説明

階段ブロック、階段および施工方法

【課題】排水性能を向上させつつも、歩行者にとって歩きやすく、通常の階段と同じ外観の階段ブロック、それにより構成された階段およびその施工方法を提供する。
【解決手段】踏み面1と蹴上面2と接地面3と背面と側面とを有し、背面に横排水溝4が、両側面に前後排水溝5a,5bが設けられている階段ブロックである。階段ブロックを複数個横に並べた際に、隣り合う階段ブロックの前後排水溝5a,5bの組み合わせでトンネル状の排水孔7が形成される。階段ブロックに雨が降ると、踏み面1の雨水は横排水溝4に流れ、横排水溝4から前後排水溝5a,5bへと流れていく。これにより排水性能が高くなっている。前後排水溝5a,5bは踏み面1に現れないため、外観は通常の階段と同様に維持でき、歩行者にとって歩きやすい階段ブロックとなる。排水孔7を形成することにより必要な流路断面を確保して、排水の効率を上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段ブロック、階段および施工方法に関する。さらに詳しくは、排水溝を有する階段ブロック、それにより構成された階段およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
階段ブロックは堤防等の斜面に施工され通路としての階段を形成するほか、その表面を自然石仕上げする等して美観を持たせた階段ブロックを用い、景観の一部を形成するという役割を担う。堤防以外にも公園その他の建築物における斜面において階段ブロックの施工が各所で行われている。
ところが、階段ブロックは材質が主にコンクリートや石であり、また主に屋外で使用されるため、雨等の影響で濡れる場合に滑りやすくなってしまうという性質がある。また、階段の踏み面上に自然と水が溜まり水垢等の汚れの原因となることが多い。そこで、階段ブロックにおける排水性能の向上が要求されている。
【0003】
一般的に、階段を設置する場合、排水用の溝は設けないか、あるいは階段の幅方向の両端に壁または袖石を設置し、その脇に排水用の溝を設けている。ただし、踏み面には勾配がないため、踏み面上に自然と水が溜まり歩行上の障害や水垢等の汚れの原因となることが多い。
【0004】
階段ブロックの排水性能を向上させた従来技術の一例として特許文献1がある。この従来技術1は、斜面に設置される傾斜板と踏み板とを支柱で連結した形状の階段ブロックであり、この階段ブロックを複数個横に並べると、隣り合う階段ブロックの支柱間に排水用の貫通孔が形成されるものである。階段ブロックに降った雨水等は踏み板から貫通孔に落ち、貫通孔を下方へと流れることによって排水される。これにより階段ブロックの排水性能を向上させている。
【0005】
しかしながらこの従来技術1の階段ブロックは、支柱の周りに大きな空間があり踏み板の前に蹴上面がない、いわば野球場のベンチ風の形状となっている。そのため、歩行者が階段を登る際に上段の踏み板に足が引っかかり、転倒してしまうという恐れがある。
【0006】
この点を解消した従来技術として特許文献2がある。この従来技術2は、踏み板を中央部が高く両側面に向かって傾斜した面とし、この傾斜面の下方の両側縁部に排水溝を設けているものである。雨が降った時等に、雨水等は踏み板の傾斜面に沿って排水溝に流れ、排水溝に流れた雨水等は手前方向に流れて下段に落下する。これを繰り返すことにより雨水等を下方へと排水する。これにより排水性能を向上させている。
【0007】
この従来技術2では蹴上面があるため、歩行者が階段を登る際に上段の踏み板に足が引っかかり、転倒してしまうという恐れが無い。しかし、踏み板が幅方向に傾いているため、歩行時の体重の重心が左若しくは右に寄り、歩行者にとって歩き辛く転倒の恐れもある。歩行への影響を少なくするために踏み板の傾斜面の勾配を小さくすることが考えられるが、この場合は排水性能が低下することとなってしまう。また、勾配を小さくしたとしても歩行者に違和感を与えることに変わりがない。そのため歩行者にとっての歩きやすさという点を十分に考慮されたものとはなっていない。
【0008】
【特許文献1】実公平7−15861号
