説明

隔離室形成装置及び隔離室形成燻蒸方法

【課題】陰圧雰囲気を形成するに際しての圧力制御の困難性を解消し、隔離室を形成するための各部の再使用を可能にする。
【課題を解決するための手段】二枚のシート202(202a,202b)を形状保持して最下層のシート202bの内部に非気密状態で患者IPを隔離収容する隔離室203を形成するテント201の外部に、空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとを設置する。空気清浄部301Aは、二枚のシート202(202a,202b)の間の隙間に形成される陰圧雰囲気生成空間NSの空気を吸引して陰圧雰囲気にし、吸引した空気を殺菌除菌した後に排気口305から排出する。燻蒸部301Bは、陰圧雰囲気生成空間NS及び隔離室203をオゾン燻蒸し、それらの空間に残るオゾンを酸素に戻して回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰圧雰囲気の隔離室を形成するための隔離室形成装置、及び、そのような隔離室を形成して燻蒸する隔離室形成燻蒸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば新型インフルエンザに感染した患者は、専門病院(感染症指定医療機関)の特別な病床である感染症病床に収容されて完全隔離されることが望ましい。感染症病床は、病原菌が外部に漏れだすことがないよう、気圧を低くした陰圧室として形成される。しかしながら、このような感染症病床が用意されている医療施設の数は僅かである。このため、その一層の普及が望まれるところである。
【0003】
このような社会的背景からか、近年、比較的簡易に陰圧にされた隔離室を形成できるようにしたシステムが普及し始めている。例えば特許文献1は、折り畳み可能な枠体に可燃性樹脂シート製の可撓性被覆体を取り付け、可撓性被覆体の内部空気を排気ユニットで排気して陰圧にするようにした患者隔離ユニットを開示している。この装置によれば、可撓性被覆体の内部空気を排気ユニットで排気することで、可撓性被覆体の内部に形成される隔離室を陰圧雰囲気に形成することができる。特許文献1によれば、排気ユニットはHEPAフィルタ及び紫外線ランプを備え、排気ユニットによる可撓性被覆体の内部空気の排出に際して、隔離室に感染症の患者を収容することにより発生する細菌を殺菌できるものとされている。
【0004】
特許文献1に記載されている技術と同様の手法で隔離室を陰圧雰囲気にし、その際に隔離室から外部に排気される空気中の菌を殺菌するようにした発明は、特許文献2(患者隔離装置)や特許文献3(オゾン発生装置付き密閉式移動ベッド)にも記載されている。特許文献2は、殺菌対象物として、「感染性粒子、例えば細菌又は患者により吐き出されたヴィールス又は細菌等を含んだ気質粒子」を開示している(段落0022参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−141239公報
【特許文献2】特開平07−000461号公報
【特許文献3】特開2005−034582公報
【特許文献4】特開平11−146905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に記載されている技術によれば、それらの各文献に明示はないものの、隔離室が気密に形成されているものと思料される。とりわけ、特許文献1は、可撓性被覆体の内部からの空気の漏洩を防止する旨の記載が散見されること(例えば、段落0025、段落0027、段落0035等参照)、患者隔離ユニットの使用後には排気ユニットを駆動して可撓性被覆体を萎ませること(段落0049〜段落0051参照)を開示していることから考えると、隔離室を気密に形成していると考えざるを得ない。しかしながら、隔離室を気密に形成した場合、その圧力制御が必要となり、設計の困難化や構造の複雑化を招いてしまうという問題がある。これが、第1の問題である。
【0007】
第2の問題は、使用後の患者隔離ユニット(患者隔離装置、オゾン発生装置付き密閉式移動ベッド)の処理に関しての問題である。つまり、使用後の患者隔離ユニット等は、隔離室に感染症の患者を収容していたわけであるから、隔離室が感染性粒子で汚染された状態にある。そこで、特許文献1は、患者隔離ユニットの使用後、排気ユニットを駆動して可撓性被覆体を萎ませて畳み、焼却処分することを開示している。これに対して、特許文献2及び特許文献3は、使用後の隔離室の汚染状態をどのようにするのかについて、一切の言及がない。このようなことから、特許文献1に記載されている患者隔離ユニットはもとより、特許文献2に記載されている患者隔離装置にしても特許文献3に記載されているオゾン発生装置付き密閉式移動ベッドにしても、隔離室を形成するための構造物や隔離室に収納されていた物品の再使用が困難であることが予想される。これが、第2の問題である。
【0008】
なお、特許文献4は、オゾン燻蒸殺菌装置を開示する。そこで、この種の装置を用いて、使用後の隔離室をオゾン燻蒸することが考えられる。しかしながら、使用後の隔離室に特許文献4に示されているようなオゾン燻蒸殺菌装置を持ち込むとすると、その作業者は一時的であるにせよ感染性粒子が残存している隔離室に入らなければならないため、安全上好ましくない。
【0009】
本発明の目的は、陰圧雰囲気を形成するに際しての圧力制御の困難性を解消することである。
【0010】
本発明の別の目的は、隔離室に感染症の患者を収容した後も、隔離室を形成するための各部の再使用を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の隔離室形成装置は、隙間を開けた積層状態を維持する複数枚のシートを形状保持して最下層の前記シートの内部に非気密状態で患者を隔離収容する隔離室を形成するテントと、吸気口から空気を吸引し殺菌及び除菌した後に第1の排気口から排出する空気清浄部と、オゾン放出口からオゾンを放出する燻蒸動作とオゾン吸気口からオゾンを含む空気を吸引し酸素に戻して第2の排気口から排出するオゾン除去動作とを実行する燻蒸部と、前記テントの外部の所定の設置位置に設置される前記空気清浄部の前記吸気口を前記複数枚のシート間の隙間によって形成される陰圧雰囲気生成空間と直接連通させる陰圧室形成用連通構造と、前記テントの外部の所定の設置位置に設置される前記燻蒸部の前記オゾン放出口及び前記オゾン吸気口を前記陰圧雰囲気生成空間及び前記隔離室と連通させる燻蒸用連通構造と、を備える。
【0012】
