説明

階段の取付け構造

【課題】左右に配設される側桁に踏み板を固着してなる階段本体を作業性よく、簡単に躯体に取付けることのできる階段の取付け構造を提供することである。
【解決手段】本発明に係る階段の取付け構造は、左右に配設される側桁1とこの側桁1に固着される踏み板2とからなる階段本体Aの該両側の側桁1、1の上端部11、11を、上階床に連なる躯体Kの垂直面に、一対の階段固定金具3、3を介して取り付ける階段取付構造において、この階段固定金具3を上記側桁1の上端部11を両側から挟持する一対の挟持片31、31とこの挟持片31、31を連結する連結片32とで横断面略コ字状に形成し、上記一対の階段固定金具3、3を水平方向に適宜間隔に調節してその連結片32、32を躯体Kの垂直面に固設し、各階段固定金具3、3の挟持片31、31で上記側桁1、1の上端部11、11を挟持、固設することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は階段の取付け構造に関する。さらに詳しくは、踏み板と該踏み板が取付けられる側桁とからなり、蹴込み板のないいわゆるオープン型階段に適用され得る階段の取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蹴込み板がなく、階段の昇降方向と略直角方向の階段側面部が開口した、いわゆるオープン型の階段はよく知られており、建物や屋外のバルコニー等でしばしば用いられている。上記オープン型階段の昇降部は踏み板と該踏み板が取付けられる側桁とからなり、上記側桁は通常、階段の昇降方向に向かって左右に各一本づつ設けられている。
【0003】
例えば、上記オープン型階段を構成する各踏み板と側桁とが木製の材料から形成されている場合、踏み板と側桁との接合は、施工現場において階段の階高寸法、水平寸法、上り切り段数等から算出された踏み板の左右端部を側桁に差し込み、互いに嵌合させる等の方法により行われている。
【0004】
また、上記側桁の上下端部の固定は、建築物の構造材、例えば上端部は2階床の受け梁に大入れ加工して固定し、下端部は1階床の大引けに大入り加工して固定する等の方法によって行われている。
【0005】
しかしながら、上記従来方法は、上記側桁の上下端部に大入れ、あり加工用に切り込み加工を施す必要があり、さらに建築物の受け梁や大引け等の構造材にも同様の切込み加工を必要とし、またボルト等の建築金物で取付け固定するため複雑で手間がかかるという問題がある。
【0006】
上記した問題を解決するため、例えば、特開2006−249752号公報にはオープン型階段の桁取付け構造が提案されている。すなわち、上記公報の図1、図5に示されているように外側挟持板と内側挟持板とからなる側桁挟持部が対をなして保持板で連設されるとともに、2本の側桁の上下端部を上記側桁挟持部で固着し、かつ、壁面および床面の所定位置に該側桁を取付け、固定する桁取付け構造が開示されている。
【0007】
そして、上記オープン型階段の桁取付け構造を施工することによって、職人の高度な技術を必要とせず、リフォームの際にも床仕上げ材や壁仕上げ材を解体する必要がなく、したがって施工が極めて簡単で、施工費用も安価にすみ、しかも、取付け精度と強度耐久性にも優れたオープン型階段の桁取付け構造を提供できる、とその効果が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−249752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特開2006−249752号公報のオープン型階段の桁取付け構造においては、一対の側桁挟持部が保持板で連設されているため、その図4に示されているように、上記保持板には、取付け孔として幅方向に細長い長孔が2カ所設けられ、オープン型階段の桁を取付ける際に幅方向に保持板を移動可能とし、左右に微調整を行って最適位置で2本の側桁が取り付けられるようにされている。
【0010】
しかしながら、たとえ、保持板に取付け孔として幅方向に細長い長孔を2カ所設けても、現場でオープン型階段を施工する際、作業性に劣り、また、調整寸法が長孔の長さ寸法を超える場合は施工ができないという問題が生じる。
【0011】
本願発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、左右に配設される側桁に踏み板を固着してなる階段本体を作業性よく、簡単に躯体に取付けることのできる階段の取付け構造を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る階段の取付け構造は、左右に配設される側桁とこの側桁に固着される踏み板とからなる階段本体の該両側の側桁の上端部を、上階床に連なる躯体の垂直面に、一対の階段固定金具を介して取り付ける階段取付構造において、この階段固定金具を上記側桁の上端部を両側から挟持する一対の挟持片とこの挟持片を連結する連結片とで横断面略コ字状に形成し、上記一対の階段固定金具を水平方向に適宜間隔に調節してその連結片を躯体の垂直面に固設し、各階段固定金具の挟持片で上記側桁の上端部を挟持、固設ことを特徴とする。