【特許文献2】特開平5−272205号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、排水性能を向上させつつも、歩行者にとって歩きやすく、通常の階段と同じ外観の階段ブロック、それにより構成された階段およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の階段ブロックは、上面の踏み面と、正面の蹴上面と、底面の接地面と、背面と、側面とを有するブロック体であって、該ブロック体の背面に幅方向に延びる横排水溝が設けられており、前記ブロック体の側面に、前記横排水溝に接続され前記蹴上面に続く前後排水溝が設けられていることを特徴とする。
第2発明の階段ブロックは、第1発明において、前記横排水溝の底面に、前記前後排水溝に向かって下がる勾配が形成されていることを特徴とする。
第3発明の階段ブロックは、第1または第2発明において、前記前後排水溝が、前記階段ブロックの両側面に設けられており、前記階段ブロックを複数個横に並べた際に、隣り合う階段ブロックの前後排水溝同士の組み合わせでトンネル状の排水孔が形成されるものであることを特徴とする。
第4発明の階段ブロックは、第1または第2発明において、前記前後排水溝が、前記階段ブロックの片方の側面にのみ設けられており、前記階段ブロックを複数個横に並べた際に、隣り合う一方の階段ブロックの前後排水溝と他方の階段ブロックの側面との組み合わせでトンネル状の排水孔が形成されるものであることを特徴とする。
第5発明の階段は、第1、第2、第3または第4発明の階段ブロックから構成され、前記階段ブロックが複数個横に並べられて一段の階段が形成され、形成された一段の階段が昇降方向に並べられて全段の階段が形成され、前記各前後排水溝が昇降方向に隣接する段の各階段ブロックの幅方向の中央に位置するように設置されていることを特徴とする。
第6発明の階段は、第1、第2、第3または第4発明の階段ブロックから構成される階段の前記横排水溝に装飾材が配置されていることを特徴とする。
第7発明の階段の施工方法は、第1、第2、第3または第4発明の階段ブロックから構成し、前記階段ブロックを複数個横に並べて一段の階段を形成し、形成した一段の階段を昇降方向に並べて全段の階段を形成し、前記各前後排水溝が昇降方向に隣接する段の各階段ブロックの幅方向の中央に位置するように設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、踏み面の後縁に横排水溝が、側面には前後排水溝が設けられているため、階段ブロック上に雨が降ると、踏み面の雨水等はまず横排水溝に流れ落ち、横排水溝からそれにつながる前後排水溝へと流れていく。これを繰り返すことにより雨水等が下方へ排水されるので排水性能が高くなっている。また、前後排水溝は側面に設けられているため踏み面に現れない。そのため歩行者にとって邪魔であり、つまずく原因となりうる溝が踏み面に無い。このため外観は通常の階段と同様に維持でき、歩行者にとって歩きやすく転倒の恐れが無い階段ブロックとなる。
第2発明によれば、横排水溝の底面に前後排水溝に向かって下がる勾配が形成されているため、横排水溝を流れる雨水等に水勢を与えることができ、短時間で前後排水溝へ流すことができる。このことにより、さらに排水性能が向上される。
第3発明によれば、隣り合う階段ブロックでトンネル状の排水孔を形成できるので、必要な流路断面を確保することができる。このため、排水の効率を上げることができ、また軽微なごみ等であれば押し流すことができる。
第4発明によれば、第3発明と同様に、隣り合う階段ブロックでトンネル状の排水孔を形成できるので必要な流路断面を確保することができる。このため、排水の効率を上げることができ、また軽微なごみ等であれば押し流すことができる。
第5発明によれば、階段ブロックを横方向および昇降方向に並べて設置した全段の階段を得ることができる。個々の階段ブロックは、第1発明の効果でうたったように横排水溝と前後排水溝を通じて排水可能であるので、階段全体でも同様に全ての横排水溝と全ての前後排水溝を通じて排水可能である。また、各前後排水溝が昇降方向に隣接する段の各階段ブロックの幅方向の中央付近に位置するように設置されているので、上段の前後排水溝と下段の横排水溝の中央付近が接続する形となる。雨水等の流れの方向が一段ずつ左右に変わり水勢を抑えることができるので、水の跳ね返り等を抑えることができる。さらに、水勢が弱い横排水溝の中央付近に、前後排水溝からの雨水等を流すことによって軽微なごみ等を押し流すという効果もある。
第6発明によれば、横排水溝に装飾材が配置されているが、この装飾材は溝によって固定されるので、従来の階段では発揮できなかった場所に意匠効果を与えることができる。
