隔壁密封容器を備える加圧された閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法
本発明は、加圧された閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法に関する。その方法は、上面に露出部分を有する隔壁で密封された容器を含み、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系を用意するステップを含む。硬質構成部品の接触面は、隔壁の露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するように、隔壁の露出部分の境界部分の少なくとも一部分又は中心部分の少なくとも一部分、或いはそれらの両方に隣接又は接触するように固定して配置される。本発明はまた、硬質構成部品を含む加圧された閉鎖系の漏出抵抗性を高めるためのキットにも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針と隔壁との境界における漏出抵抗性を高める方法に関する。より詳細には、本発明は、少なくとも約5psigの正圧下に維持された、隔壁密封容器を含む閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
薬剤、試薬、又は他の薬学関連物質を保持し、滅菌性を維持するために使用されるバイアル及び他の市販の容器は、一般に、高い正圧に耐えるように設計されていない隔壁で密封されている。こうした隔壁密封容器中の化合物又は製品を移送するには、安全且つ効率的に患者又はレセプタクルに注入するために、容器を通してその製品をフラッシングし押し出す必要がある場合がある。2針型システムを使用して、隔壁密封容器のフラッシング及び洗浄を容易にすることができる。一方の針はフラッシング流体を押し通し、第2の針は、製品及びフラッシング流体を抜き出して移送管を通して患者に送る。容器から患者への移送管は、通常、内径が非常に小さい、長いカテーテルである。長さが長く且つ直径が小さいと、カテーテルの入口から出口までの圧力降下が非常に大きくなる。したがって、カテーテルを通して流体を移動させるために必要になるポンプ力のため、密封容器に生じる背圧が大きくなる。これらのタイプの密封容器における漏出により、製品の完全性が失われる虞がある(特に、滅菌性が失われること、危険物質又は有毒物質が流出すること、及び効率的な処理のための十分な有効成分が失われること)。
【0003】
一例として、長さ1メートルの3フレンチカテーテルを通して流速約1mL/secで水を流すと、約120psigの圧力降下が必要になる。3フレンチカテーテルは、外径1mm、内径約0.6mmである。1mL/secの流速は適度であるが、この圧力の大きさ(120psig)は非常に高く、隔壁のシールは、典型的には、こうした圧力に耐えるように設計されていない。
【0004】
したがって、(TheraSphere(登録商標)Y−90ガラスマイクロスフェア又はSIRSpheres(登録商標)Y−90レジンマイクロスフェアなど、治療用マイクロスフェアの場合と同様に)元々の容器から製品を安全に又は効率的に抜き出すことが難しい場合に、こうした高い圧力に対する隔壁の抵抗を改善する方法が必要である。隔壁密封容器内の基材に化学試薬を加えた後で混合するか又はすすぐなど、高い漏出抵抗性が望まれる他の適用例があり得る。こうした適用例は、最初は不活性であるマイクロスフェアに有効成分を追加するステップも含むことができ、このステップは、混合ステップもすすぎステップも含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、針と隔壁との境界における漏出抵抗性を高める方法に関する。より詳細には、本発明は、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている、隔壁密封容器を含む閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、加圧された閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法であって、
上面に露出部分を有する隔壁によって密封された容器を備え、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系を用意するステップと、
隔壁の露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するように、
(i)隔壁の露出部分の内側に配置された境界部分の少なくとも一部分であって、境界部分が、隔壁の露出部分の周縁部に隣接し、周縁部に沿って延び、隔壁の露出部分の周縁部と一致する外周と、隔壁の露出部分の内側に配置された内周とを有し、それらの内周及び外周が境界部分の領域を画定する、境界部分の少なくとも一部分、又は
(ii)隔壁の露出部分の中心部分の少なくとも一部分であって、中心部分が、隔壁の露出部分の中心から境界部分の内周まで延び、境界部分の内周によって画定された領域を有する、中心部分の少なくとも一部分、或いは
(iii)(i)及び(ii)の両方
に隣接又は接触するように、硬質構成部品の接触面を固定して配置するステップと
を含む方法が提供される。
【0007】
上記の方法のいくつかの例では、閉鎖系で維持される正圧は、約5psig〜約350psigの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、約5psig〜約35psig又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、或いは約50psig〜約350psig又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲にある。
【0008】
他の例では、硬質構成部品の接触面は、実質的に平坦であるか、又は実質的に平坦な円形の面である。
【0009】
本発明はまた、硬質構成部品が、1又は2以上の針を収容する1又は2以上の通路を有し、硬質構成部品の接触面が、1又は2以上の開口部を有し、その開口部を通って1又は2以上の針が延びる、上記で定義した方法にも関する。1又は2以上の針のそれぞれの端部が、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部から、1又は2以上の針の各端部によって露出部分を穿刺することによって、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を通って延びることができる。
【0010】
上記で定義した方法のさらなる例では、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部は、接触面の中心部分の内側に配置されるか、接触面の端部又は周縁部に隣接して配置されるか、又は接触面の中心部分に配置された一開口部である。さらに、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を、隔壁の露出部分の中心部分の内側に配置するか、又は隔壁の露出部分の端部又は周縁部に隣接して配置することができる。
【0011】
硬質構成部品の接触面上にある1又は2以上の開口部の全面積は、隔壁の露出部分の面積よりも小さくてよい。他の例では、硬質構成部品の接触面の面積は、隔壁の露出部分の面積と同じであるか、それよりも小さいか、又はそれよりも大きい。
【0012】
上記で説明した方法で定義された中実構成部品は、1又は2以上の通路内の1又は2以上のニードルガイドチューブを備えることができ、その1又は2以上のニードルガイドチューブは、1又は2以上の針の横方向の移動、並びに隔壁の湾曲及びそれに続く歪みを防止する。
【0013】
上記で定義された方法で定義された容器は、ヒト患者又は動物患者に注入するための、又はデリバリシステムなどの別のベッセル容器に送達するための製品を収容することができ、その製品は、薬学的に有効な製品、放射性製品、若しくはそれらの混合物、又は薬学的に有効な製品若しくは放射性製品を含む構成物若しくは医療デバイス、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体、例えば、薬学的に有効な製品又は放射性製品を含む任意のサイズ又は形状のマイクロ粒子又はナノ粒子などの粒子を含む。さらに、その容器は、混合するか又はすすぐために使用することができる。
【0014】
さらなる例では、金属又はプラスチックの圧着シールなど、圧着シールによって、隔壁を容器に封止することができる。
【0015】
さらなる例では、上記で説明した方法はさらに、隔壁密封容器から物質を移送するときに、外力を用いて隔壁を圧縮するステップを含むことができる。
【0016】
別の態様では、本発明は、上面に露出部分を有する隔壁によって密封された容器を備え、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系の漏出抵抗性を高めるためのキットであって、
接触面を有する硬質構成部品と、
隔壁の露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するように、硬質構成部品を使用する取り扱い説明と
を備える、キットに関する。
【0017】
本発明はまた、取り扱い説明が、
(i)隔壁の露出部分の内側に配置された境界部分の少なくとも一部分であって、境界部分が、隔壁の露出部分の周縁部に隣接し、周縁部に沿って延び、隔壁の露出部分の周縁部と一致する外周と、隔壁の露出部分の内側に配置された内周とを有し、それらの内周及び外周が、境界部分の領域を画定する、境界部分の少なくとも一部分、又は
(ii)隔壁の露出部分の中心部分の少なくとも一部分であって、中心部分が、隔壁の露出部分の中心から境界部分の内周まで延び、境界部分の内周によって画定された領域を有する、中心部分の少なくとも一部分、或いは
