説明

階段昇降機

【課題】階段昇降機としての安定した昇降性能を維持しつつ、平地走行における旋回性能を向上させることを可能にする階段昇降機を提供する。
【解決手段】座席2を指示する座席用支持フレーム4の枢支軸42の支点42Aをベルトクローラの接地部のほぼ中央で支持すると共に、機体1を水平状態にした際に、搭乗者を含む機体1の合成重心からの鉛直方向に上記枢支軸42の機体1の幅方向における中心がくる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自足歩行が困難な者が階段昇降する際に好適な階段昇降機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来このような階段昇降機として、下記特許文献1に記載のものが知られている。この従来技術を図1を用いて説明する(同図(a)は平地移動状態、(b)は階段昇降状態を示している)。階段昇降機は、図1(a)に示すように、座席12を固定的に載置するための支持フレーム(17,18,19)を有し、この支持フレームの各端部には駆動輪(13,13)を備え、かかる駆動輪に無端ゴムクローラ(14,15,16)を装着する構造となっている。そして、階段の昇降を行うに際しては、図1(b)に示すように、無端ゴムクローラが連続する三箇所以上の階段の段鼻(角部)と接触する長さを有することで、常時二箇所以上の段鼻と接触した状態を維持することができるため、階段昇降中の重心移動のバランスが崩れることなく安定的に階段の昇降を行うことができるのである。
【0003】
なお、上述した支持フレーム、駆動輪、無端ゴムクローラは、機体の正面に向かって左右にそれぞれ一対ずつ備えられており、この一対の支持フレームに、自足歩行が困難な者(以後、必要に応じて自足歩行困難者、搭乗者、または利用者と言う。)が搭乗する座席12が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−60906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、階段の昇降を安定に行うためには、階段の昇降状態においてクローラが常時二箇所以上の段鼻と接触した状態が必要であり、上述した通り、クローラの階段と向き合う面の階段昇降方向の長さ、換言すると、機体を平地に置いたときにクローラが地面と接する機体長手方向の長さ(以後これを、接地長という。)は、最低でも連続する三箇所の階段の段鼻と接触できるだけの長さ(以後これを、最短接地長という。)を必要とする。但し、上述した従来の階段昇降機では、クローラの躯体に対する座席の位置が固定化されているため、斯かる最短接地長では、昇降する階段の傾斜角度の変化によって生じる、搭乗者を含む機体全体の重心(以後、合成重心という。)位置の変位に対する安定性に十分なマージンを確保できないという不具合がある。つまり、接地長が短いと、設計上の想定を上回る昇降角度の変化等、設計された階段昇降機の系に対するいわゆる外乱によって、機体の接地面から外れた位置に合成重心が移動し易くなり、この場合には、機体に発生した、重力によるモーメントが働く方向に対して、クローラ等による支持体が無いことから反力が働かず、最悪の場合、機体が転倒するという虞がある。そこで、従来は、図1(a)、(b)に示すように、最短接地長に対して十分に長い接地長を確保することで、走行面の傾斜角度の変化に対する合成重心位置の変位量に対して十分な動作マージンを確保して、転倒等の危険の無い、安定した移動を可能とする構成が採用されている。
しかしながら、接地長が長くなることにより、例えば階段の踊り場等の奥行きの狭い平地において、機体を旋回させることが難しくなるという新たな不具合を生じる。
このように、階段昇降動作における安定性の向上と踊り場等における旋回性の向上とは、互いに背反する課題となる。
【0006】
本願発明は、上記の課題に鑑みて成されたもので、その目的は、階段昇降機としての安定した昇降性能を維持しつつ、平地走行における旋回性能を向上させることを可能にする階段昇降機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本願発明は、階段における連続する3つの段鼻と接触可能な長さの接地長を有するベルトクローラと、当該ベルトクローラの接地部の軌道を画定する軌道フレームと、搭乗者用の座席を支持すると共に、前記軌道フレームに支点を有する枢支軸で枢支された座席用支持フレームと、当該座席用支持フレームを前記枢支軸を中心に回動させることで、前記座席を傾斜せしめる傾斜駆動手段とを備えた階段昇降機であって、前記枢支軸は、当該枢支軸の前記支点が、前記ベルトクローラの接地部のほぼ中央にあると共に、機体の水平状態において、前記枢支軸の機体の幅方向における中心が、当該機体と搭乗者の合成重心からほぼ鉛直方向に存在する位置にあることを特徴とする。
【0008】
