(指の末節付近)の指紋面側を裏面側シート30の反身体側面に接触させながら指を挿入することができ、陰唇間パッド76、78を指先に保持することができる。
【0086】
このようにポケット82に指を挿入した場合において、指の指紋面が接する箇所には、陰唇内の奥深くにある膣口を探知しやすい当接ポイントに対応する指当接ポイントが存している。指当接ポイントが含まれる領域は、膣口を探知するのに最適な指当接ポイントが存する領域、好適な指当接ポイントが存する領域、許容できる指当接ポイントが存する領域の3つの領域から成る。
【0087】
そして、指挿入用口は、このような指当接ポイントの存する領域に指紋面が来るように挿入した指を案内する。
【0088】
この結果、陰唇間パッド76、78を陰唇90に誘導する際に、陰唇90に陰唇間パッド76、78の身体側面に存する当接ポイント(図示せず)を接触させながら、ポケット82に挿入した指の第一関節の腹で吸収体28を介して陰唇90の凹凸を感知し、凹型である陰唇90内の適切な位置に正確に陰唇間パッド76、78を誘導することができるのである。
【0089】
陰唇間パッド76、78を陰唇90に装着し、ポケット82から指が引き抜かれた後は、ミニシート片80は、第20図に示すように、身体側とは反対方向にたるんでいる。このため、使用済み陰唇間パッド1を取り外すに際しては、ミニシート片80を摘まんで引っ張ることができる。なお、ミニシート片80を液不透過性、あるいは透湿性素材とすることにより、着用者がミニシート片80を摘まんだ場合でも、指が汚染されることなく、陰唇間パッド76、78を取り外すことが可能となる。
【0090】
一般に、ミニシート片80には、伸長性もしくは伸縮性を有するものを使用するのが好ましい。着用者の指先のサイズが設定された指挿入用口よりも大きい場合であっても、指のサイズに応じてミニシート片80が少なくとも幅方向に伸び、着用者の指先サイズにかかわらず指挿入することができ、陰唇間パッド76、78を適正に装着することができるからである。
【0091】
元来伸縮性を有する材料としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック−共重合体(SIS)、ウレタン等の合成ゴム、0.88〜0.900g/cm3の密度から選ばれる非晶性オレフィン系樹脂を原料としたフィルム、開孔フォームフィルム、ネット等が挙げられる。また、織布又は識布に合成ゴムを原料とした紡糸フィラメントを編み込んだ生地も使用できる。更に、合成ゴムを主体としたスパンボンド不織布やメルトブローン不織布、発泡フォームシートも使用することができる。
【0092】
着用中の柔軟な風合いを考慮した上で好適ものとしては、15〜40ミクロンの厚みに調整され、孔部面積が0.28〜1.77mm2、開孔率が40〜70%の範囲で構成された、SEBSを原料とした開孔フォームフィルムが挙げられる。
【0093】
不織布としては、芯成分が高融点で鞘成分が低融点成分で構成された熱収縮性を有するPE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とし、水流圧により繊維を交絡せしめたスパンレース不織布、再熱風処理を施して繊維のシュリンクを促進させたシュリンクタイプ不織布、連続長繊維を熱シールによりシート化した後に縦方向へ強制的にテンタリングを施したいわゆる伸長性スパンボンド等が挙げられる。
【0094】
より具体的には、太さが1.1〜4.4dtexの範囲で、長さが7〜51mmの範囲で、芯成分が高融点で鞘成分が低融点成分で構成された熱収縮性を有するPE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とし、目付が10〜60g/m2の範囲に調整されたシュリンクタイプ不織布が、柔軟でドレープ感に富んだ好適な材料として挙げられる。そしてまた、上述のような材料のラミネート物も使用することができる。
【0095】
非伸長性の材料に伸長性を付与して使用する場合には、不織布からは芯成分が高融点で鞘成分が低融点成分で構成された熱収縮性を有するPE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とし、熱風により処理された嵩高感に富むスルーエアー不織布、水流圧により繊維を交絡せしめたスパンレース不織布、連続繊維を積層してシート化したスパンボンド不織布、ニードルにより繊維同士を絡ませたニードルパンチ不織布、スパンボンドとメルトブローンを多層に積層してシート化したSMS不織布のほか、開孔フォームフィルム、PE樹脂を主成分としたフィルム等を単独又はこれらを複合して成る材料が挙げられる。
【0096】
また、上述のような材料を雄雌の金型の間に嵌合させ、熱と温度と圧力により形状を型押しするコルゲート加工により伸長性を付与することも可能である。より具体的には、太さが1.1〜4.4dtexの範囲、目付が10〜60g/m2の範囲で調整された複合合成繊維を主体としたスルーエアー不織布を、横方向に伸長可能にコルゲート加工を施したものが挙げられる。コルゲート加工は少なくとも10%以上の伸長性があり、より好ましくは20〜50%の範囲で伸長可能となるように雄雌の金型の配列が設けられたものであり、更に好ましくは30%伸長時の荷重が0.01〜0.05N/25mmの範囲の挙動を有するものが望ましい(試験条件:テンシロン引張試験機にて、速度100mm/min、チャック間隔100mm)。なお、伸長性を付与する他の方法としては、切れ目線、円状に切り抜く等の方法も使用できる。
【0097】
これまで、通常の材料での本発明の実施例を説明してきたが、これに加え、本発明者らは、生分解性・水分散性・水溶性を付与した陰唇間パッドを更に開発した。以下その材料について説明する。
【0098】
[生分解性・水分散性・水溶性を付与した陰唇間パッドの構成]
本発明の陰唇間パッドは生分解性素材及び/又は水分散性素材及び/又は水溶性素材で構成されていることが更に好ましい。このような陰唇間パッドは使用後そのままトイレに脱落させて流すことができるため、パッドの破棄を簡便かつ清潔に行うことができ、トイレ内のゴミの低減を図ることもできるからである。
【0099】
本明細書において、「生分解性」とは、放線菌をはじめとする細菌、その他の微生物の存在下、自然界のプロセスに従って、嫌気性又は好気性条件下で物質が二酸化炭素又はメタン等のガス、水及びバイオマスに分解されることをいい、当該物質の生分解能(生分解速度、生分解度など)が、落ち葉等の自然に生じる材料、もしくは同一環境下で生分解性として一般に認識される合成ポリマーに匹敵することをいう。「水分散性」とは、水解性と同じ意味であって、使用時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中では、繊維同士が、少なくとも一般のトイレ配管を詰まらせることがない程度の小断片に容易に分散される性質のことをいう。「水溶性」とは、使用時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中においては溶解する性質のことをいう。
【0100】
<表面側シート(透水性シート)>
透水性シートに使用できる材料としては、スパンレース不織布のほか、繊維長を1〜15mmの範囲から選択される湿式スパンレース不織布を使用することができる。他の材料としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの加水分解による生分解性樹脂も使用することができる。例えば、ポリ乳酸を原料として作られる目付が20〜60g/m2の範囲で調整されたメルトブローン不織布や目付が15〜30g/m2の範囲、繊維太さが1.1〜3.3dtexの範囲で調整されたスパンボンド不織布が挙げられる。なお、各不織布材料には開孔処理を施しても施さなくてもどちらでもよい。
【0101】
他の材料としてはアセテート、合成繊維を単独又は積層体の連続繊維であるトウを目付50〜300g/m2の範囲に調整し、繊維同士を解繊することにより使用することもできる。
また、このような材料のうち、装着者が陰唇間パッドと陰唇表面との間にズレが生じ、違和感を感じることが無いよう、陰唇内面との親和性を考慮すると、少なくともセルロース系の液親水性繊維を主体とした湿式スパンレース不織布を使用することが好ましい。
【0102】
<吸収体>
吸収体に使用できる材料としては、ニードリングから得られる不織布シートを使用することができる。なお、高分子吸収材料の生分解性等を考慮すると、カルボキシメチルセルロース繊維を使用するのが好ましい。
【0103】
<裏面側シート(不透水性シート)>
裏面側シート(不透水性シート)に使用できる材料としては、PVAフィルム、PVAフィルムの片面若しくは両面あるいは部分的にシリコーンなどにより撥水処理を施したフィルムシート、シリコーンを混合したPVAフィルム、澱粉フィルム、ポリ乳酸又はポリブチレンサクシネート等の加水分解による生分解性樹脂を原料としたフィルム及びティッシュ等とのラミネート紙を使用することができる。必要に応じて無機顔料を0.1〜5%の範囲で混合して着色を施してもよい。
【0104】
過湿下における防漏性の維持と浄化層への過度な負荷を与えないこと等をも考慮した場合には、ポリ乳酸を原料としたフィルムを10〜20ミクロンの厚み範囲で目付15〜20g/m2の範囲から選ばれるティッシュとラミネートし、更にラミネート時の貼り合せ面積率を5〜40%の範囲で設けられたラミネート紙が好適である。
【0105】
<繊維積層体>
