説明

陳列システムおよび容器

【課題】標記を所定の方向に向けて陳列することが可能な陳列システム等を提供する。
【解決手段】容器20のネック部21bの外周面は、周方向に、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、第4領域R4の順に4つの領域に区分けされており、隣接する領域の摩擦係数は互いに異なっている。そして、第1領域R1の摩擦係数と第3領域R3の摩擦係数とは等しく、第2領域R2の摩擦係数と第4領域R4の摩擦係数は等しくなるように構成され、第1領域R1および第3領域R3の摩擦係数は、第2領域R2および第4領域R4の摩擦係数よりも大きくなるように構成されている。そして、第1領域R1は、第1識別標記23aの上方に存在し、第3領域R3は、第2識別標記23bの上方に存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の陳列を行う陳列システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンビニエンスストアなどにおいては、飲料缶やペットボトルなど飲料が充填された容器が、例えば陳列ケースに収容された陳列装置に縦置きに載せられて販売される。そしてこのような陳列装置は、例えば、容器自身の自重により陳列ケースの前方に容器が移動するように傾斜した状態で配置される。そして、手前側(最前列)の1つの容器を抜き取ると、後続の容器が自重で手前側に移動する。
ここで陳列装置の容器が載せられる箇所には、容器の滑りの良さから例えばプラスチックの平板が設けられる。また、近年では回転可能なローラを多数配置した陳列装置が出回っている(例えば、特許文献1参照)。また、容器の補充は陳列装置の後方側から行うのが一般的であるが、手前側からの容器の投入を可能とするとともに、奥側に移動した容器が、再度手前側に移動し陳列される陳列装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。即ち、前方側から投入された容器がUターンして戻ってくる陳列装置が提案されている。さらに、容器に関するものとして、缶底に形成された環状凸部の内周壁に、内側凹部と縦リブとが円周方向に交互に形成された缶が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
ところで、容器の外面には、商品名や商標名など他の商品と識別するための標記が設けられるが、この標記が購入者の取り出し方向に向いていないと、商品の識別がしにくくなるとともに、商品の陳列時の見栄えが悪くなる。このため、陳列される容器は、例えば前方側など、標記が所定の方向に向いていることが好ましい。
【0004】
公報記載の従来技術として、容器が載せられる傾斜棚板の上面に、棚板傾斜方向に向けて棒状のガイド凸条を設け、容器の底部に、標記の直下と標記が付された面とは反対側の面の直下とを結ぶ凹状嵌合部を設け、このガイド凸条と凹状嵌合部とを用いて容器を陳列する陳列方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。この陳列方法では、標記が前方側を向く姿勢で凹状嵌合部をガイド凸条に嵌合させ、複数の容器を前後に並べる。この結果、標記が前方を向いた状態で容器の陳列が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−155701号公報
【特許文献2】米国特許第6502408号
【特許文献3】特開2000−211624号公報
【特許文献4】特開2006−288676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献4では、凹状嵌合部をガイド凸条に嵌合させ容器の陳列を行うことで、標記を確実に前方に向けることが可能となる。しかしながら、かかる発明では、容器の投入者は、容器を陳列装置に設置する度に凹状嵌合部をガイド凸条に嵌合させる必要があり、容器の陳列作業が繁雑となる。また、標記が容器の一箇所にのみ形成されている場合には、標記が後方側に向いた状態で陳列される陳列ミスの発生も懸念される。また、コンビニエンスストアなどの多量の飲料を販売する店舗等では、向きを揃えて投入する作業が非常に大掛かりとなる。
【0007】
本発明は、容器を陳列装置に縦置きに陳列する際に容器の標記をランダムな方向に向けて容器を置いても、標記を所定の方向に向けて陳列することが可能な陳列システム等を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもと、本発明に適用される陳列システムは、内容物が充填された容器と、容器を陳列する陳列装置と、を備える陳列システムであって、容器は、標記が付された中央部と、内容物を排出させる排出部と、中央部と排出部とを連結し中央部から排出部の方へ行くに従って外形が小さくなるように形成された連結部と、を有し、陳列装置は、容器を移動させる移動手段と、移動手段により移動させられる容器の連結部に接触し容器の移動をガイドするガイド部と、を有し、容器の連結部は、陳列装置のガイド部に接触することによりガイド部からの抗力を用いて容器を回転させ、標記を特定の方向に向ける第1の接触部と、標記が特定の方向を向いている場合にガイド部に接触し、ガイド部に対して容器を滑らせる第2の接触部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、第1の接触部および第2の接触部は、連結部の周方向に交互に形成されていることを特徴とすることができる。また、第1の接触部および第2の接触部のいずれか一方が、他方の接触部よりも表面に大きな凹凸を有していることを特徴とすることができる。また、第1の接触部および第2の接触部は塗布材料により形成され、または、第1の接触部および第2の接触部の少なくともいずれか一方がテープ部材もしくはシール部材又はフィルム部材により形成されていることを特徴とすることができる。塗布材料としては、印刷に使用されるインキ類、表面保護あるいは滑性を与える塗料、ワックス等が例として挙げられる。テープ部材もしくはシール部材としては、テフロン(登録商標)加工が施されたものが例として挙げられる。フィルム部材としては、熱収縮の可能なシュリンクフィルムが挙げられる。さらに、標記は、第2の接触部が一方向を向いている場合に一方向と略直交する方向に向くように第2の接触部と予め定められた所定の位置関係を有して中央部に付されていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明を容器と捉えた場合、本発明が適用される容器は、陳列物に接触し陳列物の移動をガイドするガイド部を備えた陳列装置に陳列され回転可能な容器であって、標記が付された中央部と、内容物を排出させる排出部と、中央部と排出部とを連結し中央部から排出部の方へ行くに従って外形が小さくなるように形成された連結部と、を有し、連結部に設けられ、標記が特定の方向以外の方向を向いている場合に陳列装置のガイド部に接触し、ガイド部からの抗力を用いて容器を回転させ、標記を特定の方向に向ける第1の接触部と、連結部に設けられるとともに連結部の周方向において第1の接触部が設けられた箇所とは異なる箇所に設けられ、標記が特定の方向を向いている場合に陳列装置のガイド部に接触し、ガイド部に対して容器を滑らせる第2の接触部と、を備える。
【0011】
ここで、第1の接触部および第2の接触部は、連結部の周方向に交互に形成されていることを特徴とすることができる。また、第1の接触部および第2の接触部のいずれか一方が、他方の接触部よりも表面に大きな凹凸を有していることを特徴とすることができる。また、第1の接触部および第2の接触部は、塗布材料により形成され、または、第1の接触部および第2の接触部の少なくともいずれか一方がテープ部材もしくはシール部材又はフィルム部材により形成されていることを特徴とすることができる。塗布材料としては、印刷に使用されるインキ類、表面保護あるいは滑性を与える塗料、ワックス等が例として挙げられる。テープ部材もしくはシール部材としては、テフロン(登録商標)加工が施されたものが例として挙げられる。フィルム部材としては、熱収縮の可能なシュリンクフィルムが挙げられる。さらに、標記は、第2の接触部が一方向を向いている場合に一方向と略直交する方向に向くように第2の接触部と予め定められた所定の位置関係を有して中央部に付されていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、他の観点から捉えると、本発明が適用される容器は、陳列物に接触し陳列物の移動をガイドするガイド部を備えた陳列装置に陳列され回転可能な容器であって、標記が付された中央部と、内容物を排出させる排出部と、中央部と排出部とを連結し中央部から排出部の方へ行くに従って外形が小さくなるように形成された連結部と、を有し、連結部は、第1の摩擦係数を有する第1の領域と、周方向において第1の領域が設けられた箇所とは異なる箇所に設けられ、第1の摩擦係数よりも小さい第2の摩擦係数を有する第2の領域とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器を陳列装置に縦置きに陳列する際に容器の標記をランダムな方向に向けて容器を置いても、標記を所定の方向に向けて陳列することが可能な陳列システム等を提供可能となる。