本発明の特徴によると、座席を支持する座席用支持フレームの枢支軸の支点をベルトクローラの接地部のほぼ中央で支持すると共に、機体を水平状態にした際に、搭乗者を含む機体1の合成重心からの鉛直方向に上記枢支軸の機体の幅方向における中心が位置する構成としたので、階段昇降時に座席の枢支軸を中心とする回動を行うことにより、機体のほぼ中心で合成重心を支持することができるようになる。つまり、昇降する階段の傾斜角度によって、機体の実質的な接地長(平地面への投影線長)が変化しても、常にその傾斜における合成重心の変位に対する最大の動作マージンを確保することができるため、安定的に階段昇降することが可能になる。
【0009】
したがって、クローラの接地長は、階段昇降を行うために必要とされる最低限の長さ(昇降を想定する所定の範囲の階段ピッチ(連続する2段の階段の段鼻間の最短距離)を有する階段の内、最も長い階段ピッチの2倍の長さ)とすることができ、機体そのものを小型化することができるので、例えば、奥行きの狭い階段の踊り場等において、容易に旋回することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、安定した階段昇降を維持しつつ、機体が小型化できるので、特に奥行きが狭い階段の踊り場等において、旋回がし易くなり好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る階段昇降機の側面図である。
【図3】図2の座席に係る斜視図である。
【図4】図3に示す座席をクローラ駆動部に載置した状態の斜視図である。
【図5(a)】本発明の階段昇降機の移乗モードにおける傾斜状態を示す図である。
【図5(b)】本発明の階段昇降機の平地走行モードにおける傾斜状態を示す図である。
【図5(c)】本発明の階段昇降機の階段昇降モードにおける傾斜状態を示す図である。
【図6】本発明の階段昇降機の階段走行時の状態を示す図である。
【図7】搭乗者の体重変動に対する合成重心位置の測定図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、「前後左右」という相対的な方向を示す用語は、特に断りが無い限り、本願発明の階段昇降機(以下、必要に応じて機体ともいう。)に搭乗者が着座して正面を向いた状態を基準にした時に定まる方向を示すものとする。つまり、以下の説明における「前」とは機体に着座した搭乗者の正面方向を指し、[後]とは同搭乗者の背面方向を指し、「左」とは同搭乗者の左手方向を指し、「右」とは同搭乗者の右手方向を指すものである。
【0013】
本実施形態における階段昇降機1の主要構成部は、座席2と、クローラ駆動部3とから成り、座席2とクローラ駆動部3とは、座席用支持フレーム4と伸縮シリンダ5とにより連結された構造となっている。
【0014】
図2は、本発明の実施形態に係る階段昇降機1の側面図、図3は、図2における座席2の内、座面21と背もたれ部25からなる着座面、並びにアームレスト部24を説明するための斜視図である。また、図4は、図3に示す座席2をクローラ駆動部3に載置した本願発明における階段昇降機1の斜視図である。なお、図3、並びに図4においては、説明の便宜上、以下に説明する座席2の構成部の内、フットレスト部23、把持部26について、その図示を省略している。
各構成部について以下に説明する。
【0015】
座席2は、座面21、レッグレスト部22、フットレスト部23、アームレスト部24、背もたれ部25と、階段昇降機の操作者(搭乗者の介護者等)が機体の走路誘導等をするために機体を操作するための把持部26と、からなる。
【0016】
座面21、レッグレスト部22、背もたれ部25は、一体のフレーム構造であって、搭乗者が着座し易い形状とするべく、側面から見たときに座面21を挟むN字状となるように屈曲させることで、座面21に対してレッグレスト部22と背もたれ部25とに適度な傾斜を持たせている。そして、左右のフレーム間をアルミ等の金属の板状の連結部材で連結することで、座席フレーム構造の本体を形成している。
【0017】
また、座面21、レッグレスト部22、背もたれ部25の各々における搭乗者が着座する面においては、ポリエステル等の耐荷重性、弾力性等に優れた素材で作られたシートが張架されている。
【0018】
レッグレスト部22を成す左右のフレームの先端には搭乗者の左右の足を載置するための足置き台がフットレスト部23としてそれぞれ嵌着されている。さらに、背もたれ部25を成すフレームの後面(搭乗者が着座する面とは反対側の面)にある図示しないネジ穴にボルト等による螺合を介して、背もたれ部25の長手方向(搭乗者が着座した際の頭頂部に向けた方向)に延在する様に、把持部26が固着されている。
【0019】
把持部26は、緩やかな湾曲を描きながら水平方向に延びる上下一対の第1の握り部261,261と、この第一の握り部261,261の各端部を連結する左右一対の第二の握り部262,262とによる環状構造となっており、さらに、上下一対の上記第一の握り部261,261の各中央部を連結する連結部263を備えている。
【0020】
把持部26をこのような環状構造としたのは、操作者の背丈に拘わらず、随意の場所を把持し易くするためである。例えば、背の低い者は、環状構造の内の背もたれ部25に近い側を把持し、背の高い者は、上端の側を把持することで、操作者にとって自然な姿勢を維持できるので、操作時における操作者の負担を軽減出来る。
