説明

雄端子の製造方法及びコネクタの製造方法

【課題】表面実装型の雄端子、及び、ピン挿入型の雄端子の両方を、同様の製造プロセスにより製造できる、雄端子の製造方法、及び、コネクタの製造方法を提供する。
【解決手段】雄端子の製造方法には、線材を切り離す切断工程と、線材を曲げることにより、(i)基板孔挿入部(基板孔挿入部31d、基板孔挿入部32d、基板孔挿入部33d)と、(ii)中間部(中間部31m、中間部32m、中間部33m)と、を形成する曲げ工程と、が含まれる。切断工程及び曲げ工程において、(1)雄端子を表面実装型にする場合には、基板孔挿入部の長さLaを、基板貫通孔42の長さ以下とし、(2)雄端子をピン挿入型にする場合には、基板孔挿入部の長さを、基板貫通孔42の長さよりも長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側コネクタ及び基板に対して電気的に接続されるコネクタの製造方法、及び、コネクタに用いられる雄端子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基板用コネクタの例が特許文献1に記載されている。この基板用コネクタにおいては、両コネクタの接続方向が、基板の表面に垂直な方向(特許文献1の図2)、又は、基板の表面に平行な方向となっている(特許文献1の図5)。そして、複数の端子(ピン状端子)が、隔壁の挿入孔に挿入されており、また、端子は、回路基板に対してはんだ付けにより固定されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−216870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような、基板用コネクタの雄端子には、表面実装技術(SMT; Surface MountTechnology)を用いる表面実装型のものと、基板を貫通させて裏面ではんだ付けするピン挿入型のものとがある。そして、表面実装型の雄端子と、ピン挿入型の雄端子とでは、形状が全く異なるために、それぞれの雄端子を製造する場合には、それぞれの雄端子専用の製造プロセスにより製造する必要がある。しかし、同様の製造プロセスにより、両方の型の雄端子を製造できることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明の目的は、表面実装型の雄端子、及び、ピン挿入型の雄端子の両方を、同様の製造プロセスにより製造できる、雄端子の製造方法、及び、コネクタの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る雄端子の製造方法は、雌端子を有する相手側コネクタ及び基板に対して電気的に接続されるコネクタに用いられる雄端子の製造方法であって、前記雄端子の材料である線材を、線材集合体から切り離す切断工程と、前記線材を曲げることにより、(i)前記基板に形成された基板孔に挿入される基板孔挿入部と、(ii)前記基板孔挿入部から連続し、前記基板の表面に沿って伸びる中間部と、を形成する曲げ工程と、を備える。前記切断工程及び前記曲げ工程において、(1)前記雄端子を表面実装型にする場合には、前記基板孔挿入部の長さを、前記基板孔の長さ以下とし、(2)前記雄端子をピン挿入型にする場合には、前記基板孔挿入部の長さを、前記基板孔の長さよりも長くする。
【0007】
この方法によると、まず、表面実装型の雄端子、及び、ピン挿入型の雄端子の違いが、基板孔挿入部の長さのみとなる。また、金属板に対するプレス加工により雄端子を製造する場合には、端子の一部の長さを変更する際に、金型の変更が必要になるのに対し、本方法においては、線材を用いて雄端子を製造するので、線材の切断位置及び曲げ位置を変えることにより、基板孔挿入部の長さを容易に変更できる。すなわち、表面実装型の雄端子の製造と、ピン挿入型の雄端子の製造とを容易に切り替えることができる。そのため、表面実装型及びピン挿入型の雄端子を、それぞれの雄端子専用の製造プロセスにより製造する必要がなく、表面実装型の雄端子、及び、ピン挿入型の雄端子の両方を、同様の製造プロセスにより製造できる。
【0008】
また、この方法によると、線材を用いて雄端子を製造することにより、金属板プレス加工用の金型が不要になる。そのため、雄端子を短期間で製造でき、さらに、雄端子の製造コストが低くなる。
【0009】
なお、「表面実装型」とは、基板の表面側から雄端子をはんだ付けする方式のことであり、「ピン挿入型」とは、基板の裏面側から雄端子をはんだ付けする方式のことである。また、本発明においては、雄端子が、表面実装型及びピン挿入型のいずれの型の場合であっても、雄端子は基板孔に挿入される。
【0010】
「線材集合体」とは、雄端子の材料として切断して使用される金属線材の集まりであり、例えば、リールに巻かれた状態の金属線材がこれに該当する。「基板孔挿入部の長さを基板孔の長さ以下とする」とは、基板孔挿入部(基板の表面に垂直な部分)の最大の長さを、基板孔の長さにほぼ等しくすることを示しており、具体的には、基板孔挿入部の長さを、基板孔の長さの50%乃至110%とすることを示している。また、雄端子をピン挿入型にする場合における基板孔挿入部の長さについては、基板孔の長さの111%以上となるように設定する。
【0011】
切断構成、及び、曲げ工程は、この順で実施される。曲げ工程においては、基板孔挿入部及び中間部以外の他の部分を形成してもよい。また、切断工程及び曲げ工程の、前後及び各工程間に別の工程が設けられていてもよい。例えば、線材の先端をプレス加工により尖頭処理するプレス工程が設けられていてもよい。
【0012】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係るコネクタの製造方法は、雌端子を有する相手側コネクタ及び基板に対して電気的に接続されるコネクタの製造方法であって、前記雄端子を支持する壁部を有するコネクタハウジングを形成するコネクタハウジング形成工程と、前記雄端子の材料である線材を、線材集合体から切り離す切断工程と、前記線材を、前記壁部に形成された貫通孔に挿入する挿入工程と、前記線材を曲げることにより、(i)前記基板に形成された基板孔に挿入される基板孔挿入部と、(ii)前記基板孔挿入部から連続し、前記基板の表面に沿って伸びる中間部と、(iii)前記中間部から連続し、前記貫通孔に挿入され、前記雌端子及び前記雄端子の接続方向に対して傾いた方向に沿って伸びる傾斜部と、(iv)前記壁部から突出し、前記雌端子に接続される端子接続部と、を形成する曲げ工程と、を備える。前記切断工程及び前記曲げ工程において、(1)前記雄端子を表面実装型にする場合には、前記基板孔挿入部の長さを、前記基板孔の長さ以下とし、(2)前記雄端子をピン挿入型にする場合には、前記基板孔挿入部の長さを、前記基板孔の長さよりも長くし、前記コネクタハウジング形成工程においては、前記接続方向に対して傾いた方向に沿って、前記貫通孔を形成する。