(iii)(i)及び(ii)の両方
に隣接又は接触するように、硬質構成部品の接触面を固定して配置するステップを説明している、上記で定義したキットにも関する。
【0018】
上記のキットのいくつかの例では、閉鎖系で維持される正圧は、約5psig〜約350psigの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、約5psig〜約35psig又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、或いは約50psig〜約350psig又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲にある。
【0019】
他の例では、硬質構成部品の接触面は、実質的に平坦であるか、又は実質的に平坦な円形の面である。
【0020】
本発明はまた、硬質構成部品が、1又は2以上の針を収容する1又は2以上の通路を有し、硬質構成部品の接触面が、1又は2以上の開口部を有し、その開口部を通って1又は2以上の針が延びる、上記で定義したキットにも関する。1又は2以上の針のそれぞれの端部が、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部から、1又は2以上の針の各端部によって露出部分を穿刺することによって、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を通って延びることができる。
【0021】
上記で定義したキットのさらなる例では、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部は、接触面の中心部分の内側に配置されるか、接触面の端部又は周縁部に隣接して配置されるか、又は接触面の中心部分に配置された一開口部である。さらに、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を、隔壁の露出部分の中心部分の内側に配置するか、又は隔壁の露出部分の端部又は周縁部に隣接して配置することができる。
【0022】
上記で説明したキットに含まれる硬質構成部品の接触面上にある1又は2以上の開口部の全面積は、隔壁の露出部分の面積よりも小さくてよい。他の例では、硬質構成部品の接触面の面積は、隔壁の露出部分の面積と同じであるか、それよりも小さいか、又はそれよりも大きい。
【0023】
上記で説明したキットで定義された中実構成部品は、1又は2以上の通路内に1又は2以上のニードルガイドチューブを備えることができ、1又は2以上のニードルガイドチューブは、1又は2以上の針の横方向の移動、並びに隔壁の湾曲及びそれに続く歪みを防止する。
【0024】
上記で定義したキットはさらに、隔壁で密封された容器を備えることができ、その容器は、ヒト患者又は動物患者に注入するための、又はデリバリシステムなどの別のベッセル容器に送達するための製品を収容することができ、その製品は、薬学的に有効な製品、放射性製品、若しくはそれらの混合物、又は薬学的に有効な製品若しくは放射性製品を含む構成物若しくは医療デバイス、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体、例えば、薬学的に有効な製品又は放射性製品を含む任意のサイズ又は形状のマイクロ粒子又はナノ粒子などの粒子を含む。さらに、その容器は、混合するか又はすすぐために使用することができる。
【0025】
さらなる一例では、金属又はプラスチックの圧着シールなど、圧着シールによって、隔壁を容器に封止することができる。
【0026】
上記で説明したキットは、硬質構成部品を隔壁の露出部分に対して固定位置に留めるインジェクタアセンブリを含むこともできる。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、上面に露出部分を有する隔壁で密封された容器を備え、少なくとも約5psigの正圧下で維持されている閉鎖系の漏出抵抗性を高める、接触面を有する硬質構成部品の使用に関し、硬質構成部品の接触面は、隔壁の露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するのに適している。
【0028】
さらなる態様では、本発明は、隔壁の露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小する接触面を有する硬質構成部品の使用に関し、隔壁の露出部分は隔壁の上面に配置され、隔壁は容器に封止され、隔壁で密封された容器は、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系の一部分を形成する。
【0029】
本発明はまた、
(i)隔壁の露出部分の内側に配置された境界部分の少なくとも一部分であって、境界部分が、隔壁の露出部分の周縁部に隣接し、周縁部に沿って延び、隔壁の露出部分の周縁部と一致する外周と、隔壁の露出部分の内側に配置された内周とを有し、それらの内周及び外周が、境界部分の領域を画定する、境界部分の少なくとも一部分、又は
(ii)隔壁の露出部分の中心部分の少なくとも一部分であって、中心部分が、隔壁の露出部分の中心から境界部分の内周まで延び、境界部分の内周によって画定された領域を有する、中心部分の少なくとも一部分、或いは
(iii)(i)及び(ii)の両方
に隣接又は接触するように、硬質構成部品の接触面を固定して配置する、上記で定義した使用にも関する。
【0030】
上記の使用のいくつかの例では、閉鎖系で維持される正圧は、約5psig〜約350psigの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、約5psig〜約35psigの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、或いは約50psig〜約350psigの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲にある。
【0031】
上記で説明した使用の他のいくつかの例では、硬質構成部品の接触面は、実質的に平坦であるか、又は実質的に平坦な円形の面である。
【0032】
本発明はまた、硬質構成部品が、1又は2以上の針を収容する1又は2以上の通路を有し、硬質構成部品の接触面が、1又は2以上の開口部を有し、その開口部を通って1又は2以上の針が延びる、上記で定義した使用に関する。1又は2以上の針のそれぞれの端部が、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部から、1又は2以上の針の各端部によって露出部分を穿刺することによって、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を通って延びることができる。
【0033】
上記で定義した使用のさらなる例では、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部は、接触面の中心部分の内側に配置されるか、接触面の端部又は周縁部に隣接して配置されるか、又は接触面の中心部分に配置された一開口部である。さらに、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を、隔壁の露出部分の中心部分の内側に配置するか、又は隔壁の露出部分の端部又は周縁部に隣接して配置することができる。
【0034】
本発明はまた、硬質構成部品の接触面上にある1又は2以上の開口部の全面積は、隔壁の露出部分の面積よりも小さい、上記で定義した使用にも関する。他の例では、硬質構成部品の接触面の面積は、隔壁の露出部分の面積と同じであるか、それよりも小さいか、又はそれよりも大きい。
【0035】
上記で説明した使用で定義された中実構成部品は、1又は2以上の通路内に1又は2以上のニードルガイドチューブを備えることができ、1又は2以上のニードルガイドチューブは、1又は2以上の針の横方向の移動、並びに隔壁の湾曲及びそれに続く歪みを防止する。
【0036】
本発明はまた、上記で説明した使用にも関し、容器は隔壁で密封されており、その容器は、ヒト患者又は動物患者に注入するための、又はデリバリシステムなどの別のベッセル容器に送達するための製品を収容することができ、その製品は、薬学的に有効な製品、放射性製品、若しくはそれらの混合物、又は薬学的に有効な製品若しくは放射性製品を含む構成物若しくは医療デバイス、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体、例えば、薬学的に有効な製品又は放射性製品を含む任意のサイズ又は形状のマイクロ粒子又はナノ粒子などの粒子を含む。さらに、その容器は、混合するか又はすすぐために使用することができる。
【0037】
さらなる一例では、金属又はプラスチックの圧着シールなど、圧着シールによって、隔壁を容器に封止することができる。
【0038】
本発明のこれらの及び他の特徴は、添付の図面を参照する以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】鋭利なベベル端部を有する、近位では制限され遠位では制限されない針を、エラストマー系隔壁を通して挿入することによる湾曲した結果を示す。
【図2】隔壁密封容器の隔壁の露出部分に隣接する位置に硬質の足場(scaffold)を配置するステップを含む、隔壁の変形を低減する本発明による方法の一例を示す。
【図3】隔壁密封容器の隔壁の露出部分に接触させて足場を配置するステップを含む、隔壁の変形を低減する本発明による方法の一例を示す。
【図4】隔壁密封容器の隔壁の露出部分と接触させて足場を配置するステップと、その足場に外部の圧縮力を加えるステップとを含む、隔壁の変形を低減する本発明による方法のいくつかの例を示す。
