説明

陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法並びにその方法により製造された陽極酸化ポーラスアルミナ

【課題】大面積試料に対しても再現性よく、容易に最適化された陽極酸化条件に制御、維持することにより、細孔が高い規則性をもって配列されている所望の形態の陽極酸化ポーラスアルミナを確実に作製できるようにする。
【解決手段】アルミニウム材を陽極酸化するに際し、第一段階目の陽極酸化を実施した後、陽極酸化電圧、電解液濃度の少なくとも一方を変更して第二段階目以降の陽極酸化を実施することを特徴とする陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法、およびその方法により製造された陽極酸化ポーラスアルミナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極酸化処理条件をより適切に制御することにより、規則性の高い細孔配列を容易に実現できるようにした陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法、並びにその方法により製造された陽極酸化ポーラスアルミナに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムを酸性あるいはアルカリ性電解液中で陽極酸化することにより表面に形成される多孔性酸化皮膜は、膜面に対し垂直に配向した微小な細孔を有することから各種機能材料への応用が検討されている。陽極酸ポーラスアルミナの幾何学構造は、アルミニウムの表面に形成されるセルと呼ばれる筒状構造の集合体からなり、各セルの中心に細孔が位置している。セルのサイズ、換言すれば、細孔の間隔は、陽極酸化のための化成電圧にほぼ比例し、およそ2.5nm/Vの関係を有することが知られている。
【0003】
陽極酸化ポーラスアルミナにおいて、セル配列、あるいは細孔配列の規則性は、作製条件に依存し、理想的には、細孔が欠陥や配列の乱れなく、三角格子状に配列した構造で示される。以下、本願においては、このように隣接する三角格子が実質的に等しい形状(たとえば、正三角形)を有する配列を、理想三角格子状の配列と言う。しかし、細孔が理想三角格子状に配列された陽極酸化ポーラスアルミナは、特定の場合を除いて得ることはできない。陽極酸化ポーラスアルミナにおける細孔配列の規則性は、作製する条件に大きく依存し、適切な条件下で陽極酸化を行った場合には、ある範囲の領域で細孔が縦、横数個あるいはそれ以上の個数の範囲で欠陥なく三角格子を形成できるが、これら理想細孔配列を形成する部分が各ドメインを形成してしまい、隣接するドメイン境界部では、配列が乱れた細孔配列の欠陥が集積する。
【0004】
一方、陽極酸化に先立ち、地金の表面にテクスチャリング処理により窪み配列の形成を行うと、各窪みが陽極酸化の初期において細孔発生の開始点として機能することから、細孔が理想三角格子状に配列したポーラスアルミナを得ることができるようになる(例えば、非特許文献1)。このような手法を用いると、比較的簡便に高い規則性を有するポーラスアルミナを得ることができるが、作製可能なポーラスアルミナのサイズは、テクスチャリング処理に用いるモールドのサイズに制限されるため、大面積の試料作製が困難であるといった問題点がある。そのため、大面積のアルミニウム材の表面に継ぎ目なく細孔が規則的に配列したポーラスアルミナの形成を行うためには、最適化された条件下で陽極酸化を行う手法が適している。また、このような手法に基づけば、平板形状のアルミニウム材だけでなく、曲率を有する表面など、様々な表面形状を有するアルミニウム材に、高規則性ポーラスアルミナの形成を行うことができる。
【0005】
これまでに、高規則性ポーラスアルミナの形成が可能な条件がいくつか見出されている(例えば、非特許文献2、特許文献1)。特許文献1においては、細孔周期が150nmから250nmの範囲での陽極酸化ポーラスアルミナでは、細孔が縦、横6×6個以上の範囲で三角格子状に欠陥なく配列した陽極酸化ポーラスアルミナの作成条件が示されている。しかしながら、規則配列が得られる高電解液濃度、高化成電圧条件における陽極酸化においては、陽極酸化電流が著しく高くなり、それにともなう過剰な反応熱のため温度上昇が著しく、安定な陽極酸化が困難となる問題があった。過剰な反応熱は、試料サイズが大きくなるとともに著しくなることから、大面積試料の作製は、困難であった。なお、未だ出願未公開の段階にあるが、先に本出願人により、特願2009−222660号、特願2010−215100号に、過剰な熱の効率的な除去を可能にする手法として、電解液以外の熱媒体を接触させ、試料の温度制御を行う手法が提案されている。しかし、本手法によれば、温度が制御された熱媒体を試料に接触させながら陽極酸化を行うことが必要になることから、製造コストの上昇を招くという問題点が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−256751号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Masuda, H. Yamada, M. Satoh, H. Asoh, M. Nakao, and T. Tamamura, Appl. Phys. Lett. Vol. 71, 2770 (1997)
【非特許文献2】H. Masuda and K. Fukuda, Science vol. 268, 1466 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、大面積試料に対しても再現性よく、容易に最適化された陽極酸化条件に制御、維持することにより、細孔が高い規則性をもって配列されている所望の形態の陽極酸化ポーラスアルミナを確実に作製できるようにした陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法、並びにその方法により製造された陽極酸化ポーラスアルミナを提供することにある。