本発明の隔離室形成方法は、隙間を開けた積層状態を維持する複数枚のシートを形状保持して最下層の前記シートの内部に非気密状態で患者を隔離収容する隔離室を形成するテントを設置する工程と、前記テントの外部の所定の設置位置に、吸気口から空気を吸引し殺菌及び除菌した後に第1の排気口から排出する空気清浄部を設置する工程と、前記設置位置に設置された前記空気清浄部の前記吸気口を前記複数枚のシート間の隙間によって形成される陰圧雰囲気生成空間と直接連通させる工程と、前記テントの外部の所定の設置位置に、オゾン放出口からオゾンを放出する燻蒸動作とオゾン吸気口からオゾンを含む空気を吸引し酸素に戻して第2の排気口から排出するオゾン除去動作とを実行する燻蒸部を設置する工程と、前記設置位置に設置された前記燻蒸部の前記オゾン放出口及び前記オゾン吸気口を前記陰圧雰囲気生成空間及び前記隔離室と連通させる工程と、前記空気清浄部を動作させて前記陰圧雰囲気生成空間を陰圧にする工程と、前記燻蒸部をオゾン放出動作させて前記陰圧雰囲気生成空間及び前記隔離室を燻蒸する工程と、前記燻蒸部をオゾン回収動作させて前記陰圧雰囲気生成空間及び前記隔離室からオゾンを除去する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、空気清浄部の吸気口を複数枚のシート間の隙間によって形成される陰圧雰囲気生成空間と直接連通させることにより、吸気口からの吸気によって陰圧雰囲気生成空間を陰圧雰囲気にすることができ(陰圧雰囲気生成空間を陰圧にする工程)、この際、隔離室及び陰圧雰囲気生成空間が非気密状態であることから、陰圧雰囲気生成空間に隔離室及び外部空間からの空気を適宜回り込ませることができ、したがって、陰圧雰囲気生成空間を陰圧雰囲気に維持するための特別な圧力制御を不要としてそのような圧力制御の困難性を解消することができる。本発明によれば、また、テントの外部に設置される燻蒸部のオゾン放出口及びオゾン吸気口を陰圧雰囲気生成空間及び隔離室と連通させることにより、テントの外部から空気清浄部及び燻蒸部を操作することで、使用後の隔離室に残存する感染性粒子を燻蒸部の燻蒸動作によってオゾン燻蒸し(隔離室を燻蒸する工程)、それによって残存するオゾンを燻蒸部のオゾン除去動作によって分解することができ(隔離室からオゾンを除去する工程)、したがって、隔離室に感染症の患者を収容した後も、隔離室を形成するための各部を再使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の一形態を示す隔離室形成装置の概略的な縦断正面図である。
【図2】シートを透過させた状態で隔離室形成装置を示す斜視図である。
【図3】シートを透過させた状態で隔離室形成装置の別の一例を示す斜視図である。
【図4】空気清浄燻蒸機を正面から示す斜視図である。
【図5】空気清浄燻蒸機を背面から示す斜視図である。
【図6】空気清浄燻蒸機をその内部構造及び電気的接続と共に示す模式図である。
【図7】空気清浄燻蒸機の制御部が実行するシーケンスの流れを示すフローチャートである。
【図8】別の実施の一形態として適用可能な空気清浄燻蒸機をその内部構造及び電気的接続と共に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の一形態を図1ないし図7に基づいて説明する。
【0016】
図1は、隔離室形成装置101を示す縦断正面図である。隔離室形成装置101は、テント201と空気清浄燻蒸機301とを主要な構成物としている。
【0017】
テント201は、二枚のシート202が隙間を開けて積層されることで二重構造をなし、二枚のシート202の間の隙間に陰圧雰囲気生成空間NSを形成し、下層のシート202bの内部の収容スペースに隔離室203を形成している。隔離室203は、感染症の患者IPを収容する目的で使用される。そこで、隔離室203には、患者IPのためのベッド501(図1参照)、ストレッチャー502(図2参照)、イス503(図3参照)等が設置される。このようなテント201の設置場所は、屋内(例えば病院構内)でも良いし屋外でも良い。つまり、テント201は、環境や目的に応じて任意の場所に設置されることになる。
【0018】
空気清浄燻蒸機301は、空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとを一体的に有している(図6参照)。空気清浄部301Aは、空気を吸引することにより陰圧雰囲気生成空間NSを陰圧雰囲気にする。燻蒸部301Bは、隔離室203及び陰圧雰囲気生成空間NSをオゾンで燻蒸して消毒する。オゾン燻蒸は、隔離室203に感染症の患者IPを収容することによって汚染された隔離室203及び陰圧雰囲気生成空間NS内の感染性粒子を殺菌するために行なわれる。
【0019】
ここで、テント201について説明する。テント201は、隙間を開けた積層状態を維持する二枚のシート202(202a,202b)を形状保持し、下層側のシート202bの内部に非気密状態で患者IPを隔離収容する隔離室203を形成する。テント201は、複数本の棒状部材が組み合わさって形成されるフレーム204によって下層側のシート202bを形状保持し、二枚のシート202a,202bの間に介在配置される複数個のスペーサ205によって上層側のシート202aを形状保持している。
【0020】
フレーム204は、一例としてステンレス、別の一例として各種の合成樹脂を材料として形成されていている。フレーム204には、下層側のシート202bを形状保持し得る上に、上層側のシート202aの重量も支えることができる程度の強固さが要求されるので、この要求を満足し得る材料によって形成されなければならない。二枚のシート202は、一例として軟質塩化ビニル、別の一例としてテフロン(登録商標)を材料として形成されている。スペーサ205は、例えば各種の合成樹脂によって形成されている。これらのシート202及びスペーサ205は、軽量であることが好ましく、この観点を材料選定の重要な要素としている。
【0021】
図2は、シート202を透過させた状態で隔離室形成装置101を示す斜視図である。テント201の側面にあたるシート202の一面には、患者IPを含む人間がテント201に出入りするための出入口206が設けられている。出入口206は、例えばファスナによって開閉自在となっている。図1にも明示しているように、二枚のシート202の下縁207は、いずれも隔離室203の底面GSに固定されてない自由端である。したがって、下縁207と底面GSとの間の隙間から、テント201の内部に形成されている隔離室203及び陰圧雰囲気生成空間NSと外部空間との間で、空気の流通が許容されている。これにより、テント201は、非気密状態で隔離室203に患者を収容することになる。なお、底面GSは、テント201の設置場所に応じ、病院の床面であったり地面であったりする。
【0022】