【図5】隔壁密封容器の隔壁の露出部分と接触させて足場を配置するステップと、その足場に外部の圧縮力を加えるステップとを含む、隔壁の変形を低減する本発明による方法のいくつかの例を示す。
【図6】本発明による隔壁の一例の露出部分の上面図を示す。
【図7A−C】本発明による足場のいくつかの例の底面図を示す。
【図8A−C】図6に示す隔壁の露出部分と接触している、図7A〜図7Cに示す足場の例の断面上面図を示す。足場の接触面は、図では、各足場と隔壁の露出部分との間の接触領域を示すのを助けるために網掛けしている。
【図9】本発明による足場を備えたインジェクタアセンブリの一例の断面立面図を示す。
【図10】隔壁密封バイアルの隔壁の露出部分に隣接して配置された図9に示すインジェクタアセンブリの断面立面図を示す。
【図11】隔壁密封バイアルの隔壁の露出部分に隣接して配置された図9に示すインジェクタアセンブリの断面立面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、針と隔壁との境界における漏出抵抗性を高める方法に関する。より詳細には、本発明は、少なくとも約5psigの正圧下に維持された、隔壁密封容器を含む閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法を提供する。
【0041】
圧力下で隔壁密封容器から最初に漏出する通常の位置は、隔壁と針との境界である。隔壁密封容器の漏出(又は圧力)抵抗性は、隔壁を容器に留めるシールを圧着した直後には適度に高くすることができるが、その値は、ほとんどのエラストマー系シール材で必然的に起きるクリープ(ストレス下にある間の永久的な変形又は弛緩)のため徐々に低下する。漏出抵抗性の低下は、バイアルの内容物によって、つまり製品と隔壁との間の化学的相互作用又は物理的相互作用によって加速する場合がある。Y−90マイクロスフェアの場合は、製品が放射するベータ粒子によって生じる放射線損傷によって物理的相互作用が起きる。隔壁に対して相互作用する物質の位置は、損傷、及びそれに続くクリープ又は弛緩の割合を判定する際の主な因子である。「弛緩」している隔壁の漏出抵抗性は5psig未満になる虞がある。
【0042】
隔壁密封容器の高圧試験中に観察されたことによると、試験下の隔壁が、内圧によって外に「隆起」する(すなわち、ひどいゆがみ又は大きい歪みを受ける)傾向があり、その内圧は隔壁の漏出抵抗性を徐々に低下させた。図1に、隔壁10上の望ましくない歪みの別の形態を示す。こうした歪みは、針20a、20bが隔壁中に挿入されるときに、具体的には、先端部がベベル断面30で鋭利になっている針の場合に起きる。ベベル断面の針が隔壁10中に挿入されるときには、鋭利な先端部で作られる最初の開口部は隔壁10の本体内に傾斜した孔を作り出し、針20a、20bが横方向の制限なしで挿入される場合にその傾斜した孔を追従する傾向がある。本発明では、用語「針」は、中空のチューブ若しくはカニューレ、又はシリンジ様の針を指す。マイクロスフェアを流体化し、隔壁密封容器から移送する場合など、場合によっては、最適な流れの特徴(すなわち、マイクロスフェアの急速な流体化及び移送)のために、針を正確に配置することが重要である。これらの場合のいくつかでは、横方向の移動を針の遠位端では制限せず、針の近位端で制限するようにして、針を挿入する可能性がある。こうした針は、最初の孔の方向を追従するように曲がる。
【0043】
先端部がベベル断面である、近位では制限され遠位では制限されない針を挿入し終わるときには、望ましくない2つの結果が生じる。まず、針が曲がり、容器中の望ましい位置に配置できなくなる虞がある。次に、針が曲がったため、隔壁がひどい横方向の歪みを受け、その歪みは、隔壁を通る針の挿入領域50に局在化する。こうした歪みは、隔壁が膨らんだ加圧バイアルで、近位では制限され遠位では制限されない針を使用する場合に大きくなる。したがって、こうした局在化した歪みは、さらに大幅に、針と隔壁との境界における漏出抵抗性を低下させることがある。
【0044】
本発明は、図2〜図5に示す隔壁密封容器を備える閉鎖系において、隔壁と針との境界における漏出抵抗性を高める3つの総合的な手法を提供する。図2〜図5に示す隔壁密封容器はバイアル60を含み、そのバイアル60には隔壁10が嵌合されている。隔壁は、容器とのシールを形成し、少なくとも1つの針で穿刺して製品を容器の外に移送することができる任意のエラストマー系閉鎖具とすることができる。隔壁10は、圧着式のキャップ70によって適位置に留められており、そのキャップ70は、その上端に、隔壁10の上面の一部分80を露出する開口部を有する。図示のいくつかの方法では、隔壁10の露出部分80に形成される隆起又は変形100のサイズを、比較的体積が小さい隆起部170のサイズまで縮小するように、硬質の足場構成部品90が、クランプ又は他のタイプの拘束構成部品によって、隔壁10の露出部分80に又はその近くに固定式に保持されている。足場構成部品90は、1対の針20a、20bを収容するための1又は2以上の通路(110;120a、120b)を有し、それらの針20a、20bを使用して、バイアル60の内容物を希釈し、バイアル60をすすぎ、バイアル60の内容物を投与する。針20a、20bは、足場構成部品90の接触面150に配置された1又は2以上の開口部(130;140a、140b)から、隔壁を通して針のベベル状端部を穿刺することによって、隔壁の露出部分に形成された1対の開口部を通って延びる。
【0045】
足場本体の移動は、足場構成部品自体の強度及び硬度によって制限され、且つクランプなど、外部の保持構造又はデバイスによって制限されていてもよい。概して、隔壁よりもずっと硬質であり、隔壁から延びる隆起の力で押されたときにごくわずかしか撓まないほど厚い任意の材料をこの目的で使用することができる。
【0046】
図2〜図4に示すいくつかの方法では、足場構成部品90は、隔壁10の露出部分80に隣接して固定位置に保持されるか(図2)、或いは外部の剛体化機構又は剛構造によって隔壁10の露出部分80に直接保持されて(図3〜図4)、隔壁10の露出部分80に形成される隆起又は変形100を少なくとも部分的に平坦にする。図4〜図5に示す方法では、隔壁密封容器から物質を移送するときに、外部圧縮力180も足場に対して下方向に加えられて、隔壁に対する圧力が維持される。インジェクタアセンブリなど、こうした力を加える任意の一般的な方法を用いることができ、これは、以下でより詳細に説明する。
【0047】
挿入の際に針の撓み及び湾曲によって生じる隔壁のゆがみを最小限に抑えるために、剛性のニードルガイド190a、190bを隔壁10の非常に近くに配置することができ、そのため、隔壁に作られる最初の孔が挿入方向に適度に位置合わせされる(図5参照)。ニードルガイド190a、190bはまた、最適な流体の流れの特徴のために、針を適度にまっすぐに、かつ所望の位置と位置合わせされるように維持するように働く。ニードルガイドは、この系の組み立て中に足場構成部品90の通路120a、120bに針20a、20bを挿入するのを容易にするように、広がった近位端200を有していてもよい。
【0048】
全ての足場法に関して、隔壁のゆがみを制限する足場本体90の1又は2以上の開口部(130;140a、140b)の面積は、理想的には隔壁10の露出部分80の面積よりも小さい。さらに、隔壁のうちの隆起できる部分の直径を縮小すると、所与の圧力に関するゆがみが小さくなり、したがって、漏出抵抗性が高められる。さらに、足場の接触面に、ちょうど針の挿入を可能にするのに十分に大きい開口部を設けると、足場の効果が最大になる。
【0049】
図2〜図4に示すいくつかの例では、隔壁10の露出部分80は、別々の2つのサブセクション、すなわち、(i)隔壁の露出部分の内側に配置され、隔壁の露出部分の周縁部230に隣接して配置され、それに沿って延びる、境界部分210と、(ii)隔壁の露出部分の中心から境界部分の内周240まで延びる中心部分220とを有する(図6)。境界部分210は、隔壁の露出部分の周縁部230と一致する外周と、隔壁の露出部分の内側に配置された内周240とを有し、それらの内周及び外周が境界部分の領域を画定する。中心部分220の領域は、境界部分の内周240によって画定される。
【0050】
図2〜図4に示す足場構成部品90は、接触面150にある中心に配置された単一の開口部110を有する(図7A)。図8Aには、図7Aに示す足場構成部品90と隔壁10の露出部分80(図6)との重なり合う領域が、隔壁10の露出部分80の境界部分210の領域に限定されることを網掛けで示す。その結果、図7Aに示す足場の接触面150と接触する際に、隔壁の露出部分に形成された隆起又は変形の外側部分のみが平坦にされる。
【0051】
図7Cに足場の代替例を示す。その足場の代替例は、隔壁10の露出部分80の中心部分220とサイズがほぼ同じである。図8Cに、図7Cに示す足場構成部品90と隔壁10の露出部分80(図6)との重なり合う領域が、隔壁10の露出部分80の中心部分220の領域に限定されることを網掛けで示す。その結果、図7Cに示す足場の接触面150と接触する際に、隔壁の露出部分に形成された隆起又は変形の中心部分のみが平坦にされる。
【0052】
その結果、図2〜図4、図7A及び図7Cに示す足場を使用する本発明によるいくつかの方法は、隔壁の露出部分の内側に形成された隆起の全体のサイズを縮小することができるが、その隆起を完全に無くすことはできない。
【0053】
図5に示す例では、中心に配置された別々の2つの開口部140a、140bは、足場構成部品90の接触面150に存在し(図7B)、そのため、足場構成部品の接触面150が、境界部分210の領域の全て、及び隔壁10の露出部分80の中心部分220の領域のほとんどと接触している(図8B)。その結果、本発明のこの例の方法は、隔壁の露出部分に形成される隆起又はゆがみも完全に無くすことができる。
【0054】