【0009】
ここで、細孔が規則的に配列した陽極酸化ポーラスアルミナとは、少なくとも、縦、横3×3個以上、好ましくは、4×4個以上、より好ましくは、6個×6個以上、さらに好ましくは、10個×10個以上にわたって細孔が欠陥をもたずに理想的な三角格子状に配列された状態を示す。上述の如く、陽極酸化ポーラスアルミナにおいて、これら理想配列部分はドメイン構造を形成し、隣接ドメイン間には欠陥や配列の乱れが存在することから、試料全面にわたっての細孔の理想配列を意味するものではないものの、陽極酸化ポーラスアルミナの細孔配列構造に鑑みれば、理想配列部分の形成およびその領域のサイズ(細孔個数)は、陽極酸化ポーラスアルミナにおける規則性を定量的に評価する際の指標となり得るものであり、陽極酸化ポーラスアルミナの各種分離用フィルター、ナノインプリント用モールドとしての利用など、様々な応用においても有益に寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような知見、技術思想に基づき完成されたものである。すなわち、通常の陽極酸化手法においては、著しく高い陽極酸化電流を生じ、過剰な反応熱を発生するおそれのあった高濃度電解液、高化成電圧条件下における陽極酸化に関して、あらかじめ一定厚さ以上の陽極酸化皮膜を形成し、その後、所定の陽極酸化条件で陽極酸化を行うことにより電流を抑制し、同時に過剰な反応熱の発生を防止することにより、安定な陽極酸化を可能とし、さらに、電解液の濃度、化成電圧を適切に設定することにより、細孔が三角格子状に理想配列した陽極酸化ポーラスアルミナが得られることが明らかとなった。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明に係る陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法は、アルミニウム材を陽極酸化するに際し、第一段階目の陽極酸化を実施した後、陽極酸化電圧、電解液濃度の少なくとも一方を変更して第二段階目以降の陽極酸化を実施することを特徴とする方法からなる。なお、本発明においては、二段階の陽極酸化は勿論のこと、三段階等、二段階以上の陽極酸化を行う場合も含まれる。また、陽極酸化電圧、電解液濃度の少なくとも一方を変更したプロセスを段階的に実施する場合は勿論のこと、とくに陽極酸化電圧については、段階的ではなく、第一段階目の陽極酸化における陽極酸化電圧に対し、第二段階目以降の陽極酸化における陽極酸化電圧を連続的に変化させる場合も含まれる。
【0012】
この本発明に係る陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法においては、まず、第一段階目の陽極酸化により、所定厚さ以上の陽極酸化皮膜が形成され、しかる後に陽極酸化電圧、電解液濃度の少なくとも一方を変更した所定の陽極酸化条件で第二段階目以降の陽極酸化が実施される。互いに異なる陽極酸化条件にて二段階以上の陽極酸化を行うことにより、陽極酸化工程全体を通して陽極酸化電流が高くなりすぎないようにし、それにともなって過剰な反応熱により温度上昇が大きくなりすぎることを防止できるようにしたものである。このような本発明に係る方法を用いれば、陽極酸化にともなう著しく高い電流を抑制し、過剰な反応熱の発生を抑えることで、安定な陽極酸化を可能とし、所定の細孔周期、細孔径で細孔が三角格子状に規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを確実に作製することが可能になる。陽極酸化において、過剰な発熱は、試料表面の著しい荒れ、更には、試料の破壊を引き起こす。本発明に係る方法手法によれば、陽極酸化のみにより細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナが得られることになり、各種分野において、より効率のよい利用が可能になる。ここで、「陽極酸化のみにより」とは、「前述のようなテクスチャリング処理を行うことなく、陽極酸化の条件を特定の条件に制御することのみにより」ということを意味する。
【0013】
本発明に係る陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法においては、第一段階目の陽極酸化により所定厚さ以上の陽極酸化皮膜(陽極酸化層)を形成してから第二段階目以降の陽極酸化に移行するが、この第一段階目の陽極酸化層の厚さとしては、例えば、10μm以上とすることができる。より広い化成範囲で安定な第二段階目以降の陽極酸化を可能にし、より高い規則性を実現するため、第一段階目の陽極酸化層の厚さを10μm以上とすること、さらには、第一段階目の陽極酸化層の厚さを30μm以上とすること、さらには、第一段階目の陽極酸化層の厚さを100μm以上とすることができる。第一段階目の陽極酸化層の厚さを何μm以上とするかは、第二段階目以降の陽極酸化条件と関連させて、さらには、得ようとする細孔の理想三角格子状配列の目標形態と関連させて選択することができる。
【0014】
本発明における細孔の理想三角格子状の配列としては、例えば、細孔が縦、横3個×3個以上の範囲で理想三角格子状に配列された陽極酸化ポーラスアルミナを作製することができる。より好ましくは、細孔が縦、横4個×4個以上の範囲で理想三角格子状に配列された陽極酸化ポーラスアルミナを作製することができる。さらに好ましくは、細孔が縦、横6個×6個以上の範囲で理想三角格子状に配列された陽極酸化ポーラスアルミナを作製することができる。さらに好ましくは、細孔が縦、横10個×10個以上の範囲で理想三角格子状に配列された陽極酸化ポーラスアルミナを作製することができる。
【0015】