【0013】
この方法によると、表面実装型の雄端子、及び、ピン挿入型の雄端子の両方を、同様の製造プロセスにより製造できる。
【0014】
また、この方法によると、線材を用いて雄端子を製造することにより、金属板プレス加工用の金型が不要になる。そのため、雄端子を短期間で製造でき、さらに、雄端子の製造コストが低くなる。
【0015】
さらに、この方法では、壁部において、雄端子が挿入される貫通孔が、雌端子及び雄端子の接続方向に対して傾いた方向に沿って形成される。そのため、コネクタと相手側コネクタとの接続時に、摩擦(雌端子及び雄端子の摩擦)又は位置ずれ(雄端子位置に対する雌端子の位置ずれ)などに起因して、雌端子によって雄端子が押された場合であっても、雄端子が貫通孔の内面に押し付けられる。その結果、貫通孔に沿った雄端子のスライド移動が抑制されるので、壁部の貫通孔から、雄端子が押し出されにくい。
【0016】
なお、本方法では、傾斜部が、接続方向に対して傾いた方向に沿って形成され、また、端子接続部が、接続方向に沿って形成されている。そのため、雄端子は、雄端子の傾斜部と端子接続部との間の位置において曲げられている。また、「雌端子及び雄端子の接続方向」は、相手側コネクタハウジングと、コネクタハウジングとが接続される方向(ハウジング接続方向)に等しくてもよいし、端子の接続方向とハウジング接続方向とは一致していなくてもよい。例えば、両コネクタハウジングが接続された後で、端子同士が、ハウジング接続方向とは異なる方向に沿って接続されてもよい。
【0017】
コネクタハウジングは、雄端子を支持する壁部を有する部材であり、このコネクタハウジングは、壁部に加えて、本体部、及び、本体部に取り付けられるカバーハウジングを有していてもよい。
【0018】
コネクタハウジングは、壁部を含めて、全体が一体的に形成されたものであってもよいし、コネクタハウジングの本体部と壁部とが別物品であってもよい。この場合に、本体部及び壁部の材料が異なっていてもよいし、同一であってもよい。また、コネクタは基板を内部に有していてもよく、この場合において、壁部が基板に取り付けられていてもよく、また、壁部がコネクタの本体部に取り付けられていてもよい。
【0019】
コネクタハウジング形成工程、切断工程、挿入工程、及び曲げ工程は、この順で実施してもよく、次のような順で実施してもよい。
切断工程→コネクタハウジング形成工程→挿入工程→曲げ工程
また、これらの工程の前後及び各工程間に別の工程が設けられていてもよい。例えば、線材の先端をプレス加工により尖頭処理するプレス工程が設けられていてもよい。
【0020】
また、曲げ工程は、一段階で全ての部分を形成する工程であってもよいし、次のように、複数段階に分かれていてもよい。
(a)コネクタハウジング形成工程→切断工程→曲げ工程1→挿入工程→曲げ工程2
(b)切断工程→コネクタハウジング形成工程→曲げ工程1→挿入工程→曲げ工程2
【0021】
基板は、コネクタの外部にあってもよく、コネクタの内部にあってもよい。基板がコネクタの外部にある場合には、コネクタハウジングは、基板に対して取り付けられるように構成されていることが望ましく、例えば、コネクタハウジングに、ねじ穴などが形成されていることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタ及び相手側コネクタの全体構成を示す側面概略図である。図2は、コネクタの斜視図である。図3は、コネクタの概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。図4は、図3のA−A’断面図である。図5は、壁部の概略図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のB−B’断面図である。図6は、コネクタハウジングの本体部の斜視図である。図7は、コネクタハウジングの本体部の概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。図8は、ハウジングカバーの斜視図である。図9は、基板の斜視図である。図10は、雄端子付き壁部が、基板に取り付けられた状態を示す斜視図である。図11は、壁部付き基板の概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は背面図、(e)は右側面図、(f)は(b)のC−C’断面図である。図12は、コネクタの組み立て工程の一部を示す概略図であり、(a)は挿入工程後の状態、(b)は曲げ工程後の状態を示す。図13は、壁部付き基板の側面概略図である。なお、図13においては、断面を示す斜線を省略している。
【0023】
(全体構成)
まず、図1を用いて、電気的接続装置の全体構成について説明する。本実施形態に係る電気的接続装置は、コネクタ1と、相手側コネクタ5とを有する。コネクタ1は、ECU(Electronic Control Unit)として機能し、コネクタ1を有する電気的接続装置は、自動車などにおいて利用される。相手側コネクタ5は、図示しない電源に対して電気的に接続されており、コネクタ1と相手側コネクタ5との接続が完了すると、コネクタ1内部の基板4上の電子部品(図示せず)へ、電源からの電力が供給されるようになっている。
【0024】
相手側コネクタ5は、合成樹脂製の相手側ハウジング6と、複数の雌端子7とを有する。コネクタ1と相手側コネクタ5との接続が完了した状態では、コネクタ1のコネクタハウジング2に対して、相手側ハウジング6が連結される。その結果、コネクタ1の複数の雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)と、相手側コネクタ5の複数の雌端子7とが電気的に接続され、コネクタ1と相手側コネクタ5とが電気的に接続される。また、複数の雌端子7及び複数の雄端子は、図1に示す矢印E方向に沿って接続される。以下、矢印E方向を接続方向とし、この接続方向Eに関して、E1側を前方側、E2側を後方側とする。なお、接続方向に関して前方側とは、複数の雄端子に対する複数の雌端子7の進行方向における前方側を意味しており、後方側とは、複数の雌端子7の進行方向における後方側を意味している。
【0025】
(コネクタ)
コネクタ1は、複数の雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)と、コネクタハウジング2とを有する(図1乃至図4参照)。また、コネクタ1の内部には、基板4が設置されている。そして、コネクタ1は、外部の相手側コネクタ5、及び、内部の基板4の両方に対して、電気的に接続される。また、複数の雌端子7及び複数の雄端子の接続方向Eは、基板4の表面に沿った方向となっている。