【0014】
また、本発明によれば、デッドスペースとなりやすい容器のネック部と対向する部分(容器の外周面の延長線とネック部最上部の水平線とネック部とによって囲まれる領域)を有効活用できるため、省スペースで容器を陳列することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る陳列システムの概略構成を示した図である。
【図2】容器を説明するための図である。
【図3】容器の製造工程の概略を説明するための図である。
【図4】容器に対して印刷を行う印刷機を示した図である。
【図5】第1領域R1〜第4領域R4の表面状態について説明するための図である。
【図6】陳列装置を説明するための図である。
【図7】容器が陳列装置に投入された場合を説明するための図である。
【図8】容器が陳列装置に投入された場合を説明するための図である。
【図9】陳列装置の他の形態を説明するための図である。
【図10】容器の他の形態を示した図である。
【図11】長さ方向で領域を4分割したテープを容器全周に貼付した図である。
【図12】容器の他の形態を示した図である。
【図13】容器の他の一形態を示した図である。
【図14】識別標記が180°対向していない場合の領域の説明図である。
【図15】段付きネック加工が施された容器を説明するための図である。
【図16】実験で用いた陳列装置を説明するための図である。
【図17】実験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
−第1の実施形態−
図1(a)は、本実施形態に係る陳列システム10の概略構成を示した図である。図1(b)は、陳列システム10がコンビニエンスストア、スーパーマーケットなどに設置された場合を示した図である。
陳列システム10は、図1(a)に示すように、識別標記が付されるとともに飲料などの内容物が充填された容器20と、容器20を陳列する陳列装置30とを有している。また、陳列システム10は、図1(b)に示すように、例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケットなどに設置される陳列ケース40に収納される。
【0017】
陳列ケース40は、ケース本体部40aと、ケース本体部40aの手前側に設けられケース本体部40aに対して開閉可能に取り付けられたドア40bと、ケース本体部40aの奥側に設けられケース本体部40aに対して開閉可能に取り付けられたドア40cとを有している。そして、容器20はドア40cより陳列装置30に投入することができるようになっている。即ち、陳列ケース40の奥側および陳列装置30の奥側に容器20の投入部が設けられた構成となっている。
【0018】
次に、容器20について説明する。
図2(a)は本実施形態に係る容器20の正面図であり、図2(b)は容器20の背面図であり、図2(c)は容器20の上面図である。
【0019】
本実施形態に係る容器20は、上部に開口部が形成された有底筒状の缶胴21と、缶胴21の上部に形成された開口部を覆うとともに飲料などの内容物を排出するための排出孔が形成された缶蓋22とを有するいわゆる2ピース缶である。
【0020】
缶胴21は、後述する識別標記23が設けられ直径がほぼ一定であるように筒状に形成された側部21aと、側部21aの上部から上方に行くに従って外形が小さくなるように形成されたネック部21bと、側部21aの下方に設けられ下方に行くに従って外形が小さくなるように形成されたボトム部21cとを有する。
【0021】
側部21aは、商品名、商標など他の商品と識別するための識別標記23を有している。識別標記23は、第1識別標記23aと、第1識別標記23aが存在する位置と周方向に180度ずれた位置に存在する第2識別標記23bとを有している。
ネック部21bについては、後で詳述する。
ボトム部21cは、下方へ突出した環状の突出部と、環状の突出部に囲まれたドーム形状を有するドーム部とを有している。
【0022】
次に、上述のように構成された容器20の製造工程について説明する。
図3は、容器20の製造工程の概略を示した図である。
【0023】
まず、製造ラインに投入された金属板(例えば、アルミニウム板)は、潤滑油が塗布された後、カッピングプレスによって打ち抜き絞り加工され、カップが成形される(カップ成形)。そして、このカップは再絞り・しごき(Drawing and Ironing)加工がボディメーカーによって施されるとともに、パンチが突き当てられることによって下部にドーム形状を有するDI缶が形成される(DI成形)。その後、DI缶の上端部を切り揃えるトリミング加工がトリマによって施される(トリミング)。
【0024】
そして、トリミング加工が施されたDI缶に残存している潤滑油をウォッシャによって洗い落とす処理が行われた後(脱脂洗浄)、その後の印刷で用いるインクや塗料の密着性を高めるための化成処理が施される(化成処理)。これらの処理により、DI缶の上端部が切り揃えられた缶体24が形成される(缶体成形)。そして、缶体24の外周面に印刷が施された後(印刷)、内容物を安定的に保つため樹脂塗料が缶体24の内周面に塗布される(内面塗装)。
【0025】
そして、外周面に印刷が施されるとともに内周面に樹脂塗料が塗布された缶体24に対して、缶体24の上部に金型に押しつけながら口絞りするネック加工がネッカフランジャによって施される(ネック加工)。その後、スピナを回転させて処理を行うスピニング加工が缶体24に施されることによって、缶体24の上端部にフランジ部が形成される(フランジ加工)。これにより上述した缶胴21が完成する。そして、缶胴21に飲料などの内容物が充填され(内容物の充填)、巻き締め加工によって缶胴21に缶蓋22が取り付けられる(缶蓋の取付)。尚、上記ネック加工には、ネック部21bに段を形成する段付きネック加工や、段を形成せずネック部21bをなだらかに口絞りするスムースネック加工がある。図2では、スムースネック加工が施された容器20を示した。段付きネック加工が施された容器20については、後で詳述する。
【0026】
ここで、上記脱脂洗浄・化成処理が施した後に缶体24の外周面に印刷を施す印刷工程について詳細に説明する。
図4は、缶体24に対していわゆるオフセット印刷を行う印刷機50を示した図である。
印刷機50は、円盤状に形成されるとともに一方向に回転するブランケットシリンダ51と、図柄に対応した版を有し、缶体24の外周面に塗布されるインキをブランケットシリンダ51に塗布するインキ塗布装置52と、ブランケットシリンダ51の対向位置に配置され、ブランケットシリンダ51の回転方向とは逆方向に回転しながら缶体24を支持する支持ロール53と、インキが塗布された缶体24に塗料を塗布する塗料塗布装置54とを備える。
【0027】
ブランケットシリンダ51は、外周面に複数のブランケット(被転写部)51aを有している。また、ブランケットシリンダ51は、インキ塗布装置52における上記版からブランケット51aに転写されたインキを転写部Tにて缶体24に対して転写し、この缶体24に上記識別標記23を含む図柄を形成する。
【0028】
インキ塗布装置52は、ブランケットシリンダ51の周方向に沿って色毎に複数設けられている。各インキ塗布装置52は、ブランケットシリンダ51のブランケット51aに接触する印刷用シリンダ52aと、印刷用シリンダ52aの外周面にインキを供給するインキ供給装置52bとを備えている。ここで印刷用シリンダ52aは、外周面に上記版を有し、インキ供給装置52により供給されたインキをブランケット51aに転写する。
これにより、各ブランケット51aの表面にインキが載せられる。より詳細には、各ブランケット51aの表面であって印刷用シリンダ52a毎に割り当てられた各領域に、印刷用シリンダ52aの各々からインキが順次載せられる。この結果、各ブランケット51aの表面には、図柄に対応したインキ像が形成される。そして、このインキ像は、ブランケットシリンダ51の回転に伴い、転写部Tまで移動し、周方向に回転している缶体24の外周面に転写される。これにより、缶体24の外周面に後述するインキ層25が形成される。
【0029】
支持ロール53は、上記脱脂洗浄・化成処理工程から移動してきた缶体24を回転させた状態で上記転写部Tまで搬送する。塗料塗布装置54は、上記インキ像が転写された缶体24(インキ層25が形成された缶体24)の外周面に対して塗料を塗布する。これにより、インキ層25の外周面に後述するトップコート層26が形成される。
【0030】
次に、ネック部21bについて詳細に説明する。
図5(a)は、ネック部21bの断面図であり、図2(a)のX−Xにおける断面を含む平面図である。図5(b)は、図5におけるY1部を拡大した図であり、後述する第1領域R1および第3領域R3の拡大図である。図5(c)は、図5におけるY2部を拡大した図であり、後述する第2領域R2および第4領域R4の拡大図である。
【0031】
図5(a)に示すように、ネック部21bは、缶体24と、缶体24上のインキ層25と、インキ層25上のトップコート層(最外層)26とから構成される。