本発明において使用される電解液の種類は、とくに限定されず、代表的な電解液として、シュウ酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液を挙げることができる。電解液にシュウ酸を用いた場合には、通常、化成電圧を60V以上に設定して低電圧化成を安定して行うことは、アルミニウム材から生じる反応熱の影響により困難である。特に、濃度が、0.3M以上の高濃度シュウ酸を用いる陽極酸化においては、反応にともなう発熱が著しく、試料の安定な陽極酸化は、困難となる。また、硫酸においても、30V以上の化成電圧においては、同様に過剰な反応熱による安定な陽極酸化が困難となる。本発明における二段階以上の陽極酸化条件を採る方法を用いることにより、陽極酸化にともなう電流を抑制し、過剰な反応熱の除去が可能となることから、これら、高電圧条件下においても安定な陽極酸化を行うことができる。
【0016】
例えば、電解液としてシュウ酸水溶液を用いる場合には、第二段階目以降の陽極酸化において、濃度0.2M以上のシュウ酸、あるいは濃度0.5M以上のシュウ酸、あるいは濃度0.8M以上のシュウ酸を用いることができる。また、第二段階目以降の陽極酸化において、40V〜90Vの範囲の化成電圧で陽極酸化することができ、さらには、シュウ酸の濃度に対応させて40V〜90Vの範囲から最適な化成電圧を設定することができる。また、第一段階目の陽極酸化においては、濃度0.1M以上のシュウ酸を用いることができ、第一段階目の陽極酸化において、40V以上の化成電圧で陽極酸化することができる。
【0017】
また、例えば、電解液として硫酸水溶液を用いる場合には、第二段階目以降の陽極酸化において、濃度3M以上の硫酸を用いることができ、第二段階目以降の陽極酸化において、30V〜50Vの範囲の化成電圧で陽極酸化することができる。また、第一段階目の陽極酸化において、濃度2M以上の硫酸を用いることができ、第一段階目の陽極酸化において、10V以上の化成電圧で陽極酸化することができる。
【0018】
また、本発明に係る陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法においては、第一段階目の陽極酸化から電解液が接触するアルミニウム材の陽極酸化部位の背面側部位を冷却することにより(例えば、電解液とは別の熱媒体で冷却することにより)、第二段階目以降の陽極酸化のための化成電圧の上限値を高めることが可能であり、より広い化成範囲で安定な第二段階目以降の陽極酸化を行うことが可能である。
【0019】
また、本発明に係る陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法においては、上記第一段階目、第二段階目以降の陽極酸化を実施した後、酸化物層の少なくとも一部を一旦除去し(あるいは酸化物層の全部を一旦除去し)、酸化物層の形成により残されている窪みを起点に再度陽極酸化を行うこともできる。第一段階目、第二段階目以降の陽極酸化による規則配列された細孔の一部またはその細孔に基づく規則配列された窪みを開始点として再度の陽極酸化が行われることになるので、最終的に形成される細孔も規則的に配列されたものとなる。さらに、酸化物層を一旦除去した後、陽極酸化と細孔の孔径拡大処理を繰り返すことでテーパー形状の細孔を形成することもできる。
【0020】
また、本発明では、上記のような陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法で得られた陽極酸化ポーラスアルミナ、または、それを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用い、インプリントプロセスにより、ポリマーまたは無機材料の表面に所望の凹凸パターンを形成することを特徴とする、規則表面を有するポリマーまたは無機材料の製造方法についても提供される。
【0021】
本発明に係る陽極酸化ポーラスアルミナは、上記のような方法により製造され、細孔の少なくとも一部が規則配列したものからなる。
【0022】
この場合、前述の如くシュウ酸浴で化成する場合には、例えば、細孔の周期が90〜225nmの範囲にある陽極酸化ポーラスアルミナとして作製可能である。また、前述の如く硫酸浴で化成する場合には、例えば、細孔の周期が60〜160nmの範囲にある陽極酸化ポーラスアルミナとして作製可能である。
【0023】
また、陽極酸化ポーラスアルミナにおける規則配列した細孔については、縦、横3個×3個以上の範囲で理想三角格子状に配列されている形態とすることが可能であり、縦、横4個×4個以上の範囲で理想三角格子状に配列されている形態、縦、横6個×6個以上の範囲で理想三角格子状に配列されている形態、さらには縦、横10個×10個以上の範囲で理想三角格子状に配列されている形態とすることも可能である。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明によれば、条件を変更した二段階以上での陽極酸化を行うことにより、細孔が三角格子状に規則的に配列した所望の陽極酸化ポーラスアルミナを容易にかつ確実に得ることが可能となる。また、従来の手法では困難であった、大面積のアルミニウム材の陽極酸化も安定に行うことが可能となるため、細孔が三角格子状に規則配列した大面積陽極酸化ポーラスアルミナの作製も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の陽極酸化の実施態様を示す概略構成図である。
【図2】本発明における陽極酸化の一実施態様を示す概略構成図である。