【0021】
また、特に第二の握り部262,262を設けたことにより、例えば、階段上昇時における機体の進行方向(機体の後方への進行)に操作者と機体との双方が同時に存在することができないくらい奥行きの短い階段の踊り場にあっても、機体を旋回させることが可能になる。すなわち、このような狭い奥行きの踊り場にあっては、奥行き側にある壁と機体との間が狭いため、操作者がその間に立って操作することは叶わないが、機体の横に立つことは可能である。この際、第二の握り部262は、操作者の側に上下に延びる把持用のフレームとして存在するため、これを把持することは容易である。したがって、旋回させたい方向にある第二の握り部262を把持して、これを操作者側に引き寄せるか、或いは操作者が反対側に立って押し出すことができ、斯かる操作を例えば二回繰り返すことで奥行きの狭い踊り場での旋回も可能になるのである。階段下降時にあっても、第二の握り部262を利用することで、同様に旋回可能である。
【0022】
なお、把持部26における上記連結部263には、階段昇降機1の操作者が後述する傾斜駆動を指示するための操作部53と、操作部53と同じ筐体内に、後述する傾斜駆動手段を構成する各部を統合的に制御する制御部50が設置されている。
【0023】
一方、搭乗者が座席2に着座した時に腕を載置するためのアームレスト部24は、図3並びに図4の斜視図に示す様に、U字状の一体フレーム241(便宜上、以下の説明では、U字状フレーム241を成す各辺を、フレーム241a,フレーム241b,フレーム241cとする。)と、当該U字状フレーム241における向かい合う2辺のフレーム241a,241cの各端部を連結する連結フレーム242と、座面21の前側でU字状フレーム241の1辺241bと座面21とを連結する連結板243とからなる。
【0024】
フレーム241a,241cは、座面21と背もたれ部25とから成る着座面の前後方向(長手方向)の長さよりも長く、また、左右のアームレストとして機能させるべく、アーチ状の弧を描くように緩やかな屈曲が施されている。また、フレーム241bは、その長さが座面21の左右方向の幅よりも僅かに大とされている。
【0025】
この様に構成されたアームレスト部24は、U字状フレーム241と連結フレーム242とにより、上記着座面を囲むように、座面21の下面(搭乗者の着座する面とは反対側となるクローラ駆動部3側の面)で、連結板243を介して固着される。具体的には、連結板243は、座面21の下面に配されて座面21と固着される平面部243a(座面21と平行となる面、図2を参照のこと)と、この平面部243aから所定の角度で屈曲されて座面21の斜め下前方向に延在する屈曲部243bとを備えており、この屈曲部243bの端部でフレーム241bのほぼ中央部をヒンジを介して回動自在に支持することで、フレーム241a,241cが座席2の左右に配されるように着座面と連結されている。
【0026】
一方、連結フレーム242は、背もたれ部25の上記背面側で固定される。具体的には、連結フレーム242において、当該連結フレーム242が背もたれ部25と固定されるべき位置に、例えばラッチボルト等の係合部が配されており、この係合部が背もたれ部25の対応する箇所にある図示しない係合用穴と係合することで、必要に応じて連結フレーム242が背もたれ部25から着脱できるように固定される。
【0027】
この様に構成されたアームレスト部24は、アームレスト部24と背もたれ部25との係合状態を解除すれば、ヒンジによって支持されているフレーム241bを軸とする回動動作によって、図3に示す様に、左右のフレーム241a,241cを座面21の下側(クローラ駆動部3側)まで下げることが可能となり、アームレスト部24が搭乗者の座席2への乗り降りに対して干渉することが無くなり、利用者の搭乗がし易くなる。
【0028】
なお、座面21は、連結板243の平坦部243aと固着され、搭乗者の着座時にその体重が荷重される実質的な着座面となる平坦面21aと、斯かる平坦面21aから滑らかな傾斜を描きながらレッグレスト部22へと繋がる傾斜面21bとを備えている。この傾斜面21bは、搭乗者が着座した際のレッグレストの一部として機能する。また、この傾斜面21bは、搭乗者が上記したアームレスト部24を座面21より下方に下げた状態で機体に搭乗する際に、この傾斜を利用して搭乗者の臀部を滑らかに着座面となる平坦面21aに誘導するための誘導路としても機能する。このような誘導路を設けることにより、特に下肢に障害を有する搭乗者にとって、例えば車椅子から本発明による階段昇降機に移乗する際の利便性を高めるという効果を有する。
【0029】
なお、アームレスト部24は、正規の位置に固定された状態、つまり、連結フレーム242が背もたれ部25と係合された状態で、搭乗者のアームレストとして機能すると共に、機体の左右方向への移動を制限する機能も担っている。つまり、搭乗者の左右方向への転落等の防止につなげることができ、搭乗者は安心して着座できるようになる。
