説明

隠蔽用積層体

【課題】纏まりのある一枚の用紙のように扱うことが可能であると共に、レーザープリンタによる印字等、加熱を伴う処理を行っても、再剥離が容易であって、情報の記入に支障を生じない隠蔽用積層体を提供する
【解決手段】情報記入用シート10の情報記入欄が設けられた側と隠蔽用シート20の再剥離性粘着剤層との間に、剥離面を再剥離性粘着剤層側として挿入された剥離シート30を具備する。隠蔽用シート20は、情報記入欄を覆うように情報記入用シートに貼着され、かつ、外周の1辺21を捲り開始端とし、該捲り開始端と直交する方向を捲り方向として情報記入用シートから剥離されるように構成され、剥離シート30は、隠蔽用シートの捲り開始端とされた1辺を除く他の外周よりも内側において隠蔽用シート20と重なるように、情報記入用シート10と隠蔽用シート20の間に挿入されていることを特徴とする隠蔽用積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人情報等の情報を記入可能で、かつ、その記入した情報を、容易に隠蔽可能な隠蔽用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報、暗証番号等の秘密情報を保護する観点から、記入された情報上に隠蔽用シートを貼着することが行われている。従来、隠蔽用シートは、粘着面を剥離紙で保護した状態で、秘密情報を記入すべき用紙と共に封筒などに封入され、情報記入者に届けられることが広く行われていた。
しかし、特に秘密情報の記入欄の面積が広い程、秘密情報記入後、その記入欄を正確に覆うように隠蔽用シートを貼着することが難しいという問題があった。
そこで、隠蔽用シートを、秘密情報を記入すべき用紙の秘密情報記入欄上に、予め積層した隠蔽用積層体が提案されている。
例えば、特許文献1では、剥離シートから一辺がはみ出るように隠蔽ラベル(隠蔽用シート)が積層されたラベル貼付片を、情報記入欄が設けられた返信用はがきの上に重ねた隠蔽式はがきが開示されている。
この特許文献1の帳票では、隠蔽ラベルの剥離シートからはみ出ていない部分が、情報記入欄に重なるように配置されており、はみ出た部分で返信用はがきの情報記入欄外の領域に貼着されるようになっている。そのため、隠蔽ラベルから剥離紙を剥離し、そのままの位置で返信用はがきに重ねれば、情報記入欄に重なる位置に正確に隠蔽ラベルを貼着できるようになっている。
また、特許文献2では、剥離シートを用いず、情報記入用シートの情報記入欄上に、直接、再剥離可能な隠蔽用シートが貼着された隠蔽用積層体が開示されている。
特許文献2の隠蔽用積層体では、隠蔽用シートを剥離して情報記入欄を露出させる際、情報記入欄外の領域が貼着したままとなるよう、剥離を途中でストップさせるための切り込みが、隠蔽用シートに設けられている。そのため、情報記入後は、隠蔽用シートを元の位置に正確に再貼着できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−156464号公報
【特許文献2】特開2007−118283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の隠蔽式はがきでは、隠蔽ラベルが積層されたラベル貼付片は、その一辺側のみで返信用はがきに貼着されており、他の大部分は、返信用はがきに、単に重ねられた状態となっている。そのため、積層体全体を一枚の用紙として扱いにくく、例えば、封書に封入する際に、貼着されていない部分が分離して、ラベル貼付片が捲れてしまう等の問題が生じる。さらには、貼着されていない部分が捲れたことに伴って、貼着された部分まで剥離してしまう虞もあった。
一方、特許文献2の隠蔽用積層体では、隠蔽用シート全体が情報記入用シートに貼着されているので、積層体全体を、纏まりのある一枚の用紙として扱いやすい。
しかしながら、特許文献2の隠蔽用積層体に、例えば、レーザープリンタで印字を施すと、加熱により粘着力が高まり、再剥離性が不充分となって情報の記入に支障を生じる場合もあった。
