説明

隅部材、並びに、内装入隅部納まり構造

【課題】入隅部の隙間の発生を防止できる隅部材、及び当該隅部材を用いた内装入隅部納まり構造を提供する。
【解決手段】隅部材1は屋内空間における入隅部18に配設される棒状の部材であり、弾性材で成形されている。隅部材1には、柔軟性を有する横突出片3と縦突出片5が設けられている。入隅部18に隅部材1を配設し、横突出片3や縦突出片5を押圧変形させながら、壁材21及び床材22を室内側から押し込み、施工する。隅部材1が弾性材で構成されており、かつ横突出片3と縦突出片5が柔軟性を有するので、押圧変形した隅部材1がシール材として機能し、入隅部18の隙間の発生を簡単かつ確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隅部材、並びに、内装入隅部納まり構造に関し、さらに詳細には、屋内空間における入隅部に配設される棒状の隅部材、並びに、当該隅部材を備えた内装入隅部納まり構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の屋内空間において、壁面と床面又は天井面との入隅部に隙間が生じていると、外から屋内に冷気が進入し、温熱快適性が損なわれるおそれがある。また、既存の壁面等の上から新たな壁材等を施工する場合には、前記の問題に加えて、室内からの水蒸気が前記隙間に進入し、新たに施工した壁材の裏面に結露が生じるおそれがある。そこで、入隅部に棒状の隅部材を配設したり、幅木や廻縁等の造作材を配設することにより、入隅部に隙間が生じないようにする工夫が行われている。
【0003】
入隅部に隙間が発生することを防止する隅部材の例として、特許文献1に記載の隅部材(建築コーナー部材)がある。この隅部材には軟質パッキン条部が突設されており、当該軟質パッキン条部に壁材等の端部を突き当てることで、隙間の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−94448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
住宅等の屋内空間における温熱快適性等を確実にするため、屋内空間における入隅部に隙間が生じないようにするさらなる工夫が求められている。そこで本発明は、簡単な構成をもって入隅部の隙間の発生を防止できる新規の隅部材、及び当該隅部材を用いた新規の内装入隅部納まり構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、屋内空間における壁面と床面又は天井面との入隅部に配設される棒状の隅部材であって、弾性材で形成されたものであり、壁面に接する垂直面と、床面又は天井面に接する水平面とを有し、垂直面に相対向する面に柔軟性を有する横突出片が形成され、水平面に相対向する面に柔軟性を有する縦突出片が形成されていることを特徴とする隅部材である。
【0007】
本発明の隅部材は屋内空間における入隅部に配設される棒状の部材であり、弾性材で形成されている。そして本発明の隅部材では、壁面に接する垂直面に相対向する面に、柔軟性を有する横突出片が形成され、床面又は天井面に接する水平面に相対向する面に、柔軟性を有する縦突出片が形成されている。本発明の隅部材は、弾性材で形成されているとともに柔軟性の突出片を備えているので、これらの突出片に壁材等の端部を接触させ、突出片を押圧変形させながら壁材等を施工することができる。その結果、突出片にシール性を発揮させることができ、入隅部の隙間の発生を簡単かつ確実に防止できる。
【0008】
同様の課題を解決するための請求項2に記載の発明は、屋内空間における壁面と床面又は天井面との入隅部に請求項1に記載の隅部材を配設し、壁面に、前記隅部材の縦突出片を押圧変形せしめて壁材を施工し、床面又は天井面に、前記隅部材の横突出片を押圧変形せしめて床材又は天井材を施工し、壁材と床材又は天井材との接合端部に造作材を配設したことを特徴とする内装入隅部納まり構造である。
【0009】
本発明の内装入り隅部納まり構造は、前記した本発明の隅部材を入隅部に配設するとともに、突出片を押圧変形させながら壁材等を施工し、さらに、幅木や廻縁等の造作材を配設したものである。本発明の内装入隅部納まり構造によれば、入隅部の隙間の発生を簡単かつ確実に防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の隅部材によれば、屋内空間における入隅部に隙間が発生することを簡単かつ確実に防止することができる。
【0011】
