説明

集塵装置

【課題】粉塵の付着によるスペーサ突起の絶縁性低下とコレクタ電極板の表面における電気抵抗の低下が原因となって、コレクタ電極板どうしが電気的に導通した際に起こる表面電位の低下を最小限に抑えることが可能な集塵装置を提供する。
【解決手段】粉塵反発電極板2と集塵電極板3に、半導電層が複数の領域で構成されるようにする。これにより通電が生じたときに、その通電箇所が存在する領域で電位差の低下が起きても、他の領域の電位差が損なわれず、集塵効率を長期間にわたって維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄の分野において空気中の粒子状浮遊物質を除去する集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中に存在する粒子状浮遊物質、すなわち粉塵は喘息などの疾病の原因として知られていて従来から除去の対象となる物質であったが、近年の研究において粒子径2.5マイクロメートル以下の粉塵(いわゆるPM2.5)が肺ガンなどの疾病を誘起する可能性があるとの報告があり、捕集技術の更なる向上が求められている。その中で電気集塵技術を用いた集塵装置は粒子径がマイクロメートル以下の小粒径の粉塵を捕集することに優れていることと低圧損な構造が可能であることから注目を集めているが、安全性の向上と集塵性能の長期間維持が求められている。
【0003】
従来、この種の集塵装置は、放電によって粉塵を帯電する荷電部を前段に設け、その後段に、電極を積層し、交互に異なる電圧を印加して電場を形成して帯電した粉塵を捕集する集塵部を設けたものが知られている。
【0004】
従来の集塵装置の一例として特許文献1に記載されるような集塵装置が知られている。以下特許文献1記載の集塵装置について図12、図13および図14を用いて説明する。
【0005】
ここで、図13は図12におけるコレクタ電極板107のA−Bの断面を示す図となっている。
【0006】
図12および図13に示すように、集塵装置の集塵部を構成するコレクタ電極板107は中央部分に導電面108を備えた絶縁性の電極基板109の表面に半導電層110が設けられている。また、電極基板109をくぼませることで得たスペーサ突起111が複数設けられている。コレクタ電極板107は図13に示すようにスペーサ突起111の先端とコレクタ電極板107の裏面が接触することで、隣接するコレクタ電極板107の間に、ある一定の間隔を設けながら積層され、積層ごとに交互に異なる電圧をコレクタ電極107に設けられた導電面108に印加することでコレクタ電極板107の間に電場を設け、粉塵を捕集する仕組みになっている。そして半導電層110の上には電圧が印加された導電層108から電荷が与えられ、広がるように分布する。このため積層したコレクタ電極板107の間に設けられる電場の領域が広がって高い集塵性能が得られる。また同時に半導電層110は半導電性を有することから電荷の急激な移動が起こらない。すなわち異なる電圧が印加されたコレクタ電極板107との間で発生しうるスパークを防止することが可能となっている。
【特許文献1】特許第2662553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コレクタ電極板にスペーサ突起を設けた従来の構造においては、コレクタ電極板の表面のみならずスペーサ突起にも粉塵は付着することになる。コレクタ電極板に設けたスペーサ突起の先端は隣接のコレクタ電極板と接点を持っているために、スペーサ突起に粉塵が付着していけばその部分の絶縁性が低下し、やがてはスペーサ突起を介してコレクタ電極板どうしがスペーサ突起の接点近傍において通電の状態となって電場の強度が低下する。この電場の低下が広範囲で起こることで、集塵性能の低下が顕著に現れることが従来の課題であった。
【0008】
このような現象の詳細を図14を用いて説明する。
【0009】
図14に示すように空気中の粉塵を除去するためには積層したコレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113との間に空気を通過させる構造とする必要がある。そのためスペーサ突起111を数多く用いてコレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113と間に空間を設ける必要がある。すなわち数多くのスペーサ突起111によってコレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113とが多数の箇所で接触することになる。また、粉塵を捕集するためにコレクタ電極板A112に数kVの高電圧を印加し、コレクタ電極板B113をアースに接続して0kVとすることでコレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113との間に電場を設けるが、それぞれのコレクタ電極板に設けられた半導電層110にスペーサが接触することによって半導電層110の上に分布した電荷が逃げる。例えば高電圧が印加されたコレクタ電極板A112の半導電層110の表面電位が低下してしまう。
【0010】
逆にコレクタ電極板B113の半導電層110の表面電位は上昇し、コレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113の間に設けられた電場が弱まって集塵性能が低下する。スペーサ突起111の絶縁性が高い場合は電荷の逃げる度合いは少なくて済むが、粉塵を捕集してスペーサ突起111表面の電気抵抗が少しでも低下すると電荷の逃げる度合いは非常に大きくなり、コレクタ電極板A112の半導電層110の表面電位は大きく低下する。半導電層110は導電体と比べて電気抵抗値が非常に高いため、コレクタ電極板A112の半導電層110における表面電位の低下とコレクタ電極板B113の半導電層110における表面電位の上昇はスペーサの接触箇所とそれぞれのコレクタ電極板の中央部に設けられた導電面108とを結んだ線上で広範囲に起こる。