【0013】
ここで側桁としては、無垢の木材、集成材、LVL、合板芯の表面に突き板貼り、化粧樹脂シート貼り、化粧紙貼り等を施したものなどの木製材料、ステンレススティール、アルミニウム、塗装鋼板、鉄製の芯に樹脂シート貼りしたもの等金属製材料、その他各種材料をあげることができる。
【0014】
また、階段固定金具自体は、通常、ステンレススティール、亜鉛メッキ鋼板、塗装鋼板、真鍮メッキ鋼板、鋳物等の金属材料を横断面略コ字状に形成したものが用いられる。
【0015】
さらに、上記階段固定金具を構成する挟持片には、側桁を固着するためのビス、釘等の固着手段を貫通させる貫通孔が穿設されている。また、上記挟持片を連結する連結片にも、階段固定金具を躯体の垂直面に固着するためのビス、釘等の固着手段を貫通させる貫通孔が穿設されている。
【発明の効果】
【0016】
本願請求項1に記載の発明に係る階段の取付け構造は、踏み板を側桁に固着してなる階段本体の左右側桁の上端部を固定する一対の階段固定金具がそれぞれ独立して上階床に連なる躯体の垂直面に固定されるため、踏み板の取付け位置に応じて配設される側桁どうしの間隔に適宜対応することができる。そのため、現場で施工する際、左右側桁の上端部の取り付け位置に応じて最適の位置で階段固定金具を躯体の垂直面に固定できるため、作業性よく、迅速に階段本体を躯体に固設することができる。
【0017】
また、予め、踏み板組み付け金具を用いて踏み板を側桁に組み付け、ユニット化した階段本体を用いた場合でも、ユニット化製品の持つ公差にも対応して作業性よく階段本体を躯体に固設することができる。
【0018】
上記階段固定金具は、上記側桁の上端部を両側から挟持する一対の挟持片とこの挟持片を連結する連結片とで横断面略コ字状に形成されているため、連結片に穿たれた貫通孔を通してタッピングビス等の固着手段を挿通させ、躯体に固設することによって、しっかりと階段固定金具を躯体の垂直面に固設することができる。また、それぞれの階段固定金具の挟持片で上記側桁の上端部を挟持、固定するため、側桁がガタつくことなく階段本体をしっかりと、かつ簡単に躯体に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本願発明に係る階段固定金具を階段の昇降方向に向かって右前から視た状態を示す斜視図、(b)は上記階段固定金具を連結片側から視た状態を示す斜視図。
【図2】上記階段固定金具に側桁を固定した状態を示す平面図。
【図3】側桁と踏み板とからなる本願発明に係る階段本体の一部を示す部分側面図。
【図4】踏み板組み付け金具を示す斜視図。
【図5】本願発明に係る階段の取付け構造の実施例を示す一部断面側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願発明に係る階段の取付け構造の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。本実施形態においては、左右に配設される側桁として無垢の木材を用い、階段固定金具として厚手の亜鉛メッキ鋼板を横断面略コ字状に形成したものを用い、また、上記側桁に固着される踏み板として集成材を用いた場合について説明する。
【0021】
図1(a)は、本願発明に係る階段固定金具3を階段の昇降方向に向かって右前から視た状態を示す斜視図である。図1(a)に示すように、上記階段固定金具3は後記する側桁の上端部を両側から挟持する二つの挟持片31とこの挟持片31を連結する連結片32とで横断面略コ字状に形成されている。また、上記各挟持片31にはタッピングビス等の固着手段が挿通する貫通孔311が2カ所設けられている。
【0022】
図1(b)は、上記階段固定金具3を連結片32側から視た状態を示す斜視図である。図1(b)に示すように、連結片32にも図1(a)に示すのと同様に、上記階段固定金具3を図外躯体の垂直面に固設するためのタッピングビス等の固着手段が挿通する貫通孔321が2カ所設けられている。
【0023】
図2は、2個の階段固定金具3を水平方向に適宜間隔で躯体Kに固着して側桁1を固定した状態を示す平面図である。図2に示すように、2個の階段固定金具3、3はそれぞれ独立して取付けることができるため、左右に配設される側桁1、1どうしの間隔dが製造誤差によって多少バラツキがあっても、そのバラツキに適宜対応して該階段固定金具3、3の水平方向の取り付け位置を調整した後に、躯体Kの垂直面に固設される。また、該階段固定金具3、3互いに分離した独立部品であるから、側桁1、1の間隔幅が異なる他の階段本体(図示せず)にも容易に対応できる。