また、ネック部21bの外周面は、周方向に、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、第4領域R4の順に4つの領域に区分けされており、隣接する領域の摩擦係数は互いに異なっている。そして、第1領域R1の摩擦係数と第3領域R3の摩擦係数とは等しく、第2領域R2の摩擦係数と第4領域R4の摩擦係数は等しくなるように構成され、第1領域R1および第3領域R3の摩擦係数は、第2領域R2および第4領域R4の摩擦係数よりも大きくなるように構成されている。そして、第1領域R1は、第1識別標記23aの上方に存在し、第3領域R3は、第2識別標記23bの上方に存在している(図2参照)。
【0032】
そして、図5(b)、(c)に示すように、本実施形態においては、第2領域R2および第4領域R4の摩擦係数が、第1領域R1および第3領域R3の摩擦係数よりも小さくなるように構成するために、第2領域R2および第4領域R4におけるトップコート層26の表面の凹凸を、第1領域R1および第3領域R3におけるトップコート層26の表面の凹凸よりも大きくしている。すなわち、後述するガイド部32の抵抗付与部33との接触面積を、第1領域R1および第3領域R3におけるトップコート層26よりも、第2領域R2および第4領域R4におけるトップコート層26の方を小さくすることで摩擦係数を小さく構成している。以下では、表面状態が異なるトップコート層26を区別するために、第1領域R1および第3領域R3におけるトップコート層26を第1のトップコート層26aと、第2領域R2および第4領域R4におけるトップコート層26を第2のトップコート層26bと称す。また、第1のトップコート層26aの下のインキ層25を第1のインキ層25aと、第2のトップコート層26bの下のインキ層25を第2のインキ層25bと称す。
【0033】
次に、第1のトップコート層26aの凹凸と第2のトップコート層26bの凹凸とを異ならせる手法について説明する。
第1のトップコート層26aの凹凸と第2のトップコート層26bの凹凸との差は、印刷機50において、第2のインキ層25bを担当する印刷用シリンダ52aからブランケット51aに載せるインキを、第1のインキ層25aを担当する印刷用シリンダ52aからブランケット51aに載せるインキよりも、より塗料をはじく機能を有するインキを用いることで形成する。
【0034】
第1のインキ層25aに用いるインキには、例えば金属印刷用のものを用いる。インキの顔料(色量)としては、各種の有機顔料や無機顔料が用いられる。また、インキのビヒクルは、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の樹脂を主成分としている。熱硬化性樹脂としては、アルキッド型又はポリエステル型の樹脂等が用いられ、紫外線硬化性樹脂としては、紫外線ラジカル重合型、紫外線カチオン重合型の樹脂等が用いられる。さらに、インキには添加剤が含有されていても良い。添加剤としては、艶消し剤、ワックス類(天然系、石油系、合成系)、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、架橋剤、ゲル化剤、増粘剤、皮張り防止剤、安定剤、消泡剤、光重合開始剤等が用いられる。
【0035】
第1のトップコート層26aに用いる塗料は、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の樹脂を主成分とするものであり、必要に応じてワックス成分を含有している。熱硬化性樹脂としては、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フラン−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂(例:ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスマレイミド樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、油性樹脂等が用いられる。また、紫外線硬化性樹脂としては、カチオン硬化型樹脂、ラジカル硬化型樹脂等が用いられる。カチオン硬化型樹脂としては、紫外線硬化型エポキシ樹脂と光カチオン重合触媒との組成物等が用いられる。
【0036】
さらに、第1のトップコート層26aに用いる塗料として、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組成物を用いても良い。この場合、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル−マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、アクリル重合体、飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。これらの樹脂は、単独でも2種以上を組み合わせても使用できる。また、これらの樹脂組成物には、必要に応じて、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の公知の酸触媒が添加されていても良い。酸触媒を用いる場合は、酸触媒は樹脂に対して0.5〜1質量%添加するのが望ましい。また、これらの樹脂のうち、特に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂と飽和ポリエステル樹脂との組成物や、熱硬化性アクリル樹脂とメラミン−ホルムアルデヒド樹脂との組成物を用いることが塗膜性能面で望ましい。
【0037】
また、第1のトップコート層26aに用いる塗料において、上記の樹脂に架橋剤や増感剤を必要に応じて添加しても良い。架橋剤としては、種々のポリオール類(例:ε−カプロラクトントリオール)等が用いられる。増感剤としては、チオキサントン誘導体等が用いられる。また、第1のトップコート層26aに用いる塗料に、滑りを補うために、ワックス成分として天然系、石油系、合成系のワックス剤を単独で又は複合して添加しても良い。さらに、第1のトップコート層26aの表面のレベリング剤として、あるいは/さらに、塗料状態での安定性を高めるためや初期滑り性を第1のトップコート層26aに付与するために、各種のシリコーンオイルを添加しても良い。
【0038】
第2のトップコート層26bを形成する塗料の基本的な組成等は、第1のトップコート層26aと同様である。
そして、第2のインキ層25bを形成するインキの基本的な組成等は、第1のインキ層25aと同様であるが、第2のインキ層25bは、いわゆるはじきインキにより形成されている。即ち、第2のインキ層25bは、第2のインキ層25bの表面に第2のトップコート層26bを形成する塗料が塗られた場合に、この塗料をはじくインキにより形成されている。このため、第2のトップコート層26bにおける上記凹凸は、第2のトップコート層26bを形成する塗料が第2のインキ層25bを形成するインキによりはじかれることにより形成されたものである。
【0039】
そして、第2のインキ層25bを形成するインキが第2のトップコート層26bを形成する塗料をはじくためには(上記凹凸を形成するためには)、第2のインキ層25bの形成に用いるインキの表面張力を、第2のトップコート層26bの形成に用いる塗料の表面張力よりも5mN/m以上低く設定することが望ましい。換言すると、インキの表面張力が塗料の表面張力よりも低く、且つ、インキと塗料との間の表面張力の差が5mN/m以上であることが望ましい。ここで、インキの表面張力の低下は、例えば、通常のインキにシリコーンを添加することにより行うことができる。
【0040】
第2のインキ層25bおよび第2のトップコート層26bの組成等の一例を挙げると以下のようになる。
[第2のインキ層25b](はじきインキ)
主樹脂:アルキッド樹脂
顔料:TiO
表面張力:28mN/m
厚さ:2μm
[第2のトップコート層26b]
樹脂成分:ポリエステル30%、アクリル13%、アミノ55%、エポキシ2%
ワックス:石油系0.3%、天然系1%、合成系0.2%(樹脂成分に対し)
シリコーンオイル(混合):0.15%(樹脂成分に対し)
表面張力:33mN/m
厚さ:5μm
【0041】
また、上記塗布材料により生じさせる上記第2領域R2(第4領域R4)の凹凸の深さは3〜10μm程度であり、それに対して通常のコーティング塗料により生じさせる上記第1領域R1(第3領域R3)の凹凸の深さは1μm程度或いはそれ未満である。
【0042】
尚、側部21a(図2(a)、(b)参照)のうちの第1領域R1(第3領域R3)の下方に位置する領域(以下、「下方領域」と称する)に対しては、第1領域R1(第3領域R3)を形成する際に用いるインキやこのインキと同種のインキを使用することができる。このように、第1領域R1(第3領域R3)を形成する際に用いるインキを下方領域に対しても使用する場合、第1領域R1(第3領域R3)と下方領域とを跨ぐ連続した図柄をこれらの領域に対し形成することができる。
【0043】