【図3】本発明において溶解により酸化物層を選択除去後、再陽極酸化により表面から細孔が規則配列された陽極酸化ポーラスアルミナを形成する手法の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明にもとづき、シュウ酸を電解液として用い様々な第一段階目の陽極酸化条件下で得られた規則性陽極酸化ポーラスアルミナを走査型電子顕微鏡で観察した図である。第二段階目の陽極酸化は、0.8Mシュウ酸、16℃、80V、1時間とし、第一段階目の酸化層の厚さは150μm一定とした。
【図5】実施例10で示すシュウ酸を電解液として得られた規則性陽極酸化ポーラスアルミナを走査型電子顕微鏡で観察した図である。
【図6】実施例14で示す硫酸を電解液として得られた規則性陽極酸化ポーラスアルミナを走査型電子顕微鏡で観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、比較のために、通常の陽極酸化の様子を示している。通常の陽極酸化においては、アルミニウム材1に対して、目的の幾何学形状の細孔2を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得るためには、所定の電解条件(電解液種類、濃度、化成電圧、または化成電流、温度)において一定時間陽極酸化を施すことで、所望の厚さの陽極酸化皮膜3を得るが、陽極酸化条件を変化させて陽極酸化を行うことはない。
【0027】
図2は、本発明の一実施態様に係る陽極酸化の様子を示している。本発明においては、目的とする幾何学構造を形成するプロセスに先立ち、アルミニウム材1に対して、所定の厚さの第一段階目の陽極酸化を行う。その後、第二段階目以降の陽極酸化を施すことにより、所定の幾何学構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得る。以下、二段階の陽極酸化の場合について説明する。このとき、第二段階目の陽極酸化においては、化成電圧、浴濃度の少なくとも一つを変化させる。第一段階目の陽極酸化により形成された酸化層4(陽極酸化ポーラスアルミナ層)は、第二段階目の陽極酸化時に、過剰な電流が流れ、過剰に発熱するのを阻害するのに有効に機能する。これによって、第二段階目の陽極酸化が望ましい状態にて安定して行われ、所望の酸化層5(陽極酸化ポーラスアルミナ層)が形成される。過剰な電流の抑制に有効な第一段階目の陽極酸化層4の厚さは、10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは100μm以上が望ましい。
【0028】
これまでも、陽極酸化皮膜をAl地金から剥離し、フィルター等の機能材料として用いることを目的に陽極酸化電圧を減少させる手法が、知られているが(例えば、特開61−88495号公報)、これは、化成電圧を低下させることにより、皮膜底部のバリア層の厚みを低減させ、皮膜の剥離を容易にするための処理であり、第二段階目の陽極酸化アルミナの細孔配列に規則性は得られない。
【0029】
本発明に係る方法においては、第一段階目の陽極酸化層の形成により安定に第二段階目の陽極酸化を実施することが可能となることから、広範な条件から規則化に適した陽極酸化条件を選択することが可能となり、特に、比較的大きな細孔周期で規則化に適する高化成電圧、高濃度条件下における陽極酸化が可能となる。本手法のこのような利点は、高化成電圧条件、高濃度条件下で細孔配列の規則化が進行する条件下で細孔配列が規則化した陽極酸化ポーラスアルミナの形成を可能にする。シュウ酸を例にとれば、濃度0.3M以上の電解液中において、化成電圧60V以上の化成電圧を印加した場合、高電流密度にともなう過剰な発熱により安定な陽極酸化が困難となり、規則配列有する陽極酸化ポーラスアルミナを得ることはできない。一方、第一段階目の陽極酸化により20μm以上の陽極酸化層を形成した場合には、同様の条件においても安定な陽極酸化が可能となり、この結果、規則細孔配列を有する陽極酸化ポーラスアルミナが得られる。
【0030】
シュウ酸を電解液として用いる陽極酸化において、規則配列を有するポーラスアルミナを形成するためには、第二段階目の化成電圧40Vから90Vの範囲で、より好ましくは、70V〜90Vの範囲で陽極酸化することが好ましい。また、第二段階目の陽極酸化に用いるシュウ酸電解液の濃度を0.2M以上、より好ましくは、0.7M以上の濃度とすることが望ましい。また、第二段階目の陽極酸化層を厚さ10μm、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上形成することが望ましい。これは、第二段階目の陽極酸化において、酸化層の増大に伴い細孔配列の規則化が進行することによる。第二段階目の陽極酸化ポーラスアルミナにおいては、細孔底部で最も高い規則性を有することから、陽極酸化終了後、地金アルミニウムをヨード飽和メタノール溶液等のエッチング溶液により選択的に溶解除去し、更に、細孔底部の孔が塞がったバリア層部分をリン酸等によりエッチングを施すことで、開孔(貫通孔)を有するポーラスアルミナを得ることもできる。得られたポーラスアルミナの細孔配列は、試料を走査型電子顕微鏡で観察を行うことで確認することができる。
【0031】
また、図3に示すように、第二段階目の陽極酸化終了後、例えばクロム酸・リン酸混合溶液を用い酸化皮膜6を溶解除去した後、同一の電圧条件下再度陽極酸化を行うことで、バリア層7の配列に対応した窪み8の配列から細孔が発生することで、試料表面から細孔9が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナ10を得ることができる。本プロセスにより得られるポーラスアルミナの細孔配列は、第二段階目の陽極酸化により形成されたポーラスアルミナ底部と同一の細孔配列を有することから、上記地金アルミニウムを溶解し、バリア層を溶解除去して細孔配列を観察する手法に代え、細孔配列の観察・評価法としても用いることができる。
【0032】
陽極酸化により形成された酸化物層を一旦溶解除去した後、陽極酸化と孔径拡大処理を施せば、テーパー形状を有する細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得ることもできる。