繊維積層体に使用できる材料としては、スパンレース不織布のほか、繊維長を1〜15mmの範囲から選択される湿式スパンレース不織布を使用することができる。他の材料としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの加水分解による生分解性樹脂も使用することができる。例えば、ポリ乳酸を原料として作られる目付が20〜60g/m2の範囲で調整されたメルトブローン不織布や目付が15〜30g/m2の範囲、繊維太さが1.1〜3.3dtexの範囲で調整されたスパンボンド不織布が挙げられる。
【0106】
<ミニシート片>
ミニシート片に使用できる材料としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性材料を原料としたフィルム、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等、又はPVA、CMC等の水溶性材料を原料としたフィルム、不織布等、並びにセルロース繊維、再生セルロース繊維等を主体とした水分散性ティッシュ、スパンレース不織布等が挙げられる。
【0107】
好適には、生分解性材料を主体としたスパンボンド不織布又はメルトブローン不織布であって、太さが0.1〜3.3dtexの範囲、目付が15〜40g/m2の範囲に調整されたシートであって、前途した機械的コルゲート加工を施すことにより得られる。
【0108】
第21図に、模式的に、接触面積が減ると摩擦力が減ることの説明を試みる。本説明は、実験的に行ってきた以上の結果を説明するためのものであり、本発明は、このメカニズムで摩擦が減ることを要求するものではない。向かい合う裏面側シート30には、それぞれ、凹凸形状100があり、全面で接触しているわけではない。実際に接触しているところは、部位(A1、S1)102、部位(A2、S2)104、部位(A3、S3)106、部位(A4、S4)108、部位(A5、S5)110、部位(A6、S6)112、であり、空隙122、124、126、128,130、132を有している。ここで、Akは、実質的な接触面積で、Skは、その場所にある物質(多くの場合は表面の汚れなど)の面積あたりのせん断抵抗力である。従って、せん断されることによる摩擦力f(60)は、(A1×S1)+(A2×S2)+(A3×S3)+(A4×S4)+(A5×S5)+(A6×S6)である。Skは、物性値に相当し通常一定であると考えられるので、摩擦力f(60)は、Sk×(A1+A2+A3+A4+A5+A6)となる。(A1+A2+A3+A4+A5+A6)は、裏面側シート間の実質的な接触面積に相当するから、この実質的な接触面積を減少させれば、摩擦力が低減することになる。
【0109】
以上のような実施例の結果や上述の説明からも明らかなように、しゅう動する2面間に摩擦を低減する形状のみならず、材料を適用するとより好ましい。例えば、4フッ化エチレンのようなしゅう動性の高分子等の合成樹脂や公知の自己潤滑性の材料を低摩擦形状を形成するときに用いることができる。また、固体潤滑剤や流体の潤滑剤等の適正な潤滑剤を用いれば、形状による摩擦低減に加えた更なる摩擦低減効果が期待できる。
【0110】
また、上述の説明では、裏面側シート同士の摩擦についてかなり詳しく説明してきたが、裏面側シートと衣服等のように裏面側シートと異なるものにおいても同様に考えることができる。例えば、下着との摩擦であれば、同様に接触面積が小さい方が、摩擦力は小さくなると考えられ、そのため同様な低摩擦形状が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上説明したように、本発明によれば、着用中に左右位相変化可能な陰唇間パッドにおいて、裏面側シートの衣服側面に裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造及び/又は形状を有することで、裏面側シート同士の摩擦抵抗を低減し陰唇間パッドが容易に左右位相変化することが可能となる。従って、装者の際の違和感を低減させることができ、更には、着用者の身体動作によって陰唇間パッドに陰唇自体の挟持力を上回る摩擦抵抗が陰唇間パッドの裏面側シートに加わることがなくなる。
【0112】
また、裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造及び/又は形状を繊維積層体とフィルムの複合体で作ることにより、裏面側シート同士が接触する、接触点が少なく摩擦抵抗が少なくなる。更に、空隙を形成するため、湿潤時においても水分が裏面側同士の接触面に溜まることが無く、摩擦抵抗に大きな変化を生じることがない。
【0113】
また、裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造を表面凹凸賦型構造(又は表面凸賦型構造)とすることにより、裏面側シート同士が接触する接触点が少なく摩擦抵抗が少なくなる。更に、空隙を形成し湿潤時においても水分が裏面側同士の接触面に溜まることが無く、摩擦抵抗に大きな変化を生じることがない。加えて二次加工であるため製造コストを抑えることができる。
【0114】
また、裏面側シートの衣服側面に長手方向を中心軸とした両側部を跨るようにしたミニシート片を、陰唇間パッドの左右位相変化を阻害しない範囲内で備えることで、着用者が陰唇間パッドを装着した後、ミニシート片が陰唇間パッドの裏面側シートに挟まれる事により裏面側シート同士の密接な接着を妨げる事が可能な場合がある。
【0115】
この発明によれば、着用者の歩行動作等で代表される身体の左右非対称的な動作により、陰唇間に挟持されている陰唇間パッドに対しても長手方向中心付近を境に剪断力が加わることとなるが、裏面側シートの衣服側面同士の摩擦抵抗を抑制することにより、陰唇間パッドが左右位相変化することが容易となる。
【0116】
そのため陰唇間パッドが着用されている陰唇自体の挟持力に対して、裏面側シート同士の摩擦抵抗が低い場合には、陰唇間パッドが着用者の身体動作に追従することが容易となり脱落を著しく低減することができる。
【符号の説明】
【0117】
10 陰唇間パッド
26 表面側シート
28 吸収体
30 裏面側シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性の陰唇に密着して装着できる陰唇間パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、女性用生理用品としては、生理用ナプキン、タンポンが一般的に用いられている。ここで、生理用ナプキンについては、膣口付近への密着性の乏しさゆえに生じる隙間からの経血のモレを防ぐべく、多大な努力が払われている。また、タンポンにおいても、その物品の属性に起因して、着用時の異物感や不快感、膣内への装着困難性を生じることから、これらを除去するために多大な努力がなされている。
【0003】
このような状況下、生理用ナプキンやタンポンの中間に位置する生理用品として、近年、陰唇間パッドなる生理用品が注目されるようになってきている。この陰唇間パッドは、女性の陰唇間にその一部分を挟み込ませ、陰唇内面に当接させて装着するというものであり、生理用ナプキンに比して身体との密着性が高いために経血のモレが防止されるとともに、経血が拡散して身体に広く接することを防ぐために衛生的かつ清潔なものである。また、生理用ナプキンよりも小型であるために、装着感に優れて快適であり、膣内に挿入するタンポンに比べて着用時の心理抵抗も低いという特徴を有している。
【0004】
通常、陰唇間パッドは、ショーツに固定して使用する生理用ナプキンや、体内に挿入し固定して使用するタンポンと異なり身体動作により左右位相変化が可能な女性陰唇間に狭み込むことで身体に固定し使用する。このため陰唇間パッドは柔軟に左右位相変化できることが必要であり、着用者の身体動作に追従する必要がある。即ち、歩行において右足と左足を交互に前に出した場合のように、身体の前後に広がる身体の中心面に対して非対称な身体の動きに対応する陰唇の動きに対しても追従する必要がある。陰唇間パッドが身体動作に追従することが困難で着用者の陰唇間から脱落した場合には、経血のモレによる被害は甚大なものとなる。ここで、左右位相変化というのは、左右が非対称に若しくはバラバラに変化(この変化は、位置を変えることや動くことを含む)することを含む広い概念である。
【0005】
このような従来例としては、例えば、吸収陰唇間装置(特許文献1参照)のようなものがある。この吸収陰唇間装置は、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシート、これら2つの間に位置付けられている吸収性核を含み、装置の長さは約60mmと約130mmとの間で、幅は約25mmと50mmとの間である。装置はその長手方向中心線に沿って好ましい曲げ軸を有し、この軸に沿って折り曲げられ着用者の陰唇間の空間中に挿入された時、トップシートが着用者の陰唇の壁との接触を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−506168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この吸収陰唇間装置は、陰唇間への装着された際に2つ折になるようになっており、陰唇間に収まる構造となっている。しかし、通常の生理用ナプキンと異なり、下着に固定されるものではなく、タンポンのように挿入による固定もされない。即ち、ズレが生じ得る状態で陰唇間に挟み込まれるものであって、ナプキンやタンポンよりも固定の程度が低いものであるため、装着者の身体動作により、該吸収陰唇間装置(陰唇間パッドに相当)と陰唇との間にズレが生じやすく、装着者は違和感を感じやすくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、女性の陰唇に密着して装着できる陰唇間パッドにおいて、身体動作により陰唇間パッドと陰唇に何らかの力が加わった場合においても、装着者への違和感を可能な限り低減することである。