図3は、シート202を透過させた状態で隔離室形成装置101の別の一例を示す斜視図である。図3に示す隔離室形成装置101が図1及び図2に示す隔離室形成装置101と異なる点は、テント201の形態である。すなわち、図1及び図2に示すテント201が長方形であるのに対して、図3に示すテント201は四角錐形状を有している。したがって、このテント201の内部に形成される隔離室203も、四角錐形状となる。このような図3に示すテント201は、図1及び図2に示すテント201と比較して底面GSが狭くなり、占有空間が減少すると考えられるため、より簡易的又は緊急的な使用が想定される。
【0023】
なお、テント201の形状は、図1ないし図3に示した例に限られることはなく、二枚のシート202がフレーム204を覆うことで外部と隔てた隔離室203が形成されるものであれば、いかなる形状であっても良い。また、シート202の枚数も二枚に限らず、一枚一枚のシート202の間に隙間を開けた形態であれば、三枚以上であっても良い。更に、テント201は、二枚のシート202(202a,202b)の間にスペーサ205を介在配置して陰圧雰囲気生成空間NSを形成する構造のみならず、大きさが異なる複数個のテント(図示せず)を重ねて設置することで個々のテントの間に陰圧雰囲気生成空間NSを形成する構造であっても良い。
【0024】
図1を再び参照する。空気清浄燻蒸機301は、テント201の外部で底面GS上に配置されている。この場合、空気清浄燻蒸機301は、任意の位置に配置されているというわけではなく、その配置位置は所定の設置位置SPとして予め決められている。空気清浄燻蒸機301の設置位置SPは、隔離室形成装置101がその諸機能を発揮する上で重要な役割を担っている。このような空気清浄燻蒸機301の設置位置SPについては、後に詳述する。
【0025】
図4は、空気清浄燻蒸機301を正面から示す斜視図である。図5は、その背面図である。空気清浄燻蒸機301は、縦長のハウジング302を有している。ハウジング302の下面四隅には、空気清浄燻蒸機301を移動自在にするキャスタ303が設けられている。ハウジング302は、その背面に吸気口304を備え(図5参照)、その上部に排気口305(第1の排気口、第2の排気口)を備えている。吸気口304及び排気口305は、羽根板が平行に取り付けられた扉状(いわゆるガラリ)となっている。
【0026】
ハウジング302の前面には、空気清浄燻蒸機301の状態等の情報を表示する操作表示部306が設けられている。操作表示部306は、手動操作によって、空気清浄燻蒸機301が有する空気清浄部301Aに対する動作開始指令と燻蒸部301Bに対する動作開始指令とを別個独立して入力可能である(空気清浄部ON、燻蒸部ON)。
【0027】
図6は、空気清浄燻蒸機301をその内部構造及び電気的接続と共に示す模式図である。前述したように、空気清浄燻蒸機301は、空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとを一体的に有している。これらの空気清浄部301A及び燻蒸部301Bは、共にハウジング302に内蔵され、空気清浄燻蒸機301として一体化されている。これらの空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとは、一部分、部品の共通化が図られている。そこで、ここでは、空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとを別にすることなくそれらの構成について説明した上で、空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとについて説明する。
【0028】
空気清浄燻蒸機301は、ハウジング302に中空の風洞307を内蔵している。風洞307は、一端側が吸気口304に面して他端が排気口305に面して配置されており、吸気口304と排気口305とを連絡している。このような風洞307の内部には、吸気口304側から排気口305に向けて順に、プレフィルタ308、清浄用噴出ノズル309、蛍光灯310、光触媒311、オゾン分解触媒312、高性能脱臭フィルタ313、カーボンシルク314、HEPAフィルタ315、ファン316、及び、マイナスイオン発生器317が配置されている。
【0029】
プレフィルタ308は、風洞307の入口を塞ぐようにして配置され、大きな塵や埃を捕集する。
【0030】
清浄用噴出ノズル309は、オゾンを噴出する。つまり、空気清浄燻蒸機301は、吸気口304の近傍に位置させて、清浄用エアポンプ318と清浄用オゾン発生器319(第1のオゾン発生器)とをハウジング302に内蔵している。清浄用エアポンプ318は、外部の空気を吸引し、吸引した空気を中空のチューブ320aと清浄用オゾン発生器319と中空のチューブ320bとを介して清浄用噴出ノズル309に供給する。この際、清浄用オゾン発生器319はオゾンを発生し、このオゾンが空気と混合されて清浄用噴出ノズル309にも供給されるため、清浄用噴出ノズル309からオゾンが噴射する。
【0031】
蛍光灯310は、点灯回路321によって始動し、点灯を維持する。
【0032】
光触媒311は、蛍光灯310が発する光に照射されることで除菌脱臭を行なう。光触媒311は、担体(図示せず)に担持されている。
【0033】
オゾン分解触媒312(第1のオゾン分解触媒及び第2のオゾン分解触媒)は、オゾンを酸素に変化させる。オゾン分解触媒312も、担体(図示せず)に担持されている。
【0034】
高性能脱臭フィルタ313は、悪臭物質(例えば、アンモニア、酢酸、メチルメルカプタン)を捕集する。
【0035】
カーボンシルク314は、脱臭を行なう。
【0036】
HEPAフィルタ315は、ウィルス等の微粒子を捕集する。
【0037】
ファン316は、モータ322に駆動されて回転し、吸気口304に面した風洞307の一端側から外部の空気を風洞307の内部に吸引する。ファン316の回転によって風洞307の内部に吸引された空気は、排気口305に面する風洞307の他端側から排気される。
【0038】
マイナスイオン発生器317は、マイナスイオンを発生する。
【0039】
次いで、空気清浄燻蒸機301は、吸気口304の近傍に位置させて、清浄用エアポンプ318及び清浄用オゾン発生器319(第1のオゾン発生器)とは別に、燻蒸用エアポンプ323と燻蒸用オゾン発生器324(第2のオゾン発生器)とをハウジング302に内蔵している。燻蒸用エアポンプ323は、外部の空気を吸引し、吸引した空気を中空のチューブ325aと燻蒸用オゾン発生器324と中空のチューブ325bとを介して燻蒸用噴出ノズル326に供給する。この際、燻蒸用オゾン発生器324はオゾンを発生し、このオゾンが空気と混合されて燻蒸用噴出ノズル326にも供給されるため、燻蒸用噴出ノズル326からオゾンが噴射する。燻蒸用噴出ノズル326は、排気口305の配置領域内に配置され、その吐出口をオゾン放出口327としている。
