説明

集合住宅

【課題】各住戸の床面積と階高を従来のまま変更することなく、必要な広さの収納部を確保することができ、しかも意外性のある空間の実現を可能にした集合住宅を提供する。
【解決手段】共有のスラブ14を有る住戸を複数層に配置する。スラブ14の一部を上階側に膨出させて当該スラブ14の膨出した部分14aの下側に下階側住戸の天井裏収納部10を、前記スラブ14の膨出した部分14aの上側に上階側住戸のロフト部6をそれぞれ設ける。天井裏収納部10とロフト部6を住戸の積層方向に千鳥配置となるように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共有のスラブを有し複数層に配置された複数の住戸からなる集合住宅に関し、従来の各住戸の床面積と階高を変えず、現状のままで広い収納部の確保と意外性ある空間の実現を可能にしたもので、主にマンション等に適用される。
【背景技術】
【0002】
一般に、マンション等の集合住宅は、柱の配置(主にスパン)で各住戸の床面積はほぼ決まり、その限られた中にリビング、寝室、キッチン等の主要な空間が配置され、残りの部分に押入れや納戸などの収納部が配置される。また、マンション等の集合住宅は、一般に階高が低く抑えられる傾向にあるため、各住戸の床は全体にフラットな仕上がりとされることが多い。
【0003】
【特許文献1】特許3628994号
【特許文献2】特開2003−013618号公報
【特許文献2】特開2002−213019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、収納部は洗面室の周囲や部屋と部屋との間などに付属的に設けられることが多く、しかも分散して設けられやすいため、広い収納部は確保しにくいという課題があった。また、立面的にもありきたりの空間にとどまり、意外性のある空間は実現できにくいものであった。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、従来の各住戸の床面積と階高を変更することなく、必要な広さの収納部を確保することができ、しかも意外性のある空間の実現を可能にした集合住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の集合住宅は、共有のスラブを有し複数層に配置された複数の住戸からなる集合住宅であって、前記スラブの一部を上階側に膨出させて当該膨出部の下側に下階側住戸の天井裏収納部を、前記膨出部の上側に上階側住戸のロフト部を設けてなることを特徴とするものである。
【0007】
本発明は、特にリビングや寝室などの主要な居住スペースの面積を犠牲にすることなく、必要な広さの収納部を確保できるようにしたものである。この場合の天井裏収納部およびロフト部の床面積は、建築基準法上の床面積の算定に関する規定に配慮すると、住戸面積の1/2以下、天井高は1.4m未満とするのが望ましい。
【0008】
なお、ここで共有のスラブとは、下階側住戸の天井スラブとして、かつ上階側住戸の床スラブとして上下住戸間に設けられた版をいう。
【0009】
請求項2記載の集合住宅は、請求項1記載の集合住宅において、前記天井裏収納部と前記ロフト部を前記住戸の積層方向に千鳥配置となるように設けてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、前記天井裏収納部とロフト部を住戸の積層方向に千鳥配置となるように設けたことで、各階の階高、ひいては建物全体の高さをあえて高くする必要がなく、従来の高さのままでよい。さらに、ロフト部を設けたことで各住戸内に立面的に高低差ができ、変化に富んだ意外性のある空間を提供することができる。
【0011】
請求項3記載の集合住宅は、請求項1または2記載の集合住宅において、前記スラブの他の一部を下階側に膨出させて床下凹部を設け、当該床下凹部に浮き床を設けてなることを特徴とするものである。
【0012】
浮き床は、固体伝播音を遮断するために防振材によって躯体と絶縁して支持した内装の床であって、本発明の場合、例えば、上階側住戸の浴室、トイレ、キッチン等の水回り部と下階側住戸の和室が上下に重なるような配置となる場合、上階側住戸の水を流す音などの生活騒音が下階側住戸の和室に漏れて、下階側住戸の居住性が著しく損なわれることがある。
【0013】
このような場合に、上階側住戸の水回り部の床部分に上記したような床下凹部を形成し、当該凹部に水回り部の床として浮き床を構成することで、上階側住戸の生活騒音が下階側に漏れるのを低減することができる。
【0014】
なお、この場合の浮き床としては、例えば床下凹部内に発泡材を敷設し、その上にコンクリートを打設する等の簡単な方法によって構成することができる。また、床下凹部は浴室やトイレ等の配水管を敷設するスペースとしても利用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、スラブの一部を上階側に膨出させて当該膨出部の下側に下階側住戸の天井裏収納部を、前記膨出部の上側に上階側住戸のロフト部をそれぞれ設けたことで、特にリビングや寝室などの主要な居住スペースの面積を犠牲にすることなく、必要な広さの収納部を容易に確保することができる。
