説明

集塵装置

【課題】エッジ部における異常放電を防止すること。
【解決手段】集塵電極(40)および高圧電極(50)は、空気が流れる多数の通風孔(46,56)が形成された格子構造の基台部(41,51)と、該基台部(41,51)から相対する電極(40,50)の通風孔(46,56)に挿通される突起部(44,52)とを有している。そして、集塵電極(40)の基台部(41)および突起部(44)の端部(42a,43a,44a,44b)にはヘミング処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵装置に関し、特に、集塵電極の構造に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気的な引力を利用して空気等に含まれる粉塵を捕集する電気式の集塵装置が知られている。例えば、特許文献1には、矩形断面の通気孔が多数形成された格子状の集塵電極と、集塵電極の通気孔へ1つずつ挿入される突起部が形成された対向電極とを備える集塵装置が開示されている。この集塵装置において、対向電極の突起部は、その断面形状が矩形状となっており、その側面が通気孔の内壁面と向かい合っている。集塵電極と対向電極の間に電位差を付与すると、通気孔の内壁面と突起部の表面との間の空間に電界が形成される。そのため、通気孔を流れる気体中の粒子は、通気孔の内壁に引き寄せられて捕捉される。
【特許文献1】登録実用新案第3033859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来の集塵装置では、単に対向電極の突起部を切断加工しただけでは、その突起部に尖ったエッジやバリが形成されてしまい、そのエッジやバリの部位に電界が集中してしまうという問題があった。そのため、エッジ部で異常放電が発生しやすくなり、突起部の全面において電界が不均一となり集塵効率が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電極の端部を工夫することによって、異常放電を防止し集塵効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電界を形成する一対の電極(40,50)において、電界が形成される端部のエッジやバリ等をなくすようにしている。
【0006】
具体的に、第1の発明は、空気通路(23)に互いに対向するように配置される一対の電極(40,50)を備え、該両電極(40,50)の間に空気中の帯電した塵埃を捕集するための電界を形成する集塵装置を前提としている。そして、本発明の集塵装置は、上記電極(40,50)の少なくとも一方は、金属製の金属電極で構成され、その端部が折り返されているものである。
【0007】
上記第1の発明では、塵埃を捕集するための一対の電極(40,50)の少なくとも一方が金属電極で構成される。一般に金属電極は、重量軽減のため薄板の金属が用いられる。ところが、薄板金属においては、その端部(エッジ部)に電界が集中し易い。そこで、本発明では、金属電極の端部が折り返されている。即ち、金属電極の端部がいわゆるヘミング加工されている。したがって、その端部では板厚が見かけ上増大する。これにより、金属電極の端部において、尖ったエッジやバリがなくなる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記電極(40,50)の少なくとも一方は、ステンレスバネ鋼製の金属電極で構成されているものである。
【0009】
上記第2の発明では、金属電極がステンレスバネ鋼で形成される。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記金属電極で構成された電極(40,50)の板厚は、0.2mm以下である。
【0011】
上記第3の発明では、金属電極の板厚が0.2mm以下となる。
【0012】
第4の発明は、上記第1乃至第3の何れか1の発明において、上記一対の電極(40,50)は、空気が流れる多数の通風孔(46)が形成された格子構造の基台部(41)と、該基台部(41)から通風孔(46)の軸方向に延びる突起部(42)とを有すると共に上記金属電極を構成する第1電極(40)と、空気が流れる多数の通風孔(56)が形成された格子構造の基台部(51)と該基台部(51)から通風孔(56)の軸方向に延びる突起部(52)とを有する第2電極(50)とで構成され、上記各突起部(44,52)が相対する電極(40,50)の通風孔(46,56)に挿通されるように対向して配置されている。そして、上記第1電極(40)の基台部(41)および突起部(42)の少なくとも一方は、端部が折り返されているものである。
【0013】