【0009】
そもそも、装着者が違和感を感じるのは、陰唇間パッドと陰唇表面との間にズレが生じる場合や、陰唇間パッドと陰唇表面との間にズレは生じないが、何らかの力を感じる場合であろうということを発明者らは見出した。このような力は、主に装着者の左右非対称な動作が原因で生じやすい。例えば、2つ折りにして着用する陰唇間パッドにおいては、左側の陰唇は左側の陰唇間パッドに接し、右側の陰唇は右側の陰唇間パッドに接するため、陰唇間パッドが十分な柔軟性を持てば、かかる問題は生じないはずである。つまり、陰唇間パッドの左側部と右側部が折り線を中心として左右位相変化がある程度可能になるようになっているからである。しかしながら、身体動作時の左右位相変化によって互いに接触しあう裏面側シートの摩擦により、装着状態を維持し続けるのが困難である場合がある。例えば、着用者の歩行動作等で代表される身体の左右非対称的な動作により、陰唇に接触している該陰唇間パッドの左右2つの表面が左右非対称に追従しようとするが、裏面側シートの摩擦力のために、陰唇間パッドの左部と右部が折り線を中心として左右位相変化をすることが困難になる場合である。この結果、装着者は、違和感を感じるばかりでなく、程度がひどくなれば、陰唇表面に接触していた該陰唇間パッドの左と右の表面が、両者とも、或いは、いずれか一方、該陰唇表面から離れ、陰唇の狭持力を失い該陰唇間パッドが脱落することになる。
【0010】
また、陰唇間パッドが着用されている陰唇自体の狭持力に対して、裏面側シートと下着との摩擦抵抗が高くなった場合にも、着用者の身体動作に追従することできなくなり、装着者は違和感を感じるだけでなく、時には、該陰唇間パッドが脱落することも十分ありうる。即ち、裏面側シート同士、又は、裏面側シートと下着などの別の物との低摩擦を達成することが好ましいことが判明した。また、低摩擦の達成は、裏面側シートの表面形状を工夫することにより、簡易かつ効果的に達成することができるということも本発明者らは見出した。
【0011】
本発明は、以上のような発見を基になされたものであり、女性の陰唇に密着して装着できる陰唇間パッドにおいて、身体動作により陰唇間パッドに剪断力が加わった場合においても、自在に左右非対称な動きをできる構造及び/又は形状、つまり、低摩擦となる構造及び/又は形状を備えている陰唇間パッドを提供する。
【0012】
より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0013】
(1) 一部又は全部を陰唇間に無理なく挟み込んで保持することが可能な大きさ、重さ、柔軟性を備える陰唇間パッドであって、
前記陰唇間パッドは、身体側に配向される身体側面及び衣服側に配向される反身体側面を備え、該反身体側面の表面形状が、同一の面を含む他の面とのしゅう動による抵抗の低い低摩擦形状を有しており、前記反身体側面は、複数の凹部及び複数の凸部を有する不織布に不透水性のフィルムが積層された複合シートから構成されており、前記不織布と前記フィルムとの接合は、部分的に実施されており、前記低摩擦形状は、前記複数の凹部及び前記複数の凸部により形成されることを特徴とする陰唇間パッド。
【0014】
ここで、「一部又は全部」というのは、上記陰唇間パッドが、陰唇間に挟み込まれることにより、一部が外部から見えなくなること、又は、全てが見えなくなることであってよい。無理なく挟み込むとは、この陰唇間パッドを装着する装着者が行って無理なく挟み込むことであってよく、保持するとは、挟み込まれた部位から脱落しないことであってよい。身体側に配向される身体側面は、その面の少なくとも一部が身体側に配向していればよい。また、衣服側に配向される反身体側面とは、その面の少なくとも一部が身体側ではない側に配向していればよい。
【0015】
「反身体側の表面形状」とは、反身体側に位置する部材又は面が保有する形状であって、必ずしも該部材又は面の全体がそのような形状を保有する必要はなく、少なくとも一部がそのような形状であればよい。同一の面とは、該反身体側に位置する部材又は面によって形成される同一の面であり、その位置が異なる面のことであってよい。例えば、該部材を折り曲げることにより、接触することになる、該部材の同一面上の異なる位置の面(部位)のことを意味してよい。他の面とは、このような同一の面を含み、全く別の部材から構成される面を含んでよい。例えば、下着などの衣服により構成される面を含んでよい。
【0016】
しゅう動による抵抗の低い形状(「低摩擦形状」)とは、表面形状であって、所定の条件下で同一種類の面と若しくは所定の面としゅう動させた場合、摩擦抵抗が低い形状をいい、フックとループ(例えば、マジックテープ(登録商標))のような、接触面の噛み合いがある場合を除く形状である。
【0017】
(2) 前記低摩擦形状が、しゅう動する2面間の実質的接触面積が少ない形状からなるものであることを特徴とする上記(1)に記載の陰唇間パッド。
【0018】
ここで、「しゅう動する2面」とは、1面が反身体側面の面であり、他の1面は、同じく反身体側面の面であって他の部位又は衣服等の別の面をいってよい。実質的接触面積とは、見かけ上接触している2つの面において、実際に相互に接触している場所の面積を集約した面積であってよい。「接触」とは、固体若しくは粘性の高い液状のものを間に挟んだ接触を含み、しゅう動により相手面に摩擦力が伝わる状態にあることをいってよい。「実質的接触面積が少ない形状」をより具体的にいえば、面相互の実際の接触面積が少ない形状であってよい。
【0019】
(3) 前記低摩擦形状が、微小凸形状の群からなるものであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の陰唇間パッド。
【0020】
「微小凸形状」とは、前記反身体側面の基材の基準面より、部分的に突出している形状をいってよく、その大きさが、前記反身体側面の基材に比べ小さいものでよい。「群」とあるのは、かかる凸形状が1つでは、低摩擦形状にならないため、複数あるようにするためであってよい。
【0021】
(4) 前記微小凸形状が、エンボス賦型によるエンボス部であることを特徴とする上記(3)に記載の陰唇間パッド。
【0022】
ここで、「エンボス部」とは、前記反身体側面の基材の基準面と比べ突出している部分をいい、特に、その突出部が前記反身体側面の基材に比べ十分に小さいものをいう。上に突出するエンボス部の突出部を上から見た形状は、通常円であるが、矩形、楕円、その他の形状であってよく、円に限られるものではない。
【0023】
(5) 前記微小凸形状のエンボス率が1%以上で50%以下であることを特徴とする上記(4)に記載の陰唇間パッド。
【0024】
ここで、「エンボス率」とは、エンボス形状になっている総面積を反身体側面であって、エンボス加工ができる総面積で割ったものをいう。
【0025】
(6) 前記低摩擦形状が、繊維集合体によって形成されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の陰唇間パッド。
【0026】
ここで、「繊維集合体」とは、複数の繊維が集まって固まり状となったもので、織布および不織布を含む。
【0027】
(7) 前記繊維集合体が、不織布からなることを特徴とする上記(6)に記載の陰唇間パッド。
【0028】
ここで、「不織布」とは、織布以外の布をいってよく、スパンボンド、スパンレース、スルーエアー、ニードルパンチ等の製法で作られたものを含んでよい。
【0029】
(8) 前記反身体側面体が、低摩擦素材からなることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【0030】
ここで、「低摩擦素材」とは、例えば、4フッ化エチレンのような高分子等の有機材料や無機材料を含むもので、一般に乾燥中で摩擦係数が小さいもの、繊維からなる布や不織布等との摩擦係数が低いもの、また自分自身との摩擦係数が低いものである。摩擦係数が低いとは、その値が、0.3以下、より好ましくは、0.1以下である。
【0031】
(9) 前記反身体側面体に、潤滑剤を付与したことを特徴とする上記(1)から(8)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【0032】
ここで、潤滑材としては、さらさらした粉末を含む固体潤滑剤やシリコーンオイルを含む油等の流体潤滑剤で衛生上や健康上問題のない、毒性の特に低いものをいう。
【0033】
(10) 前記陰唇間パッドが、ミニシート片を有することを特徴とする上記(1)から(9)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【0034】
ここで、ミニシート片とは、前記陰唇間パッドの外側につけられるものであってよく、該陰唇間パッドと共に袋を形成したり、ブリッジを形成してよい。
【0035】
(11) 前記陰唇間パッドは尿失禁用の陰唇間パッドであることを特徴とする上記(1)から(10)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【0036】
