説明

階段の蹴込板およびその固定構造

【課題】階段の蹴込板の上端部を踏板裏面の蹴込板嵌合溝に嵌合した状態で固定具により固定する際の固定具の打ち込み作業を容易且つ高精度に行う。
【解決手段】階段の踏板3の裏面32に形成される蹴込板嵌合溝5にその上端部が嵌合される蹴込板2であって、その裏面23に長手方向に延長する裏面側凹溝8が形成される。蹴込板の上端木口に塗布された接着剤、および、裏面側凹溝から打ち込まれた固定具9により、蹴込板の上端部が蹴込板嵌合溝内で強固に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段の蹴込板およびその固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
側板と、踏板と、蹴込板とを有して構成される階段の施工は次の順序で行われるのが一般的であった。
1 側板を壁面に固定する。
2 階段の踏板を、側板に形成した踏板嵌合溝に嵌入させて、楔を打ち込んで側板に固定する。
3 蹴込板の上端木口に接着剤を塗布する。
4 蹴込板の左右端部を側板の蹴込板嵌合溝に嵌入させると共に、蹴込板上端を踏板裏面の蹴込板嵌合溝に嵌入させる。
5 蹴込板を、側板と踏板のそれぞれに木ネジなどの固定具で固定する。
【0003】
しかしながら、このような施工による蹴込板と踏板の固定構造では、以下の問題点が指摘されていた。
【0004】
すなわち、上記5の固定工程において木ネジなどの固定具Eを蹴込板Aの裏面側から踏板Bに向けて斜めに打ち込もうとしたときに、固定具Eの先端が蹴込板Aの裏面側を滑ってしまって、固定具Eが所定の位置と角度で蹴込板Aに入り込まないことがあった。この場合、固定具Eは、踏板Bの蹴込板嵌合溝Cと蹴込板A裏面との間に打ち込まれ、固定具Eの本来の打ち込み位置や角度がその分だけ上方にずれることになり、固定具Eが踏板Bを突き抜けてその先端が踏板Bの表面側に突出したり(図6参照)、踏板Bの表面に膨れを生じさせることがあった。さらに、固定具Eが蹴込板嵌合溝Cの入口や、蹴込板Aの上端部を破壊して、蹴込板Aと踏板Bとの固定が強固に行われなくなることがあった。
【0005】
また、この問題点の改善策として、特許文献1では、踏板裏面の蹴込板嵌合溝の後方に連続するように凹み部を形成して、該凹み部から踏板裏面までを傾斜面とすることにより、蹴込板の嵌合状態を該傾斜面を介して確認できると共に、釘打ちに際して釘の頭部が凹み部に納まるようにすることができるので、踏板が邪魔にならずに容易に釘打ち作業を行うことができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実願平4−60084号(実開平6−20703号)のCD−ROM
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の従来技術によると、踏板裏面の蹴込板嵌合溝の後方に連続して凹み部が形成されるので、蹴込板の裏面側上端部を支えることができず、固定強度および安定性が不十分となる。また、この凹み部は固定具の固定箇所を目視し得るように十分な大きさに形成されるので、踏板の強度を低下させる。さらに、前記5の固定工程において固定具を蹴込板の裏面側上端部から打ち込む際の打ち込み角度が定まらず、図6を参照して既述したように、固定具が踏板を突き抜けてその先端が踏板表面側に突出したり、踏板の表面に膨れを生じさせるなどの不具合を生じさせることがあった。特にこの従来技術では凹み部内から釘打ちを行うため、釘打ち深さが浅くなってしまい、打ち込み角度が少しでもずれるとこのような不具合が生じる可能性が大きい。
【0008】