第7発明によれば、第5発明により得られる効果を持つ階段を施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態における階段ブロックAの斜視図である。図2は同階段ブロックAの平面図である。図3は同階段ブロックAの正面図である。図4は同階段ブロックAの右側面図である。図5は同階段ブロックAの背面図である。
本発明の階段ブロックAは立体的形状に特徴があるので、以下各図面に基づき説明する。
【0014】
図1の斜視図に示すように、階段ブロックAの上面は踏み面1、正面は蹴上面2、底面は斜面に接地する接地面3となっている。また、階段ブロックAの背面には幅方向に両側面まで延びる横排水溝4が設けられており、階段ブロックAの両側面には横排水溝4の端部に接続され蹴上面2に続く前後排水溝5a、5bが設けられている。
【0015】
図2の平面図に示すように、階段ブロックAは平面視では長方形をしている。踏み面1の後縁には横排水溝4が位置しており、横排水溝4の両端部には前後排水溝5a、5bの後端が開口している。なお、平面視では、前後排水溝5a、5bは踏み面1に隠れて見えない。
【0016】
図3の正面図に示すように、蹴上面2も長方形をしている。蹴上面2の両側縁下部には前後排水溝5a、5bの前端が開口している。
【0017】
図4の右側面図に示すように、階段ブロックAの側面は台形をしている。右側面には、前後排水溝5aが設けられており、左側面についても対称の位置に、前後排水溝5bが設けられている。前後排水溝5a、5bは後端が横排水溝4に接続され、前端が蹴上面2に接続されている。前後排水溝5a、5bは斜面の傾斜に合わせた勾配を持つ接地面3とほぼ並行となっている。すなわち、前後排水溝5a、5bは蹴上面2に向かって下がる斜面と同程度の勾配が形成されている。なお、踏み面1には前縁から後縁にかけて後ろ下がりの勾配を形成したものであってもよく、勾配のない水平なものであってもよい。
【0018】
図5の背面図に示すように、階段ブロックAの背面には幅方向に両側面まで延びる横排水溝4が設けられており、横排水溝4の両端部には前後排水溝5a、5bの後端が開口している。横排水溝4の底面は幅方向中央部が高くなっており、両端部に位置する前後排水溝5a、5bの開口部に向かって下がる勾配が設けられている。その勾配は0.3°〜1°位が好ましい。
【0019】
上記のような形状であるので、個々の階段ブロックAにおける雨水等の排水は、次のように行われる。図1に基づき説明する。
1)踏み面1に降った雨水等は横排水溝4へと落ちる。2)次に、横排水溝4の底面の勾配に従って両端部に向かって流れ、前後排水溝5a、5bへと導かれる。3)さらに、前後排水溝5a、5bを通り、蹴上面2の方向に導かれ、4)蹴上面2側から排水される。
このステップを繰り返すことにより雨水等は下方へと排水される。
【0020】
前記ステップ1)において、踏み面1が前縁から後縁にかけて後ろ下がりの勾配を持つ場合には、踏み面1上の雨水等を短時間で横排水溝4へと導くことができる。踏み面1は歩行者が接地する面であるので、勾配を設けることにより踏み面1上の雨水等を短時間で排水させることが歩行者にとって滑りにくく歩きやすい階段を提供できることとなる。
踏み面1には通常若干の凹凸があるため、勾配が無い場合に水が溜まる恐れがあるが、この水溜りは歩行者にとって障害となるばかりか、水垢等の原因となり、階段の汚れとなる場合が多い。しかし、勾配が設けられている場合、これらの問題を解消することができる。
なお、踏み面1に勾配を設けることによって歩行者が歩きにくくなるという恐れは無い。むしろ、後ろ下がりに傾斜させることで、歩行者にとって重心移動がしやすく、登りやすいという効果が確認されている。
【0021】
前記ステップ2)において、横排水溝4の底面が両端部の前後排水溝5a,5bに向かって下がる勾配を持つため、横排水溝4を流れる雨水等に水勢を与えることができ、短時間で前後排水溝5a,5bへ流すことができる。このことにより、さらに排水性能が向上される。
【0022】
また、前後排水溝5a、5bは階段ブロックAの側面に溝を設けたものであるので、階段ブロックAを複数個横に並べ側面同士を密着させると、前後排水溝5a、5bは表面に現れることがない。そのため歩行者にとって邪魔であり、つまずく原因となりうる溝が踏み面1に現れない。なお、横排水溝4は表面に現れるが、足を置くことの無い踏み面1の後縁に位置するため、通常歩行者が横排水溝4によりつまずくことはない。すなわち、階段ブロックAは、外観が通常の階段と同様の形状であり、歩行者にとって歩きやすく転倒の恐れが無い階段ブロックとなっている