【0040】
このように構成された空気清浄燻蒸機301は、各部を駆動制御する制御部328を備えている。制御部328は、前述した操作表示部306を初めとして、清浄用エアポンプ318、清浄用オゾン発生器319、蛍光灯310の点灯回路321、ファン316を回転駆動するためのモータ322、マイナスイオン発生器317、燻蒸用エアポンプ323、及び燻蒸用オゾン発生器324を駆動制御する。また、空気清浄燻蒸機301は、空気の汚れ具合をセンシングするダストセンサ329をハウジング302に内蔵している。制御部328は、そのダストセンサ329からの信号を取り込み、取り込んだ信号に応じて各部の制御状態を設定する。このような制御部328は、一例としてデジタル回路によって構成され、予め決められている処理をシーケンシャルに実行するシーケンサとして実現されている。
【0041】
ここで、空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとについて説明する。
【0042】
空気清浄部301Aは、概略的には、吸気口304から空気を吸引して清浄用オゾン発生器319(第1のオゾン発生器)が発生するオゾンと混合しオゾン分解触媒312(第1のオゾン分解触媒)で酸素に戻す殺菌とHEPAフィルタ315を通過させる微粒子捕集とを行なって排気口305(第1の排気口)から排出する。そこで、風洞307の内部に配置されているプレフィルタ308、清浄用噴出ノズル309、蛍光灯310、光触媒311、オゾン分解触媒312、高性能脱臭フィルタ313、カーボンシルク314、HEPAフィルタ315、ファン316、及びマイナスイオン発生器317は、空気清浄部301Aを構成する。これらに加えて、清浄用噴出ノズル309からオゾンを噴射させるための各部(清浄用エアポンプ318、チューブ320a、清浄用オゾン発生器319、チューブ320b)、蛍光灯310の点灯回路321、ファン316を回転駆動するためのモータ322、マイナスイオン発生器317、及びそれらの各部を制御する制御部328も、空気清浄部301Aを構成している。
【0043】
燻蒸部301Bは、概略的には、燻蒸用オゾン発生器324(第2のオゾン発生器)が発生させたオゾンをオゾン放出口327から放出するオゾン放出と、吸気口304(オゾン吸気口)からオゾンを吸引してオゾン分解触媒312(第2のオゾン分解触媒)を通過させて排気口305(第2の排気口)から排出するオゾン回収とを行なう。そこで、オゾン放出口327からオゾンを噴射させるための各部(燻蒸用エアポンプ323、チューブ325a、燻蒸用オゾン発生器324、チューブ325b)、及びこれらを駆動する制御部328は、燻蒸部301Bを構成し、燻蒸部301Bにオゾン放出を実行させる。また、風洞307の内部に配置されているオゾン分解触媒312及びファン316と、ファン316を回転駆動させるモータ322及びこれを駆動制御する制御部328も、燻蒸部301Bを構成し、燻蒸部301Bにオゾン回収を実行させる。
【0044】
以上説明したように、空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとは、一部分、部品の共通化が図られている。このような構成上、ハウジング302の裏面に設けられている吸気口304(図5参照)は、空気清浄部301Aが空気を吸引するための吸気口と、燻蒸部301Bがオゾンを含む空気を吸引するためのオゾン吸気口とを兼ねている。また、ハウジング302の上面に設けられている排気口305(図4参照)は、空気清浄部301Aが空気清浄処理後の空気を排出するための第1の排気口と、燻蒸部301Bがオゾン分解後の空気を排出するための第2の排気口とを兼ねている。このような排気口305の配置領域内には、前述したように、燻蒸用噴出ノズル326の先端に形成されたオゾン放出口327が配置されている。
【0045】
前述したように、空気清浄部301Aは、空気を吸引することによりテント201に形成されている陰圧雰囲気生成空間NSを陰圧雰囲気にする。燻蒸部301Bは、テント201の内部に形成されている隔離室203及び陰圧雰囲気生成空間NSをオゾンで燻蒸して消毒する。そこで、本実施の形態の隔離室形成装置101は、これらの陰圧雰囲気形成とオゾン燻蒸とを実現するために、テント201と空気清浄燻蒸機301とを関連付けるための構成を備えている。この構成は、陰圧室形成用連通構造401及び燻蒸用連通構造421である。隔離室形成装置101は、更に、それらの陰圧雰囲気形成とオゾン燻蒸とに付随する構造として、空気清浄用連通構造431も備えている。以下、図1、図4〜図6を参照しながら、陰圧室形成用連通構造401、燻蒸用連通構造421及び空気清浄用連通構造431について説明する。
【0046】
陰圧室形成用連通構造401は、テント201の外部の所定の設置位置SP(図1参照)に設置される空気清浄燻蒸機301が有する空気清浄部301Aの吸気口304を二枚のシート202(202a,202b)の間の隙間によって形成される陰圧雰囲気生成空間NSと直接連通させる構造である。空気清浄燻蒸機301は、その背面に空気清浄部301Aの吸気口304を有している。そこで、設置位置SPは、その吸気口304が上層側のシート202aの一部に対面するように空気清浄燻蒸機301の設置場所を定めている。そして、陰圧室形成用連通構造401は、そのような設置位置SPに設置されている空気清浄燻蒸機301の吸気口304に対面するように上層側のシート202aに形成された連通孔402によって形成されている。したがって、吸気口304は、連通孔402を介して陰圧雰囲気生成空間NSに直接的に連通している。
【0047】
燻蒸用連通構造421は、テント201の外部の所定の設置位置に設置される空気清浄燻蒸機301が有する燻蒸部301Bのオゾン放出口327及びオゾン吸気口である吸気口304を二枚のシート202(202a,202b)の間の隙間によって形成される陰圧雰囲気生成空間NS及び隔離室203と連通させる構造である。空気清浄用連通構造431は、設置位置SPに設置される空気清浄燻蒸機301の排気口305を隔離室203に直接連通させる。これらの燻蒸用連通構造421及び空気清浄用連通構造431は、構造的に共通している部分が多いため、一緒に説明する。
【0048】