【0033】
シュウ酸を電解液として用いる陽極酸化において、形成される陽極酸化ポーラスアルミナの規則化条件につい詳細な検討を加えた結果、一定厚さ以上の第一段階目の陽極酸化を行うことに加え、第一段階目の陽極酸化条件が、第二段階目に上記条件のもと形成される陽極酸化ポーラスアルミナの規則性に影響を及ぼすことが明らかとなった。すなわち、第一段階目の陽極酸化をシュウ酸濃度0.1M以上、化成電圧40V以上の条件で、より好ましくは、0.1Mにおいては、化成電圧50V以下、0.3Mにおいては、化成電圧60V以下で陽極酸化することが規則ポーラスアルミナを得るために望ましい(図4)。これは、第一段階目の陽極酸化により形成されるポーラスアルミナの構造が、第二段階目の陽極酸化において安定な陽極酸化の維持、細孔配列の規則化に影響を及ぼすことによる。
【0034】
硫酸を電解液として用いる陽極酸化においては、第二段階目の陽極酸化における化成電圧を30Vから50Vの範囲で、より好ましくは、40〜50Vとして陽極酸化することが好ましい。また、第二段階目の硫酸濃度を、3M以上、より好ましくは5M以上、さらに好ましくは8M以上とすることが望ましい。第二段階目の陽極酸化層を厚さ20μm、より好ましくは、30μm以上形成することが望ましい。第二段階目の陽極酸化において、酸化層の増大に伴い、細孔配列の規則化が進行する。
【0035】
硫酸を電解液として用いる陽極酸化において、形成される陽極酸化ポーラスアルミナの規則化条件について詳細な検討を加えた結果、一定厚さ以上の第一段階目の陽極酸化を行うことに加え、第一段階目の陽極酸化条件が、第二段階目に上記条件のもと形成される陽極酸化ポーラスアルミナの規則性に影響を及ぼすことが明らかとなった。すなわち、第一段階目の陽極酸化を硫酸濃度2M以上、化成電圧10V以上の条件で陽極酸化することが規則ポーラスアルミナを得るために望ましい。
【0036】
本発明に係る方法を前述した特願2009−222660号、2010−2151000号に記載の試料背面から冷却を行う手法と組み合わせることで、第二段階目の陽極酸化において安定に陽極酸化が可能な陽極範囲を拡大することができる。すなわち、シュウ酸を電解液として用いた場合、背面冷却法を併用することで陽極酸化が可能な電圧範囲が100Vに、また硫酸を電解液として用いた場合には、陽極酸化可能な電圧範囲は、80Vまで拡大され、細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナが得られる。
【0037】
このほか、陽極酸化により形成された酸化物層を一旦溶解除去したのち、同一の電圧条件で再度陽極酸化を行うことで、試料表面から細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得ることができる。
【0038】
また、陽極酸化により形成された酸化物層を一旦溶解除去した後、陽極酸化と孔径拡大処理を所定の回数施せば、テーパー形状の細孔が規則的に配列した、陽極酸化ポーラスアルミナを得ることもできる。
【0039】
陽極酸化処理の後、地金アルミニウムを除去し、さらに少なくとも細孔の一部に対して底部を除去すれば、細孔が貫通したメンブレンを得ることができる。
【0040】
また、本発明により得られた陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いれば、表面に、周期150nmから250nmの凹凸パターンを有する有機系材料(例えば、ポリマー)、無機系材料の作製が可能である。
【0041】
このように、本発明に係る陽極酸化ポーラスアルミナおよびその製造方法によれば、著しく高い陽極酸化電流、並びに過剰な反応熱のため安定な陽極酸化が困難であった陽極酸化条件下において安定な陽極酸化を可能とし、細孔が理想三角格子状に配列されたポーラスアルミナを得ることを可能とする。本手法により形成された高規則性配列の細孔を有するポーラスアルミナは、ナノインプリントをはじめとする機能性材料として幅広い分野に適用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づき、本発明のより具体的な実施の形態について説明する。
実施例1[シュウ酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、 0.8Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、中攪拌条件下において、40Vの定電圧で16時間陽極酸化を行い酸化皮膜を150μm形成した。その後、化成電圧を80Vに変化させ、同様の電解液を用いて1時間化成を行ない、皮膜底面で、200nm周期で細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0043】
実施例2[シュウ酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、 0.8Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、中攪拌条件下において、60Vの定電圧で酸化皮膜を150μm形成した。化成時間は、5時間15分で行った。その後、化成電圧を80Vに変化させ、0.8Mシュウ酸電解液を用いて1時間化成を行ない、200nm周期で細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0044】