【0026】
コネクタ1において、それぞれの雄端子は、基板4に対して、SMT(Surface MountTechnology;表面実装技術)により取り付けられており(図4参照)、それぞれの雄端子は、基板4の表面側ではんだ付けされている。なお、それぞれの雄端子は、基板に対して、ピン挿入型により取り付けられていてもよい。具体的には、雄端子は、リード部(基板接続部)を基板に貫通させた上で、基板の裏面側ではんだ付けされていてもよい。また、図4等においては、はんだを省略して示している。
【0027】
(コネクタハウジング)
コネクタハウジング2は、合成樹脂材料から形成されており、本体部21と、壁部22と、カバーハウジング26とを有する(図4参照)。また、コネクタハウジング2においては、本体部21と壁部22とカバーハウジング26とが別物品となっている。しかし、これらは一体的に形成されていてもよい。
【0028】
(壁部)
まず、壁部22について説明する。壁部22は、複数の雄端子を支持する板状の部材である。壁部22は、本体部21の内部に配置されており、また、基板4に取り付けられている(図4参照)。また、壁部22には、複数の貫通孔が形成されている(図5(a)参照)。「複数の貫通孔」には、複数の貫通孔23、複数の貫通孔24、及び、複数の貫通孔25が含まれる。また、複数の貫通孔は、三列に並べて配置されており、一列目(図5(a)における最上列)には複数の貫通孔23が配置されており、二列目には複数の貫通孔24が、三列目には複数の貫通孔25が配置されている。
【0029】
そして、壁部22におけるそれぞれの貫通孔には、雄端子が挿入される。具体的には、貫通孔23には雄端子31が挿入され、貫通孔24には雄端子32が挿入され、貫通孔25には雄端子33が挿入される(図4参照)。
【0030】
また、貫通孔23、貫通孔24、及び、貫通孔25は、図5(a)における上下方向に沿った一直線上に配置されていない。例えば、それぞれの左端の貫通孔に着目すると、貫通孔24は、貫通孔23の位置に対して、左寄りに位置しており、さらに、貫通孔25は、貫通孔24の位置よりも左寄りに位置している。そのため、壁部22に複数の雄端子が挿入された状態では、平面視(上面視)において、雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33が重ならない(図11(a)参照)。
【0031】
また、壁部22の両面には、三列の溝部22dが形成されている(図5(a)、図5(b)参照)。それぞれの溝部22dは、上下二面の傾斜面から成り、それぞれの傾斜面は、基板4の表面に沿った方向に対して45度傾いている。また、複数の貫通孔のそれぞれは、壁部22の両面(前面及び後面)において、溝部22dの位置で開口するように形成されている(図5(c)参照)。
【0032】
また、貫通孔23、貫通孔24、及び貫通孔25は、それぞれ、雄端子31、雄端子32、及び雄端子33を支持するために形成されている。また、貫通孔23、貫通孔24、及び貫通孔25は、雌端子7及び雄端子の接続方向Eに対して、傾いた方向に沿って形成されている(図4及び図5(c)参照)。また、それぞれの貫通孔の形状は、全長に亘って四角形となっている。なお、貫通孔の内面のうち、上側(図13における上側)の内面を、接触面(接触面23s、接触面24s、接触面25s)とする(図13参照)。
【0033】
なお、図5(c)は、図5(a)のB−B’断面のみ(すなわち、貫通孔25の断面のみ)を示しているが、図4に示すように、貫通孔23及び貫通孔24の形状についても、図5(c)の貫通孔25と同様である。
【0034】
また、コネクタ1においては、壁部22のE1側の面は、コネクタハウジング2によって覆われるため、コネクタ1の外部に露出しない。
【0035】
(貫通孔について)
貫通孔についてより詳しく説明する。貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)の形成方向は、接続方向Eに対して平行でないことに加えて、この接続方向Eに対して垂直でないことが望ましい。すなわち、貫通孔の形成方向と接続方向Eとの間の角度(以下、この角度を形成角度とする。図5(c)の角度α参照)は、1度乃至89度の範囲内にあることが望ましい。本実施形態においては、形成角度が45度となっている。
【0036】
形成角度が0度に近いと、接続方向Eと、貫通孔の形成方向とがほぼ一致するために、雄端子が抜け易くなってしまう。一方、形成角度が90度に近いと、雄端子の挿入が困難になる。また、形成角度が90度に近いと、雄端子の挿入部(壁部内に挿入された部分)の長さが長くなるため、壁部を、高さ方向(図5(b)の上下方向)に長くする必要が生じる。そして、結果的に、コネクタが大型化してしまう。以上から、貫通孔の形成角度は、20度〜70度の範囲内にあることがより望ましい。なお、貫通孔の形成角度は、0度又は90度であってもよい。
【0037】
(本体部)
次に、本体部21について説明する。本体部21の内部には、内部空間21sが形成されている(図4、図7(b)、図7(c)参照)。壁部22及び基板4は、この内部空間21sに収容される。
【0038】
本体部21には、相手側コネクタ5との接続時における接続口となる、開口部21bが形成されている。また、本体部21の先端部分には、断面がほぼ四角形の、先端部21cが形成されており、開口部21bは、先端部21cの内部に形成されている(図6及び図7参照)。
【0039】
また、本体部21には、天板部21fと、二つの側壁部21wと、側壁部21vとが形成されている。二つの側壁部21wは、接続方向Eに沿って配置され、側壁部21vは、E1側に配置されている。また、天板部21fのE1側には、基板4に平行な部分が形成されており、この平行な部分よりもE2側には、傾斜部分が形成されている。傾斜部分は、E2側へ向かうに従って基板4から離れるように形成されている。
【0040】
そして、内部空間21sは、天板部21f、二つの側壁部21w、及び、側壁部21vの内側に形成されている。また、本体部21のうち、内部空間21sが形成されている部分(壁部22及び基板4が収容されている部分)は、下方に向かって開口している(図7(c)参照)。また、二つの側壁部21w及び側壁部21vには、突出部21gが形成されている(図6及び図7参照)。突出部21gは、二つの側壁部21w及び側壁部21vから、基板4の表面に沿った方向に突出している。突出部21gによって、後述するカバーハウジング26と、本体部21との位置関係が定まる。
【0041】
(カバーハウジング)
次に、カバーハウジング26について説明する。カバーハウジング26は、本体部21に対して取り付けられる蓋部材である。カバーハウジング26は、底板部26bと、側壁部26vと、二つの側壁部26wとを有する(図8参照)。二つの側壁部26wは、接続方向Eに沿って配置され、側壁部26vは、E1側に配置されている。