【0023】
なお図2および図4に示すように、踏み面1の前縁部には滑り止めスリット1aが数本設けられている。これにより足と踏み面1との摩擦が増え、歩行者にとって滑りにくいものとなっている。
【0024】
図4に示すように、階段ブロックAの右側面には、中央付近に吊り上げ穴6aが設けられている。左側面についても対称の位置に、吊り上げ穴6bが設けられている。階段ブロックAを施工する際には、吊り上げ穴6a,6bに施工治具を取り付けクレーン等で吊り上げて、所定の位置に設置していくことができる。
【0025】
本発明の階段ブロックAは、主に屋外で使用されるため風雨にさらされる場合が多い。また歩行者等が通行するための強度も必要である。そのため階段ブロックAの材質としては石やコンクリート等が考えられる。階段ブロックAを用いて階段を施工するには同じ形の階段ブロックAを多数用意する必要がある。そのため生産性から考えると、大量生産に適したコンクリートで製造する事が好ましい。
【0026】
図6は階段ブロックAから構成される階段の斜視図である。階段ブロックAを複数個横に並べた際に、本図において左側に位置する階段ブロックAの右側面に設けられた前後排水溝5aと、右側に位置する階段ブロックAの左側面に設けられた前後排水溝5bが組み合わされることでトンネル状の排水孔7が形成される。
【0027】
上記のように、トンネル状の排水孔7が形成されることで、歩行者の邪魔にならず、かつ必要な流路断面を確保することができ、排水の効率を上げることができる。また軽微なごみ等であれば押し流すことができる。
【0028】
さらに図6に示すように、階段ブロックAを複数個横に並べて一段の階段を形成し、形成した階段を複数段昇降方向に並べると、全段の階段を設置することができる。この際、形成した階段の各排水孔7が昇降方向に隣接する段の各階段ブロックAの幅方向の中央に位置するように設置することもできる。
上記の通りに設置した場合、幅方向の長さが不足する段が1段おきにできるが、その段の両端に、階段ブロックAに比べて幅方向の長さが半分の階段ブロックA´を用いることで不足部分を補えばよい。
【0029】
図7は、階段ブロックAにより構成された階段の平面図であり、図8は正面図であり、図9は側面図である。このように、階段ブロックAにより構成された階段は、排水孔7や横排水溝4はほとんど目立たず、通常の階段と同様の形状、外観となっている。
なお、最下段には側面視長方形の階段ブロックB(第2実施形態として後述)が下段役物として設置される。この階段ブロックBは、横排水溝4や排水孔7を有する点は階段ブロックAと共通している。この階段ブロックBの設置は、アンカーボルト8を用い基礎コンクリート9に強固に固定される。各段の階段ブロックAはコンクリート床10にモルタル11で固定される。最上段には排水溝の無い普通の階段ブロックDが上段役物として設置される。
【0030】
以上のように本実施形態の階段に雨が降った場合は、次のステップで雨水等が排水される。図6に基づき説明する。
1)各階段ブロックAの踏み面1に降った雨水等は横排水溝4へと落ちる。2)次に、横排水溝4の底面の勾配に従って両端部に向かって流れ、排水孔7へと導かれる。3)さらに、排水孔7を通り、蹴上面2の方向に導かれ、4)蹴上面2側から排水され、5)そして、下段の横排水溝4の中央へと流れる。6)上段から下段にかけてステップ2)からステップ5)を繰り返すと、7)最終的には、最下段の蹴上面2側の排水孔7から排水される。
このようなステップで階段の雨水等は全て下方へ排水される。
【0031】
前記ステップ5)において、排水孔7から排出された雨水等が下段の横排水溝4の中央へ流れるのは、排水孔7の位置が昇降方向に隣接する段の階段ブロックAの幅方向の中央に位置するように構成され、上段の排水孔7と下段の横排水溝4の中央が接続する形となっているためである。
仮に排水孔7が上段および下段において直線上に並ぶと、下段に行くにつれて水勢を増してしまう可能性がある。そうすると、階段の下で強い水の流れができ、歩行者に跳ね返りの水がかかったり、排水した雨水等が階段下の道路等の広範囲に広がったりする恐れがある。しかし、排水孔7と横排水溝4の中央とを接続することにより、雨水等の流れの方向が一段ずつ左右に変わり水勢を抑えることができるので、前記の不都合を抑えることができる。