そこで、本発明は、纏まりのある一枚の用紙のように扱うことが可能であると共に、レーザープリンタによる印字等、加熱を伴う処理を行っても、再剥離が容易であって、情報の記入に支障を生じない隠蔽用積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]情報を記入する情報記入欄が設けられた情報記入用シートと、隠蔽用基材と再剥離性粘着剤層とを有し、情報記入用シートから剥離可能および情報記入用シートに再貼着可能である略矩形状の隠蔽用シートと、情報記入用シートの情報記入欄が設けられた側と隠蔽用シートの再剥離性粘着剤層との間に、剥離面を再剥離性粘着剤層側として挿入された剥離シートとを具備し、隠蔽用シートは、情報記入欄を覆うように情報記入用シートに貼着され、かつ、外周の1辺を捲り開始端とし、該捲り開始端と直交する方向を捲り方向として情報記入用シートから剥離されるように構成され、剥離シートは、隠蔽用シートの捲り開始端とされた1辺を除く他の外周よりも内側において隠蔽用シートと重なるように、情報記入用シートと隠蔽用シートの間に挿入されていることを特徴とする隠蔽用積層体。
[2]剥離シートが、一端側に、隠蔽用シートの捲り開始端とされた1辺からはみ出たつまみ部を有する[1]に記載の隠蔽用積層体
[3]剥離シートは、前記つまみ部と対向する他端側の外周が、捲り開始端と平行とされ、かつ、下記つまみ幅Dが、下記終端幅Dより大きい[2]に記載の隠蔽用積層体。
つまみ幅D:隠蔽用シートの捲り開始端とされた1辺と重なる位置における剥離シートの幅。
終端幅D:つまみ部と対向する他端側における剥離シートの幅。
但し、幅とは、前記捲り開始端とされた1辺と平行な方向に沿った長さ。
[4]前記剥離シートは、つまみ部と対向する他端側の矩形領域とつまみ部側のテーパー領域とを有し、テーパー領域は、つまみ部の先端における幅が最も狭くされ、矩形領域側における幅は矩形領域と同じとされている[3]に記載の隠蔽用積層体。
[5]隠蔽用シートが、情報記入用シートの少なくとも情報記入欄を隠蔽する情報隠蔽領域と該情報隠蔽領域以外の領域である情報非隠蔽領域とに区画され、前記情報隠蔽領域には、前記情報隠蔽領域と前記情報非隠蔽領域との境界線から、先端が情報記入用シートの情報記入欄側に向いている凸状の切り込みが2つ以上、互いに接触せずに形成されている[1]〜[4]の何れか一項に記載の隠蔽用積層体。
[6]レーザープリンタ印字用である[1]〜[5]の何れか一項に記載の隠蔽用積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の隠蔽用積層体は、纏まりのある一枚の用紙のように扱うことが可能であると共に、レーザープリンタによる印字等、加熱を伴う処理を行っても、再剥離が容易であって、情報の記入に支障を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る隠蔽用積層体の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る隠蔽用積層体の裏面側の平面図である。
【図3】図2のA−A’断面図である。
【図4】図2の隠蔽用積層体において、隠蔽用シートを境界線まで剥離したときの状態を示す平面図である。
【図5】図2の隠蔽用積層体に情報を記入した後に得られるカードの裏面側の平面図である。
【図6】図2の隠蔽用積層体の製造工程中における(a)は情報記入用シート、(b)は剥離シートが貼着された隠蔽用シートの平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る隠蔽用積層体の平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る隠蔽用積層体の裏面側の平面図である。
【図9】図8の隠蔽用積層体において、隠蔽用シートを境界線まで剥離したときの状態を示す平面図である。
【図10】図8の隠蔽用積層体に情報を記入した後に得られるカードの裏面側の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1の実施形態]
本発明の隠蔽用積層体の第1の実施形態について図1〜4を用いて説明する。
本実施形態の隠蔽用積層体は、健康保険証や会員証等のカードが分離可能に備え付けられているカード付き積層体1である。
カード付き積層体1は、情報記入用シート10と、情報記入用シート10の裏面側に貼着された隠蔽用シート20と、情報記入用シート10と隠蔽用シート20との間に挿入された剥離シート30とを備えるものである。
【0009】
図1に示すように、情報記入用シート10には、切り込み11によって区画されたカード領域12が設けられている。ここで切り込み11は、カード領域12を抜き取り安くするためのもので、打ち抜きを不連続に(例えばミシン目状に)形成したり、情報記入用シート10を完全に打ち抜かない、連続したハーフカットを形成したりすることにより構成できる。