【0042】
本体部21にカバーハウジング26が取り付けられた状態では、側壁部21v及び二つの側壁部21wの外面と、側壁部26v及び二つの側壁部26wの内面とが対向する(図2、図3(b)等参照)。また、この状態において、カバーハウジング26の側壁部26v及び二つの側壁部26wの先端部は、本体部21の突出部21gに対向するため、突出部21gによって、本体部21に対するカバーハウジング26の移動が制限される。
【0043】
(基板)
図9を用いて、基板4について説明する。基板4は、プリント基板(プリント配線板)である。本実施形態においては、基板4はリジッド基板(硬質な絶縁体基材を用いたもの;ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板など)となっている。なお、基板は、リジッド基板の他、フレキシブル基板(薄く柔軟性のある絶縁体基材を用いたもの;ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルムなど)や、リジッドフレキシブル基板(硬質な材料と柔軟性のある材料とを複合したもの)であってもよい。
【0044】
基板4には、複数の基板貫通孔(基板孔)42が形成されている(図9参照)。また、基板4の表面において、それぞれの基板貫通孔42の開口の周囲には、金属膜43が形成されている。金属膜43は、基板貫通孔42の開口から、接続方向Eに沿って後方側(E2側)へ伸びている。さらに、それぞれの基板貫通孔42の内壁面にも、金属膜が形成されている。また、基板4の表面には、複数の基板端子41が配置されている。また、基板4上には、コンデンサなどの電子部品(図示せず)が配置される。
【0045】
上記のように、基板4には壁部22が取り付けられる。図10及び図11は、基板4に壁部22が取り付けられた状態を示している。また、コネクタ1において、基板4と複数の雄端子との接続部分(中間部の周辺)は、コネクタハウジング2によって覆われるため、コネクタ1の外部に露出しない。
【0046】
(雄端子)
コネクタ1は複数の雄端子を有しており、それぞれの雄端子は線材を用いて製造されている。「複数の雄端子」には、複数の雄端子31、複数の雄端子32、及び、複数の雄端子33の、三種類の雄端子が含まれる。そして、雄端子31は、貫通孔23に挿入され、雄端子32は、貫通孔24に挿入され、雄端子33は、貫通孔25に挿入される(図4等参照)。また、コネクタ1において、雄端子31、雄端子32、及び雄端子33の数は、それぞれ、十二本である。また、それぞれの雄端子は、相手側コネクタ5の雌端子7に対して電気的に接続され、さらに、基板4に対して電気的に接続される。
【0047】
また、雄端子31と、雄端子32と、雄端子33とでは、長さが異なっており、雄端子31が最も長く、雄端子33が最も短い(図4等参照)。
【0048】
雄端子31には、端子接続部31cと、傾斜部31nと、中間部31mと、基板孔挿入部31dとが形成されている(図4、図12(b)、図13参照)。また、雄端子32にも、雄端子31と同様に、端子接続部32cと、傾斜部32nと、中間部32mと、基板孔挿入部32dとが形成されている。また、雄端子33にも、端子接続部33cと、傾斜部33nと、中間部33mと、基板孔挿入部33dとが形成されている。
【0049】
次に、雄端子の各部について説明する。雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33の、各部の機能及び形状は同様であるため、以下、特記する場合を除いて、主に雄端子31について説明し、雄端子32及び雄端子33についての説明を省略する。
【0050】
基板孔挿入部31dは、基板4に形成された複数の基板貫通孔42に挿入される部分である(図4、図13参照)。基板孔挿入部31dの先端は、基板貫通孔42に挿入される。また、基板孔挿入部31dは、基板4の表面に沿った方向に対して、垂直に伸びるように形成されている。基板孔挿入部31dは、基板貫通孔42の内壁面の金属膜に対して、はんだ接続される。
【0051】
基板孔挿入部31dの全長は、図13にLaで示した長さとなる。基板孔挿入部32d、基板孔挿入部33dの全長についても、同様にLaとなる。すなわち、基板孔挿入部31dは、中間部31mの下面よりも下方にある部分である。図13に示すように、基板孔挿入部31dの長さLaは、基板貫通孔42の長さにほぼ等しい。
【0052】
中間部31mは、基板孔挿入部31dから連続し、基板4の表面に沿って伸びる部分である。また、中間部31mは、基板4の金属膜43に対してはんだ接続される。
【0053】
傾斜部31nは、中間部31mから連続し、接続方向Eに対して傾いた方向に沿って伸びる部分である。傾斜部31nは、中間部31mから離れるに連れて、基板4からの距離が長くなるように形成されている。また、傾斜部31nは、貫通孔23に挿入される挿入部31bを有している(図13参照)。すなわち、挿入部31bは、傾斜部31nの一部である。また、雄端子32及び雄端子33についても同様に、傾斜部32nは、貫通孔24に挿入される挿入部32bを有しており、傾斜部33nは、貫通孔25に挿入される挿入部33bを有している。
【0054】
挿入部31bは、貫通孔23に挿入され、貫通孔23の内面と接触する(図4及び図12(b)参照)。そして、挿入部31bは、貫通孔23の内部において、接続方向Eに対して傾いた方向に沿って配置される(図4及び図12(b)参照)。
【0055】
端子接続部31cは、壁部22から突出し、雌端子7に接続される部分である(図4及び図12(b)参照)。端子接続部31cは、傾斜部31nから連続して形成されている。また、端子接続部31cは、コネクタ1において、その軸方向が接続方向Eに沿うように配置される。すなわち、雄端子31は、壁部22よりも接続方向後方側(E2側)では、接続方向Eに沿うように形成されている。
【0056】
また、上記のように、基板孔挿入部31d、及び、中間部31mは、基板4に対してはんだ接続される。
【0057】
なお、本実施形態において、雄端子及び基板は、雄端子の基板孔挿入部及び中間部の両方において電気的に接続されるが、これらの電気的接続は、基板孔挿入部のみにおいて行なわれてもよいし、中間部のみにおいて行なわれてもよい。
【0058】
また、傾斜部31nは、中間部31mにおける、接続方向Eに関して最も後方側の位置から伸びている。また、傾斜部31nは、中間部31mから、接続方向Eに関して後方側に伸びている。ここで、傾斜部31nが、「接続方向に関して後方側に伸びている」とは、接続方向Eに垂直な仮想平面(図10の平面S参照)を基準として、傾斜部31nと中間部31mとの境界部分から、傾斜部31nが、前方側でなく後方側へ伸びている(後方側領域に位置している)ことを示している。なお、傾斜部が「接続方向に関して後方側に伸びている」ことには、傾斜部が「接続方向Eに対して垂直な方向へ伸びる」ことは含まれない。