また、水勢が弱い横排水溝4の中央付近に、排水孔7からの雨水等を流すことによって軽微なごみ等を押し流すという効果もある。
【0032】
本発明の階段において、全ての階段を上段の排水孔7と下段の横排水溝4の中央が接続する形とする必要はない。例えば2段おきに上段の排水孔7と下段の横排水溝4の中央が接続する形とし、他の段は上段と下段で排水孔7が直線上に並ぶ構成としても、上記の効果を得ることができる。また、全段において排水孔7を直線状に並ぶ構成とすると上記の効果を得ることはできないが、排水性能は得ることができる。この構成は施工の状況や求める外観などに応じて選択すればよい。
【0033】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における階段ブロックBについて説明する。
図10は、階段ブロックBの斜視図である。階段ブロックBはおよそ立方体のブロックであり、接地面3が水平となっている。その余の構成は第1実施形態と構成がほぼ同じであるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。接地面3は水平であるが、前後排水溝5a,5bは設置斜面の傾斜に合わせて勾配が形成されている。
【0034】
この階段ブロックBは重量があるので、前述の通り下段役物に適している(図9参照)。そのほか、図11に示すように、階段ブロックBを用いて全段の階段を構成してもよい。このようにすることで、強固な階段を施工することができる。
排水性能等の機能に関しては第1実施形態と同様である。
【0035】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態における階段ブロックCについて説明する。
図12は、階段ブロックCの斜視図である。第1実施形態の階段ブロックAにおいては前後排水溝5a,5bが両側面に設けられているが、階段ブロックCにおいては片方の側面にのみ設けられている。もう片方の側面は平端である。その余の構成は第1実施形態と構成がほぼ同じであるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図13は階段ブロックCから構成される階段の斜視図である。階段ブロックCを複数個横に並べた際に、本図における左側に位置する階段ブロックCの右側面に設けられた前後排水溝5aと、右側に位置する階段ブロックCの左側面が組み合わされることでトンネル状の排水孔7が形成される。すなわち、前後排水溝5aが片側にのみ設けられる場合においても、排水孔7による効果を得ることができる。
しかしこの場合、排水孔7が細くならないように、前後排水溝5aの溝を深いものにする方が好ましい。なお、横排水溝4は、前後排水溝と接続されない端部から前後排水溝5aに接続される端部に向けて下がる勾配とすることが好ましい。
本実施形態でも、排水性能等の機能に関しては第1実施形態と同様である。
【0037】
本発明の階段ブロックを用いて施工した階段は、横排水溝4に装飾材を配置して、意匠効果を高めることも可能である。
1)横排水溝4に植物を植えつけて緑化ができる。これは、横排水溝4および前後排水溝5a,5bに沿って、水を流すことが可能であり、植物を植え付けかつ給水溝としても利用可能であるためである。
2)横排水溝4に玉砂利やガラス玉、LEDなどの照明器具を配置し、美観を高める。公園やイベント会場等において利用が期待される。
特許請求の範囲にいう装飾材とは上記の緑化用植物、玉砂利、ガラス玉、LEDなどの意匠効果を発揮するものをいう。
【0038】
また本発明の階段ブロックを用いて施工した階段は、常時水を流して、階段の温度低減効果をはかることも可能である。横排水溝4および前後排水溝5a,5bに人工的に水を流すことで、階段の温度を低減することができる。夏でも涼しい階段を提供することができる。
【0039】
以上のように、本発明の階段ブロックにより、排水性能を向上させつつも、歩行者にとって歩きやすく、通常の階段と同じ外観の階段ブロックと、それにより構成された階段およびその施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態における階段ブロックの斜視図である。
【図2】同第1実施形態における階段ブロックの平面図である。
【図3】同第1実施形態における階段ブロックの正面図である。