本発明に係る陰唇間パッドによれば、尿失禁用の吸収パッドとして使用することができる。即ち、経血を排出する膣口と尿を排出する尿道口とはいずれも陰唇間に位置するものであるため、本発明に係る陰唇間パッドを陰唇間に挟み込んで使用した場合には、尿を吸収することができる。
このように、本発明によれば、尿を陰唇間、特に尿道口付近で吸収できるので、尿失禁特に軽度の尿失禁に対して有効な吸収パッドを得ることができる。
【0037】
(12) 前記陰唇間パッドはおりもの吸収用の陰唇間パッドであることを特徴とする上記(1)から(10)のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【0038】
本発明に係る陰唇間パッドによれば、陰唇間パッドをおりもの吸収用として使用することができる。即ち、本発明に係る陰唇間パッドは陰唇間に挟み込んで使用するものであることから、膣口からの経血以外の分泌物(おりもの)も吸収することができるので、そのための用途(おりもの吸収用)にも使用することができるのである。
このように、本発明によれば、おりものを吸収して着用者の不快感を軽減することができるため、生理時以外の着用者にとっても有効である。
【0039】
(13) 上記(1)から(12)のいずれかに記載の陰唇間パッドを用いて陰唇間パッド装着者の違和感を減らす方法。
【0040】
この方法によれば、違和感を訴える類似するが異なる陰唇間パッドの着用者の不満を解決することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、着用中に左右位相変化可能な陰唇間パッドにおいて、裏面側シートの衣服側面に裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造及び/又は形状を有することで、裏面側シート同士の摩擦抵抗を低減し陰唇間パッドが容易に左右位相変化することが可能となる。従って、装者の際の違和感を低減させることができ、更には、着用者の身体動作によって陰唇間パッドに陰唇自体の挟持力を上回る摩擦抵抗が陰唇間パッドの裏面側シートに加わることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態における陰唇間パッドの身体側面から見た平面図である。
【図2】第1図のX1−X2断面図である。
【図3】本実施形態における陰唇間パッドであって、2つ折りにして用いる陰唇間パッドを前から見た正面図(A)及び左から見た側面図(B)である。
【図4】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、繊維積層体を用いたパッドの裏面側シートの一部を拡大して下から見た平面図である。
【図5】第4図のA−A断面図である。
【図6】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、繊維積層体を用いたパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図7】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、繊維積層体を用いたもう1つのパッドの一部を示した断面図である。
【図8】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、繊維積層体を用いたもう1つのパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図9】第8図のB部拡大図である。
【図10】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、繊維積層体を用いた更にもう1つのパッドの一部を示した断面図である。
【図11】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、エンボス部を用いたパッドの裏面側シートの一部を拡大して下から見た平面図である。
【図12】第11図のB−B断面図に相当するが、二つの異なるケースをそれぞれ(A)及び(B)で示している。
【図13】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、エンボス部を用いた1つのパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図14】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、エンボス部を用いたもう1つのパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図(A)、(B)である。
【図15】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、エンボス部を用いた更にもう1つのパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図16】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、ミニシートを更に有するパッドの断面図である。
【図17】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、ミニシートを更に有すると共に、積層体と複合した裏面側シートを用いたパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図18】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、ミニシートを更に有すると共に、エンボス部を持つ裏面側シートを用いたパッドが2つ折りになったものの一部を示した断面図である。
【図19】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、ミニシートを更に有するもう1つのパッドの断面図である。
【図20】本発明の実施例の1つである陰唇間パッドであって、ミニシートを更に有する更にもう1つのパッドの断面図である。
【図21】本発明の実施例において、低摩擦のメカニズムの解析を試みる図面である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、本発明の陰唇間パッドの実施形態について、図を参照しつつ説明する。
【0044】
[基本的な陰唇間パッド]
第1図に、陰唇間パッド10の正面概略図を示す。陰唇間パッドは実質的に前後方向に縦長の形態で、縦軸(Y軸)において前14と後16を長径とし、横軸(X軸)において右18と左20を短径とするような楕円形をしている。ただし、製品形状は、楕円型、瓢箪型、雫型等の女性の陰唇領域に適合する形態で着用時に左右位相変化可能となる形態であれば特に限定するものではない。
【0045】
第2図に、第1図のX1−X2断面概略図を示す。陰唇間パッド10は着用者の身体側面22であり、陰唇内面と接触する液透過性の表面側シート26、着用者の衣服側であり、反身体側面24を向く液透過性もしくは液不透過性の裏面側シート30と吸収体28で構成されており、吸収体の周縁で表面側シートと裏面側シートを接合した貼り合わせのタイプのものである。表面側シート26と裏面側シート30とを貼り付ける際にヒートシール単独による接合のほか、ホットメルト型接着剤と併用した接合としても構わない。また、陰唇間パッド10の構成は、上述の貼り合わせタイプに限定されるものではなく、吸収体の下に不透水性材料を配置し、透水性のシートで全体を被覆した封入タイプとすることもできる。
【0046】
以下、陰唇間パッドの主要な構成要素である表面側シート及び吸収体について簡単に説明する。裏面側シートは、後に低摩擦との関係で説明する。
【0047】
[表面側シート(透水性シート)]
陰唇間パッドの身体側に配置される表面側シートは、上述のように透水性であることが好ましい。透水性のシートには、液親水性であり、肌に刺激を与えない材料が使用される。このようなものとしては、メルトブローン、スパンボンド、ポイントボンド、スルーエアー、ニードルパンチ、湿式スパンレース、フォームフィルム等の製造方法から得られる不織布を単独又はこれらを複合した材料が挙げられる。
繊維状シートとしては、レーヨン、アセテート、コットン、パルプ又は合成樹脂を成分としたものを単独又は芯鞘構造を成すように複合したものを単独又は混合した繊維をシート化したものが挙げられる。
【0048】
このような材料のうち、陰唇内面からの液移動性や活性剤による化学的刺激及び陰唇内壁との密接性を考慮すると、身体面側には繊度1.1〜4.4dtex、繊維長7〜51mmからなるレーヨンを合計目付に対して40〜80%を積層、その衣服面側には繊度1.1〜4.4dtex、繊維長7〜51mmからなり合計目付に対して14〜42%のレーヨンと繊度1.1〜4.4dtex、繊維長7〜51mmからなり合計目付に対して6〜18%のPETを混合して積層し、2層の合計目付が20〜60g/m2となるよう積層した後、水流交絡により繊維同士を絡合させて乾燥させ、厚みを0.13〜0.50mmの範囲で調整したスパンレース不織布が好ましい。この際、衣服面側にPETを混入する事により、透水性シートが湿潤状態になっても嵩を維持しやすいため陰唇内壁との密接性を保つことができる。
【0049】
<吸収体>