【0059】
また、雄端子31において、基板孔挿入部31d、中間部31m、傾斜部31n、及び、端子接続部31cの全ては、一つの仮想平面R(接続方向E、及び、基板4の表面に垂直な方向の両方向に対して平行な面;図10の平面R参照)上に位置する。雄端子32及び雄端子33についても同様に、仮想平面R上に位置する。なお、本実施形態では、一つの雄端子に着目した場合に、雄端子全体が、仮想平面R上に位置しているが、雄端子の形態はこのようなものには限られず、雄端子の一部分のみが仮想平面R上に位置し、他の部分は、仮想平面R上には位置していなくてもよい。
【0060】
また、本構成では、傾斜部31nが、接続方向Eに対して傾いた方向に沿って形成され、また、端子接続部31cが、接続方向Eに沿って形成されている。これに関連して、雄端子31は、雄端子31の傾斜部31nと端子接続部31cとの間の位置において曲げられている。また、雄端子31が基板4に取り付けられた状態において、基板4の表面に対する傾斜部31nの角度は、貫通孔23の形成角度(角度α)に等しい。
【0061】
(組み立て方法)
次に、コネクタ1の組み立て方法(製造方法)について説明する。まず、射出成形により、コネクタハウジング2を形成する(コネクタハウジング形成工程)。本工程では、接続方向Eに傾いた方向に沿って、複数の貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)を、壁部22に形成する。
【0062】
次に、雄端子の材料となる線材(線状雄端子)を準備する。具体的には、リールに巻かれた金属線材(線材集合体;図示せず)を切断して、線材を切り離す(切断工程)。このときに、三種類の長さ(雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33のそれぞれの長さ)の線材ができるようにする。そして、得られた線材の両端の先端部を、プレス加工により尖頭処理する(プレス工程)。
【0063】
切断工程及びプレス工程を経た三種類の金属線材は、それぞれ、線状雄端子31p、線状雄端子32p、及び、線状雄端子33pとなる(図12(a)参照)。また、線状雄端子31p、線状雄端子32p、及び、線状雄端子33pは、それぞれ、曲げ加工前の、雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33に相当する。なお、プレス工程はなくてもよい。
【0064】
次に、線材(線状雄端子31p、線状雄端子32p、及び、線状雄端子33p)を、壁部22の貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、及び、貫通孔25)へ挿入する(挿入工程;図12(a)参照)。このとき、線状雄端子31p、線状雄端子32p、及び、線状雄端子33pのそれぞれは、貫通孔へ圧入される(強い圧力で押し込まれる)。
【0065】
次に、線状雄端子31p、線状雄端子32p、及び、線状雄端子33pに対して、曲げ加工を行なう(曲げ工程)。具体的には、図12(b)の線状雄端子31pを用いて説明すると、線状雄端子31pに対して、図12(b)に示すD1、D2、D3の三箇所において、曲げ加工を実施する。この曲げ工程により、基板孔挿入部31dと、中間部31mと、傾斜部31n(挿入部31b)と、端子接続部31cとが形成される。線状雄端子32p、及び、線状雄端子33pに対しても同様に曲げ加工を実施する。上記の切断工程、及び、曲げ工程を経ることにより、雄端子が製造される。
【0066】
図12(b)は、複数の雄端子が、壁部22に取り付けられた状態を示している。この状態の壁部を、「雄端子付き壁部」とする。壁部22の端子接続部側(D1部分)において雄端子が曲げられることにより、雄端子付き壁部が本体部21に取り付けられた状態において、端子接続部の方向が接続方向Eに沿った方向となる。
【0067】
また、雄端子が、図12(b)のD3の位置で曲げられることにより、雄端子付き壁部が本体部21に取り付けられた状態において、基板孔挿入部の方向が、基板4の表面に沿った方向に対して、垂直な方向となる。
【0068】
また、曲げ工程では、基板孔挿入部の長さLaが、基板貫通孔42の長さにほぼ等しくなるように、線状雄端子に対して曲げ加工を行なう(図13参照)。また、上記の切断工程においては、曲げ工程を実施した後の状態で、基板孔挿入部の長さLaが基板貫通孔42の長さにほぼ等しくなるように、線材を切断する。
【0069】
なお、本実施形態においては、雄端子は、D1、D2、D3の三箇所で曲げられているが、このような曲げ方には限られない。例えば、雄端子は、壁部22付近では、一箇所(D1)のみにおいて曲げられているが、雄端子が、壁部22を挟んだ二箇所において曲げられていてもよい。
【0070】
次に、雄端子付き壁部を、基板4に対して取り付ける(基板取り付け工程)。この状態の基板を、「壁部付き基板」とする(図10及び図11参照)。この取り付け方法としては、接着剤により両者を接着してもよいし、両者をネジ止めにより固定してもよい。また、凹部と凸部とを両者に形成しておき、これらの連結により両者を固定してもよい。
【0071】
基板取り付け工程における、複数の雄端子及び基板のはんだ接続について、より詳細に説明する。まず、基板4の表面(金属膜43の表面)に、はんだペーストを印刷塗布する。そして、はんだペーストの上に、複数の雄端子を、自動実装機(マウンタ又はインサータ)を用いて、基板4の表面に配置する(基板孔挿入部を、基板貫通孔42に挿入する)。そして、壁部及び雄端子が載った基板4を、リフロー炉に通して、摂氏250度程度まで加熱することにより、はんだを溶かして、雄端子を基板4の表面にはんだ付けする。その後、冷却を行なう。
【0072】
次に、壁部付き基板に対して、本体部21を取り付け、次に、カバーハウジング26を本体部21に対して取り付ける(ハウジング組み立て工程)。ハウジング組み立て工程を経たものがコネクタ1となる。以上のようにして、コネクタ1の組み立てが完了する。
【0073】
なお、これらの工程は、複数段階に分けて行なってもよい。例えば、上記の順で曲げ工程まで実施した後、雄端子付き壁部の状態で出荷し、他の組み立て業者において、残りの組み立て工程(基板取り付け工程、及び、ハウジング組み立て工程)を実施してもよい。また、上記の工程(コネクタハウジング形成工程、切断工程、プレス工程、挿入工程、曲げ工程、基板取り付け工程、ハウジング組み立て工程)の一部又は全部を、作業者が手作業で実施してもよいし、自動機を使って自動的に実施してもよい。