実施例3[シュウ酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、 0.5Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、中攪拌条件下において、40Vの定電圧で酸化皮膜を150μm形成した。化成時間は、19時間30分で行った。その後、化成電圧を80Vに変化させ、0.8Mシュウ酸電解液を用いて1時間化成を行ない周期200nmで細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0045】
実施例4[シュウ酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、 0.3Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、中攪拌条件下において、40Vの定電圧で酸化皮膜を150μm形成した。化成時間は、25時間30分で行った。その後、化成電圧を80Vに変化させ、0.8Mシュウ酸電解液を用いて1時間化成を行ない周期200nmで細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0046】
実施例5[シュウ酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、 0.3Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、中攪拌条件下において、60Vの定電圧で酸化皮膜を150μm形成した。化成時間は、13時間30分で行った。その後、化成電圧を80Vに変化させ、0.8Mシュウ酸電解液を用いて1時間化成を行なうことで周期200nmで細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0047】
実施例6[シュウ酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、 0.1Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、中攪拌条件下において、40Vの定電圧で酸化皮膜を150μm形成した。化成時間は、46時間30分で行った。その後、化成電圧を80Vに変化させ、0.8Mシュウ酸電解液を用いて1時間化成を行なうことで周期200nmで細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0048】
実施例7[シュウ酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、 0.8Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、中攪拌条件下において、40Vの定電圧で3時間陽極酸化を行ない酸化皮膜を30μm形成した。その後、化成電圧を80Vに変化させ、 同様の電解液を用いて1時間化成を行ない、皮膜底面で、200nm周期で細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0049】
実施例8[シュウ酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、0.8Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、中攪拌条件下において、40Vの定電圧で5時間10分陽極酸化を行ない酸化皮膜を50μm形成した。その後、化成電圧を80Vに変化させ、同様の電解液を用いて1時間化成を行ない、皮膜底面で、200nm周期で細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0050】
実施例9[シュウ酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、 0.8Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、中攪拌条件下において、40Vの定電圧で16時間陽極酸化を行った。その後、化成電圧を90Vに変化させ、 0.8Mシュウ酸電解液を用いて1時間化成を行なうことで周期200nmで細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0051】
実施例10[シュウ酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、 0.8Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、中攪拌条件下において、40Vの定電圧で16時間陽極酸化を行った。その後、化成電圧を80Vに変化させ、同様の電解液を用いて1時間化成を行った。得られた皮膜をクロム酸・リン酸混合液を用い選択的に除去し、同一の化成電圧で再度陽極を行った。この際陽極酸化は、0.05Mシュウ酸電解液を用いて、5分間行った。この結果、周期200nmで、皮膜最表面から細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。図5に、得られた規則性陽極酸化ポーラスアルミナを走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す。
【0052】
実施例11[硫酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、8M硫酸を電解液とし、浴温16℃、強攪拌条件下において、20Vの定電圧で11分30秒陽極酸化を行った。その後、化成電圧を30Vに変化させ、同様の電解液を用いて30分化成を行なうことにより周期63nmの細孔周期で細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0053】