【0030】
以上により搭乗者が着座し、体重を預けることのできる座面、背面等の着座面を備えた座席2が形成されている。
【0031】
次に、クローラ駆動部3の構成について説明する。
クローラ駆動部3は、一端が側面視ソリ状に上向く左右一対の軌道フレーム30を有し、この軌道フレーム30の他端部が駆動モータ31と、図示しない減速機とを一体化する減速機ケースを介して左右に連結され、また、左右の軌道フレーム30間を連結部材を介して左右に連結することで、フレーム構造の本体を形成しており、駆動モータ31と隣接して駆動モータ31の電源となるバッテリ32を搭載している。なお、軌道フレーム30は、接地ガイドフレーム30Aと傾斜ガイドフレーム30Bとにより形成されている。
【0032】
また、減速機の出力軸である左右一対の駆動軸33には、それぞれ駆動輪34が取り付けられ、この駆動輪34と軌道フレーム30の一端側の側面視ソリ状の先端に取り付けられた左右一対の遊動輪35との間にベルトクローラ36が巻装され、このベルトクローラ36は、接地ガイドフレーム30Aにより、接地長Lを有する接地部に案内され、次いで傾斜ガイドフレーム30Bにより階段上昇時の最初の階段の段鼻をグリップするためのソリ状部に案内されて無端駆動する構成とされている。なお、接地ガイドフレーム30Aの駆動モータ31の近傍には、クローラ駆動部3の水平からの傾斜角度を検知するための傾斜センサ51が設けられている。斯かる傾斜センサ51は、走行面(階段)の傾斜角度の検出手段としても機能する。
【0033】
また、接地ガイドフレーム30Aの後ろ側の端部、つまり、傾斜ガイドフレーム30Bとの境界部におけるベルトクローラ36より機体の外側(左右の幅方向)の位置に、タンデム車輪機構6が設けられている。当該タンデム車輪機構6は、いわゆるやじろべえ形状の車輪支持板61と、その両端部に走行車輪62、62が回動自在に軸支されている。そして、車輪支持板61のやじろべえの支点に当たる中間部には枢軸63が固着されており、斯かる枢軸63は、走行車輪62、62がベルトクローラ36の接地面側に僅かに突出する高さとなる位置に設けられた、接地ガイドフレーム30Aの貫通孔に軸通されている。そして、軸通された枢軸63の他端には、フレーム30を挟んで図示しない連結片が設けられている。また、この連結片は傾斜ガイドフレーム30B側に、図示しないスプリングを介して連結されており、車輪支持板61が略水平になる様に付勢されている。これにより、走行車輪62,62は、常時(平坦地走行時)は、ベルトクローラ36より下方へ僅かに突出している状態になり、また、走行車輪62、62のいずれか一方のみに負荷が加わると、その走行車輪62は上方へ移動し、他方の走行車輪は下方へ移動し、走行車輪62,62は、枢軸63を中心に、シーソーのように交互に上下に揺動する。
【0034】
斯かるタンデム車輪機構6は、主に平地での走行車輪として機能するものである。つまり、平地においては、ベルトクローラ36での走行に換えて車輪走行とするべく、階段昇降機の操作者が、僅かに重心を走行車輪62側に移動させることで、複数の車輪により安定に支持した状態で走行させることができるのである。なお、階段昇降時においては、走行車輪の揺動機構により、ベルトクローラ36を階段の段鼻に当接させるように走行車輪62,62は交互に上下に揺動するため、ベルトクローラ36による昇降動作を妨げることはない。
【0035】
なお、本実施形態においては、ベルトクローラ36の接地長Lは、昇降可能な階段の最大ピッチ(連続する2段の階段の段鼻間の最短距離)の2倍、つまり最短接地長とされている。
【0036】
ここで、本実施形態においては、操作者が重心を走行車輪側に移動させるのに都合のよい踏み板38が設けられている。斯かる踏み板38は、クローラ駆動部3の後方下端部にある遊動輪35の近傍に設けられている。より具体的には、踏み板38の最低取付高さが、階段昇降機の昇降可能な階段における最大の蹴上(階段の高さ)より高く、且つ、踏み板38の水平方向(に投影した)長さが、昇降可能な階段の最小の踏み面(一段の奥行き)よりも小となる長さとなる条件を満たすように、クローラ駆動部3内のフレーム37に取り付けられている。
【0037】
踏み板38をこの様に取り付けることにより、平地において走行車輪62,62での走行をしたり、或いは、踊り場で操作者が走行車輪62,62を支点に旋回動作をしたりする場合において、機体の重心を少し走行車輪側に移動させる(操作者の体重をかける)という所期の目的を達成出来るのは勿論であるが、機体の階段昇降に伴って平地から階段、或いは、階段から平地に移行する際に、階段(特に平地から一段目の階段)と干渉する虞が全く無くなるので、本実施形態における様な階段昇降機の踏み板としては、たいへん好都合である。
【0038】
以上の様に構成されたクローラ駆動部3と座席2とは、座席用支持フレーム4と、伸縮シリンダ5とにより、以下に示す態様で連結されている。
【0039】