上記第4の発明では、両電極(40,50)の基台部(41,51)は多数の通風孔(46,56)が形成される格子構造となっている。また、第2電極(50)の通風孔(56)内には第1電極(40)の突起部(44)が挿通され、第1電極(40)の通風孔(46)内には第2電極(50)の突起部(52)が挿通されている。そして、各通風孔(46,56)の内壁と各突起部(44,52)の側周面との間に空気中の塵埃を捕集するための電界が放射状に形成される。ここで、第1電極(40)の基台部(41)および突起部(44)の少なくとも一方の端部が折り返されているため、その端部において尖ったエッジやバリがなくなる。
【0014】
第5の発明は、上記第1乃至第4の何れか1の発明において、上記折り返し端部は、折り返し線方向の両端が該折り返し線から垂直に延びているものである。
【0015】
上記第5の発明では、図8に示すように、折り返し端部の両端が折り返し線に対して垂直に延びているため、折り返し時(折り曲げ時)に折り返し端部の両端まで確実に折り返される(折り曲げられる)。
【0016】
第6の発明は、上記第1乃至第4の何れか1の発明において、上記折り返し端部は、折り返し線方向の両端が該折り返し線の端部から引いた垂線よりも外側に形成されているものである。
【0017】
上記第6の発明では、図7に示すように、折り返し端部の両端が折り返し線に対して引いた垂線(垂直線)より外側に出ているため、折り返し時(折り曲げ時)に折り返し端部の両端まで確実に折り返される(折り曲げられる)。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、電極(40,50)の少なくとも一方を金属電極とし、その端部を折り返すようにした。つまり、本発明では金属電極の端部をヘミング加工するようにした。したがって、金属電極の端部において尖ったエッジやバリをなくすことができる。そのため、薄板金属を用いて金属電極を構成しても、金属電極の端部に電解が集中するのを防止することができる。これにより、スパーク等の異常放電を容易に防止することができ、集塵効率を向上させることができる。さらに、端部を折り返すだけでよいため、重量はそれ程増大しない。したがって、軽量化をも図ることができる。
【0019】
また、第2の発明によれば、金属電極をステンレスバネ鋼製とした。したがって、金属電極を薄板にしても剛性を確保することができる。よって、軽量化および小型化を図ることができる。また、ステンレスは錆びず強アルカリ性洗剤も使用できるため、洗浄が容易となりメンテナンス性が向上する。
【0020】
また、軽量化のために樹脂で電極を構成することが考えられる。その場合、安全上、例えばUL規格に基づく所定の耐燃性を有する必要がある。樹脂の耐燃性は肉厚が薄いほど悪くなる。現状では、樹脂電極において所定の耐燃性を満足するためには、樹脂の肉厚を少なくとも1.5mm以上にする必要がある。なお、樹脂の密度が約1.0前後に対し、鋼の密度は約8.0である。そこで、第3の発明では、金属電極の板厚を0.2mm以下としたため、樹脂で構成した電極と同等の重量となる。したがって、確実に軽量化を図ることができる。
【0021】
また、第4の発明によれば、第1電極(40)の突起部(44)は第2電極(50)の通風孔(56)内に挿通させ、第2電極(50)の突起部(52)は第1電極(40)の通風孔(46)内に挿通させ、突起部(44,52)と通風孔(46,56)の内壁との間に電界を形成するようにした。これにより、第1電極(40)と第2電極(50)との間の集塵面積を拡大させることができる。そして、本発明では、第1電極(40)の突起部(44)等の端部が折り返されているため、両電極(40,50)間に異常放電を発生させることなく電界を均一に形成することができる。このように、集塵面積を拡大させつつも、均一な電界を形成できるため、集塵効率を一層向上させることができる。
【0022】
さらに、第5および第6の発明によれば、折り返し端部の両端の形状を折り返し線との関係で工夫するようにしたため、折り返し端部を折り返す際にその両端まで確実に折り返すことができる。つまり、図9に示すように、折り返し端部の両端がめくり上がるのを防止することができる。その結果、めくり上がりによるエッジを排除することができる。これにより、異常放電を確実に防止することができ、集塵効率の向上を一層図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
本実施形態の空気清浄機(10)は、一般家庭や小規模店舗などで用いられる民生用の空気浄化装置であって、本発明に係る集塵装置を構成している。
【0025】
〈空気清浄機の全体構成〉