尚、上記は第2領域R2(第4領域R4)の形成方法の一例を説明したものであり、例えば特開2002−361172号公報に開示されている技術を用いて第2領域R2(第4領域R4)を形成してもよい。即ち、第2のトップコート層26bを形成する塗料を第2のインキ層25bの表面で斑状に凝集させることで凹凸を形成し第2領域R2(第4領域R4)を形成してもよい。また、上記では、いわゆるはじきインキを用いて、第2領域R2(第4領域R4)に凹凸を形成したが、例えば発泡剤を含有したいわゆる発泡インキを用いて第2のインキ層25bを形成し、第2領域R2(第4領域R4)に凹凸を形成してもよい。即ち、第2のインキ層25bをいわゆる発泡インキにより形成するとともに、第2のトップコート層26bを上述した塗料により形成することで第2領域R2(第4領域R4)に凹凸を付与してもよい。
【0044】
尚、第2のインキ層25bを上述したインキにより形成するとともに、第2のトップコート層26bを形成する塗料をいわゆるマット塗料とすることで第2領域R2(第4領域R4)に凹凸を付与してもよい。ここで、マット塗料とは、ガラス、シリカ、樹脂等の光を散乱させる粒子が含有され、通常の塗料よりも光沢度が低下する塗料である。マット塗料には、上記のようにガラス、シリカ、樹脂等の粒子が含まれているため、その表面に凹凸が形成される。この場合は、塗料の塗り分けが必要となる。即ち、第2領域R2(第4領域R4)に対してはマット塗料を塗布し、第1領域R1(第3領域R3)に対してはマット塗料ではない塗料を塗布する必要がある。
【0045】
また、第2のインキ層25bをはじきインキにより形成するとともに、この第2のインキ層25bの表面にマット塗料を用いて第2のトップコート層26bを形成してもよい。
また例えば、第1領域R1〜第4領域R4におけるインキ層25を上述したインキにより形成するとともに、第1領域R1〜第4領域R4におけるトップコート層26をマット塗料により形成した後、第1領域R1および第3領域R3に対して、表面を平滑にする塗料(例えば、上記ガラス等が含まれていない塗料)を塗布してもよい。即ち、マット塗料を塗布することで容器20の全周を滑りやすくした後、第1領域R1および第3領域R3に表面を平滑にする塗料を塗布し、第1領域R1および第3領域R3を滑りにくくしてもよい。
【0046】
次に、陳列装置30について説明する。
図6(a)は陳列装置30の上面図、図6(b)は陳列装置30の側面図、図6(c)は陳列装置30の正面図である。
【0047】
陳列装置30は、板状部材により構成され容器20を載せる載置部31と、載置部31の左右両側に配置され容器20の移動を案内するガイド部32と、ガイド部32に設けられ容器20のネック部21b(図2参照)に接触して摺動抵抗(摩擦抵抗)を付与する抵抗付与部33と、透明に形成されるとともに載置部31の手前側の一側辺に配置され容器20の前方方向の移動を停止させる停止板34とを備えている。また、ガイド部32は、左ガイド32aと、右ガイド32bとを備えている。
尚、本明細書では、陳列装置30の奥側から手前側の方向を前方方向、前方方向と直交する方向を左右方向と称する場合がある。
【0048】
載置部31は、手前側が奥側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。より詳細には、載置部31と前後方向の水平面とが角度θAをなすように、手前側が奥側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。また、載置部31は、左ガイド32a側の方が右ガイド32b側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。より詳細には、載置部31と左右方向の水平面とが角度θBをなすように、左ガイド32a側の方が右ガイド32b側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。
【0049】
また、載置部31は、容器20が置かれる側の面に、載置部31の左右方向に並列配置された第1ローラ群31a、第2ローラ群31b、第3ローラ群31cを備えている。ここで、各ローラ群は、容器20の移動方向に沿った回転が可能であり且つ前方方向に並べられた複数のロール状部材31dを有している。
尚、本実施形態では、第1ローラ群31aは左ガイド32a側に配置され、第3ローラ群31cは右ガイド32b側に配置され、第2ローラ群31bは第1ローラ群31aと第3ローラ群31cとの間に配置されている。
【0050】
容器20の移動を案内するガイド部32は、載置部31の左右両側に配置され、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料などにより形成される。そして、本実施形態では、左ガイド32aには容器20のネック部21bに設けられた第1領域R1〜第4領域R4に接触して容器20に摺動抵抗(摩擦抵抗)を付与する抵抗付与部33が、左ガイド32aの全長に亘り設けられている。ここで、容器20の上下の動き、左右の傾きに対して、抵抗付与部33と容器20のネック部21bに設けられた第1領域R1〜第4領域R4との接触面積が大きく変化しないように、抵抗付与部33の断面は円形である方が望ましい。例えば、断面が円形のバー材を軸にしたものに塩化ビニルなどにより構成されたビニールテープや、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)などのゴム部材を貼付することで形成することが好適である。また、アルミニウムなどの金属材料や樹脂材料などのバー材に、ブラスト処理を施しても良い。ただし、バー材にブラスト処理を施す場合は、ブラストの処理方法によって、第1領域R1(第3領域R3)の摩擦係数と、第2領域R2(第4領域R4)の摩擦係数との大きさの関係が逆転することがある。
【0051】
次に、容器20が陳列装置30に投入された場合について説明する。
図7(a)〜(c)および図8(a)〜(c)は、容器20が陳列装置30に投入された後の陳列システム10を示した上面図である。
尚、図7、8において、容器20の缶蓋22、陳列装置30の載置部31の第1ローラ群31a、第2ローラ群31b、第3ローラ群31cの図示を省略した。
【0052】
上述のように、載置部31の前方側が後方側よりも下方に位置するように傾斜して配置され、また左ガイド32a側の方が右ガイド32b側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。このため、図7(a)のように、載置部31の投入部から容器20が投入されると、容器20は前方に向かって移動するとともに左ガイド32a側に向かって移動する。即ち、容器20は斜め左前方に向かって移動する。このため、容器20はやがて左ガイド32aに接触することになる。より詳細には、容器20のネック部21bが抵抗付与部33に接触することになる。そして、容器20のネック部21bが一旦抵抗付与部33に接触すると、容器20のネック部21bは抵抗付与部33に接触しながら、容器20は手前側に向かって移動する。
【0053】
また、上述のように、容器20のネック部21bの第1領域R1および第3領域R3の摩擦係数は、第2領域R2および第4領域R4の摩擦係数よりも大きくなるように構成されている。このため、第1領域R1および第3領域R3が抵抗付与部33に接触した場合の方が、第2領域R2および第4領域R4が抵抗付与部33に接触した場合よりも、容器20に生じる摩擦力は大きい。それゆえ、第2領域R2あるいは第4領域R4が抵抗付与部33に接触したときには、第2領域R2あるいは第4領域R4と、抵抗付与部33との間に滑りが生じるものと考えられる。また、第1領域R1あるいは第3領域R3が抵抗付与部33に接触したときには、第1領域R1あるいは第3領域R3と、抵抗付与部33との間における滑りが抑制され、容器20が回転するものと考えられる。
【0054】
それゆえ、容器20のネック部21bの第1領域R1が最初に抵抗付与部33に接触する場合には、図7(b)のように、第1領域R1と抵抗付与部33との間における滑りが抑制され(第1領域R1に抗力が付与され)、容器20は、同図において時計回りの回転(右回転)をしながら前方へ移動する。
【0055】
その後、図7(c)のように、第2領域R2が抵抗付与部33に接触する状態になると、第2領域R2と抵抗付与部33との間で滑りが生じる。そして、容器20は第2領域R2が抵抗付与部33に接触したまま、左ガイド32aにより案内されながら前方に向かって移動(スライド)することになる。
上記のように、第2領域R2と第2識別標記23bは予め定められた所定の位置関係を有して配置されている。すなわち、第2領域R2が左方側(一方向)を向いている場合に第2識別標記23bが前方(一方向と交差する方向、一方向と略直交する方向)を向くように配置されている。このため、図7(c)のように、第2領域R2が抵抗付与部33に接触した状態となると、第2識別標記23bが前方を向く。これにより、容器20は第2識別標記23bが前方を向いた状態となる。
したがって、容器20は第2識別標記23bが前方を向いた状態で左ガイド32aにより前方に向かって案内される。そして、他の容器が陳列されていない場合には、容器20は停止板34に突き当たって停止し、第2識別標記23bが前方を向いた状態で取り出し部に置かれることとなる。
【0056】