したがって、本発明が課題とするところは、このような従来技術の不利欠点を解消して、階段の蹴込板を踏板裏面の蹴込板嵌合溝に嵌合した状態で固定具により固定する際に、固定具の打ち込み作業が容易であり、且つ、固定具が踏板を突き抜けてその先端が踏板の表面側に突出したり、踏板表面に膨れを生じさせることを防止し、また、蹴込板嵌合溝の入口や蹴込板の上端部が破壊されることを防止して、蹴込板と踏板との固定を強固に行うことができるような新規な階段の蹴込板およびその固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、階段の踏板の裏面に形成される蹴込板嵌合溝にその上端部が嵌合される蹴込板であって、該蹴込板嵌合溝に嵌合したときに裏面側となる一側面に長手方向に延長する裏面側凹溝が形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る本発明は、階段の踏板の裏面に形成される蹴込板嵌合溝に蹴込板の上端部を嵌合して固定する蹴込板の固定構造であって、蹴込板の裏面側に長手方向に延長する裏面側凹溝が形成されており、この裏面側凹溝から打ち込まれた固定具により蹴込板が踏板に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によれば、蹴込板の上端部を踏板裏面の蹴込板嵌合溝に嵌合させた状態で固定具で固定しようとする際に、裏面側凹溝の内部に固定具の先端を当てて安定した状態で打ち込むことができるので、作業性が向上する。このとき、打ち込み位置や角度が大きくずれることが防止されるので、従来技術による場合のように固定具が踏板を突き抜けてその先端が踏板表面側に突出したり、踏板の表面に膨れを生じさせるなどの不具合を生じさせることがない。
【0012】
さらに、裏面側凹溝から固定具を打ち込んでいくので、打ち込みの際に固定具が蹴込板の裏面を滑ってしまって踏板裏面の蹴込板嵌合溝に入り込むようなこともない。したがって、蹴込板嵌合溝の入口や蹴込板の先端を破損させることなく、固定具による固定作業を行うことができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によれば、裏面側凹溝から固定具を打ち込んで蹴込板を踏板に固定するので、打ち込みの際の固定具の位置ずれや角度ずれ、あるいは滑りなどを防止して作業性を良好にしつつ、強固な固定構造が得られ、蹴込板嵌合溝の入口や蹴込板の先端を破損させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明が適用される階段構造の一例を示す斜視図である。
【図2】この階段に用いられる蹴込板について本発明の2つの実施形態を示す上部断面図である。
【図3】図2の蹴込板の上端部を踏板裏面の蹴込板嵌合溝に嵌合して固定した固定構造を示す断面図である。
【図4】本発明の他実施形態による蹴込板の上部断面図である。
【図5】図4の蹴込板を用いて図1の階段を施工する際の蹴込板固定作業を工程順(a)〜(b)に示す説明図である。
【図6】従来技術による階段の蹴込板の固定構造において蹴込板を踏板に固定する際の固定具の打ち込み角度がずれてしまって踏板の表面に突き抜けた状態を示す断面図である。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明が適用される階段構造の一例を示す斜視図であり、一対の側板1,1間に蹴込板2および踏板3が交互に掛け渡されて構成されている。階段構造には直線型、L字型、螺旋型など各種形状のものがあるが、本発明はいずれにも適用可能である。
【0016】
図2(a)は本発明の一実施形態による蹴込板2の上端部形状を示すものであり、図3はこの蹴込板2の上端部を踏板3の裏面に形成した蹴込板嵌合溝5に嵌合して接着剤6および固定具9を介して固定して得られる固定構造を示す。この蹴込板2には、長手方向(施工状態において幅方向)に延長する裏面側凹溝8が上端近くの裏面23側に形成されている。裏面側凹溝8は、蹴込板2の上端部が踏板3の裏面32の蹴込板嵌合溝5に嵌合・固定された状態においてその上端が踏板裏面32と略面一またはそれより若干低くなる位置に形成される。このような位置に裏面側凹溝8が形成されることにより、固定具9(図3)を打ち込む際に固定具9の先端が蹴込板嵌合溝5に入り込むことが防止され、固定具9が正しい角度に打ち込まれることになるので従来技術による場合のように固定具9が踏板3を突き抜けてその先端が踏板3の表面側に突出したり、踏板3の表面に膨れを生じさせるなどの不都合を生じさせることがなく、また、蹴込板嵌合溝5の入口の破損も防止することができる。
