説明

陽極酸化皮膜及び陽極酸化処理方法

【課題】毒物及び劇物取締法に該当しない処理浴を用いた陽極酸化処理方法、及び該方法によって短時間で得られる硬質な陽極酸化皮膜を提供する。
【解決手段】処理浴2中に浸漬した、アルミニウム又はアルミニウム合金部材からなる処理部品1に電圧を印加することによるアルミニウム又はアルミニウム合金部材の陽極酸化処理方法であって、前記処理浴を、ヒドロキシ酸水溶液とし、前記電圧を、270V以上の値として調整するようにしてなることを特徴とする陽極酸化処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に施す陽極酸化皮膜及びその皮膜を得るための陽極酸化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン部品等に使用されるアルミニウム合金部材における耐久性及び耐摩耗性を向上させる方法の一つとして、アルミニウム合金部材の表面に、陽極酸化処理を施すことにより、硬質な陽極酸化皮膜を形成する方法が行われている。その中でも、特に硬質な(皮膜硬さが450HV以上の)超硬質陽極酸化皮膜を得るためには、陽極酸化処理浴としてシュウ酸が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、処理浴としてシュウ酸を用い、電圧100〜500Vで約20分の陽極酸化処理を施した後、100〜300℃の雰囲気中で15〜300分間の加熱処理を行うことで、皮膜硬さが500HVを超える陽極酸化皮膜を得ている。
【0004】
しかし、シュウ酸は、毒性物質であり、かつ、毒物及び劇物取締法の劇物に該当するため、周辺及び作業環境の安全、廃液処理のための厳重な配慮が必要である。また、薬液と廃液処理のコストが高いことも問題である。
【0005】
一方、硬質な陽極酸化皮膜を得るために、シュウ酸のみを処理浴として用いる方法の代替案として、硫酸を主とした処理浴に、シュウ酸又はクエン酸等のヒドロキシ酸を添加することによって、陽極酸化処理を行う方法が行われている(例えば、特許文献2)。上記したように、シュウ酸を単体で用いる方法では、硬質な陽極酸化皮膜が得られることから、毒物及び劇物取締法に該当しないクエン酸等のヒドロキシ酸を処理浴としても、硬質な陽極酸化皮膜が得られると考えられていた。しかし、従来の陽極酸化処理方法において処理浴をヒドロキシ酸とした場合、約100Vの印加電圧では無孔質の薄い皮膜、もしくは、100〜300Vの印加電圧での陽極火花放電では白い軟質の皮膜(特許文献3)しか得られなかった。さらに、特許文献3では、処理時間が10分以上と長いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−328187号公報
【特許文献2】特開平12−26997号公報
【特許文献3】特許第4098979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、毒物及び劇物取締法に該当しない処理浴を用いた陽極酸化処理方法、及び該方法によって短時間で得られる硬質な陽極酸化皮膜を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明によれば、処理浴中に浸漬した、アルミニウム又はアルミニウム合金部材からなる処理部品に電圧を印加することによるアルミニウム又はアルミニウム合金部材の陽極酸化処理方法であって、前記処理浴を、ヒドロキシ酸水溶液とし、前記電圧を、270V以上の値として調整するようにしてなることを特徴とする陽極酸化処理方法が提供される。
前記ヒドロキシ酸水溶液の好適な濃度は、10g/L以上の範囲である。
前記ヒドロキシ酸の好適なものとして、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、及び乳酸からなる群から選択されることが挙げられる。
また、本発明によれば、前記陽極酸化処理方法によって形成された陽極酸化皮膜が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の陽極酸化処理方法によれば、硬質な陽極酸化皮膜を短時間で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の陽極酸化処理方法を実施する電解装置の概略図である。
【図2】処理浴の濃度による皮膜硬さの変化の関係を示すグラフである。
【図3】処理浴の温度による皮膜硬さの変化の関係を示すグラフである。
【図4】印加電圧による皮膜硬さの変化の関係を示すグラフである。
【図5】印加電圧による皮膜硬さの変化の関係を示すグラフである。
【図6】処理部品と陰極との距離による皮膜硬さの変化の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る陽極酸化処理方法についてその一実施の形態を説明する。
本発明の一実施形態による陽極酸化処理方法は、処理浴と電源とを備える電解装置により実施することができる。図1に本実施形態に係る陽極酸化処理方法に用いる電解装置の一例を示す。図1に示す装置は、処理浴2と、陽極電送線3と、対の陰極板4と、陰極電送線5と、電源6とから構成され、主にアルミニウム又はアルミニウム合金部材からなる処理部品1を取り付けることができるようになっている。
【0012】