本発明の内装入隅部納まり構造についても同様であり、屋内空間における入隅部に隙間が発生することを簡単かつ確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る隅部材を示す斜視図である。
【図2】図1の隅部材を用いた内装入隅部納まり構造の一例を示す要部断面図である。
【図3】(a)及び(b)は図1の隅部材を用いた壁材等の施工方法の他の例を示す説明図であり、(a)は施工前の状態、(b)は施工後の状態を示し、(c)は(a)及び(b)に示す方法によって施工された内装入隅部納まり構造を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、発明の理解を容易にするために、各図面において、各部材の大きさや厚みについては一部誇張して描かれており、実際の大きさや比率等とは必ずしも一致しないことがある。さらに、本発明が以下の実施形態に限定されないことは勿論である。
【0014】
図1に示す本発明の一実施形態に係る隅部材1は、全体形状が棒状であり、本体部2、横突出片3、及び縦突出片5で構成されている。隅部材1は弾性材で一体的に形成されている。
【0015】
本体部2は断面略正方形状でかつ全体形状が棒状であり、隅部材1の基本骨格を構成している。本体部2は、垂直面6と水平面7を有している。垂直面6は、隅部材1の配設時において壁面に接する長方形状の面である。水平面7は、隅部材1の配設時に床面又は天井面に接する長方形状の面である。
【0016】
垂直面6に相対向する面8には、横突出片3が設けられている。横突出片3は面8の長手方向全体にわたって設けられた断面長方形状の突条であり、本体部2と一体的に形成されている。横突出片3は、面8の短手方向(図1の上下方向)における略中央の位置に形成されている。横突出片3は柔軟性を有し、変形容易である。
【0017】
水平面7に相対向する面10には、縦突出片5が設けられている。縦突出片5は面10の長手方向全体にわたって設けられた断面長方形状の突条であり、本体部2と一体的に形成されている。縦突出片5は、面10の短手方向(図1の左右方向)における略中央の位置に形成されている。縦突出片5は柔軟性を有し、変形容易である。
【0018】
垂直面6と水平面7の端部同士によって、角部11が形成されている。
【0019】
隅部材1を用いた壁材等の施工方法の一例について、図2を参照しながら説明する。この例では、既存の壁面15、床面16、及び天井面17の上に、新たな壁材21、床材22、及び天井材23を施工する。そして、壁面15と床面16との入隅部18、および壁面15と天井面17との入隅部19に、隅部材1を配設する。
【0020】
まず、入隅部18に隅部材1を設置する。設置の方向(姿勢)は、垂直面6が壁面15に面接触し、かつ水平面7が床面16に面接触する方向とする。このとき、隅部材1の角部11が、入隅部18の角(壁面15と床面16との交差線)と接することとなる。
【0021】
同様に、入隅部19に隅部材1を設置する。設置の方向(姿勢)は、垂直面6が壁面15に面接触し、かつ水平面7が天井面17に面接触する方向とする。このとき、隅部材1の角部11が、入隅部19の角(壁面15と天井面17との交差線)と接することとなる。
【0022】
続いて、壁面15、床面16、及び天井面17の上に、新たな壁材21、床材22、及び天井材23を施工する。具体的には、壁材21の下側端面を、入隅部18に設置した隅部材1の縦突出片5に突き当てる。同様に、壁材21の上側端面を、入隅部19に設置した隅部材1の縦突出片5に突き当てる。このとき、縦突出片5は押圧変形し、シール性を発揮する。
【0023】
また床材22の端面(図2では左側の端面のみ図示)を入隅部18に設置した隅部材1の横突出片3に突き当てる。同様に、天井材23の端面(図2では左側の端面のみ図示)を入隅部19に設置した隅部材1の横突出片3に突き当てる。このとき、横突出片3は押圧変形し、シール性を発揮する。
【0024】
最後に、壁材21と床材22との交差面(接合端部)に幅木26(造作材)を配設する。同様に、壁材21と天井材23との交差面(接合端部)に廻縁27(造作材)を配設する。これにより、隅部材1を利用した壁材21、床材22、及び天井材23の施工が完了し、内装入隅部納まり構造が形成される。
【0025】
本実施形態の内装入隅部納まり構造によれば、隅部材1が弾性材で構成されており且つ横突出片3と縦突出片5が柔軟性を有するので、隅部材1が押圧変形してシール材として機能し、入隅部18,19の隙間の発生を簡単かつ確実に防止することができる。その結果、入隅部18,19を通じて屋外の冷気が室内に進入することが防がれ、温熱快適性を容易に保つことができる。さらに、入隅部18,19を通じて室内からの水蒸気が進入することが防がれ、既存の壁面15等と新たな壁面21の裏面との隙間に結露が発生することを抑えることができる。