必要とされる隔壁の歪みを制御する程度は、必要な圧力と、隔壁の設計と、収容した製品の保存期間及び相互作用の程度に基づいて起きる弛緩の量との関数である。最も効率的な歪み制御(使用時に隔壁を圧縮する外力)により、350psigの圧力を使用することが可能になる。あまり大きい圧力(例えば、5psig未満)に耐えることができない完全に弛緩した隔壁の場合には、前述の歪み制御方法(ニードルガイドと組み合わせた足場)は、漏出抵抗性を5psig〜最大約350psigまで高めることができ、使用する方法は圧力要件に応じて変わる。
【0055】
図9を参照すると、図5に示す足場に接続されたプランジャ機構を備えたインジェクタアセンブリ250の一例が示されており、そのインジェクタアセンブリ250は、プランジャスリーブ270内に摺動可能に配置されたプランジャ260を含む。プランジャスリーブは、針20a及び20bを収容するための長手方向に延びる内側コンパートメントを有し、その内側コンパートメントは、中間の位置でプランジャ260の内部に固定されている。針20aは、薬学的に許容される生理食塩水又は緩衝剤などの希釈剤の源に連結され、針20bは、患者に挿入するために下流の受け取り用バイアル又はカテーテルに連結される。使用前には、プランジャは、針20a及び20bの下端がプランジャスリーブ270及び足場90内の通路の上部内で囲繞された格納位置にあり、足場90の接触面がキャップ290でカバーされて、滅菌した足場表面が汚染されないように保護されている。
【0056】
本発明によるデリバリシステムを組み立てるためには、足場90の接触面の中心を隔壁10の露出部分の中心と位置合わせして、隔壁密封バイアル60が、インジェクタアセンブリ250の足場構成部品90の下に配置される。インジェクタアセンブリ250のハンドル265の上部に圧力を加えると、針20a及び20bの端部が、足場90の接触面の開口部を通って下方向に延び、隔壁10を穿孔し、バイアル60に入る(図10)。プランジャ260の遠位端部分275を足場90の上面285に接触させることによって、針がさらに延びないように制限している。インジェクタアセンブリは、プラスチック製スナップ又はボールプランジャのデテントなどのデテントを含んでいでもよい。それらのデテントは、プランジャ260の遠位端部分275が足場90の上面285に係合するときに、プランジャ260に取り付けられ、プランジャスリーブ270内に配置された留め縁部又は孔と係合し、それによりプランジャ260の後退が防止される。
【0057】
所望の化合物又は構成物を収容するバイアルを、バイアルホルダ310内に配置することができ、そのバイアルホルダ310は、足場90を収容するための上部穴を有する(図11)。バイアルが放射性物質を収容しているときは、バイアルホルダは、アクリラート又は鉛などの材料から放射される放射線を減衰させる保護物質から作製することができる。バイアルホルダはまた、プランジャスリーブ270及び足場90をバイアル60の上部と位置合わせするのを助けるようにカラー300を含む。足場及びプランジャスリーブの遠位端が、デリバリシステムを組み立てるプロセス中にバイアルホルダ中に移動するときに、足場90の底部に配置された圧縮ばねリング305が、カラーの上端部の内側径方向表面内に配置された溝内(図示せず)で受けられて、カラーと、プランジャスリーブの底部分と、足場90との間に圧縮嵌合部が形成され、これは、足場をバイアルホルダ内に固定して留める。
【0058】
5〜35psiの正圧下に維持された、加圧された閉鎖系の漏出抵抗性を高めるための本発明の方法を用いて行った1301人の患者の治療を含む8か月間に、隔壁及び系の隣接する構成部品からの漏出が無いことが報告された。
【0059】
本明細書で開示する本発明の実施形態は、本発明の原理を代表するものであることを理解されたい。使用できる他の改変形態は、本発明の範囲内に包含される。したがって、限定ではなく一例として、本明細書の教示に従って本発明の代替の構成を利用することができる。したがって、本発明は、正確に示し説明した発明に限定されない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、針と隔壁との境界における漏出抵抗性を高める方法に関する。より詳細には、本発明は、少なくとも約5psigの正圧下に維持された、隔壁密封容器を含む閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
薬剤、試薬、又は他の薬学関連物質を保持し、滅菌性を維持するために使用されるバイアル及び他の市販の容器は、一般に、高い正圧に耐えるように設計されていない隔壁で密封されている。こうした隔壁密封容器中の化合物又は製品を移送するには、安全且つ効率的に患者又はレセプタクルに注入するために、容器を通してその製品をフラッシングし押し出す必要がある場合がある。2針型システムを使用して、隔壁密封容器のフラッシング及び洗浄を容易にすることができる。一方の針はフラッシング流体を押し通し、第2の針は、製品及びフラッシング流体を抜き出して移送管を通して患者に送る。容器から患者への移送管は、通常、内径が非常に小さい、長いカテーテルである。長さが長く且つ直径が小さいと、カテーテルの入口から出口までの圧力降下が非常に大きくなる。したがって、カテーテルを通して流体を移動させるために必要になるポンプ力のため、密封容器に生じる背圧が大きくなる。これらのタイプの密封容器における漏出により、製品の完全性が失われる虞がある(特に、滅菌性が失われること、危険物質又は有毒物質が流出すること、及び効率的な処理のための十分な有効成分が失われること)。
【0003】
一例として、長さ1メートルの3フレンチカテーテルを通して流速約1mL/secで水を流すと、約120psigの圧力降下が必要になる。3フレンチカテーテルは、外径1mm、内径約0.6mmである。1mL/secの流速は適度であるが、この圧力の大きさ(120psig)は非常に高く、隔壁のシールは、典型的には、こうした圧力に耐えるように設計されていない。
【0004】
したがって、(TheraSphere(登録商標)Y−90ガラスマイクロスフェア又はSIRSpheres(登録商標)Y−90レジンマイクロスフェアなど、治療用マイクロスフェアの場合と同様に)元々の容器から製品を安全に又は効率的に抜き出すことが難しい場合に、こうした高い圧力に対する隔壁の抵抗を改善する方法が必要である。隔壁密封容器内の基材に化学試薬を加えた後で混合するか又はすすぐなど、高い漏出抵抗性が望まれる他の適用例があり得る。こうした適用例は、最初は不活性であるマイクロスフェアに有効成分を追加するステップも含むことができ、このステップは、混合ステップもすすぎステップも含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、針と隔壁との境界における漏出抵抗性を高める方法に関する。より詳細には、本発明は、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている、隔壁密封容器を含む閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、加圧された閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法であって、
上面に露出部分を有する隔壁によって密封された容器を備え、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系を用意するステップと、
隔壁の露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するように、
(i)隔壁の露出部分の内側に配置された境界部分の少なくとも一部分であって、境界部分が、隔壁の露出部分の周縁部に隣接し、周縁部に沿って延び、隔壁の露出部分の周縁部と一致する外周と、隔壁の露出部分の内側に配置された内周とを有し、それらの内周及び外周が境界部分の領域を画定する、境界部分の少なくとも一部分、又は
(ii)隔壁の露出部分の中心部分の少なくとも一部分であって、中心部分が、隔壁の露出部分の中心から境界部分の内周まで延び、境界部分の内周によって画定された領域を有する、中心部分の少なくとも一部分、或いは
(iii)(i)及び(ii)の両方
に隣接又は接触するように、硬質構成部品の接触面を固定して配置するステップと
を含む方法が提供される。
【0007】
上記の方法のいくつかの例では、閉鎖系で維持される正圧は、約5psig〜約350psigの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、約5psig〜約35psig又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、或いは約50psig〜約350psig又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲にある。
【0008】
他の例では、硬質構成部品の接触面は、実質的に平坦であるか、又は実質的に平坦な円形の面である。
【0009】
本発明はまた、硬質構成部品が、1又は2以上の針を収容する1又は2以上の通路を有し、硬質構成部品の接触面が、1又は2以上の開口部を有し、その開口部を通って1又は2以上の針が延びる、上記で定義した方法にも関する。1又は2以上の針のそれぞれの端部が、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部から、1又は2以上の針の各端部によって露出部分を穿刺することによって、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を通って延びることができる。
【0010】