【0011】
したがって、それぞれのコレクタ電極板の間に設けられた電場の強度はスペーサの接触箇所でゼロとなり、接触箇所から導電面108へ近づくに従って徐々に大きくなる。したがってコレクタ電極板A112とコレクタ電極板B113とがスペーサ突起111で接触することによって電場の低下が広範囲で起こり、集塵性能の低下が顕著に現れるという現象である。
【0012】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、粉塵の付着によるスペーサ突起の絶縁性低下とコレクタ電極板の表面における電気抵抗の低下が原因となって、コレクタ電極板どうしが電気的に導通した際に起こる表面電位の低下を最小限に抑えることが可能な集塵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の集塵装置は上記目的を達成するために、粉塵反発電極板と集塵電極板を交互に積層した集塵部を備える集塵装置において、前記粉塵反発電極板および前記集塵電極板の少なくともどちらか一方が、前記半導電層を複数の領域で構成されるようにしたものである。
【0014】
本構成によって、集塵により電極板間に捕捉された粉塵が両極板間を通電させて電位差が低下した場合でも、電極板表面の半導電層が複数の領域で構成されているため、通電箇所以外の領域では電位差を維持して、集塵性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0015】
また、他の手段は、領域にスリットを通風方向と平行に設けたものである。
【0016】
これによって、半導電電極板が横方向に長いことが活用できるため、半導電層の領域を効率よく多くの数の領域で構成することが可能となり、ひとつの領域上で両極板間に通電が起こってその部分の電位差が低下しても、通電していない他の領域が大きく確保されるため、集塵性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0017】
また、他の手段は、領域にスリットを通風方向と略直行して設けたものである。
【0018】
これによって、半導電電極板の縁からある距離の領域に集中的に付着する粉塵によって両極板間に通電が起こっても、その領域が気流と垂直に横に伸びた形状であるため、その領域の電位差が低下して集塵効率が低下しても、その領域の下流方向の領域が集塵領域として補完するため、集塵性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0019】
また、他の手段は、半導電層の領域の間隔を0.5mm以上としたものである。
【0020】
これによって、構成された領域のうちの隣接する領域どうしで半導電層が接近し過ぎて互いに干渉し合うことがなく、また付着した粉塵が2つの領域をまたぐ可能性も低減するため、両極板間の電位差を低下させて集塵性能の低下することを最小限に抑えることができる。
【0021】
また、他の手段は、半導電層が、半導電塗料を絶縁性基板の表面に塗布および乾燥したものである。
【0022】
これによって、10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層が得られる。
【0023】
また、他の手段は、半導電塗料をスクリーン印刷法で絶縁性基板に塗布して半導電層を設けたものである。
【0024】
これによって、10〜50μmほどのある程度厚い半導電層を得ることができる。
【0025】
また、他の手段は、半導電塗料が半導電性材料および半導電性材料を塗布面に固着させるバインダ成分を含むものである。
【0026】
これによって、粉体状の半導電性材料を半導電層の中に固着し、また半導電層の機械的強度を向上させることができる。
【0027】
また、他の手段は、半導電性材料がイオン導電性ポリマーであるものである。
【0028】
これによって、10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有し、また、湿度の影響を受けにくい半導電層を容易に形成することが可能となる。
【0029】
また、他の手段は、半導電性材料が半導電性の金属酸化物であるものである。
【0030】
これによって、10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有し、かつ湿度の影響を受けにくい半導電層が得られる。
【0031】
また、他の手段は、金属酸化物が酸化スズ、もしくはアンチモンをドープした酸化スズであることを特徴とするものである。
【0032】
これによって、アンチモンをドープしない場合に比べて導電性がよくなり、より少ない量で半導電層としての半導電性を得ることが可能となる。
【0033】
また、他の手段は、半導電性材料が酸化スズもしくはアンチモンをドープした酸化スズをそれよりも大きい粒子径を有する担持体粒子に添着したものであることを特徴とするものである。
【0034】
これによって、少量の酸化スズで半導電性を得ることが可能となる。
【0035】
また、他の手段は、担持体粒子が針形状であることを特徴とするものである。
【0036】
これによって、より少量の酸化スズで半導電性を得ることが可能となる。
【0037】
また、他の手段は、バインダ成分を樹脂とし、分子架橋剤を添加した半導電塗料を用いることを特徴とするものである。
【0038】
これによって、油や界面活性剤に対して樹脂が溶解しない、化学的に安定な半導電層を得ることが可能となる。
【0039】
また、他の手段は、半導電層が、10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有する樹脂フィルムであるものである。
