説明

隣接笠木傾斜連結用ジョイント

【課題】 左右勝手のある笠木傾斜連結用のジョイントを同一金型で成形した共通の成形物によって構成し得るようにする。
【解決手段】 笠木20端部側のジョイント基部1と,このジョイント基部1からL字状をなすように突出した重合部5とを備え且つ重合部5の重合面6に相互に嵌合する長寸の円弧溝11と短寸の円弧突起12及び重合面6の中央に一方を貫通孔7,他方をネジ受孔8として貫通孔7からネジ受孔8にネジ9を螺入するジョイントA,Bを形成するについて,同一金型によってネジ受孔8を共通に有する成形物を成形し,これをそのままジョイントBとするとともに成形物のネジ受孔8をドリル等によって重合部5を貫通するように後加工して貫通孔7を有するジョイントAを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,手摺,フェンス等における隣接笠木を傾斜角度自在に連結するに用いる隣接笠木傾斜連結用ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
手摺,フェンス等を傾斜角度自在に連結するに際しては,例えば笠木端部側のジョイント基部と,該ジョイント基部からL字状をなすように突出した重合部とを備え,隣接笠木間に左右に対として用いて各重合部を回動自在に重合するとともに一方の重合部の貫通孔から他方の重合部のネジ受孔に対してネジを螺入することによって重合部をネジ固定自在としたジョイントが用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−229675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合,重合部を水平配置することによって傾斜角度を横方向に,垂直配置することによって傾斜角度を上下方向にして隣接笠木の連結をなし得るが,一般に重合部を重合するために左右勝手が生じるため,対として用いるジョイントは左右それぞれの成形を行うために2種類の成形物とする必要があり,2種の金型を用いて個別に成形を行うことによってコストがアップする傾向がある。
【0005】
本発明は,かかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,傾斜角度自在の連結に左右勝手が生じることを前提としながらも,対をなすジョイントを単一の金型によって共通形状成形物とし得るようにした隣接笠木傾斜連結用ジョイントを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に沿って本発明は,ジョイントが,一方の重合部の貫通孔から他方の重合部のネジ受孔に対してネジを螺入することによって重合部をネジ固定するものであり,貫通孔はネジの軸を挿通するために内径が広く且つ重合部を貫通する透孔である一方,ネジ受孔はネジを螺装するために内径が狭く且つ外観等の関係から先端を閉塞した行止りの受孔であるところ,成形に際してネジ受孔を形成した後に該ネジ受孔を,例えばドリル等適宜の工具によって貫通孔として,対をなすジョイントを単一の金型によって共通に成形したものであって,即ち請求項1に記載の発明を,笠木端部側のジョイント基部と,該ジョイント基部からL字状をなすように突出した重合部とを備え,隣接笠木間に一対として用いて各重合部を回動自在に重合するとともに一対の一方の重合部における貫通孔から他方の重合部におけるネジ受孔に対してネジを螺入することによって重合部をネジ固定自在とした隣接笠木を傾斜角度自在に連結するジョイントであって,一対の双方を上記貫通孔とネジ受孔のうちネジ受孔を共通に備えた同一形状に成形するとともにその一方のネジ受孔を後加工によって貫通孔として一対の双方を単一金型による共通形状成形物によって形成してなることを特徴とする隣接笠木傾斜連結用ジョイントとしたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,この種ジョイントの重合部における重合面に嵌合手段を設ければ,重合してネジ固定を行うに際して重合部を定位置に位置させることによりその位置決めが可能となって傾斜連結の作業性を向上するとともに対をなすジョイント間の重合固定の安定性を向上し得るが,嵌合手段を設けることは重合部に更に左右勝手のための構成を備えるものとなり,上記単一金型による共通形状成形物とすることを阻害することになるところ,該嵌合手段を重合面に同一円弧上に位置する長寸の円弧溝と短寸の円弧突起とすることによって,上記単一金型による共通化を確保しながら嵌合手段を配置可能とし得るように,これを,上記重合部の重合面が同一円弧上に位置し上記重合部の重合によって相互に回動自在に嵌合する相対的に長寸の円弧溝と相対的に短寸の円弧突起とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の隣接笠木傾斜連結用ジョイントとしたものである。