【0017】
さらに、蹴込板2の上端部を蹴込板嵌合溝5の最奥まで嵌合させ且つその表面側を蹴込板嵌合溝5の前方内壁面52に押し付けたときに、裏面側凹溝8が、蹴込板嵌合溝5の後方内壁面53と蹴込板2Aの上端部裏面側との間の空間と実質的に連続するものとなるので、蹴込板嵌合溝5内における蹴込板2上端部の嵌合状態や、固定具9の打ち込み状態を、これらの連続空間から容易に目視確認することができる。したがって、蹴込板2上端部と蹴込板嵌合溝5との間に隙間が無い状態で固定することができ、歩行時の踏み鳴りも生じない強固で安定した固定構造が得られる。
【0018】
また、接着剤6が蹴込板嵌合溝5から溢れ出して蹴込板2の裏面23側を伝って流れ落ちたときには、該接着剤が裏面側凹溝8に入り込んでそれ以上の流下を防止すると共に、これが裏面側凹溝8内で硬化すると固定具9の頭部をしっかり保持固定する役割を果たすことになるので、より強固な固定構造を得ることができる。
【0019】
裏面側凹溝8の断面形状は固定具9の打ち込みを所定の位置と角度で行うことを可能にするものであれば特に限定されないが、好ましくは、図2(a)に示すような方形の断面形状や、蹴込板2の裏面23に対して略直角(上端木口21と略平行)である上辺と該上辺の奥端から裏面23に至る斜辺とを有する直角三角形の断面形状である(図2(b))。後者の場合、斜辺の傾斜角度は固定具9の所定の打ち込み角度と略同一となるように形成することが好ましい。また、その大きさは上述の作用効果が発揮できるものであれば特に限定的ではないが、一般に溝幅については3〜10mm程度で形成されることが好ましく、また、その深さについては、深すぎると蹴込板2の強度を低下させるので一般に2mm以下、好ましくは固定具9の先端が引っ掛かってしっかりと保持される程度の深さとして0.5〜1mm程度とすると良い。一例として、本実施例では、開口幅3mm、深さ1mmの断面方形状の裏面側凹溝8が、厚さ9mmの蹴込板2の上端から12mm(蹴込板嵌合溝5の深さと同一)を残す位置に形成されている。
【0020】
なお、蹴込板2としてMDFを使用した場合は、蹴込板裏面23側の硬質層を削って裏面側凹溝8を形成すると良い。MDFは、木質繊維を密にして接着剤により固化させた板状体であり、表裏面に高密度の硬質層が形成される。すなわち、MDFの平均密度は0.7〜0.9g/cm程度であるが、表裏面に0.9〜1.1g/cm程度の密度を有する硬質層が形成され、中間層は0.55〜0.65g/cm程度の軟質層として形成される。高密度の硬質層は固定具9の先端が入りにくいため位置決めが困難となり、また、その表面で滑りやすくなることから、MDFの硬質層を削って比較的軟質な層が溝底面に露出するように裏面側凹溝8を形成することが好ましく、このようにすれば、固定具9の打ち込みが容易となり、滑りを生ずることなく所定の位置で打ち込みを行うことができる。また、固定具9の頭部は硬質層の部分で引っ掛かることになるので、しっかり保持され、裏面側凹溝8の入口角部を破損させることもない。一般に、表面(蹴込板裏面23)から1〜2mm程度の深さまで切り欠いて裏面側凹溝8を形成すれば、硬質層を貫通して、該裏面側凹溝8の溝底面に比較的軟質な層(0.7〜0.9g/cm程度の密度を有する層)が現れ、上記の作用効果を発揮することができる。
【実施例2】
【0021】
図4は本発明の他実施形態による蹴込板2Aの上端部形状を示すものであり、実施例1の蹴込板2と同様に、その上端近くの裏面23側に長手方向に延長する裏面側凹溝8が形成されると共に、さらに、その上端木口に長手方向に延長する木口側凹溝4が形成されている。裏面側凹溝8の構成、形状、寸法などについては実施例1と同様であり、固定具9の打ち込みを作業性および高精度に行うことができる作用効果や蹴込板嵌合溝5から溢れ出した接着剤6を収容して固定具9の頭部を保持する作用効果などについても実施例1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0022】
木口側凹溝4の断面形状は任意であり、図示の方形状のほか、U字形やV字形の断面形状であっても良い。また、木口側凹溝4は、その幅中心が、蹴込板2Aの上端木口において厚さ方向中心と一致するように形成されることが好ましい。