処理部品1は、陽極酸化処理対象となるものである。処理対象となるのは、アルミニウム又はアルミニウム合金部材である。用途により、Si等の添加物や、その他の不純物、あるいはそれらの両方が含まれているものであってもよく、含まれていないものであってもよい。アルミニウム合金部材には、例えば、アルミ鋳造材、アルミニウムダイカスト材、アルミニウム展伸材等がある。また、かかるアルミニウム又はアルミニウム合金部材の形状は、板状、棒状等があるが、特に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態においては、処理浴は、ヒドロキシ酸水溶液である。これは、毒物及び劇物取締法に該当せず、周辺及び作業環境の安全、廃液処理の観点から好適である。ヒドロキシ酸としては、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、及び乳酸等が挙げられる。
【0014】
処理浴2は十分な攪拌を行うことができる機構を備えている。発生する泡等による局所的な焼けを防ぐためである。処理液の攪拌を十分に行うことで、皮膜が均一に成長することを補助することができる。また、処理浴2は十分な冷却を行うことができる機構を備えている。高い電圧を印加することによって処理浴に高い電力が加わり、これに伴って高いジュール熱が発生するため、処理浴の温度を一定に保つためには、処理浴を十分に攪拌し、かつ冷却することが必要である。
【0015】
陰極板対4及び4aは処理部品を中心に、処理浴2中に、対向に配置される。処理浴に浸漬する各陰極板4及び4aは、処理部品の表面積の20倍以上の表面積を処理液中に浸漬することができるものが好ましい。均一な皮膜を得るために適切だからである。
処理浴中に配置される陰極板と処理部品との距離は、接触せず、かつ150mm以下であることが好ましい。この距離が近くとも接触しなければ、より硬い皮膜を得られるからであり、遠くとも150mm以下であれば、350HV以上の硬質陽極酸化皮膜を生成可能な条件となるからである。
【0016】
陽極電送線3は、アルミニウム又はアルミニウム合金部材からなる処理部品1を、電源6の陽極側に結線し、陰極電送線5は、陰極板4を電源6の陰極側に結線するものである。陽極、陰極への陽極電送線3、陰極電送線5は、処理部品1及び陰極板4及び4aの表面積1dmあたりに、20A以上の電流をストレスなく送電できるものを用いることができる。具体的には、電送線としては、銅線、銅板等を用いることができる。
【0017】
本実施形態における電解方法は、直流法、交直重畳法、PR法、パルス法、特許第4075918号に記載の方法のいずれの方法で行ってもよい。
【0018】
次に、図1に示す装置を用いた陽極酸化処理方法の各工程について説明する。
まず、処理浴中に浸漬したアルミニウム又はアルミニウム合金部材からなる処理部品1に陰極電送線5を取り付けて、処理浴2に浸漬する。
プラス電圧を印加する工程では、この状態で、処理部品1にプラス電圧を印加して電解処理を行う。
【0019】
皮膜厚さは用途によって異なり、例えば、20〜100μmとすることができるが、この範囲には限定されない。
【0020】
印加電圧の波形はサイン波、矩形波(パルス波)、三角波など、特に限定されない。また、繰返し印加する電圧は一定とすることが好ましい。皮膜厚さを処理時間で調節できるためである。
【0021】
本実施形態における印加電圧は270V以上であり、その上限値は1000Vである。この範囲であれば、350HV以上の硬質陽極酸化皮膜を生成可能となるからである。電解方法が直流法以外の場合では、陽極の最高電圧を印加電圧とすることができる。
【0022】
本実施形態における処理時間は、10分までの範囲で処理することが好ましい。この範囲であれば、350HV以上の硬質陽極酸化皮膜を生成可能となるからである。
【0023】
本実施形態における処理浴の濃度は10g/L以上であることが好ましく、その上限値は300g/Lであることが好ましい。処理浴の濃度が低くとも10g/L以上であれば、得られる陽極酸化皮膜が軟質となることはなく、高くとも300g/L以下であれば、陽極酸化皮膜の処理浴への溶解が進むことはないからである。
【0024】
本実施形態における処理浴の温度は、0〜100℃の範囲であればいずれであっても良く、より好ましくは0〜60℃である。この範囲であれば、皮膜硬さが450HV以上の陽極酸化皮膜を安定して得ることができるからである。
【0025】
以上のような本発明に係る陽極酸化処理方法によって、皮膜硬さが350HV以上で、かつ膜厚の厚い陽極酸化皮膜を短時間で得ることができる。さらに好ましい陽極酸化処理方法では、皮膜硬さが450HV以上で、かつ膜厚の厚い陽極酸化皮膜を短時間で得ることができる。
【0026】
本発明に係る陽極酸化処理方法によって得られる陽極酸化皮膜の外観は、処理部品としてアルミニウムを用いた場合では黒色であり、アルミニウム合金部材を用いた場合では灰色から黒色である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例等を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
試験例1(処理浴の濃度依存性)
純アルミニウムをテストピースとして、本発明に係る陽極酸化処理方法により陽極酸化処理を行い、処理浴の濃度による皮膜硬さの変化について試験を行った。処理浴は、10〜100℃のクエン酸水溶液を用いた。印加電圧は450Vと500Vとなるように印加し、処理時間は1、2、3分間で処理した。
得られた陽極酸化皮膜の膜厚については、Fischer製渦電流式膜厚測定器を用いて測定した。