また、カード領域12以外の部分に、発送先住所氏名の印刷欄13が設けられている。また、図示両端には、ミシン目14で切り取り可能とされたガイド領域15が設けられ、ガイド領域15には印刷機等で紙送りする際に使用した複数の位置合わせ孔16が設けられている。
また、図4に示すように、カード領域12の裏面には、情報記入欄17が設けられ、情報記入欄17には、情報を記入する箇所を明確にするための枠や選択肢等の印刷が施されている。
【0010】
情報記入用シート10としては、例えば、紙類、フィルム類等を使用できる。紙類としては、キャストコート紙、アート紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、グラシン紙等が挙げられ、フィルム類としては、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等の各種高分子フィルムが挙げられる。また、蒸着紙、合成紙、布、不織布、金属ホイル等も使用できる。さらに、これらが複数積層した積層体などを適宜採用することができる。
これらの中でも、レーザープリンタの印刷適性に優れる点から、上質紙やポリエチレンテレフタレート系合成紙が好ましい。
情報記入用シート10の厚さは、カード領域12から得られるカードの厚さとなるので、求めるカードの厚さに応じて適宜設定すればよい。具体的には、100〜250μmとすることができる。レーザープリンタによる印刷の適性を考慮すると、情報記入用シート10の厚さは、120〜220μmであることが好ましい。
【0011】
隠蔽用シート20は、略矩形状の隠蔽用基材の一方の面側(情報記入用シート10側)に再剥離性粘着剤層が設けられたもので、情報記入用シート10の裏面側において、カード領域12内に貼着されている。
なお、本明細書において略矩形とは、厳密な意味での矩形の他、4つの角部の1以上が角取りされた形態を含む概念である。本実施形態の隠蔽用シート20は、矩形の4つの角部の総てが角取りされて、何れもカーブ状とされている。
隠蔽用シート20の周縁の一の辺21は捲り開始端とされ、この捲り開始端とされた1辺21と直交する方向を捲り方向として、情報記入用シート10から剥離可能となっている。なお、本実施形態において、幅とは、特に断りのない限り、この捲り開始端とされた1辺21と平行な方向に沿った長さをいう。
隠蔽用シート20は、辺21側が情報隠蔽領域22とされ、情報隠蔽領域22以外の領域が情報非隠蔽領域23とされている。情報隠蔽領域22は、情報記入用シート10の少なくとも情報記入欄17より大きく、隠蔽用シート20は、情報隠蔽領域22が情報記入欄17全体を覆う位置で、情報記入用シート10の裏面側に貼着されている。
【0012】
また、隠蔽用シート20の情報隠蔽領域22には、情報隠蔽領域22と情報非隠蔽領域23との境界線24から、先端が情報記入用シート10の情報記入欄17側に向いている複数の凸状の切り込み25が互いに接触せずに形成されている。この凸状の切り込み25は、境界線24を底辺とした二等辺三角形の底辺以外の二辺25a,25bを構成するものである。
本実施形態では、隠蔽用シート20における境界線24上にミシン目が形成されている。
【0013】
隠蔽用シート20を構成する隠蔽用基材としては、情報記入用シートと同じものを使用できる。ただし、情報記入用シート10に記入した情報が隠蔽用シート20を通して視認できないように、高い隠蔽性を有していることが好ましい。隠蔽性を高めるためには、例えば、情報記入用シート10と同様の材質中に酸化チタンなどの不透明化剤を添加したり、塗布したりする方法、表面及び/又は裏面に印刷インキのベタ印刷や地紋印刷等を施す方法、全体又は一部に銀色、黒色、濃紺色等の濃色系の着色フィルムや濃色系の色付き紙を用いる方法、透明樹脂フィルムにアルミニウム箔を蒸着させたものを用いる方法などの方法を適宜採用できる。これらの中でも、レーザープリンタの印刷による加熱等に耐えやすい点から、上質紙が好ましい。
隠蔽用シート20を構成する隠蔽用基材の厚さは、隠蔽用シート1全体を1枚の用紙として扱いやすいこと、及び情報記入後の安易な剥離の抑制の観点から、情報記入のための剥離時に必要な強度と隠蔽性を損なわない範囲で、できるだけ薄いことが好ましい。具体的には、50〜120μmであることが好ましい。