上記では、最初に第1領域R1が抵抗付与部33に接触し、その後第2領域R2が抵抗付与部33に接触する場合を説明したが、最初に第3領域R3が抵抗付与部33に接触する場合は以下のように作用する。即ち、載置部31の投入部から容器20が投入され、容器20が斜め左前方に向かって移動し、第3領域R3が抵抗付与部33に接触する。そして、第3領域R3と抵抗付与部33との間における滑りが抑制され(第3領域R3に抗力が付与され)、容器20は同図において時計回りの回転(右回転)をしながら前方へ移動する。その後、第4領域R4が抵抗付与部33に接触すると、第4領域R4と抵抗付与部33との間で滑りが生じ、容器20は回転を停止する。そして、容器20は、第4領域R4が抵抗付与部33に接触したまま、左ガイド32aにより案内されながら前方に向かって移動(スライド)する。
【0057】
上記のように、第4領域R4と第1識別標記23aは予め定められた所定の位置関係を有して配置されている。すなわち、第4領域R4が左方側(一方向)を向いている場合に第1識別標記23aが前方(一方向と交差する方向、一方向と略直交する方向)を向くように配置されている。このため、第4領域R4が抵抗付与部33に接触した状態となると、容器20は第1識別標記23aが前方を向いた状態となる。
したがって、容器20は、第1識別標記23aが前方を向いた状態で左ガイド32aにより前方に向かって案内され、他の容器が陳列されていない場合には、停止板34に突き当たって停止し、第1識別標記23aが前方を向いた状態で取り出し部に置かれることとなる。
【0058】
次に、図8(a)〜(c)を参照しつつ、容器20が載置部31の投入部から投入され、最初に容器20のネック部21b(図2参照)の第2領域R2が最初に抵抗付与部33に接触する場合について説明する。この場合、図8(a)のように、容器20が抵抗付与部33から受ける抗力は小さく、第2領域R2と抵抗付与部33との間に滑りが生じる。そして、図8(b)のように、容器20のネック部21bの第2領域R2が抵抗付与部33に接触した状態のまま、左ガイド32aにより案内されながら前方に向かって移動(スライド)することになる。その後、図8(c)のように、この状態を保持したまま、容器20は取り出し部に到達することになる。これにより、容器20は、第2識別標記23bが前方を向いた状態で取り出し部に置かれる。
【0059】
尚、上記では、最初に第2領域R2が抵抗付与部33に接触する場合を説明したが、最初に第4領域R4が抵抗付与部33に接触する場合は以下のように作用する。即ち、載置部31の投入部から容器20が投入されると、容器20が斜め前方に向かって移動し、第4領域R4が抵抗付与部33に接触する。そして、第4領域R4と抵抗付与部33との間で滑りが生じるため、容器20は回転をすることなく、容器20は回転を停止したまま、左ガイド32aにより案内されながら前方に向かって移動(スライド)する。これにより、容器20は、第1識別標記23aが前方を向いた状態で取り出し部に置かれる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る陳列システム10においては、陳列装置30の投入部から容器20が投入される際に、識別標記23が陳列装置30の前方以外の方向を向いていたとしても、容器20は取り出し部では識別標記23が前方を向いた状態で陳列されることとなる。
また、抵抗付与部33を側部21aの上部から上方に行くに従って外形が小さくなるように形成されたネック部21bに接触させることにより、容器20に摩擦力を生じさせるので、抵抗付与部33をデッドスペースとなりやすい容器20のネック部21bと対向する部分(容器20の外周面の延長線とネック部21bの最上部の水平線とネック部21bとによって囲まれる領域)に配置することができるため、陳列装置30に抵抗付与部33を設けたとしても装置が大きくなることを抑制することができる。
【0061】
このように、本実施形態に係る陳列システム10においては、容器20は、識別標記23が付された中央部の一例としての側部21aと、内容物を排出させる排出部の一例としての缶蓋22と、側部21aと缶蓋22とを連結し側部21aから缶蓋22の方へ行くに従って外形が小さくなるように形成された連結部の一例としてのネック部21bとを有する。陳列装置30は、容器20を移動させる移動手段の一例としての載置部31と、載置部31により移動させられる容器20のネック部21bに接触し容器20の移動をガイドするガイド部32とを有する。そして、容器20のネック部21bは、陳列装置30のガイド部32に接触することによりガイド部32からの抗力を用いて容器20を回転させ、識別標記23を特定の方向に向ける第1の接触部の一例としての第1領域R1あるいは第3領域R3と、識別標記23が特定の方向を向いている場合にガイド部32に接触し、ガイド部32に対して容器20を滑らせる第2の接触部の一例としての第2領域R2あるいは第4領域R4とを備える。
【0062】
また、本実施形態における陳列システム10は、摩擦係数が大きい第1領域R1あるいは第3領域R3で容器20の回転を生じさせ、摩擦係数が小さい第2領域R2あるいは第4領域R4で容器20を所定の方向を向いたまま滑らせることにより、容器20が自動的に所定の位置で所定の方向を向くようになっているものである。このため、第1領域R1および第3領域R3は第1の摩擦係数を有する第1の領域、第2領域R2および第4領域R4は第2の摩擦係数を有する第2の領域と見なすこともできる。また、抵抗付与部33は、左ガイド32aから容器20に付与される抗力を増加させる機能を有しており、抗力増加部材として捉えることができる。
【0063】
また、上記では、陳列装置30においてガイド部32の抵抗付与部33をガイド部32の全長に亘り設けていたが、図9(a)、(b)に示すように、抵抗付与部33をガイド部32の全長に亘って設けない構成としてもよい。この場合、容器20の識別標記23が前方を向いた状態になってからは、容器20は抵抗付与部33に接触することがないため、抵抗付与部33から抗力を受けることなく、容器20は識別標記23が前方を向いた状態のまま、取り出し部へ向かって移動(スライド)する。
また、本実施形態では、左ガイド32aに抵抗付与部33を設けたが、右ガイド32bに抵抗付与部33を設けても良い。その場合は、載置部31が右ガイド32b側の方が左ガイド32a側よりも下方に位置するように傾斜して配置される必要がある。
【0064】
また、本実施形態では、載置部31に対し左右方向の傾斜を付与することで容器20を抵抗付与部33に接触させたが、左右方向における傾斜を付与しないでも容器20を抵抗付与部33に接触させることができる。例えば、右ガイド32b側に板バネ等の付勢部材を設け、この付勢部材を用いて容器20を抵抗付与部33に接触させることができる。
【0065】
また、上述した実施形態では、第2領域R2(第4領域R4)におけるトップコート層26の表面の凹凸を、第1領域R1(第3領域R3)におけるトップコート層26の表面の凹凸よりも大きくすることで、第2領域R2(第4領域R4)の摩擦係数が、第1領域R1(第3領域R3)の摩擦係数よりも小さくなるように構成した。
ところで、容器20の回転/非回転には、例えばトップコート層26を構成する材料や抵抗付与部33を構成する材料なども影響する。このため、第2領域R2(第4領域R4)におけるトップコート層26の表面の凹凸が、第1領域R1(第3領域R3)におけるトップコート層26の表面の凹凸よりも小さい場合でも、第2領域R2(第4領域R4)の摩擦係数が、第1領域R1(第3領域R3)の摩擦係数よりも小さくなるように構成することが可能な場合がある。
【0066】
尚、上記実施形態では、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bを異なる場合について説明したが、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bが同一の形態としてもよい。その場合、ネック部21bの第1領域R1と第3領域R3とを区別する必要はなく、また、第2領域R2と第4領域R4とを区別する必要はない。かかる場合、ネック部21bは、周方向に、第1領域R1、第2領域R2、第1領域R1、第2領域R2の順に設ければよい。
【0067】
−第2の実施形態−
第2の実施形態に係る陳列システム10においては、容器20のネック部21bの上に、シール部材またはテープ部材を貼付することにより、識別標記23が付された側部21aと缶蓋22とを連結する連結部の表面の摩擦係数を互いに異ならせる点に特徴がある。
【0068】
図10(a)、(b)は、第2の実施形態に係る容器20の正面図および背面図であり、図11は、第2の実施形態に係る容器20の他の一形態について説明するための図である。