まず、座席用支持フレーム4は、座席2における座面21(より正確には座面21の平坦面21a)の下面(搭乗者が着座する面とは反対側の面)から、その法線方向に延びる2本の支持フレーム41,41であって(図3、図4参照のこと)、斯かる2本の支持フレーム41,41は、座面21の下面において、上述した連結板243の平面部243aと共に同一面内で座面21の左右方向(機体の幅方向)に所定の間隔だけ離された状態でボルト等によって固着されている。そして、支持フレーム41,41の他端は、いずれも軸棒42に固着されており、かかる軸棒42は、座席2を前後方向に回動可能とする様に枢支するための枢支軸42として、クローラ駆動部3における左右の軌道フレーム30、30(より正確には、接地ガイドフレーム30A、30A)上であって、クローラ接地長Lのほぼ半分に相当する位置(ベルトクローラ36の接地部のほぼ中央)に支点42A、42Aを有する様に軸支される。
【0040】
なお、支持フレーム41,41の座面21に固着される位置の近傍には、座面21の傾斜角度を検出するための傾斜センサ52が設けられている。
【0041】
次に、伸縮シリンダ5は、その一端が座面21の下部を支持すると共に、他端がクローラ駆動部3を支持する構成とされている。具体的には、座面21の下部に固着されている連結板243における平面部243aと屈曲部243bとの境界部近傍であって、座面21の左右の幅方向のほぼ中央となる位置に、伸縮シリンダ5のシャフトの一端を枢支するための軸受金具243cが設けられている。そして、この伸縮シリンダ5のシャフトの一端には、図示しない軸棒が設けられており、この軸棒を軸受金具243cで、軸支している。したがって、伸縮シリンダ5は、軸受金具243cで軸支された軸を中心に回動可能である。
【0042】
一方、伸縮シリンダ5の他端は、軌道フレーム30を成す接地ガイドフレーム30Aと傾斜ガイドフレーム30Bとの境界部近傍であって、クローラ駆動部3の左右の幅方向のほぼ中央となる位置に軸受金具301が設けられており、この軸受金具301によって枢支されている。そして、伸縮シリンダ5の上記シャフトは座席用支持フレーム4を成す2本の支持フレーム41,41の間を通る位置に配されており、これにより座席用支持フレーム4と互いに干渉することなく伸縮動作を行うことが可能とされている。そして、伸縮シリンダ5の伸縮動作に連動して座席2は、座席用支持フレーム4の枢支軸42の支点42Aを中心に回動するのである。
【0043】
具体的には、伸縮シリンダ5の伸長動作に応じて、座面21の下部に設けられた伸縮シャフトの支点が前方に押し出されることになるが、一方で座席用支持フレーム4が枢支軸42で枢支されていることにより、伸縮シリンダ5からの前方へ押し出す直線状の力は支持フレーム41の長さを半径とする円弧状の力となって座席2を前方に回動させる。同様に、伸縮シリンダ5の縮小動作に応じて、座席2を後方に回動させる。
【0044】
この際、座席用支持フレーム4(支持フレーム41,41)は、座面21の下部に固着されているため、座面21との位置関係は変わることはなく、座面21とは常に一体的に移動することになる。したがって、伸縮シリンダ5の伸縮動作に伴う回動に応じて、座面21は座席用支持フレーム4が描く円弧上の接線方向を向いたまま回動することになる。つまり、伸縮シリンダ5の伸縮状態に応じて、座面21の水平に対する傾斜角度が変わるのである。
【0045】
なお、本実施形態においては、上記した制御部50、クローラ駆動部3に設けられる傾斜センサ51、座席用支持フレーム4に設けられる傾斜センサ52、操作部53、伸縮シリンダ5とにより傾斜駆動手段を構成する。制御部50は、傾斜センサ51,52、操作部53、伸縮シリンダ5の図示しない駆動回路との間でそれぞれ電気的な接続がされており、操作部53からの操作信号と、傾斜センサ51、52の検出信号に基づいて伸縮シリンダ5の伸縮動作を制御する。
【0046】
また、傾斜駆動をするにあたって、本発明においては、支持フレーム41,41が座面21に固着される位置について、事前に以下のような調整がされている。
【0047】
すなわち、座席2の中立状態(クローラ駆動部3が平地(水平状態)に置かれ、座面21が水平、つまり傾斜センサ51、52で検出した傾斜角度がいずれも0度とされた状態であり、以後、必要に応じて機体の水平状態ともいう。)において、左右方向(座席2の幅方向)に所定の距離だけ離間して配置されている2本の支持フレーム41,41の中間点(上記所定の距離の半分の位置)を通り、且つ、支持フレーム41,41と平行な直線上(即ち、座面21の法線方向)に、搭乗者を含む機体1の合成重心が存する位置となる様に座面21と座席用支持フレーム4との相対的位置の調整がされている。つまり、座席2の中立状態において、座席2を回動せしめるための枢支軸42は、その支点42Aが機体1の接地長Lの略半分の位置(ベルトクローラの接地部の略中央)にあると共に、枢支軸42の幅方向(左右の方向)の中間位置(以下、便宜上、この中間位置を機体1の原点Oという。)で合成重心からの鉛直線と交わるように位置調整されて座面2と座席用支持フレーム4とが固着されているのである。