陰唇間パッドに内包される吸収体に用いられる材料としては、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン、高分子吸収体、繊維状高分子吸収体、合成繊維を単独又はこれらを混合した物が使用できる。所要に配合した混合物をエンボス加工による圧着、ニードリングによる絡合などの公知技術によりシート化させ、必要に応じて嵩を調整する、重ねる、折り重ねる等により適宜調整することができる。
シート状の材料としては、これらをシート状若しくは粉状に加工して使用してもよく、使用方法に限定されるものではない。
【0050】
吸収体は、液体(体液)の吸収保持が可能であればよいが、嵩高であり、型崩れし難く、化学的刺激が少ないもので、さらには陰唇への適合が高い柔軟性を有することが好ましい。具体的には、衣服面側には、繊維長1〜10mmの範囲から選ばれるパルプを50〜150g/m2積層し、その身体面側には、繊度1.1〜4.4dtex、繊維長20〜51mmの範囲から選ばれるレーヨンを60〜90%、天然コットンを40〜10%の混合比で150〜250g/m2積層してドット状のエンボス加工によりシート化させた、嵩2〜10mm、好ましくは3〜5mmに調整した不織布シートが挙げられる。これにより、身体面側から衣服面側へ液体を移行させやすく、吸収保持力が高まる。さらには、上記パルプ層の身体面側には繊度1.1〜4.4dtex、繊維長25〜51mmからなるレーヨンを目付15〜40g/m2に調整したメッシュスパンレース不織布を敷設する事により、身体面側から移行してきた液体をメッシュスパンレースにより拡散させ、パルプ層のほぼ全域に液体を誘導させる事ができるので、効率良くより多くの液体を吸収する事が可能である。
【0051】
第1図及び第2図の陰唇間パッド10は、第3図にあるようにX軸に沿った前14と後16を結ぶ線により2つに折って用いてもよい。このとき、身体側面22に表面側シート26が上(又は外側)になる。一方反身体側24は、下になり、裏面側シート30は、折り曲げた内側に位置する。このような構造では、陰唇表面に接触するのは、表面側シート26であり、その右側及び左側が、陰唇の右側部及び左側部に接触することとなる。このため、陰唇の右部及び左部が非対称な動きをしたときに、陰唇間パッドの右側と左側がそれぞれ、陰唇の右部及び左部に則してある程度動くことができる。即ち、身体動作による陰唇間パッドの左右位相変化に対して、比較的容易に追従可能となるシート状物である。ただし、この際に、裏面側シート同士がしゅう動することとなり、そのときの摩擦力低減が本発明の目的である。
【0052】
[裏面側シート]
<不透水性>
陰唇間パッドの裏面側シートに使用される不透水性のシートの材料としては、吸収体に保持された経血が陰唇間パッドの外へ漏れ出すことを防止できるものを使用することができる。また、透湿性素材とすることにより、装着時のムレを低減させることができ、装着時における不快感を低減させることが可能となる。
【0053】
このような材料としては、例えば、合成樹脂を膜化したシート状フィルム、無機フィラーを充填させて延伸処理を施すことにより得られる通気フィルム、紙、不織布とフィルムを複合したラミネート物、10〜30%の開孔を有し孔径が0.1〜0.6mmの範囲で毛細管を吸収性体側に向かうように配置することにより得られる通気性液遮断シート、等を使用することができる。
【0054】
更に、装着感を損なわない柔軟性を考慮した場合には、例えば、密度が0.900〜0.925g/cm3の密度の低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とした目付15〜30g/m2の範囲から得られるフィルムを使用することが好ましい。但し、以下に述べられる低摩擦特性を満足するように組み合わせや材料構成の変更などがあってよい。
【0055】
<低摩擦特性>
本発明にかかる陰唇間パッドの裏面側シートの衣服側面には、裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造を有しており、裏面側シート同士の摩擦抵抗を低減し陰唇間パッドが容易に左右位相変化することが可能となる。具体的には裏面側シート同士の最表面における表面接触率を低下させることによって密接な接触を起こしにくくすることができる。また、裏面側シートの衣服側面にシリコーンオイル、グリセリンやエチレングリコールといった多価アルコール、パラフィンワックス、パラフィンオイル等といった潤滑剤を塗布し、裏面側シート同士が潤滑剤を介在して接触する事で密接な接触を起こしにくくすることも挙げられる。
【0056】
[積層繊維の複合タイプ]
第4図に、第1の実施例である繊維積層体を複合した裏面側シート32の下から見た正面図を示す。この裏面側シート32は、繊維積層体34が作る凹凸により(第5図)、裏面側シート同士の最表面の接点が減少し密接な接触を起こしにくく、この形状により低摩擦が実現できる。第4図におけるA−A断面を示している第5図のように、繊維積層体34とフィルムを複合した裏側シート32は、剛性が高くなりやすいと考えられたが、樹脂フィルムの薄膜化や接合方法の選択等により陰唇間パッドに相応しい柔軟性を付与することができ、陰唇間パッド10裏面側シート32として適している。
【0057】
なお、特に第5図にある実施例においては、繊維積層体34を構成する繊維集合体として、スパンボンド不織布36が用いられている。また、フィルム38にはポリスチレン樹脂フィルム38が用いられている。
【0058】
第6図に、裏面側シート同士が接触する状態を模式的に示した。第6図からわかるように、接触点が少ないだけでなく空隙40を形成するために、湿潤時においても水分が裏面側同士の接触面に溜まることが無く、摩擦抵抗に大きな変化を生じることがない。そのため、湿潤時又は乾燥時において、陰唇間パッドの左右部位の追従性に変化が少なく、安定した品質を確保できる。本実施例の樹脂フィルム38には、密度0.923g/cm3の低密度ポリエチレンを主体としたキャスト法で成膜された22g/m2のフィルムを用いた。
【0059】
尚、これ以外にフィルムとして、PPやPETといった合成樹脂を膜化したシート状フィルム等を使用することもできる。また装着感を損なわない柔軟性を考慮した場合には、密度0.900〜0.925g/cm3の低密度ポリエチレンを主体とした目付5〜30g/m2の範囲から得られるフィルムを使用することが好ましい。さらに炭酸カルシウムや硫酸バリウム等の無機フィラーを充填させて延伸処理を施すことでフィルム内に空隙が形成され柔軟性を高める事が可能となる。また一般的にこの手法で通気性が得られるため装着時のムレを低減させることができ装着時における不快感を低減することも可能となる。
【0060】
本実施例では、繊維積層体として、目付け20g/m2で繊度2.2dtexのポリプロピレン系スパンボンド不織布を用いた。但し、このような繊維積層体として用いられるのは、スパンボンド不織布に限定されるのもではなく、PP、PET、PP/PE、PET/PE(芯鞘複合合成繊維)等の繊維を好適に使用することができる。これらの繊維の繊度は、1.1dtex〜6.6dtexであるのが好ましく、より好ましくは、1.7dtex〜3.3dtexである。また、これらの繊維積層体の製法として、スパンボンド、スパンレース、スルーエアー、ニードルパンチ、その他の公知の方法が用いられる。また、繊維積層体の目付けは、15〜50g/m2が好ましく、より好ましくは、18〜25g/m2である。このような範囲の物であれば柔軟性とドレープ感を損なうことなく空隙を付与し裏面側シート同士の最表面の接点を低減することが可能となるからである。
【0061】
本実施例の繊維積層体とフィルムとの複合方法は、ホットメルトによる貼り合わせを用いた。ただし、ホットメルトによる貼り合わせに限定される物ではなく、繊維積層体への熱可塑性樹脂の押出ラミネーションによる複合等も可能である。また複合することにより剛性が高くなり柔軟性が低下するのを防ぐために、フィルムと繊維積層体の接合は部分的に実施することが好ましい。このようにすれば、陰唇間パッドに適した柔軟性とドレープ感を与えられるからである。より、具体的には、ホットメルト接着であればドット、ストライプ、スパイラルといった部分塗布による貼り合わせを選択することが可能である。さらに押出ラミネーションによる接着であれば、チルロールにドットパターンや畝溝パターンといったデザイン化により可能となる。
【0062】
第7図に、繊維積層体を用いたもう1つの実施例を模式的に示す。本実施例においては、上側が身体側面22であり、この図では、破断した吸収体28がそちら側に位置している。フィルム38及び繊維積層体42は、前の実施例と同じ物である。繊維積層体には、凸部44と凹部46がある。このような形状のため、接触面積を少なくすることができる。また、繊維積層体の弾力性から、接触した相手面と適度に離隔され、接触面積の減少及び摩擦の低減の効果があると考えられる。
【0063】
第8図は、この裏面側シートが適用された陰唇間パッド10の一部を示したものである。吸収体28は、表面側シート26と裏面側シート30の間にあり、頭頂部ではつながっているものの表面側シートが接触する陰唇に追従して動けるように、右部と左部が裏面側シートを隔てて分かれている。第9図は、第8図のB部を拡大したものである。第6図と同様、繊維積層体の凹凸(46、44)により、空隙47があり、摩擦係数の安定と減少に役立っている。
【0064】
第10図には、もう一つの実施例を示す。この繊維積層体42の場合も第1の実施例と同じ繊維及びフィルムを用いている。また、同様に凸部44を有する。凹部に相当する部位にホットメルトによるフィルムとの溶着部49がある。このように、複合化する方法により、所望の凹凸を作り、低摩擦の形状を形成することができる。