上記で定義した方法のさらなる例では、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部は、接触面の中心部分の内側に配置されるか、接触面の端部又は周縁部に隣接して配置されるか、又は接触面の中心部分に配置された一開口部である。さらに、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を、隔壁の露出部分の中心部分の内側に配置するか、又は隔壁の露出部分の端部又は周縁部に隣接して配置することができる。
【0011】
硬質構成部品の接触面上にある1又は2以上の開口部の全面積は、隔壁の露出部分の面積よりも小さくてよい。他の例では、硬質構成部品の接触面の面積は、隔壁の露出部分の面積と同じであるか、それよりも小さいか、又はそれよりも大きい。
【0012】
上記で説明した方法で定義された中実構成部品は、1又は2以上の通路内の1又は2以上のニードルガイドチューブを備えることができ、その1又は2以上のニードルガイドチューブは、1又は2以上の針の横方向の移動、並びに隔壁の湾曲及びそれに続く歪みを防止する。
【0013】
上記で定義された方法で定義された容器は、ヒト患者又は動物患者に注入するための、又はデリバリシステムなどの別のベッセル容器に送達するための製品を収容することができ、その製品は、薬学的に有効な製品、放射性製品、若しくはそれらの混合物、又は薬学的に有効な製品若しくは放射性製品を含む構成物若しくは医療デバイス、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体、例えば、薬学的に有効な製品又は放射性製品を含む任意のサイズ又は形状のマイクロ粒子又はナノ粒子などの粒子を含む。さらに、その容器は、混合するか又はすすぐために使用することができる。
【0014】
さらなる例では、金属又はプラスチックの圧着シールなど、圧着シールによって、隔壁を容器に封止することができる。
【0015】
さらなる例では、上記で説明した方法はさらに、隔壁密封容器から物質を移送するときに、外力を用いて隔壁を圧縮するステップを含むことができる。
【0016】
別の態様では、本発明は、上面に露出部分を有する隔壁によって密封された容器を備え、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系の漏出抵抗性を高めるためのキットであって、
接触面を有する硬質構成部品と、
隔壁の露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するように、硬質構成部品を使用する取り扱い説明と
を備える、キットに関する。
【0017】
本発明はまた、取り扱い説明が、
(i)隔壁の露出部分の内側に配置された境界部分の少なくとも一部分であって、境界部分が、隔壁の露出部分の周縁部に隣接し、周縁部に沿って延び、隔壁の露出部分の周縁部と一致する外周と、隔壁の露出部分の内側に配置された内周とを有し、それらの内周及び外周が、境界部分の領域を画定する、境界部分の少なくとも一部分、又は
(ii)隔壁の露出部分の中心部分の少なくとも一部分であって、中心部分が、隔壁の露出部分の中心から境界部分の内周まで延び、境界部分の内周によって画定された領域を有する、中心部分の少なくとも一部分、或いは
(iii)(i)及び(ii)の両方
に隣接又は接触するように、硬質構成部品の接触面を固定して配置するステップを説明している、上記で定義したキットにも関する。
【0018】
上記のキットのいくつかの例では、閉鎖系で維持される正圧は、約5psig〜約350psigの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、約5psig〜約35psig又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、或いは約50psig〜約350psig又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲にある。
【0019】
他の例では、硬質構成部品の接触面は、実質的に平坦であるか、又は実質的に平坦な円形の面である。
【0020】
本発明はまた、硬質構成部品が、1又は2以上の針を収容する1又は2以上の通路を有し、硬質構成部品の接触面が、1又は2以上の開口部を有し、その開口部を通って1又は2以上の針が延びる、上記で定義したキットにも関する。1又は2以上の針のそれぞれの端部が、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部から、1又は2以上の針の各端部によって露出部分を穿刺することによって、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を通って延びることができる。
【0021】
上記で定義したキットのさらなる例では、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部は、接触面の中心部分の内側に配置されるか、接触面の端部又は周縁部に隣接して配置されるか、又は接触面の中心部分に配置された一開口部である。さらに、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を、隔壁の露出部分の中心部分の内側に配置するか、又は隔壁の露出部分の端部又は周縁部に隣接して配置することができる。
【0022】
上記で説明したキットに含まれる硬質構成部品の接触面上にある1又は2以上の開口部の全面積は、隔壁の露出部分の面積よりも小さくてよい。他の例では、硬質構成部品の接触面の面積は、隔壁の露出部分の面積と同じであるか、それよりも小さいか、又はそれよりも大きい。
【0023】
上記で説明したキットで定義された中実構成部品は、1又は2以上の通路内に1又は2以上のニードルガイドチューブを備えることができ、1又は2以上のニードルガイドチューブは、1又は2以上の針の横方向の移動、並びに隔壁の湾曲及びそれに続く歪みを防止する。
【0024】
上記で定義したキットはさらに、隔壁で密封された容器を備えることができ、その容器は、ヒト患者又は動物患者に注入するための、又はデリバリシステムなどの別のベッセル容器に送達するための製品を収容することができ、その製品は、薬学的に有効な製品、放射性製品、若しくはそれらの混合物、又は薬学的に有効な製品若しくは放射性製品を含む構成物若しくは医療デバイス、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体、例えば、薬学的に有効な製品又は放射性製品を含む任意のサイズ又は形状のマイクロ粒子又はナノ粒子などの粒子を含む。さらに、その容器は、混合するか又はすすぐために使用することができる。
【0025】
さらなる一例では、金属又はプラスチックの圧着シールなど、圧着シールによって、隔壁を容器に封止することができる。
【0026】
上記で説明したキットは、硬質構成部品を隔壁の露出部分に対して固定位置に留めるインジェクタアセンブリを含むこともできる。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、上面に露出部分を有する隔壁で密封された容器を備え、少なくとも約5psigの正圧下で維持されている閉鎖系の漏出抵抗性を高める、接触面を有する硬質構成部品の使用に関し、硬質構成部品の接触面は、隔壁の露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するのに適している。
【0028】
さらなる態様では、本発明は、隔壁の露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小する接触面を有する硬質構成部品の使用に関し、隔壁の露出部分は隔壁の上面に配置され、隔壁は容器に封止され、隔壁で密封された容器は、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系の一部分を形成する。
【0029】
本発明はまた、
(i)隔壁の露出部分の内側に配置された境界部分の少なくとも一部分であって、境界部分が、隔壁の露出部分の周縁部に隣接し、周縁部に沿って延び、隔壁の露出部分の周縁部と一致する外周と、隔壁の露出部分の内側に配置された内周とを有し、それらの内周及び外周が、境界部分の領域を画定する、境界部分の少なくとも一部分、又は
(ii)隔壁の露出部分の中心部分の少なくとも一部分であって、中心部分が、隔壁の露出部分の中心から境界部分の内周まで延び、境界部分の内周によって画定された領域を有する、中心部分の少なくとも一部分、或いは
(iii)(i)及び(ii)の両方
に隣接又は接触するように、硬質構成部品の接触面を固定して配置する、上記で定義した使用にも関する。
【0030】
上記の使用のいくつかの例では、閉鎖系で維持される正圧は、約5psig〜約350psigの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、約5psig〜約35psigの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲、或いは約50psig〜約350psigの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは部分範囲にある。
【0031】
上記で説明した使用の他のいくつかの例では、硬質構成部品の接触面は、実質的に平坦であるか、又は実質的に平坦な円形の面である。
【0032】
本発明はまた、硬質構成部品が、1又は2以上の針を収容する1又は2以上の通路を有し、硬質構成部品の接触面が、1又は2以上の開口部を有し、その開口部を通って1又は2以上の針が延びる、上記で定義した使用に関する。1又は2以上の針のそれぞれの端部が、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部から、1又は2以上の針の各端部によって露出部分を穿刺することによって、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を通って延びることができる。