【0048】
本実施形態における階段昇降機は、以上の様に構成されている。
次に、この様に構成された階段昇降機1における、階段昇降動作について、図5、図6を用いて説明する。
【0049】
本実施形態における階段昇降機1には、制御部50が傾斜制御する動作形態として、移乗モード、平地走行モード、階段昇降モードの3つの走行モードがある。制御部50は、操作者が操作部53に設けられた図示しないモード選択スイッチを介して、これら走行モードの何れかのモードが指示されると、それに応じて、以下の動作を行う。
【0050】
移乗モードとは、下肢等に障害を有する搭乗者が座席2への移乗(例えば車椅子から本発明の階段昇降機に乗車したり、またその逆に階段昇降機から車椅子に乗り移る態様)等が中心となる搭乗を行う際の制御形態であり、操作者により操作部53にあるモード選択スイッチで移乗モードが選択されると、制御部50は、傾斜センサ51を介して、機体1が平地にあること(クローラ駆動部3の傾斜角度が0°であること)をまず確認する。平地である場合には、機体を停止状態にし、その後、座席2(座面21)の傾斜角度を0°とする位置まで伸縮シリンダ5を介して座面21を傾斜制御する。ここで言う傾斜角度0°とは、図5(a)に示す通り、機体1の原点Oを含む、クローラ駆動部3の底面(接地部)と平行な面に対して、座席用支持フレーム4が、座面21の法線方向に向く様に制御された状態であり、座席用支持フレーム4に固着された座席2の座面21がクローラ駆動部3の接地部と平行状態にある角度のことを示している。以下、この角度位置をPOS1という。本実施形態における座面21の傾斜角度は、このPOS1を基準軸として、このPOS1からの機体の前後方向の傾斜角度で表したものである。制御部50は、傾斜センサ51、52からの検知信号に基づいて、クローラ駆動部3と座席2との相対的な傾斜角(即ち、上記POS1を基準軸とする角度)を演算し、これに基づいて伸縮シリンダ5の伸縮駆動を行う。
【0051】
この様に平地で座席がPOS1に移動されることで、座席2が水平状態に置かれることになる。この状態でアームレスト部24の背もたれ部25との係合を解除することにより、階段昇降機の利用者が容易に移乗をすることができるのである。
【0052】
なお、移乗モードが選択された際に機体1が平地にいない場合には、図示しない報知手段によって、その旨が報知される様にしてもよいし、或いは、アームレスト部24の背もたれ部25との係合が解除されない様にしてもよい。この様にすることで、操作者に機体1が平地状態にないことを知らしめることが出来ると共に、平地で無い場所で機体1へ搭乗することを抑制できるので、もって不慮の事故の防止に繋がり好ましい。
【0053】
移乗モードにおいては、搭乗者を含む機体1の合成重心がPOS1上にある。この例では、日本人の成人男子(20代以上)の平均的な身体値(身長と体重)である166.9cm、65.8Kg(厚生労働省 平成19年国民健康・栄養調査報告から)の搭乗者を想定した場合の合成重心をg1で示している。機体1は外乱による合成重心の変動に対して機体接地長Lの半分(L/2)に亘る長さのマージンがあるため、搭乗者が搭乗する際に座面を中心とする合成重心位置の移動が生じたとしても斯かる重心移動により発生する回転モーメントに対して支持可能なフレーム長には十分なマージンがあり、安定した搭乗が可能となる。
【0054】
次に、平地走行モードについて説明する。平地走行モードとは、搭乗者が座席2に着座後に、平地走行する際の制御形態であり、ベルトクローラ36または走行車輪(タンデム車輪)62、62を利用した平地走行を開始すると共に、上述したPOS1を基準とする座席の傾斜角度を20°(以後、この角度位置をPOS2という。)まで傾斜制御する。平地走行時において傾斜制御するのは、ベルトクローラ36ではなく、タンデム車輪62、62を利用した移動が中心になるからである。つまり、後述するように、座席を傾斜することで、合成重心がタンデム車輪62,62側に移動するため、操作者は、殊更自身の体重をかけることなく容易に機体をタンデム車輪62、62で支持するように傾けることができ、しかも安定した状態で機体の移動操作ができるのである。また、搭乗者はやや後傾姿勢となることで安心感が生じることが知られており、双方にとって好都合でもある。なお、操作者による平地走行モードの選択が、階段昇降中に行われた場合には、機体が平地に移動する(水平になる)まで待ってから座席の傾斜制御が行われる。
【0055】
平地走行モードにおいては、搭乗者を含む機体1の合成重心がPOS2上のg2に移動するが、このg2の鉛直線上はタンデム車輪62,62の略中央の枢軸63の近傍に位置している。つまり、本発明の階段昇降機によれば、POS1において機体1の原点O上に座席2の枢支軸を配置したことにより、平地走行において搭乗者にやや後傾姿勢となる乗車とすることで、合成重心がg1からg2に移動しても、g2の鉛直方向は、タンデム車輪62,62によって支持されることになる。つまり、g2により発生する回転モーメントに対して支持可能なフレーム長は、機体後方に向かって、走行車輪62相当分以上の長さのマージンがあり、依然として十分安定に走行することができると共に、上述した通り、合成重心がタンデム車輪上に移動するので、タンデム車輪を利用した平地走行が容易になる。