【0014】
隠蔽用シート20を構成する再剥離性粘着剤層は再剥離性粘着剤からなる。再剥離性粘着剤としては再剥離性を有するものであれば特に限定されず、例えば、粘着剤が架橋剤で架橋された再剥離性粘着剤などが挙げられる。粘着剤が架橋剤で架橋された再剥離性粘着剤としては、粘着性と再剥離性のバランスに優れることから、粘着剤である粘着性微粒子と、バインダと、タッキファイヤと、カルボジイミド基を有する架橋剤とを含有する再剥離性粘着剤が好ましい。
隠蔽用シート20を構成する再剥離性粘着剤層の厚さは、良好な粘着力と情報記入時の剥離性、及び情報記入後の安易な剥離の抑制の観点から、5〜30μmであることが好ましい。
【0015】
隠蔽用シート20は、剥離シート30が存在せず、直接情報記入用シート10に貼着した場合には、再剥離の痕跡が残りやすいようにされていることが好ましい。これにより、直接情報記入用シート10の情報記入欄17に記入した秘密情報を、より安全に秘匿できる。
再剥離の痕跡を残しやすくするためには、直接情報記入用シート10に貼着した場合の再剥離性を、最低限の再剥離性に抑制する方法、隠蔽用シート20を構成する隠蔽用基材の厚さを薄くし、剥離シート30を用いず単独で剥離した場合に隠蔽用シート20に皺が入りやすくする方法、これらの方法の組み合わせ等が考えられる。
【0016】
剥離シート30は、剥離面を隠蔽用シート20の再剥離性粘着剤層側として情報記入用シート10と隠蔽用シート20との間に挿入されている。
剥離シート30は、矩形領域31と矩形領域31に連続するテーパー領域32とから構成されており、テーパー領域32における矩形領域31と反対側につまみ部33が設けられている。テーパー領域32は、つまみ部33の先端における幅が最も狭くされ、矩形領域31側における幅は矩形領域31と同じとされている
剥離シート30は、つまみ部33のみが隠蔽用シート20から露出するように情報記入用シート10と隠蔽用シート20との間に挿入されている。すなわち、剥離シート30のつまみ部33以外の部分は、情報記入用シート10と隠蔽用シート20との間に介在するように積層されている。
【0017】
剥離シート30のつまみ部33以外の部分は、隠蔽用シート20の情報隠蔽領域22よりも面積が小さくされている。具体的には、矩形領域31の幅Dは、隠蔽用シート20の幅Dより小さくされている。また、剥離シート30のつまみ部33以外の捲り方向における長さは、情報隠蔽領域22の捲り方向における長さよりも短くされ、かつ、切り込み25と重ならない長さとされている。
その結果、剥離シート30は、隠蔽用シート20の片21以外の3辺より内側において、隠蔽用シート20と重なるように、情報記入用シート10と隠蔽用シート20との間に挿入されている。また、情報隠蔽領域22の切り込み25と重ならないようになっている。
これにより、隠蔽用シート20は、少なくとも3方向の周辺近傍で情報記入用シート10に貼着できるので、剥離シート30を挿入しているにもかかわらず、隠蔽用積層体1全体の一体性を確保できる。
【0018】
また、隠蔽用シート20の辺21と重なる位置における剥離シートの幅、すなわち、つまみ部33が隠蔽用シート20から露出する位置における幅をつまみ幅Dとすると、つまみ幅Dは、矩形領域31の幅Dよりも小さい。
これにより、辺21近傍においても、隠蔽用シート20が情報記入用シート10に貼着できる領域がある程度確保できるため、隠蔽用積層体1全体の一体性を一層確保しやすい。
【0019】
剥離シート30としては、周知の剥離シートが使用される。周知の剥離シートとしては、例えば、キャストコート紙、アート紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、グラシン紙等の紙の表面に、必要に応じて目止め層を形成した上で、シリコーン系等の剥離剤を塗布した剥離シートなどが挙げられる。
剥離シート15の厚さは、隠蔽用シート1全体を1枚の用紙として扱いやすいことから、できるだけ薄いことが好ましいが、情報記入のために隠蔽用シート20を剥離する際、隠蔽用シート20に皺ができないよう、隠蔽用シート20をサポートできる充分な強度を確保できる厚さであることが好ましい。具体的には、60〜130μmであることが好ましい。
【0020】
本実施形態の隠蔽用積層体の使用方法を、得られるカードが、裏面の情報記入欄17に臓器提供意思表示欄が設けられた健康保険証である場合を例にとって説明する。