【0033】
上記で定義した使用のさらなる例では、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部は、接触面の中心部分の内側に配置されるか、接触面の端部又は周縁部に隣接して配置されるか、又は接触面の中心部分に配置された一開口部である。さらに、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を、隔壁の露出部分の中心部分の内側に配置するか、又は隔壁の露出部分の端部又は周縁部に隣接して配置することができる。
【0034】
本発明はまた、硬質構成部品の接触面上にある1又は2以上の開口部の全面積は、隔壁の露出部分の面積よりも小さい、上記で定義した使用にも関する。他の例では、硬質構成部品の接触面の面積は、隔壁の露出部分の面積と同じであるか、それよりも小さいか、又はそれよりも大きい。
【0035】
上記で説明した使用で定義された中実構成部品は、1又は2以上の通路内に1又は2以上のニードルガイドチューブを備えることができ、1又は2以上のニードルガイドチューブは、1又は2以上の針の横方向の移動、並びに隔壁の湾曲及びそれに続く歪みを防止する。
【0036】
本発明はまた、上記で説明した使用にも関し、容器は隔壁で密封されており、その容器は、ヒト患者又は動物患者に注入するための、又はデリバリシステムなどの別のベッセル容器に送達するための製品を収容することができ、その製品は、薬学的に有効な製品、放射性製品、若しくはそれらの混合物、又は薬学的に有効な製品若しくは放射性製品を含む構成物若しくは医療デバイス、及び薬学的に許容される希釈剤又は担体、例えば、薬学的に有効な製品又は放射性製品を含む任意のサイズ又は形状のマイクロ粒子又はナノ粒子などの粒子を含む。さらに、その容器は、混合するか又はすすぐために使用することができる。
【0037】
さらなる一例では、金属又はプラスチックの圧着シールなど、圧着シールによって、隔壁を容器に封止することができる。
【0038】
本発明のこれらの及び他の特徴は、添付の図面を参照する以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】鋭利なベベル端部を有する、近位では制限され遠位では制限されない針を、エラストマー系隔壁を通して挿入することによる湾曲した結果を示す。
【図2】隔壁密封容器の隔壁の露出部分に隣接する位置に硬質の足場(scaffold)を配置するステップを含む、隔壁の変形を低減する本発明による方法の一例を示す。
【図3】隔壁密封容器の隔壁の露出部分に接触させて足場を配置するステップを含む、隔壁の変形を低減する本発明による方法の一例を示す。
【図4】隔壁密封容器の隔壁の露出部分と接触させて足場を配置するステップと、その足場に外部の圧縮力を加えるステップとを含む、隔壁の変形を低減する本発明による方法のいくつかの例を示す。
【図5】隔壁密封容器の隔壁の露出部分と接触させて足場を配置するステップと、その足場に外部の圧縮力を加えるステップとを含む、隔壁の変形を低減する本発明による方法のいくつかの例を示す。
【図6】本発明による隔壁の一例の露出部分の上面図を示す。
【図7A−C】本発明による足場のいくつかの例の底面図を示す。
【図8A−C】図6に示す隔壁の露出部分と接触している、図7A〜図7Cに示す足場の例の断面上面図を示す。足場の接触面は、図では、各足場と隔壁の露出部分との間の接触領域を示すのを助けるために網掛けしている。
【図9】本発明による足場を備えたインジェクタアセンブリの一例の断面立面図を示す。
【図10】隔壁密封バイアルの隔壁の露出部分に隣接して配置された図9に示すインジェクタアセンブリの断面立面図を示す。
【図11】隔壁密封バイアルの隔壁の露出部分に隣接して配置された図9に示すインジェクタアセンブリの断面立面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、針と隔壁との境界における漏出抵抗性を高める方法に関する。より詳細には、本発明は、少なくとも約5psigの正圧下に維持された、隔壁密封容器を含む閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法を提供する。
【0041】
圧力下で隔壁密封容器から最初に漏出する通常の位置は、隔壁と針との境界である。隔壁密封容器の漏出(又は圧力)抵抗性は、隔壁を容器に留めるシールを圧着した直後には適度に高くすることができるが、その値は、ほとんどのエラストマー系シール材で必然的に起きるクリープ(ストレス下にある間の永久的な変形又は弛緩)のため徐々に低下する。漏出抵抗性の低下は、バイアルの内容物によって、つまり製品と隔壁との間の化学的相互作用又は物理的相互作用によって加速する場合がある。Y−90マイクロスフェアの場合は、製品が放射するベータ粒子によって生じる放射線損傷によって物理的相互作用が起きる。隔壁に対して相互作用する物質の位置は、損傷、及びそれに続くクリープ又は弛緩の割合を判定する際の主な因子である。「弛緩」している隔壁の漏出抵抗性は5psig未満になる虞がある。
【0042】
隔壁密封容器の高圧試験中に観察されたことによると、試験下の隔壁が、内圧によって外に「隆起」する(すなわち、ひどいゆがみ又は大きい歪みを受ける)傾向があり、その内圧は隔壁の漏出抵抗性を徐々に低下させた。図1に、隔壁10上の望ましくない歪みの別の形態を示す。こうした歪みは、針20a、20bが隔壁中に挿入されるときに、具体的には、先端部がベベル断面30で鋭利になっている針の場合に起きる。ベベル断面の針が隔壁10中に挿入されるときには、鋭利な先端部で作られる最初の開口部は隔壁10の本体内に傾斜した孔を作り出し、針20a、20bが横方向の制限なしで挿入される場合にその傾斜した孔を追従する傾向がある。本発明では、用語「針」は、中空のチューブ若しくはカニューレ、又はシリンジ様の針を指す。マイクロスフェアを流体化し、隔壁密封容器から移送する場合など、場合によっては、最適な流れの特徴(すなわち、マイクロスフェアの急速な流体化及び移送)のために、針を正確に配置することが重要である。これらの場合のいくつかでは、横方向の移動を針の遠位端では制限せず、針の近位端で制限するようにして、針を挿入する可能性がある。こうした針は、最初の孔の方向を追従するように曲がる。
【0043】
先端部がベベル断面である、近位では制限され遠位では制限されない針を挿入し終わるときには、望ましくない2つの結果が生じる。まず、針が曲がり、容器中の望ましい位置に配置できなくなる虞がある。次に、針が曲がったため、隔壁がひどい横方向の歪みを受け、その歪みは、隔壁を通る針の挿入領域50に局在化する。こうした歪みは、隔壁が膨らんだ加圧バイアルで、近位では制限され遠位では制限されない針を使用する場合に大きくなる。したがって、こうした局在化した歪みは、さらに大幅に、針と隔壁との境界における漏出抵抗性を低下させることがある。
【0044】
本発明は、図2〜図5に示す隔壁密封容器を備える閉鎖系において、隔壁と針との境界における漏出抵抗性を高める3つの総合的な手法を提供する。図2〜図5に示す隔壁密封容器はバイアル60を含み、そのバイアル60には隔壁10が嵌合されている。隔壁は、容器とのシールを形成し、少なくとも1つの針で穿刺して製品を容器の外に移送することができる任意のエラストマー系閉鎖具とすることができる。隔壁10は、圧着式のキャップ70によって適位置に留められており、そのキャップ70は、その上端に、隔壁10の上面の一部分80を露出する開口部を有する。図示のいくつかの方法では、隔壁10の露出部分80に形成される隆起又は変形100のサイズを、比較的体積が小さい隆起部170のサイズまで縮小するように、硬質の足場構成部品90が、クランプ又は他のタイプの拘束構成部品によって、隔壁10の露出部分80に又はその近くに固定式に保持されている。足場構成部品90は、1対の針20a、20bを収容するための1又は2以上の通路(110;120a、120b)を有し、それらの針20a、20bを使用して、バイアル60の内容物を希釈し、バイアル60をすすぎ、バイアル60の内容物を投与する。針20a、20bは、足場構成部品90の接触面150に配置された1又は2以上の開口部(130;140a、140b)から、隔壁を通して針のベベル状端部を穿刺することによって、隔壁の露出部分に形成された1対の開口部を通って延びる。
【0045】
足場本体の移動は、足場構成部品自体の強度及び硬度によって制限され、且つクランプなど、外部の保持構造又はデバイスによって制限されていてもよい。概して、隔壁よりもずっと硬質であり、隔壁から延びる隆起の力で押されたときにごくわずかしか撓まないほど厚い任意の材料をこの目的で使用することができる。
【0046】
図2〜図4に示すいくつかの方法では、足場構成部品90は、隔壁10の露出部分80に隣接して固定位置に保持されるか(図2)、或いは外部の剛体化機構又は剛構造によって隔壁10の露出部分80に直接保持されて(図3〜図4)、隔壁10の露出部分80に形成される隆起又は変形100を少なくとも部分的に平坦にする。図4〜図5に示す方法では、隔壁密封容器から物質を移送するときに、外部圧縮力180も足場に対して下方向に加えられて、隔壁に対する圧力が維持される。インジェクタアセンブリなど、こうした力を加える任意の一般的な方法を用いることができ、これは、以下でより詳細に説明する。
【0047】
挿入の際に針の撓み及び湾曲によって生じる隔壁のゆがみを最小限に抑えるために、剛性のニードルガイド190a、190bを隔壁10の非常に近くに配置することができ、そのため、隔壁に作られる最初の孔が挿入方向に適度に位置合わせされる(図5参照)。ニードルガイド190a、190bはまた、最適な流体の流れの特徴のために、針を適度にまっすぐに、かつ所望の位置と位置合わせされるように維持するように働く。ニードルガイドは、この系の組み立て中に足場構成部品90の通路120a、120bに針20a、20bを挿入するのを容易にするように、広がった近位端200を有していてもよい。