【0040】
これによって、絶縁性基板の表面に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層を設けることが容易に可能となる。
【0041】
また、他の手段は、粉塵反発電極板および集塵電極板それぞれに貫通孔を設け、導電性のシャフトを挿入しながら粉塵反発電極板と導電性の円筒状スペーサ、集塵極板と導電性の円筒状スペーサの順で設けるものである。
【0042】
これによって、粉塵反発電極板および集塵電極板の表面どうしが一切接触することなく、空間を設けながらそれぞれの電極板を支持固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、電極板の間で起こるスパークを防止するとともに長期間使用した場合でも高い集塵性能を維持することが可能な集塵装置を提供することができる。
【0044】
しかも複数の半導電性の領域で構成することによって、電極板間の局所的な通電による電位差の低下を抑えて集塵性能をさらに維持することが可能な集塵装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の請求項1記載の発明は、粉塵反発電極板と集塵電極板を交互に積層した集塵部を備える集塵装置において、前記粉塵反発電極板および前記集塵電極板の少なくともどちらか一方が、絶縁性基板の表面に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層を設けた半導電電極板であり、電極板間に捕捉された粉塵が両極板間を通電させて電位差が低下した場合でも、電極板表面の半導電層が複数の領域で構成されているため、粉塵による通電箇所以外の領域では電位差を維持して、集塵性能の低下を抑えることができる。
【0046】
本発明の請求項2記載の発明は、領域にスリットを通風方向と平行に設けたものである。半導電電極板が横方向に長いことを活用して半導電層の領域を効率よく多くの数の領域で構成することが可能となり、たひとつの領域上で両極板間に通電が起こってその部分の電位差が低下しても、通電していない他の領域が大きく確保されるため、集塵性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0047】
本発明の請求項3記載の発明は、領域にスリットを通風方向と略直行して設けたものである。半導電電極板の縁からある距離の領域に集中的に付着する粉塵によって両極板間に通電が起こっても、その領域が気流と垂直に横に伸びた形状であるため、その領域の電位差が低下して集塵効率が低下しても、その領域の下流方向の領域が集塵領域として補完するため、集塵性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0048】
本発明の請求項4記載の発明は、半導電層の領域の間隔を0.5mm以上としたものである。スリット両側の領域どうしの間隔はできる限り細くした方が半導電層の領域が大きく確保できるが、細くしようとする場合は半導電層の形成がより困難となり、隣接する領域どうしで半導電層が接近し過ぎて互いに干渉し合う可能性が高まる。また付着した粉塵が2つの領域をまたぐ可能性もあり、領域を分割して効果が得られないことになる。したがってそれらの影響を受けない間隔として、0.5mm設けることが望ましい。
【0049】
本発明の請求項5記載の発明は、半導電層が、半導電塗料を絶縁性基板の表面に塗布および乾燥したものである。具体的な例としてポリビニルアルコールやポリアクリル酸ナトリウム、アミロースといった吸水性ポリマーを含有する塗料を絶縁性基板の表面に塗布して乾燥することで10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電性膜を得る方法が挙げられる。吸水性ポリマーは空気中の水分を吸収しやすい性質を有しており、空気中の水分を吸収することで電気を僅かに通す性質を有するようになる。吸水性ポリマーを含有する塗料を絶縁性基板の表面に塗布して乾燥することで、10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層が得られる。
【0050】
本発明の請求項6記載の発明は、半導電塗料をスクリーン印刷法で絶縁性基板に塗布して半導電層を設けることを特徴とするものである。機械的強度と化学的安定性を有する半導電層を得るためにはある程度の厚みを必要とする。スクリーン印刷法で半導電層を得ることで、10〜50μmほどのある程度厚い半導電層を得ることが可能である。
【0051】
本発明の請求項7記載の発明は、半導電塗料が半導電性材料および半導電性材料を塗布面に固着させるバインダ成分を含むことを特徴とするものである。前述したような吸水性ポリマーの場合、半導電性材料がポリマーであるため、溶媒で溶解して溶液とし、それを塗布して乾燥するだけで絶縁性基板の表面にある程度強固な半導電層を設けることが可能であるが、半導電性材料が粉体である場合には粉体を固着させる何らかの手段が必要であり、また、それとは別に半導電層自体の機械的強度をより高めたい場合がある。そのような場合の有効な手段として溶媒に溶解可能な樹脂、例えば熱可塑性ポリエステル樹脂やポリオール樹脂などをバインダ成分として用い、溶媒に溶かして半導電性材料と混合したものを半導電塗料として用いることで、粉体状の半導電性材料を半導電層の中に固着し、また半導電層の機械的強度を向上させることが可能となる。
【0052】