まず、健康保険証の発行官庁で、図1、2に示す隠蔽用積層体1が図示上下方向に多数連続した長尺の連続積層体の各印刷欄13に発送先住所氏名を印刷する。また、各カード領域12の表面に、住所、氏名、生年月日、有効期限等の必要情報を印刷する。印刷は、例えば、レーザープリンタを用いて行うことができる。
そして、個別の隠蔽用積層体1に切り離した後、各隠蔽用積層体1を、各々の印刷欄13に記載された発送先に発送する。
【0021】
隠蔽用積層体1を受領した健康保険証の利用者は、図2の剥離シート30のつまみ部33をつまんで、図示左方向に引くことにより、隠蔽用シート20の情報隠蔽領域22を剥離し、図4に示すように、情報記入欄17を露出させる。
一般に、レーザープリンタで印字を施すと、加熱により粘着力が高まり、再剥離性が損なわれやすいが、本実施形態では、剥離シート30が介在し、隠蔽用シート20が情報記入用シート10に直接貼着されている部分の面積が狭くされていること、及びつまみ部33により剥離のきっかけを得られることにより、容易に情報記入欄17の露出が可能である。
【0022】
また、剥離は、境界線24にて容易に停止させることができる。なぜなら、隠蔽用シート20を剥離した際に、凸状の切り込み25の内側部分が、外側部分から分離して情報記入用シート10に貼着されたままになり、境界線24まで剥離したときにも隠蔽用シート20の情報記入用シート10への貼着力を保持し続け、さらに剥離するためにはより強い剥離力が必要になるためである。また、隠蔽用シート20の情報非隠蔽領域23を剥離しようとすると、境界線24にて隠蔽用シート20が破けてしまうが、通常、利用者は破けないようにする注意を払うため、情報非隠蔽領域23の剥離を抑制することができる。
また、本実施形態では、境界線24上にミシン目が形成されており、隠蔽用シート20が境界線24にて折れ曲がれやすくなっている。そのため、隠蔽用シート20を引っ張って境界線24まで隠蔽用シート20を剥離すると、隠蔽用シート20の情報隠蔽領域22が情報非隠蔽領域23側に容易に折れ曲がる。その結果、隠蔽用シート20を引っ張る力が、隠蔽用シート20の剥離に利用されにくくなるため、隠蔽用シート20の剥離をより確実に停止できる。
また、本実施形態では、剥離シート30の存在により、少ない力で隠蔽用シート20の剥離ができる。そのため、隠蔽用シート20の剥離に過度な力を要し、勢い余って境界線24を突破して隠蔽用シート20の情報非隠蔽領域23まで剥離してしまうことを回避しやすい。
【0023】
図4に示すように、情報記入欄17を露出させた後は、情報記入欄17の選択肢を選択し、署名を行うことにより、臓器提供に関する意思表示を行う。その後剥離シート30を取り去ってから、隠蔽用シート20の情報隠蔽領域22を情報記入用シート10上に再貼着し、情報記入欄17を隠蔽する。このとき、情報非隠蔽領域23が情報記入用シート10に貼着されたままなので、情報隠蔽領域22を、正確に情報記入欄17を隠蔽する位置に再貼着しやすい
その後、切り込み11によりカード領域12を抜き取ると、図5に示すように、臓器提供に関する意思表示が隠蔽された健康保険証12’が得られる。
【0024】
そして、万一、この健康保険証の利用者が脳死状態に陥った場合、隠蔽用シート20を再剥離して、臓器提供に関する利用者の意思を確認することができる。
なお、健康保険証12’では、剥離シート30が挿入されていないので、再剥離の痕跡を残さずに情報記入欄17の内容を確認し、再度貼着することかが困難となりやすい。そのため、医師が利用者の親族等の了解なしに、むやみに利用者の意思を確認することを抑制できる。
【0025】
本実施形態の隠蔽用積層体1の製造方法の一例を、図6を用いて説明する。
まず、図6(a)の情報記入用シート10が、図示上下方向に多数連続した長尺の情報記入用シート10の連続体を用意する。
図6(a)に示すように、カード領域12を区画する切り込み11は、予め形成しておく。また、情報記入欄17の情報を記入する箇所を明確にするための枠や選択肢等の印刷も予め裏面に施しておく。また、図1に示したのと同様に、表面の発送先住所氏名の印刷欄13、カード領域12、その他必要な箇所にも、必要な印刷(総てのカードに共通する事項等)を予め印刷しておく。
一方、図6(b)に示すように、隠蔽用シート20の裏面側(再剥離性粘着剤層側)に、剥離シート30を、剥離面が隠蔽用シート20側となるようにして、所定の位置に貼着したものを用意する。