燻蒸用連通構造421及び空気清浄用連通構造431は、空気清浄燻蒸機301のオゾン放出口327を陰圧雰囲気生成空間NS及び隔離室203に連通させる構造として、また、排気口305を隔離室203に連通させる構造として、空気清浄燻蒸機301の上部に着脱自在に取り付け可能なダクト422を有している。ダクト422は、空気清浄燻蒸機301の上部に着脱自在でその上面を覆うダクトカバー423を有している。ダクトカバー423は、空気清浄燻蒸機301の上面を覆うことで排気口305を完全に覆う。そして、ダクト422は、ダクトカバー423の上部から垂直に延出して直角に屈曲し水平に延出するダクトパイプ424を有し、ダクトパイプ424の内部に配置されたオゾン燻蒸用パイプ425を有している。ダクトパイプ424は、その屈曲部分で垂直に分岐する分岐パイプ424aを有している。分岐パイプ424aは、ダクトパイプ424を分岐させ、ダクトパイプ424に二つの出口開口を与えている。オゾン燻蒸用パイプ425は、ダクトパイプ424の水平に延出する部分で二股に分岐し、一端はダクトパイプ424の出口内で開口し、別の一端はダクトパイプ424の途中から外部に開口している。このようなオゾン燻蒸用パイプ425は、ダクトカバー423を空気清浄燻蒸機301の上部に装着すると燻蒸用噴出ノズル326の先端に設けられたオゾン放出口327に連結されるように位置付けられている。
【0049】
こうして形成されたダクト422は、空気清浄燻蒸機301が設置位置に設置された状態で、陰圧雰囲気生成空間NS及び隔離室203にダクトパイプ424及びオゾン燻蒸用パイプ425を挿入させる。つまり、テント201を形成する二枚のシート202(202a,202b)には、それぞれ、ダクト挿通孔426(426a,426b)が形成されている。これらのダクト挿通孔426(426a,426b)は、設置位置SPに設置されている空気清浄燻蒸機301に装着されたダクト422が有するダクトパイプ424を挿通させることができる位置に位置付けられている。この状態で、ダクトパイプ424は二枚のシート202(202a,202b)をいずれも連通し、これによって空気清浄燻蒸機301の排気口305を隔離室203の内部に連通させる。また、オゾン燻蒸用パイプ425は、二股に分岐した一方の開口端をダクトパイプ424と共に隔離室203の内部に配置し、もう一方の開口端を陰圧雰囲気生成空間NSの内部に配置する。これによって、オゾン燻蒸用パイプ425は、空気清浄燻蒸機301のオゾン放出口327を陰圧雰囲気生成空間NS及び隔離室203に連通させる。
【0050】
燻蒸用連通構造421は、空気清浄燻蒸機301の吸気口304を陰圧雰囲気生成空間NS及び隔離室203に連通させる構造として、連通孔402を陰圧室形成用連通構造401と兼用している。連通孔402は、空気清浄燻蒸機301の吸気口304を陰圧雰囲気生成空間NSに連通させる。そして、前述したように、テント201は、その下縁207を底面GSから離反させて非気密状態となっていることから、陰圧雰囲気生成空間NSと隔離室203とは空間的に連通した状態にある。これにより、吸気口304は、連通孔402を介して陰圧雰囲気生成空間NSに直接的に連通し、この陰圧雰囲気生成空間NSを介して隔離室203に間接的に連通している。
【0051】
このような構成において、隔離室形成装置101を使用するには、まず、隔離室形成装置101を使用しようとする場所にテント201を張る。そして、予め決められている設置位置SPに空気清浄燻蒸機301を設置する。これと前後して、空気清浄燻蒸機301の上部にダクト422を取り付ける。この際、テント201を形成する二枚のシート202(202a,202b)に形成されているダクト挿通孔426(426a,426b)に、ダクト422のダクトパイプ424を挿入する。この際、ダクトパイプ424が有している分岐パイプ424aは、ダクト挿通孔426(426a,426b)には挿入されず、テント201の外部に配置される。これにより、空気清浄燻蒸機301の吸気口304が、上層側のシート202aに形成されている連通孔402を介して陰圧雰囲気生成空間NSと直接連通する(陰圧室形成用連通構造401)。また、空気清浄燻蒸機301のオゾン放出口327が、オゾン燻蒸用パイプ425を介して陰圧雰囲気生成空間NS及び隔離室203に連通する(燻蒸用連通構造421)。更に、空気清浄燻蒸機301の排気口305が、ダクト挿通孔426(426a,426b)を挿通するダクトパイプ424を介して隔離室203に連通し、分岐パイプ424aを介してテント201の外部空間に連通する(空気清浄用連通構造431)。こうして、隔離室形成装置101が構成されている。そこで、必要に応じて、ベッド501(図1参照)、ストレッチャー502(図2参照)、イス503(図3参照)等をテント201の内部に形成された隔離室203に設置し、感染症の患者IPの搬入を待つ。
【0052】
看護人は、感染症にかかった患者IPを隔離室203に収容した後、空気清浄燻蒸機301の操作表示部306を手動操作して、まず、空気清浄部301Aに対する動作開始指令を入力する(空気清浄部ON)。そして、患者IPから隔離室203から退去した場合、燻蒸部301Bに対する動作開始指令を入力する(燻蒸部ON)。
【0053】
図7は、空気清浄燻蒸機301の制御部328が実行するシーケンスの流れを示すフローチャートである。制御部328は、空気清浄部ONと燻蒸部ONとを検知するシーケンスを繰り返している(ステップS101、ステップS102)。そこで、空気清浄部ONを検知すると(ステップS101のY)、空気清浄部301Aの動作を開始する(ステップS103)。つまり、制御部328は、モータ322を駆動してファン316を回転駆動し、これによって吸気口304から風洞307の内部に外部の空気を引き込む(陰圧雰囲気生成空間NSを陰圧にする工程)。この際、制御部328は、清浄用エアポンプ318及び清浄用オゾン発生器319を駆動して清浄用噴出ノズル309から風洞307の内部にオゾンを噴出させ、点灯回路321によって蛍光灯310を始動点灯させ、マイナスイオン発生器317を駆動してマイナスイオンを発生させる。
【0054】
これにより、テント201を形成する二枚のシート202(202a,202b)の隙間に形成されている陰圧雰囲気生成空間NS内の空気が吸気口304から引き込まれ、空気清浄部301Aで清浄化された後に排気口305から排出され、ダクトパイプ424を通って一部が隔離室203に供給され、他の一部が分岐パイプ424aを通ってテント201の外部空間に排出される。以下、このような空気清浄動作に伴い発生する各部の変化について詳細に説明する。
【0055】