【0074】
以上のように、本実施形態では、コネクタ1の雄端子が、線材を用いて製造されるために、金属板に対するプレス加工が不要となる。そのため、金属板プレス加工用の金型の製造コストが不要となり、雄端子の製造コストを低くすることができる。また、金属板プレス加工用の金型が不要であるために、金型の製造期間が不要となり、コネクタ全体の製造期間を短縮できる。
【0075】
(雄端子をピン挿入型にする場合について)
上記の方法は、雄端子を表面実装型にする場合の組み立て方法である。次に、雄端子をピン挿入型にする場合における、コネクタの組み立て方法について、上記の組み立て方法と異なる部分を中心に説明する。なお、図14において、符号331、331d、332、332d、333、333dを付した部分は、それぞれ、図13において、符号31、31d、32、32d、33、33dを付した部分に相当する。
【0076】
雄端子をピン挿入型にする場合には、曲げ工程において、基板孔挿入部(基板孔挿入部331d、基板孔挿入部332d、基板孔挿入部333d)の長さLbが、基板貫通孔42の長さよりも長くなるように、それぞれの線状雄端子に対して曲げ加工を行なう(図14(b)参照)。その結果、Lbは、La(表面実装型の場合における基板孔挿入部の長さ;図14(a)参照)よりも長くなる(図14(b)参照)。また、切断工程においては、曲げ工程後の基板孔挿入部の長さLbが、基板貫通孔42の長さよりも長くなるように、予め考慮して、線材を切断する。その結果、組み立て後のコネクタにおいて、基板孔挿入部の長さLbが、LaよりもLdだけ長くなる(図14参照)。
【0077】
また、雄端子をピン挿入型にする場合の組み立て方法においては、基板取り付け工程が、雄端子を表面実装型にする場合における基板取り付け工程とは異なる。この場合、フロー方式により雄端子を基板にはんだ付けする。具体的には、まず、接着剤を使って、雄端子を基板4に仮固定する(基板孔挿入部を、基板貫通孔42に挿入する)。その後、加熱により溶融したはんだが収容されたはんだ槽に、基板4の裏面を浸して、雄端子を基板4に対してはんだ付けする。雄端子をピン挿入型にする場合には、このようにして、コネクタを組み立てる。
【0078】
雄端子をピン挿入型にする場合には、はんだ槽に基板4の裏面を浸すことにより、はんだ槽のはんだが、基板4の裏面から、基板貫通孔42を通って、基板4の表面へ到達する。これにより、それぞれの雄端子において、基板孔挿入部及び中間部が、確実にはんだ接続される。また、基板貫通孔42が、はんだによって、充分に充填される。
【0079】
(効果)
次に、本実施形態に係る雄端子の製造方法、及び、コネクタの製造方法により得られる効果について説明する。本実施形態に係る雄端子の製造方法は、複数の雌端子7を有する相手側コネクタ5及び基板4に対して電気的に接続されるコネクタ1に用いられる雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)の製造方法であって、雄端子の材料である線材を、線材集合体から切り離す切断工程と、線材を曲げることにより、(i)基板4に形成された基板貫通孔(基板孔)42に挿入される基板孔挿入部(基板孔挿入部31d、基板孔挿入部32d、基板孔挿入部33d)と、(ii)基板孔挿入部から連続し、基板4の表面に沿って伸びる中間部(中間部31m、中間部32m、中間部33m)と、を形成する曲げ工程と、を備える。切断工程及び曲げ工程において、(1)雄端子を表面実装型にする場合には、基板孔挿入部の長さを、基板貫通孔42の長さ以下とし、(2)雄端子をピン挿入型にする場合には、基板孔挿入部の長さを、基板貫通孔42の長さよりも長くする。
【0080】
この方法によると、まず、表面実装型の雄端子、及び、ピン挿入型の雄端子の違いが、基板孔挿入部の長さのみとなる。また、金属板に対するプレス加工により雄端子を製造する場合には、端子の一部の長さを変更する際に、金型の変更が必要になるのに対し、本方法においては、線材を用いて雄端子を製造するので、線材の切断位置及び曲げ位置を変えることにより、基板孔挿入部の長さを容易に変更できる。すなわち、表面実装型の雄端子の製造と、ピン挿入型の雄端子の製造とを容易に切り替えることができる。そのため、表面実装型及びピン挿入型の雄端子を、それぞれの雄端子専用の製造プロセスにより製造する必要がなく、表面実装型の雄端子、及び、ピン挿入型の雄端子の両方を、同様の製造プロセスにより製造できる。
【0081】
また、この方法によると、線材を用いて雄端子を製造することにより、金属板プレス加工用の金型が不要になる。そのため、雄端子を短期間で製造でき、さらに、雄端子の製造コストが低くなる。
【0082】
また、本実施形態に係るコネクタの製造方法は、複数の雌端子7を有する相手側コネクタ5及び基板4に対して電気的に接続されるコネクタ1の製造方法であって、複数の雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)を支持する壁部22を有するコネクタハウジング2を形成するコネクタハウジング形成工程と、雄端子の材料である線材を、線材集合体から切り離す切断工程と、それぞれの線材を、壁部22に形成された貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、又は、貫通孔25)に挿入する挿入工程と、それぞれの線材を曲げることにより、(i)基板4に形成された基板貫通孔(基板孔)42に挿入される基板孔挿入部(基板孔挿入部31d、基板孔挿入部32d、又は、基板孔挿入部33d)と、(ii)基板孔挿入部から連続し、基板4の表面に沿って伸びる中間部(中間部31m、中間部32m、又は、中間部33m)と、(iii)中間部から連続し、貫通孔に挿入され、雌端子7及び雄端子の接続方向Eに対して傾いた方向に沿って伸びる傾斜部(傾斜部31n、傾斜部32n、又は、傾斜部33n)と、(iv)壁部22から突出し、雌端子7に接続される端子接続部(端子接続部31c、端子接続部32c、又は、端子接続部33c)と、を形成する曲げ工程と、を備える。切断工程及び曲げ工程において、(1)雄端子を表面実装型にする場合には、基板孔挿入部の長さを、基板貫通孔42の長さ以下とし、(2)雄端子をピン挿入型にする場合には、基板孔挿入部の長さを、基板貫通孔42の長さよりも長くし、コネクタハウジング形成工程においては、接続方向Eに対して傾いた方向に沿って、それぞれの貫通孔を形成する。
【0083】
この方法によると、表面実装型の雄端子、及び、ピン挿入型の雄端子の両方を、同様の製造プロセスにより製造できる。
【0084】
また、この方法によると、線材を用いて雄端子を製造することにより、金属板プレス加工用の金型が不要になる。そのため、雄端子を短期間で製造でき、さらに、雄端子の製造コストが低くなる。