そして、図6(a)の情報記入用シート10が、図示上下方向に多数連続した長尺の情報記入用シート10の連続体の裏面における各々の所定の位置に、剥離シート30を貼着した隠蔽用シート20を1つずつ貼着することによって、図1、2に示す隠蔽用積層体1が図示上下方向に多数連続した長尺の連続積層体が得られる。
【0026】
[第2の実施形態]
本発明の隠蔽用積層体の第1の実施形態について図7〜9を用いて説明する。
本実施形態の隠蔽用積層体は、健康保険証や会員証等のカードが分離可能に備え付けられているカード付き積層体2である。
カード付き積層体2は、情報記入用シート40と、情報記入用シート40の裏面側に貼着された隠蔽用シート50と、情報記入用シート40と隠蔽用シート50との間に挿入された剥離シート60とを備えるものである。
【0027】
図7に示すように、情報記入用シート40には、切り込み41aによって区画されたカード領域42が設けられている。ここで切り込み41aは、第1実施形態の切り込み17と同様に構成できる。カード領域42は、折り曲げ線41bによって区画される領域42aと領域42bとを有している。
また、カード領域42以外の部分に、発送先住所氏名の印刷欄43が設けられている。また、図示両端には、ミシン目44で切り取り可能とされたガイド領域45が設けられ、ガイド領域45には印刷機等で紙送りする際に使用した複数の位置合わせ孔46が設けられている。
また、図9に示すように、カード領域42の領域42bの裏面には、情報記入欄47が設けられ、情報記入欄47には、情報を記入する箇所を明確にするための枠や選択肢等の印刷が施されている。
情報記入用シート40としては、第1実施形態の情報記入用シート10と同様のものが使用できる。
【0028】
隠蔽用シート50は、略矩形状の隠蔽用基材の一方の面側(情報記入用シート40側)に再剥離性粘着剤層が設けられたもので、情報記入用シート40の裏面側において、カード領域42の領域42b内に貼着されている。
本実施形態の隠蔽用シート50も、矩形の4つの角部の総てが角取りされて、何れもカーブ状とされている。
隠蔽用シート50の周縁の一の辺51は捲り開始端とされ、この捲り開始端とされた1辺51と直交する方向を捲り方向として、情報記入用シート40から剥離可能となっている。なお、本実施形態において、幅とは、特に断りのない限り、この捲り開始端とされた1辺51と平行な方向に沿った長さをいう。
隠蔽用シート50は、辺51側が情報隠蔽領域52とされ、情報隠蔽領域52以外の領域が情報非隠蔽領域53とされている。情報隠蔽領域52は、情報記入用シート40の少なくとも情報記入欄47より大きく、隠蔽用シート50は、情報隠蔽領域52が情報記入欄47全体を覆う位置で、情報記入用シート40の裏面側に貼着されている。
【0029】
また、隠蔽用シート50の情報隠蔽領域52には、情報隠蔽領域52と情報非隠蔽領域53との境界線54から、先端が情報記入用シート40の情報記入欄47側に向いている複数の凸状の切り込み55が互いに接触せずに形成されている。この凸状の切り込み55は、境界線54を底辺とした二等辺三角形の底辺以外の二辺55a,55bを構成するものである。
本実施形態では、隠蔽用シート50における境界線54上にミシン目が形成されている。
隠蔽用シート50を構成する隠蔽用基材及び再剥離性粘着剤層としては、第1実施形態の隠蔽用シート20と同様のものが使用できる。
隠蔽用シート50は、剥離シート60が存在せず、直接情報記入用シート40に貼着した場合には、再剥離の痕跡が残りやすいようにされていることが好ましい。
【0030】
剥離シート60は、剥離面を隠蔽用シート50の再剥離性粘着剤層側として情報記入用シート40と隠蔽用シート50との間に挿入されている。
剥離シート60は、矩形領域61と矩形領域61に連続するテーパー領域62とから構成されており、テーパー領域62における矩形領域61と反対側につまみ部63が設けられている。テーパー領域62は、つまみ部63の先端における幅が最も狭くされ、矩形領域61側における幅は矩形領域61と同じとされている
剥離シート60は、つまみ部63のみが隠蔽用シート50から露出するように情報記入用シート40と隠蔽用シート50との間に挿入されている。すなわち、剥離シート60のつまみ部63以外の部分は、情報記入用シート40と隠蔽用シート50との間に介在するように積層されている。
【0031】