実施例12[硫酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、8M硫酸を電解液とし、浴温16℃、強攪拌条件下において、20Vの定電圧で11分30秒陽極酸化を行った。その後、化成電圧を50Vに変化させ、同様の電解液を用いて30分化成を行なうことで周期90nmで細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0054】
実施例13[硫酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、8M硫酸を電解液とし、浴温16℃、強攪拌条件下において、10Vの定電圧で36分陽極酸化を行った。その後、化成電圧を、50Vに変化させ、同様の電解液を用いて30分化成を行なうことで周期90nmで細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0055】
実施例14[硫酸電解液を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、8M硫酸を電解液とし、浴温16℃、強攪拌条件下において、20Vの定電圧で11分30秒陽極酸化を行った。その後、化成電圧を50Vに変化させ、同様の電解液を用いて30分化成を行った。得られた皮膜をクロム酸・リン酸子混合液を用い選択的に除去し、0.05Mシュウ酸を電解液として用い同一の化成電圧で再度陽極酸化を行った。この結果、周期90nmで皮膜最表面から細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。図6に、得られた規則性陽極酸化ポーラスアルミナを走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す。
【0056】
実施例15[シュウ酸電解液と背面冷却法を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、背面冷却陽極酸化装置に装着し、陽極酸化を行った。0.8Mシュウ酸を電解液とし、浴温16℃、背面冷却水温16℃で、流量は約5L/minで行った。40Vの定電圧で16時間陽極酸化を行い、その後、化成電圧を100Vに変化させ、同様の電解液を用いて1時間化成を行なうことで周期210nmで細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0057】
実施例16[硫酸電解液と背面冷却法を用いた陽極酸化ポーラスアルミナの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノールを用い電解研磨を施した後、背面冷却陽極酸化装置に装着し、陽極酸化を行った。 8M硫酸を電解液とし、浴温16℃、背面冷却水温16℃で、流量は約5L/minで行った。20Vの定電圧で11分30秒陽極酸化を行い、その後、化成電圧を80Vに変化させ、同様の電解液を用いて30分化成を行なうことで周期160nmで細孔が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る陽極酸化ポーラスアルミナは、高規則性多孔性材料として、各種フィルター材料、ナノインプリント用モールドや様々な機能性デバイス用材料として適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 アルミニウム材
2 細孔
3 陽極酸化ポーラスアルミナ
4 第一段階目の酸化層(陽極酸化ポーラスアルミナ層)
5 第二段階目の酸化層(陽極酸化ポーラスアルミナ層)
6 酸化皮膜
7 バリア層
8 窪み
9 細孔
10 陽極酸化ポーラスアルミナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材を陽極酸化するに際し、第一段階目の陽極酸化を実施した後、陽極酸化電圧、電解液濃度の少なくとも一方を変更して第二段階目以降の陽極酸化を実施することを特徴とする、陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項2】
第一段階目の陽極酸化における陽極酸化電圧に対し、第二段階目以降の陽極酸化における陽極酸化電圧を連続的に変化させる、請求項1に記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項3】
第一段階目の陽極酸化層の厚さを10μm以上とする、請求項1または2に記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項4】
第一段階目の陽極酸化層の厚さを20μm以上とする、請求項3に記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項5】
第一段階目の陽極酸化層の厚さを30μm以上とする、請求項4に記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項6】
第一段階目の陽極酸化層の厚さを100μm以上とする、請求項5に記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項7】
細孔が縦、横3個×3個以上の範囲で理想三角格子状に配列された陽極酸化ポーラスアルミナを作製する、請求項1〜6のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項8】
細孔が縦、横4個×4個以上の範囲で理想三角格子状に配列された陽極酸化ポーラスアルミナを作製する、請求項7に記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項9】
細孔が縦、横6個×6個以上の範囲で理想三角格子状に配列された陽極酸化ポーラスアルミナを作製する、請求項8に記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項10】