本発明の請求項8記載の発明は、半導電性材料がイオン導電性ポリマーであることを特徴とするものである。イオン導電性ポリマーの例として4級アンモニウム塩を分子構造中に有するポリマーが挙げられる。4級アンモニウム塩は中心のアンモニア原子に4つのアルキル基が結合しており、全体としてプラスの電荷を有している。そこに塩素イオンなどの陰イオンがイオン結合した構造となっているためイオン導電性を有することから僅かに電荷を通す性質を有する。また、イオン導電性を有する4級アンモニウム塩をあらかじめその分子中に有しているために湿度の影響を受けにくく、低湿度の時でも電荷を僅かに通す特性を確保することができるという特徴を有する。イオン導電性ポリマーを形成するには分子構造中に4級アンモニウム塩と不飽和炭素結合を有する単量体を重合する方法があるが、分子構造中に4級アンモニウム塩と不飽和炭素結合とを有する単量体としてジメチルアミノメタアクリレートのクロライド塩などが挙げられる。ジメチルアミノメタアクリレートのクロライド塩の水溶液をアルコールに溶かし、成膜性を確保するために低分子量であるメチルメタアクリレートを加えた後にアゾビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤を加えて重合反応させることで4級アンモニウム塩を含むポリマー溶液を得ることができる。また、アクリル酸のようなカルボキシル基と不飽和炭素結合とを分子中に有する単量体を重合して得たポリマーの溶液を加えることで塗布面への接着性を確保することが可能となる。また、塗布面に形成される塗布膜は分子量が大きいポリマーからなるため非水溶性を示す。このようにして作成した半導電塗料を塗布乾燥して形成する半導電層は低湿度時でも電荷を僅かに通し、また、塗布面からはがれることがなく耐水性をも有するという特徴を有する。このようなイオン導電性ポリマーを絶縁性基板の表面に塗布して乾燥することで10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有し、また、湿度の影響を受けにくい半導電層を容易に形成することが可能となる。
【0053】
本発明の請求項9記載の発明は、半導電性材料が半導電性の金属酸化物であることを特徴とするものである。吸水性ポリマーを含有する半導電層は湿度の高低によって表面抵抗率が変動しやすい。湿度の影響を受けにくい半導電層を設ける方法として半導電性を有する金属酸化物を半導電性材料として用いる方法が挙げられる。酸化亜鉛やチタン酸カリウムといった半導電性を有する金属酸化物を半導電性材料に用いることで、10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有し、かつ湿度の影響を受けにくい半導電層が得られる。
【0054】
本発明の請求項10記載の発明は、金属酸化物が酸化スズ、もしくはアンチモンをドープした酸化スズであることを特徴とするものである。酸化スズは印加電圧の大小による抵抗値の変化が小さい。これは酸化スズの導電メカニズムが結晶格子中の酸素欠陥に起因しているためである。また、酸化スズは酸やアルカリに溶解しにくい性質を有する。そのため酸化スズを半導電性材料として用いることで化学的かつ電気的に安定な半導電層を得ることが可能となる。また、酸化スズにアンチモンをドープすることでN型の半導体構造が得られる。そのためアンチモンをドープしない場合に比べて導電性がよくなり、より少ない量で半導電層としての半導電性を得ることが可能となる。
【0055】
本発明の請求項11記載の発明は、半導電性材料が酸化スズもしくはアンチモンをドープした酸化スズをそれよりも大きい粒子径を有する担持体粒子に添着したものであることを特徴とするものである。酸化スズによって得られた半導電層が半導電性を有するためには半導電層の中で酸化スズの粒子どうしが接触してつながる必要があるが、酸化スズの粒子単体でそれを実現するためには高価な酸化スズ粒子が大量に必要となり高いコストを要することとなる。酸化スズどうしが接触していれば同等の半導電性が得られる。そのため、酸化チタンなどの化学的に安定な材料で作った大き目の担持体粒子の表面に、より小さい粒子である酸化スズを添着することによって、少量の酸化スズで半導電性を得ることが可能となる。
【0056】
本発明の請求項12記載の発明は、担持体粒子が針形状であることを特徴とするものである。前述したとおり半導電性を得るためには酸化スズどうしが接触する必要がある。ここで球状に比べて針形状の粒子の方が、粒子どうしが重なって接触しやすくなる。そのため針状の酸化チタン粒子など針形状を有する材料を担持体粒子としてその表面に、より小さい粒子である酸化スズを添着することによって、より少量の酸化スズで半導電性を得ることが可能となる。
【0057】
本発明の請求項13記載の発明は、バインダ成分を樹脂とし、分子架橋剤を添加した半導電塗料を用いることを特徴とするものである。バインダ成分に熱可塑性ポリエステル樹脂や塩ビ樹脂、ポリオール樹脂といった樹脂を用いる場合、塗料としての形態を成すために溶媒に対する溶解性が高い、すなわち分子量の比較的小さな状態の樹脂が使用される。低分子の樹脂は油や界面活性剤に溶解しやすく、例えば空気中の油粒子や界面活性剤粒子を捕集した場合、表面に付着した油粒子や界面活性剤粒子が半導電層中の樹脂を溶解し、結果として半導電層の劣化を引き起こす。ここでポリイソシアネートなどの高分子架橋剤を半導電塗料に添加することで樹脂中のOH基が架橋され、樹脂が高分子化する。そのため油や界面活性剤に対して樹脂が溶解しない、化学的に安定な半導電層を得ることが可能となる。
【0058】