【0085】
さらに、この方法では、壁部22において、雄端子が挿入される貫通孔が、雌端子7及び雄端子の接続方向Eに対して傾いた方向に沿って形成される。そのため、コネクタ1と相手側コネクタ5との接続時に、摩擦(雌端子7及び雄端子の摩擦)又は位置ずれ(雄端子位置に対する雌端子7の位置ずれ)などに起因して、雌端子7によって雄端子が押された場合であっても、雄端子が貫通孔の内面(接触面23s、接触面24s、接触面25s)に押し付けられる。その結果、貫通孔に沿った雄端子のスライド移動が抑制されるので、壁部22の貫通孔から、雄端子が押し出されにくい。
【0086】
また、上記の製造方法を用いることにより、表面実装用の雄端子、及び、ピン挿入型の、それぞれの雄端子専用の製造設備が不要となり、同一又は同様の製造設備により、それぞれの雄端子の製造が可能となる。
【0087】
また、コネクタ1において、雄端子は、両コネクタの接続時に、雌端子7によって押される方向、すなわち、接続方向EのE1側に抜け難くなっている。なお、例えば、壁部22のE1側で雄端子を曲げれば、雄端子は、接続方向EのE2側にも抜け難くなる。
【0088】
また、コネクタ1によると、雄端子に対して曲げ加工を施すという簡易な手段により、貫通孔(貫通孔23、貫通孔24、貫通孔25)から雄端子(雄端子31、雄端子32、雄端子33)が抜け難い構造を実現できる。
【0089】
また、コネクタ1の製造においては、金属板プレス加工用の金型を使用せずに、線材により雄端子を製造するため、金属板に対するプレス加工により雄端子を製造する場合に比べて、柔軟にコネクタの仕様を変更できる。
【0090】
また、本実施形態においては、雄端子が線材から作られるために、雄端子の製造時に、スクラップが発生しない。そのため、無駄な材料費を削減できる。スクラップは、鍍金されていることが多く、その場合には、スクラップの取引価格が安価になってしまうため、スクラップの発生量が低減されることは、製造コストの面から望ましい。
【0091】
上記のように、本実施形態のコネクタの製造コストは、金属板に対するプレス加工により雄端子を製造する場合に比べて低くなる。そして、このコスト低減効果は、極数(雄端子の数)が多くなるほど、顕著なものとなる。
【0092】
上記のように、コネクタ1は、接続方向Eと、基板4の表面に沿った方向とが等しいタイプのコネクタである。このようなタイプのコネクタにおいては、雄端子を一箇所で垂直に折り曲げることが考えられる(図12(b)の破線部に示す、参考例に係る雄端子931参照)。このような雄端子931に比べて、本実施形態のコネクタ1では、雄端子31の端子長が短くなる(雄端子32、雄端子33についても同様である)。そのため、雄端子931に比べて、雄端子の電気抵抗が小さくなり、雄端子における発熱量が減少するため、コネクタの性能の低下を防止できる。また、雄端子の端子長が短くなることにより、雄端子が信号伝送用の端子である場合に、高周波電気信号の遅延を低減できる。
【0093】
また、貫通孔が、接続方向Eに沿って形成されている場合に、線材から製造した雄端子の移動を抑制するためには、壁部を厚くして貫通孔を長くし、摩擦力の作用を増大させる必要がある。一方、本方法では、接続方向Eに関して、端子接続部(端子接続部31c、端子接続部32c、端子接続部33c)のE1側に、貫通孔の内面(接触面23s、接触面24s、接触面25s)が位置するため、貫通孔の形成方向が接続方向Eに一致している場合に比べて、雄端子の移動が、壁部の貫通孔によって、より顕著に抑制される。そのため、本方法によると、壁部を厚くすることなく、雄端子の移動を抑制することができる。
【0094】
なお、上記のように、コネクタ1は、接続方向Eと基板4の表面とが平行なタイプのコネクタであるが、コネクタはこのようなタイプには限られず、例えば、接続方向Eと、基板4の表面とは、垂直であってもよい。この場合には、例えば、雄端子が、壁部22を挟んだ二箇所で、折り曲げられていればよい。
【0095】
また、上記の実施形態では、傾斜部が、側面視(図4参照)において、接続方向に対して傾いているが、傾斜部は、平面視(上面視)において、接続方向に対して傾いていてもよい。また、貫通孔についても同様に、平面視において、接続方向に対して傾いていてもよい。
【0096】
なお、基板孔挿入部、中間部、傾斜部、及び、端子接続部は、仮想平面R上に位置していなくてもよい。また、傾斜部は、中間部における、接続方向に関して最も後方側(E2側)の位置から伸びていなくてもよく、中間部の最も前方側(E1側)の位置から伸びていてもよい。
【0097】
(第1変形例)
次に、上記の実施形態の第1変形例について、上記の実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、上記の実施形態と同様の部分については、図に同一の符号を付してその説明を省略する。図15は、第1変形例に係る雄端子付き壁部の側面概略図である。なお、図15においては、断面を示す斜線を省略している。
【0098】
本変形例において、壁部422には、複数の貫通孔(貫通孔423、貫通孔424、貫通孔425)が形成されており、これらの貫通孔は、接続方向Eに沿って形成されている。また、上記の実施形態と同様に、貫通孔423、貫通孔424、及び、貫通孔425は、図15における上下方向に沿った一直線上に配置されていないものとする。そのため、壁部422に複数の雄端子が挿入された状態では、平面視(上面視)において、雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33は重ならない。
【0099】
そして、複数の雄端子(雄端子31、雄端子32、及び、雄端子33)の、端子接続部31c、端子接続部32c、及び、端子接続部33cのE1側が、挿入部として、複数の貫通孔に挿入される。壁部及び貫通孔はこのように形成されていてもよい。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の範囲内において様々に変更して実施することができる。
【0101】
本発明に係るコネクタを、自動車のECU接続コネクタとして利用してもよい。また、本発明のコネクタの用途はECU接続用には限られず、その他の基板接続用、電源接続用、又は、中継用のコネクタとしても利用できる。また、本発明に係るコネクタを、EFI(Electronic Fuel Injection;燃料噴射制御)用のECUに対する接続コネクタとして利用してもよい。また、本発明は、防水型コネクタ、非防水型コネクタの両方に適用できる。
【0102】
また、上記の実施形態では、壁部が複数の雄端子を支持できるように構成されているが、壁部は一本の雄端子のみを支持するものであってもよい。また、壁部には、複数の貫通孔が三列に並べて配置されているが、壁部には、複数の貫通孔が、一列に並べられていてもよい。