細孔が縦、横10個×10個以上の範囲で理想三角格子状に配列された陽極酸化ポーラスアルミナを作製する、請求項9に記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項11】
第二段階目以降の陽極酸化において、濃度0.2M以上のシュウ酸を用いる、請求項1〜10のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナ製造方法。
【請求項12】
第二段階目以降の陽極酸化において、濃度0.5M以上のシュウ酸を用いる、請求項1〜10のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナ製造方法。
【請求項13】
第二段階目以降の陽極酸化において、濃度0.8M以上のシュウ酸を用いる、請求項1〜10のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナ製造方法。
【請求項14】
第二段階目以降の陽極酸化において、40V〜90Vの範囲の化成電圧で陽極酸化する、請求項1〜13のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナ製造方法。
【請求項15】
第一段階目の陽極酸化において、濃度0.1M以上のシュウ酸を用いる、請求項1〜14のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項16】
第一段階目の陽極酸化において、40V以上の化成電圧で陽極酸化する、請求項1〜15のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項17】
第二段階目の陽極酸化層の厚さを10μm以上とする、請求項1〜16のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナ製造方法。
【請求項18】
第二段階目以降の陽極酸化において、濃度3M以上の硫酸を用いる、請求項1〜10のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナ製造方法。
【請求項19】
第二段階目以降の陽極酸化において、30V〜50Vの範囲の化成電圧で陽極酸化する、請求項1〜10、18のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナ製造方法。
【請求項20】
第一段階目の陽極酸化において、濃度2M以上の硫酸を用いる、請求項1〜10、18、19のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項21】
第一段階目の陽極酸化において、10V以上の化成電圧で陽極酸化する、請求項1〜10、18〜20のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項22】
第二段階目の陽極酸化層の厚さを20μm以上とする、請求項1〜10、18〜21のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項23】
第一段階目の陽極酸化から電解液が接触するアルミニウム材の陽極酸化部位の背面側部位を冷却することにより、第二段階目以降の陽極酸化のための化成電圧の上限値を高める、請求項1〜22のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナ製造方法。
【請求項24】
第一段階目、第二段階目以降の陽極酸化後、酸化物層の少なくとも一部を一旦除去し、再度陽極酸化を行う、請求項1〜23のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナ製造方法。
【請求項25】
酸化物層を一旦除去した後、陽極酸化と孔径拡大処理を繰り返すことでテーパー形状の細孔を形成する、請求項24に記載の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれかに記載の方法で得られた陽極酸化ポーラスアルミナ、または、それを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用い、ポリマーまたは無機材料の表面に凹凸パターンを形成することを特徴とする、規則表面を有するポリマーまたは無機材料の製造方法。
【請求項27】
請求項1〜25のいずれかに記載の方法により製造され、細孔の少なくとも一部が規則配列した陽極酸化ポーラスアルミナ。
【請求項28】
細孔の周期が90〜225nmの範囲にある、請求項1〜17、23〜25のいずれかに記載の方法により製造された陽極酸化ポーラスアルミナ。
【請求項29】
細孔の周期が60〜160nmの範囲にある、請求項18〜25のいずれかに記載の方法により製造された陽極酸化ポーラスアルミナ。
【請求項30】
規則配列した細孔が縦、横3個×3以上の範囲で理想三角格子状に配列されている、請求項27〜29のいずれかに記載の陽極酸化ポーラスアルミナ。
【請求項31】
規則配列した細孔が縦、横4個×4個以上の範囲で理想三角格子状に配列されている、請求項30に記載の陽極酸化ポーラスアルミナ。
【請求項32】
規則配列した細孔が縦、横6個×6個以上の範囲で理想三角格子状に配列されている、請求項31に記載の陽極酸化ポーラスアルミナ。
【請求項33】
規則配列した細孔が縦、横10個×10個以上の範囲で理想三角格子状に配列されている、請求項32に記載の陽極酸化ポーラスアルミナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−162769(P2012−162769A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24011(P2011−24011)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)