【0065】
[表面凹凸賦型フィルムタイプ]
第11図に、本発明の第4の実施例の裏面側シート50の正面図を示す。裏面側シート50は、基材の標準面(又は平坦面)56と凸部52を含んでいる。これら複数の凸部により、裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造とした。また裏面側シート50の樹脂および賦型柄は陰唇間パッドに相応しい柔軟性を考慮し選択することができる。このような実施例としては、第11図のB−B断面図である図12の(A)及び(B)に示すような異なる二つのケースに分けて考えることができる。第12図の(A)は、凸部52がフィルム56をパンチ等で押してエンボス状に作られたようにその裏側に凹部54を有する裏面側シート50を示している。また、第12図の(B)は、裏面側シート50が単に凸部52を有する場合であって、そのシートの裏面側が平坦である裏面側シート50を示している。
【0066】
第13図に、裏面側シート同士が接触する場合を模式的に示した。フィルム56の凸部52により空隙58を形成するため湿潤時においても水分が裏面側シート同士の接触面に溜まることが無く、摩擦抵抗に大きな変化を生じることがない。本実施例のフィルム56は、ポリエチレン樹脂フィルムである。これ以外に、限定されることなく、PPやPETという合成樹脂を膜化したシート状フィルム等を使用することができる。また装着感を損なわない柔軟性を考慮した場合には、密度0.900〜0.925g/cm3の範囲から得られるフィルムを使用することが好ましい。さらに炭酸カルシウムや硫酸バリウム等の無機フィラーを充填させて微細な凹凸を更に付与することで密接した接触を減少することができる。加えて延伸処理を施すことでフィルム内に空隙を形成することができ剛性を低下させる事が可能となる。また一般的にこの手法で通気性が得られるための装着時のムレを低減させることができ装着時における不快感を低減することも可能となる。
【0067】
本実施例のエンボス加工は、エンボス部の頂部Φ0.2mm、低部Φ0.6mm、高さ0.12mm、となるように施されたものである。また、ドットの配列は、ピッチ1.0mmの60°チドリ柄(平均エンボス率5%)で行った。但しエンボス加工は以下の陰唇間パッドに相応しい範囲で使用することができる。エンボス加工によるエンボス率は、1%以上50%以下が好ましく、より望ましくは、1〜30%である。エンボス率が1%未満であるとエンボス面積が少なく最表面同士の表面接触率を低下させるに至らず賦型の効果が得られない可能性が生じる。一方、50%より大きいと最表面同士の表面接触率がかえって増加するばかりでなくエンボス加工の生産性が低下する可能性があるからである。
【0068】
エンボス加工のもう1つの実施例を第14図の(A)に模式的に示す。ここでは、第13図と同様に、裏面側シート30同士が接触した場合について説明する。
【0069】
向かい合う裏面側シート30は、エンボス部(凸部)52の頭頂部近傍で接触しているため接触面積が小さく、しゅう動による摩擦力が小さい。また、凸部以外の部分58が空隙となり、上述のように摩擦係数を安定化させる。仮に、右側の裏面側シート30が少し下にずれ、しかも、右側が矢印60のように上に動こうとし、左側が矢印62のように下に動こうとした場合を考える。このとき、両シートの接触は、エンボス部52の頭頂部より少し低いところで行われているため、接触面積は大きくない。但し、両シートの動きに対し、両シートのエンボス部が、相互に引っかかるようになり、接触面積とは別の要因で、摩擦力が発生する可能性がある。このような機械的な引っ掛かりによる摩擦力を避けるためには、3次元において、エンボス部が相互に噛み合うことのないよう、ピッチを調整するとよい。これを例えば2次元で現したものが、第15図である。第15図の向かい合う両シートのエンボス部はそれぞれ異なるピッチで作られているため、第14図の(B)のように噛み合うことがなく、接触面積の減少により、摩擦力を低減できる。
【0070】
<ミニシート片>
第16図は、ミニシート片80を裏面側シートに取り付けたときの陰唇間パッド70の1つの実施例を断面図において示す。
【0071】
これまでの実施例と同様、身体側面22にある表面側シート26と裏面側シート30との間に吸収体28が収納されている。ミニシート片80は、裏面側シート30にホットメルト等これまで述べられてきた方法又はそれ以外の公知の方法で付けることができる。
【0072】
このように、裏面側シートの衣服側面には長手方向を中心軸とした両側部に跨るようにしたミニシート片を、陰唇間パッドの左右位相変化を妨げない範囲内で備えることができる。ミニシート片は着用者が陰唇間パッドを装着した後、陰唇間パッドの裏面側シートに挟まれることにより裏面側シート同士の密接な接着を妨げることが可能となる。
【0073】
またミニシート片は陰唇間パッドの左右非対称な動きを妨げることのないように伸長性を有することが好ましい。
【0074】
第17図に、本発明のもう1つの実施例であるミニシート片80がついた陰唇間パッド72を模式的に示す。本実施例では、裏面側シート30に繊維積層体36とフィルムの複合体を用いた。
【0075】
材質は、これまでの実施例と同じである。本実施例では、ミニシート片80が、2つ折りにされ向かい合っている裏面側シート30の間に挟まれている。このような構造となっているため、向かい合う裏面側シート30同士が直接接触することがなく、かつ、せん断すべりが生じうる面が増えるため、摩擦は更に低減すると考えられる。
【0076】
第18図に、本発明のもう1つの実施例であるミニシート片80がついた陰唇間パッド74を模式的に示す。本実施例では、複数のエンボス部52をつけた裏面側シート30を用いた。
【0077】
材質は、以前の実施例と同じである。本実施例では、ミニシート片80が、2つ折りにされ向かい合っている裏面側シート30の間に挟まれている。このような構造となっているため、向かい合う裏面側シート30同士が直接接触することがなく、かつ、せん断すべりが生じうる面が増えるため、摩擦は更に低減すると考えられる。
【0078】
第19図に、本発明のもう1つの実施例であるミニシート片80がついた陰唇間パッド76を模式的に示す。裏面側シート30とミニシート片80に囲まれた空間82は、装着用のための指を入れることができる。
【0079】
この実施例では、ミニシート片の巾(陰唇間パッドの横方向の長さ)が狭いので、前の実施例と異なり、ミニシート片80が完全に向かい合う両裏面側シート30を隔離するとは限らない。この場合であっても、裏面側シート30は、本発明にかかる低摩擦形状を有しているので、裏面側シート30同士の摩擦力は小さい。
【0080】
第20図に、本発明のもう1つの本実施例であるミニシート片80がついた陰唇間パッド78を装着された状態で模式的に示す。
【0081】
ミニシート片80は、反身体側に飛び出しており、摩擦には特に大きな影響を与えない。このような陰唇間パッド78では、表面側シート26の左側部と陰唇の左側部が、表面側シート26の右側部と陰唇の右側部が、それぞれに接触している。
【0082】
従って、陰唇90の左側部が前(第20図において図から手前に飛び出す方向)に動き、陰唇90の右側部が後ろ(第20図において図から奥に入り込んで行く方向)に動いた場合、表面側シート26の左側部が前に、陰唇の右側部が後ろに動き、これに対応して吸収体28の左側部が前に吸収体28の右側部が後ろに動き、そして、裏面側シート30の左側部が前に裏面側シート30の右側部が後ろに動くことになる。
【0083】
このため、向かい合う裏面側シート30に摩擦が働き、この動きを阻止しようとするが、本発明にかかる裏面側シート30を用いているため、その摩擦力が小さく、陰唇の動きに逆らわず、裏面側シート30が滑りあうことになる。
【0084】
ここで、ミニシート片付き陰唇間パッド76、78の装着方法について第19図と第20図を参照しつつ、簡単に説明する。なお、第19図の陰唇間パッド76と、第20図の陰唇間パッド78は、そのミニシート片の取り付けにおいて一致せずそれぞれ別の陰唇間パッドの実施例とされ得るが、以下の装着方法の説明においては、同一の物として考えてもさしつかえない。
【0085】
着用者は、裏面側シート30とミニシート片80とから形成されるポケット82に、当該ポケット82の開口となる指挿入用口から指の第一関節付近(指の末節付近)の指紋面側を裏面側シート30の反身体側面に接触させながら指を挿入することができ、陰唇間パッド76、78を指先に保持することができる。
【0086】
このようにポケット82に指を挿入した場合において、指の指紋面が接する箇所には、陰唇内の奥深くにある膣口を探知しやすい当接ポイントに対応する指当接ポイントが存している。指当接ポイントが含まれる領域は、膣口を探知するのに最適な指当接ポイントが存する領域、好適な指当接ポイントが存する領域、許容できる指当接ポイントが存する領域の3つの領域から成る。
【0087】
そして、指挿入用口は、このような指当接ポイントの存する領域に指紋面が来るように挿入した指を案内する。
【0088】
この結果、陰唇間パッド76、78を陰唇90に誘導する際に、陰唇90に陰唇間パッド76、78の身体側面に存する当接ポイント(図示せず)を接触させながら、ポケット82に挿入した指の第一関節の腹で吸収体28を介して陰唇90の凹凸を感知し、凹型である陰唇90内の適切な位置に正確に陰唇間パッド76、78を誘導することができるのである。