本発明の請求項14記載の発明は、半導電層を、10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有する樹脂フィルムとしたものである。10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有するフィルムの材質の例として、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン、もしくは可塑剤を添加した塩化ビニルや塩化ビニリデンなどが挙げられる。またはナイロンやポリエーテルエステルアミドといった吸水性の高いアミド結合を有するポリマーや、ポリフッ化ビニリデン、もしくは塩化ビニルや塩化ビニリデンなどといった半導電性を有する樹脂とポリプロピレンやポリエステル、ポリスチレンなどの絶縁性樹脂とをブレンドして共重合させたコポリマー樹脂が挙げられる。また別の例としては、ゼオライトなどのシラノール基を有する無機成分や、酸化スズ、酸化亜鉛などの金属酸化物といった半導電性を有する材料を前述した絶縁性樹脂に混ぜてフィルムに成型したものが挙げられる。このような樹脂フィルムは内部に電荷を僅かに通す性質を持ち、10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有するようになる。接着や溶着などの方法でこのような樹脂フィルムを絶縁性基板の表面に設けることによって、絶縁性基板の表面に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層を設けることが容易に可能となる。
【0059】
本発明の請求項15記載の発明は、粉塵反発電極板および集塵電極板それぞれに貫通孔を設け、導電性のシャフトを挿入しながら粉塵反発電極板と導電性の円筒状スペーサ、集塵極板と導電性の円筒状スペーサの順で設けるものである。シャフトを粉塵反発電極板と円筒状スペーサ、集塵極板と円筒状スペーサの順で挿入し、粉塵反発電極板と集塵電極板とが交互に積層された構造を作る。この時粉塵反発電極板と集塵電極板とが接触しては電圧を印加することができないため、例えばシャフトおよび円筒状スペーサと接触しないように円筒状スペーサの外径よりも大きい貫通孔を粉塵反発電極板に設ける。このままでは粉塵反発電極板を支持できないため、別のシャフトを用いて同様の順番でシャフトを挿入し、電極板を支持する。この時は粉塵反発電極板の貫通孔をシャフトの径と同じにし、逆に集塵電極板に円筒状スペーサの外径よりも大きい貫通孔を設ける。このままではそれぞれの電極板をしっかりと固定できないため、それぞれの電極板を支持するシャフトは2本以上、計4本以上が望ましい。そして碍子を用いてそれぞれの電極板を支持するシャフトを接続して固定する。このような構造とすることで粉塵反発電極板および集塵電極板の表面どうしが一切接触することなく、空間を設けながらそれぞれの電極板を支持固定することが可能となる。
【0060】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ちなみにこれら実施の形態は一例を示すものであり、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではない。
【0061】
(実施の形態1)
集塵装置において、10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層1を設けた粉塵反発電極板2および集塵電極板3を交互に積層した集塵部4の斜視図を図1に、正面図を図2に示す。
【0062】
図1および図2に示すように、粉塵反発電極板2および集塵電極板3は通電貫通孔5および空間形成貫通孔6が設けられており、図3に示すような円筒状スペーサ7を挟みながらシャフト8を挿入することによって間隔を開けながら固定されている。円筒状スペーサ7およびシャフト8は金属など導電性を有する材料で構成されており、高圧電源9を接続することによって粉塵反発電極板2および集塵電極板3それぞれに設けられた半導電層1に異なる電圧、例えば粉塵反発電極板の半導電層1に−8kV、集塵電極板の半導電層1に0kVを印加することが可能となっている。そのため粉塵反発電極板2および集塵電極板3の間に設けられた空間10には電場が形成されている。空気は通風方向11が示す向きで集塵部4に導入され、空気中の例えばマイナスに帯電された帯電粉塵が空間10を通過する。そして帯電粉塵は空間10に設けられた電場からクーロン力を受けて集塵電極板3に付着し、捕集される。ここで繰り返しになるが粉塵反発電極板2および集塵電極板3は、表面に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層1が設けられたいわゆる半導電電極板となっている。表面が導電性である場合、表面の電荷移動が自由かつ急激に起こるためスパークが発生するが、表面が半導電性であるため電荷の移動が急激に起こらない。そのためスパークを防止することができる。また、フレーム12の外側に設けられた碍子13で粉塵反発電極板2を支えることによって粉塵反発電極板2と集塵電極板3の表面どうしが接触しない構造となっている。すなわち表面が接触して起こる表面電位の低下が発生せず、空間10には一様かつ強度の高い電場が常に形成されているためスパークを防止しながら、かつ高い集塵性能を得ることが可能となっている。
【0063】
なお、粉塵反発電極板2および集塵電極板3として、絶縁性基板14の表面に半導電層1を設けた半導電電極板を用いる構成で説明を行ったが、もともと表面が10の7〜11乗Ω/□となる材料で構成された半導電電極板を粉塵反発電極板2および集塵電極板3として用いた場合でも同様にスパークを防止しながら高い集塵性能を得ることが可能である。
【0064】
粉塵反発電極板2と集塵電極板3の両板に挟まれた空間において、大きな粉塵が付着したり、粉塵が集積したりすることによって、その粉塵を介して粉塵反発電極板2と集塵電極板3が物理的に接点を持つ状態となれば、両極板はその接点において通電する可能性がある。通電した場合は、その接点のみならず、全域に渡って両極板間の電位差が減少するため、集塵性能が低下する可能性がある。
【0065】
そこで、粉塵反発電極板2の表裏面及び集塵電極板3の表裏面において、半導電層1をそれぞれ複数の領域で構成することにより、向かい合う2枚の電極板間に発生する一箇所の通電が、その両極板間全域の電位差を低下させることを防ぐことができる。