図1および図2に示すように、空気清浄機(10)は、ケーシング(20)を備えると共に、該ケーシング(20)の内部に収納されたプレフィルタ(11)と荷電部(12)と集塵部(30)と触媒フィルタ(13)と送風機(14)とを備えている。
【0026】
上記ケーシング(20)は、例えば、矩形体状の横長の容器に形成され、前面が空気の吸込口(21)に形成され、背面が空気の吹出口(22)に形成され、内部が空気通路(23)に形成されている。そして、プレフィルタ(11)と荷電部(12)と集塵部(30)と触媒フィルタ(13)と送風機(14)とが吸込口(21)から吹出口(22)に向かって順に配置されている。
【0027】
上記プレフィルタ(11)は、吸込口(21)からケーシング(20)内に吸込まれた空気に含まれる比較的大きな塵埃を捕集するためのフィルタを構成している。
【0028】
上記荷電部(12)は、イオン化部を構成し、プレフィルタ(11)を通過した比較的小さな塵埃を帯電させるものである。この荷電部(12)は、図示しないが、例えば、複数のイオン化線と、複数の対向電極から構成され、該イオン化線と対向電極との間に直流電圧が印加されるように構成されている。イオン化線は、荷電部(12)の上端から下端に亘って設けられ、対向電極はイオン化線の間に配置されている。
【0029】
上記集塵部(30)は、荷電部(12)で帯電した塵埃を吸着して捕集するものである。この集塵部(30)の詳細については、後述する。
【0030】
上記触媒フィルタ(13)は、図示しないが、例えばハニカム構造の基材の表面に触媒が担持されて構成されている。その触媒としては、例えば、マンガン系触媒や貴金属触媒などが用いられ、集塵部(30)を通過して塵埃が除去された空気中の有害成分や臭気成分を分解する。
【0031】
上記送風機(14)は、ケーシング(20)内の空気通路(23)において最下流側に配置されている。この送風機(14)は、室内空気をケーシング(20)内に吸い込み、清浄空気を室内に吹き出すためのものである。
【0032】
〈集塵部の構成〉
上記集塵部(30)の構造について詳細に説明する。図3および図4に示すように、集塵部(30)は、アース電極である集塵電極(40)と対向電極である高圧電極(50)とを備えている。集塵電極(40)と高圧電極(50)とは、一方が第1電極を構成し、他方が第2電極を構成している。
【0033】
上記集塵電極(40)は、導電性であるステンレスバネ鋼製の薄板金属で構成されている。この薄板金属の板厚は、0.2mm以下であり、好ましくは0.15mm以下である。つまり、集塵電極(40)は金属電極を構成している。一方、高圧電極(50)は、材質が導電性樹脂となっており、例えば射出成形等の手法を用いて成形されている。高圧電極(50)の材質は、微導電性樹脂が好ましく、特に体積抵抗率が10Ωcm以上1013Ωcm以下の樹脂であることが好ましい。また、集塵電極(40)と高圧電極(50)とは、一部が相互に挿入自在な差し込み構造に構成されている。
【0034】
上記集塵電極(40)および高圧電極(50)のそれぞれは、外形が矩形状に形成されており、1つの基台部(41,51)と、該基台部(41,51)から突出する多数の突起部(44,52)とを備えている。
【0035】
上記集塵電極(40)の基台部(41)は、それぞれ板状部材である複数の横仕切部(42)および複数の縦仕切部(43)を備えている。基台部(41)は、横仕切部(42)と縦仕切部(43)とが互いに四角格子状に組み合わされて構成されている。つまり、横仕切部(42)と縦仕切部(43)とは、互いのスリット(図5および図6参照)にはめられて格子状に組み合わされる。そして、基台部(41)には、横仕切部(42)と縦仕切部(43)とによって囲まれる多数の通風孔(46)が形成されている。この通風孔(46)は、被処理気体としての空気が流れる通気孔を構成している。集塵電極(40)の突起部(44)は、図5にも示すように、上記各横仕切部(42)の下縁部から突出するように形成されている。突起部(44)は、横仕切部(42)の幅方向に間隔をあけて複数(本実施形態では、3つ)形成されている。つまり、突起部(44)は横仕切部(42)から延びる突出片を構成し、突起部(44)と横仕切部(42)とは一枚の金属板(ステンレスバネ鋼板)で形成されている。
【0036】
上記高圧電極(50)の基台部(51)は、枠体(53)と、該枠体(53)の内部に設けられた複数の横仕切部(54)および複数の縦仕切部(55)とを備えている。高圧電極(50)の基台部(51)は、枠体(53)と横仕切部(54)と縦仕切部(55)とが四角格子状に且つ一体に形成されている。そして、基台部(51)には、枠体(53)と横仕切部(54)と縦仕切部(55)とによって囲まれる多数の通風孔(56)が形成されている。この通風孔(56)は、上記集塵電極(40)の通風孔(46)と同様に、被処理気体としての空気が流れる通気孔を構成している。高圧電極(50)の突起部(52)は、上記各横仕切部(54)の上縁部から突出するように形成されている。突起部(52)は、横仕切部(54)の幅方向に間隔をあけて複数形成されている。つまり、突起部(52)は、横仕切部(54)と同一厚さの平板状の突出片を構成し、横仕切部(54)に一体形成されている。