【0023】
木口側凹溝4の幅は、蹴込板2の厚さに対して1/3〜2/3程度に形成されることが好ましい。木口側凹溝4の幅が蹴込板2の厚さの2/3を超えるような幅広のものであると、木口側凹溝4の両側に残される上端突出部21,21が相対的に薄くなり、踏板3の裏面に形成される蹴込板嵌合溝5(後述)の溝底面51に対する接着面積が小さくなって接着強度を低下させてしまう。また、蹴込板2Aの上端部を蹴込板嵌合溝5の溝底面51に向けて押し込んだときにその衝撃で薄い上端突出部21,21が破損する恐れがある。一方、木口側凹溝4の幅が蹴込板2の厚さの1/3に満たないような幅狭になると、上端木口に接着剤が塗布された蹴込板2Aの上端部を蹴込板嵌合溝5に嵌入させたときに、木口側凹溝4に接着剤が入り込みにくくなり、その多くが蹴込板嵌合溝5から溢れ出して蹴込板2Aの表裏面を伝って流れ落ちてしまう恐れが生じ、また、木口側凹溝4への接着剤の入り込みが不十分になることから内部に空間が生じて強固な固定構造が得られなくなる。
【0024】
木口側凹溝4の深さは、3mm以下であり、特に好ましくは0.5〜2mmである。木口側凹溝4が深すぎると、蹴込板2Aの上端木口に塗布した接着剤のほとんどが木口側凹溝4の中に入り込んでしまい、蹴込板2Aを蹴込板嵌合溝5に嵌入させたときに接着剤が蹴込板嵌合溝4の前後内壁面にまで行き渡らなくなるため、蹴込板2Aと踏板3との固定が不十分になり、歩行時に非接着面同士で擦れ合って踏み鳴りを発生させる恐れがある。一方、木口側凹溝4が浅すぎると、蹴込板2Aの上端木口に接着剤を塗布したときに、接着剤が木口側凹溝4の入口の2点と接触しにくくなり、接着剤が塗布面から離れやすくなって一定量を均等に塗布することが困難になる。さらに、蹴込板嵌合溝5内に蹴込板2Aの上端部を嵌合した際に、接着剤が木口側凹溝4内に納まりきらず、木口側凹溝4から溢れ出してしまう恐れがある。
【0025】
木口側凹溝4の大きさ(幅、深さ)については上記を参酌して決定する。一例として、厚さ9mmの蹴込板2の場合、開口幅3mmおよび深さ1mmである断面長方形状の木口側凹溝4が形成される。
【0026】
図4の蹴込板2Aを用いて階段を施工する際の蹴込板固定作業について、図5を参照して説明する。
【0027】
まず、図5(a)に示すように、蹴込板2Aの上端木口に形成される木口側凹溝4に沿って接着剤6を接着剤チューブ7から押し出しながら塗布していく。接着剤6は特に限定されないが、一般にウレタン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤などが用いられる。
【0028】
接着剤6は木口側凹溝4に沿って塗布されるが、このとき、木口側凹溝4の両側の上端突出部21,21の表裏付近には接着剤非塗布部が各々1〜2mm程度残されるように塗布すると良い。このようにすることにより、施工の際に蹴込板を多少傾けても接着剤6が蹴込板2Aの表裏面に液だれしてくることを防ぐと共に、接着剤6の適正塗布量の目安とすることができる。これを実現するため、たとえば、断面長方形状の木口側凹溝4が蹴込板2Aの厚さの1/3程度の幅で形成される場合には、接着剤6が蹴込板2Aの厚さ中心を幅中心として該厚さの2/3程度の幅で塗布されるように、接着剤チューブ7の先端をカットしたものを使用すると良い。より具体的な例として、既述したように厚さ9mmの蹴込板2Aの上端木口に開口幅3mmで断面長方形状の木口側凹溝4が形成されている場合には、塗布される接着剤6が直径6mm程度となるように、接着剤チューブ7の先端をカットしたものを使用すると良い。
【0029】
また、接着剤6の塗布量は、木口側凹溝4の大きさにもよるが、幅750〜1000mm、厚さ5〜15mmの蹴込板2Aに対して10〜35g/mとすると良い。本実施例では、長さ(幅)900mm、厚さ9mmの蹴込板2Aの場合、その上端木口に21.7g/mの接着剤塗布量を採用した。このように蹴込板2Aの上端木口に対する接着剤6の塗布面と塗布量を調節することで、適正な接着剤塗布状態が得られ、接着剤6の塗布量が多すぎることによって接着剤6が蹴込板嵌合溝5から溢れ出すことや、接着剤6の塗布量が少なすぎることによって固定強度が低下したり踏み鳴りを起こしたりする不都合を防止することができる。