【0103】
また、上記の実施形態では、それぞれの貫通孔が一つの直線に沿って形成されているが、貫通孔は、曲線に沿って形成されていてもよい。
【0104】
また、複数の雄端子は、電源接続用、信号伝送用のどちらに用いられてもよいし、両方に用いられてもよい。
【0105】
また、上記の実施形態では、コネクタ1の内部に基板4が配置されているが、コネクタの構成はこのようなものには限られず、例えば、基板はコネクタの内部ではなく、コネクタ以外の他の装置に配置されていてもよく、コネクタは、電源供給用の相手側コネクタと、基板を有する他の装置とを、中継接続するものであってもよい。例えば、コネクタは、図16に示すようなものであってもよい。図16において、符号501、502、521、521c、522を付した部分は、図1において、1、2、21、21c、22を付した部分に相当する。また、図1と同様の部分については同一の符号を付している。図16に示すコネクタ501は、コネクタハウジング502と、複数の雄端子とを有している。コネクタハウジング502は、本体部521と、壁部522とを有している(カバーハウジングは設けられていない)。そして、本体部521は、壁部522を収容する収容部、及び、先端部521cから成り、基板4は、コネクタハウジング502の内部ではなく、コネクタハウジング502の外部に配置されている。また、壁部522のE1側の面は、コネクタハウジング502に覆われずに露出しており、さらに、複数の雄端子と基板との接続部分もまた、コネクタハウジング502に覆われずに露出している。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタ及び相手側コネクタの全体構成を示す側面概略図である。
【図2】コネクタの斜視図である。
【図3】コネクタの概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。
【図4】図3のA−A’断面図である。
【図5】壁部の概略図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のB−B’断面図である。
【図6】コネクタハウジングの本体部の斜視図である。
【図7】コネクタハウジングの本体部の概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は背面図である。
【図8】ハウジングカバーの斜視図である。
【図9】基板の斜視図である。
【図10】雄端子付き壁部が、基板に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図11】壁部付き基板の概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は背面図、(e)は右側面図、(f)は(b)のC−C’断面図である。
【図12】コネクタの組み立て工程の一部を示す概略図であり、(a)は挿入工程後の状態、(b)は曲げ工程後の状態を示す。
【図13】壁部付き基板の側面概略図である。
【図14】壁部付き基板の概略図であり、(a)は表面実装型、(b)はピン挿入型である。
【図15】第1変形例に係る雄端子付き壁部の側面概略図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係るコネクタ及び相手側コネクタの全体構成を示す側面概略図である。
【符号の説明】
【0107】
1 コネクタ
2 コネクタハウジング
21 本体部
21b 開口部
21c 先端部
21f 天板部
21g 突出部
21s 内部空間
21v 側壁部
21w 側壁部
22 壁部
22d 溝部
23、24、25 貫通孔
23s、24s、25s 接触面
26 カバーハウジング
26b 底板部
26v 側壁部
26w 側壁部
31、32、33 雄端子
31b、32b、33b 挿入部
31c、32c、33c 端子接続部
31d、32d、33d 基板孔挿入部
31m、32m、33m 中間部
31n、32n、33n 傾斜部
4 基板
41 基板端子
42 基板貫通孔(基板孔)
43 金属膜
5 相手側コネクタ
6 相手側ハウジング
7 雌端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌端子を有する相手側コネクタ及び基板に対して電気的に接続されるコネクタに用いられる雄端子の製造方法であって、
前記雄端子の材料である線材を、線材集合体から切り離す切断工程と、
前記線材を曲げることにより、(i)前記基板に形成された基板孔に挿入される基板孔挿入部と、(ii)前記基板孔挿入部から連続し、前記基板の表面に沿って伸びる中間部と、を形成する曲げ工程と、を備え、
前記切断工程及び前記曲げ工程において、(1)前記雄端子を表面実装型にする場合には、前記基板孔挿入部の長さを、前記基板孔の長さ以下とし、(2)前記雄端子をピン挿入型にする場合には、前記基板孔挿入部の長さを、前記基板孔の長さよりも長くすることを特徴とする、雄端子の製造方法。
【請求項2】
雌端子を有する相手側コネクタ及び基板に対して電気的に接続されるコネクタの製造方法であって、
前記雄端子を支持する壁部を有するコネクタハウジングを形成するコネクタハウジング形成工程と、
前記雄端子の材料である線材を、線材集合体から切り離す切断工程と、
前記線材を、前記壁部に形成された貫通孔に挿入する挿入工程と、
前記線材を曲げることにより、(i)前記基板に形成された基板孔に挿入される基板孔挿入部と、(ii)前記基板孔挿入部から連続し、前記基板の表面に沿って伸びる中間部と、(iii)前記中間部から連続し、前記貫通孔に挿入され、前記雌端子及び前記雄端子の接続方向に対して傾いた方向に沿って伸びる傾斜部と、(iv)前記壁部から突出し、前記雌端子に接続される端子接続部と、を形成する曲げ工程と、を備え、
前記切断工程及び前記曲げ工程において、(1)前記雄端子を表面実装型にする場合には、前記基板孔挿入部の長さを、前記基板孔の長さ以下とし、(2)前記雄端子をピン挿入型にする場合には、前記基板孔挿入部の長さを、前記基板孔の長さよりも長くし、
前記コネクタハウジング形成工程においては、前記接続方向に対して傾いた方向に沿って、前記貫通孔を形成することを特徴とする、コネクタの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−80161(P2010−80161A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245333(P2008−245333)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】