【0056】
次いで、階段昇降モードについて説明する。階段昇降モードとは、搭乗者を乗車させた状態で階段昇降する際の制御形態であり、具体的には上述のPOS1を基準とする座席の傾斜角度を33°まで傾斜(以後、この角度位置をPOS3という。)させて、階段昇降状態とする。より具体的には、制御部50は、階段上昇時においては、階段上昇を開始したことに伴う傾斜センサ51による機体の傾斜を感知すると、POS2からPOS3への傾斜駆動を行う。
【0057】
一方、階段下降時においては、例えば、階段の踊り場から下降する階段に向けて機体を傾斜させた状態で、機体の移動を一旦停止し、次いで、POS2からPOS3への傾斜駆動を行った後、下降のための移動を再開する。
【0058】
階段昇降モードにおいては、図5(c)に示す通り、搭乗者を含む機体1の合成重心がPOS3上のg3に移動する。機体1が平地にある場合においては、このg3の鉛直線上は走行車輪62,62の後方に位置する。したがって、平地において階段昇降に適した座席の傾斜角度(POS3)とすることで、合成重心g3を支持するクローラ駆動部のマージンは厳しくなるものの、本願発明によれば、POS2からPOS3への移動は、クローラ駆動部3の階段走行と共に成されるため、例えば平地から階段への移行により、徐々に機体が傾斜することに伴い、座席2はPOS2からPOS3に徐々に傾斜状態が移動する。つまり、機体1の合成重心がg2からg3に移動する際には、機体も傾斜状態になるため、g3の鉛直方向も、機体1の走行車輪62,62の近傍から機体1の原点Oの近傍に向けて徐々に移動していくのである。この様に、本発明の階段昇降機によれば、階段走行においても、図6に示す様に、合成重心を機体の原点O近傍で支持した昇降動作となり、回転モーメントに対して依然として十分なマージンを確保した状態で動作できるのである。
【0059】
なお、上記実施形態においては、POS1,POS2,POS3で示される所定の角度については、各走行モードに対する制御角度のテーブルとして制御部50内にある図示しないメモリに記憶されており、制御部50は、各走行モードに対応した記憶値を参照して、所望の傾斜制御を行う。また、当然のことながら、上記実施形態で示した20°、33°という角度は、一例に過ぎず、必要に応じて、適宜変更することは可能である。
【0060】
また、上記実施形態においては、各走行モードに対して、座席の傾斜角を一定の値(20°、33°)に切り換える例について説明したが、これに限らず、例えば、傾斜センサ51、52からの検知信号を常時監視して、座面21の傾斜角度(POS1を基準軸とする傾斜角)が、常にクローラ駆動部3の水平からの傾斜角度と一致する様に適応的に制御することで、常に機体の合成重心が機体の原点Oの近傍に向く様にすることが可能となり、より安定性が向上する。この際、必要なら、上記クローラ駆動部3の傾斜角度に所定のオフセット(例えば5°)を増減した角度となる様に適応制御することもできる。また、平地走行モードと階段昇降モードとで、上記所定のオフセット量を変える様にしても構わないし、移乗モードと平地走行モードについては本実施形態で説明した態様にして、階段昇降モードだけに適応制御を適用するようにすることも可能である。
【0061】
ところで、上記実施形態においては、搭乗者として日本人の成人男子の平均的な身体値(身長と体重)を持つものとして、合成重心を求めた例を示しているが、本発明者は、一定の架台上で一定の椅子に着座した者の体重を変えることにより、合成重心の位置がどの様に変動するかを実験により測定している。具体的には、重さ30Kgの車椅子搭載フロアにJIS規格番号9201に準拠する重さ15Kgの車椅子を載置し、この車椅子に、24Kgから135Kgのダミー人形を搭載したときの合成重心を測定した。図7に測定結果としての重心位置の変動位置を黒丸で示している。
【0062】
この測定結果によると、重心位置の変動は、鉛直方向での変動が支配的であって、前後左右方向への変動は本発明の昇降制御の観点においては、考慮する必要の無い程度の僅かな変動でしかないことが分かった。
【0063】
したがって、座面21と座席用支持フレーム4とその枢支軸42、並びに合成重心との位置関係を本実施形態で開示した様に設定することにより、搭乗者の体重に拘わらず本発明による技術的効果を享受できる。
【0064】
なお、本実施形態においては、座席2において、座面21と連結板243とは固着することで一体的構造とされているが、以下に示すようなスライド機構を有してもよい。具体的には、例えば連結板243aの左右方向の端部に、直線状の歯付レールを平行に2本設置し、かかる2本の歯付レールとそれぞれ歯合する4本の歯車並びに斯かる歯車を駆動するモータを座面21の下面の四隅に取り付けることで、いわゆるラック式の軌道機構を構成し、連結板243に備えつけられた座席用支持フレーム4と、座面21との相対的位置を機体の前後方向に移動制御することが出来るようにするものである。