【図4】同第1実施形態における階段ブロックの右側面図である。
【図5】同第1実施形態における階段ブロックの背面図である。
【図6】本発明の第1実施形態における階段ブロックから構成される階段の斜視図である。
【図7】同第1実施形態における階段ブロックから構成される階段の平面図である。
【図8】同第1実施形態における階段ブロックから構成される階段の正面図である。
【図9】同第1実施形態における階段ブロックから構成される階段の側面図である。
【図10】本発明の第2実施形態における階段ブロックの斜視図である。
【図11】同第2実施形態における階段ブロックから構成される階段の側面図である。
【図12】本発明の第3実施形態における階段ブロックの斜視図である。
【図13】同第3実施形態における階段ブロックから構成される階段の斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
A 本発明の第1実施形態における階段ブロック
1 踏み面
1a 滑り止めスリット
2 蹴上面
3 接地面
4 横排水溝
5a 前後排水溝
5b 前後排水溝
6a 吊り上げ穴
6b 吊り上げ穴
7 排水孔
8 アンカーボルト
9 基礎コンクリート
10 コンクリート床
11 モルタル
A´ 本発明の第1実施形態における幅方向の長さが半分の階段ブロック
B 本発明の第2実施形態における階段ブロック
C 本発明の第3実施形態における階段ブロック
D 上段役物として用いる階段ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面の踏み面と、正面の蹴上面と、底面の接地面と、背面と、側面とを有するブロック体であって、
該ブロック体の背面に幅方向に延びる横排水溝が設けられており、
前記ブロック体の側面に、前記横排水溝に接続され前記蹴上面に続く前後排水溝が設けられている
ことを特徴とする階段ブロック。
【請求項2】
前記横排水溝の底面に、前記前後排水溝に向かって下がる勾配が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の階段ブロック。
【請求項3】
前記前後排水溝が、前記階段ブロックの両側面に設けられており、
前記階段ブロックを複数個横に並べた際に、隣り合う階段ブロックの前後排水溝同士の組み合わせでトンネル状の排水孔が形成されるものである
ことを特徴とする請求項1または2記載の階段ブロック。
【請求項4】
前記前後排水溝が、前記階段ブロックの片方の側面にのみ設けられており、
前記階段ブロックを複数個横に並べた際に、隣り合う一方の階段ブロックの前後排水溝と他方の階段ブロックの側面との組み合わせでトンネル状の排水孔が形成されるものである
ことを特徴とする請求項1または2記載の階段ブロック。
【請求項5】
前記階段ブロックが複数個横に並べられて一段の階段が形成され、
形成された一段の階段が昇降方向に並べられて全段の階段が形成され、
前記各前後排水溝が昇降方向に隣接する段の各階段ブロックの幅方向の中央に位置するように設置されている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の階段ブロックから構成される階段。
【請求項6】
請求項1、2、3または4記載の階段ブロックから構成される階段の前記横排水溝に装飾材が配置されている
ことを特徴とする階段。
【請求項7】
前記階段ブロックを複数個横に並べて一段の階段を形成し、
形成した一段の階段を昇降方向に並べて全段の階段を形成し、
前記各前後排水溝が昇降方向に隣接する段の各階段ブロックの幅方向の中央に位置するように設置する
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の階段ブロックから構成される階段の施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−47899(P2010−47899A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210330(P2008−210330)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000230836)日本興業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】