【0024】
図示するように各階段固定金具3は、二つの挟持片31を連結する連結片32に設けられた貫通孔321を通してタッピングビスTでしっかりと躯体Kの垂直面に固定される。そして、上記躯体Kに固定された階段固定金具3の挟持片31、31間に側桁1の上端部11が挟持され、各挟持片31、31に設けられた貫通孔311、311を通して上記上端部11は両側からタッピングビスTでしっかりと階段固定金具3に挟持、固着される。
【0025】
図3は、側桁1と踏み板2とからなり、2本の側桁1と複数の踏み板2とが、踏み板組み付け金具4で組み付けられた本願発明に係る階段本体Aの一部を示す部分側面図である。図4は上記踏み板組み付け金具4を示す斜視図である。
【0026】
図4に示すように、上記踏み板組み付け金具4は、点線で示す踏み板2を載置する踏み板載置部41と側桁1に固定される側桁固定部42とからなり、踏み板載置部41と側桁固定部42とには、それぞれビス孔411、421が穿設されている。
【0027】
上記階段本体Aは、予め2本の側桁1、1を所定の間隔で配設し、この側桁1に踏み板2を上記踏み板組み付け金具4で組み付けてユニット化して用いることができる。あるいは、現場において階段の階高寸法、水平寸法、上り切り段数等から算出された踏み板2を上記踏み板組み付け金具4を用いて側桁1に組み付け、ビス孔411、421を通してビス、ボルト・ナット等で現場施工で固定してもよい。
【0028】
図5は、バルコニーの出入り階段等、比較的高さのない上階に本願発明に係る階段の取付け構造を施工した実施例を示す一部断面側面図である。図5においては、予め、2枚の踏み板2a、2bを2個の側桁1に組み付けてユニット化した階段本体Aを階段固定金具3によって躯体Kに固定した形態を示す。
【0029】
図5に示すように、上記階段固定金具3は、その連結部32がタッピングビスTで躯体Kの垂直面に固定されるとともに、挟持片31が側桁1の上端部11をしっかりと挟持、固定し、階段本体Aは、側桁1がガタつくことなく、簡単に躯体Kに取付けられる。
【0030】
ここで、最上段の踏み板21は公知の方法、例えばビス固定、釘固定等の機械的方法、または前述した踏み板組み付け金具4で側桁1に固定される。このようにすることによって、最上段の踏み板21は、躯体Kの上面に敷設されたフローリング材等の床仕上げ材Fと突き合わせて施工できるため、例えばリフォーム時に、床仕上げ材Fに手を加えることなく、簡単に作業を行うことができる。
【0031】
なお、上記した実施形態においては、階段本体Aとして木製材料を用いた例について説明したが、階段本体A全体を金属製材料で構成してもよくその場合は上記踏み板組み付け金具4を用いる必要はなく、単に溶接加工して踏み板2を側桁1に接合すればよい。このように本願発明は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り本願発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
A 本願発明に係る階段本体
F 床仕上げ材
K 躯体
T タッピングビス
d 側桁どうしの間隔
1 側桁
11 側桁上端部
2 踏み板
21 実施例における最上段の踏み板
2a 実施例における踏み板
2b 実施例における踏み板
3 階段固定金具
31 挟持片
311 貫通孔
32 連結片
321 貫通孔
4 踏み板組み付け金具
41 踏み板載置部
411 ビス孔
42 側桁固定部
421 ビス孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に配設される側桁とこの側桁に固着される踏み板とからなる階段本体の該両側の側桁の上端部を、上階床に連なる躯体の垂直面に、一対の階段固定金具を介して取り付ける階段取付構造において、この階段固定金具を上記側桁の上端部を両側から挟持する一対の挟持片とこの挟持片を連結する連結片とで横断面略コ字状に形成し、上記一対の階段固定金具を水平方向に適宜間隔に調節してその連結片を躯体の垂直面に固設し、各階段固定金具の挟持片で上記側桁の上端部を挟持、固設することを特徴とする階段の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87606(P2013−87606A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232401(P2011−232401)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】