【0037】
上記集塵部(30)は、上記集塵電極(40)および高圧電極(50)の基台部(41,51)同士が対向した状態で固定されて組み立てられる。この組み立て状態では、集塵電極(40)の突起部(44)が高圧電極(50)の通風孔(56)内に挿通され、高圧電極(50)の突起部(52)が集塵電極(40)の通風孔(46)内に挿通される。また、各基台部(41,51)は、空気通路(23)において空気流れと直交する方向に配置されている。
【0038】
上記各縦仕切部(43,55)は、ケーシング(20)の上下方向に延び、各横仕切部(42,54)は、ケーシング(20)の幅方向に延びている。つまり、縦仕切部(43,55)と横仕切部(42,54)とは縦横に交差するように配列されている。
【0039】
上記各縦仕切部(43,55)は、集塵電極(40)の基台部(41)と高圧電極(50)の基台部(51)とが組み立てられた状態では、同一平面上に位置するように形成されている。また、この組み立て状態において、両者の縦仕切部(43,55)は、互いに接触することなく、所定の間隔を置いて配置される。一方、各横仕切部(42,54)は、集塵電極(40)の基台部(41)と高圧電極(50)の基台部(51)とが組み立てられた状態では、図4の上下方向に、千鳥状に位置するように形成されている。つまり、集塵電極(40)の横仕切部(42)は、高圧電極(50)の通風孔(56)の中央部に位置し、高圧電極(50)の横仕切部(54)は、集塵電極(40)の通風孔(46)の中央部に位置している。
【0040】
上記各突起部(44,52)の先端側は、相対する電極(50,40)の縦仕切部(43,55)と横仕切部(42,54)とによって囲まれる。つまり、各突起部(44,52)は、通風孔(46,56)の内部中央に位置する。そして、突起部(44,52)と縦仕切部(43,55)および横仕切部(42,54)との間に電位差が与えられる。つまり、突起部(44,52)の周囲には、通風孔(46,56)の横断面において電界が放射状に形成される。
【0041】
そして、本発明の特徴として、図5および図6にも示すように、集塵電極(40)の基台部(41)および突起部(44)の端部には、いわゆるヘミング処理が施されている。
【0042】
具体的に、基台部(41)の横仕切部(42)では、上流側の端部(42a)が通風孔(46,56)の軸心方向(即ち、空気流れ方向)に折り返されている。また、基台部(41)の横仕切部(42)では、突起部(44)と突起部(44)の間の端部(42b)が通風孔(46,56)の軸心方向に折り返されている。突起部(44)では、先端部(44a)が通風孔(46,56)の軸心方向に折り返されている。また、突起部(44)では、側端部(44b)が通風孔(46,56)の軸心方向に直交する方向(即ち、空気流れ方向に直交する方向)に折り返されている。基台部(41)の縦仕切部(43)では、上流側の端部(43a)および下流側の端部(43b)がそれぞれ通風孔(46,56)の軸心方向に折り返されている。
【0043】
このように、集塵電極(40)では、基台部(41)の上流側および下流側の端部(42a,42b,43a,43b)が折り返され、且つ、突起部(44)の端部(44a,44b)が折り返されている。これにより、集塵電極(40)の基台部(41)および突起部(44)の各端部(42a,42b,43a,43b,44a,44b)において、尖ったエッジがなくなり、その端部(42a,42b,43a,43b,44a,44b)での電界の集中が抑制される。
【0044】
また、図5のA部では図7に示すような工夫がされている。具体的に、突起部(44)の折り返される先端部(44a)(即ち、折り返し端部(折り返し片))の両端(4a)(図5において左右方向の端部)は、折り返し線端部における垂線よりも外側に出ている。同様に、突起部(44)の折り返される側端部(44b)(即ち、折り返し端部(折り返し片))の一端(4b)(図5において下側の端部)も、折り返し線端部における垂線よりも外側に出ている。つまり、折り返し端部における折り返し線方向の端部が折り返し線端部から引いた垂線よりも外側に形成されている。そうすることで、先端部(44a)および側端部(44b)を折り返す際、その先端部(44a)や側端部(44b)の全体を確実に且つ容易に折り返すことができる。例えば図9(A)に示すように、折り返し端部における端部が、テーパ状に形成されている場合、即ち折り返し線端部における垂線よりも内側に形成されている場合、その折り返し端部を折り返した際、その折り返し端部の端部が折り返されずにめくり上がった状態となる。このめくり上がりが尖ったエッジとして残ってしまい、そのエッジに電界が集中してしまうこととなる。ところが、上述したように折り返し端部における折り返し線方向の端部形状を工夫することで、めくり上がりを防止し、エッジの形成を回避することができる。