得られた陽極酸化皮膜の皮膜硬さについては、島津製作所製ダイナミック超微小硬度計DUH−211を用いて、得られた皮膜の表面からの計装化押込み試験による測定値を、ビッカース硬さに換算した値とした。
試験例1の結果を図2及び表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
図2及び表1の結果は、処理浴の濃度が10g/L以上のとき、皮膜硬さが350HV以上の陽極酸化皮膜を得ることができることを示している。また、皮膜硬さが450HV以上の陽極酸化皮膜を得るためには、処理浴の濃度は10〜300g/Lであることが了解される。
なお、試験例には示していないが、処理浴としてリンゴ酸等のその他のヒドロキシ酸を用いた場合においても、試験例1と同様の結果が得られたことを本発明者らは確認している。
【0030】
試験例2(処理浴の温度依存性)
純アルミニウムをテストピースとして、本発明に係る陽極酸化処理方法により陽極酸化処理を行い、処理浴の温度による皮膜硬さの変化について試験を行った。処理浴は、20、50、100、200g/Lのクエン酸水溶液を用いた。印加電圧は450Vと500Vとなるように印加し、処理時間は1分間と3分間で処理した。得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さについては、試験例1と同様の方法で測定した。試験例2の結果を図3及び表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
図3及び表2の結果は、処理浴の温度が0〜100℃の範囲であればいずれであっても、皮膜硬さが350HV以上の陽極酸化皮膜を得ることができることを示している。また、皮膜硬さが450HV以上の陽極酸化皮膜を安定して得るためには、処理浴の温度は0〜60℃であることが了解される。
【0033】
試験例3(電圧の依存性)
純アルミニウムをテストピースとして、本発明に係る陽極酸化処理方法により陽極酸化処理を行い、印加電圧による皮膜硬さの変化について試験を行った。処理浴は、10℃と20℃、20、50、100g/Lのクエン酸水溶液を用いた。処理時間は1〜3分間で処理した。得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さについては、試験例1と同様の方法で測定した。試験例3の結果を図4及び表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
図4及び表3の結果は、印加電圧が270V以上のとき、皮膜硬さが350HV以上の陽極酸化皮膜を短時間で得ることができることを示している。また、実用的には、印加電圧は500V程度まで用いることが可能であるが、1000Vの印加電圧においても、硬質な陽極酸化皮膜を生成することを本発明者らは確認している。
【0036】
試験例4(電圧の依存性)
処理浴としてリンゴ酸水溶液を用いたことを除いて、試験例3と同様に行った。
試験例4の結果を図5及び表4に示す。
【0037】
【表4】

【0038】
図5及び表4の結果は、リンゴ酸水溶液でも、皮膜硬さが350HV以上の陽極酸化皮膜を得ることができることを示している。
【0039】
試験例5(処理部品と陰極との距離の依存性)
純アルミニウムを処理部品として、本発明に係る陽極酸化処理方法により陽極酸化処理を行い、処理部品と陰極との距離による皮膜硬さの変化について試験を行った。処理浴は、10℃、20g/Lのクエン酸水溶液を用いた。電圧は450Vとなるように印加し、処理時間は2分間とした。得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さについては、試験例1と同様の方法で測定した。試験例5の結果を図6に示す。
【0040】
図6の結果は、陰極は処理部品に対し、より近接している方が皮膜硬さの高い陽極酸化皮膜を得ることができることを示している。この結果から、処理部品と陰極との距離は、接触せず、かつ150nm以下であることが好ましく、この範囲であれば、皮膜硬さが350HV以上の陽極酸化皮膜を得ることが了解される。
【0041】
実施例1
純アルミニウムにおいて、本発明に係る陽極酸化処理方法により陽極酸化処理を行い、得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さを測定した。処理浴は、20℃、50g/Lのクエン酸水溶液を用いた。電圧は直流法により450Vとなるように印加し、処理時間は2分間とした。得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さについては、試験例1と同様の方法で測定した。
【0042】
実施例2
純アルミニウムにおいて、本発明に係る陽極酸化処理方法により陽極酸化処理を行い、得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さを測定した。処理浴は、0℃、20g/Lのクエン酸水溶液を用いた。電圧は直流法により450Vとなるように印加し、処理時間は1分間とした。得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さについては、試験例1と同様の方法で測定した。
【0043】
実施例3
アルミニウム合金展伸材A5052において、本発明に係る陽極酸化処理方法により陽極酸化処理を行い、得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さを測定した。処理浴は、20℃、50g/Lのクエン酸水溶液を用いた。電圧は直流法により450Vとなるように印加し、処理時間は2分間とした。得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さについては、試験例1と同様の方法で測定した。