【0065】
本実施形態によると、例えば、階段昇降から踊り場等の平地走行に移ると、平地走行モードとするべく座席2の傾斜がPOS2とされるが、踊り場の奥行きが狭い場合には、POS2の位置であっても踊り場の奥行きに比較して、機体長が長くなり、旋回がしにくい場合がある。この様な場合に、座席2の位置が最も機体1の前方向となる位置にスライド機構をして調整することで、把持部26を含む座席2が前方向に移動するので、機体1の全長を短くできるのである。これにより、狭小な奥行きをもつ階段踊り場での旋回が可能になる。そして、再び階段昇降するに際しては、スライド機構により、当初の位置に戻すことで、安定した階段昇降を行うことができる。
【0066】
また、この様なスライド機構があることにより、例えば、平地から階段昇降に移行する際に、より安定した階段への侵入が可能になる。つまり、階段への侵入時、水平状態から傾斜状態への急激な傾斜変動により、前方への回転モーメントが発生し、前に倒れやすい状況になる。この際、スライド機構により機体後方に座席を移動させることで、合成重心が機体後方に移ることになり、前方への回転モーメントによる危険を緩衝することができる。同様に、階段昇降動作から平地に移行する際に、傾斜状態から水平状態への急激な傾斜変動により、後方への回転モーメントが発生し、後方へ転倒する虞が生じるが、スライド機構により平坦地への進入時に座席を機体前方向に位置させることで、合成重心が前方に移動することになり、後方への転倒の危険性を緩衝することができる。
【0067】
以上の様に、本願発明によれば、座席2を指示する座席用支持フレーム4の枢支軸の支点をクローラ駆動部3の接地長のほぼ中央で支持すると共に、機体1を水平状態にした際に、搭乗者を含む機体1の合成重心からの鉛直方向に上記枢支軸の幅方向(左右の方向)における中心がくる構成としたので、平地走行時は勿論、階段昇降時においても合成重心の移動による回転モーメントに対する支持体を常に機体の原点近傍とすることが可能となり、機体の接地長が、昇降可能な階段に対する最大ピッチ長の少なくとも2倍となる、いわゆる最低接地長であっても、十分なマージンを確保することができる。したがって、所望の階段に対する昇降能力を維持したまま、機体の小型化が図れるので、好ましい。
【符号の説明】
【0068】
1 階段昇降機
2 座席
21 座面
22 レッグレスト部
23 フットレスト部
24 アームレスト部
241 U字状フレーム
242 連結フレーム
243 連結板
25 背もたれ部
26 把持部
261 第1の握り部
262 第2の握り部
263 連結部
3 クローラ駆動部
30 軌道フレーム
30A 接地ガイドフレーム
30B 傾斜ガイドフレーム
31 駆動モータ
32 バッテリー
33 駆動軸
34 駆動輪
35 遊動輪
36 ベルトクローラ
37 カバーフレーム
38 踏み板
4 座席用支持フレーム
41 支持フレーム
42 枢支軸
42A 支点
5 伸縮シリンダ
50 制御部
51、52 傾斜センサ
53 操作部
6 タンデム車輪機構
61 車輪支持板
62 走行車輪
63 枢軸
L 接地長
O 機体の原点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段における連続する3つの段鼻と接触可能な長さの接地長を有するベルトクローラと、
当該ベルトクローラの接地部の軌道を画定する軌道フレームと、
搭乗者用の座席を支持すると共に、前記軌道フレームに支点を有する枢支軸で枢支された座席用支持フレームと、
当該座席用支持フレームを、前記枢支軸を中心に回動させることで、前記座席を傾斜せしめる傾斜駆動手段と
を備えた階段昇降機であって、
前記枢支軸は、当該枢支軸の前記支点が、前記ベルトクローラの接地部のほぼ中央にあると共に、機体の水平状態において、前記枢支軸の機体の幅方向における中心が、当該機体と搭乗者の合成重心からほぼ鉛直方向に存在する位置にある
ことを特徴とする階段昇降機。
【請求項2】
前記傾斜駆動手段は、前記機体の走行状態を指示する選択手段と、当該選択手段により選択された走行状態に応じた前記座席の傾斜角度を記憶した記憶手段を備え、選択された機体の走行状態に対応する前記傾斜角度に基づいて前記座席を傾斜せしめることを特徴とする請求項1に記載の階段昇降機。
【請求項3】
前記傾斜駆動手段は、前記階段の傾斜角度を検出する傾斜検出手段を備え、検出した傾斜角度に応じて前記座席を傾斜せしめることを特徴とする請求項1に記載の階段昇降機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−65808(P2012−65808A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212616(P2010−212616)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000106634)株式会社サンワ (6)