【0026】
図2に示した施工例では、壁材21等の端面を横突出片3又は縦突出片5に突き当てて施工した。一方、隅部材1の横突出片3と縦突出片5が柔軟性を有するものであることを利用した、別の施工方法も実施可能である。図3(a)〜(c)に示す施工方法では、壁材21等を室内側から壁面15等に向かって「押し込む」ことにより、壁材21等を施工する。
【0027】
床材22の施工を例にとって説明すると、まず、図3(a)に示すように、入隅部18に隅部材1を配置する。続いて、床材22を床面16に向かって押し込む。このとき、床材22の端部が、隅部材1の横突出片3の一部にかかるようにする。そうすると、柔軟性を有する横突出片3は、床材の端部によって押されて押圧変形し、屈曲する。その結果、図3(b)に示すように、横突出片3の上面(屈曲前の上側の水平面)の一部が床材22の端面と面接触し、図2と同様のシール性を発揮する。本実施形態では、床材22を室内側から押し込む構成を採用しているので、施工時の作業性が極めてよい。
【0028】
壁材21と天井材23についても、図3(a)、(b)に示す手順で施工することができる。
【0029】
図3(a)、(b)に示す手順で床材22を施工した場合の内装入隅部納まり構造を、図3(c)に示す。図3(c)に示す内装入隅部納まり構造では、横突出片3と縦突出片5がいずれも屈曲した状態で、床材22の端面と面接触している。その他の構成は、図2に示した内装入隅部納まり構造と構成が共通するので、説明を省略する。
【0030】
図3(c)に示す内装入隅部納まり構造においても、隅部材1が弾性材で構成されており且つ横突出片3と縦突出片5が柔軟性を有するので、押圧変形した隅部材1がシール材として機能し、入隅部18,19の隙間の発生を簡単かつ確実に防止することができる。その結果、入隅部18,19を通じて屋外の冷気が室内に進入することが防がれ、温熱快適性を容易に保つことができる。さらに、入隅部18,19を通じて室内からの水蒸気が進入することが防がれ、既存の壁面15等と新たな壁面21の裏面との隙間に結露が発生することを抑えることができる。
【0031】
上記した実施形態では、横突出片3と縦突出片5を、面8や面10の短手方向における略中央の位置に設けているが、略中央以外の位置に設けてもよい。例えば、面8の短手方向における中央から水平面7に近い位置あるいは遠い位置に、横突出片3を設けてもよい。同様に、面10の短手方向における中央から垂直面6に近い位置あるいは遠い位置に、縦突出片5を設けてもよい。さらに、上記した実施形態では、横突出片3と縦突出片5の断面形状が長方形状であるが、他の形状、例えば台形状であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 隅部材
3 横突出片
5 縦突出片
6 垂直面
7 水平面
8 面
10 面
15 壁面
16 床面
17 天井面
18 入隅部
19 入隅部
21 壁材
22 床材
23 天井材
26 幅木(造作材)
27 廻縁(造作材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内空間における壁面と床面又は天井面との入隅部に配設される棒状の隅部材であって、
弾性材で形成されたものであり、
壁面に接する垂直面と、床面又は天井面に接する水平面とを有し、
垂直面に相対向する面に柔軟性を有する横突出片が形成され、水平面に相対向する面に柔軟性を有する縦突出片が形成されていることを特徴とする隅部材。
【請求項2】
屋内空間における壁面と床面又は天井面との入隅部に請求項1に記載の隅部材を配設し、
壁面に、前記隅部材の縦突出片を押圧変形せしめて壁材を施工し、
床面又は天井面に、前記隅部材の横突出片を押圧変形せしめて床材又は天井材を施工し、
壁材と床材又は天井材との接合端部に造作材を配設したことを特徴とする内装入隅部納まり構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−23964(P2013−23964A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161580(P2011−161580)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、環境省、地球温暖化対策技術開発事業「既存住宅における断熱性向上のための薄型断熱内装建材に関する技術開発」委託契約業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】