【0045】
また、図5のB部およびC部では図8に示すような工夫がされている。具体的に、突起部(44)の折り返される側端部(44b)(即ち、折り返し端部(折り返し片))の他端(4b)(図5において上側の端部)は、折り返し線から垂直に延びている。同様に、横仕切部(42)の折り返される端部(42b)(即ち、折り返し端部(折り返し片))の両端(2b)(図5において左右方向の端部)も、折り返し線から垂直に延びている。そうすることで、側端部(44b)や端部(42b)を折り返す際、その側端部(44b)や端部(42b)の全体を確実に且つ容易に折り返すことができる。例えば図9(B)に示すように、折り返し端部における端部が、テーパ状に形成されている場合、即ち折り返し線端部における垂線よりも内側に形成されている場合、その折り返し端部を折り返した際、図9(A)と同様に、その折り返し端部の端部が折り返されずにめくり上がった状態となる。このめくり上がりが尖ったエッジとして残ってしまい、そのエッジに電界が集中してしまうこととなる。ところが、上述したように折り返し端部における折り返し線方向の端部形状を工夫することで、めくり上がりを防止し、エッジの形成を回避することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、図示しないが、高圧電極(50)の突起部(52)、横仕切部(54)および縦仕切部(55)のそれぞれの角部に面取りを施すようにしてもよい。例えば、それぞれの角部が円弧面に形成される。そうすることで、高圧電極(50)の基台部(51)および突起部(52)においてもバリや尖ったエッジが存在しなくなり、エッジ部の電界集中を抑制することができる。
【0047】
−運転動作−
次に、上記空気清浄機(10)の空気清浄動作について説明する。
【0048】
図1および図2に示すように、送風機(14)を駆動すると、被処理気体である室内空気がケーシング(20)の空気通路(23)に吸引され、該空気通路(23)を流れる。また、空気清浄機(10)では、荷電部(12)のイオン化線と対向電極と間に直流電圧が印加され、集塵部(30)の集塵電極(40)と高圧電極(50)との間に直流電圧が印加される。
【0049】
ケーシング(20)の空気通路(23)に吸引された室内空気は、先ずプレフィルタ(11)を通過する。プレフィルタ(11)は、室内空気に含まれる比較的大きな塵埃を捕集する。プレフィルタ(11)を通過した室内空気は、荷電部(12)に流れる。この荷電部(12)では、プレフィルタ(11)を通過した比較的小さな塵埃が正極に帯電し、この帯電した塵埃が下流側に流れることになる。
【0050】
続いて、帯電した塵埃は、室内空気と共に集塵部(30)に流れる。集塵部(30)に流入した空気は、先ず、集塵電極(40)の基台部(41)の通風孔(46)を流れる。この通風孔(46)では、空気が高圧電極(50)の突起部(52)の周囲を流れる。ここで、高圧電極(50)の突起部(52)と、集塵電極(40)の基台部(41)との間には電界が形成され、集塵電極(40)がアース電極となっている。したがって、正極に帯電している塵埃は、集塵電極(40)の基台部(41)、即ち横仕切部(42)や縦仕切部(43)に誘引される。その結果、集塵電極(40)の通風孔(46)を空気が流通する間には、塵埃がこれらの横仕切部(42)や縦仕切部(43)の表面に付着して捕集される。
【0051】
集塵電極(40)の基台部(41)を通過した空気は、高圧電極(50)の基台部(51)の通風孔(56)に流れる。この通風孔(56)では、空気が集塵電極(40)の突起部(44)の周囲を流れる。ここで、高圧電極(50)の基台部(51)と、集塵電極(40)の突起部(44)との間には電界が形成されているので、未だ空気中に残存している塵埃が集塵電極(40)の突起部(44)の表面に付着して捕集される。
【0052】
集塵部(30)で塵埃が除去された空気は、触媒フィルタ(13)を流れる。触媒フィルタ(13)では、空気中の有害物質や臭気物質が分解除去される。以上のようにして清浄化された空気は、送風機(14)を通過して、吹出口(22)より室内へ供給される。空気清浄機(10)は、このような動作を行うことで、室内空気を清浄化する。
【0053】