【0089】
陰唇間パッド76、78を陰唇90に装着し、ポケット82から指が引き抜かれた後は、ミニシート片80は、第20図に示すように、身体側とは反対方向にたるんでいる。このため、使用済み陰唇間パッド1を取り外すに際しては、ミニシート片80を摘まんで引っ張ることができる。なお、ミニシート片80を液不透過性、あるいは透湿性素材とすることにより、着用者がミニシート片80を摘まんだ場合でも、指が汚染されることなく、陰唇間パッド76、78を取り外すことが可能となる。
【0090】
一般に、ミニシート片80には、伸長性もしくは伸縮性を有するものを使用するのが好ましい。着用者の指先のサイズが設定された指挿入用口よりも大きい場合であっても、指のサイズに応じてミニシート片80が少なくとも幅方向に伸び、着用者の指先サイズにかかわらず指挿入することができ、陰唇間パッド76、78を適正に装着することができるからである。
【0091】
元来伸縮性を有する材料としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック−共重合体(SIS)、ウレタン等の合成ゴム、0.88〜0.900g/cm3の密度から選ばれる非晶性オレフィン系樹脂を原料としたフィルム、開孔フォームフィルム、ネット等が挙げられる。また、織布又は識布に合成ゴムを原料とした紡糸フィラメントを編み込んだ生地も使用できる。更に、合成ゴムを主体としたスパンボンド不織布やメルトブローン不織布、発泡フォームシートも使用することができる。
【0092】
着用中の柔軟な風合いを考慮した上で好適ものとしては、15〜40ミクロンの厚みに調整され、孔部面積が0.28〜1.77mm2、開孔率が40〜70%の範囲で構成された、SEBSを原料とした開孔フォームフィルムが挙げられる。
【0093】
不織布としては、芯成分が高融点で鞘成分が低融点成分で構成された熱収縮性を有するPE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とし、水流圧により繊維を交絡せしめたスパンレース不織布、再熱風処理を施して繊維のシュリンクを促進させたシュリンクタイプ不織布、連続長繊維を熱シールによりシート化した後に縦方向へ強制的にテンタリングを施したいわゆる伸長性スパンボンド等が挙げられる。
【0094】
より具体的には、太さが1.1〜4.4dtexの範囲で、長さが7〜51mmの範囲で、芯成分が高融点で鞘成分が低融点成分で構成された熱収縮性を有するPE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とし、目付が10〜60g/m2の範囲に調整されたシュリンクタイプ不織布が、柔軟でドレープ感に富んだ好適な材料として挙げられる。そしてまた、上述のような材料のラミネート物も使用することができる。
【0095】
非伸長性の材料に伸長性を付与して使用する場合には、不織布からは芯成分が高融点で鞘成分が低融点成分で構成された熱収縮性を有するPE/PP、PE/PET、PP/PP等の複合合成繊維を原材料とし、熱風により処理された嵩高感に富むスルーエアー不織布、水流圧により繊維を交絡せしめたスパンレース不織布、連続繊維を積層してシート化したスパンボンド不織布、ニードルにより繊維同士を絡ませたニードルパンチ不織布、スパンボンドとメルトブローンを多層に積層してシート化したSMS不織布のほか、開孔フォームフィルム、PE樹脂を主成分としたフィルム等を単独又はこれらを複合して成る材料が挙げられる。
【0096】
また、上述のような材料を雄雌の金型の間に嵌合させ、熱と温度と圧力により形状を型押しするコルゲート加工により伸長性を付与することも可能である。より具体的には、太さが1.1〜4.4dtexの範囲、目付が10〜60g/m2の範囲で調整された複合合成繊維を主体としたスルーエアー不織布を、横方向に伸長可能にコルゲート加工を施したものが挙げられる。コルゲート加工は少なくとも10%以上の伸長性があり、より好ましくは20〜50%の範囲で伸長可能となるように雄雌の金型の配列が設けられたものであり、更に好ましくは30%伸長時の荷重が0.01〜0.05N/25mmの範囲の挙動を有するものが望ましい(試験条件:テンシロン引張試験機にて、速度100mm/min、チャック間隔100mm)。なお、伸長性を付与する他の方法としては、切れ目線、円状に切り抜く等の方法も使用できる。
【0097】
これまで、通常の材料での本発明の実施例を説明してきたが、これに加え、本発明者らは、生分解性・水分散性・水溶性を付与した陰唇間パッドを更に開発した。以下その材料について説明する。
【0098】
[生分解性・水分散性・水溶性を付与した陰唇間パッドの構成]
本発明の陰唇間パッドは生分解性素材及び/又は水分散性素材及び/又は水溶性素材で構成されていることが更に好ましい。このような陰唇間パッドは使用後そのままトイレに脱落させて流すことができるため、パッドの破棄を簡便かつ清潔に行うことができ、トイレ内のゴミの低減を図ることもできるからである。
【0099】
本明細書において、「生分解性」とは、放線菌をはじめとする細菌、その他の微生物の存在下、自然界のプロセスに従って、嫌気性又は好気性条件下で物質が二酸化炭素又はメタン等のガス、水及びバイオマスに分解されることをいい、当該物質の生分解能(生分解速度、生分解度など)が、落ち葉等の自然に生じる材料、もしくは同一環境下で生分解性として一般に認識される合成ポリマーに匹敵することをいう。「水分散性」とは、水解性と同じ意味であって、使用時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中では、繊維同士が、少なくとも一般のトイレ配管を詰まらせることがない程度の小断片に容易に分散される性質のことをいう。「水溶性」とは、使用時の限定された量の水分(経血)では影響はないものの、多量の水又は水流中においては溶解する性質のことをいう。
【0100】
<表面側シート(透水性シート)>
透水性シートに使用できる材料としては、スパンレース不織布のほか、繊維長を1〜15mmの範囲から選択される湿式スパンレース不織布を使用することができる。他の材料としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの加水分解による生分解性樹脂も使用することができる。例えば、ポリ乳酸を原料として作られる目付が20〜60g/m2の範囲で調整されたメルトブローン不織布や目付が15〜30g/m2の範囲、繊維太さが1.1〜3.3dtexの範囲で調整されたスパンボンド不織布が挙げられる。なお、各不織布材料には開孔処理を施しても施さなくてもどちらでもよい。
【0101】
他の材料としてはアセテート、合成繊維を単独又は積層体の連続繊維であるトウを目付50〜300g/m2の範囲に調整し、繊維同士を解繊することにより使用することもできる。
また、このような材料のうち、装着者が陰唇間パッドと陰唇表面との間にズレが生じ、違和感を感じることが無いよう、陰唇内面との親和性を考慮すると、少なくともセルロース系の液親水性繊維を主体とした湿式スパンレース不織布を使用することが好ましい。
【0102】
<吸収体>
吸収体に使用できる材料としては、ニードリングから得られる不織布シートを使用することができる。なお、高分子吸収材料の生分解性等を考慮すると、カルボキシメチルセルロース繊維を使用するのが好ましい。
【0103】
<裏面側シート(不透水性シート)>
裏面側シート(不透水性シート)に使用できる材料としては、PVAフィルム、PVAフィルムの片面若しくは両面あるいは部分的にシリコーンなどにより撥水処理を施したフィルムシート、シリコーンを混合したPVAフィルム、澱粉フィルム、ポリ乳酸又はポリブチレンサクシネート等の加水分解による生分解性樹脂を原料としたフィルム及びティッシュ等とのラミネート紙を使用することができる。必要に応じて無機顔料を0.1〜5%の範囲で混合して着色を施してもよい。
【0104】
過湿下における防漏性の維持と浄化層への過度な負荷を与えないこと等をも考慮した場合には、ポリ乳酸を原料としたフィルムを10〜20ミクロンの厚み範囲で目付15〜20g/m2の範囲から選ばれるティッシュとラミネートし、更にラミネート時の貼り合せ面積率を5〜40%の範囲で設けられたラミネート紙が好適である。
【0105】
<繊維積層体>
繊維積層体に使用できる材料としては、スパンレース不織布のほか、繊維長を1〜15mmの範囲から選択される湿式スパンレース不織布を使用することができる。他の材料としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの加水分解による生分解性樹脂も使用することができる。例えば、ポリ乳酸を原料として作られる目付が20〜60g/m2の範囲で調整されたメルトブローン不織布や目付が15〜30g/m2の範囲、繊維太さが1.1〜3.3dtexの範囲で調整されたスパンボンド不織布が挙げられる。
【0106】
<ミニシート片>
ミニシート片に使用できる材料としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性材料を原料としたフィルム、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等、又はPVA、CMC等の水溶性材料を原料としたフィルム、不織布等、並びにセルロース繊維、再生セルロース繊維等を主体とした水分散性ティッシュ、スパンレース不織布等が挙げられる。