【0066】
ここで代表的に粉塵反発電極板2の構造について図4および図5を用いて説明する。
【0067】
ちなみに集塵電極板3の構造は粉塵反発電極板2とほぼ同じ構造であり、大きな違いは通電貫通孔5および空間形成貫通孔6の位置が異なるのみである。図4に示すように粉塵反発電極板2は絶縁性基板14の表面に半導電層1が設けられており、同時に通電貫通孔5および空間形成貫通孔6とが設けられている。通電貫通孔5はシャフト8がちょうど入りかつ円筒状スペーサ7と接触する大きさとなっており、円筒状スペーサ7との接触箇所によって固定および通電がなされている。また、空間形成貫通孔6は集塵電極板3を固定し通電する円筒状スペーサ7との空間距離が目安として15mm以上となるような大きさとなっている。例えば円筒状スペーサ7の外径が14mmであれば空間形成貫通孔6の径は44mm以上となっており、集塵電極板3との電位差が−10kV程度であれば集塵電極板3を固定する円筒状スペーサ7との間でスパークを発生しない構造となっている。また、絶縁性基板14の表面に半導電層1を設ける方法としては、塗布面が10の7〜11乗Ω/□となる半導電塗料を塗布して乾燥する、もしくは10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有するフィルムを絶縁性基板の表面に貼るなどの方法が挙げられる。円筒状スペーサ7は高圧電源9と接続されたシャフト8と接触しており、通電貫通孔5の周囲の円筒状スペーサ7との接触部分から印加電圧に相当する電荷が半導電層1に供給される。半導電層1は10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有するため、印加電圧に相当する電荷を一様に分布させながらも、急激な電荷の移動を抑制する働きを持っている。そのため大きな粉塵が付着するなどある箇所でスパークの基点となるような状態が形成されたとしても電荷が急激に移動しないためスパークの発生を防止することができる。すなわち印加電圧に相当する電荷を分布させて空間10に一様な電場を形成して高い集塵性能を得ながらスパークを防止することが可能となっている。また、図5には粉塵反発電極板2に小さな電荷均一化貫通孔15を複数設けたものを示す。電荷均一化貫通孔15の壁面は表面抵抗率が10の7〜11乗Ω/□といった半導電性か、もしくは10の1〜4乗Ω/□といった導電性を有しており、粉塵反発電極板2の表裏に設けられた半導電層1における電荷の分布を同一状態にする働きを有する。仮に円筒状スペーサ7と通電貫通孔5との接触が悪くなった部分が生じても他の部分の接触が十分であればその部分を通じて表裏の半導電層1の電荷分布を同一にし、空間10において一様な電場を得ることが可能となる。
【0068】
また、図6に示すのは、粉塵反発電極板2と集塵電極板3に挟まれた空間の任意の場所において、大きな粉塵又は粉塵の集積によって生じた粉塵塊16が両極板に接点を持った状態にある両極板の断面の図である。
【0069】
そして、粉塵反発電極板2について、半導電層1を複数の領域で構成されるようにしたものを図7に示す。
【0070】
図7に示すように、粉塵反発電極板2には通電貫通孔5および空間形成貫通孔6がそれぞれ4つずつ設けられていて、半導電層1は4つの領域で構成され、各領域が通電貫通孔5をひとつずつ含んでいる。この構成によって、4つの領域の半導電層1には通電貫通孔5を通るシャフト8から個別に電荷が供給される。
【0071】
半導電層1が単一の領域であれば、例えば両電極板の間の任意の場所において、大きな粉塵又は粉塵の集積によって生じた粉塵塊16が両電極板に接点を持って両極板間で通電したとき、粉塵反発電極板2の面上の通電箇所17と集塵電極板3の面上の通電箇所18との電位差がなくなる。半導電層1の内部では電荷が移動できるため、ひとつの連続的な半導電層1の領域においては、1箇所の通電によって、その領域における極板間の電位差は全面的に低下する。
【0072】
一方で、半導電層1が複数の領域で構成されている場合、図7に示すのはその一例として、4つの通電貫通孔5のうちの1つを1つの領域が含むように4つの領域で構成したものであるが、これにより各領域は他の領域からは独立し、それぞれの領域内にある通電貫通孔5を通るシャフト8から電荷の供給を受けることができる。したがって、仮に4つの領域の半導電層1のうちのひとつの領域で通電が生じた場合、すなわち例えば図7において右上の領域に粉塵反発電極板2の面上の通電箇所17が存在する場合、電位差の低下が起こる区域19はその領域に限られ、他の3つの領域は互いに絶縁されているため、電位差が低下することはない。このため、領域が単一なものに比べて、電極板全体としての電位差の低下を抑制することが可能となり、集塵効率の低下を抑制することができる。各領域が含む電荷の供給を受ける場所の個数、つまり各領域に割り当てられる通電貫通孔5の数は1対1である必要はないが、ひとつの領域がひとつ以上の通電貫通孔5を含んでいればよい。
【0073】
図8に示すのは、図7の粉塵反発電極板2に関して、気流20に平行するスリット21を半導電層1のそれぞれの領域に対してひとつ以上設けることによって、半導電層1を複数の領域で構成されるようにした粉塵反発電極板2の図である。半導電層1は、通電貫通孔5の位置を含んで気流20と垂直の方向に伸びた帯状の領域22を基軸にして、そこから気流20の上流側方向と下流側方向の両方に伸びる突起状の領域23がスリット21によって囲まれるように形成されている。通電貫通孔5から供給される電荷は、帯状の領域22から突起状の領域23に向かって流れるため、半導電層1の領域の任意の位置に通電箇所17が生じた場合、電位差の低下が起こる区域19は、通電箇所17のある突起状の領域23に限られ、スリット21を挟んで、電位差の低下が起こる区域19に隣接する突起状の領域23では、電位差の低下が起こらず、スリット21を設けていない場合、すなわち、領域が分かれていない場合に比べて電位差の低下が起こる区域19が小さく抑えられる。したがって、極板間の電位差の低下はごく狭い領域にとどまり、集塵効率の低下を抑制することができる。