【0016】
また、前記天井裏収納部とロフト部を住戸の積層方向に千鳥配置となるように設けたことで、各階の階高、ひいては建物全体の高さをあえて高くする必要もなく、従来の高さのままとすることができる。
【0017】
さらに、ロフト部を設けたことで各住戸内に立面的に高低差ができ、変化に富んだ意外性のある居住空間を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1(a),(b)は、共有のスラブを有し、複数層に配置された複数の住戸からなる集合住宅の基準階の平面図を示し、また図2(a),(b)は上下階に跨る基準階の縦断面図を示したものである。
【0019】
図において、各住戸の中央にスパン方向に延びる廊下1が配置され、当該廊下1の一端側に玄関2、他端側にリビング3がそれぞれ配置され、さらに玄関1の屋外側に外廊下4、リビング3の屋外側にバルコニー5がそれぞれ配置されている。
【0020】
また、廊下1を挟んでその両側のほぼ中央にロフト部6と洗面室7、そのリビング3側に隣接して和室8とキッチン、トイレ、浴室などの水回り部9がそれぞれ対称に配置されている。
【0021】
洗面室7の天井裏には天井裏収納部10が、水回り部部9の床下には後述する浮き床11aを設けるための床下凹部11がそれぞれ設けられている。また、ロフト部6と洗面室7の玄関2側に隣接して洋室12と洋室13が廊下1を挟んで対称に配置されている。
【0022】
さらに、これらのロフト部6と洗面室7および天井裏収納部10、和室8と水回り部9、および洋室12と洋室13は、上下階の住戸間で廊下1を挟んでそれぞれ左右逆に配置されている。
【0023】
また、ロフト部6と収納部10は、上階側の住戸と下階側の住戸間に配置されたスラブ14の一部を上階側に所定高さ膨出させて形成されている。すなわち、スラブ14の膨出した部分14a(以下「膨出部14a」という)の上側部分が上階側住戸のロフト部6に、膨出部14aの下側部分が下階側住戸の天井裏収納部10にそれぞれなっている。
【0024】
そして、天井裏収納部10には洗面室7から上り下りできるようにスライド式のハシゴ15が設置され、ロフト部6には廊下1から上り下りできるようにハシゴまたは階段16が設置されている。
【0025】
水回り部9の床下凹部11はスラブ14の一部を下階側に膨出させて所定の深さに形成され、当該床下凹部11内に浮き床11aが構成されている。浮き床11aは、床下凹部11内に発泡材を敷設し、その上にコンクリートを打設する等の方法によって構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a),(b)は、共有のスラブを有し、複数層に配置された複数の住戸からなる集合住宅の基準階の平面図である。
【図2】(a)は、図1(a)におけるイ−イ線断面図、(b)は、図1(b)におけるロ−ロ線断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 廊下
2 玄関
3 リビング
4 外廊下
5 バルコニー
6 ロフト部
7 洗面室
8 和室
9 水回り部(キッチン、トイレ、浴室等)
10 天井裏収納部
11 床下凹部
11a 浮き床
12 洋室
13 洋室
14 スラブ
14a 膨出部
15 スライド式のハシゴ
16 ハシゴまたは階段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共有のスラブを有し複数層に配置された複数の住戸からなる集合住宅であって、前記スラブの一部を上階側に膨出させて当該膨出部の下側に下階側住戸の天井裏収納部を、前記膨出部の上側に上階側住戸のロフト部をそれぞれ設けてなることを特徴とする集合住宅。
【請求項2】
前記天井裏収納部と前記ロフト部を前記住戸の積層方向に千鳥配置となるように設けてなることを特徴とする請求項1記載の集合住宅。
【請求項3】
前記スラブの他の一部を下階側に膨出させて床下凹部を設け、当該下凹部に浮き床を設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の集合住宅。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−239327(P2007−239327A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63921(P2006−63921)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)