【0107】
好適には、生分解性材料を主体としたスパンボンド不織布又はメルトブローン不織布であって、太さが0.1〜3.3dtexの範囲、目付が15〜40g/m2の範囲に調整されたシートであって、前途した機械的コルゲート加工を施すことにより得られる。
【0108】
第21図に、模式的に、接触面積が減ると摩擦力が減ることの説明を試みる。本説明は、実験的に行ってきた以上の結果を説明するためのものであり、本発明は、このメカニズムで摩擦が減ることを要求するものではない。向かい合う裏面側シート30には、それぞれ、凹凸形状100があり、全面で接触しているわけではない。実際に接触しているところは、部位(A1、S1)102、部位(A2、S2)104、部位(A3、S3)106、部位(A4、S4)108、部位(A5、S5)110、部位(A6、S6)112、であり、空隙122、124、126、128,130、132を有している。ここで、Akは、実質的な接触面積で、Skは、その場所にある物質(多くの場合は表面の汚れなど)の面積あたりのせん断抵抗力である。従って、せん断されることによる摩擦力f(60)は、(A1×S1)+(A2×S2)+(A3×S3)+(A4×S4)+(A5×S5)+(A6×S6)である。Skは、物性値に相当し通常一定であると考えられるので、摩擦力f(60)は、Sk×(A1+A2+A3+A4+A5+A6)となる。(A1+A2+A3+A4+A5+A6)は、裏面側シート間の実質的な接触面積に相当するから、この実質的な接触面積を減少させれば、摩擦力が低減することになる。
【0109】
以上のような実施例の結果や上述の説明からも明らかなように、しゅう動する2面間に摩擦を低減する形状のみならず、材料を適用するとより好ましい。例えば、4フッ化エチレンのようなしゅう動性の高分子等の合成樹脂や公知の自己潤滑性の材料を低摩擦形状を形成するときに用いることができる。また、固体潤滑剤や流体の潤滑剤等の適正な潤滑剤を用いれば、形状による摩擦低減に加えた更なる摩擦低減効果が期待できる。
【0110】
また、上述の説明では、裏面側シート同士の摩擦についてかなり詳しく説明してきたが、裏面側シートと衣服等のように裏面側シートと異なるものにおいても同様に考えることができる。例えば、下着との摩擦であれば、同様に接触面積が小さい方が、摩擦力は小さくなると考えられ、そのため同様な低摩擦形状が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上説明したように、本発明によれば、着用中に左右位相変化可能な陰唇間パッドにおいて、裏面側シートの衣服側面に裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造及び/又は形状を有することで、裏面側シート同士の摩擦抵抗を低減し陰唇間パッドが容易に左右位相変化することが可能となる。従って、装者の際の違和感を低減させることができ、更には、着用者の身体動作によって陰唇間パッドに陰唇自体の挟持力を上回る摩擦抵抗が陰唇間パッドの裏面側シートに加わることがなくなる。
【0112】
また、裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造及び/又は形状を繊維積層体とフィルムの複合体で作ることにより、裏面側シート同士が接触する、接触点が少なく摩擦抵抗が少なくなる。更に、空隙を形成するため、湿潤時においても水分が裏面側同士の接触面に溜まることが無く、摩擦抵抗に大きな変化を生じることがない。
【0113】
また、裏面側シート同士が密接な接触を起こしにくい構造を表面凹凸賦型構造(又は表面凸賦型構造)とすることにより、裏面側シート同士が接触する接触点が少なく摩擦抵抗が少なくなる。更に、空隙を形成し湿潤時においても水分が裏面側同士の接触面に溜まることが無く、摩擦抵抗に大きな変化を生じることがない。加えて二次加工であるため製造コストを抑えることができる。
【0114】
また、裏面側シートの衣服側面に長手方向を中心軸とした両側部を跨るようにしたミニシート片を、陰唇間パッドの左右位相変化を阻害しない範囲内で備えることで、着用者が陰唇間パッドを装着した後、ミニシート片が陰唇間パッドの裏面側シートに挟まれる事により裏面側シート同士の密接な接着を妨げる事が可能な場合がある。
【0115】
この発明によれば、着用者の歩行動作等で代表される身体の左右非対称的な動作により、陰唇間に挟持されている陰唇間パッドに対しても長手方向中心付近を境に剪断力が加わることとなるが、裏面側シートの衣服側面同士の摩擦抵抗を抑制することにより、陰唇間パッドが左右位相変化することが容易となる。
【0116】
そのため陰唇間パッドが着用されている陰唇自体の挟持力に対して、裏面側シート同士の摩擦抵抗が低い場合には、陰唇間パッドが着用者の身体動作に追従することが容易となり脱落を著しく低減することができる。
【符号の説明】
【0117】
10 陰唇間パッド
26 表面側シート
28 吸収体
30 裏面側シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の身体側に位置する表面側シート、着用者の反身体側に位置する裏面側シート、及び該表面側シートと該裏面側シートとの間に配置される吸収体を備える陰唇間パッドであって、
前記表面側シート及び前記吸収体は、水分散性素材により構成され、
前記裏面側シートの外面は、該外面同士のしゅう動による抵抗、又は該外面と該外面を構成する部材とは異なる部材により構成される面とのしゅう動による抵抗が低い低摩擦構造を有しており、
前記低摩擦構造は、少なくとも外面にシリコーン処理が施された水溶性フィルムにより前記裏面側シートを構成することで形成されることを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項2】
前記表面側シートを構成する水分散性素材は、繊維長1〜15mmの範囲から選択される湿式スパンレース不織布であることを特徴とする請求項1に記載の陰唇間パッド。
【請求項3】
前記裏面側シートの外面に配置されるミニシート片を更に備え、該ミニシート片は水溶性フィルム又は水分散性を有する不織布により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の陰唇間パッド。
【請求項4】
前記水溶性フィルムは、PVAフィルム又は澱粉フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【請求項5】
尿失禁用に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【請求項6】
おりもの吸収用に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【請求項1】
着用者の身体側に位置する表面側シート、着用者の反身体側に位置する裏面側シート、及び該表面側シートと該裏面側シートとの間に配置される吸収体を備える陰唇間パッドであって、
前記表面側シート及び前記吸収体は、水分散性素材により構成され、
前記裏面側シートの外面は、該外面同士のしゅう動による抵抗、又は該外面と該外面を構成する部材とは異なる部材により構成される面とのしゅう動による抵抗が低い低摩擦構造を有しており、
前記低摩擦構造は、少なくとも外面にシリコーン処理が施された水溶性フィルムにより前記裏面側シートを構成することで形成されることを特徴とする陰唇間パッド。
【請求項2】
前記表面側シートを構成する水分散性素材は、繊維長1〜15mmの範囲から選択される湿式スパンレース不織布であることを特徴とする請求項1に記載の陰唇間パッド。
【請求項3】
前記裏面側シートの外面に配置されるミニシート片を更に備え、該ミニシート片は水溶性フィルム又は水分散性を有する不織布により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の陰唇間パッド。
【請求項4】
前記水溶性フィルムは、PVAフィルム又は澱粉フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【請求項5】
尿失禁用に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【請求項6】
おりもの吸収用に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の陰唇間パッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−90143(P2009−90143A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21463(P2009−21463)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【分割の表示】特願2002−590876(P2002−590876)の分割
【原出願日】平成14年5月21日(2002.5.21)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【分割の表示】特願2002−590876(P2002−590876)の分割
【原出願日】平成14年5月21日(2002.5.21)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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