本実施形態では、ネック部21bのインキ層25は、第1の実施形態に係るインキ層25と異なり、第1のインキ層25aと第2のインキ層25bの区別なく、全て第1のインキ層25aと同様に形成されている。また、ネック部21bのトップコート層26は、第1の実施形態に係るトップコート層26と異なり、第1のトップコート層26aと第2のトップコート層26bの区別なく、全て第1のトップコート層26aと同様に形成されている。そして、図10(a)、(b)に示すように、ネック部21bにおける第2領域R2および第4領域R4に、第1領域R1および第3領域R3の表面の摩擦係数よりも摩擦係数が小さいテープ部材またはシール部材(以下、これらをまとめて単に「テープ部材」と称す。)を貼付する。これにより、ネック部21bの外周面は、周方向に、テープ部材が貼付された2つの領域と、テープ部材が貼付されていない2つの領域との、4つの領域に区分けされ、隣接する領域の摩擦係数は互いに異なっている。そして、本実施形態でも、第1領域R1および第3領域R3の表面の摩擦係数は、第2領域R2および第4領域R4に貼付されたテープ部材の表面の摩擦係数よりも大きくなるように構成されている。
【0069】
第1領域R1(第3領域R3)の表面よりも摩擦係数が小さいテープ部材は、例えば、テフロン(登録商標)加工が施された部材、フッ素系の樹脂(PTFE、PFA、PVDF等)の部材、あるいは、超高分子量ポリエチレンフィルム等のフィルムテープ部材等であることを例示することができる。
尚、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、第1領域R1の表面の摩擦係数および第3領域R3の表面の摩擦係数は等しくなるように構成され、第2領域R2および第4領域R4に貼付されたテープ部材は同じ物を用い、その表面の摩擦係数は等しくなるように構成されている。
【0070】
このように、かかる場合においては、容器20の側部21aと缶蓋22とを連結する連結部は、ネック部21bと、ネック部21bの上に貼付されたテープ部材とを有している。そして、連結部は、陳列装置30のガイド部32に接触することによりガイド部32からの抗力を用いて容器20を回転させ、識別標記23を特定の方向に向ける第1の接触部の一例としての、ネック部21bの第1領域R1あるいは第3領域R3と、識別標記23が特定の方向を向いている場合にガイド部32に接触し、ガイド部32に対して容器20を滑らせる第2の接触部の一例としての、ネック部21bの第2領域R2あるいは第4領域R4上に貼付されたテープ部材とを備える。
【0071】
尚、上記では、第2領域R2および第4領域R4に、第1領域R1および第3領域R3の表面の摩擦係数よりも摩擦係数が小さいテープ部材を貼付したが、逆に第1領域R1および第3領域R3に、第2領域R2および第4領域R4の表面の摩擦係数よりも摩擦係数が大きいテープ部材を貼付しても良い。
【0072】
また、上記では、ネック部21bの周方向に部分的にテープ部材を貼付している構成について説明したが、図11に示すように、ネック部21bの全周に、摩擦係数が異なる4つの領域が形成されたテープ部材を貼付してもよい。かかる場合は、貼付する前に、貼付するテープ部材に対して、部分的にテープ部材の摩擦係数とは異なる塗料を塗布することで、摩擦係数を異ならせ、容器20の識別標記23との位置関係を合わせて貼り付ければよい。
【0073】
例えば、テープ部材として樹脂テープ部材を用い、樹脂テープ部材の摩擦係数よりも小さな摩擦係数を有する塗料(例えば、フッ素系樹脂塗料)を部分的に塗布する。そして、テープ部材の摩擦係数よりも小さな摩擦係数を有する塗料を塗布した領域が識別標記23の上方に存在しないように、テープ部材をネック部21bの全周に貼り付ければよい。
また、逆に、例えば、テープ部材としてテフロン(登録商標)テープ部材を用い、テフロン(登録商標)テープ部材の摩擦係数より大きな摩擦係数を有する塗料を部分的に塗布する。そして、テープ部材の摩擦係数よりも大きな摩擦係数を有する塗料を塗布した領域が識別標記23の上方に存在するように、テープ部材をネック部21bの全周に貼り付ければよい。
【0074】
−第3の実施形態−
本実施形態では、上部に開口部が形成された缶胴と、内周面にねじ部が形成され缶胴の上部に形成された開口部を封鎖するキャップ部とを有する金属製ボトル缶の場合や、樹脂によって形成されるいわゆるペットボトルの場合について説明する。
図12は、容器20が金属製ボトル缶の場合を示した斜視図である。また、図13(a)は、容器20がペットボトルの場合の正面図であり、同図(b)は背面図である。
【0075】
容器20が金属製ボトル缶の場合、第1の実施形態と同様に、容器20の缶胴のネック部21bの外周面を形成することができる。即ち、ネック部21bの外周面を上記インキや上記塗料により塗り分けることによって、周方向に、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、第4領域R4の順に4つの領域に区分し、隣接する領域の摩擦係数を互いに異ならせることができる。尚、金属製ボトル缶に形成される第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、および第4領域R4は、例えば、ネック加工を行なう前に形成することができる。
また、図12に示すように、容器20のネック部21bに、摩擦係数が異なる4つの領域が形成されたフィルム(ラベルシール(シュリンクフィルムが多い))60を装着してもよい。かかる場合は、装着する前に、装着するフィルム60に対して、フィルム60自体の摩擦係数とは異なる塗料を部分的に塗布することで、摩擦係数を異ならせ、容器20の識別標記23との位置関係を合わせて装着すればよい。あるいは、装着するフィルム60自体の全域に塗料を塗布することとし、摩擦係数が互いに異なる塗料にて塗分けてもよい。
【0076】
このように、かかる場合においては、容器20の連結部は、ネック部21bと、ネック部21bの上に装着されたフィルム部材とを有している。そして、連結部は、第1の接触部の一例としての、ネック部21bの第1領域R1あるいは第3領域R3上のフィルムと、第2の接触部の一例としての、ネック部21bの第2領域R2あるいは第4領域R4上のフィルムとを備える。
【0077】
また、図13(a)、(b)に示すように、容器20がペットボトルの場合は、自販機などにおいて詰まりを発生させないようにするため、容器20に巻き付くように装着されているフィルム70に滑性を持たせるための塗料が塗られている場合がある。そこで、この種のフィルムを利用して、上記第2領域R2、第4領域R4に相当する領域を形成することができる。即ち、フィルム70に、第1識別標記23aの上方に位置するネック部21bに、容器20の一部を露出させた第1領域R1に相当する第1露出部71aを形成する。また、第2識別標記23bの上方に位置するネック部21bに、容器20の一部を露出させた第3領域R3に相当する第2露出部71bを形成する。
【0078】
そして、上記第1露出部71a、第2露出部71bが形成されたフィルム70を容器20に装着することによって、上記実施形態で例示した容器と同様の機能を付与することができる。即ち、識別標記23が陳列装置30の左右を向いている場合には、例えば第1露出部71aが抵抗付与部33に接触するようになり、この第1露出部71aを通じて容器20に回転力が付与される。この結果、例えば第2識別標記23bが陳列装置30の前方を向くようになる。その一方で、識別標記23が陳列装置30の前方を向いている場合には、抵抗付与部33とフィルム70とが接触する状態となり、抵抗付与部33とフィルム70との間で滑りが生じる。このため、容器20は、識別標記23が前方を向いた状態で陳列装置30の手前側まで移動してくる。
【0079】
−第4の実施形態−
上記実施形態では、いずれも容器20の識別標記23が、第1識別標記23aと、第1識別標記23aが存在する位置と周方向に180度ずれた位置に存在する第2識別標記23bとを有している場合の例を示したが、本実施形態では、識別標記23が円周上に180度の位置関係にない場合について説明する。
図14(a)、(b)は、本実施形態における容器20の上面図(缶蓋は不図示)である。
【0080】
図14(a)に示すように、容器20の識別標記23が、第1識別標記23aと、第1識別標記23aが存在する位置と周方向に180度ずれた位置に存在しない第2識別標記23bとを有している場合についても、第2領域R2または第4領域R4がガイド部32に接触している時に、識別標記23が前方を向くように、識別標記23の位置とガイド部32の位置との関係を計算し、第1領域R1〜第4領域R4の領域巾を均一にせずに設定することができる。
また、同図(b)のように、識別標記23が第1識別標記23aと、第2識別標記23bと、第3識別標記23cとを有し、互いに周方向に180度ずれた位置に存在しない場合は、R1、R3、R5を摩擦係数の大きい領域として、R2、R4、R6を摩擦係数の小さい領域として、第2領域R2、第4領域R4、第6領域R6のいずれかの領域がガイド部32に接触している時に、識別標記23が前方を向くように、識別標記23の位置とガイド部32の位置との関係を計算し、第1領域R1〜第6領域R6の領域巾を均一にせずに設定することができる。
【0081】
識別標記23が円周上に180度の位置関係にない容器20の場合でも、識別標記23の位置とガイド部32の位置との関係を計算し、摩擦係数の大きい領域と摩擦係数の小さい領域とを設定することにより、上記実施形態で例示した容器と同様の機能を付与することができる。
【0082】