まず、空気清浄燻蒸機301の吸気口304から外部の空気が風洞307の内部に引き込まれると、上層側のシート202aが吸気口304に張り付いたような状態となり、専ら、陰圧雰囲気生成空間NS内の空気が直接的に吸気口304に引き込まれる。これにより、陰圧雰囲気生成空間NSは陰圧雰囲気となる。この際、テント201は非気密状態であることから、上層側のシート202aの下縁207と底面GSとの間の隙間からはテント201の外部の空気が陰圧雰囲気生成空間NSに引き込まれ、下層側のシート202bと底面GSとの間の隙間からは隔離室203の内部の空気が陰圧雰囲気生成空間NSに引き込まれ、陰圧雰囲気生成空間NSの内部圧力が外部圧力と平衡になろうとする。これに対して、陰圧雰囲気生成空間NSは、連通孔402を介して空気清浄燻蒸機301の吸気口304に直接連通していることから、ファン316が回転して吸気口304からの空気の引き込み動作が継続している限り、陰圧雰囲気生成空間NSの内部の空気が風洞307の内部に引き込まれ続ける。これにより、陰圧雰囲気生成空間NSの内部圧力は外部圧力と平衡になりきらず、テント201の外部及び隔離室203の内部の圧力よりも僅かに陰圧状態を維持する。その結果、隔離室203に収容されている感染症の患者IPが発する感染性粒子をテント201の外部に漏れ出さないようにすることができる。
【0056】
ここで重要なことは、隔離室203及び陰圧雰囲気生成空間NSが非気密状態であることから、陰圧雰囲気生成空間NSに隔離室203及び外部空間からの空気を適宜回り込ませることができるということである。このことは、陰圧雰囲気生成空間NSを陰圧雰囲気に維持するための特別な圧力制御を不要とできることを意味している。その結果、陰圧雰囲気を形成するための圧力制御の困難性を解消し、隔離室形成装置101の設計の困難化や構造の複雑化を避けることができる。
【0057】
次いで、患者IPが発する感染性粒子を含む隔離室203の内部空気は、陰圧雰囲気生成空間NSが陰圧雰囲気になるに従い陰圧雰囲気生成空間NSに流れ込む。このため、陰圧雰囲気生成空間NSを陰圧雰囲気にするに際して空気清浄燻蒸機301が吸気口304から取り込む空気は、感染性粒子を含んでいる。そこで、空気清浄部301Aは、この汚染された空気を清浄化して排出する。つまり、吸気口304から吸引された汚染空気は、プレフィルタ308を通過して大きな塵埃の除去処理を施され、清浄用噴出ノズル309が噴射するオゾンと混合されて除菌脱臭され、光触媒311を通過して除菌脱臭される。そして、光触媒311を通過した空気に含まれているオゾンはオゾン分解触媒312を通過することで酸素に戻される。その後、オゾンが酸素に戻された空気は、高性能脱臭フィルタ313を通過して悪臭物質の除去処理を施され、カーボンシルク314を通過して脱臭され、HEPAフィルタ315を通過して残った浮遊菌や塵の除去処理を施され、清浄空気として排気口305から排出される。清浄空気には、マイナスイオン発生器317が発生させるマイナスイオンが混合される。この際、制御部328は、ダストセンサ329がセンシングする空気の汚れ具合に応じて、ファン316の回転量(風量)を調節する。
【0058】
こうして、空気清浄燻蒸機301の空気清浄部301Aは、陰圧雰囲気生成空間NSを陰圧雰囲気にすると共に、その際に取り込んだ汚染された空気を清浄化された安全な空気として排気口305から排気する。排気口305から排出された空気は、ダクト422に集められ、ダクトパイプ424を通って一部が隔離室203に供給され、他の一部が分岐パイプ424aを通ってテント201の外部空間に排出される。これにより、隔離室203には、清浄化された安全な空気を供給することができる。その結果、第一に、隔離室203内の雰囲気を清浄化することができる。第二に、隔離室203から陰圧雰囲気となった陰圧雰囲気生成空間NSに空気が吸引されることによって発生することがある底面GSの埃や砂(外部設置の場合)の舞い上げを抑制することができる。そして、第三に、陰圧雰囲気生成空間NSを隔離室203よりも確実に陰圧雰囲気に維持することができる。この場合、ダクトパイプ424は、分岐パイプ424aによって分岐されているので、排気口305から排出された空気の一部を隔離室203に供給して他の一部をテント201の外部空間に排出する。これにより、排気口305から排出された空気が過剰に隔離室203に戻されて陰圧雰囲気生成空間NSの陰圧化が妨げられる事態を確実に防止することができる。
【0059】
看護人は、テント201から患者IPが退出した後、操作表示部306を手動操作し、空気清浄部301Aを停止させて燻蒸部301Bを動作させる。この際、空気清浄部301Aの動作停止指令を発した後(空気清浄部OFF)、燻蒸部301Bを動作開始指令しても(燻蒸部ON)、いきなり燻蒸部301Bを動作開始指令しても(燻蒸部ON)、いずれでも良い。制御部328は、いずれの場合も空気清浄部301Aの停止指令があったものと検知する。
【0060】
制御部328は、動作中の空気清浄部301Aの停止指令を検知すると(ステップS104のY)、空気清浄部301Aの動作停止を実行する(ステップS105)。そして、制御部328は、空気清浄部301Aの停止指令が操作表示部306による空気清浄部301Aの動作停止指令であった場合には(ステップS106のY)、処理シーケンスを終了する。この場合、制御部328は、その後に行なわれることであろう燻蒸部301Bの動作開始指令(燻蒸部ON)の検知(ステップS102のY)に待機することになる。これに対して、制御部328は、空気清浄部301Aの停止指令が操作表示部306による燻蒸部301Bの動作開始指令(燻蒸部ON)である場合には(ステップS106のY)、燻蒸部301Bの動作開始指令の検知有無判定(ステップS102)を実行することなく、燻蒸部301Bによる燻蒸動作を開始する(ステップS107)。
【0061】
制御部328は、ステップS107の燻蒸動作として、燻蒸用エアポンプ323及び燻蒸用オゾン発生器324を駆動する(隔離室を燻蒸する工程)。これにより、燻蒸用エアポンプ323の動作によって吸気口304から空気が取り込まれ、取り込まれた空気は燻蒸用オゾン発生器324が発生するオゾンと混合されて燻蒸用噴出ノズル326のオゾン放出口327からオゾンガスとして放出される。オゾン放出口327から放出されたオゾンガスは、ダクト422が有するオゾン燻蒸用パイプ425を通って陰圧雰囲気生成空間NS及び隔離室203に供給される。これにより、感染症の患者IPが隔離室203に収容されたことによって汚染された陰圧雰囲気生成空間NS及び隔離室203をオゾン燻蒸することができる。この際、言うまでもなく、隔離室203に設置されていたベッド501(図1参照)、ストレッチャー502(図2参照)、イス503(図3参照)等の装備品、二枚のシート202(202a,202b)のそれぞれ、フレーム204及びスペーサ205に満遍なくオゾンが回り込み、これらの各部を十分にオゾン燻蒸することができる。
【0062】