【0074】
図9に示すのは、気流20の方向に対して垂直にスリット21を設けて半導電層1を形成した粉塵反発電極板2の図である。気流20の風速が一定であれば、集塵電極板3の気流20の上流側の縁から、風速に応じた距離の位置に粉塵はある程度集中して付着し、その前後の領域への付着の密度は低くなる。気流20の方向と垂直方向に伸びるように複数個設けた突起状の領域23を持つ粉塵反発電極板2において、ある位置の突起状の領域23に粉塵が集中することで、その領域内に通電箇所17が生じた場合、その領域の集塵効率は低下する。しかし、その領域の下流側で突起状の領域23が確保されていれば、粉塵の付着する領域は下流方向へ推移し、集塵効率を補完することができる。
【0075】
スリット21の幅はできる限り細くして、半導電層1の領域の面積を大きく確保することが望ましいが、細すぎると小さな粉塵が電極板に付着したときにひとつのスリット21を挟んで隣り合う2つの突起状の領域23をまたがる可能性がある。また、半導電層1をスクリーン印刷技術を用いて形成する場合においても、塗料のはみ出しなどによって隣接する突起状の領域23どうしが干渉し合う可能性もある。したがって、スリット21の幅は0.5mm以上設けることが望ましい。
【0076】
(実施の形態2)
半導電性材料、樹脂、溶剤からなるスクリーン印刷用インキを樹脂製の絶縁性基板14にスクリーン印刷法で塗布し乾燥させて得た半導電層1による検証結果を以下に示す。ここでインク中の半導電性材料として球状および針形状を有するアンチモンドープ酸化スズ添着酸化チタンを、また、樹脂として熱可塑性ポリエステル樹脂を用いた。また、半導電層を作成するにあたり、バインダ成分である熱可塑性ポリエステル樹脂を高分子化してバインダとしての強度を確保するために印刷する直前にポリイソシアネート系の分子架橋剤を一定の比率でインキに添加している。スクリーン印刷法で得られた半導電層1の厚みは約10μmであった。半導電性材料の形状と半導電層の表面抵抗率の関係について検討結果を表1に示す。球状の半導電性材料は粒子径約0.3μm、針形状の半導電性材料は太さ約0.2μm、長さ約3μmである。球状および針形状それぞれの半導電材料をもちいて作成した半導電層の表面抵抗率を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1に示すように、10の9〜10乗Ω/□の表面抵抗率を得るのに半導電層1中における半導電材料の重量比率は球状のもので60%、針形状のもので22%となった。この結果から、球状よりも針形状の方がより少ない量で半導電性が得られることがわかった。これは針形状の方が、粒子どうしが重なって接触しやすいことによるものである。
【0079】
次に表面抵抗率と表面電位の関係を調べた。図10に示すように、絶縁性基板14の上に90mm角の半導電層1を設け、一つの角と高圧電源9の端子を接触させて−3kVを印加した。そして予め半導電層の中央部分25に設けておいた非接触式の表面電位計24(モンローエレクトロニクス製MODEL279)によって半導電層1の表面電位を測定し、−3kVに到達するまでの時間を計測した。その結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
この結果から、表面抵抗率が10の11乗Ω/□以下であれば30秒以内で−3kVに到達するが、それ以上になると−3kVに到達するのに100秒以上必要であることがわかった。すなわち高圧電源から供給される電圧まで速やかに昇圧できる迅速なレスポンスを得るためには半導電層1の表面抵抗率を10の11乗Ω/□以下とする必要があることがわかった。
【0082】
次に、図11に示すように直径50mmの内筒電極26、内径70mmのリング状の外筒電極27を半導電層1の上に置き、内筒電極26を接地して0Vとし、また外筒電極27に1〜8kVの電圧を印加した。そして両電極に流れる電流を計測して表面抵抗率を算出した。ちなみに半導電層1の作成に用いた半導電性材料は針形状のアンチモンドープ酸化スズ添着酸化チタン、そして比較用として粒子径約0.2μmのアルミニウムドープ酸化亜鉛の2種類、表面抵抗率は1kV印加時にそれぞれ約10の12、10および7乗Ω/□の3種類計6種類の半導電層1で試験を行った。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
表3に示すとおり、アンチモンドープ酸化スズ添着酸化チタンを用いた半導電層1は1、4および8kVと電圧を変化させても表面抵抗率の大幅な変化は見られない。しかしながら、1kVにおける表面抵抗率が5×10の7乗Ω/□のサンプルにおいては一回だけスパークが発生した。その後表面を観察したところ状態の変化は見られなかったが、スパーク防止および安全確保の観点から表面抵抗率は10の7乗Ω/□以下ではスパークが起こる可能性があり、粉塵反発電極板と集塵電極板とが接触する異常時には電流が流れて発熱することなどを考慮して少なくとも10の7乗Ω/□以上が望ましいという結果となった。しかしアルミニウムドープ酸化亜鉛を用いた半導電層1においては1、4、8kVと電圧を大きくするにつれて表面抵抗率が低下し、1kVにおいて表面抵抗率が10の8乗および10乗Ω/□のサンプルにおいてはスパークが発生し、その後通電状態となった。試験後に表面を観察すると一筋の焦げが発生しており、絶縁性基板14が炭化して導通したことを確認した。このように半導電性材料によっては電圧が高くなるにつれて表面抵抗率が導通方向に変化するものもあることがわかり、またアンチモンドープ酸化スズ添着酸化チタンであればそのような変化が大幅に起こらず、安定して所定の表面抵抗率が得られることがわかった。