【0048】
全ての足場法に関して、隔壁のゆがみを制限する足場本体90の1又は2以上の開口部(130;140a、140b)の面積は、理想的には隔壁10の露出部分80の面積よりも小さい。さらに、隔壁のうちの隆起できる部分の直径を縮小すると、所与の圧力に関するゆがみが小さくなり、したがって、漏出抵抗性が高められる。さらに、足場の接触面に、ちょうど針の挿入を可能にするのに十分に大きい開口部を設けると、足場の効果が最大になる。
【0049】
図2〜図4に示すいくつかの例では、隔壁10の露出部分80は、別々の2つのサブセクション、すなわち、(i)隔壁の露出部分の内側に配置され、隔壁の露出部分の周縁部230に隣接して配置され、それに沿って延びる、境界部分210と、(ii)隔壁の露出部分の中心から境界部分の内周240まで延びる中心部分220とを有する(図6)。境界部分210は、隔壁の露出部分の周縁部230と一致する外周と、隔壁の露出部分の内側に配置された内周240とを有し、それらの内周及び外周が境界部分の領域を画定する。中心部分220の領域は、境界部分の内周240によって画定される。
【0050】
図2〜図4に示す足場構成部品90は、接触面150にある中心に配置された単一の開口部110を有する(図7A)。図8Aには、図7Aに示す足場構成部品90と隔壁10の露出部分80(図6)との重なり合う領域が、隔壁10の露出部分80の境界部分210の領域に限定されることを網掛けで示す。その結果、図7Aに示す足場の接触面150と接触する際に、隔壁の露出部分に形成された隆起又は変形の外側部分のみが平坦にされる。
【0051】
図7Cに足場の代替例を示す。その足場の代替例は、隔壁10の露出部分80の中心部分220とサイズがほぼ同じである。図8Cに、図7Cに示す足場構成部品90と隔壁10の露出部分80(図6)との重なり合う領域が、隔壁10の露出部分80の中心部分220の領域に限定されることを網掛けで示す。その結果、図7Cに示す足場の接触面150と接触する際に、隔壁の露出部分に形成された隆起又は変形の中心部分のみが平坦にされる。
【0052】
その結果、図2〜図4、図7A及び図7Cに示す足場を使用する本発明によるいくつかの方法は、隔壁の露出部分の内側に形成された隆起の全体のサイズを縮小することができるが、その隆起を完全に無くすことはできない。
【0053】
図5に示す例では、中心に配置された別々の2つの開口部140a、140bは、足場構成部品90の接触面150に存在し(図7B)、そのため、足場構成部品の接触面150が、境界部分210の領域の全て、及び隔壁10の露出部分80の中心部分220の領域のほとんどと接触している(図8B)。その結果、本発明のこの例の方法は、隔壁の露出部分に形成される隆起又はゆがみも完全に無くすことができる。
【0054】
必要とされる隔壁の歪みを制御する程度は、必要な圧力と、隔壁の設計と、収容した製品の保存期間及び相互作用の程度に基づいて起きる弛緩の量との関数である。最も効率的な歪み制御(使用時に隔壁を圧縮する外力)により、350psigの圧力を使用することが可能になる。あまり大きい圧力(例えば、5psig未満)に耐えることができない完全に弛緩した隔壁の場合には、前述の歪み制御方法(ニードルガイドと組み合わせた足場)は、漏出抵抗性を5psig〜最大約350psigまで高めることができ、使用する方法は圧力要件に応じて変わる。
【0055】
図9を参照すると、図5に示す足場に接続されたプランジャ機構を備えたインジェクタアセンブリ250の一例が示されており、そのインジェクタアセンブリ250は、プランジャスリーブ270内に摺動可能に配置されたプランジャ260を含む。プランジャスリーブは、針20a及び20bを収容するための長手方向に延びる内側コンパートメントを有し、その内側コンパートメントは、中間の位置でプランジャ260の内部に固定されている。針20aは、薬学的に許容される生理食塩水又は緩衝剤などの希釈剤の源に連結され、針20bは、患者に挿入するために下流の受け取り用バイアル又はカテーテルに連結される。使用前には、プランジャは、針20a及び20bの下端がプランジャスリーブ270及び足場90内の通路の上部内で囲繞された格納位置にあり、足場90の接触面がキャップ290でカバーされて、滅菌した足場表面が汚染されないように保護されている。
【0056】
本発明によるデリバリシステムを組み立てるためには、足場90の接触面の中心を隔壁10の露出部分の中心と位置合わせして、隔壁密封バイアル60が、インジェクタアセンブリ250の足場構成部品90の下に配置される。インジェクタアセンブリ250のハンドル265の上部に圧力を加えると、針20a及び20bの端部が、足場90の接触面の開口部を通って下方向に延び、隔壁10を穿孔し、バイアル60に入る(図10)。プランジャ260の遠位端部分275を足場90の上面285に接触させることによって、針がさらに延びないように制限している。インジェクタアセンブリは、プラスチック製スナップ又はボールプランジャのデテントなどのデテントを含んでいでもよい。それらのデテントは、プランジャ260の遠位端部分275が足場90の上面285に係合するときに、プランジャ260に取り付けられ、プランジャスリーブ270内に配置された留め縁部又は孔と係合し、それによりプランジャ260の後退が防止される。
【0057】
所望の化合物又は構成物を収容するバイアルを、バイアルホルダ310内に配置することができ、そのバイアルホルダ310は、足場90を収容するための上部穴を有する(図11)。バイアルが放射性物質を収容しているときは、バイアルホルダは、アクリラート又は鉛などの材料から放射される放射線を減衰させる保護物質から作製することができる。バイアルホルダはまた、プランジャスリーブ270及び足場90をバイアル60の上部と位置合わせするのを助けるようにカラー300を含む。足場及びプランジャスリーブの遠位端が、デリバリシステムを組み立てるプロセス中にバイアルホルダ中に移動するときに、足場90の底部に配置された圧縮ばねリング305が、カラーの上端部の内側径方向表面内に配置された溝内(図示せず)で受けられて、カラーと、プランジャスリーブの底部分と、足場90との間に圧縮嵌合部が形成され、これは、足場をバイアルホルダ内に固定して留める。
【0058】
5〜35psiの正圧下に維持された、加圧された閉鎖系の漏出抵抗性を高めるための本発明の方法を用いて行った1301人の患者の治療を含む8か月間に、隔壁及び系の隣接する構成部品からの漏出が無いことが報告された。
【0059】
本明細書で開示する本発明の実施形態は、本発明の原理を代表するものであることを理解されたい。使用できる他の改変形態は、本発明の範囲内に包含される。したがって、限定ではなく一例として、本明細書の教示に従って本発明の代替の構成を利用することができる。したがって、本発明は、正確に示し説明した発明に限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法であって、
上面に露出部分を有する隔壁によって密封された容器を備え、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系を用意するステップと、
前記隔壁の前記露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するように、
(i)前記隔壁の前記露出部分の内側に配置された境界部分の少なくとも一部分であって、前記境界部分が、前記隔壁の前記露出部分の周縁部に隣接し、前記周縁部に沿って延び、前記隔壁の前記露出部分の前記周縁部と一致する外周と、前記隔壁の前記露出部分の内側に配置された内周とを有し、前記内周及び前記外周が前記境界部分の領域を画定する、前記境界部分の少なくとも一部分、又は
(ii)前記隔壁の前記露出部分の中心部分の少なくとも一部分であって、前記中心部分が、前記隔壁の前記露出部分の中心から前記境界部分の前記内周まで延び、前記境界部分の前記内周によって画定された領域を有する、前記中心部分の少なくとも一部分、或いは
(iii)(i)及び(ii)の両方
に隣接又は接触するように、硬質構成部品の接触面を固定して配置するステップと
を含む方法。
【請求項2】
閉鎖系で維持される正圧が約5psig〜約350psigの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬質構成部品が、1又は2以上の針を収容する1又は2以上の通路を有し、前記硬質構成部品の接触面が、1又は2以上の開口部を有し、前記開口部を通って前記1又は2以上の針が延びる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1又は2以上の針のそれぞれの端部が、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部から、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を通って延びる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
中実構成部品が、1又は2以上の通路内に1又は2以上のニードルガイドチューブを備え、前記1又は2以上のニードルガイドチューブが、1又は2以上の針の横方向の移動を防止する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
容器が、ヒト患者又は動物患者に注入するための、又はベッセル容器に送達するための製品を収容する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
製品が、有効薬剤成分、放射性成分、又はそれらの混合物を収容する医療デバイス又はデリバリシステムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