制御部328は、隔離室形成装置101の各部を燻蒸するのに十分な時間として設定されている所定時間の経過を待ち、所定時間が経過したならば(ステップS108のY)、燻蒸部301Bによる燻蒸動作を停止する(ステップS109)。そして、燻蒸部301Bによるオゾン除去動作を開始する(ステップS110)。
【0063】
制御部328は、ステップS110のオゾン除去動作として、モータ322の駆動によってファン316を回転駆動し、これによって吸気口304から風洞307の内部に外部の空気を引き込む。この際、制御部328は、点灯回路321によって蛍光灯310を始動点灯させ、マイナスイオン発生器317を駆動してマイナスイオンを発生させる(オゾンを除去する工程)。このようなオゾン除去動作により、空気清浄燻蒸機301の吸気口304から外部の空気が風洞307の内部に引き込まれると、上層側のシート202aが吸気口304に張り付いたような状態となり、専ら、陰圧雰囲気生成空間NS内のオゾンを含む空気が直接的に吸気口304に引き込まれる。すると、隔離室203の内部空気が陰圧雰囲気生成空間NSに移動し、陰圧雰囲気生成空間NSを介して吸気口304に引き込まれる。吸気口304から吸引されたオゾンを含む空気は、プレフィルタ308を通過して大きな塵埃の除去処理を施され、光触媒311を通過して除菌脱臭される。そして、光触媒311を通過した空気に含まれているオゾンはオゾン分解触媒312を通過することで酸素に戻される。その後、オゾンが酸素に戻された空気は、高性能脱臭フィルタ313を通過して悪臭物質の除去処理を施され、カーボンシルク314を通過して脱臭され、HEPAフィルタ315を通過して残った浮遊菌や塵の除去処理を施され、清浄空気として排気口305から排出される。清浄空気には、マイナスイオン発生器317が発生させるマイナスイオンが混合される。こうして、空気清浄燻蒸機301の燻蒸部301Bは、吸気口304から取り込んだ空気に含まれているオゾンを酸素に分解して排気口305から排気する。排気口305から排出された空気は、ダクト422に集められ、ダクトパイプ424を通って一部が隔離室203に供給され、他の一部が分岐パイプ424aを通ってテント201の外部空間に排出される。
【0064】
制御部328は、陰圧雰囲気生成空間NS及び隔離室203に残るオゾンを分解するのに十分な時間として設定されている所定時間の経過を待ち、所定時間が経過したならば(ステップS111のY)、燻蒸部301Bによるオゾン回収動作を停止する(ステップS112)。これにより、本実施の形態の隔離室形成装置101によれば、隔離室203に感染症の患者IPを収容した後も、隔離室203を形成するための各部を再使用することができる。
【0065】
図8は、別の実施の一形態として適用可能な空気清浄燻蒸機301をその内部構造及び電気的接続と共に示す模式図である。図1ないし図7に基づいて説明した部分と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0066】
本実施の形態の空気清浄燻蒸機301は、清浄用エアポンプ318及び清浄用オゾン発生器319と燻蒸用エアポンプ323及び燻蒸用オゾン発生器324とを、単一の共用エアポンプ331及び共用オゾン発生器332として兼用している。つまり、空気清浄燻蒸機301の吸気口304には共用エアポンプ331が配置され、この共用エアポンプ331には中空のチューブ333aを介して共用オゾン発生器332が連結している。そして、共用オゾン発生器332には中空のチューブ333bが接続されている。このチューブ333bは、電磁バルブ334を介して、清浄用噴出ノズル309に連絡する中空のチューブ333cと燻蒸用噴出ノズル326に連絡する中空のチューブ333dとに分岐している。電磁バルブ334は、共用オゾン発生器332に連結されているチューブ333bを、清浄用噴出ノズル309に連通しているチューブ333cと燻蒸用噴出ノズル326に連通しているチューブ333dとに択一的に切り替える。これらの共用エアポンプ331、共用オゾン発生器332及び電磁バルブ334は、制御部328に接続されて制御部328に制御される。制御部328によるこれらの各部の制御は、次の通りである。
【0067】
制御部328は、空気清浄燻蒸機301の空気清浄部301Aを動作させる場合(図7のステップS103)、共用エアポンプ331及び共用オゾン発生器332を駆動させる。そして、制御部328は、共用オゾン発生器332に連結されているチューブ333bが清浄用噴出ノズル309に連通しているチューブ333cの側に連通するよう、電磁バルブ334を切り替え制御する。これにより、空気清浄部301Aは、前述した動作と同一の動作を行なう。
【0068】
制御部328は、空気清浄燻蒸機301の燻蒸部301Bに燻蒸動作をさせる場合(図7のステップS107)、共用エアポンプ331及び共用オゾン発生器332を駆動させる。そして、制御部328は、共用オゾン発生器332に連結されているチューブ333bが燻蒸用噴出ノズル326に連通しているチューブ333dの側に連通するよう、電磁バルブ334を切り替え制御する。これにより、燻蒸部301Bは、前述した燻蒸動作と同一の燻蒸動作を行なう。
【0069】
制御部328は、空気清浄燻蒸機301の燻蒸部301Bにオゾン回収動作をさせる場合(図7のステップS110)、共用エアポンプ331及び共用オゾン発生器332をいずれも動作させず、電磁バルブ334も切り替え制御しない。これにより、燻蒸部301Bは、前述したオゾン回収動作と同一のオゾン回収動作を行なう。
【0070】
以上説明したように、いずれの実施の形態によっても、隔離室203及び陰圧雰囲気生成空間NSが非気密状態であることから、陰圧雰囲気生成空間NSに隔離室203及び外部空間からの空気を適宜回り込ませることができ、これにより、陰圧雰囲気生成空間NSを陰圧雰囲気に維持するための特別な圧力制御を不要とすることができる。
【0071】
また、いずれの実施の形態も、空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとが空気清浄燻蒸機301として一体化されて部品の共通化が図られている。これにより、部品コストの低減、空気清浄燻蒸機301の小型化等を実現させることができる。とりわけ、図8に示す実施の形態では、空気清浄部301Aの清浄用エアポンプ318及び清浄用オゾン発生器319と、燻蒸部301Bの燻蒸用エアポンプ323及び燻蒸用オゾン発生器324とが、単一の共用エアポンプ331及び共用オゾン発生器332として兼用されているので、より一層の部品の共通化を図ることができる。
【0072】