【0008】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,傾斜角度自在の連結に左右勝手が生じることを前提としながらも,対をなすジョイントを単一の金型によって共通形状成形物とし得るようにした隣接笠木傾斜連結用ジョイントを提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,嵌合手段を重合面に同一円弧上に位置する長寸の円弧溝と短寸の円弧突起とすることによって,上記単一金型による共通化を確保しながら嵌合手段を配置可能としたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,A及びBは一対のジョイントであり,該ジョイントA,Bは,例えばアルミを鋳造成形したアルミダイカスト又は硬質樹脂を射出成形した合成樹脂の成形物としてあり,該ジョイントA,Bは,例えばアルミ手摺のアルミ押出形材によって形成した笠木20を,例えば上下方向に傾斜するように傾斜角度自在に連結するものとしてある。
【0012】
該ジョイントA,Bは,笠木20端部側のジョイント基部1と,該ジョイント基部1からL字状をなすように突出した重合部5とを備え,隣接笠木20間に一対として用いて各重合部5を回動自在に重合するとともに一対の一方の重合部5における貫通孔7から他方の重合部5におけるネジ受孔8に対してネジ9を螺入することによって重合部5をネジ固定自在としたものとしてあり,このとき本例のジョイントA,Bは,上記重合部5の重合面6が同一円弧上に位置し上記重合部5の重合によって相互に回動自在に嵌合する相対的に長寸の円弧溝11と相対的に短寸の円弧突起12とを備えたものとしてある。
【0013】
本例にあってジョイントA,Bは,その上記ジョイント基部1を,中空の笠木20の長手方向端面に対接して隣接笠木20側に台形状に膨出し,その笠木20対接側端部に笠木20の幅方向両端に配置した下位受溝21に嵌挿してネジ4固定する一対の固定突片2と,該固定突片2の嵌挿時に笠木20中空部内側上端に係合する係合突片3を一体に突設して形成し,またその上記重合部5を,上記台形状に膨出したジョイント基部1からその1/2高さ位置に重合面6が位置するように隣接笠木20側に向けて厚肉L字状,本例にあってはジョイント基部1の1/2高さに厚肉に突出して形成し,平面においてL字状を呈するブロック部品としてある。
【0014】
このとき本例の重合部5は,これを,例えば厚肉円盤状とするとともにその上下面をなす重合面6を円形面とし,該円形面とした重合面6に上記円弧溝11と円弧突起12とを配置し且つその中央位置に一方の貫通孔7と他方のネジ受孔8とを配置したものとしてある。
【0015】
本例にあって上記円弧溝11は,例えば,該重合面6のジョイント基部1側に200乃至210度の略半円の円弧をなすように凹陥形成し,また円弧突起12は,重合面6の隣接笠木20側に120度程度の略1/3円の円弧をなすように突出形成してあり,このとき本例の円弧突起12は,これをその中間で分離した円弧方向に断続一対のものとして形成し,また該円弧溝11の溝幅と凹陥深さは,これを円弧突起12の突起幅と突出高さに合せることによって円弧溝11の任意位置に円弧突起12が嵌合するとともに双方の重合部5の重合によって重合面6が相互に面接するようにしてある。
【0016】
重合部5の中央位置に配置した一方の貫通孔7は,該重合部5を貫通するように透設し,固定用のネジ9を挿通自在にして,例えば6mmのネジ径より僅かに径大の6.5mm径を有するものとし,また他方のネジ受孔8は,上記重合部5の厚さ方向に部分的に穿孔することによって先端を閉塞した行止り孔とし,その内壁にタップ切りしてネジ9を螺入し得るように上記6mmのネジ径に合せた6mm径を有するものとしてある。このとき本例にあって重合部5の底面,即ち非重合面側にはネジ頭部を受け入れる凹陥部10を備えたものとし,上記貫通孔7は上記重合面5から該凹陥部10に至るように透設する一方,ネジ受孔8は重合面6から凹陥部10側に向けた重合部5中間位置に至るように所定深さに穿孔したものとしてある。
【0017】
上記重合面6に円弧溝11及び円弧突起12を備えた一対のジョイントA,Bは,その一対の双方を上記貫通孔7とネジ受孔8のうちネジ受孔8を共通に備えた同一形状に成形するとともにその一方のネジ受孔8を後加工によって貫通孔7として一対の双方を単一金型による共通形状成形物によって形成したものとし,これによって該対をなすジョイントA,Bを単一の金型によって共通に成形したものとしてある。
【0018】
即ち本例にあって,一対のジョイントA,Bは,アルミダイカスト部品又は合成樹脂部品の成形物としてあるところ,そのアルミの鋳造成形又は硬質樹脂の射出成形を単一の金型によって行うことによってジョイント基部1と重合部5,即ち上記固定突片2と係合突片3を配置したジョイント基部1と上記重合面6に相互に嵌合する円弧溝11,円弧突起12及び中央位置のネジ受孔8と凹陥部10を配置した重合部5を有する同一形状に成形し,該成形状態でこれを一対のうち一方のジョイントAとし,また該成形後に,例えばドリル等の工具によってネジ受孔8を凹陥部10に至るように透設するように後加工することによって該ネジ受孔8を貫通孔7とし,該後加工したものを一対のうち他方のジョイントBとしたものとしてある。