【0085】
また、ポリイソシアネート系の分子架橋剤の効果を調べるために界面活性剤と鉱物油を混合した水溶性油に1ヶ月浸漬したところ、分子架橋剤を添加して作成した半導電層1は外観、表面抵抗率ともに変化が無かったが、分子架橋剤を添加せずに作成した半導電層1は白色である半導電性材料の脱落を示す色落ちが発生し、また、表面抵抗率も当初の10の8乗Ω/□が10の12乗Ω/□以上に上昇した。この結果から分子架橋剤を添加することにより樹脂の劣化を防ぎ、半導電性材料の固着性能を高めることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の集塵装置は、高い集塵性能を得ながら集塵部および荷電部ともにスパークを防止することが可能であるため、高い集塵性能と安全性が同時に求められる集塵装置、例えば工場のオイルミスト集塵機や家庭用空気清浄機、または給気型換気扇などに搭載する集塵デバイスとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態1に記載の集塵部を示す斜視構成図
【図2】同集塵部を示す正面構成図
【図3】同円筒状スペーサを示す構成図
【図4】同粉塵反発電極板を示す構成図
【図5】同電荷均一化貫通孔を設けた粉塵反発電極板を示す構成図
【図6】同粉塵塊が極板間に捕捉された両極板の断面図
【図7】同半導電層を領域に分割した粉塵反発電極板の上面図
【図8】同半導電層に、気流と平行なスリットを設けて領域に分割した粉塵反発電極板の上面図
【図9】同半導電層に、気流と直行するスリットを設けて領域に分割した粉塵反発電極板の上面図
【図10】実施の形態2に記載の検証に用いた実験装置を示す図
【図11】同検証に用いた実験装置を示す図
【図12】特許文献1に記載のコレクタ電極板を示す構成図
【図13】同コレクタ電極板の図14におけるA−B断面を示す図
【図14】同コレクタ電極板を積層して形成する集塵部を示す図
【符号の説明】
【0088】
1 半導電層
2 粉塵反発電極板
3 集塵電極板
4 集塵部
5 通電貫通孔
6 空間形成貫通孔
7 円筒状スペーサ
8 シャフト
9 高圧電源
10 空間
11 通風方向
12 フレーム
13 碍子
14 絶縁性基板
15 電荷均一化貫通孔
16 粉塵塊
17 通電箇所
18 通電箇所
19 電位差の低下が起こる区域
20 気流
21 スリット
22 帯状の領域
23 突起状の領域
24 表面電位計
25 半導電層の中央部分
26 内筒電極
27 外筒電極
107 コレクタ電極板
108 導電面
109 電極基板
110 半導電層
111 スペーサ突起
112 コレクタ電極板A
113 コレクタ電極板B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵反発電極板と集塵電極板を交互に積層した集塵部に通風して集塵する集塵装置において、前記粉塵反発電極板および前記集塵電極板の少なくともどちらか一方が、絶縁性基板の表面に10の7〜11乗Ω/□の表面抵抗率を有する半導電層を設けた半導電電極板であり、前記半導電層が複数の領域で構成されるようにした集塵装置。
【請求項2】
領域にスリットを通風方向と平行に設けた請求項1記載の集塵装置。
【請求項3】
領域にスリットを通風方向と略直行して設けた請求項1記載の集塵装置。
【請求項4】
半導電層の領域の間隔を0.5mm以上とした請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集塵装置。
【請求項5】
半導電層が、半導電塗料を絶縁性基板の表面に塗布および乾燥したものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の集塵装置。
【請求項6】
半導電塗料をスクリーン印刷法で絶縁性基板に塗布して半導電層を設けることを特徴とする請求項5記載の集塵装置。
【請求項7】
半導電塗料が半導電性材料および半導電性材料を塗布面に固着させるバインダ成分を含むことを特徴とする請求項6記載の集塵装置。
【請求項8】
半導電性材料がイオン導電性ポリマーであることを特徴とする請求項7記載の集塵装置。
【請求項9】
半導電性材料が半導電性の金属酸化物であることを特徴とする請求項7記載の集塵装置。
【請求項10】
金属酸化物が酸化スズ、もしくはアンチモンをドープした酸化スズであることを特徴とする請求項9記載の集塵装置。
【請求項11】
半導電性材料が酸化スズもしくはアンチモンをドープした酸化スズをそれよりも大きい粒子径を有する担持体粒子に添着したものであることを特徴とする請求項10記載の集塵装置。
【請求項12】
担持体粒子が針形状であることを特徴とする請求項11記載の集塵装置。
【請求項13】
バインダ成分を樹脂とし、分子架橋剤を添加した半導電塗料を用いることを特徴とする請求項8乃至12いずれかに記載の集塵装置。
【請求項14】
半導電層が、10の7〜11乗Ω・cmの体積抵抗率を有する樹脂フィルムである請求項1乃至13いずれかに記載の集塵装置。
【請求項15】
粉塵反発電極板および集塵電極板それぞれに貫通孔を設け、導電性のシャフトを挿入しながら粉塵反発電極板と導電性の円筒状スペーサ、集塵極板と導電性の円筒状スペーサの順で設ける請求項1乃至14いずれかに記載の集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−227833(P2010−227833A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78434(P2009−78434)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】