ここで、集塵部(30)の集塵電極(40)では、各突起部(44,52)、各縦仕切部(43,55)および横仕切部(42,54)の端部(42a,42b,43a,43b,44a,44b)において尖ったエッジが存在しないため電界が集中することはない。したがって、各突起部(44,52)と各縦仕切部(43,55)および横仕切部(42,54)との間に均一に電界が形成される。その結果、集塵部(30)における集塵効率が向上する。
【0054】
なお、本実施形態では、集塵部(30)の高圧電極(50)に正の電圧を印加し、荷電部(12)で正極に帯電させた塵埃をアース電極である集塵電極(40)に付着させるようにしたが、本発明は以下のように構成してもよい。つまり、上記実施形態においては、荷電部(12)で塵埃を負極に帯電させる一方、集塵電極(40)をアース電極として高圧電極(50)に負の電圧を印加するようにしてもよい。この場合、負極に帯電した塵埃は、集塵部(30)の集塵電極(40)に付着される。
【0055】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、金属電極である集塵電極(40)の基台部(41)および突起部(44)の端部(42a,42b,43a,43b,44a,44b)を折り返すようにした。つまり、本実施形態では金属電極の端部をヘミング処理するようにした。したがって、金属電極の端部において尖ったエッジやバリをなくすことができる。そのため、薄板金属を用いて金属電極を構成しても、金属電極の端部に電解が集中するのを防止することができる。これにより、スパーク等の異常放電を容易に防止することができ、集塵効率を向上させることができる。さらに、端部を折り返すだけでよいため、重量はそれ程増大しない。したがって、軽量化をも図ることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、金属電極をステンレスバネ鋼製とした。したがって、金属電極を薄板にしても剛性を確保することができる。よって、軽量化および小型化を図ることができる。また、ステンレスは錆びず強アルカリ性洗剤も使用できるため、洗浄が容易となりメンテナンス性が向上する。
【0057】
また、軽量化のために樹脂で電極を構成することが考えられる。その場合、安全上、例えばUL規格に基づく所定の耐燃性を有する必要がある。樹脂の耐燃性は肉厚が薄いほど悪くなる。現状では、樹脂電極において所定の耐燃性を満足するためには、樹脂の肉厚を少なくとも1.5mm以上にする必要がある。なお、樹脂の密度が約1.0前後に対し、鋼の密度は約8.0である。そこで、本実施形態では、金属電極の板厚を0.2mm以下としたため、樹脂で構成した電極と同等の重量にすることができる。したがって、確実に軽量化を図ることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、集塵電極(40)の突起部(44)は高圧電極(50)の通風孔(56)内に挿通させ、高圧電極(50)の突起部(52)は集塵電極(40)の通風孔(46)内に挿通させ、突起部(44,52)と通風孔(46,56)の内壁との間に電界を形成するようにした。これにより、集塵電極(40)と高圧電極(50)との間の集塵面積を拡大させることができる。このように、集塵面積を拡大させつつも、均一な電界を形成できるため、集塵効率を一層向上させることができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、上述したように集塵電極(40)の基台部(41)突起部(44)の端部(42b,44a,44b)、即ち折り返し端部の形状を折り返し線との関係で工夫するようにしたため、折り返し端部を折り返す際にその全体を確実に折り返すことができる。つまり、図9に示すように折り返し端部の両端がめくり上がるのを防止することができる。その結果、めくり上がりによるエッジを排除することができる。これにより、異常放電を確実に防止することができ、集塵効率の向上を一層図ることができる。なお、横仕切部(42)の上流側の端部(42a)や縦仕切部(43)の上下流側の端部(43a,43b)にはこのような工夫を施していないが、この箇所は横仕切部(42)と縦仕切部(43)と互いに近接しているため、めくり上がりによるエッジが生じても電界集中の影響はそれほどない。
【0060】
《その他の実施形態》
上述した実施形態については以下のような構成としてもよい。
【0061】