剥離シート60のつまみ部63以外の部分は、隠蔽用シート50の情報隠蔽領域52よりも面積が小さくされている。具体的には、矩形領域61の幅Dは、隠蔽用シート50の幅Dより小さくされている。また、剥離シート60のつまみ部63以外の捲り方向における長さは、情報隠蔽領域53の捲り方向における長さよりも短くされ、かつ、切り込み55と重ならない長さとされている。
その結果、剥離シート60は、隠蔽用シート50の片51以外の3辺より内側において、隠蔽用シート50と重なるように、情報記入用シート40と隠蔽用シート50との間に挿入されている。また、情報隠蔽領域53の切り込み55と重ならないようになっている。
これにより、剥離シート60を用いながら、隠蔽用シート50は、少なくとも3方向の周辺近傍で情報記入用シート40に貼着できるので、剥離シート60を挿入しているにもかかわらず、隠蔽用積層体2全体の一体性を確保できる。
【0032】
また、隠蔽用シート50の辺51と重なる位置における剥離シートの幅、すなわち、つまみ部63が隠蔽用シート50から露出する位置における幅をつまみ幅Dとすると、つまみ幅Dは、矩形領域61の幅Dよりも小さい。
これにより、辺51近傍においても、隠蔽用シート50が情報記入用シート40に貼着できる領域がある程度確保できるため、隠蔽用積層体2全体の一体性を一層確保しやすい。
剥離シート60としては、第1実施形態の剥離シート30と同様のものが使用できる。
【0033】
本実施形態の隠蔽用積層体の使用方法を、得られるカードが、裏面の情報記入欄47に臓器提供意思表示欄が設けられた健康保険証である場合を例にとって説明する。
まず、健康保険証の発行官庁で、図7、8に示す隠蔽用積層体1が図示上下方向に多数連続した長尺の連続積層体の各印刷欄43に発送先住所氏名を印刷する。また、各カード領域42の表面に、住所、氏名、生年月日、有効期限等の必要情報を印刷する。印刷は、例えば、レーザープリンタを用いて行うことができる。
そして、個別の隠蔽用積層体2に切り離した後、各隠蔽用積層体2を、各々の印刷欄43に記載された発送先に発送する。
【0034】
隠蔽用積層体2を受領した健康保険証の利用者は、図8の剥離シート60のつまみ部63をつまんで、図示左方向に引くことにより、隠蔽用シート50の情報隠蔽領域53を剥離し、図9に示すように、情報記入欄47を露出させる。
本実施形態では、剥離シート60が介在し、隠蔽用シート50が情報記入用シート40に直接貼着されている部分の面積が狭くされていること、及びつまみ部63により剥離のきっかけを得られることにより、容易に情報記入欄47の露出が可能である。
また、第1実施形態と同様の理由で、剥離は、境界線54にて容易に停止させることができる。
【0035】
図9に示すように、情報記入欄47を露出させた後は、情報記入欄47の選択肢を選択し、署名を行うことにより、臓器提供に関する意思表示を行う。その後剥離シート60を取り去ってから、隠蔽用シート50の情報隠蔽領域52を情報記入用シート40上に再貼着し、情報記入欄47を隠蔽する。このとき、情報非隠蔽領域53が情報記入用シート40に貼着されたままなので、情報隠蔽領域52を、正確に情報記入欄47を隠蔽する位置に再貼着しやすい
その後、切り込み41aによりカード領域42を抜き取ると、図10に示すように、臓器提供に関する意思表示が隠蔽された健康保険証42’が得られる。
本実施形態では、健康保険証42’を折り曲げ線41bにて裏面を内側として折り曲げて使用することにより、隠蔽用シート50が内側となって保護され、意図しない剥離を防止しやすい。
そして、第1実施形態の健康保険証12’と同様に、万一、この健康保険証の利用者が脳死状態に陥った場合、隠蔽用シート50を再剥離して、臓器提供に関する利用者の意思を確認することができる。
【0036】
本実施形態の隠蔽用積層体2も第1実施形態と同様に、まず、情報記入用シート40が、図示上下方向に多数連続した長尺の情報記入用シート40の連続体を用意する。また、隠蔽用シート50の裏面側(再剥離性粘着剤層側)に、剥離シート60を、剥離面が隠蔽用シート50側となるようにして、所定の位置に貼着したものを用意する。
そして、剥離シート60を貼着した複数の隠蔽用シート50を、情報記入用シート40が、図示上下方向に多数連続した長尺の情報記入用シート40の連続体の裏面における各々の所定の位置に1つずつ貼着することによって、図7、8に示す隠蔽用積層体2が図示上下方向に多数連続した長尺の連続積層体が得られる。
【0037】