また、いずれの実施の形態も、空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとが単一のハウジング302に内蔵されて一体化されているため、空気清浄部301Aと燻蒸部301Bとが別体である場合と比較して、空気清浄燻蒸機301の設置運搬に利便性が増す。
【0073】
更に、いずれの実施の形態でも、患者IPがテント201から退出した後に各部をオゾン燻蒸し、その後にオゾン回収をすることができるので、隔離室形成装置101を形成する各部、隔離室203に設置していた患者IPのためのベッド501(図1参照)、ストレッチャー502(図2参照)、イス503(図3参照)等をオゾン消毒することができる。これにより、それらの各部を焼却処分することなく繰り返して使用することができる。
【0074】
加えて、いずれの実施の形態も、空気清浄燻蒸機301はテント201の外部の設置位置SPに設置され、これによってその役割を果たす。このため、テント201の外部から空気清浄燻蒸機301を操作することができ、例えば、患者IPがテント201から退出した後に看護人をテント201の内部に立ち入らせることなく燻蒸動作の開始を指示することができる。これにより、看護人を感染症から保護することが可能となる。
【0075】
なお、本実施の形態では、二枚のシート202(202a,202b)を用いてそれらの隙間を陰圧雰囲気生成空間NSとした一例を例示したが、実施に際しては、シート202の枚数は三枚以上であっても良い。この場合、個々のシート202の間の隙間に複数の陰圧雰囲気生成空間NSが積層形成されることになる。
【符号の説明】
【0076】
201 テント
202 シート
203 隔離室
301A 空気清浄部
301B 燻蒸部
304 吸気口(オゾン吸気口)
305 排気口(第1の排気口、第2の排気口)
312 オゾン分解触媒(第1のオゾン分解触媒、第2のオゾン分解触媒)
315 HEPAフィルタ
319 清浄用オゾン発生器(第1のオゾン発生器)
324 燻蒸用オゾン発生器(第2のオゾン発生器)
327 オゾン放出口
332 共用オゾン発生器(第1のオゾン発生器、第2のオゾン発生器)
401 陰圧室形成用連通構造
421 燻蒸用連通構造
431 空気清浄用連通構造
NS 陰圧雰囲気生成空間
SP 設置位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隙間を開けた積層状態を維持する複数枚のシートを形状保持して最下層の前記シートの内部に非気密状態で患者を隔離収容する隔離室を形成するテントと、
オゾンを発生させる第1のオゾン発生器とオゾンを酸素に変化させる第1のオゾン分解触媒と微粒子を捕集するHEPAフィルタとを備え、吸気口から空気を吸引して前記第1のオゾン発生器が発生するオゾンと混合し前記第1のオゾン分解触媒で酸素に戻す殺菌と前記HEPAフィルタを通過させる微粒子捕集とを行なって第1の排気口から排出する空気清浄部と、
オゾンを発生させる第2のオゾン発生器とオゾンを酸素に変化させる第2のオゾン分解触媒とを備え、前記第2のオゾン発生器が発生させたオゾンをオゾン放出口から放出するオゾン放出と、オゾン吸気口からオゾンを吸引して前記第2のオゾン分解触媒を通過させて第2の排気口から排出するオゾン回収とを行なう燻蒸部と、
前記テントの外部の所定の設置位置に設置される前記空気清浄部の前記吸気口を前記複数枚のシート間の隙間によって形成される陰圧雰囲気生成空間と直接連通させる陰圧室形成用連通構造と、
前記テントの外部の所定の設置位置に設置される前記燻蒸部の前記オゾン放出口及び前記オゾン吸気口を前記陰圧雰囲気生成空間及び前記隔離室と連通させる燻蒸用連通構造と、
を備える隔離室形成装置。
【請求項2】
前記設置位置に設置される前記空気清浄部の前記第1の排気口を前記隔離室に直接連通させる空気清浄用連通構造を備える、請求項1記載の隔離室形成装置。
【請求項3】
前記空気清浄部は、前記吸気口から前記第1の排気口に至る経路中、前記第1のオゾン発生器と前記第1のオゾン分解触媒と前記HEPAフィルタとを順に配置している、請求項1又は2記載の隔離室形成装置。
【請求項4】
前記空気清浄部と前記燻蒸部とは、
空気清浄燻蒸装置として一体化されており、
前記吸気口と前記オゾン吸気口とを兼用し、
前記第1の排気口と前記第2の排気口とを兼用し、
前記第1のオゾン分解触媒と前記第2のオゾン分解触媒とを兼用する、
請求項1ないし3のいずれか一記載の隔離室形成装置。
【請求項5】
前記空気清浄部と前記燻蒸部とは、
空気清浄燻蒸装置として一体化されており、
前記吸気口と前記オゾン吸気口とを兼用し、
前記第1の排気口と前記第2の排気口とを兼用し、
前記第1のオゾン発生器と前記第2のオゾン発生器とを兼用し、
前記第1のオゾン分解触媒と前記第2のオゾン分解触媒とを兼用する、
請求項1ないし3のいずれか一記載の隔離室形成装置。
【請求項6】
前記オゾン放出口は、前記第1及び第2の排気口の配置領域内に配置されている、請求項4又は5記載の隔離室形成装置。
【請求項7】
隙間を開けた積層状態を維持する複数枚のシートを形状保持して最下層の前記シートの内部に非気密状態で患者を隔離収容する隔離室を形成するテントを設置する工程と、
前記テントの外部の所定の設置位置に、吸気口から空気を吸引してオゾン殺菌と微粒子捕集とを行ない第1の排気口から排出する空気清浄部を設置する工程と、
前記設置位置に設置された前記空気清浄部の前記吸気口を前記複数枚のシート間の隙間によって形成される陰圧雰囲気生成空間と直接連通させる工程と、
前記テントの外部の所定の設置位置に、オゾン放出口からオゾンを放出するオゾン放出とオゾン吸気口からオゾンを含む空気を吸引し酸素に戻して第2の排気口から排出するオゾン回収とを実行する燻蒸部を設置する工程と、
前記設置位置に設置された前記燻蒸部の前記オゾン放出口及び前記オゾン吸気口を前記陰圧雰囲気生成空間及び前記隔離室と連通させる工程と、
前記空気清浄部を動作させて前記陰圧雰囲気生成空間を陰圧にする工程と、
前記燻蒸部をオゾン放出動作させて前記陰圧雰囲気生成空間及び前記隔離室を燻蒸する工程と、
前記燻蒸部をオゾン回収動作させて前記陰圧雰囲気生成空間及び前記隔離室からオゾンを除去する工程と、
を備える隔離室形成燻蒸方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−264074(P2010−264074A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118090(P2009−118090)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000198330)株式会社IHIシバウラ (74)
【Fターム(参考)】