【0030】
次に、図5(b)に示すように、上端木口に接着剤6が塗布された蹴込板2Aの上端部を、踏板3の裏面に形成された蹴込板嵌合溝5に嵌合させていく。なお、図示のように、蹴込板嵌合溝5は、蹴込板2Aの厚さより若干大きい溝幅寸法を有するように形成される。
【0031】
そして、図5(c)に示すように、蹴込板2Aの上端木口が蹴込板嵌合溝5の溝底面51に突き当たった状態になると、蹴込板2Aの上端木口に塗布されている接着剤6が押し潰され、木口側凹溝4内に隙間なく入り込むと共に、蹴込板嵌合溝5の奥部で拡がって、蹴込板2Aの上端突出部21,21を含めた上端木口全面と溝底面51との間に行き渡るだけでなく、さらに蹴込板嵌合溝5の内部において蹴込板2Aの表裏両面側にも回り込んで蹴込板嵌合溝5の前方内壁面52および後方内壁面53との間に入り込む。
【0032】
この状態において、図5(d)に示すように、蹴込板2Aを蹴込板嵌合溝5の前方内壁面52に押し付ける。これにより、蹴込板2Aの表面22側上端部が蹴込板嵌合溝5の前方内壁面52に対してこれらの間に介在する接着剤6によって接着固定され、しかも蹴込板2Aの上端木口と蹴込板嵌合溝5の溝底面51との間、および蹴込板2Aの裏面23側上端部と蹴込板嵌合溝5の後方内壁面53との間もそれぞれ介在する接着剤6によって接着固定されるので、蹴込板2Aの上端部が3面で蹴込板嵌合溝5に対して接着固定され、きわめて強固な固定構造が得られる。さらに、蹴込板2Aと蹴込板嵌合溝5との間にはすべて接着剤6が介在されることになり、これらが擦れ合うことがないので、歩行時に踏み鳴りを起こすことがない。万一過剰に塗布した分の接着剤6が蹴込板嵌合溝5から溢れ出すことがあっても、比較的大きな隙間が形成される後方側から蹴込板2Aの裏面側を伝って流れ落ちることとなり、この部分で接着剤が固化しても表面側からは隠れて見えないので、美観を損なうことはない。
【0033】
なお、上述および図5に示される蹴込板固定作業では、裏面側凹溝8と共に木口側凹溝4が形成された蹴込板2A(図4)が用いられているが、木口側凹溝4が形成されず裏面側凹溝8のみが形成された蹴込板2(図2)を用いた場合の蹴込板固定作業もほぼ同様にして行われる。この場合は、接着剤6を木口側凹溝4に沿って塗布することはできず、木口側凹溝4内に入り込むこともないが、蹴込板2の上端部が3面で蹴込板嵌合溝5に対して接着固定される点では同様であり、きわめて強固な固定構造が得られ、歩行時の踏み鳴りの発生も防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 側板
2,2A 蹴込板
21 上端木口
22 表面
23 裏面
3 踏板
31 表面
32 裏面
4 木口側凹溝
5 蹴込板嵌合溝
51 溝底面
52 前方内壁面
53 後方内壁面
6 接着剤
7 接着剤チューブ
8 裏面側凹溝
9 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の踏板の裏面に形成される蹴込板嵌合溝にその上端部が嵌合される蹴込板であって、該蹴込板嵌合溝に嵌合したときに裏面側となる一側面に長手方向に延長する裏面側凹溝が形成されることを特徴とする。
【請求項2】
階段の踏板の裏面に形成される蹴込板嵌合溝に蹴込板の上端部を嵌合して固定する蹴込板の固定構造であって、蹴込板の裏面側に長手方向に延長する裏面側凹溝が形成されており、この裏面側凹溝から打ち込まれた固定具により蹴込板が踏板に固定されることを特徴とする蹴込板の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188845(P2012−188845A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52465(P2011−52465)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】