[その他の実施形態]
前記各実施形態においては、剥離シートが矩形領域とテーパー領域とを有するものとしたが、全体がつまみ部に向かって狭くなるテーパー領域となっていても良い。また、剥離シート全体が、略矩形状であってもよい。また、つまみ部は、台形状に限らず、例えば半円状であってもよい。また、つまみ部を省略してもよい。
また、いずれも隠蔽用シートに、情報隠蔽領域と情報非隠蔽領域との境界線を底辺とする三角形の底辺以外の二辺を構成する切り込みを設けた構成としたが、例えば、円弧状の切り込みとしてもよい。また、切り込みは省略してもよい。
また、境界線にミシン目は筋押しに変更してもよい。また、境界線には、何も設けなくともよい。
また、情報記入欄は、情報記入用シートの表裏何れに設けてもよい。
また、上記各実施形態では、レーザープリンタによって印刷を行う場合を説明したが、本発明の隠蔽用積層体は、加熱に耐性を有するため、加熱を伴う種々の印刷方式に対応できる。例えば、電子写真方式、熱転写方式、感熱記録方式等にも、対応可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…隠蔽用積層体、10…情報記入用シート、20…隠蔽用シート、30…剥離シート、
11…切り込み、12…カード領域、17…情報記入欄、22…情報隠蔽領域、
23…情報非隠蔽領域、31…矩形領域、32…テーパー領域、33…つまみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記入する情報記入欄が設けられた情報記入用シートと、
隠蔽用基材と再剥離性粘着剤層とを有し、情報記入用シートから剥離可能および情報記入用シートに再貼着可能である略矩形状の隠蔽用シートと、
情報記入用シートの情報記入欄が設けられた側と隠蔽用シートの再剥離性粘着剤層との間に、剥離面を再剥離性粘着剤層側として挿入された剥離シートとを具備し、
隠蔽用シートは、情報記入欄を覆うように情報記入用シートに貼着され、かつ、外周の1辺を捲り開始端とし、該捲り開始端と直交する方向を捲り方向として情報記入用シートから剥離されるように構成され、
剥離シートは、隠蔽用シートの捲り開始端とされた1辺を除く他の外周よりも内側において隠蔽用シートと重なるように、情報記入用シートと隠蔽用シートの間に挿入されていることを特徴とする隠蔽用積層体。
【請求項2】
剥離シートが、一端側に、隠蔽用シートの捲り開始端とされた1辺からはみ出たつまみ部を有する請求項1に記載の隠蔽用積層体。
【請求項3】
剥離シートは、前記つまみ部と対向する他端側の外周が、捲り開始端と平行とされ、かつ、下記つまみ幅Dが、下記終端幅Dより大きい請求項2に記載の隠蔽用積層体。
つまみ幅D:隠蔽用シートの捲り開始端とされた1辺と重なる位置における剥離シートの幅。
終端幅D:つまみ部と対向する他端側における剥離シートの幅。
但し、幅とは、前記捲り開始端とされた1辺と平行な方向に沿った長さ。
【請求項4】
前記剥離シートは、つまみ部と対向する他端側の矩形領域とつまみ部側のテーパー領域とを有し、テーパー領域は、つまみ部の先端における幅が最も狭くされ、矩形領域側における幅は矩形領域と同じとされている請求項3に記載の隠蔽用積層体。
【請求項5】
隠蔽用シートが、情報記入用シートの少なくとも情報記入欄を隠蔽する情報隠蔽領域と該情報隠蔽領域以外の領域である情報非隠蔽領域とに区画され、前記情報隠蔽領域には、前記情報隠蔽領域と前記情報非隠蔽領域との境界線から、先端が情報記入用シートの情報記入欄側に向いている凸状の切り込みが2つ以上、互いに接触せずに形成されている請求項1〜4の何れか一項に記載の隠蔽用積層体。
【請求項6】
レーザープリンタ印字用である請求項1〜5の何れか一項に記載の隠蔽用積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−153007(P2012−153007A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14078(P2011−14078)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(595178748)王子タック株式会社 (76)
【出願人】(390023940)エニカ株式会社 (12)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】