隔壁密封容器から物質を移送するときに、外力を用いて隔壁を圧縮するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上面に露出部分を有する隔壁によって密封された容器を備え、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系の漏出抵抗性を高めるためのキットであって、
接触面を有する硬質構成部品と、
前記隔壁の前記露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するように、前記硬質構成部品を使用する取り扱い説明と
を備える、キット。
【請求項10】
取り扱い説明が、
(i)隔壁の露出部分の内側に配置された境界部分の少なくとも一部分であって、前記境界部分が、前記隔壁の前記露出部分の周縁部に隣接し、前記周縁部に沿って延び、前記隔壁の前記露出部分の前記周縁部と一致する外周と、前記隔壁の前記露出部分の内側に配置された内周とを有し、前記内周及び前記外周が、前記境界部分の領域を画定する、前記境界部分の少なくとも一部分、又は
(ii)前記隔壁の前記露出部分の中心部分の少なくとも一部分であって、前記中心部分が、前記隔壁の前記露出部分の中心から前記境界部分の前記内周まで延び、前記境界部分の前記内周によって画定された領域を有する、前記中心部分の少なくとも一部分、或いは
(iii)(i)及び(ii)の両方
に隣接又は接触するように硬質構成部品の接触面を固定して配置するステップを説明している、請求項10に記載のキット。
【請求項11】
閉鎖系で維持される正圧が、約5psig〜約350psigの範囲にある、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
硬質構成部品が、1又は2以上の針を収容する1又は2以上の通路を有し、前記硬質構成部品の接触面が、1又は2以上の開口部を有し、前記開口部を通って前記1又は2以上の針が延びる、請求項9に記載のキット。
【請求項13】
1又は2以上の針のそれぞれの端部が、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部から、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を通って延びる、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
中実構成部品が、1又は2以上の通路内に1又は2以上のニードルガイドチューブを備え、前記1又は2以上のニードルガイドチューブが、1又は2以上の針の横方向の移動を防止する、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
硬質構成部品を隔壁の露出部分に対して固定位置に留めるインジェクタアセンブリをさらに備える、請求項9に記載のキット。
【請求項1】
加圧された閉鎖系の漏出抵抗性を高める方法であって、
上面に露出部分を有する隔壁によって密封された容器を備え、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系を用意するステップと、
前記隔壁の前記露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するように、
(i)前記隔壁の前記露出部分の内側に配置された境界部分の少なくとも一部分であって、前記境界部分が、前記隔壁の前記露出部分の周縁部に隣接し、前記周縁部に沿って延び、前記隔壁の前記露出部分の前記周縁部と一致する外周と、前記隔壁の前記露出部分の内側に配置された内周とを有し、前記内周及び前記外周が前記境界部分の領域を画定する、前記境界部分の少なくとも一部分、又は
(ii)前記隔壁の前記露出部分の中心部分の少なくとも一部分であって、前記中心部分が、前記隔壁の前記露出部分の中心から前記境界部分の前記内周まで延び、前記境界部分の前記内周によって画定された領域を有する、前記中心部分の少なくとも一部分、或いは
(iii)(i)及び(ii)の両方
に隣接又は接触するように、硬質構成部品の接触面を固定して配置するステップと
を含む方法。
【請求項2】
閉鎖系で維持される正圧が約5psig〜約350psigの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬質構成部品が、1又は2以上の針を収容する1又は2以上の通路を有し、前記硬質構成部品の接触面が、1又は2以上の開口部を有し、前記開口部を通って前記1又は2以上の針が延びる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1又は2以上の針のそれぞれの端部が、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部から、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を通って延びる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
中実構成部品が、1又は2以上の通路内に1又は2以上のニードルガイドチューブを備え、前記1又は2以上のニードルガイドチューブが、1又は2以上の針の横方向の移動を防止する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
容器が、ヒト患者又は動物患者に注入するための、又はベッセル容器に送達するための製品を収容する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
製品が、有効薬剤成分、放射性成分、又はそれらの混合物を収容する医療デバイス又はデリバリシステムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
隔壁密封容器から物質を移送するときに、外力を用いて隔壁を圧縮するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上面に露出部分を有する隔壁によって密封された容器を備え、少なくとも約5psigの正圧下に維持されている閉鎖系の漏出抵抗性を高めるためのキットであって、
接触面を有する硬質構成部品と、
前記隔壁の前記露出部分に形成される隆起又は変形のサイズを縮小するように、前記硬質構成部品を使用する取り扱い説明と
を備える、キット。
【請求項10】
取り扱い説明が、
(i)隔壁の露出部分の内側に配置された境界部分の少なくとも一部分であって、前記境界部分が、前記隔壁の前記露出部分の周縁部に隣接し、前記周縁部に沿って延び、前記隔壁の前記露出部分の前記周縁部と一致する外周と、前記隔壁の前記露出部分の内側に配置された内周とを有し、前記内周及び前記外周が、前記境界部分の領域を画定する、前記境界部分の少なくとも一部分、又は
(ii)前記隔壁の前記露出部分の中心部分の少なくとも一部分であって、前記中心部分が、前記隔壁の前記露出部分の中心から前記境界部分の前記内周まで延び、前記境界部分の前記内周によって画定された領域を有する、前記中心部分の少なくとも一部分、或いは
(iii)(i)及び(ii)の両方
に隣接又は接触するように硬質構成部品の接触面を固定して配置するステップを説明している、請求項10に記載のキット。
【請求項11】
閉鎖系で維持される正圧が、約5psig〜約350psigの範囲にある、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
硬質構成部品が、1又は2以上の針を収容する1又は2以上の通路を有し、前記硬質構成部品の接触面が、1又は2以上の開口部を有し、前記開口部を通って前記1又は2以上の針が延びる、請求項9に記載のキット。
【請求項13】
1又は2以上の針のそれぞれの端部が、硬質構成部品の接触面の1又は2以上の開口部から、隔壁の露出部分に形成された1又は2以上の開口部を通って延びる、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
中実構成部品が、1又は2以上の通路内に1又は2以上のニードルガイドチューブを備え、前記1又は2以上のニードルガイドチューブが、1又は2以上の針の横方向の移動を防止する、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
硬質構成部品を隔壁の露出部分に対して固定位置に留めるインジェクタアセンブリをさらに備える、請求項9に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−516165(P2012−516165A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546544(P2011−546544)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001770
【国際公開番号】WO2010/085870
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511174524)ノルディオン (カナダ) インク. (2)
【氏名又は名称原語表記】NORDION(CANADA)INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001770
【国際公開番号】WO2010/085870
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511174524)ノルディオン (カナダ) インク. (2)
【氏名又は名称原語表記】NORDION(CANADA)INC.
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]