例えば、上記実施形態において、集塵電極(40)の基台部(41)および突起部(44)の少なくとも何れか1箇所の端部(42a,42b,43a,43b,44a,44b)にヘミング処理を行うようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態において、高圧電極(50)も集塵電極(40)のように金属電極とするようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、集塵電極(40)の材質にステンレスバネ鋼を用いたが、本発明はこれに限らず、他の導電性金属を用いるようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、集塵電極(40)の基台部(41)および突起部(44)の板厚は0.2mmに限られるものではないことは勿論である。
【0065】
また、上記実施形態では、集塵部(30)の集塵電極(40)と高圧電極(50)とが互いに嵌り込む構成について説明したが、本発明は、これに代えて、双方の電極(50,40)が空気流れ方向に延びる平板状に形成され、互いに交互に且つ平行に配列される構成(即ち、いわゆる平行平板型の電極(50,40))についても適用できる。この場合、少なくとも一方の電極(50,40)が金属電極で構成される。この場合も同様に、金属電極の端部にヘミング処理が施される。その結果、異常放電が抑制され、集塵効率が向上する。
【0066】
なお、上記実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明は、帯電した塵埃を捕集する集塵装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施形態に係る空気清浄機の全体構成を示す概略斜視図である。
【図2】実施形態に係る空気清浄機の全体構成を示す概略側面図である。
【図3】実施形態に係る集塵部の集塵電極および高圧電極を示す斜視図である。
【図4】実施形態に係る集塵部の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図5】実施形態に係る集塵電極の横仕切部および突起部を示す平面図である。
【図6】実施形態に係る集塵電極の縦仕切部を示す平面図である。
【図7】図5のA部を拡大して示す平面図である。
【図8】図5のB部およびC部を拡大して示す平面図である。
【図9】従来の折り返し端部の形状を示す平面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 空気清浄機(集塵装置)
23 空気通路
40 集塵電極(第1電極)
41 基台部
44 突起部
46 通風孔
50 高圧電極(第2電極)
51 基台部
52 突起部
56 通風孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路(23)に互いに対向するように配置される一対の電極(40,50)を備え、該両電極(40,50)の間に空気中の帯電した塵埃を捕集するための電界を形成する集塵装置であって、
上記電極(40,50)の少なくとも一方は、金属製の金属電極で構成され、その端部が折り返されている
ことを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記電極(40,50)の少なくとも一方は、ステンレスバネ鋼製の金属電極で構成されている
ことを特徴とする集塵装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記金属電極で構成された電極(40,50)の板厚は、0.2mm以下である
ことを特徴とする集塵装置。
【請求項4】
請求項2において、
上記一対の電極(40,50)は、空気が流れる多数の通風孔(46)が形成された格子構造の基台部(41)と、該基台部(41)から通風孔(46)の軸方向に延びる突起部(42)とを有すると共に上記金属電極を構成する第1電極(40)と、空気が流れる多数の通風孔(56)が形成された格子構造の基台部(51)と該基台部(51)から通風孔(56)の軸方向に延びる突起部(52)とを有する第2電極(50)とで構成され、上記各突起部(44,52)が相対する電極(40,50)の通風孔(46,56)に挿通されるように対向して配置され、
上記第1電極(40)の基台部(41)および突起部(42)の少なくとも一方は、端部が折り返されている
ことを特徴とする集塵装置。
【請求項5】
請求項2において、
上記折り返し端部は、折り返し線方向の両端が該折り返し線から垂直に延びている
ことを特徴とする集塵装置。
【請求項6】
請求項2において、
上記折り返し端部は、折り返し線方向の両端が該折り返し線の端部から引いた垂線よりも外側に形成されている
ことを特徴とする集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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