このように、かかる場合においては、容器20のネック部21bは、陳列装置30のガイド部32に接触することによりガイド部32からの抗力を用いて容器20を回転させ、識別標記23を特定の方向に向ける第1の接触部の一例としての第1領域R1あるいは第3領域R3あるいは第5領域R5と、識別標記23が特定の方向を向いている場合にガイド部32に接触し、ガイド部32に対して容器20を滑らせる第2の接触部の一例としての第2領域R2あるいは第4領域R4あるいは第6領域R6とを備える。
【0083】
−第5の実施形態−
本実施形態では、ネック部21bに段付きネック加工が施された容器20について説明する。
図15(a)は本実施形態に係る容器20の正面図であり、図15(b)は容器20の背面図であり、図15(c)は図15(a)におけるS部を拡大した図であり、ネック部21bの拡大図である。
【0084】
図15(a)、(b)に示すように、容器20のネック部21bには4段の段付きネック加工が施されている。また、ネック部21bの外周面は、周方向に、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、第4領域R4の順に4つの領域に区分けされており、隣接する領域の摩擦係数は互いに異なっている。そして、第1領域R1の摩擦係数と第3領域R3の摩擦係数とは等しく、第2領域R2の摩擦係数と第4領域R4の摩擦係数は等しくなるように構成されている。また、第1領域R1および第3領域R3の摩擦係数は、第2領域R2および第4領域R4の摩擦係数よりも大きくなるように構成されている。そして、第1領域R1は、第1識別標記23aの上方に存在し、第3領域R3は、第2識別標記23bの上方に存在している。尚、第1領域R1(第3領域R3)および第2領域R2(第4領域R4)は、第1の実施形態や第2実施形態と同様に形成することができる。
【0085】
図15(c)に示すように、ネック部21bは、1段目ネック210と、2段目ネック220と、3段目ネック230と、4段目ネック240とを備えている。また、1段目ネック210〜4段目ネック240の各々は、直径がほぼ一定である平坦部211と、平坦部211の上方側の端部と連結され上方に行くに従って外形が小さくなるように形成された曲面部212とを有している。そして、1段目ネック210の曲面部212の上方側の端部は2段目ネック220の平坦部211の下方側の端部と連結され、2段目ネック220の曲面部212の上方側の端部は3段目ネック230の平坦部211の下方側の端部と連結されている。また、3段目ネック230の曲面部212の上方側の端部は4段目ネック240の平坦部211の下方側の端部と連結されている。
【0086】
尚、本実施形態に係る容器20のネック部21bに抵抗付与部33を接触させる場合、抵抗付与部33は、ネック部21bの各段の平坦部211に接触させることが望ましい(図15(c)参照)。なぜなら、抵抗付与部33をネック部21bの各段の曲面部212に接触させると、容器20の上下の動き、左右の傾きに対して、抵抗付与部33とネック部21bとの接触面積が変化してしまうためである。このような場合、接触面積が一定とならないため、抵抗付与部33の径の寸法や材質を決めることが困難となる。
【0087】
ここで、本発明者等は、上記第5の実施形態で示した容器20と、図16に示す陳列装置30とを用いて、以下の実験を行った。
【0088】
本実験で用いた容器20は、外径66mmの350ml用缶であり、ネック部21bに4段の段付きネック加工が施されている(図15参照)。尚、本実験では、ネック部21bの外周面が全て第1領域R1(第3領域R3)の表面状態と同様に形成されている容器20(以下、容器20Aと称する)と、ネック部21bの外周面が全て第2領域R2(第4領域R4)の表面状態と同様に形成されている容器20(以下、容器20Bと称する)とを用意した。即ち、2種類の容器20を用意した。付言すると、第1領域R1〜第4領域R4の4つの領域がネック部21bに設けられた容器20ではなく、第1領域R1における表面状態と同様の表面状態を有した領域がネック部21bの全周に亘り形成された容器20(容器20A)と、第2領域R2における表面状態と同様の表面状態を有した領域がネック部21bの全周に亘り形成された容器20(容器20B)を用意した。
【0089】
一方、本実験で用いた陳列装置30は、図16(a)〜(c)に示すように、板状部材により構成され容器20を載せる載置部31と、載置部31の左右両側に配置され容器20の移動を案内するガイド部32と、ガイド部32に設けられ容器20のネック部21bに接触して摺動抵抗(摩擦抵抗)を付与する抵抗付与部33(長さL1=250mm)と、透明に形成されるとともに載置部31の手前側の一側辺に配置され容器20の前方方向の移動を停止させる停止板34とを備えている。また、ガイド部32は、左ガイド32aと、右ガイド32bとを備えている。
【0090】
載置部31は、容器20が置かれる側の面に、左ガイド32a側に配置された第1ローラ群31aと、右ガイド32b側に配置された第2ローラ群31bとを備えている。ここで、抵抗付与部33から第1ローラ群31aの右ガイド32b側端部までの長さL2は45mmであり、各ローラ群は容器20の移動方向に沿った回転が可能であり且つ前方方向に並べられた複数のロール状部材31dを有している。また、載置部31と前後方向の水平面とが角度θAをなすように、載置部31は手前側が奥側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。また、載置部31と左右方向の水平面とが角度θBをなすように、載置部31は左ガイド32a側の方が右ガイド32b側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。尚、本実験では、容器20が過剰に回転することを抑制するため、抵抗付与部33の長さL1と同じ長さのテープ部材35を第2ローラ群31bに貼付し、第2ローラ群31bの一部を固定した。
【0091】
尚、上述したように、抵抗付与部33は、ネック部21bの各段の平坦部211に接触させることが望ましい(図15(c)参照)。そこで、本実験では、抵抗付与部33がネック部21bの各段の平坦部211と接触するように抵抗付与部33を配置した。尚、本実験では、抵抗付与部33はウレタンの丸棒材(硬度A90度)により形成した。
【0092】
また、本実験では、載置部31と前後方向の水平面との角度θA(以下、前後方向の角度θAと称する場合がある)と、載置部31と左右方向の水平面との角度θB(以下、左右方向の角度θBと称する場合がある)とを変化させるとともに、上述した容器20Aおよび容器20Bが陳列装置30の投入部から取り出し部まで移動するまでの間に、それぞれの容器が回転した角度(回転角度)を測定した。
【0093】
図17(a)〜(c)は、実験結果を示したものである。
図17(a)の場合(L2=45mm,θA=4°,θB=2°の場合)、容器20Aの2段目ネック220に抵抗付与部33を接触させると容器20Aは約70°回転し、容器20Bの2段目ネック220に抵抗付与部33を接触させると容器20Bはほとんど回転しなかった。また、容器20Aの4段目ネック240および容器20Bの4段目ネック240のいずれに抵抗付与部33を接触させても容器20Aおよび容器20Bはほとんど回転しなかった。
【0094】
図17(b)の場合(L2=45mm,θA=5°,θB=2°の場合)、容器20Aの2段目ネック220に抵抗付与部33を接触させると容器20Aは約60°回転し、容器20Bの2段目ネック220に抵抗付与部33を接触させると容器20Bはほとんど回転しなかった。また、容器20Aの4段目ネック240および容器20Bの4段目ネック240のいずれに抵抗付与部33を接触させても容器20Aおよび容器20Bはほとんど回転しなかった。
【0095】
図17(c)の場合(L2=45mm,θA=4°,θB=3°の場合)、容器20Aの2段目ネック220に抵抗付与部33を接触させると容器20Aは約180°回転し、容器20Bの2段目ネック220に抵抗付与部33を接触させると容器20Bは約110°回転した。また、容器20Aの4段目ネック240に抵抗付与部33を接触させると容器20Aは約70°回転し、容器20Bの4段目ネック240に抵抗付与部33を接触させると容器20Bはほとんど回転しなかった。
【0096】
尚、上記実験結果にて容器20Aの回転角度は90°近くが好ましく、容器20Bの回転角度は0°に近くなることが望ましい。容器20Aのネック部21bの表面状態は、図2で示した容器20の第1領域R1や第3領域R3に採用されるものであり、抵抗付与部33に接触した際に容器20を90°近く回転させる必要があるからである。また、容器20Bのネック部21bの表面状態は、図2で示した容器20の第2領域R2や第4領域R4に採用されるものであり抵抗付与部33に接触した際に容器20を滑らせる必要があるからである。
【0097】
ここで上記の実験結果から、陳列装置30および容器20を構成する際の最適な条件を得ることができた。
まず陳列装置30の載置部31の傾斜角度が、前後方向の角度θA=4°,左右方向の角度θB=2°の場合や、前後方向の角度θA=5°,左右方向の角度θB=2°の場合、陳列装置30の抵抗付与部33をネック部21bの2段目ネック220に接触させることが望ましいことが分かった。