実施例1〜3の結果を表5に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
表5より、実施例1において得られた陽極酸化皮膜の膜厚は78μmであった。また、皮膜硬さは516HVであった。実施例2において得られた陽極酸化皮膜の膜厚は81μmであった。また、皮膜硬さは518HVであった。実施例3において得られた陽極酸化皮膜の膜厚は8μmであった。また、皮膜硬さは400HVであった。これらの結果から、本発明に係る陽極酸化処理方法によって短時間で得られた膜厚の厚い陽極酸化皮膜は、皮膜硬さが350HV以上の硬質陽極酸化皮膜であることが確認された。さらには、本発明に係る陽極酸化処理方法によって短時間で得られた膜厚の厚い陽極酸化皮膜は、より好ましい条件下においては、皮膜硬さが450HV以上の超硬質陽極酸化皮膜であることが確認された。
【0046】
実施例4
純アルミニウムにおいて、本発明に係る陽極酸化処理方法により陽極酸化処理を行い、得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さを測定した。処理浴は、20℃、50g/Lの酒石酸水溶液を用いた。電圧は直流法により450Vとなるように印加し、処理時間は2分間とした。得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さについては、試験例1と同様の方法で測定した。
【0047】
比較例1
純アルミニウムにおいて、本発明に係る陽極酸化処理方法により陽極酸化処理を行い、得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さを測定した。処理浴は、ヒドロキシ酸ではない有機酸としてフマル酸を用い、温度は20℃、処理浴の濃度は6g/Lとした。フマル酸水溶液は、ヒドロキシ酸に比べ電流が流れやすく、高い電圧を確保するためには、濃度を低くしなければならなかった。電圧は400Vとなるように印加し、処理時間は3分間とした。得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さについては、試験例1と同様の方法で測定した。
【0048】
比較例2
純アルミニウムにおいて、本発明に係る陽極酸化処理方法により陽極酸化処理を行い、得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さを測定した。処理浴は、ヒドロキシ酸ではない有機酸として酢酸を用い、温度は20℃、処理浴の濃度は1g/Lとした。電圧は500Vとなるように印加し、処理時間は3分間とした。得られた陽極酸化皮膜の膜厚及び皮膜硬さについては、試験例1と同様の方法で測定した。
実施例4及び比較例1、2の結果を表6に示す。表6には、参考として実施例1の結果も合わせて示す。
【0049】
【表6】

【0050】
表6より、実施例4において得られた陽極酸化皮膜の膜厚は66μmであった。また、皮膜硬さは416HVであった。比較例1において得られた陽極酸化皮膜の膜厚は極薄かった。また、皮膜硬さは軟質であった。比較例2においては、陽極酸化皮膜は生成せず、膜厚及び皮膜硬さの測定は行えなかった。これらの結果から、処理浴としてヒドロキシ酸を用いた陽極酸化処理を行うことによって短時間で得られた膜厚の厚い陽極酸化皮膜は、皮膜硬さが350HV以上の硬質陽極酸化皮膜であることが確認された。
【符号の説明】
【0051】
1 処理部品
2 処理浴
3 陽極電送線
4、4a 対の陰極線
5 陰極電送線
6 電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理浴中に浸漬した、アルミニウム又はアルミニウム合金部材からなる処理部品に電圧を印加することによるアルミニウム又はアルミニウム合金部材の陽極酸化処理方法であって、
前記処理浴を、ヒドロキシ酸水溶液とし、
前記電圧を、270V以上の値として調整するようにしてなることを特徴とする陽極酸化処理方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシ酸水溶液の濃度が、10g/L以上であることを特徴とする請求項1に記載の陽極酸化処理方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシ酸が、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、及び乳酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の陽極酸化処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の陽極酸化処理方法によって形成されたことを特徴とする陽極酸化皮膜。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−122217(P2011−122217A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281941(P2009−281941)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)