【0019】
このときドリル等の工具による後加工は,アルミダイカストや硬質樹脂を加工してネジ受孔8を貫通孔とすればよいから,該後加工をそれ自体容易になし得るとともに後加工に際して成形によって形成したネジ受孔8が工具のガイドとなって貫通孔7の透設を容易になし得るようになり,また本例にあって該成形によって形成したネジ受孔8は上記6mm径の径小,後加工によって形成した貫通孔7は6.5mm径の径大としたから,後加工は径小のネジ受孔8を径大とするように加工すればよく,後加工に加工誤差を生じることが少なく精度のよい加工を行うことができる。
【0020】
以上のように構成したジョイントA及びBによる手摺の隣接する笠木の連結は,笠木20端部にそれぞれ一対の固定突片2と係合突片3を挿入し,固定突片2を笠木側からのネジ4によってネジ固定して,上記厚肉円盤状とした重合部5の重合面6が起立して垂直面となるようにジョイントA及びBを反転状態に設置し,その後に該ジョイントA及びBの各円弧溝11に対して他方の円弧突起12を嵌合して双方のジョイントA,Bの重合面6を重合し,手摺の隣接する笠木20における所定の傾斜角度に合せて円弧溝11に対して円弧突起12を回動することによって双方の重合部5の位置決めを行い,一対のうちジョイントAの重合部5における貫通孔7からジョイントBの他方の重合部5におけるネジ受孔8に対してネジ9をタップ切りするように螺入することによって重合部5をネジ固定するように行えばよく,これによって隣接する笠木20を傾斜角度自在に連結することができ,本例にあっては上記略半円の円弧溝11と略1/3円の円弧突起12の角度差によって隣接する笠木20を水平位置から上下に45度程度の傾斜角度とするように傾斜連結を行うことができ,一対のジョイントA,Bは,それぞれの円弧溝11に各円弧突起12が嵌合して重合面6同士が相互に面接して円弧状に嵌合されることによってズレのない安定且つ確実な連結が可能となるとともにネジ頭が凹陥部10に入り込むことによって納まりのよいネジ9の固定を行うことができる。
【0021】
本例は以上のとおりとしたが,上記重合面を,上記円弧溝と円弧突起を設けることなくそれぞれ平坦面をなすように構成すること,円弧溝と円弧突起を設けるとき,その位置を上記ジョイント基部側の円弧溝と隣接笠木側の円弧突起と逆に,ジョイント基部側に円弧突起を,隣接笠木側に円弧溝を配置するようにすること,円弧突起を一連とし,また断続多数のドット状のものとして構成すること等を含めて,本発明の実施に当って笠木,ジョイント,そのジョイント基部,重合部,貫通孔,ネジ受孔,ネジ,必要に応じて用いる円弧溝,円弧突起等の各具体的形状,構造,材質,これらの関係,これらに対する付加等は,上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】笠木連結状態を示す平面図である。
【図2】笠木の水平に連結した状態を示す側面図である。
【図3】ジョイント相互の関係を示す平面図である。
【図4】ジョイント相互の関係を示す側面図である。
【図5】笠木を上向き傾斜して連結した状態の側面図である。
【図6】笠木を下向き傾斜して連結した状態の側面図である。
【図7】ジョイントの側面図である。
【図8】ジョイントの平面図である。
【図9】貫通孔を設置したジョイントの平面図である。
【符号の説明】
【0023】
A,B ジョイント
1 ジョイント基部
5 重合部
6 重合面
7 貫通孔
8 ネジ受孔
11 円弧溝
12 円弧突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
笠木端部側のジョイント基部と,該ジョイント基部からL字状をなすように突出した重合部とを備え,隣接笠木間に一対として用いて各重合部を回動自在に重合するとともに一対の一方の重合部における貫通孔から他方の重合部におけるネジ受孔に対してネジを螺入することによって重合部をネジ固定自在とした隣接笠木を傾斜角度自在に連結するジョイントであって,一対の双方を上記貫通孔とネジ受孔のうちネジ受孔を共通に備えた同一形状に成形するとともにその一方のネジ受孔を後加工によって貫通孔として一対の双方を単一金型による共通形状成形物によって形成してなることを特徴とする隣接笠木傾斜連結用ジョイント。
【請求項2】
上記重合部の重合面が同一円弧上に位置し上記重合部の重合によって相互に回動自在に嵌合する相対的に長寸の円弧溝と相対的に短寸の円弧突起とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の隣接笠木傾斜連結用ジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−9596(P2007−9596A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193761(P2005−193761)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000107882)スワン商事株式会社 (6)
【Fターム(参考)】