【0098】
図17(a)に示した条件(θA=4°,θB=2°の場合)では、図17(a)の符号171に示すように容器20Aの2段目ネック220に抵抗付与部33を接触させた場合の回転角度が90°近くとなり、符号172に示すように容器20Bの2段目ネック220に抵抗付与部33を接触させた場合の回転角度が0°近くとなったためである。
【0099】
また図17(b)に示した条件(θA=5°,θB=2°の場合)の場合も同様であり、図17(b)の符号174に示すように容器20Aの2段目ネック220に抵抗付与部33を接触させた場合の回転角度が90°近くとなり、符号175に示すように容器20Bの2段目ネック220に抵抗付与部33を接触させた場合の回転角度が0°近くとなったためである。
【0100】
また、ネック部21bのうちの上段のネック(具体的には、4段目ネック240)に抵抗付与部33を接触させる場合、載置部31の左右方向の角度θBを大きくすることが望ましいことが分かった。
ここで、陳列装置30の左右方向の寸法(幅寸法)を小さくするためには、デッドスペースとなりやすいネック部21bと対向する部分に抵抗付与部33を配置することが望ましくなる。そしてこの場合、ネック部21bの上部ほどデッドスペースが大きくなるため、ネック部21bの上部に向かうほど抵抗付与部33が配置しやすくなる。付言すると、例えば、1段目ネック210に対応させて抵抗付与部33を配置するよりも4段目ネック240に対応させて抵抗付与部33を配置する方が、抵抗付与部33を配置し易くなる。
【0101】
ところで、図17(a)に示した条件(θB=2°)にて、4段目ネック240に抵抗付与部33を接触させた場合、符号173に示したように回転角度が0°近くとなってしまった。付言すると、90°に近い回転角度が望まれるにもかかわらず0°に近い回転角度となってしまった。また図17(b)に示した条件(θB=2°)の場合も同様であり、4段目ネック240に抵抗付与部33を接触させた場合、符号176に示したように回転角度が0°近くとなってしまった。付言すると、90°に近い回転角度が望まれるにもかかわらず0°に近い回転角度となってしまった。即ち、これらの条件のように、左右方向の角度θBが2°であり、且つ、4段目ネック240に抵抗付与部33を接触させた場合、90°に近い回転角度が望まれるにもかかわらず0°に近い回転角度が得られる結果となった。
【0102】
その一方で、図17(c)に示した条件(θB=3°の場合)では、図17(c)の符号177に示すように、4段目ネック240に抵抗付与部33を接触させた場合の回転角度が90°近くとなった。付言すると、左右方向の角度θBが2°の場合、上記のように回転角度が0°に近くなってしまったが、左右方向の角度θBを3°にすることにより、回転角度を90°に近いものとすることができた。これらにより、ネック部21bのうちの上段のネックに抵抗付与部33を接触させる場合、載置部31の左右方向の角度θBを大きくすることが望ましいことが分かる。
【0103】
以上、第1の実施形態〜第5の実施形態を用いて本発明を説明した。本発明に係る実施形態では、上記のように、抵抗付与部33をネック部21bに接触させることにより、陳列装置30の投入部から容器20が投入される際に、識別標記23が陳列装置30の前方以外の方向を向いていたとしても、取り出し部では識別標記23が前方を向いた状態で容器20は陳列される。また、ネック部21bに接触させることにより、抵抗付与部33をデッドスペースとなりやすい容器20のネック部21bと対向する部分(容器20の外周面の延長線とネック部21bの最上部の水平線とネック部21bとによって囲まれる領域)に配置することができるため、陳列装置30に抵抗付与部33を設けたとしても装置が大きくなることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…陳列システム、20…容器、21…缶胴、23a…第1識別標記、23b…第2識別標記、24…缶体、25…インキ層、26…トップコート層、30…陳列装置、31…載置部、32…ガイド部、33…抵抗付与部、34…停止板、40…陳列ケース、50…印刷機、60…フィルム、70…フィルム、R1…第1領域、R2…第2領域、R3…第3領域、R4…第4領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填された容器と、当該容器を陳列する陳列装置と、を備える陳列システムであって、
前記容器は、標記が付された中央部と、前記内容物を排出させる排出部と、当該中央部と当該排出部とを連結し当該中央部から当該排出部の方へ行くに従って外形が小さくなるように形成された連結部と、を有し、
前記陳列装置は、前記容器を移動させる移動手段と、当該移動手段により移動させられる当該容器の前記連結部に接触し当該容器の移動をガイドするガイド部と、を有し、
前記容器の前記連結部は、前記陳列装置の前記ガイド部に接触することにより当該ガイド部からの抗力を用いて当該容器を回転させ、前記標記を特定の方向に向ける第1の接触部と、当該標記が当該特定の方向を向いている場合に当該ガイド部に接触し、当該ガイド部に対して当該容器を滑らせる第2の接触部と、
を備えることを特徴とする陳列システム。
【請求項2】
前記第1の接触部および前記第2の接触部は、前記連結部の周方向に交互に形成されていることを特徴とする請求項1記載の陳列システム。
【請求項3】
前記第1の接触部および前記第2の接触部のいずれか一方が、他方の接触部よりも表面に大きな凹凸を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の陳列システム。
【請求項4】
前記第1の接触部および前記第2の接触部は塗布材料により形成され、または、当該第1の接触部および当該第2の接触部の少なくともいずれか一方がテープ部材もしくはシール部材又はフィルム部材により形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の陳列システム。
【請求項5】
前記標記は、前記第2の接触部が一方向を向いている場合に当該一方向と略直交する方向に向くように当該第2の接触部と予め定められた所定の位置関係を有して前記中央部に付されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の陳列システム。
【請求項6】
陳列物に接触し当該陳列物の移動をガイドするガイド部を備えた陳列装置に陳列され回転可能な容器であって、
標記が付された中央部と、
内容物を排出させる排出部と、
前記中央部と前記排出部とを連結し当該中央部から当該排出部の方へ行くに従って外形が小さくなるように形成された連結部と、
を有し、
前記連結部に設けられ、前記標記が特定の方向以外の方向を向いている場合に前記陳列装置の前記ガイド部に接触し、当該ガイド部からの抗力を用いて前記容器を回転させ、当該標記を当該特定の方向に向ける第1の接触部と、
前記連結部に設けられるとともに前記連結部の周方向において前記第1の接触部が設けられた箇所とは異なる箇所に設けられ、前記標記が前記特定の方向を向いている場合に前記陳列装置の前記ガイド部に接触し、当該ガイド部に対して前記容器を滑らせる第2の接触部と、
を備えたことを特徴とする容器。
【請求項7】
前記第1の接触部および前記第2の接触部は、前記連結部の周方向に交互に形成されていることを特徴とする請求項6記載の容器。
【請求項8】
前記第1の接触部および前記第2の接触部のいずれか一方が、他方の接触部よりも表面に大きな凹凸を有していることを特徴とする請求項6又は7に記載の容器。
【請求項9】
前記第1の接触部および前記第2の接触部は塗布材料により形成され、または、当該第1の接触部および当該第2の接触部の少なくともいずれか一方がテープ部材もしくはシール部材又はフィルム部材により形成されていることを特徴とする請求項6乃至8の何れかに記載の容器。
【請求項10】
前記標記は、前記第2の接触部が一方向を向いている場合に当該一方向と略直交する方向に向くように当該第2の接触部と予め定められた所定の位置関係を有して前記中央部に付されていることを特徴とする請求項6乃至8の何れかに記載の容器。
【請求項11】
陳列物に接触し当該陳列物の移動をガイドするガイド部を備えた陳列装置に陳列され回転可能な容器であって、
標記が付された中央部と、
内容物を排出させる排出部と、
前記中央部と前記排出部とを連結し当該中央部から当該排出部の方へ行くに従って外形が小さくなるように形成された連結部と、
を有し、
前記連結部は、第1の摩擦係数を有する第1の領域と、周方向において当該第1の領域が設けられた箇所とは異なる箇所に設けられ、当該第1の摩擦係数よりも小さい第2の摩擦係数を有する第2の領域と
を備えたことを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−130904(P2011−130904A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292567(P2009−292567)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)